説明

植物内の遺伝子発現のDSRNA介在調節

【課題】改善されたそして商業的に重要な特性を有する植物を得るための、植物細胞内の遺伝子の発現を効率的におよび予測可能に変えることができる方法を提供する。
【解決手段】標的遺伝子のセンスRNAフラグメントおよび該標的遺伝子のアンチセンスRNAフラグメントを植物細胞内に挿入することを含み、該センスRNAフラグメントおよび該アンチセンスRNAフラグメントが二本鎖RNA分子を形成でき、該標的遺伝子の該細胞内での発現が変えられる方法。該植物細胞内の該標的遺伝子の発現がRNAフラグメントにより変えられている、本発明のセンスおよびアンチセンスRNAフラグメントを含む植物細胞、その植物細胞に由来する植物およびその子孫、およびその植物に由来する種子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物内の遺伝子発現を変える、特に、該遺伝子のセンスおよびアンチセンスRNAフラグメントを使用した方法、および本発明の方法を使用して得られた遺伝子発現が変えられた植物に関する。
【背景技術】
【0002】
分子生物学および植物形質転換の方法における開発は、例えば、昆虫および真菌または細菌病原体に対する耐性、除草剤に対する耐性または付加価値性質のような種々の望ましい性質を有するトランスジェニック植物の製造を可能にしている。これらの望ましい性質は、主に植物内のトランスジーンの過剰発現により得られる。しかし、ある場合、特定の遺伝子の発現を変え、商業的利益の望ましい表現型または特性を有する植物を作るように植物を修飾することも望まれる。遺伝子の発現を変えるための現在の方法は、通常センスまたはアンチセンス抑制に基づく。例えば、ペチュニアにおけるカルコン合成遺伝子のセンス抑制は、着色が変えられた花をもたらし、トマトにおけるポリガラクツロニダーゼ遺伝子のアンチセンス抑制は果実成熟の遅延を導く。不運なことに、これらの方法はしばしば、遺伝子発現を変えるその能力に関して可変性であり、予測できず、多くの場合、特定の遺伝子活性の完全な破壊は達成されない。遺伝子発現を変えるための方法は、技術的に試みられている触媒的リボヌクレオチドまたはリボザイムの使用、または、遺伝的に最も望ましいが、このような目的で慣用的に使用される現在利用可能な方法では、残念なことに十分ではない相同性遺伝子破壊を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、改善されたそして商業的に重要な特性を有する植物を得るための、植物細胞内の遺伝子の発現を効率的におよび予測可能に変えることができる新規方法のための、長く待望されているが、充たされていない必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、分子技術および遺伝子形質転換を使用した、改善された特性および性質の植物の製造に関する。特に、本発明は遺伝子のセンスおよびアンチセンスRNAフラグメントを使用した、植物細胞における遺伝子の発現を変える方法に関する。重要なことに、このようなセンスおよびアンチセンスRNAフラグメントは二本鎖RNA分子の形成ができる。本発明はまたこのような方法を使用して得た植物細胞、このような細胞由来の植物、このような植物の子孫およびこのような植物由来の種子に関する。このような植物細胞または植物において、特定の遺伝子発現の変化が、当分野で現在既知の方法を使用して得られる特定の遺伝子の遺伝子発現の変化よりも、より効率的であり、選択的であり、より予測可能である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明は、従って以下のものを提供する:
標的遺伝子のセンスRNAフラグメントおよび該標的遺伝子のアンチセンスRNAフラグメントを植物細胞内に挿入することを含み、該センスRNAフラグメントおよび該アンチセンスRNAフラグメントが二本鎖RNA分子を形成でき、該標的遺伝子の該細胞内での発現が変えられる方法。好ましい態様において、RNAフラグメントは二つの異なるRNA分子に含まれる。他の好ましい態様において、RNAフラグメントは該細胞に挿入する前に混合する。他の好ましい態様において、RNAフラグメントを二本鎖RNA分子を形成させる条件下で、該細胞に挿入前に混合する。他の好ましい態様において、RNAフラグメントを該細胞に連続的に挿入する。さらにまた別の好ましい態様において、RNAフラグメントは一つのRNA分子に含まれる。このような場合、RNA分子は、好ましくは、その中に包含されるRNAフラグメントが二本鎖RNA分子を形成するように折りたたまれることが可能である。
【0006】
本発明は、更に以下のものを提供する:
植物細胞内に、該細胞内で標的遺伝子のセンスRNAフラグメントを発現できる第1DNA配列、および該細胞内で標的遺伝子のアンチセンスRNAフラグメントを発現できる第2DNA配列を挿入することを含み、該センスRNAフラグメントおよび該アンチセンスRNAフラグメントは二本鎖RNA分子を形成でき、該標的遺伝子の該植物細胞内での発現が変更される。好ましい態様において、DNA配列は植物細胞のゲノムに安定に統合される。好ましい態様において、DNA分子は更に該第1または該第2DNA配列に操作可能に結合したプロモーターを含む。他の好ましい態様において、第1DNA配列および第2DNA配列は二つの異なるDNA分子内に包含される。
【0007】
あるいは、第1DNA配列および第2DNA配列が一つのDNA分子内に包含される。この場合、第1DNA配列および第2DNA配列が好ましくは該DNA分子の同じDNA鎖に含まれ、そして、好ましくは、センスRNAフラグメントおよびアンチセンスRNAフラグメントが一つのRNA分子内に包含される。好ましくは、RNA分子は、その中に包含されている該RNAフラグメントが二本鎖領域を形成するように折りたたまれることが可能である。他の好ましい態様において、センスRNAフラグメントおよびアンチセンスRNAフラグメントは二本鎖RNA分子中に含まれ、または二本鎖RNA分子として発現される。この場合、第1DNA配列および第2DNA配列は好ましくは二方向プロモーターに操作可能に結合しているか、または、あるいは、第2DNA配列が第1プロモーターに操作可能に結合し、第2DNA配列が第2プロモーターに操作可能に結合し、第1プロモーターおよび第2プロモーターが同じプロモーターまたは異なるプロモーターである。他の好ましい態様において、第1DNA配列および第2DNA配列は該DNA分子の相補的鎖中に包含される。
【0008】
更に別の好ましい態様において、第2DNA鎖は該DNA分子中の第2DNA配列の相補的DNA鎖である。
この場合、DNA分子は更に該第1DNA配列に操作可能に結合した第1プロモーターを含む。好ましい態様において、DNA分子は更に第1部位特異的組換え部位を該第1プロモーターと該第1DNA配列の間に、および第1部位特異的組換え部位を該DNA配列の3'末端に含み、部位特異的リコンビナーゼの存在下、該第1および第2部位特異的組換え部位は該第1および該第2部位特異的組換え部位の間の該第1DNA配列を逆にすることができ、好ましくは、互いに逆の配向である。植物細胞は、好ましくは、更に、該部位特異的組換え部位を認識することができる部位特異的リコンビナーゼを含む。
【0009】
更に別の好ましい態様において、DNA分子は更に、該第1DNA配列に操作可能に結合した第1プロモーターおよび該第2DNA配列に操作可能に結合した第2第2プロモーターを含み、第1プロモーターおよび第2プロモーターは同じプロモーターを含み、または異なるプロモーターを含む。
【0010】
他の好ましい態様において、標的遺伝子は該植物細胞の天然遺伝子、好ましくは該植物細胞の必須遺伝子である。更に別の好ましい態様において、DNA分子中のプロモーターは該天然標的遺伝子の天然プロモーターを含む。更に好ましい態様において、プロモーターは異種プロモーター、例えば、組織特異的プロモーター、発育調節プロモーター、構造プロモーターまたは誘導性プロモーターである。所望により、プロモーターはプロモーターの各側でDNA配列の転写開始をできる分岐プロモーターである。他の好ましい態様において、遺伝子は、好ましくは該植物細胞のゲノムに安定に統合された、あるいは、染色体外分子として該植物細胞に存在する、該植物細胞中の異種遺伝子である。
【0011】
更に別の好ましい態様において、DNA配列は更に該センスおよびアンチセンスRNAフラグメントをコードするDNA配列の間にリンカーを含む。リンカーは、例えば、機能的遺伝子、例えば、選択可能マーカー遺伝子または調節配列、例えば、イントロン処理シグナルを含む発現カセットを含む。
【0012】
本発明は更にまた以下のものを提供する:
該植物細胞内の該標的遺伝子の発現がRNAフラグメントにより変えられている、本発明のセンスおよびアンチセンスRNAフラグメントを含む植物細胞、その植物細胞に由来する植物およびその子孫、およびその植物に由来する種子。
【0013】
本発明は更にまた以下のものを提供する:
本発明の方法により得る植物細胞。
【0014】
“二本鎖RNA(dsRNA)”分子は、標的遺伝子のセンスRNAフラグメントおよび標的遺伝子のアンチセンスRNAフラグメントを含み、両方とも互いに相補的なヌクレオチド配列を含み、それによりセンスおよびアンチセンスRNAフラグメントが対となり、二本鎖RNA分子を形成することが可能となる。
【0015】
“相補的”なる用語は、逆平行ヌクレオチド配列における相補的塩基対の間の水素結合の形成により、互いに対を形成することが可能となる逆平行ヌクレオチド配列を含む二つのヌクレオチド配列を意味する。
【0016】
“逆平行”なる用語は、本明細書では、一方のヌクレオチド配列では5'−3'方向で、他方のヌクレオチド配列では3'−5'の方向で走るホスホジエステル結合を有する相補的塩基残基の間の水素結合を通して対になる二つのヌクレオチド配列を意味する。
【0017】
“標的遺伝子”は、植物細胞内の任意の遺伝子である。例えば、標的遺伝子は既知の機能の遺伝子または、その機能が未知であるが、その完全なまたは部分的ヌクレオチド配列が既知である遺伝子である。あるいは、標的遺伝子の機能およびそのヌクレオチド配列は両方とも未知である。標的遺伝子は植物細胞の天然遺伝子または予め植物細胞内または該植物細胞の親細胞に、例えば、遺伝子形質転換により挿入されている異種遺伝子である。異種標的遺伝子は植物細胞のゲノムに安定に統合されているか、または植物細胞に染色体外分子として、例えば、自己複製染色体外分子として存在する。
【0018】
“天然”遺伝子なる用語は、非形質転換植物細胞のゲノムに存在する遺伝子を意味する。
【0019】
“必須”遺伝子は、例えば、植物の生育または製造に必須である生合成酵素、レセプター、シグナル伝達タンパク質、構造遺伝子生産物、または輸送タンパク質のようなタンパク質をコードする遺伝子である。
【0020】
植物細胞内の標的遺伝子の発現を“変える”のは、本発明の方法を適用した後の植物細胞における標的遺伝子の発現のレベルが、その方法の適用前の細胞における発現と異なることを意味する。遺伝子発現を変えるのは、好ましくは、植物細胞内の標的遺伝子の発現が減少する、好ましくは強く減少する、より好ましくは遺伝子の発現が検出されないことを意味する。必須遺伝子の発現の変更は、植物細胞またはそれ由来の植物内のノックアウト変異表現型をもたらし得る。
【0021】
“単離”は、本発明の内容において、人間の手により、天然環境から離れて存在し、従って天然の生産物ではない単離核酸分子を意味する。単離核酸分子は、精製形で存在し得、または、例えば、トランスジェニック宿主細胞のような非天然環境で存在し得る。
【0022】
本明細書で使用する“発現カセット”は、適当な宿主細胞内で特定のヌクレオチド配列の発現を指向できるDNA配列を意味し、停止シグナルに操作可能に結合した目的のヌクレオチド配列に操作可能に結合したプロモーターを含む。典型的に、ヌクレオチド配列の適当な翻訳に必要な配列も含む。コード領域は、通常目的のタンパク質をコードするが、また目的の機能的RNA、例えば、センスまたはアンチセンス方向でコードするアンチセンスRNAまたは非翻訳RNAをコードし得る。目的のヌクレオチド配列を含む発現カセットはキメラであり得、少なくともその一つのコンポーネントが、少なくとも一つの他のコンポーネントに関して異種であることを意味する。発現カセットは、天然に存在するが、異種発現に有用な組換え形で得られるものであり得る。しかし、典型的に、発現カセットは宿主に関して異種であり、即ち、発現カセットの特定のDNA配列は宿主細胞に天然で存在せず、宿主細胞または宿主細胞の先祖に、形質転換により挿入されなければならない。発現カセット中のヌクレオチド配列の発現は、構造的プロモーターまたは、宿主細胞がある特定の外部刺激に曝された時にのみ転写を開始する誘導性プロモーターの制御下にあり得る。植物のような多細胞性生物において、プロモーターはまた特定の組織または器官または発育段階に特定であり得る。
【0023】
本明細書で使用する“異種”なる用語は、“異なる天然起源”を意味し、または非天然状態を示す。例えば、宿主細胞が他の生物、特に他の種由来の核酸配列で形質転換された場合、核酸配列は宿主細胞に関して、また核酸配列を担持する宿主細胞の子孫に関しても異種である。同様に、異種は、同じ天然、原細胞タイプに由来し、挿入されるが、天然状態では存在しない、例えば、異なるコピー数、または異なる調節要素の制御下にあるものを意味する。
【0024】
最も広い意味において、“実質的に同様”なる用語は、ヌクレオチド配列に関して使用するとき、例えば、一つのアミノ酸の変化が発生するポリペプチド機能に影響しない場合、対応する配列が、対照ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドと実質的に同じ構造および機能を有するポリペプチドをコードするものである、対照ヌクレオチド配列に対応するヌクレオチド配列を意味する。望ましくは、実質的に同様のヌクレオチド配列は対照ヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドをコードする。実質的に同様のヌクレオチド配列と対照ヌクレオチド配列の間の同一性の割合は(相補的配列の塩基の総数で割った相補的配列における相補的塩基の数)、望ましくは少なくとも80%、より望ましくは85%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、より更に好ましくは少なくとも99%である。
