説明

植物栽培担体

【課題】建築物の周囲に均等に繁殖させることが容易となり、また通常時の手入れや植物が枯れた場合の除去等のメンテナンスが簡単となる植物栽培担体を提供する。
【解決手段】施肥要素を含む芯部材2と、芯部材2の周囲に配置される第一のゲル層3と、第一のゲル層3の周囲に配置され、種子を含む第二のゲル層4と、第二のゲル層4の周囲に配置されたロープ層5と、を有する植物栽培担体とする。なおこの場合において、芯部材2は、植物繊維支持体に、施肥要素を含浸させたものであることが好ましい。また、この場合において、芯部材2の延伸する方向に沿って、複数の支持部材が配置されていることも好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物栽培担体に関する。
【背景技術】
【0002】
都市部のヒートアイランド現象を解決することは、夏場のピーク電力を削減し、近年の地球温暖化を防止するためにも非常に重要である。
【0003】
都市部のヒートアイランド現象を解決するための一手段として、例えば、ビルなどの建築物の屋上や壁面に植物を繁殖させ、植物により建物に直接照射される日光を弱め、建物表面温度の低下を図ること(建築物の壁面等緑化)が有用である。
【0004】
建物等の壁面等緑化を行なおうとする場合、つた系の植物を栽培し、建築物周囲に這わせるように繁殖させるのが一般的である。しかしながら、建築物の周囲に均等に繁殖させるのは難しく、また通常時の手入れや植物が枯れた場合の除去等のメンテナンスが非常に困難であるといった課題がある。
【0005】
一方で、例えば下記特許文献1には、植生基板土を内包した植生マットを備え、格子状のネットシートを用いた植生基板体を有する壁面緑化装置が開示されている。
【0006】
また、例えば下記非特許文献1には、肥料袋つき植生ネットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−54611号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】インターネット、http://www.nikken−kasei.co.jp/item/main.php?mode=detail&article=85&cat=47
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、植生マットを使用したものであり、植物の育成高さの限界が緑化高さの限界となり、ある程度以上高層の建築物には適用が極めて困難であるといった課題がある。
【0010】
なお、上記非特許文献1に記載の植生ネットは、水等によって土壌肥料袋から肥料等が土壌表面に溶け出し、植物が土壌で育成することを前提としており、上記特許文献1と同様、植物の育成高さの限界が緑化高さの限界となる。
【0011】
そこで、本発明は、上記課題を鑑み、建築物の周囲に均等に繁殖させることが容易となり、また通常時の手入れや植物が枯れた場合の除去等のメンテナンスが簡単となる植物栽培担体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
即ち、上記課題を解決するための第一の観点にかかる植物栽培担体は、施肥要素を含む芯部材と、この芯部材の周囲に配置される第一のゲル層と、この第一のゲル層の周囲に配置され、種子を含む第二のゲル層と、この第二のゲル層の周囲に配置されたロープ層と、を有することを特徴の一つとする。
【発明の効果】
【0013】
以上本発明により、建築物の周囲に均等に繁殖させることが容易となり、また通常時の手入れや植物が枯れた場合の除去等のメンテナンスが簡単となる植物栽培担体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る植物栽培担体の概略断面図である。
【図2】実施形態に係る植物栽培担体の外観図である。
【図3】実施形態に係る植物栽培担体の概略断面図である。
【図4】実施形態に係る植物栽培担体を建築物に這わせた場合のイメージ図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる態様による実施が可能であり、以下に示す実施形態、実施例の例にのみに狭く限定されるものではない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る植物栽培担体(以下「本植物栽培担体」という。)1の概略断面図である。本図で示すように、本植物栽培担体1は、施肥要素を含む芯部材2と、芯部材2の周囲に配置される第一のゲル層3と、第一のゲル層3の周囲に配置され、種子を含む第二のゲル層4と、第二のゲル層4の周囲に配置されたロープ層5と、を有し、線状に長いものとなっている。
【0017】
本実施形態において、芯材2は、本植物栽培担体1の核となる部材であり、施肥要素を含む。芯材2の材料としては、第一のゲル層3及び第二のゲル層4を周囲に保持することができる程度に固い物質であることが好ましく、さらに、空隙の多い材料を用いると、この空隙に施肥要素を含浸することができ、より好ましい。この材料としては、限定されるわけではないが、例えば竹繊維、稲藁等の植物繊維からなる植物繊維支持体であることは好ましい一例である。なお、芯材2の径としては、特に限定されるわけではないが、第二のゲル層4の径を1とした場合、0.02以上0.1以下の範囲であることが好ましい。
【0018】
また本実施形態において、芯材2に含まれる施肥要素とは、植物の生育を確保するものであって、例えば高濃度の液状肥料、粉末状肥料、バイオマスエタノール等発酵生成物製造後の残渣を例示することができるが、これに限定されない。施肥要素が保持された芯材は、施肥要素を含む水溶液を作成し、処理前の芯材を浸すことですることで作製できる。
【0019】
本実施形態において、第一のゲル層3は、芯材2の周囲に配置されたゲル状の物質からなる層である。ゲル状の層とすることで、本植物栽培担体は水分を多量に含むことが可能となるとともに芯材2から溶出する施肥要素を拡散させることができるとともに、本植物栽培担体を一定の形状を保つことができる。
