説明

植物の育成を促進することができる植物育成システム

【課題】植物の育成を促進することができる植物育成システムを提供すること。
【解決手段】 植物41を育成する温室40と、熱需要52の近傍に設けられ、水素を用いて発電を行う燃料電池50と、化石燃料から水素と二酸化炭素を生成する改質器44と、改質器44によって生成された二酸化炭素を温室40に導く二酸化炭素配管48と、改質器44によって生成された水素を燃料電池50に導く水素配管58とを備えた。改質器44が生成した水素と二酸化炭素の混合気から二酸化炭素を分離する分離装置42を更に備える。二酸化炭素配管48は、分離装置42によって分離された二酸化炭素を温室40に導く。水素配管58は、分離装置42によって二酸化炭素が分離された水素を燃料電池50に導く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の育成を促進することができる植物育成システムに関する。特に本発明は、改質器によって生成された二酸化炭素を植物育成空間に導く、植物育成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大気中の二酸化炭素の濃度より高い濃度の雰囲気下において植物の育成を行うことによって、その育成や収穫量に効果があることが認められている。従来、園芸ハウス等の温度調節システムにおいて、温度調節用の燃焼装置から発生する二酸化炭素を含む燃焼排ガスを利用して植物を育成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平1−305809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、夏季など、温度調節用の燃焼装置を駆動しない期間は、園芸ハウスに燃焼排ガスを供給することができない。また、燃焼排ガスは、二酸化炭素以外に硫黄分などの不純物を含む。したがって、燃焼排ガスから不純物を除去するための装置を設けることは、無駄が多く好ましくない。また、良質の燃料を燃焼装置の燃料として使用することで、燃焼排ガスに含まれる不純物の量を低減できる。しかし、良質の燃料を使用することによって燃料コストが上昇するため好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
このような課題を解決するために、本発明の第1の形態における植物育成システムは、植物を育成する植物育成空間と、化石燃料から水素と二酸化炭素を生成する改質器と、改質器によって生成された二酸化炭素を植物育成空間に導く二酸化炭素配管と、水素を消費する水素需要に、改質器によって生成された水素を導く水素配管とを備えた。
【0005】
このため、植物育成空間で育成される植物の成長を促進することができる。
【0006】
また本形態における植物育成システムは、改質器が生成した水素と二酸化炭素の混合気から二酸化炭素を分離する分離装置を更に備え、二酸化炭素配管は、分離装置によって分離された二酸化炭素を植物育成空間に導く。水素配管は、分離装置によって分離された水素を水素需要に導く。また、改質器は植物育成空間の近傍に設けられている。
【0007】
このため、純度の高い二酸化炭素を植物育成空間に供給することができる。また、燃料電池の発電に利用される水素の利用率を高めることができる。
【0008】
水素需要は、水素を用いて発電を行い、二酸化炭素を前記植物育成空間に供給するポンプを駆動する燃料電池である。
【0009】
燃料電池は、水素および二酸化炭素の混合気を吸気すると共に混合気を排気する。改質器は、水素濃度の下がった混合気を燃焼させて水素燃焼ガスを排出する。二酸化炭素配管は、水素燃焼ガスを植物育成空間に導く。
【0010】
このため、水素および二酸化炭素の双方を、有効に活用することができる。
【0011】
改質器は、更に化石燃料を燃焼させる化石燃料燃焼室と、当該化石燃料燃焼室と分離されており、水素濃度の下がった混合気を燃焼させる水素燃焼室とを有する。二酸化炭素配管は、化石燃料燃焼室の排ガスを植物育成空間に導かず、水素燃焼ガスを植物育成空間に導く。