【0025】
“調節要素”は、ヌクレオチド配列の発現の寄与に関する配列を意味する。調節要素は、目的のヌクレオチド配列に制御可能に結合したプロモーターおよび停止シグナルを含む。それらはまた典型的にヌクレオチド配列の適当な翻訳に必要な配列を包含する。
【0026】
“植物”なる用語は、任意の発育段階の植物または植物の部分を意味する。その中には切り枝、細胞または組織培養および種子も含む。本発明と関連して使用する限り、“植物組織”なる用語は、全植物、植物細胞、植物器官、植物種子、プロトプラスト、カルス、培養物、および構造および/または機能的単位に組織化された植物細胞のグループを含むが、これらに限定されない。
【0027】
本発明は、植物細胞内の遺伝子発現の調節法に関する。植物細胞内の遺伝子の発現を調節するために一般に利用可能な方法は予測性に欠け、どの遺伝子を調節するかに依存して可変性を示す。本方法はこれらの問題を解決し、植物細胞における再現性があり、有効な遺伝子の調節のために提供される。
【0028】
本発明は、植物細胞内の遺伝子の発現を変えるために、標的遺伝子のセンスRNAフラグメントおよびアンチセンスRNAフラグメントを利用する。第1の態様において、本発明は、植物細胞内への標的遺伝子のセンスRNAフラグメントおよび該標的細胞のアンチセンスRNAフラグメントの挿入を含み、該センスRNAフラグメントおよび該アンチセンスRNAフラグメントが二本鎖RNA分子の形成をでき、該標的遺伝子の該細胞内での発現が変えられる、植物細胞内の標的遺伝子の発現を変えるための方法を提供する。好ましい態様において、RNAフラグメントは植物細胞に異なる形質転換法により挿入される。例えば、同時継続出願08/717,676号に記載のように、RNAフラグメントは粒子衝撃を使用して宿主細胞に移入される。他の好ましい態様において、RNAフラグメントがプロトプラストまたは他のタイプの細胞に、Lebel et al. (1995) Theor. Appl. Genet. 91:899-906に記載のようなPEG−介在形質転換により、またはエレクトロポレーションにより挿入する。他の好ましい態様において、RNAフラグメントのマイクロインジェクションのような他の技術を使用する。
【0029】
他の好ましい態様において、RNAフラグメントは二つの異なるRNA分子に包含される。この場合、RNAフラグメントを該細胞に挿入前に、例えば、二本鎖RNA分子を形成させる条件下で混合する。他の好ましい態様において、RNAフラグメントを該細胞に連続して挿入する。好ましくは、RNA分子の各々の挿入の間の間隔は短く、好ましくは1時間より短い。更に別の態様において、RNAフラグメントは一つのRNA分子に包含される。一つのRNA分子の使用により、二つの相補的RNAブラグメントが、対形成および二本鎖形成に好都合であるように密接して近い。この場合、RNA分子は、好ましくはその中に含まれる該RNAフラグメントが二本鎖領域の形であるように折りたたまれることが可能である。この場合、RNAフラグメントの相補的部分は互いに認識し、互いに対を形成し、二本鎖RNA分子を形成する。好ましい態様において、RNAフラグメントを、細胞挿入前に二本鎖RNA分子を形成させる条件下でインキュベートする。更に別の態様において、RNA分子はセンスRNAフラグメントとアンチセンスRNAフラグメントの間にリンカーを含む。リンカーは、好ましくは機能的遺伝子、例えば、選択可能マーカー遺伝子を含む発現カセットによりコードされるRNA配列を含む。他の態様において、リンカーは調節配列によりコードされるRNA配列を含み、それは、例えば、イントロン処理シグナルを含む。
【0030】
更に好ましい態様において、本発明は、植物細胞内に、該細胞内で標的遺伝子のセンスRNAフラグメントを発現できる第1DNA配列および該細胞内で該標的遺伝子のアンチセンスRNAフラグメントを発現できる第2DNA配列を挿入することを含み、該センスRNAフラグメントおよび該アンチセンスRNAフラグメントは二本鎖RNA分子を形成でき、該細胞内の該標的遺伝子の発現が変えられる、方法を提供する。好ましい態様において、第1DNA配列および第2DNA配列は、植物細胞のゲノム内に安定に統合される。他の好ましい態様において、第1DNA配列および第2DNA配列は、植物細胞内に、染色体外分子上、例えば、自己複製分子上に存在する。あるいは、第1DNA配列は、植物細胞のゲノム内に安定に統合され、第2DNA配列は植物細胞内に染色体外分子上に存在する。
【0031】
他の好ましい態様において、DNA配列は二つの異なるDNA分子に含まれる。この場合、第1DNA配列は第1プロモーターに操作可能に結合し、第2DNA配列は第2プロモーターに操作可能に結合する。
【0032】
他の好ましい態様において、DNA配列は一つのDNA分子に包含される。好ましくは、第1および第2DNA配列はDNA分子の同じDNA鎖内に包含され、好ましくは、センスRNAフラグメントおよびアンチセンスRNAフラグメントが、DNA分子によりコードされる一つのRNA分子内に含まれ、またはそれとして発現される。この場合、DNA分子は更に第1または第2DNA配列に操作可能に結合したプロモーターを含み、プロモーターは第1および第2DNA配列を転写できる。プロモーターは、好ましくはアンチセンスフラグメントをコードするDNA配列に操作可能に結合し、これはそれ自体センスフラグメントをコードするDNA配列に結合する。あるいは、プロモーターはセンスフラグメントをコードするDNA配列に操作可能に結合し、これはそれ自体アンチセンスフラグメントをコードするDNA配列に結合する。一つのRNA分子の使用により、二つの相補的RNAフラグメントは、二本鎖形成に好都合であるように密接して近い。
【0033】
あるいは、DNA配列が同じDNA鎖に包含される場合、二つの別のRNA分子を作り、例えば、一つのRNA分子はセンスRNAフラグメントを含み、一つのRNA分子はアンチセンスRNAフラグメントを含む。この場合、DNA分子は好ましくは更にRNAフラグメントの発現をできる調節要素を含む。好ましい態様において、このような調節要素は分岐、2方向プロモーターを含み、これはセンスRNAフラグメントをコードするDNA配列とアンチセンスRNAフラグメントをコードするDNA配列の間に位置する。他の好ましい態様において、同じプロモーターまたは、あるいは、別のプロモーターを含む二つの別のプロモーターを二つのDNA配列の間に置く。更に他の好ましい態様において、DNA分子は第1DNA配列に操作可能に結合した第1プロモーターおよび第2DNA分子に操作可能に結合した第2プロモーターを含み、DNA配列が二つのプロモーターの間に置かれ、二つのプロモーターは逆方向での転写の指示ができる。更に別の態様において、DNA配列は更に、該二つの相補的RNAフラグメントをコードするDNA配列の間にリンカーを含む。リンカーは、好ましくは、機能的遺伝子、例えば、選択可能マーカー遺伝子を含む発現カセットを含む。他の態様において、リンカーは、例えば、イントロン処理シグナルを含む調節配列を含む。
【0034】
更に別の好ましい態様において、第1および第2DNA配列はDNA分子の相補的DNA鎖中に含まれる。より好ましくは、第1DNA配列がDNA分子中の第2DNA配列の相補鎖である。例えば、この場合、第1DNA配列は標的遺伝子のコード鎖に対応し、センスRNAフラグメントの発現ができ、第2DNA配列は標的遺伝子の相補的非コード鎖に対応し、アンチセンスRNAフラグメントの発現ができる。このように、この場合、二つの異なるRNA分子が好ましく産生される。したがって、ここでは、DNA分子は第1DNA配列の5'末端に操作可能に結合し、第1DNA配列の発現ができる第1プロモーター、および、第1DNA配列の3'末端に結合し、第1DNA配列の相補鎖である第2DNA配列の発現ができる第2プロモーターを含む。好ましい態様において、二つの異なるプロモーターを使用し、あるいは、同じプロモーターを使用し、二つのDNA配列を発現する。他の好ましい態様において、DNA分子は更にプロモーターの遠位に転写ターミネーターを含む。好ましくは、この場合、転写は一つのプロモーターの3'末端で開始し、一つの方向でDNA配列を通って処理され、第2プロモーターを通って3'末端から5'末端に処理され、第2プロモーターの5'末端の転写ターミネーターで停止する。転写ターミネーターの使用はRNA転写の安定に働き得る。
【0035】
更に別の好ましい態様において、DNA分子は更に該第1DNA配列に操作可能に結合したプロモーターを含み、更に、該プロモーターと該第1DNA配列の間に第1部位特異的組換え部位および該DNA配列の3'末端に第2部位特異的組換え部位を含み、該第1および第2部位特異的組換え部位は該第1DNA配列を該第1および該第2組換え部位の間で、部位特異的認識部位の認識ができる部位特異的リコンビナーゼの存在下で逆転できる。リコンビナーゼ非存在下で、第1DNA配列によりコードされるセンスRNAフラグメントのみが産生できる。対応するリコンビナーゼ存在下で、部位特異的組換え部位の間の対応DNA配列は逆転され、第2DNA配列はプロモーターに操作可能に結合し、アンチセンスフラグメントが発現されるようになる。リコンビナーゼの連続した存在下で、更なるDNA配列の逆転が起こり、センスおよびアンチセンスRNAフラグメントの両方が蓄積される。本発明は、従って、また更に、該部位特異的組換え部位の認識ができる部位特異的リコンビナーゼを含む。本発明のこの態様は、実施例5に更に記載する。
【0036】
本発明のDNA分子において、DNA配列は好ましくはプロモーターに操作可能に結合する。好ましい態様において、DNA分子内のプロモーターは、標的遺伝子が発現されるように、二本鎖RNAが同じ組織内に、発育の同時期に存在することを確実とするために、不活性にする該天然標的遺伝子の天然プロモーターを含む。他の態様において、プロモーターは異種プロモーター、例えば、組織特異的プロモーター、発育調節プロモーター、構造プロモーター、分岐プロモーターまたは誘導性プロモーターである。他の好ましい態様において、遺伝子は該植物細胞に異種遺伝子である。停止シグナルはまた、DNA分子に所望により挿入される。
【0037】
単一RNA分子または二つの別のRNA分子は、好ましくは二本鎖領域を形成でき、RNAフラグメントの相補的部分が互いに認識し、互いに対を形成し、二本鎖RNA分子を形成する。本発明のDNA分子は、当分野で既知のまたは下記の方法を使用して植物細胞内に形質転換する。例えば、微粒子銃、マイクロインジェクションまたはAgrobacterium介在形質転換を使用する。また、エレクトロポレーションまたは化学処理(例えば、PEG処理)を使用した本発明のDNA分子でのプロトプラストの形質転換を使用する。
【0038】
あるいは、本発明のDNA分子またはRNAフラグメントを植物細胞内に、いわゆるアグロインフェクションを介して挿入するために、ウイルスベクターを使用する。他の好ましい態様において、本発明のDNAまたはRNAフラグメントは、植物細胞内に、真空浸潤により、または葉表面の摩擦により挿入する。
【0039】
本方法は、該植物細胞内の該標的遺伝子の発現が該RNAフラグメントにより変えられた、本発明のセンスおよびアンチセンスRNAフラグメントを含む植物細胞、植物細胞由来の植物および子孫、およびその植物由来の種子をもたらし得る。
【0040】
本発明において、センスおよびアンチセンスRNAフラグメントの間の相補的領域の長さは、望ましくは少なくとも15ヌクレオチド長、より望ましくは少なくとも50ヌクレオチド長、好ましくは少なくとも500bp長である。好ましくは相補的領域は5kbより小さく、より好ましくは2kbより小さい。所望により、センスおよびアンチセンスRNAフラグメントの間の相補的領域は、標的遺伝子のコード領域を含む。他の好ましい態様において、相補的領域は標的遺伝子の非翻訳領域(UTR)、例えば、5'UTRまたは3'UTRを含む。他の好ましい態様において、本発明のセンスまたはアンチセンスRNAフラグメントをコードするDNA配列はc−DNA分子由来である。他の態様において、プロモーターまたは停止シグナルのような、発現が変えられる標的遺伝子の調節要素を含む。
【0041】
他の好ましい態様において、センスおよびアンチセンスRNAフラグメントの間の相補的領域は、発現を変える遺伝子の対応する配列と同一である。他の好ましい態様において、センスおよびアンチセンスRNAフラグメントの間の相補的領域は、発現を変え、まだ遺伝子の発現の変更が可能である遺伝子の対応する配列と実質的に同様である。この場合、相補的領域は発現を変える遺伝子の対応する配列と望ましくは少なくとも50%同一であり、より望ましくは少なくとも70%同一であり、好ましくは少なくとも90%同一であり、より好ましくは少なくとも95%同一である。それにより、一つの二本鎖RNA分子の使用は一つの遺伝子または複数の遺伝子の発現の変更が可能であり、一つの遺伝子は二本鎖RNAと同一の配列を含むか、二本鎖RNAと実質的に同様である。
【0042】
他の好ましい態様において、センスおよびアンチセンスRNAフラグメントお間の相補的領域は、センスおよびアンチセンスフラグメントの間にミスマッチを含まない。他の好ましい態様において、センスおよびアンチセンスRNAフラグメントの間の相補的領域は、少なくとも一つのミスマッチをセンスおよびアンチセンスRNAフラグメントの間に含み、二つのRNAフラグメントはまだ対形成し、二本鎖RNA分子を形成でき、それにより遺伝子の発現が変えられる。相補的領域のセンスおよびアンチセンスRNAフラグメントの間に、望ましくは50%より少ないミスマッチ、より望ましくは30%より少ないミスマッチ、好ましくは20%より少ないミスマッチ、より好ましくは10%より少ないミスマッチ、より更に望ましくは5%より少ないミスマッチが存在する。
