説明

植物栽培用装置

【課題】 植物の栽培に有利な培地の水分管理を行うことのできる植物栽培装置を提供する。
【解決手段】 植物3に対して光照射をする光源2と、植物3が植えられた培地の含水率を検出する含水率センサ6と、含水率センサ6によって検出された含水率に応じて光源2の点灯動作を制御する制御装置5とを備えている。また植物3に対して熱供給をする熱源4と、植物3が植えられた培地の含水率を検出する含水率センサ6と、含水率センサ6によって検出された含水率に応じて熱源4の加熱動作を制御する制御装置5とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉢物の花卉類や観葉植物などの観賞用の植物に対する植物栽培用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉢物の花卉類や観葉植物などの観賞用の植物に対する植物栽培用装置として、人口光を照射して鑑賞期間を延長させる植物栽培用装置が知られている。これは、植物が植えられる培地を受ける容器と、植物の栽培に必要な光、例えば波長域が400〜500nmのもの及び600〜700nmのものを照射する光源とを備えたものである。この場合、人口光の照射により、植えられた植物は光合成を活発に行い、根からの水分の吸い上げ又は葉からの水分の蒸散が促進され、培地の水分は照射時間の経過と共に減少する。
【0003】
また寒さに弱い種類の植物に対する植物栽培用装置として、植物又は培地を保温するために、これらを加熱して鑑賞期間を延長させる植物栽培用装置も知られている。これは、植物が植えられる培地を受ける容器と、植物の栽培に必要な熱を加える熱源とを備えたものである。この場合も、同様に培地の水分は加熱時間の経過と共に減少する。
【0004】
ここで、培地の水分は植物の栽培に影響を与えることから、これを管理する技術として、特開2002−365255号公報(特許文献1)に記載されているもの、すなわち、土中に埋め込んだ土壌湿度感知器により、土壌の含水率を測定し、水分の管理時期が報知されるものが例示されている。
【特許文献1】特開2002−365255号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記構成では、水分の供給時期又は供給の停止時期が報知されるのみで、培地の水分を調節するためには、培地表面に水分を供給し、又は培地表面への水分の供給を停止しなければならなかった。そして培地表面へ供給された水分が培地全体に均一に拡散するまでにある程度の時間が必要であるから、植物の栽培に有利な培地の水分管理が困難となるという可能性があった。例えば、光照射又は加熱によって光合成が活発になった場合、植物の根の近傍は水分が不足しているが、培地表面に供給された水分がこの部分に拡散するまでの間は、植物が栽培に不利な環境にさらされてしまうといったものである。
【0006】
本願発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、植物の栽培に有利な培地の水分管理を行うことのできる植物栽培装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願発明は、植物に対して光照射をする光源と、植物が植えられた培地の含水率を検出する含水率センサと、含水率センサによって検出された含水率に応じて光源の点灯動作を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする植物栽培用装置である。
【0008】
また本願発明は、植物に対して熱供給をする熱源と、植物が植えられた培地の含水率を検出する含水率センサと、含水率センサによって検出された含水率に応じて熱源の加熱動作を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする植物栽培用装置である。
【発明の効果】
【0009】
本願発明によれば、植物が植えられた培地の含水率に応じて、光源の点灯動作が制御されることで、植物の光合成の程度が調節され、すなわち根からの水分の吸い上げが調節されるので、培地表面に水分を供給する場合に比べ、植物の栽培に有利な培地の水分管理を行うことができる。
【0010】