【0012】
このため、汚染の少ない二酸化炭素を植物育成空間に供給することができる。
【0013】
また本形態における植物育成システムは、改質器によって生成された二酸化炭素を貯蔵する二酸化炭素貯蔵装置と、植物育成空間で消費される二酸化炭素の量が、分離装置から供給される二酸化炭素の量に比べて少ない場合に、余剰となる量の二酸化炭素を二酸化炭素貯蔵装置に貯蔵し、植物育成空間で消費される二酸化炭素の量が、分離装置から供給される二酸化炭素の量に比べて多い場合に、不足する量の二酸化炭素を二酸化炭素貯蔵装置から植物育成空間に供給する制御部とを更に備えた。
【0014】
制御部は、前記植物育成空間への日射量に応じた量の二酸化炭素を前記植物育成空間に供給する。
【0015】
なお上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションも又発明となりうる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、改質器が生成する二酸化炭素を植物育成空間に供給するので、植物の育成を促進することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではなく、又実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の開発手段に必須であるとは限らない。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係る植物育成システム30の構成の一例を示す図である。本実施形態は、植物の成長を促進することができる植物育成システムを提供することを目的とする。
【0019】
植物育成システム30は、温室40、改質器44、改質ガス配管56、分離装置42、水素配管58、燃料電池50、二酸化炭素配管48、二酸化炭素貯蔵タンク106、ポンプ108、二酸化炭素貯蔵弁102、二酸化炭素供給弁104、制御部100、日射計110、熱需要52、および電力需要54を備える。温室40の内部では植物41が栽培される。
【0020】
改質器44は温室40に隣接して設けられている。改質器44は、化石燃料を含む原料ガスから水素と二酸化炭素を含む改質ガスを生成する。改質器44は、例えば、都市ガス、プロパンガス等を改質して、例えば、70%前後の水素、20%前後の二酸化炭素、2〜3%のメタン、2〜3%の窒素、および10ppm以下の一酸化炭素を含む改質ガスを生成する。改質器44は、外部から供給される化石燃料を燃焼させることによって、改質ガスを生成するために必要な熱量を生成する。改質器44によって生成された改質ガスは、改質ガス配管56によって分離装置42に導かれる。
【0021】
分離装置42は、改質器44が生成した改質ガスから二酸化炭素を分離する。分離装置42には水素配管58および二酸化炭素配管48が接続される。水素配管58は、分離装置42によって二酸化炭素が分離された改質ガスを燃料電池50に導く。二酸化炭素配管48は、温室40と分離装置42とを接続しており、分離装置42によって改質ガスから分離された二酸化炭素は、ポンプ108によって温室40に導かれる。
【0022】
温室40は植物41を育成する。温室40内で育成される植物41は光合成を行い、二酸化炭素配管48から供給される二酸化炭素を消費して酸素を生成する。
【0023】
燃料電池50は熱需要52の近傍に設けられ、改質器44が生成した改質ガスに含まれる水素を用いて発電を行う。燃料電池50は、例えば、住居の敷地内に設けられた固体高分子型燃料電池(PEFC)である。燃料電池50が発電する電力は、ポンプ108および電力需要54に供給される。また、燃料電池50の発電とともに生成される排熱は、熱需要52に供給される。熱需要52は、例えば住居に備えられた、温水を消費する機器である。また、熱需要52は温水を蓄積する貯湯槽であってよい。また、熱需要52は、温室40の内部を温めるための機器であってよい。電力需要54は、例えば住居に備えられた、電力を消費する機器である。また、電力需要54は、温室40の内部を温める機器であってよく、また、温室40の照明装置など温室40が機能するために必要な機器であってよい。