【0043】
本発明の方法は、例えば、植物細胞の代謝経路、植物の疾病に対する耐性または感受性または細胞分化に関する遺伝子の発現の変更に使用する。このような変化は、特定の代謝経路の修飾、疾病に対する耐性または細胞分化の変化のような商業的に重要な改善された性質の植物をもたらす。標的遺伝子の他の例は、本明細書に引用して包含させる、米国特許第5,107,065号および第5,034,323号に記載される。本発明の方法はまたその機能を解明するための遺伝子の発現の変更に使用できる。この場合、例えば、遺伝子のセンスおよびアンチセンスRNAを発現することができるDNA配列を、当分野で既知のまたは下記の形質転換法により植物細胞内に挿入する。DNA配列は、例えば、植物細胞のゲノム内に安定に統合される。次いで、植物細胞を、例えば、表現型または代謝変化に関して試験する。あるいは、植物を植物細胞から再生させ、植物またはその子孫を、例えば、表現型または代謝変化に関して試験する。例えば、必須遺伝子をこのような方法を使用し、形質転換植物を、例えば、胚芽致死、苗木致死または他の関連した表現型に関してスクリーニングして発見する。次いで、遺伝子の機能の知識を使用して、遺伝子形質転換により改善された特性の作物を産生し、または新規化学物質のスクリーニングをする。特に、必須遺伝子は除草剤化合物の標的として良い候補物である。必須遺伝子配列は、例えば、植物で過発現され、遺伝子によりコードされる天然に存在する遺伝子の機能を阻害する除草化合物に対する植物の耐性を付与する。必須遺伝子の変異した変異体はまた除草化合物または関連化合物に対する耐性のために製造され、スクリーニングされる。このような変異した変異体は当分野で既知の種々の方法で製造する。必須遺伝子によりコードされる酵素はまたその機能を阻害する化合物のためのスクリーニング、例えば、インビトロ高処理スクリーニングに使用する。阻害化合物を、次いで、除草活性に関して試験する。
【0044】
本発明の方法はまたそのヌクレオチド配列の予めの知識なしに、遺伝子の発現を無作為に変えるために使用する。この場合、対になり二本鎖RNA分子を形成できる無作為RNAフラグメントのライブラリー、または、対になり二本鎖RNA分子を形成することができるRNAフラグメントをコードする無作為DNA配列のライブラリーを産生し、当分野で既知のまたは下記の方法を使用して植物細胞に挿入する。形質転換植物細胞または植物を特定の特性または表現型に関してスクリーニングする。例えば、上記のような必須遺伝子を、このようなスクリーニングを使用して発見する。スクリーニングの他の例は、高塩濃度または浸透圧、高温、毒性または有害物質、例えば、除草化合物の存在のような種々の条件下で、制約されない生育、または非形質転換細胞よりも制約されていない生育に関する。このようなスクリーニング後、二本鎖RNAまたは二本鎖RNAをコードするDNA分子を回収し、相補的RNAフラグメントの配列を決定し、このように、発現の変更が特定の特性または表現型をもたらす遺伝子を単離する。このような遺伝子を、次いで、例えば、遺伝子形質転換により作物改善にまたは新規化学物質のスクリーニングに使用する。
【0045】
植物形質転換法
本発明のDNA分子を、慣用の組換えDNA法を使用して植物または細菌細胞に挿入する。一般に、本発明のDNA分子を形質転換ベクターに包含させる。プラスミド、バクテリオファージウイルスおよび他の修飾ウイルスのような、当分野で既知である多数のこのようなベクター系が使用されている。発現系の成分をまた修飾し、例えば、センスおよびアンチセンスRNAフラグメントの発現を増加させる。例えば、切断配列、ヌクレオチド置換または他の修飾を使用する。当分野で既知の発現系を使用して適当な条件下の事実上任意の植物細胞を形質転換する。本発明のDNA分子を含むトランスジーンを好ましくは安定に形質転換し、宿主細胞のゲノムに統合させる。他の好ましい態様において、本発明のDNA分子を含むトランスジーンを自己複製ベクター上に位置させる。自己複製ベクターの例はウイルス、特にジェミニウイルスである。形質転換細胞を好ましくは全植物に再生する。本発明に従って形質転換する植物は、単子葉植物および双子葉植物であり得、メイズ、小麦、大麦、ライ麦、甘藷、インゲンマメ、エンドウマメ、チコリ、レタス、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリー、カブラ、ラディッシュ、ホウレンソウ、アスパラガス、タマネギ、ニンニク、コショウ、セロリ、スカッシュ、パンプキン、アサ、ズッキーニ、リンゴ、ナシ、マルメロ、メロン、プラム、サクランボ、モモ、ネクタリン、アプリコット、イチゴ、ブドウ、ラズベリー、ブラックベリー、パイナップル、アボガド、パパイヤ、マンゴー、バナナ、ダイズ、トマト、ソルガム、サトウキビ、サトウダイコン、ヒマワリ、ナタネ、クローバー、タバコ、ニンジン、ワタ、アルファルファ、コメ、ジャガイモ、ナス、キュウリ、アラビドプシス、および針葉樹および落葉樹のような樹木植物を含むが、これらに限定されない。望むヌクレオチド配列が特定の植物種に形質転換されたら、伝統的育種法を使用して、その種中で増殖させ得るか、または、特に商業品種を含む同じ種の他の変種に移動し得る。
【0046】
A.植物発現カセットの構築の条件
トランスジェニック植物中での発現を意図する遺伝子配列を、最初に植物内で発現可能な適当なプロモーターの後ろに、発現カセットに集める。発現カセットはまた更にトランスジーンの発現に必要なまたは選ばれた更なる配列を含み得る。このような配列は、例えば、転写ターミネーター、イントロンのような発現を促進するための外来配列、核心配列(vital sequences)、および遺伝子産物の特異的細胞小器官および細胞区画への標的を意図した配列を含むが、これらに限定されない。これらの発現カセットを、次いで、植物形質転換ベクターに下記のように容易に移入する。以下は典型的発現カセットの種々の成分の記載である。
【0047】
1.プロモーター
発現カセットに使用するプロモーターの選択は、トランスジェニック植物中のトランスジーンの空間的および時間的発現パターンを決める。選択したプロモーターは、トランスジーンを特異的細胞タイプ(葉表皮細胞、葉肉細胞、根皮層細胞など)または特異的組織または器官(例えば、根、葉または花)で発現させ、選択は遺伝子産物の蓄積の望ましい位置を反映する。あるいは、選択したプロモーターは、種々の誘導条件下で遺伝子の発現を駆動する。プロモーターは強度、即ち、転写を促進する能力を変える。使用する宿主系に依存して、当分野で既知の多くの適当なプロモーターの任意の一つを使用する。例えば、構造的発現のために、CaMV 35Sプロモーター、コメアクチンプロモーター、またはユビキチンプロモーターを使用する。例えば、調節可能発現のために、タバコまたはアラビドプシス由来の化学誘導性PR−1プロモーターを使用する(例えば、米国特許第5,689,044号参照)。
【0048】
プロモーターの好ましいカテゴリーは、傷誘導性であるものである。多くのプロモーターが、傷部位で発現されると記載されている。この種の好ましいプロモーターは、Stanford et al. Mol. Gen. Genet. 215:200-208 (1989), Xu et al. Plant Molec. Biol. 22:573-588 (1993), Logemann et al. Plant Cell 1:151-158 (1989), Rohrmeier & Lehle, Plant Molec. Biol. 22:783-792 (1993), Firek et al. Plant Molec. Biol. 22:129-142 (1993)およびWarner et al. Plant J. 3:191-201 (1993)に記載のものを含む。
【0049】
好ましい組織特異的発現パターンは緑色組織特異的、根特異的、幹特異的および花特異的を含む。緑色組織での発現に適したプロモーターは、光合成に関与する遺伝子を調節する多くのものを含み、こららの多くは単子葉植物および双子葉植物の両方からクローン化されている。好ましいプロモーターはホスホエノールカルボキシラーゼ遺伝子由来のメイズPEPCプロモーターである(Hudspeth & Grula, Plant Molec. Biol. 12:579-589 (1989))。根特異的発現に好ましいプロモーターは、de Framond(FEBS 290:103-106 (1991) ; EP 0452 269)により記載のもの、および更に好ましい根特異的プロモーターは、本発明により提供されるT−1遺伝子由来のものである。好ましい幹特異的プロモーターは米国特許第5,625,136号に記載のものおよびメイズtrpA遺伝子の発現を駆動するものである。
【0050】
本発明の好ましい態様は、根特異的形態でヌクレオチド配列を発現するトランスジェニック植物である。更に好ましい態様は、傷誘導性または病原体感染誘導性様式でヌクレオチド配列を発現するトランスジェニック植物である。
【0051】
2.転写ターミネーター
種々の転写ターミネーターが発現カセットでの使用に利用可能である。これらはトランスジーンを超えた転写の停止およびその正確なポリアデニル化を担う。適当な転写ターミネーターは、植物中で機能することが既知のものであり、CaMV 35Sターミネーター、tmlターミネーター、ノパリンシンターゼターミネーターおよびエンドウマメrbcS E9ターミネーターを含む。これらは単子葉植物および双子葉植物の両方で使用する。
【0052】
3.発現の促進または調節のための配列
多くの配列が、転写単位内からの遺伝子発現を促進し、トランスジェニック植物内のその発現を増加するために、本発明の遺伝子と組合わせて使用できることが判明している。例えば、メイズAdhI遺伝子のイントロンのような種々のイントロン配列が、特に単子葉植物細胞内で発現を促進することが示されている。加えて、ウイルス由来の多くの非翻訳リーダー配列がまた発現を促進することが既知であり、これらは双子葉植物細胞で特に有用である。
【0053】
4.コード配列最適化
選択した遺伝子のコード配列は、目的の作物種での最適発現のためにコード配列を変えることにより、遺伝子操作し得る。特定の作物種における最適発現を達成するためのコード配列の修飾法は、既知である(例えば、Perlak et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:3324 (1991);およびKoziel et al., Bio/technol. 11:194 (1993))。
【0054】
他の好ましい態様において、本発明のDNA分子を直接プラスチドゲノムに形質転換する。プラスチド形質転換法は、米国特許第5,451,513号および第5,545,818号、PCT出願番号WO95/16783およびMcBride et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 7301-7305に詳述されている。葉緑体形質転換の方法は、選択可能マーカーにフランキングなクローン化プラスチドDNAの領域に、適当な標的組織への目的の遺伝子と一緒の、例えば、バイオリスティクス(biolistics)またはプロトプラスト形質転換(例えば、塩化カルシウムまたはPEG介在形質転換)を使用した挿入を含む。1から1.5kbフランキング領域、期間標的配列はプラスチドゲノムとの相同組換えを促進し、従ってプラストーム(plastome)の特異的領域の置換または修飾を可能にする。最初に、スペクチノマイシンおよび/またはストレプトマイシンに対する耐性を付与する葉緑体16S rRNAおよびrps12遺伝子における点変異を形質転換の選択可能マーカーとして使用する(Svab, Z., Hajdukiewicz, P., and Maliga, P. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87, 8526-8530; Staub, J. M. and Maliga, P. (1992) Plant Cell 4, 39-45)。これらのマーカーの間のクローニング部位の存在は、外来DNA分子の挿入のためのプラスチド標的ベクターの製造を可能にする(Staub, J.M., and Maliga, P. (1993) EMBO J. 12, 601-606)。形質転換頻度の実質的な増加は、劣性形質rRNAまたはr−タンパク質抗生物質耐性遺伝子の優勢選択可能マーカーであるスペクチノマイシン無毒化酵素アミノグリコシド−3'−アデニルトランスフェラーゼをコードする細菌aadA遺伝子での置換により得られる(Svab, Z., and Maliga, P. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90, 913-917)。先に、このマーカーは緑藻Chlamydomonas reinhardtiiのプラスチドゲノムの高頻度形質転換の十分使用されている(Goldschmidt-Clermont, M. (1991) Nucl. Acids Res. 19:4083-4089)。プラスチド形質転換に有用な他の選択可能マーカーは、当分野で既知であり、本発明の範囲内に包含される。
【0055】
遺伝子が相同組換えにより環状プラスチドゲノムの数千のコピー内に挿入されるプラスチド発現が、各植物細胞に存在する。好ましい態様において、本発明のDNAはプラスチド標的ベクターに挿入し、望ましい植物宿主のプラスチドゲノムに形質転換する。本発明のDNA分子を含むプラスチドゲノムにホモプラスミック(homoplasmic)な植物が得られ、DNA分子の高発現が優先的に可能である。好ましくは、DNA分子によりコードされるセンスおよびアンチセンスRNAフラグメントは、植物プラスチド内で対形成でき、二本鎖RNA分子を形成でき、プラスチド遺伝子の発現を変える。好ましい態様において、センスおよびアンチセンスフラグメントは相補的領域にミスマッチを含まない。他の好ましい態様において、センスおよびアンチセンスフラグメントは少なくとも一つのミスマッチを相補的領域に含む。この場合、RNAフラグメントをコードするDNA分子中のRNA配列は互いに組換えできない。
