説明

植物栽培容器を用いた立体型植物育成装置

【課題】本発明は、植物が安定した状態で健全に生育できる環境を構成し、それらを連結することにより、簡易で安価な壁面等での植物育成を可能にし、メンテナンスの容易な立体型植物育成装置を提供するものである。
【解決手段】本発明は、壁面等に取り付けることが出来る形状で、オーバーフローにより水を一定量貯水できる構造とした貯水タンクCと、貯水タンクCに併合できる形状にしたフタBに植物E等を入れる植栽ポケット1を設け、給水材2により、貯水タンクCの水を植物Eに供給して植物を栽培する植物栽培容器Aを構成し、植物栽培容器Aを上下に連結することにより立面等を構成することを特徴とした立体型植物育成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底面から給水材で植物に水を供給して植物を栽培する植物栽培容器と、それを連結した立体型植物育成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
壁面等を構成する立体型の植物育成装置は、(例えば、特許文献1参照)のように植物を育成する土壌等を袋状の支持材に入れたものや、(例えば、特許文献2参照)のように網状構造体で支持するなどして、土壌や腐植を植栽基盤にして植物を植え付け、養生育成したものを壁面等に取り付ける方法が知られており、(例えば、特許文献3参照)も同様である。これらの方法は、壁面等に設置するまでに時間と労力を要するものが多く、利用できる植物の種類が限られ、さらに、設置後水が下部にかたより、植物が均一な生育をせずに枯死することもあった。
【特許文献1】特開平10−066452広報
【特許文献2】特開2004−097205広報
【特許文献3】特開2002−335765広報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1、2、3に記載されているような、土壌等の培地を壁面等に取り付ける形状にして植物を育成する方法は従来から行われている。しかし、これらの方法はいずれも平面型の植栽面を立面に取り付けたものであり、植物基盤の育成や設置、潅水設備等、装置が大掛かりで時間と労力を要し、荷重も大きくなるために大規模に施工するには問題があった。
【0004】
しかも、これらの方法では立面に設置した場合の水分バランスが悪く、上部が乾燥して下部が過湿状態になることにより植物が均一に育たず、植栽できる植物の種類が限られていた。
【0005】
本発明は、まず植物が安定した状態で健全に生育できる環境を創り出し、それらを簡易に連結することにより立体的な展開を可能として、簡易で安価な壁面等での植物育成を可能にすることを目的とし、合わせて、水で植物を育成することにより、水の貯水や循環を利用してメンテナンスの容易な立体型植物育成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するために、底面給水による植物栽培容器を貯水タンクとフタで構成し、良好な生育を示す構造とするとともに、これらの植物栽培容器を複数連結することにより、立面等において均一で健全な植物育成を可能にした。
【0007】
また、フタに植物の植え付け用の植栽ポケットを設けて、事前の植物育成をすることなく、市販の植物をその場で植栽ポケットに入れることで植え付けが完了するようにした。
【0008】
さらに、貯水タンクに一定の貯水機能を備えて長期間灌水せずに植物を生育させるとともに、給水材で植物に水を供給して常時適正な水分状態を維持し、かつ大量に水を与えても植物が枯れない構造とした。
【0009】
また、貯水タンクに連結送水管等を設けてオーバーフローにより一定の水位を保ち、余剰水を下段の植物栽培容器に順次配って全体を灌水できる構造にするとともに、最下段の貯水タンクをベースタンクとして貯水量を増やし、連結通水口を設けて互いを連結することにより一体型の貯水タンクとし、ベースタンクの水をタイマー付きポンプ等で最上段の植物栽培容器に送って循環する構造とした。
【発明の効果】
【0010】
本発明は以上のように構成され次のような効果を奏する。本発明に係る立体型植物育成装置は、給水材を利用した底面給水による栽培方法で植物に対する水の過不足が無いため、植物を乾燥や過湿障害によって枯死させることなく均一かつ健全に育成できる。