【0024】
二酸化炭素貯蔵弁102は、二酸化炭素配管48と二酸化炭素貯蔵タンク106とを接続し、分離装置42から供給される二酸化炭素の量に対する、二酸化炭素貯蔵タンク106に貯蔵される二酸化炭素の量の割合を制御する。二酸化炭素供給弁104は、二酸化炭素貯蔵タンク106と二酸化炭素配管48とを接続し、二酸化炭素貯蔵タンク106から温室40に供給される二酸化炭素の量を制御する。日射計110は、温室40の内部に設けられ、温室40内への日射量を計測する。
【0025】
制御部100は、温室40で消費される二酸化炭素の量が、分離装置42から供給される二酸化炭素の量に比べて少ない場合に、二酸化炭素貯蔵弁102を制御することによって、余剰となる量の二酸化炭素を二酸化炭素貯蔵タンク106に貯蔵する。また制御部100は、温室40で消費される二酸化炭素の量が、分離装置42から供給される二酸化炭素の量に比べて多い場合に、二酸化炭素供給弁104を制御することによって、不足する量の二酸化炭素を二酸化炭素貯蔵タンク106から温室40に供給する。
【0026】
また、制御部100は、日射計110で計測される温室40内への日射量と、温室40に供給すべき二酸化炭素の量との関係を記憶しておき、温室40内への日射量に応じた量の二酸化炭素を温室40に供給すべく、二酸化炭素貯蔵弁102および二酸化炭素供給弁104を制御する。なお、温室40内に、日射計110の他に、光合成有効波長域の光量子密度を測定する光量子センサ、または光の強さを測定する照度センサを備えてもよく、制御部100は、温室40内への光量子密度、または照度に基づいて温室40に供給すべき二酸化炭素の量を決定してもよい。
【0027】
このように、植物育成システム30では、改質器44が生成した改質ガスに含まれる二酸化炭素を温室40に供給するので、植物41の成長を促進することができる。また、二酸化炭素配管48が、分離装置42によって分離された二酸化炭素を温室40に導くので、純度の高い二酸化炭素を温室40に供給することができる。このようにして、改質器44が生成する二酸化炭素を有効に利用し、二酸化炭素が外気へ排出される量を削減できる。また、昼間の曇りの時間帯、夜間等、植物41の光合成が昼間の晴れた時間帯に比べて盛んでない時に二酸化炭素貯蔵タンク106に二酸化炭素を貯蔵しておき、昼間の晴れた時間帯など、植物41の光合成が盛んな時に二酸化炭素貯蔵タンク106に貯蔵された二酸化炭素を供給することができるので、改質器44が生成する二酸化炭素を無駄にすることなく利用することができる。また、制御部100が、日射量に応じた量の二酸化炭素を植物41に供給するので、植物41が外気に開放された場所で育成される場合であっても、適切な量の二酸化炭素を植物41に供給することができる。
【0028】
また、分離装置42が、改質器44が生成した改質ガスから二酸化炭素を分離するので、燃料電池50の発電に利用される水素の利用率が高まる。また、改質器44が生成する改質ガスは、化石燃料を燃焼させた燃焼ガスに比べて硫黄分等の不純物の含有量が少ないので、分離装置42を設置するためのコスト、分離装置42を維持するためのコストを低減することができる。
【0029】
なお、一般に、植物41を育成するには、二酸化炭素濃度は10%前後であることが望ましい。したがって、制御部100は、二酸化炭素貯蔵弁102および二酸化炭素供給弁104を制御することによって、温室40内の二酸化炭素の濃度が10%前後に維持されるよう、二酸化炭素配管48から供給される二酸化炭素の量を適切に調節してもよい。また、温室40が藻類を育成するものである場合、二酸化炭素濃度を50%前後に高めてもよい。この場合は、改質器44が生成する改質ガスに含まれる二酸化炭素をより多く消費させることができる。
【0030】