【0056】
B.植物形質転換ベクターの構築
植物形質転換に利用可能な多くの形質転換ベクターが植物形質転換分野の技術者に既知であり、本発明に適当な遺伝子は任意のこのようなベクターと関連して使用できる。ベクターの選択は好ましい形質転換法および形質転換の標的種に依存する。ある標的種に関しては、種々の抗生物質または除草剤選択マーカーが好ましい。形質転換で慣用的に使用される選択マーカーは、カナマイシンおよび関連抗生物質に耐性を付与するnptII遺伝子(Messing & Vierra. Gene 19:259-268 (1982); Bevan et al., Nature 304:184-187 (1983))、除草剤ホスホイノスリシンに耐性を付与するbar遺伝子(White et all., Nucl. Acids Res 18: 1062 (1990), Spencer et al. Theor. Appl. Genet 79:625-631 (1990))、抗生物質ヒグロマイシンに耐性を付与するhph遺伝子(Blochinger & Diggelmann, Mol Cell Biol 4:2929-2931)、マンノース存在下での陽性選択を可能にするmamA遺伝子(Miles and Guest (1984) Gene, 32:41-48; 米国特許第5,767,378号)およびメトトレキサートに耐性を付与するdhfr遺伝子(Bourouis et al., EMBO J. 2(7): 1099-1104 (1983))、およびグリフォサートに耐性を付与するEPSPS遺伝子(米国特許第4,949,935号および第5,188,642号)を含む。
【0057】
1.Agrobacterium形質転換に適したベクター
多くのベクターがAgrobacterium tumefaciensを使用した形質転換に利用可能である。これらは典型的に少なくとも一つのT−DNAボーダー配列を担持し、pBIN19のようなベクターを含む(Bevan, Nucl. Acids Res. (1984))。Agrobacterium形質転換に適した典型的なベクターはバイナリーベクターpCIB200およびpCIB2001、ならびにバイナリーベクターpCIB10およびそのヒグロマイシン選択誘導体を含む(例えば、米国特許第5,639,949号参照)。
【0058】
2.非Agrobacterium形質転換に適したベクター
Agrobacterium tumefaciensの使用なしの形質転換は、選択形質転換ベクターにおけるT−DNA配列に関する条件を回避し、結果として、これらの配列を欠くベクターがT−DNA配列を含む上記のようなベクターに加えて利用される。Agrobacteriumに頼らない形質転換法は、微粒子銃、プロトプラスト取り込み(例えば、PEGおよびエレクトロポレーション)およびマイクロインジェクションを含む。ベクターの選択は、形質転換する種の好ましい選択に大きく依存する。非Agrobacterium形質転換に適した典型的ベクターは、pCIB3064、pSOG19およびpSOG35を含む(例えば、米国特許第5,639,949号参照)。
【0059】
C.形質転換法
目的のDNA配列が発現系にクローン化されたら、それを植物細胞内に形質転換する。植物の形質転換および再生法は当分野で既知である。例えば、Tiプラスミドベクターを外来DNAの輸送、および直接DNA取りこみ、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクションおよび微粒子銃に利用する。加えて、Agrobacterium属由来の細菌を利用して植物細胞を形質転換できる。
【0060】
双子葉植物の形質転換法は当分野で既知であり、Agrobacterium−ベースの方法およびAgrobacteriumを必要としない方法を含む。非Agrobacterium法はプロトプラストまたは細胞による外来遺伝物質の直接の取り込みを含む。これはPEGまたはエレクトロポレーション介在取り込み、微粒子銃介在送達、またはマイクロインジェクションにより達成される。いずれの場合も、形質転換細胞は、当分野で既知の標準法を使用して全植物に再生される。殆どの単子葉植物種の形質転換は現在また日常の仕事になっている。好ましい方法は、PEGまたはエレクトロポレーション法を使用したプロトプラストへの直接遺伝子移入、カルス組織への微粒子銃、ならびにAgrobacterium介在形質転換を含む
【0061】
形質転換事象由来の植物を、当分野で既知の方法を使用して生育させ、繁殖させ、望ましい性質の子孫を作り、望ましい性質の種子を得る。
【0062】
本発明を更に以下の詳細な実施例を参照して説明する。これらの実施例は説明の目的でのみ提供し、特記しない限り限定するものと意図しない。
【実施例】
【0063】
本明細書で使用する標準組換えDNAおよび分子クローニング法は当分野で既知であり、Sambrook, et al., Molecular Cloning, 編, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY(1989)およびT.J. Silhavy, M.L. Berman and L.W. Enquist, Experiments with Gene Fusions, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY(1984)およびAusubel, F.M. et al., Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley-Interscience (1987)出版により記載されている。
【0064】
実施例1:ルシフェラーゼ遺伝子の発現の調節
センスおよびアンチセンスルシフェラーゼRNAフラグメントをコードするキメラDNA分子の構築(センス/アンチセンス構築)
プラスミドpLuc+(Promega)由来のホタルルシフェラーゼ遺伝子の738bp“センス”配向フラグメントを、オリゴヌクレオチドプライマーds LuC1(5'-CGC GGA TCC TGG AAG ACG CCA AAA ACA-3'、配列番号1;BamHI制限部位下線)およびds Luc2(5'-CGG AAG CTT AGG CTC GCC TAA TCG CAG TAT CCG GAA TG-3'、配列番号2;HindIII制限部位下線)を使用して、pPH108プラスミドDNAから増幅する。TrboPfu熱安定制DNAポリメラーゼ(Stratagene)を、製造者のプロトコールに従って、50μl反応物中、95℃/1分、55℃/1.5分、72℃/2分の5サイクル、続いて95℃/1分、72℃/3.5分の25サイクルで使用する。同様の方法で、プラスミドpLuc+由来のホタルルシフェラーゼ遺伝子の737bp“アンチセンス”配向フラグメントを、オリゴヌクレオチドプライマーds Luc3(5'-CGG TCT AGA GGA AGA CGC CAA AAA CAT A-3'、配列番号3;XbaI制限部位下線)およびds Luc2(5'-CGG AAG CTT AGG CTC GCC TAA TCG CAG TAT CCG GAA TG-3'、配列番号4;HindIII制限部位下線)を使用して、pPH108プラスミドDNAから増幅する。得られるDNAフラグメントを、低融点アガロース(FMC)から製造した1%トリス−酢酸ゲルを通した電気泳動、続くPCR産物を含む摘出ゲル切片のフェノール−クロロホルム抽出により精製する。センス生産物(ds LuC1/2)をBamHIおよびHindIIIで消化し、アンチセンス生産物由来のDNA(ds Luc3/2)をXbaIおよびHindIIIで標準法に従って消化する(制限酵素はNew England Biolabsから得た)。得られる粘着末端DNAフラグメントを上記のようにゲル精製する。mas 1'プロモーター(Valten et al. (1984) EMBO J. 3:2723-2730)を含むDNAフラグメントを、プラスミドCSA104をEcoRIおよびHincIIで消化し、564bp DNAフラグメントを精製することにより得る。このフラグメントをBamHIで再消化し、mas 1'プロモーターを含む484bp EcoRI−BamHIサブフラグメントを単離し、ゲル精製する。プラスミドpPH169を構築するために、クローニングベクターpLitmus29(New England Biolabs)からのDNAをEcoRIおよびXbaIで消化し、単離フラグメントをT4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を使用して、4方向反応でmas 1'プロモーターEcoRI−BamHIフラグメントおよびセンス(BamHI−HindIII)およびアンチセンス(HindIII−XbaI)ds Lucルシフェラーゼ遺伝子フラグメントにライゲートする。
【0065】
ds LuC1/2/3センス/アンチセンス構築物でのAgrobacterium介在植物形質転換のために、バイナリーベクターpPH170を構築するために、細菌選択のためのカナマイシン耐性遺伝子およびトランスジェニック植物選択のためのヒグロマイシン耐性遺伝子を担持するバイナリープラスミドpSGCHC1をEcoRIおよびXbaIで消化する。得られるpSGCHC1からの11.6kb単離フラグメントをT4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を使用して、4方向反応でmas 1'プロモーターEcoRI−BamHIフラグメントおよびセンス(BamHI−HindIII)およびアンチセンス(HindIII−XbaI)ds Lucルシフェラーゼ遺伝子フラグメントにライゲートする。
【0066】
Agrobacteriumの形質転換およびアラビドプシス植物の真空浸潤
プラスミドpPH170をAgrobacterium tumefaciens GV3101にエレクトロポレーションにより挿入し、形質転換コロニーを選択し、増幅する。構造的に(UBQプロモーター(Norris et al. (1993) PMB 21:895-906)/UBQ + CaMV 35S 5' UTR/luc+; pPH108)または誘導性に(Arabidopsis PR-1プロモーター/luc;pPH135、ライン6E)発現するArabidopsis thaliana変異系の4から5週齢植物を、pPH170バイナリーT−DNAベクターを他にするAgrobacteriumクローンで真空浸潤する。形質転換植物をヒグロマイシンおよびカナマイシンで共選択し、ルシフェラーゼ活性測定のために制御されたファイトトロン条件下で生育させる。加えて、pPH135-6Eバックグラウンドのルシフェラーゼ活性をBTH(BTH処理は本質的にLawton et al. Plant J. 10: 71-82に記載の通り)導入後48時間に評価する。ルシフェラーゼ活性は、ルシフェリン基質添加後の組織抽出物における蛍光ベースアッセイを使用して定量する。ルシフェラーゼ活性はまた植物内でCCD−冷却ビデオ造影システムを使用してまた追跡する(Hamamatsu)。
【0067】
実施例2:Arabidopsis GL1遺伝子の発現の調節
GL1遺伝子は、正常突起様構造(葉毛)形成に必要なmyb−様転写因子をコードする(Oppenheimer et al. (1991) Cell 67: 483-493)。発育初期でのGL1発現のノックアウトは、突起様構造を欠く植物をもたらす。ノックアウト表現型は、若い苗木で容易に同定され、致死ではない。培養発現のための3つのベクターおよびGAL4/C1−調節発現のための3つのベクターを構築する。各プロモーターの試験のための3つの異なるベクターは、GL1遺伝子フラグメントのセンス(+)発現、アンチセンス(−)発現ならびにセンスおよびアンチセンス(+/−)RNA発現である。(+)および(−)ベクターは、GL1の発現への効果を比較するためにコントロールする。各場合において、GL1配列の塩基#739から#1781までの5'フラグメント(GenBank Accession M79448)をベクター構築に使用する。
【0068】
GAL4/C1調節発現
GL1遺伝子フラグメントを交差誘導性ベクター構築物pJG304-1にNcoI−SacIフラグメントとしてクローン化する。プラスミドpJG304はpBSSK+由来である。プラスミドpBS SK+(Stratagene, LaJolla, CA)をSacIで直線化し、ヤエナリヌクレアーゼで処理してSacI部位を除去し、T4リガーゼで再ライゲートしてpJG201を作る。10XGAL4コンセンサス結合部位/CaMV 35S最小プロモーター/GUS遺伝子/CaMVターミネーターカセットをpAT71からKpnIで除去し、pJG201のKpnI部位にクローン化し、pJG304を作る。プラスミドpJG304を制限エンドヌクレアーゼAsp718で部分的に消化し、完全長直鎖状フラグメントを単離する。フラグメントを22塩基オリゴヌクレオチドJG-L(5'-GTA CCT CGA G TC TAG ACT CGA G-3'、配列番号5)のモル過剰とライゲートする。制限分析を使用して、このリンカーがGAL4 DNA結合部位の5'に挿入されたクローンを同定し、このプラスミドをpJG304DXhoIと名付ける。
【0069】
NcoIおよびSacI部位を、5'末端への適当な制限部位を有するPCRプライマーを合成することにより、(+)および(−)フラグメントの末端に添加する。(+/−)GL1フラグメントを、最初に二つのフラグメントを作ることにより作る:5'末端にNcoI部位および3'末端にHindIII部位を有する(+)フラグメント、および5'末端にHindIII部位および3'末端にSacI部位を有する(−)フラグメント。(+/−)ユニットを、得られるフラグメントをEcoRI部位でライゲートすることにより産生する。発現ユニットはGAL4 DNA結合ドメイン、続いて最小TATA配列、および(+)、(−)または(+/−)のいずれかに配向するGL1遺伝子フラグメントを含む(Guyer et al. (1998) Genetics, 149:633-639)。