また本願発明によれば、植物が植えられた培地の含水率に応じて、熱源の加熱動作が制御されることで、植物の光合成の程度が調節され、すなわち根からの水分の吸い上げが調節されるので、培地表面に水分を供給する場合に比べ、植物の栽培に有利な培地の水分管理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本願の請求項1及び2に対応した植物栽培用装置1の一実施形態を図1及び図2により説明する。
【0012】
本実施形態の植物栽培用装置1は、図1及び図2に示す如く、植物3に対して光照射をする光源2と、植物3が植えられた培地の含水率を検出する含水率センサ6と、含水率センサ6によって検出された含水率に応じて光源2の点灯動作を制御する制御装置5とを備えたことを特徴とする。
【0013】
また本願発明は、植物3に対して熱供給をする熱源4と、植物3が植えられた培地の含水率を検出する含水率センサ6と、含水率センサ6によって検出された含水率に応じて熱源4の加熱動作を制御する制御装置5とを備えたことを特徴とする。
【0014】
なお、含水率とは、水の質量と土粒子の乾燥質量の比で定義される含水比、及び水の体積と土壌の体積の比で定義される体積含水率のいずれも含むものである。
【0015】
以下、本実施形態による植物栽培用装置1の構成を、より具体的詳細に説明する。
【0016】
最初に、光源2について説明する。これは図1に示すごとく、円筒形状のランプであり、その両端が、下方が開口された略箱状の蓋部21の対向する内側面に支持されている。また支持された端部は図示しない接続線を経由して制御装置5に接続されており、制御装置5から電力の供給を受けて、点灯するようになっている。なお蓋部21の材質としては金属、樹脂等の汎用である成形材料が選択される。
【0017】
そして蓋部21の開口部に嵌合されるように薄肉板状で半透明のフィルタ部22が備えられる。フィルタ部22は光源2からの光の波長を植物3の栽培に最適なものとする。なおフィルタ部22の材質としては、透明ガラス表面に所定の波長を吸収する波長吸収材を貼り付けたもの、メタクリル酸メチルに所定の波長を吸収する波長吸収剤を分散させたもの等の汎用の部材が選択される。
【0018】
この状態で、蓋部21の開口側の端面23は、植物3の周囲を覆う中空角柱状のガラスケース7の上側端面に載置され、図示しない止め具で固定される。ここでガラスケース7は密閉されたものであってもよいし、一部に開口を有するものであっても良い。密閉されたものである場合は、密閉空間内の温湿度をコントロールしやすくなり、一部に開口を有するものである場合には、植物3に対する水遣り、肥料補充等のメンテナンスが容易となる。
【0019】
次に、熱源4について説明する。これは図1に示すごとく、薄肉板状のヒーターであり、架台8の上面中央に設けられた凹部に載置され、その上に導電性カバー体41が設けられる。導電性カバー体41は、金属板、熱伝導性材料を分散させたゴム板等の、熱源4を水分又は衝撃から保護しうる汎用の部材が選択される。また熱源4は図示しない接続線を経由して制御装置5に接続されており、制御装置5から電力の供給を受けて、発熱するようになっている。
【0020】
次に、含水率センサ6について説明する。これは図1に示すごとく、TDR方式に従ったプローブ部を備え、培地にプローブ部が挿入されて含水率を測定するものである(例えば、Campbell Scientific社製「HydroSense」)。含水率センサ6は図示しない接続線を経由して制御装置5に接続されており、プローブ部による測定結果に従って、光源2や熱源4へ供給される電力が制御される。
【0021】
次に、制御装置5について説明する。これは図1に示すごとく、平板状の外観であり、架台8の下面中央に設けられた凹部に載置される。また制御装置5の正面には、光源2及び熱源4に対する制御条件を送受信するインターフェース部51と、植物栽培用装置の動作状況を表示する第一の動作表示部52、第二の動作表示部53とが、備えられている。そして制御装置5の内部には、光源2及び熱源4に対する制御条件を記憶する記憶手段と、含水率センサ6からの含水率が入力される入力手段と、記憶された制御条件と入力された含水率とに基づいて光源2及び熱源4へ制御された電力を供給する出力手段と、を備えている。
【0022】
次に、架台8について説明する。これは図1に示すごとく、上面中央と下面中央に凹部を有する板状の部材であり、上面の外縁がガラスケース7の下側端面32と略同形状となっている。そして下面中央の凹部に制御装置5が、上面中央の凹部に熱源4が、それぞれ載置される。また熱源4の上面には、導電性カバー体41を挟んで、植物3が植えられる培地を入れる容器9が載置され、容器9の内部の培地に植物3が植えられる。