【0020】
また本実施形態において、第一のゲル層3は、第二のゲル層4よりも含浸させた液体の拡散性が低いものであることが好ましい。このようにすることで芯材2からの施肥要素の溶出の速度を遅くなるよう調節することができ、また、芯材の乾燥を防止しやすくなる。
【0021】
第一のゲル層3の材料としては、限定されるわけではないが、例えばヘミセルロース、ムコ多糖、コラーゲンを採用することができる。なおヘミセルロースの場合、例えばキシラン、マンナン、グルコマンナン、グルクロノキシラン等を例示することができる。
【0022】
また、第一のゲル層3の径(芯材2を含む)としては、限定されるわけではないが、第二のゲル層4の径を1とした場合、0.05以上0.2以下の範囲であることが好ましい。
【0023】
また本実施形態において、第二のゲル層4は、第一のゲル層4の周囲に配置されたゲル状の物質からなる層であり、上記の通り、第一のゲル層3よりも含浸させた液体の拡散性が高いものであることが好ましい。このようにすることで芯材2からの施肥要素の溶出の速度を遅くなるよう調節することができる。
【0024】
第二のゲル層の材料4としては、上記機能を有する限りにおいて限定されないが、例えば寒天やポリアクリルアミド等の高吸水性・保水性のゲルであることが好ましい。
【0025】
また本実施形態において、第二のゲル層4の中には、植物の種子が埋め込まれており、この種子が発芽することで植物を保持する植物栽培担体となる。発芽した種子の根は第二のゲル層4内に張り、植物が発芽することで植物担体の形状をより安定的に保持することができるようになる。
【0026】
また本実施形態において、第二のゲル層4には、蒸散防止材を含んでいることが好ましい。蒸散防止材を含むことで、第二のゲル層4の過度の乾燥を防ぐことができる。蒸散防止材は、第二のゲル層4に内包させてもよいが第二のゲル層4の周囲に層として形成することが好ましい。なお、蒸散防止材としては、特に限定されるわけではないが、フルクトース等の糖類が好ましい。糖類を用いると、乾燥が進んだ場合、表面硬化作用が進み、蒸散を効率よく防止することができるといった利点がある。
【0027】
なお、第二のゲル層の径としては、適宜調整が可能であり限定されるわけではないが、扱いやすさの観点から5mm以上3cm以下の範囲であることが好ましい。
【0028】
また本実施形態において、ロープ層5は、第二のゲル層4の周囲に配置されるものであって、強度を補強することのできる材料である。ロープ層5の材料としてはこの機能を有する限りにおいて限定されるわけではなく、例えば竹繊維等の植物繊維やビニル等のポリマー材料を好適に用いることができる。
【0029】
また本実施形態において、ロープ層5は、複数のロープ素材51によって撚られていることが好ましい。このようにすることで、ロープ素材51の間から第二のゲル層4から発芽した植物が芽を出すことができるようになる。この形態の外観図の例を例えば図2に示しておく。
【0030】
更に、本実施形態において、芯材2の周囲、第一のゲル層3及び第二のゲル層4内に、一定の間隔をあけて、立体構造物6が配置されていることが好ましい。この概略図を図3に示しておく。このように立体構造物6を一定の間隔をあけて配置することで、植物栽培担体の形状を安定的に保つことができるようになる。なおこの場合における間隔は、植物栽培担体を安定的に構造を維持することができる限りにおいて限定されるわけではないが、5cm以上100cm以下の範囲であることが好ましく、より好ましくは10cm以上50cm以下の範囲である。
【0031】
また本実施形態において、立体構造物6は、限定されるわけではないが、例えばひも状部材を芯材周囲に結びつけた結び目であることは好ましい一例である。なおひも状部材自身も芯材2と同様の部材で構成されていることも好ましい。
【0032】
以上、建築物の周囲に均等に繁殖させることが容易となり、また通常時の手入れや植物が枯れた場合の除去等のメンテナンスが簡単となる植物栽培担体を提供することができる。本実施形態に係る植物栽培担体を建物の周囲に配置した例を図4に示しておく。本植物栽培担体によると、芯材を中心にした線状となっているため、ネット状に組み合わせることも可能であり、更には、上記図2の例で示したように、複数の植物栽培担体を撚り合わせて一本のロープ状とすることも可能である。また建築物の周囲に配置した場合、屋上に雨水タンクを設け、この雨水タンクにこの植物栽培担体を接続することも好ましい。このようにすることで、常時水を保持することが可能となり、通常時の手入れが容易となるとともに、植物は植物栽培担体のゲル層に根を張るため、植物が枯れた場合、本植物栽培担体を除去するだけで植物を除去することができ、簡易なメンテナンスが可能となるといった効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、植物栽培担体として産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
施肥要素を含む芯部材と、
前記芯部材の周囲に配置される第一のゲル層と、
前記第一のゲル層の周囲に配置され、種子を含む第二のゲル層と、
前記第二のゲル層の周囲に配置されたロープ層と、を有する植物栽培担体。
【請求項2】
前記芯部材は、植物繊維支持体に、施肥要素を含浸させたものである請求項1記載の植物栽培担体。
【請求項3】
前記第一のゲル層は、低拡散性のゲルである請求項1記載の植物栽培担体。
【請求項4】
前記第二のゲル層は、吸水性のゲルである請求項1記載の植物栽培担体。
【請求項5】
前記芯部材の延伸する方向に沿って、複数の支持部材が配置されている請求項1記載の植物栽培担体。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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