【0070】
構造的発現
双子葉植物で相対的に強く、構造的であるAgrobacterium由来のマンノピンシンダーゼのmas 1'プロモーター(Velten et al. (1984) EMBO Journal 3:2723-2730)を使用する。上記のように、GL1(+)、(−)、および(+/−)フラグメントをpBluescript中の1'プロモーターの後ろにライゲートする。3つの異なる発現カセットをpCIB200にEcoRI/SalIフラグメントとしてライゲートする(Uknes et al. (1993) Plant Cell 5:159-169)。
【0071】
実施例3:シスタチオニンベータ−リアーゼ遺伝子の発現の調節
シスタチオニンベータ−リアーゼ(CBL)遺伝子はメチオニン生合成経路中の段階を行うタンパク質をコードする。CBLはシスタチオニンからホモシステインへの変換を触媒する(Ravanel et al. (1998) Proc. Natl. Acad, Sci, USA 95:7805-7812にレビュー)。Arabidopsis CBL遺伝子のcDNAは同定されている(Ravanel et al. (1995) Plant Mol. Biol. 29:875-772)。植物内のその発現の調節の効果を、RNA発現(センス構築物)、アンチセンスRNA発現(アンチセンス構築物)ならびにセンスおよびアンチセンスRNA発現(センス/アンチセンス構築物)の構築物を使用して試験する。
【0072】
A.アンチセンス構築物:アンチセンス配向でCGL遺伝子の部分の挿入を有するpJG304DXhoIベクター由来のバイナリーBASTAベクターpLG261を使用する。
pJG304/aCBL:プラスミドpJG304DXhoIをNcoIおよびSacIで消化し、GUS遺伝子を切除する。pJG304DXhoI由来のGUSをまたNcoIおよびSacIで消化したCBL PCR生産物で置き換える。この生産物を、プライマーDG354(5'-GAT CGA GCT CCA CGA GAA CTG TCT CCG-3';配列番号6)およびDG357(5'-TCA GCC ATG GGA AGA CAA GTA CAT TGC-3';配列番号7)ならびにpFL61 Arabidopsis cDNAライブラリー(Minet et al. (1992) Plant J. 2:417-422)を鋳型として使用して作る。プラスミドpJG304/aCBLを、CBL PCR産物にライゲートしたpJG304DXhoI消化ベクターから構築する。
pJG261/aCBL:pJG304/aCBLをXhoIで切断し、GAL4 DNA結合部位/35S最小プロモーター/アンチセンスCBL/CaMVターミネーター融合を含むカセットを切除する。このカセットをXhoI消化pJG261にライゲートし(Guyer, et al, Genetics (1998), 149:633-639)、pJG261/aCBLを作る。
【0073】
B.センス構築物:CBLフラグメントが逆の配向である以外、アンチセンス構築物と同じである。この構築物はATG開始コドンおよび殆どのCBL ORFを含み、CBL遺伝子の発現の調節のコントロールとして働く。
pJG304/sCBL:プラスミドpJG304DXhoIをNcoIおよびSacIで消化し、GUS遺伝子を切除する。pJG304DXhoI由来のGUS遺伝子をまたNcoIおよびSacIで消化したCBL PCR生産物で置き換える。この生産物をプライマーCBL1(5'-CTT GCC ATG GCA CGA GAA CTG TCT CCG-3';配列番号8)およびCBL2(5'-CAT GGA GCT CGA AGA CAA GTA CAT TGC A-3';配列番号9)ならびにpFL61 Arabidopsis cDNAライブラリーを鋳型として使用して作る。プラスミドpJG304/sCBLを、CBL PCR生産物にライゲートしたpJG304DXhoI消化ベクターから構築する。
pJG261/sCBL:pJG304/sCBLをXhoIで切断し、GAL4 DNA結合部位/35S最小プロモーター/センスCBL/CaMVターミネーター融合を含むカセットを切除する。このカセットをXhoI消化pJG261にライゲートし、pJG261/sCBLを作る。
【0074】
C.センス/アンチセンス構築物:センス配向のCBL遺伝子(#13−1159)を、CBL遺伝子のアンチセンス配向版の下流のベクターpJG304DXhoIのSalI部位に挿入する。約10bpのリンカーが二つのコピーのCBLの間に存在する。
pJG304/dsCBL:プラスミドpJG304/aCBLをSacIで消化する。またSacIで消化したCBL PCR生産物を、挿入CBL遺伝子がセンス配向で挿入されるように挿入する。この生産物はCBL2(5'-CAT GGA GCT CGA AGA CAA GTA CAT TGC A-3';配列番号9)およびCBL3(5'-CAT CGA GCT CCT CTG TTT AAA CCA CGA GAA CTG TCT CCG TCG C-3';配列番号10)ならびにpFL61 Arabidopsis cDNAライブラリーを鋳型として使用して作る。挿入DNAの所望の配向のプラスミド構築物を、HindIIIでの消化により同定する。プラスミドpJG304/dsCBLを、CBL PCR生産物にライゲートしたpJG304/aCBL消化ベクターから構築する。SURE2(Stratagene, LaJolla, CA)を、構築物を安定化するために細菌宿主として使用する。
pJG261/dsCBL:pJG304/dsCBLをXhoIで切断し、GAL4 DNA結合部位/35S最小プロモーター/アンチセンスCBL/センスCBL/CaMVターミネーター融合を含むカセットを切除する。このカセットをSpeI消化pJG261にライゲートし、pJG261/dsCBLを作る。XL1−BLUEMRF'(Stratagene, LaJolla, CA)を細菌宿主として使用し、構築物を部分的に安定化する。
【0075】
D.GAL4結合部位/最小CaMV 35S/CBLトランスジェニック植物の産生
3つの記載したpJG261/CBL構築物を、Agrobacterium tumefaciens recA株AGL1(Lazo et al. (1991) Bio/Technology 9:963-967)に電子形質転換(electro-transformation)し、Arabidopsis植物(Ecotype Colimbia)を浸潤により形質転換する(Bechtold et al., (1993) C. R. Acad. Sci. Paris, 316:1188-1193)。浸潤植物由来の種子を、15mg/リットルのBastaを含む発芽培地(4.3g/リットルのMurashige-Skoog塩、0.5g/リットルのMes、1%スクロース、10μg/リットルのチアミン、5μg/リットルのピリドキシン、5μg/リットルのニコチン酸、1mg/リットルのミオイノシトール、pH5.8)で選択する。
【0076】
E.GAL4/C1トランス活性化因子およびGAL4結合部位/最小35Sプロモーターを使用したCBLの阻害の比較
GAL4結合部位/最小CaMV 35Sプロモーター/CBL構築物を含むトランスジェニック植物を土壌に移植し、温室で成熟するまで生育させる。各系におけるトランスジェニックCBLフラグメントの存在をPCRで確認する。アンチセンス構築物の試験のためにプライマーASV1(5'-TTT GGA GAG GAC AGA CCT GC-3';配列番号11)およびCBL3(5'-CAT CGA GCT CCT CTG TTT AAA CCA CGA GAA CTG TCT CCG TCG C-3';配列番号10)を使用して、約1200pb生産物の存在を確認する。6個のアンチセンス構築物を有するトランスジェニック系を同定する。センス構築物を試験するために、プライマーASV2(5'-GGA TTT TGG TTT TAG GAA TTA GAA-3';配列番号12)およびCBL3(5'-CAT CGA GCT CCT CTG TTT AAA CCA CGA GAA CTG TCT CCG TCG C-3';配列番号10)を使用して、約1200pb生産物の存在を確認する。13個のセンス構築物を有するトランスジェニック系を同定する。センス/アンチセンス構築物を試験するために、プライマーASV2(5'-GGA TTT TGG TTT TAG GAA TTA GAA-3';配列番号12)およびCBL3(5'-CAT CGA GCT CCT CTG TTT AAA CCA CGA GAA CTG TCT CCG TCG C-3';配列番号10)を使用して、約1200pb生産物の存在を確認する。加えて、センス/アンチセンス構築物を試験するために、プライマーASV1(5'-TTT GGA GAG GAC AGA CCT GC-3';配列番号11)およびCBL3(5'-CAT CGA GCT CCT CTG TTT AAA CCA CGA GAA CTG TCT CCG TCG C-3';配列番号10)を使用して、約1200pb生産物の存在を確認する。センス/アンチセンス構築物を有する11個のトランスジェニック系を同定する。
【0077】
1次形質転換体上に咲いた花を、同型接合体GAL4/C1トランス活性化因子系pAT53-103の花粉と交配する(Guyer et al., Genetics (1998) 149:633-649)。F1種子をMS+2%スクロース培地(4.3g/リットルのMurashige-Skoog塩、0.5g/リットルのMes、2%スクロース)に蒔く。アンチセンス構築物を含む系は、全てプレート上のF1子孫に関して異常な表現型を示さない。センス構築物を示す13個の系のうち2個は、各プレートで約半分のF1子孫に関して弱い表現型を示す。センス構築物を含む13個の系のうち残りの11個は、プレート上のF1子孫に関して異常表現型を示さない。センス/アンチセンス構築物を含む11個の系のうち10個は、各プレートで約半分のF1子孫に関して弱いから強い範囲の表現型を示す。強い表現型を示す植物は生存せず、プレート上で14日後に、紫色の着色が増加し、緑色色素を失い、葉の形成ができない。弱い表現型の植物は、プレート上で14日後に幾分かの紫色の着色を有し、正常より薄い緑色であり、小さい葉を形成する。このように、センス/アンチセンス構築物は、アンチセンスまたはセンス構築物のいずれかよりも内因性必須遺伝子の活性の減少に有効である。
【0078】
F.二つのプロモーターを使用したCBLの発現の調節
CBL遺伝子を二つのプロモーター −− 一つはセンス鎖の転写を引き起こし、他方はアンチセンスの転写を引き起こす −− の間に置く。この試みにおいて、両方のセンスおよびアンチセンスRNAが植物細胞内で作られ、二つのタイプの鎖が互いにハイブリダイズでき、二本鎖RNA分子の形成を導く。ACTIN2をCBL遺伝子の両方の側にフランキングなプロモーターとして使用する。全てのこれらの試みに関して、プロモーターの遠位側に転写ターミネーターを使用するか使用しない選択がある。転写ターミネーターを使用する場合、転写は一つのプロモーターの3'末端で開始し、一つの配向でCBL遺伝子を通って進み、第2プロモーターを3'末端から5'末端に通って進み、第2プロモーターの5'末端の転写ターミネーターで停止する。転写ターミネーターは転写されたRNAの安定化に働き得る。
【0079】
実施例4:ルシフェラーゼ遺伝子発現の調節
センスおよびアンチセンスルシフェラーゼRNAフラグメントをコードするキメラDNA分子の構築(センス/アンチセンス構築物)
プラスミドpLuc+(PromegaベクターpGL3、Genbank Accession # U47295)からのホタルルシフェラーゼ遺伝子の670bp“センス”配向フラグメントをpPH108プラスミドDNAから、オリゴヌクレオチドプライマーds Luc1(5'-CGC GGA TCC AAG ATT CAA AGT GCG CTG CTG-3'、配列番号13;BamHI制限部位下線)およびds Luc2(5'-GCG AAG CTT GGC GAC GTA ATC CAC GAT CTC-3'、配列番号14;HindIII制限部位下線)を使用して増幅する。TurboPfu熱安定性DNAポリメラーゼ(Stratagene)を、製造者のプロトコールに従って、50μl反応物中、95℃/1分、55℃/1.5分、72℃/2分の5サイクル、続いて95℃/1分、72℃/3.5分の25サイクルで使用する。同様の方法で、プラスミドpLuc+由来のホタルルシフェラーゼ遺伝子の737bp“アンチセンス”配向フラグメントを、pPH108プラスミドDNAから、オリゴヌクレオチドプライマーds Luc3(5'-CGG TCT AGA AAG ATT CAA AGT GCG CTG CTG-3'、配列番号15;XbaI制限部位下線)およびds Luc2(5'-GCG AAG CTT GGC GAC GTA ATC CAC GAT CTC-3'、配列番号16;HindIII制限部位下線)を使用して増幅する。得られるDNAフラグメントを、低融点アガロース(FMC)から製造した1%トリス−酢酸ゲルを通した電気泳動、続くPCR産物を含む摘出ゲル切片のフェノール−クロロホルム抽出により精製する。センス生産物(ds LuC1/2)をBamHIおよびHindIIIで消化し、アンチセンス生産物由来のDNA(ds Luc3/2)をXbaIおよびHindIIIで標準法に従って消化する(制限酵素はNew England Biolabsから得た)。得られる粘着末端DNAフラグメントを上記のようにゲル精製する。センスBamHI−HindIIIフラグメントおよびアンチセンスHindIII−XbaIフラグメントを、次いで3方向ライゲーションで、BamHIおよびXbaITheで消化させたクローニングベクターpLitmus28(New England Biolabs)にクローン化し、得られる構築物をpAdF3と名付ける。bar遺伝子のオープン・リーディング・フレーム(D'Halluin et al. (1992) Methods in Enzymology 216:415-426)を含む563bp DNAフラグメントを、プラスミドCSA104 DNAから、オリゴヌクレオチドbar-1(5'-GCG AAG CTT GAT CCA TGA GCC CAG AAC GA-3'、配列番号17;HindIII制限部位太字)およびbar-2(5'-GCC AAG CTT CCT AGA ACG CGT GAT CTC-3'、配列番号18;HindIII制限部位太字)を使用して増幅する。Pfu熱安定性DNAポリメラーゼ(Stratagene)を、製造者のプロトコールに従って、100μl反応物中、94℃/1分、55℃/1分、72℃/1分の25サイクルで使用する。フェノール抽出およびエタノール沈殿の精製に続き、bar PCR生産物を、上記のようにHindIIIで消化し、2%アガロースゲルを通してゲル精製する。プラスミドpAdF1をHindIII bar DNAフラグメントの、HindIIIで消化されているプラスミドpAdF3へのライゲーションにより構築する。この非指向性クローニングの2つの可能性のある構築物のうち、pAdF1はbar遺伝子への配向により特徴付けられ、これはpAdF3に存在するルシフェラーゼ遺伝子の“センス”と同じである。Arabidopsis ACT2プロモーター(An et al., (1996) Plant J. 10:107-121)を含むBamHI-SalI 1.2kb DNAフラグメントを、pNOV1416(Scott Rabe; NB171 p.122; 8-17-98により作られた構築物)から切断し、BamHIおよびSalIで消化したpUB21にクローン化して、構築物pAct2を産生する。ACT2プロモーターを次いで、BamHIおよびSpeIでの消化によりpAct2から切断する。