図2は、分離装置42の構成の一例を示す図である。分離装置42は、水吸収装置62、アミン吸収装置64、およびアミン再生装置66を備える。分離装置42は、改質器44から供給される改質ガスに含まれる二酸化炭素を、水およびアミン吸収液に吸収させて、二酸化炭素濃度が低減された改質ガスを燃料電池50に供給する。
【0031】
改質器44が生成する改質ガスは、改質ガス配管56によって水吸収装置62に供給される。改質ガス配管56を通過する改質ガスは、アミン再生装置66で熱交換することによって冷却された後、水吸収装置62に供給される。水吸収装置62内には、水が蓄積されており、改質ガスを水吸収装置62内に蓄積された水と接触させることで、改質ガス中の二酸化炭素を60%以上を水に吸収させる。水吸収装置62内の水はアルカリ性であることが望ましい。水吸収装置62で二酸化炭素を吸収した水は、二酸化炭素配管48を通じて温室40に供給される。温室40に供給された二酸化炭素を吸収した水は、植物41に噴霧されることによって、植物41に二酸化炭素を供給する。
【0032】
アミン吸収装置64では、水吸収装置62から供給される改質ガスに含まれる二酸化炭素を、アミン吸収装置64が有するアミン吸収液が吸収することによって、改質ガス中に含まれる二酸化炭素をさらに分離する。アミン吸収液としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン吸収液が望ましい。アミン吸収装置64によって二酸化炭素を更に分離された改質ガスは、水素配管58によって燃料電池50に供給される。
【0033】
アミン吸収液はアミン吸収装置64とアミン再生装置66との間を循環している。アミン吸収液は、アミン再生装置66における改質ガスからの二酸化炭素の吸収と、アミン再生装置66における二酸化炭素の脱着とを繰り返す。アミン再生装置66は、二酸化炭素を吸収したアミン吸収液の温度を上昇させることによって、二酸化炭素をアミン吸収液から脱着する。アミン吸収液から二酸化炭素を脱着するための熱源としては、改質ガス配管56を通過する改質ガスが有する熱を利用する。また、アミン吸収液から二酸化炭素を脱着するための熱源として、改質器44の排熱を利用してもよい。例えば、改質器44を加温するための燃焼排ガスと、アミン再生装置66のアミン吸収液とを熱交換させてもよい。アミン再生装置66によってアミン吸収液から脱着された二酸化炭素は、二酸化炭素配管48によって温室40に供給される。
【0034】
なお、温室40で消費される二酸化炭素の量が、分離装置42から供給される二酸化炭素の量に比べて少ない場合に、余剰となる量の二酸化炭素を水吸収装置62内に蓄積された水に吸収させ、二酸化炭素を吸収した水を貯蔵することによって二酸化炭素を貯蔵しておいてもよい。また、余剰となる量の二酸化炭素をアミン吸収液に吸収させ、二酸化炭素を吸収したアミン吸収液を貯蔵することによって二酸化炭素を貯蔵しておいてもよい。
【0035】
また、分離装置42の他の例としては、圧力スイング吸着法(PSA法)を利用する分離装置42である。この場合、分離装置42は、PSA法によって改質ガスから二酸化炭素を分離するものである。また、分離装置42のさらなる他の例としては、分離装置42は、PSA法、膜分離法、水素吸蔵合金精製法などを用いて水素を分離するものである。この場合、改質ガスは、分離装置42によって、水素ガスと、水素を分離された改質ガスに分離され、水素を分離された改質ガスは二酸化炭素配管48によって温室40に導かれる。
【0036】
図3は、本発明の他の実施形態に係る植物育成システム30の構成の一例を示す。植物育成システム30は、温室40、改質器44、水素配管58、燃料電池50、オフガス配管60、二酸化炭素配管48、熱需要52、および電力需要54を備える。温室40の内部では植物41が栽培される。なお、図3において、図1と同じ符号を付した構成は、図1における構成と同一又は同様の機能を有するので、説明を省略する。
【0037】
改質器44によって生成された改質ガスは、水素配管58によって燃料電池50のアノードに供給される。燃料電池50は、燃料電池50のアノードに供給された改質ガス中の水素を消費して発電を行い、アノードに供給された改質ガスに比べて水素濃度の下がったオフガスをアノードから排気する。アノードから排気されたオフガスは、オフガス配管60によって改質器44に導かれる。