【0011】
また、植物の植え付けが簡単で、施工時にフタに設けた植栽ポケットに植物を入れるだけで完了し、事前の植物育成を必要とせずに市販の植物を使用して仕上げることができる。
【0012】
また、一定量の水を保持する貯水部を設けて、長期間灌水せずに植物を生育させるとともに、給水材で植物に水を供給して常時適正な水分状態を維持し、かつ大量に水を与えても植物が枯死しない。
【0013】
さらに、植物栽培容器を連結して使用でき、上部から下部の植物栽培容器に余剰水をオーバーフローさせて全体を灌水することができる。従って、最上部の植物栽培容器に水を供給するだけで全体の灌水が完了する。
【0014】
また、最下部の貯水タンクの構造を改良して、タンク同士を連結通水させて一体型の貯水タンクとして大量の水を貯水するとともに、タイマー付きポンプ等で最上段の植物栽培容器に水を送って循環し、水の有効利用を図ることができる。
【0015】
以上のように、植物栽培容器を上下に連結して立面等で植物を育成でき、現場で組み立てて植物をセットすることで簡易に立体型植物育成装置が完成する。
【0016】
また、メンテナンス面でも、灌水の省力化が図れることはもちろん、液体肥料を使用すれば肥料管理も簡単であり、土壌等を使用しないために除草の必要もない。さらに、季節に合わせた植物の植え替えも簡単に行える。
【0017】
また、本発明の立体型植物育成装置は栽培できる植物の種類が多く、草花やグラウンドカバー、低潅木、観葉植物などの鑑賞用はもちろん、野菜などの農作物の栽培にも利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態を図1、図2に基づいて説明する。本発明は、壁面等に取り付けることが出来る形状で、オーバーフローにより水を一定量貯水できる構造とした貯水タンクCと、貯水タンクCに併合できる形状にしたフタBに植物E等を入れる植栽ポケット1を設け、給水材2により、底面から貯水タンクCの水を植物Eに供給して植物を栽培する植物栽培容器Aを構成し、植物栽培容器Aを上下に連結することにより立面等を構成することができる。
【0019】
フタBは、貯水タンクCを覆い貯水タンクC内に光を入れない構造にし、フタBの表面に植栽ポケット1を設けて植物Eが入る形状にし、植栽ポケット1の周囲に通気口3を設けて発根を促進し、植栽ポケット1の底部は給水材2を支持するとともに、給水材2が植物Eの土の部分に接地して水を供給できる構造とする。
【0020】
またフタBは、上部に連結機能を兼ねた給水口4を設けるとともに、表面に水温上昇を防止する換気口5と、表面水を受けて貯水タンクCに水を落とす水受け板6及び入水口7を設ける。
【0021】
貯水タンクCに連結送水管8を設け、オーバーフローにより植栽ポケット1の底部より低い位置に一定の水位を保ち、連結送水管8より排水された水が、下層に連結された植物栽培容器Aの貯水タンクCに溜まり、順次貯水タンクCを満たしながら重力で最下層の貯水タンクCに水を送る構造とし、植栽ポケット1の底部と連結送水管8上部との間に排水口9を設ける。さらに、貯水タンクC底面にフタBと併合できるジョイント部10を設けて、植物栽培容器Aを上下に連結する構造とする。
【0022】
植物栽培容器Aの最下段に設置される貯水タンクCは、ベースタンクDとして底面を大きくすることにより貯水容量を増やし、連結して立面等を構成した植物栽培容器A全体を支える構造とし、ベースタンク排水口11を設け、オーバーフローにより植栽ポケット1の底部より低い位置で水位を保つとともに、ベースタンク排水口11より低い位置に連結通水口12を設け、ベースタンクDを互いに連結することにより一体型の貯水タンクとする。
【0023】
植物栽培容器Aの植栽ポケット1を、横に数個設けて横長の形状とした植物栽培容器Aを、上下に連結する事により立面等を構成することを可能にし、また、植物栽培容器Aを縦に数段設けて縦長の形状として一体化した植物栽培容器Aを、左右に連結することにより立面等の構成を可能にする。
【0024】
植物栽培容器Aを連結したベースタンクDに送水管13を接続し、タイマー付きポンプ14等により最上段の植物栽培容器Aに設けた給水口4に供給することにより、立面全体を灌水して水を循環させる構造とする。