【0080】
ds Luc1/2/3RNAセンス/アンチセンスでのアグロバクテリウム介在植物形質転換のためのバイナリーベクターpAdF4を構築するために、細菌選択のためにカナマイシン耐性遺伝子を担持し、植物選択のためにヒグロマイシン耐性遺伝子を担持するバイナリープラスミドpSGCHC1を、SpeIおよびSacIで消化する。pSGCHC1から得られる11.6kb単離フラグメントをを3方向反応で、T4 DNAリガーゼ(New England Biolabs)を使用して、センスおよびアンチセンスルシフェラーゼ遺伝子フラグメントの両方を含むpAdF3由来のAct2プロモーターBamHI-SpeIフラグメントおよびBamHI-SacIフラグメントにライゲートする。同様に、上記のようにSpeIおよびSacIで消化させた11.6kb pSGCHC1ベクター、Act2プロモーターを担持するSpeI-BamHIフラグメントおよび、bar遺伝子を囲むセンスおよびアンチセンスルシフェラーゼフラグメントを含むpAdF1由来のBamHI-SacIフラグメントを含むバイナリーベクターpAdF2を3方向ライゲーションで構築した。
【0081】
Agrobacteriumの形質転換およびArabidopsis植物の真空浸潤
プラスミドpAdF2およびpAdF4をAgrobacterium tumefaciens GV3101に、エレクトロポレーションにより挿入し、形質転換コロニーを選択および増幅する。ルシフェラーゼを構造的(UBQ3プロモーター(Norris et al. (1993) PMB 21:895-906)/UBQ3+CaMV 35S 5' UTR/luc+;pPH108)または誘導的(Arabidopsis PR-1プロモーター/luc+;pCIB200、系6E)に発現するArabidopsis thaliana変異系の4から5週齢植物を、pAdF2またはpAdF4バイナリーT-DNAベクターを担持するAgrobacteriumクローンで真空浸潤する。形質転換植物をヒグロマイシンおよびカナマイシンで共選択し、ルシフェラーゼ活性を測定するために制御されたファイトトロン条件下で生育させる。加えて、pCIB200-6Eバックグラウンドにおけるルシフェラーゼ活性を、BTH(本質的に、Lawton et al. (1996) Plant J. 10:71-82に記載のようなBTH処理)導入48時間後に評価する。ルシフェラーゼ活性を、ルシフェリン基質の添加に続く組織抽出物中のルミネッセンスベースアッセイを使用して定量する。スリフェラーゼ活性をまた植物内でCCD−冷却ビデオ造影システムを使用してまた追跡する(Hamamatsu)。pPH108中のルシフェラーゼ遺伝子はpGL3(Promega, Genbank Accession # U47295)由来である;そしてpCIB200-6E中のルシフェラーゼ遺伝子はpGL2(Promega, Genbank Accession # X65323)由来である。
【0082】
ルシフェラーゼアッセイは、ルシフェラーゼ試薬で行う(Promega、カタログ番号E1501)。葉パンチを0.1M KPO pH7.8緩衝液中で4℃で挽き、短く回転沈下させる。上清の一定量をルシフェラーゼアッセイ試薬と混合し、ルシフェラーゼ活性をMonolight 2010ルミノメーターで定量する(Becton Dickinson Microbiology System)。センス/アンチセンス構築物pAdF2およびpAdF4で形質転換したpPH108植物の分析の結果を表1に、およびセンス/アンチセンス構築物pAdF4で形質転換したpCIB200-6E植物の結果を表2に示す。
【0083】
表1:植物内のルシフェラーゼ活性に関する相対的光ユニット
親系pPH108の異なる植物を試験し、種々の植物内のルシフェラーゼの平均レベルを決定する。この系は同型接合ではなく、従ってルシフェラーゼの最大レベルを示す個々の植物(即ち、植物1、2および3)が同型接合であり得る。pPH108バックグラウンドでpAdF2構築物を含むダブルトランスジェニック植物pPH108(pAdF2)、またはpPH108バックグラウンドでpAdF4構築物を含むpPH108(pAdF4)の独立したT1系を分析する。ルシフェラーゼレベルは、恐らくセンス/アンチセンス構築物の発現レベルの範囲のために、系毎に異なる。独立したT1事象、pAdF2(Columbia(pAdF2))またはpAdF4(Columbia(pAdF4))で形質転換した野生型Arabidopsis Columbia植物をまたコントロールとして分析する。
【0084】
【表1】

【0085】
表2:試験した個々の植物におけるルシフェラーゼ活性に関する相対的光ユニット
親系pCIB200-6E由来の苗木を生育させ、独立したT1ダブルトランスジェニック系pCIB200-6E(pAdF4)と同様にサンプルにする。独立したT1事象、pAdF4で形質転換した野生型Arabidopsis Columbia植物をまたコントロールとして分析する。
【0086】
【表2】

【0087】
実施例5:部位特異的組換え系を使用した目的の遺伝子の発現の調節
本発明の他の態様において、センスおよびアンチセンスRNAフラグメントを、部位特異的組換え系を使用して産生する。部位特異的組換えは、DNA開裂および酵素リコンビナーゼにより介在される再ライゲーションの工程である。レコンビナーゼは非常に特異的DNA配列を認識する。ある部位特異的組換え系はその標的部位に作用するのに一つだけタンパク質を使用する。Cre/lox、FLP/FRT、R/RSおよびGin/gixのような数個の部位特異的組換え系が、植物内での部位特異的組換え系を介在することが既知である(Ow and Medberry, 1995, Critical Reviews in Plant Sciences 14:239-261)。組換え基質におけるリコンビナーゼ認識部位の配置に依存して、組換え工程はDNAは配列の欠失、逆転または統合をもたらす。この種の一つの特定の反応、即ち逆転が本発明に関連する。二つのリコンビナーゼ認識部位を、逆の配向で望ましい遺伝子発現カセットに置く。第1認識部位は、トランスジーンコード配列の非翻訳リーダー中または5'−遠位領域の中側に、プロモーターの下流に置く。第2部位は第1部位と逆の配向で、トランスジーンコード配列の3'非翻訳領域中または3'−遠位領域の中側に置く。望ましいDNA配列のコードまたは非コード領域はプロモーターと操作可能に結合する。リコンビナーゼの存在下、逆の配向で二つの認識部位に側面を接する配列が逆転する。組換え過程の結果として、望ましい遺伝子のコードまたは非コード鎖の両方がプロモーターに操作可能に結合し、センスおよびアンチセンス転写が同じ染色体環境において同じ遺伝子座からから産生され、dsRNA分子の形成が可能である。
【0088】
Creのような部位特異的リコンビナーゼの高レベル構造的発現が、ある植物における異常表現型をもたらすことができる(Que et al., 1998, Plant J. 13:401-409)。好ましくは、リコンビナーゼの発現は誘導性プロモーターの制御下である。本発明の一つの態様において、リコンビナーゼ発現カセットを、逆の配向で二つのリコンビナーゼ認識部位に側面を接する望ましいトランスジーン配列の導入に使用する同じ形質転換ベクターに置く。本発明の他の態様において、リコンビナーゼ認識部位に側面を接するトランスジーンを含むトランスジェニック植物をリコンビナーゼを発現する系と交配するか、リコンビナーゼ発現ベクターで再形質転換する。本発明の他の態様において、誘導性リコンビナーゼ発現カセットを含む組換えRNAまたはDNAウイルスを、望ましいトランスジーン構築物を含む植物の感染に使用する。組換えウイルスは好ましくは異常表現型をもたらさない。上記態様において、リコンビナーゼは望ましい配列の染色体コピーの逆転をもたらし、それにより望ましいdsRNAを産生する。
【0089】
本発明の更に別の態様において、組換え植物DNAウイルスを、dsRNAを形成できるセンスおよびアンチセンスRNAフラグメントの産生に使用する。典型的に植物DNAウイルスは染色体外的(epi-chromosomally)に複製される。好ましい態様において、二つの逆転リコンビナーゼ認識部位に側面を接する標的遺伝子のRNAフラグメントの発現ができるDNA配列を含む構築物を、リコンビナーゼを発現する第2組換えウイルスと共に植物細胞に挿入する。あるいは、リコンビナーゼ発現カセットおよび逆転認識部位に側面を接するDNA配列の両方を同じウイルスDNAベクターに結合させる。ウイルスDNAベクターが植物内に挿入された後、リコンビナーゼ遺伝子を発現する。リコンビナーゼ遺伝子の発現は、リコンビナーゼ認識部位に側面を接するウイルスDNA配列の逆転をもたらし、細胞中のウイルスゲノムの高コピー数のために、所望のDNA配列からのdsRNAの大量の産生をもたらす。好ましいリコンビナーゼシステムは、Cre/lox、FLP/FRT、R/RSおよびGin/gixが、植物内の部位特異的組換え過程の介在が既知である(Ow and Medberry, 1995, Critical Reviews in Plant Sciences 14:239-261、本明細書に引用して包含させる)。
【0090】
実施例6:植物発現カセットの構築の要件
トランスジェニック植物での発現を意図する遺伝子配列は、第1に適当なプロモーターの後ろおよび適当な転写ターミネーターの上流の発現カセットに集合する。植物発現カセットの構築の全ての要件は、本発明のDNA分子に適用され、当分野で既知の方法を使用する。
【0091】
プロモーター選択
発現カセットで使用するプロモーターの選択は、トランスジェニック植物内のDNA分子の空間的および時間的発現パターンを決定する。選択したプロモーターはDNA分子を特異的細胞タイプ(葉表皮細胞、葉肉細胞、根皮層細胞など)または特異的組織または器官(例えば、根、葉または花)で発現させ、選択はDNA分子によりコードされるRNAフラグメントの生合成の望ましい位置を反映する。あるいは、選択したプロモーターは、光誘導または他の時間的調節プロモーター下でのDNA分子の発現を駆動し得る。更に別法は、選択プロモーターの化学的調節である。これは、望ましい、化学インデューサーでの処理によりもたらされる時のみのDNA分子の発現の誘導を可能する。
【0092】
転写ターミネーター
種々の転写ターミネーターは発現カセットでの使用に利用可能である。これらは転写の停止、および好ましくは、正確なポリアデニル化を担う。適当な転写ターミネーターは植物で機能することが既知のものであり、CaMV 35Sターミネーター、tmlターミネーター、ノパリンシンターゼターミネーター、エンドウマメrbcS E9ターミネーターを含む。これらは単子葉植物および双子葉植物の両方で使用できる。
【0093】
発現の促進または調節のための配列
多くの配列が、転写ユニットの中での遺伝子発現を促進させることが判明しており、これらの配列は本発明のDNA分子と組合わせて、トランスジェニック植物内でのその発現の増加のために使用できる。
【0094】
種々のイントロンが、発現を、特に単子葉植物細胞内で促進することが示されている。例えば、メイズAdh1遺伝子のイントロンは、メイズ細胞内に挿入されたとき、その同起源プロモーター下に野性型遺伝子の発現を有意に促進することが判明している。イントロン1は特に有用であり、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子との融合構築物内の発現を促進することが判明している(Callis et al., Genes Develep 1:1183-1200 (1987))。同じ実験系において、メイズbronze1遺伝子由来のイントロンは発現促進に同じ作用を有する(Callis et al., 前掲)。イントロン配列は、慣用的に植物形質転換ベクター内に、典型的に非翻訳リーダー内に包含されている。
【0095】