【0038】
改質器44は、オフガス配管60によって導かれるオフガスを燃焼させて水素燃焼ガスを排出する。改質器44は、化石燃料を燃焼させる燃焼室およびオフガスを燃焼させる燃焼室を有しており、二酸化炭素配管48はオフガスを燃焼させる燃焼室と温室40とを結ぶ。
【0039】
このように、二酸化炭素配管48が、オフガスを燃焼させることによって生成される水素燃焼ガスを温室40に導くので、温室40には不純物の濃度の低い二酸化炭素が供給される。これによって植物41の成長をより促進させることができる。また、燃焼によって得られる暖かい水素燃焼ガスを温室40に供給することによって、温室40を温めるためのエネルギーを削減することができる。また、水素および二酸化炭素の双方を、有効に活用することができる。
【0040】
図4は、改質器44の構成の一例を示す図である。図4は改質器44の断面を示す。改質器44は、外筒84、蓋90、および底91で形成される円筒容器内に、化石燃料燃焼室78、水素燃焼室80、および触媒室92を有する。内筒85が外筒84の半径方向内側に間隔を置いて同心円状に配置されており、外筒84と内筒85の間に触媒室92が形成される。触媒室92は、改質層72、CO変成層74、およびCO選択除去層76、中間第1円筒88、および中間第2円筒89を有する。中間第1円筒88および中間第2円筒89は、外筒84および内筒85の間に同心円状に配置される。中間第1円筒88は、中間第2円筒89よりも半径方向内側に配置される。
【0041】
化石燃料燃焼室78および水素燃焼室80は、内筒85の半径方向内側に形成され、互いに燃焼室隔壁87によって隔てられている。化石燃料燃焼室78は、内筒85、燃焼室隔壁87、および蓋90に囲まれる空間で形成され、燃焼筒86および化石燃料バーナ79を備える。化石燃料バーナ79には化石燃料配管96が接続される。水素燃焼室80は、内筒85、燃焼室隔壁87、および底91に囲まれる空間で形成され、水素バーナ81および燃焼筒86を備える。水素バーナ81にはオフガス配管60が接続される。燃焼筒86は、化石燃料バーナ79および水素バーナ81の半径方向外側に間隔を置いて同心円状に配置される。
【0042】
蓋90は、原料ガス入口71および化石燃料燃焼ガス排出口82を備える。底91は、改質ガス出口77および水素燃焼ガス排出口83を備える。また、外筒84には、空気入口94が設けられる。
【0043】
都市ガス、LPガス等の化石燃料は、化石燃料配管96から化石燃料バーナ79に供給され、化石燃料バーナ79で燃焼する。化石燃料の燃焼ガスは、化石燃料燃焼ガス排出口82から外部に排出される。また、燃料電池50のアノードから供給されるオフガスは、オフガス配管60によって水素バーナ81に供給され、水素燃焼室80内で燃焼する。水素バーナ81の燃焼によって生成する水素燃焼ガスは、水素燃焼ガス排出口83に接続された二酸化炭素配管48から流出する。改質層72は、化石燃料バーナ79および水素バーナ81での燃焼によって加温される。
【0044】
都市ガス、LPガス等の改質原料ガスと、水蒸気との混合蒸気である原料ガスは、原料ガス入口71に接続された原料ガス配管98を通じて改質層72に流通する。原料ガスは、触媒室92が有する改質層72、CO変成層74、およびCO選択除去層76を順に通過した後に、改質ガス出口77に接続された水素配管58へ改質ガスとして流出する。
【0045】
改質層72は、内筒85と中間第1円筒88との間の空間に、改質触媒を充填して形成される。改質層72の改質触媒としては、例えばニッケル系、ルテニウム系等の触媒が使用される。原料ガス入口71から流通してくる原料ガスは、改質層72において次の化学式(1)で示される反応によって、水素と一酸化炭素を含有する改質ガスに転換される。
【化1】

化学式(1)で示される反応は吸熱反応である。このため、化学式(1)で示される反応は、化石燃料バーナ79および水素バーナ81の燃焼熱を吸収することで反応が進行する。