【0023】
この状態で、ガラスケース7の下側端面は、導電性カバー体41を挟んで、架台8の上面の外縁に載置され、図示しない止め具で固定される。
【0024】
次に、本実施形態による植物栽培用装置1の動作を、より具体的詳細に説明する。
【0025】
まず、植物3が植えられた培地を入れた容器9は、熱源4の上面に設けられた導電性カバー体41に載置され、含水率センサ6が培地に挿入される。次いで植物3の周囲を覆うようにガラスケース7が載置され、ガラスケース7の上側端面に蓋部21の開口側の端面23が載置されて、植物栽培用装置1が構成される。
【0026】
次いで、制御装置5の正面に設けられたインターフェース部51を経由して、光源2及び熱源4に対する制御条件が制御装置5の記憶手段に入力される。制御条件は植物3の種類に応じて任意のものが選択される。次いで、記憶手段に入力された制御条件に従って、制御装置5の出力手段から電力が供給され、光源2が点灯し、熱源4が発熱する。また含水率センサ6が培地の含水率を測定し、制御装置5の入力手段へ、含水率が入力される。この時、植物栽培用装置1が動作していることを目視で確認できるよう、制御装置5の正面に設けられた第一の動作表示部52が点灯する。
【0027】
そして、時間の経過と共に、植えられた植物が光合成を活発に行うことで、根からの水分の吸い上げ又は葉からの水分の蒸散が促進され、培地の含水率が記憶手段に入力された制御条件で定められた値を下回ったとなった時に、制御装置5の出力手段からの電力が停止され、光源2が消灯し、熱源4が発熱を停止する。このとき培地の含水率が記憶手段に入力された制御条件で定められた値を超えていることを目視で確認できるよう、制御装置5の正面に設けられた第二の動作表示部53が点灯する。
【0028】
従って、本実施形態によれば、植物が植えられた培地の含水率に応じて、光源の点灯動作が制御されることで、植物の光合成の程度が調節され、すなわち根からの水分の吸い上げが調節されるので、培地表面に水分を供給する場合に比べ、植物の栽培に有利な培地の水分管理を行うことができる。
【0029】
また本実施形態によれば、植物が植えられた培地の含水率に応じて、熱源の加熱動作が制御されることで、植物の光合成の程度が調節され、すなわち根からの水分の吸い上げが調節されるので、培地表面に水分を供給する場合に比べ、植物の栽培に有利な培地の水分管理を行うことができる。
【0030】
なお本実施形態では、植物3の周囲を中空角柱状のガラスケース7で覆うこととしたが、ガラスケース7で覆うことなく、図3に示すごとく、蓋部21の開口側の端面23と、架台8の上面の外縁とを、支持柱71で連結することとしてもよい。この場合は、植物3に対する水遣り、肥料補充等のメンテナンスが容易となる。
【0031】
また本実施形態では、植物栽培用装置1の動作状況を確認するために、第一の動作表示部52、第二の動作表示部53の点灯に替えて、又は加えて、警報を鳴らしたり、電子メールで管理者に通報することとしてもよい。この場合、管理者が植物3の状況を確実に把握することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本願発明の一実施形態の縦断面図
【図2】本願発明の一実施形態の斜視図
【図3】本願発明の他の実施形態の斜視図
【符号の説明】
【0033】
1 植物栽培用装置
2 光源
3 植物
4 熱源
5 制御装置
6 含水率センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物に対して光照射をする光源と、植物が植えられた培地の含水率を検出する含水率センサと、含水率センサによって検出された含水率に応じて光源の点灯動作を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする植物栽培用装置。
【請求項2】
植物に対して熱供給をする熱源と、植物が植えられた培地の含水率を検出する含水率センサと、含水率センサによって検出された含水率に応じて熱源の加熱動作を制御する制御装置とを備えたことを特徴とする植物栽培用装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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