ウイルス由来の多くの非翻訳リーダー配列がまた発現を促進することが既知であり、これらは特に双子葉植物細胞で有用である。特に、タバコモザイク病ウイルス(TMV、“Ω−配列”)、メイズクロロティックモットルウイルス(MCMV)およびアルファルファモザイクウイルス(AMV)が発現の促進に有効であることが示されている(例えば、Gallie et al. Nucl. Acids Res. 15:8693-8711 (1987); Skuzeski et al. Plant Molec. Biol. 15; 65-79 (1990))。
【0096】
実施例7:発現カセット構築の例
本発明は、プロモーターの起源に拘らず、植物内で発現可能なプロモーターの制御下の本発明のDNA分子の発現を包含する。したがって、DNA分子を、当分野で既知の方法を使用して発現カセットに挿入する。これらの発現カセットは、次いで、下記のように植物形質転換ベクターに容易に移入できる。更に、本発明はまたDNA分子の発現に必要なまたはDNA分子のために選択した更なる配列と関連した植物発現可能プロモーターの使用も包含する。このような配列は、転写ターミネーター、発現を促進するための外来配列(イントロンのような[例えば、Adhイントロン1]、ウイルス配列[例えば、TMV-Ω]を含むが、これらに限定されない。
【0097】
構造的発現:
プラスミドpCGN1761の構築は、公開特許出願EP0392225に記載されている。pCGN1761は“ダブル”35Sプロモーターおよびtml転写ターミネーターを、プロモーターおよびターミネーターの間の独得なEcoRI部位と共に含み、pUCタイプ骨格を有する。NotIおよびXhoI部位を存在するEcoRI部位に加えて含む修飾ポリリンカーを含むpCGN1761の誘導体が構築される。この誘導体はpCGN1761ENXと名付ける。pCHN1761ENXは、トランスジェニック植物の35Sプロモーターの制御下の発現の目的での、cDNA配列または遺伝子配列(微生物ORF配列を含む)の、そのポリリンカー内でのクローニングに有用である。このような構築物の全35Sプロモーター遺伝子−遺伝子配列−tmlターミネーターカセットは、プロモーターの5'のHindIII、SphI、SalIおよびXbaI部位およびターミネーターの3'のXbaI、BamHIおよびBglI部位で、形質転換ベクターの移入のために切断できる。更に、ダブル35Sプロモーターフラグメントは、HindIII、SphI、SalI、XbaIまたはPstIでの5'切断およびポリリンカー制限部位(EcoRI、NotIまたはXhoI)での3'切断により、他のプロモーターとの置換のために除去できる。
【0098】
したがって、本発明のDNA分子は、CaMV 35Sプロモーターの制御下の構造的発現のためのpCGN176ENXに挿入する。
【0099】
化学的制御可能プロモーター下での発現
この章は、pCGN1761ENX中のダブル35Sプロモーターの選択したプロモーターでの置換を記載する;例示のために、化学的調節PR-1aプロモーターを記載する。選択したプロモーターは、好ましくはその源から、制限酵素により切除されるが、別法として、適当な末端制限部位を担持するプライマーを使用してPCR増幅できる。PCR増幅を行ったなら、次いで、プロモーターを再配列させ、標的ベクター中の増幅プロモーターのクローニング後の増幅エラーをチェックする。化学的調節可能タバコPR-1aプロモーターをプラスミドpCIB1004から開裂し(EP0332104参照)、プラスミドoCGN1761ENXに移入する。pCIB1004をNcoIで開裂し、直線状プラスミドの得られる3'突出を、T4 DNAポリメラーゼでの処理により平滑とする。フラグメントを次いでHindIIIで切断し、フラグメントを含む得られるPR-1aプロモーターをゲル精製し、ダブル35Sプロモーターが除去されているpCGN1761ENXにクローン化する。これをXhoIで開裂し、T4ポリメラーゼで平滑にし、続いてHindIIIで開裂し、pCIB1004プロモーターフラグメントをクローン化するフラグメントを含む大ベクターターミネーターの単離により行う。これは、PR-1aプロモーターおよびtmlターミネーターおよび独得なEcoRIおよびNotI部位を有する介在ポリリンカーを有するpCGN1761ENX誘導体を産生する。
【0100】
本発明のDNA分子をベクターに挿入し、融合生産物(即ち、プロモーター−遺伝子−ターミネーター)を連続して、本発明に記載のものを含む選択した形質転換ベクターに移入し、このようにDNA分子の化学的誘導性発現を提供する。
【0101】
構造的発現:アクチンプロモーター
アクチンの数個のイソ形が、殆どの細胞タイプで発現し、素の結果アクチンプロモーターは構造的プロモーターの良い選択であることが知られている。特に、コメAct1遺伝子由来のプロモーターがクローン化され特徴付けされている(McElroy et al., Plant Cell 2:163-171 (1990))。プロモーターの1.3kbフラグメントは、コメプロトプラストの発現に必要な全ての調節エレメントを含むことが判明している。更に、Act1プロモーターに基づく多くの発現ベクターが、特に単子葉植物での使用のために構築されている(McElroy et al. Mol. Gen. Genet. 231:150-160 (1991))。これらはAct1−イントロン1、Adh1 5'フランキング配列およびAdh1−イントロン1(メイズアルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子から)およびCaMV 35Sプロモーター由来の配列を含む。最大発現を示すベクターは35SとAct1イントロンまたはAct1 5'フランキング配列とAct1イントロンの融合である。McElroy et al. (Mol. Gen. Genet. 231:160-160 (1991))に記載のプロモーター発現カセットは、本発明のDNA分子の発現のために容易に修飾され、特に単子葉植物宿主での使用に適している。例えば、フラグメントを含むプロモーターをMcElroy構築物から除去し、pCGN1761ENX中のダブル35Sプロモーターの置換に使用し、それは次いで挿入または特異的遺伝子配列に利用可能である。このように構築した融合遺伝子を、適当な形質転換ベクターに移入する。別の報告で、大1イントロンを有するコメAct1プロモーターが培養大麦細胞における高発現を指示することも判明している(Chibbar et al. Plant Cell Rep. 12:506-509 (1993))。
【0102】
本発明のDNA分子をこのようなプロモーターの下流に置き、融合生産物(即ち、プロモーター−遺伝子−ターミネーター)を、続いて、本発明に記載のものを含む選択した形質転換ベクターに移入する。
【0103】
構造的発現:ユビキチンプロモーター
ユビキチンは、多くの細胞タイプに蓄積されることが既知の他の遺伝子生産物であり、そのプロモーターはトランスジェニックでの使用のために数種からクローン化されている(例えば、ヒマワリ−Binet et al. Plant Science 79:87-94 (1991)、メイズ−Christensen et al. Plant Molec. Biol. 12:619-632 (1989))。メイズユビキチンプロモーターはトランスジェニック単子葉植物系およびその配列のために構築されており、単子葉植物形質転換のために構築されたベクターが特許公開EP0342926に記載されている。更に、Taylor et al. (Plant Cell Rep. 12:491-495 (1993))が、メイズユビキチンプロモーターおよびダウイ1イントロンを含むベクター(pAHC25)、および、微粒子銃を介して挿入したとき、多くの単子葉植物の細胞懸濁液中でのその高い活性を記載する。ユビキチンプロモーターは、トランスジェニック植物、特に単子葉植物における本発明のDNA分子の発現に明らかに適している。適当なベクターはpAHC25の誘導体または、適当なユビキチンプロモーターおよび/またはイントロン配列の挿入により修飾した本出願に記載の形質転換ベクターである。
【0104】
本発明のDNA分子は、従って、これらのベクターに挿入し、その融合産物(即ち、プロモーター−遺伝子−ターミネーター)を植物の形質転換に使用し、DNA分子の構造的発現をもたらす。
【0105】
根特異的発現
本発明のDNA分子に関する発現の好ましいパターンは根発現である。ヌクレオチド配列の根組織のみへの発現は、その葉および花組織および種子中の発現の付随した変更なしに、根中のみの標的遺伝子の発現を変える利点を有する。適当な根プロモーターは、Framond(FEBS 290:103-106 (1991))におよびまた公開特許出願EP0452269に記載のものである。このプロモーターをpCGN1761ENXのような適当なベクターに移入し、DNA分子をこのようなベクターに挿入する。全プロモーター−遺伝子−ターミネーターカセットを続いて目的の形質転換ベクターに移入する。
【0106】
傷誘導性プロモーター
多くのこのようなプロモーターが記載され(例えば、Xu et al. Plant Molec. Biol. 22:573-588 (1993), Logemann et al. Plant Cell 1:151-158 (1989), Rohrmeier & Lehle, Plant Molec. Biol. 22:783-792 (1993), Firek et al. Plant Molec. Biol 22:129-142 (1993), Warner et al. Plant J. 3:191-201 (1993))、全て本発明での使用に適している。Logemann et al.’(前掲)は双子葉植物ジャガイモwun1遺伝子の5'樹流配列を記載する。Xu et al.(前掲)は、双子葉植物ジャガイモ由来の傷誘導性プロモーター(pin2)が単子葉植物コメで活性であることを示す。更に、Rohrmeier & Lehle(前掲)は、傷誘導され、標準法を使用して同起源プロモーターの単離に使用できるメイズWip1 cDNAのクローニングを記載する。同様に、Firek et al.(前掲)およびWarner et al.(前掲)は、局所傷および病原体浸潤部位で発現される単子葉植物Asparagus officinalis由来の傷誘導遺伝子を記載する。当分野で既知のクローニング法を使用して、これらのプロモーターを適当なベクターに移入し、本発明のDNA分子に融合し、昆虫病原体河川の部位でのこれらの遺伝子の発現に使用する。
【0107】
髄優先発現
特許出願WO93/07278は、髄細胞で優先的に発現されるメイズtrpA遺伝子の単離を記載する。標準分子生物学的方法を使用して、このプロモーターまたはその一部を、pCGN1761のようなベクターに移入でき、そこでそれが35Sプロモーターを置換し、髄優先法で本発明のDNA分子の発現を駆動するのに使用することができる。実際、髄優先プロモーターまたはその一部を含むフラグメントをベクターに移入し、トランスジェニック植物での利用のために修飾する。DNA分子の髄優先発現は、このようなベクターへのDNAの挿入により達成される。
【0108】
花粉特異的発現
特許出願WO93/は、更に花粉細胞で発現されるメイズカルシウム依存的プロテインキナーゼ(CDPK)遺伝子の単離を記載する。遺伝子配列およびプロモーターは転写の開始からbpまで伸びる。標準分子生物学的方法を使用して、このプロモーターまたはその一部をpCGN1761のようなベクターに移入でき、そこでそれが35Sプロモーターを置換し、花粉優先法で本発明のDNA分子の発現を駆動するのに使用することができる。実際、花粉特異的プロモーターまたはその一部を含むフラグメントをベクターに移入し、トランスジェニック植物での利用のために修飾できる。
【0109】
葉特異的発現
ホスフェノールカルボキシラーゼ(PEPC)をコードするメイズ遺伝子がHudspeth & Grula (Plant Molec Biol 12:579-589 (1989))に記載されている。標準生物学的方法を使用して、この遺伝子のプロモーターを、トランスジェニック植物中で葉特異的方法での本発明のDNA分子の発現の駆動のために使用する。
【0110】
実施例8:植物形質転換ベクターの構築
多くの形質転換ベクターが植物形質転換に利用可能であり、本発明のDNA分子を、適当な条件下で、望ましい細胞でDNA分子の発現をできるように寿樹の発現カセットに挿入する。ヌクレオチド配列含有発現カセットを、次いで下記の適当な形質転換ベクターに挿入する。使用のためのベクターの選択は、好ましい形質転換法および形質転換の標的種に依存する。ある標的種に関して、異なる抗生物質または除草剤選択マーカーが好ましいことがある。形質転換に慣用的に使用される選択マーカーは、カナマイシンおよび関連抗生物質に耐性を付与するnptII遺伝子(Messing & Vierra. Gene 19:259-268 (1982); Bevan et al., Nature 304:184-187 (1983))、除草剤ホスホイノスリシンに耐性を付与するbar遺伝子(White et all., Nucl. Acids Res 18: 1062 (1990), Spencer et al. Theor. Appl. Genet 79:625-631 (1990))、抗生物質ヒグロマイシンに耐性を付与するhph遺伝子(Blochinger & Diggelmann, Mol Cell Biol 4:2929-2931)およびメトトレキサートに耐性を付与するdhfr遺伝子(Bourouis et al., EMBO J. 2(7): 1099-1104 (1983))を含む。
【0111】
(1)Agrobacterium形質転換に適したベクターの選択
多くのベクターがAgrobacterium tumefaciensを使用した形質転換に利用可能である。これらは典型的に少なくとも一つのT-DNAボーダー配列を担持し、およびpBIN19のようなベクターを含む(Bevan, Nucl. Acids Res. (1984)。以下に二つの典型的ベクターを記載する。
【0112】
pCIB200およびpCIB2001の構築