【0046】
CO変成層74は、中間第1円筒88と中間第2円筒89との間の空間に、CO変成触媒を充填して形成される。CO変成層74のCO変成触媒としては、例えば白金系、ルテニウム系等の触媒が使用される。CO変成層74は、中間第1円筒88を挟んで改質層72と隣接している。また、中間第1円筒88と底91との間の隙間を介して改質層72と連通している。これによって、改質層72で生成された改質ガスは、改質層72から中間第1円筒88と底91との隙間から、CO変成層74に流通してくる。改質ガスがCO変成層74を通過する間にCO変成反応が生じる。これによって、CO変成層74を通過した後の改質ガス中の一酸化炭素の濃度は0.5%前後に低下する。
【0047】
CO選択除去層76は、中間第2円筒89と外筒84との間の空間に、選択酸化触媒を充填して形成される。CO選択除去層76の選択酸化触媒としては、例えばルテニウム系、白金系等の触媒が使用される。CO選択除去層76は、中間第2円筒89を挟んでCO変成層74と隣接している。また、中間第2円筒89と蓋90との間の隙間を介してCO変成層74と連通している。これによって、CO変成層74から流出した改質ガスは、CO変成層74から中間第2円筒89と蓋90との隙間から、CO選択除去層76に流通してくる。改質ガスがCO選択除去層76を通過する間に、空気入口94から取り入れられる空気中の酸素とのCO選択酸化反応が生じる。これによって改質ガス中の一酸化炭素濃度はさらに低下する。望ましくは、水素配管58に流出する改質ガス中の一酸化炭素の濃度を10ppm以下にまで低下させる。
【0048】
このように、燃料電池50のアノードから排出されるオフガスに含まれる水素は、改質器44の水素燃焼室80が有する水素バーナ81によって燃焼される。オフガスの燃焼熱は改質層72での改質反応を促進する。オフガスの燃焼によって発生する水素燃焼ガスは化石燃料を燃焼させた場合に比べて硫黄分などの不純物が少ない。したがって、温室40に水素燃焼ガスを直接供給することができる。すなわち、オフガスの燃焼時に発生する熱を原料ガスの改質ガスの生成に利用しつつ、二酸化炭素を含む水素燃焼ガスを温室40に供給することで、植物41の成長をより促進することができる。また、化石燃料バーナ79が排出する化石燃料燃焼ガスは温室40には供給されないので、化石燃料バーナ79の燃料として、硫黄分などを含む安価な燃料を利用することができる。
【0049】
以上の説明から明らかなように第1および第2の実施形態における植物育成システム30によれば、二酸化炭素配管48は改質器44によって生成された二酸化炭素を温室40に導くので、植物41の成長を促進することができる。また、第1の実施形態における植物育成システム30によれば、二酸化炭素配管48は分離装置42によって改質ガスから分離された二酸化炭素を温室40に導くので、純度の高い二酸化炭素を供給することができる。したがって、植物41の成長をより促進させることができる。また分離装置42は改質器44が生成した改質ガスから二酸化炭素を分離するので、燃料電池50の発電に利用される水素の利用率を高めることができる。また、第2の実施形態における植物育成システム30によれば、燃料電池50がアノードから排出する水素および二酸化炭素が含まれるオフガスを、オフガス配管60によって改質器44に導き、水素燃焼室80で燃焼させ、オフガスの燃焼によって得られた水素燃焼ガスを温室40に導く。したがって、水素および二酸化炭素の双方を有効に活用することができる。また、不純物の少ない二酸化炭素を温室40に供給することができるので、植物41の育成をより促進することができる。
【0050】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることができることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態に係る植物育成システム30の構成の一例を示す。
【図2】分離装置42の構成の一例を示す。