【0025】
立体型植物育成装置の、最上段の植物栽培容器Aに設けた給水口4に雨水管等を接続することにより、雨水を利用して植物を育成する。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、草花や農作物など幅広い植物の栽培に実用でき、立面等に対してさまざまな形態の広がりを持たせた植栽を、簡易かつ確実に行うのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】請求項1から7記載の植物栽培容器の分解斜視図である。
【図2】請求項1から7記載の立体型植物育成装置の構成図である。
【符号の説明】
【0028】
A 植物栽培容器
B フタ
C 貯水タンク
D ベースタンク
E 植物
1 植栽ポケット
2 給水材
3 通気口
4 給水口
5 換気口
6 水受け板
7 入水口
8 連結送水管
9 排水口
10 ジョイント部
11 ベースタンク排水口
12 連結通水口
13 送水管
14 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、壁面等に取り付けることが出来る形状で、オーバーフローにより水を一定量貯水できる構造とした貯水タンクと、貯水タンクに併合できる形状にしたフタに植物等を入れる植栽ポケットを設け、給水材により、貯水タンクの水を植物に供給して植物を栽培する植物栽培容器を構成し、植物栽培容器を上下に連結することにより立面等を構成することを特徴とした立体型植物育成装置である。
【請求項2】
請求項1のフタは、貯水タンクを覆い貯水タンク内に光を入れない構造にし、フタの表面に植栽ポケットを設けて植物が入る形状にし、植栽ポケットの周囲に通気口を設け、植栽ポケットの底部は給水材を支持するとともに、給水材が植物の土の部分に接して水を供給できる構造とした立体型植物育成装置である。
【請求項3】
請求項1のフタは、貯水タンクを覆い貯水タンク内に光を入れない構造にし、上部に連結機能を兼ねた給水口を設けるとともに、表面に換気口と、表面水を受けて貯水タンクに水を落とす水受け板及び入水口を設けた立体型植物育成装置である。
【請求項4】
請求項1の貯水タンクに連結送水管等を設け、オーバーフローにより植栽ポケット下部より低い位置に一定の水位を保ち、連結送水管より排水された水が、下層に連結された植物栽培容器の貯水タンクに溜まり、順次貯水タンクを満たしながら重力で最下層の貯水タンクに水を送る構造とし、植栽ポケットの底部と連結送水管上部との間に排水口を設ける。さらに、貯水タンク底面にフタの給水口と併合できるジョイント部を設けて、植物栽培容器を連結する構造とした立体型植物育成装置である。
【請求項5】
請求項1の植物栽培容器の最下段に設置される貯水タンクは、ベースタンクとして底面を大きくするなどして貯水容量を増やし、連結した植物栽培容器全体を支える構造とし、ベースタンク排水口を設け、オーバーフローにより植栽ポケットの底部より低い位置で水位を保つとともに、ベースタンク排水口より低い位置に連結通水口を設け、ベースタンクを互いに連結することにより一体型の貯水タンクとした立体型植物育成装置である。
【請求項6】
請求項1の植物栽培容器の植栽ポケットを、横に数個設けて横長の形状とした植物栽培容器を、上下に連結する事により立面等を構成することを可能にし、また、請求項1の植物栽培容器を縦に数段設けて縦長の形状として一体化した植物栽培容器を、左右に連結することにより立面等の構成を可能にした立体型植物育成装置である。
【請求項7】
請求項1の植物栽培容器を連結した最下段のタンクに送水管を接続し、タイマー付きポンプ等により最上段の植物栽培容器に設けた給水口に供給することにより、立面全体を灌水して水を循環させる構造とした立体型植物育成装置である。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−42775(P2006−42775A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251135(P2004−251135)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(501307527)
【Fターム(参考)】