バイナリーベクターpCIB200およびpCIB2001を、Agrobacteriumでの使用のための組換えベクターの構築に使用し、以下の方法で構築する。pTJS75kanを、テトラサイクリン耐性遺伝子の切断を可能にするpTJS75(Schmidhauser & Helinski, J. Bacterio. 164: 446-455 (1985))のNarI消化、続いくNPTII(Messing & Vierra, Gene 19:259-268 (1982); Bevan et al., Nature 304:184-187 (1983); McBride et al., Plant Molecular Biology 14:266-276 (1990))を担持するpUC4K由来のAcclフラグメントの挿入により作る。XhoIリンカーを、左および右T-DNAボーダー配列、植物選択可能nos/nptIIキメラ遺伝子およびpUCポリリンカーを含むpCIB7のEcoRVフラグメントにライゲートし(Rothstein et al. Gene 53:163-161 (1987))、XhoI消化フラグメントをSalI消化pTJS75kanにクローン化し、pCIB200を作る(EP0332104をまた参照)。pCIB200は以下の独得なポリリンカー制限部位を含む:EcoRI、SstI、KpnI、BglII、XbaIおよびSalI。pCIB2001は、ポリリンカーに更なる制限部位を挿入することにより作ったpCIB200の誘導体である。pCIB2001のポリリンカー中の独得な制限部位は、EcoRI、SstI、KpnI、BglII、XbaI、SalI、MluI、BclI、AvrII、ApaI、HpaIおよびStuIである。pCIB2001は、これらの独得な制限部位の包含に加えて、また植物および細菌カナマイシン選択、Agrobacterium介在形質転換のための左および右T-DNAボーダー、E. coliと他の宿主の間の移動のためのRK2由来trfA機能、およびまたRK2由来のOriTおよびOriV機能を有する。pCIB2001ポリリンカーは、それ自体の調節シグナルを含む植物発現カセットのクローニングに適している。
【0113】
上記および本発明のDNA分子を含むの植物発現カセットの任意の一つをpCIB2001に、好ましくはポリリンカーを使用して挿入する。
【0114】
pCIB10およびそのヒグロマイシン選択誘導体の構築
バイナリーベクターpCIB10は、植物の選択のためのカナマイシン耐性遺伝子をコードする遺伝子、T-DNAボーダー配列を含み、E. coliおよびAgrobacteriumの両方での複製を可能にする広い宿主範囲プラスミドpRK252由来の配列を含む。その構築はRothstein et al. (Gene 53:153-161 (1987))に記載されている。Gritz et al. (Gene 25:179-188 (1983))に記載のヒグロマイシンBホスフォトランスフェラーゼの遺伝子を含むpCIB10の種々の誘導体が構築されている。これらの誘導体はヒグロマイシンのみ(pCIB743)またはヒグロマイシンとカナマイシン(pCIB715、pCIB717)上でのトランスジェニック細胞の選択が可能である。このベクターを本発明のDNA分子を含む発現カセットの形質転換に使用する。
【0115】
(2)非Agrobacterium形質転換に適したベクターの構築
Agrobacterium tumefaciensの使用なしの形質転換は、選択形質転換ベクターにおけるT-DNA配列の必要性を回避し、結果としてこれらの配列を欠くベクターが、T-DNA配列を含む上記のもののようなベクターに加えて利用できる。Agrobacteriumに頼らない形質転換法は、微粒子銃、プロトプラスト取り込み(例えば、PEGおよびエレクトロポレーション)、マイクロインジェクションまたは花粉形質転換(米国特許第5,629,183号)を含む。ベクターの選択は、形質転換する種の好ましい選択に大きく依存する。以下に、ある典型的ベクターの構築を記載する。
【0116】
pCIB3064の構築
pCIB3064は除草剤バスタ(またはホスホイノスリシン)による選択と組合わせた直接遺伝子移入法に適したpUC由来ベクターである。プラスミドpCIB246は、E. coli GUS遺伝子およびCaMV 35S転写ターミネーターへの操作的融合でCaMV 35Sプロモーターを含み、PCT公開出願WO93/07278に記載されている。このベクターの35Sプロモーターは二つのATG配列を出発側の5'に含む。これらの側は、ATGを除去し、制限部位SspIおよびPvuIIを産生するような方法で標準PCR法を使用して変異させる。新規制限部位は独得なSalI部位から96および37bp離れ、実際の出発部位から101および42bp離れている。pCIB246の得られる誘導体をpCIB3025と名付ける。GUS遺伝子を次いで、SalIおよびSacIでの消化によりpCIB3025から切除し、末端を平滑にし、再ライゲートしてプラスミドpCIB3060を産生する。プラスミドpJIT82をJoh Innes Centre, Norwichから得、Streptomyces viridochromogenes由来のbar遺伝子を含む400bp SmaIフラグメントを切除し、pCIB3060のHpaI部位に挿入する(Thompson et al. EMBO J 6:2519-2523 (1987))。これはCaMV 35Sプロモーターおよびターミネーターの制御下の除草剤選択のためのbar遺伝子、アンピシリン耐性のための遺伝子(E. coliでの選択のため)および独得な制限部位SphI、PstI、HindIIIおよびBamHIを含むpCIB3064を作る。このベクターは、本発明のDNA分子の発現を指示するためのそれ自体の調節シグナルを含む植物発現カセットのクローニングに適する。
【0117】
pSOG19およびpSOG35の構築
pSOG35は、メトトレキサートに対する耐性を付与する選択可能マーカーとしてE. coliジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)を使用する形質転換ベクターである。PCRを使用して35Sプロモーター(〜800bp)、メイズAdh1遺伝子由来のイントロン6(〜550bp)およびpSOG10由来のGUS非翻訳リーダー配列の18bpを増幅する。E. coliジヒドロフォレートレダクターゼタイプII遺伝子をコードする250bpフラグメントをまたはPCRで増幅し、これら二つのPCRフラグメントを、pUC19バックボーンおよびノパリンシンターゼターミネーターを含むpBI221(Clontech)由来のSacI-PstIフラグメントと集合させる。これらのフラグメントの集合は、イントロン6配列と融合した35Sプロモーター、GUSリーダー、DHFR遺伝子およびノパリンシンターゼターミネーターを含む。pSOG19中のGUSリーダーのメイズクロロティックモットルウイルス(MCMV)での置換によりベクターpSOG35を産生する。pSOG19およびpSOG35は、アンピシリン耐性のためのpUC遺伝子を担持し、外来配列、特に本発明のDNA分子のクローニングに利用可能なHindIII、SphI、PstIおよびEcoRI部位を有する。
【0118】
実施例9:葉緑体形質転換
形質転換ベクター
植物プラスチド中での本発明のDNA分子の発現のために、プラスチド形質転換ベクターpPH143(WO97/32011、実施例36)を使用する。次いで、このベクターをpPH143に挿入し、それによりPROTOXコード配列を置換する。このベクターを、次いでプラスチド形質転換におよびスペクチノマイシン耐性に関する形質転換体の選択に使用する。あるいは、DNA分子をpPH143に挿入し、aadH遺伝子を置換させる。この場合、形質転換体はPROTOX阻害剤に対する耐性に関して選択する。
【0119】
葉緑体形質転換
Nicotiana tabacum c.v. 'Xanthi nc'の種子を、T寒天培地上で1"環状配列でプレート当たり7つ発芽させ、種蒔き後12−14日に、本質的に記載のようなpPH143およびpPH145由来のDNAでコートした1μmタングステン粒子(M10、Biorad, Hercules, CA)で照射した(Svab, Z. and Maliga, P. (1993) PNAS 90, 913-917)。照射した苗をT培地上で2日間インキュベートし、その後葉を取り、500μg/mlスペクチノマイシンジヒドロクロライド(Sigma, St. Louis, MO)含有RMOP培地(Svab, Z., Hajdukiewicz, P. and Maliga, P. (1990) PNAS 87, 8526-8530)のプレート上に明るい光(350−500μmol光子/m/s)の中、背軸側を上に置いた。照射後3から8週間に白色葉の下に現れる耐性の芽を、同じ培地上でサブクローン化し、カルスを形成させ、2次芽を単離しサブクローン化する。独立したサブクローンの形質転換プラスチドゲノムコピーの完全な隔離(ホモプラスミシティー)は、サザンブロット(Sambrook et al., (1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor)の標準法で評価した。BamHI/EcoRI消化全細胞性DNA(Mettler, I. J. (1987) Plant Mol Biol Reporter 5, 346-349)を1%Tris−ボレート(TBE)アガロースゲルで分離し、ナイロン膜(Amersham)に移し、rps7/12プラスチド標的配列の部分を含むpC8由来の0.7kb BamHI/HindIII DNAフラグメントを含む32P標識した無作為にプライムしたDNA配列とプローブした。同原形質(homoplasmic)芽をスペクチノマイシン含有MS/IBA培地(McBride, K. E. et al. (1994) PNAS 91, 7301-7305)に無菌的に根付かせ、温室に移す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物細胞における標的遺伝子の発現を減少させる方法であって、該標的遺伝子のセンスRNAフラグメントおよび該標的遺伝子のアンチセンスRNAフラグメントを植物細胞に導入することを特徴とし、該センスおよびアンチセンスRNAフラグメントが1つのRNA分子に含まれており、該センスRNAフラグメントおよび該アンチセンスRNAフラグメントが二本鎖RNA分子を形成しうるものであり、センスおよびアンチセンス両方のフラグメントが存在することが、センスまたはアンチセンスいずれかのフラグメントが存在することよりも標的遺伝子の活性を低下させることに効果的であり、センスフラグメントとアンチセンスフラグメントとの間にイントロンプロセッシングシグナルを含むリンカーが存在するものである、方法。
【請求項2】
植物細胞における標的遺伝子の発現を減少させる方法であって、該細胞において該標的遺伝子のセンスRNAフラグメントおよび該標的遺伝子のアンチセンスRNAフラグメントを発現しうる1つのDNA配列を植物細胞に導入することを特徴とし、該DNA配列が該植物細胞のゲノム内に安定に組み込まれ、該センスおよびアンチセンスRNAフラグメントが1つのRNA分子に含まれており、該センスRNAフラグメントおよび該アンチセンスRNAフラグメントが二本鎖RNA分子を形成しうるものであり、センスおよびアンチセンス両方のフラグメントが存在することが、センスまたはアンチセンスいずれかのフラグメントが存在することよりも標的遺伝子の活性を低下させることに効果的であり、センスフラグメントとアンチセンスフラグメントとの間にイントロンプロセッシングシグナルを含むリンカーが存在するものである、方法。
【請求項3】
該標的遺伝子が該植物細胞の必須遺伝子である、請求項2記載の方法。
【請求項4】
該標的遺伝子が該植物細胞のゲノム内に安定に組み込まれた異種遺伝子である、請求項2記載の方法。
【請求項5】
該異種遺伝子が染色体外分子として該植物細胞中に存在する、請求項2記載の方法。
【請求項6】
該DNA分子が、該第1のDNA配列に作動可能に連結された第1のプロモーターおよび該第2のDNA配列に作動可能に連結された第2のプロモーターをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項7】
標的遺伝子のセンスRNAフラグメントおよび標的遺伝子のアンチセンスRNAフラグメントを発現しうる1つのDNA配列を含む植物細胞であって、該DNA配列が該植物細胞のゲノム内に安定に組み込まれており、該センスおよびアンチセンスRNAフラグメントが1つのRNA分子に含まれており、該センスRNAフラグメントおよび該アンチセンスRNAフラグメントが二本鎖RNA分子を形成しうるものであり、センスおよびアンチセンス両方のフラグメントが存在することが、センスまたはアンチセンスいずれかのフラグメントが存在することよりも標的遺伝子の活性を低下させることに効果的であり、センスフラグメントとアンチセンスフラグメントとの間にイントロンプロセッシングシグナルを含むリンカーが存在するものである、植物細胞。
【請求項8】
請求項7記載の植物細胞に由来する植物およびその子孫。
【請求項9】
請求項8記載の植物に由来する種子。

【公開番号】特開2009−261403(P2009−261403A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148820(P2009−148820)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【分割の表示】特願2000−551014(P2000−551014)の分割
【原出願日】平成11年5月25日(1999.5.25)
【出願人】(501016559)シンジェンタ・パティシペーションズ・アクチェンゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】Syngenta Participations AG
【Fターム(参考)】