【図3】本発明の他の実施形態に係る植物育成システム30の構成の一例を示す。
【図4】改質器44の構成の一例を示す。
【符号の説明】
【0052】
30・・・植物育成システム、40・・・温室、41・・・植物、42・・・分離装置、44・・・改質器、48・・・二酸化炭素配管、50・・・燃料電池、52・・・熱需要、54・・・電力需要、56・・・改質ガス配管、58・・・水素配管、60・・・オフガス配管、62・・・水吸収装置、64・・・アミン吸収装置、66・・・アミン再生装置、71・・・原料ガス入口、72・・・改質層、74・・・CO変成層、76・・・CO選択除去層、77・・・改質ガス出口、78・・・化石燃料燃焼室、79・・・化石燃料バーナ、80・・・水素燃焼室、81・・・水素バーナ、82・・・化石燃料燃焼ガス排出口、83・・・水素燃焼ガス排出口、84・・・外筒、85・・・内筒、86・・・燃焼筒、87・・・燃焼室隔壁、88・・・中間第1円筒、89・・・中間第2円筒、90・・・蓋、91・・・底、92・・・触媒室、94・・・空気入口、96・・・化石燃料配管、98・・・原料ガス配管、100・・・制御部、102・・・二酸化炭素貯蔵弁、104・・・二酸化炭素供給弁、106・・・二酸化炭素貯蔵タンク、108・・・ポンプ、110・・・日射計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物を育成する植物育成空間と、
化石燃料から水素と二酸化炭素を生成する改質器と、
前記改質器によって生成された二酸化炭素を前記植物育成空間に導く二酸化炭素配管と、
水素を消費する水素需要に、前記改質器によって生成された水素を導く水素配管と
を備える植物育成システム。
【請求項2】
前記改質器は、前記植物育成空間の近傍に設けられており、
前記改質器が生成した前記水素と前記二酸化炭素との混合気から前記二酸化炭素を分離する分離装置を更に備え、
前記二酸化炭素配管は、前記分離装置によって分離された二酸化炭素を前記植物育成空間に導き、
前記水素配管は、前記分離装置によって分離された水素を前記水素需要に導く請求項1に記載の植物育成システム。
【請求項3】
前記水素需要は、水素を用いて発電を行い、二酸化炭素を前記植物育成空間に供給するポンプを駆動する燃料電池である請求項1に記載の植物育成システム。
【請求項4】
前記燃料電池は、前記水素および前記二酸化炭素の混合気を吸気すると共に水素濃度の下がった混合気を排気し、
前記改質器は、前記水素濃度の下がった混合気を燃焼させて水素燃焼ガスを排出し、
前記二酸化炭素配管は、前記水素燃焼ガスを前記植物育成空間に導く請求項3に記載の植物育成システム。
【請求項5】
前記改質器は、更に化石燃料を燃焼させる化石燃料燃焼室と、当該化石燃料燃焼室から分離された、前記水素濃度の下がった混合気を燃焼させる水素燃焼室とを有し、
前記二酸化炭素配管は、前記化石燃料燃焼室の排ガスを前記植物育成空間に導かず、前記水素燃焼ガスを前記植物育成空間に導く請求項4に記載の植物育成システム。
【請求項6】
前記改質器によって生成された二酸化炭素を貯蔵する二酸化炭素貯蔵装置と、
前記植物育成空間で消費される二酸化炭素の量が、前記分離装置から供給される二酸化炭素の量に比べて少ない場合に、余剰となる量の二酸化炭素を前記二酸化炭素貯蔵装置に貯蔵し、前記植物育成空間で消費される二酸化炭素の量が、前記分離装置から供給される二酸化炭素の量に比べて多い場合に、不足する量の二酸化炭素を前記二酸化炭素貯蔵装置から前記植物育成空間に供給する制御部と
を更に備える請求項2に記載の植物育成システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記植物育成空間への日射量に応じた量の二酸化炭素を前記植物育成空間に供給する請求項6に記載の植物育成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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