説明

植物栽培装置

【課題】 狭小なスペースを有効に活用して多量の植物を栽培できる植物栽培装置を提供することを目的とする。
【解決手段】植物栽培装置1は栽培室20が形成された筐体10を備える。筐体10内部の栽培室20には垂直に延びる支柱21およびこの支柱21に略平行な光源17を設ける。また、支柱21に沿って複数の保持具22を多段に設置し、各保持具22に複数の栽培容器23を同一平面に並べて保持させるとともに、筐体側方から光源17を照射するようにする。本発明によれば、栽培室20内を垂直方向に多段に区切ることなく栽培容器23を多段に並べることができ、狭いスペースで多くの植物を栽培できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体内部のような閉鎖的な空間内において人工光を用いて植物を栽培する植物栽培装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人工的な環境で植物を育成する植物栽培装置として、筐体の内部に蛍光灯等の光源を備える栽培室を有する装置が知られている。こうした植物栽培装置では、筐体内部という限られた空間で多くの植物を効率よく栽培することが求められる。
【0003】
そこで、植物が植栽された栽培容器を筐体内部に収容する複数の育成ユニットを多段に積み重ねた植物栽培装置が提案されている(特許文献1)。特許文献1に開示された装置の各育成ユニットは、複数の植物が植栽される栽培容器と、この栽培容器の植栽面に対してほぼ垂直な方向から光を照射する光源と、栽培容器と接続された給水パイプ及び排水パイプと、を有する。この植物栽培装置では、上段側の育成ユニットから延出する排水パイプと、下段側の育成ユニット内に延びる給水パイプとが接続されることにより、任意の数の育成ユニットを積層することができ、狭小なスペースで多くの植物を育成できる。
【特許文献1】特開2004−121074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし前記植物栽培装置では、複数の育成ユニットのそれぞれに栽培容器と光源とを設ける必要があり、多くの光源を必要とする。また、互いに積層された複数の育成ユニット間は筐体の壁で区切られており、各育成ユニットの内部空間は狭小であるため、光源から放射される熱の影響を受けやすい。このため、各育成ユニットに換気用のファンや通気口を設ける必要が生じ、装置構成が複雑化する。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み、装置構成を簡略化し、また、狭小なスペースを有効に活用して多量の植物を栽培できる植物栽培装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る植物栽培装置は、上記の課題を解決するため、筐体内部に垂直に延びる支柱を設け、この支柱に沿って複数の保持具を設置し、各保持具に複数の栽培容器を同一平面に並べて多段に保持させるとともに、筐体側方から光源を照射するようにしたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、複数の栽培容器を同一平面に並べて保持する保持具を複数、支柱に沿って並べることで、栽培容器を水平方向のみならず垂直方向にも保持することができる。本発明では栽培室内を垂直方向に多段に区切ることなく栽培容器を多段に並べることができるため、空気や二酸化炭素ガス等の気体は栽培室内全体を移動する。このため、栽培室内の温度変動を抑制して安定した環境を維持できる。また、本発明の植物栽培装置では、光源は筐体側方から、すなわち多段に配置された栽培容器に対して水平な方向から照射されるため、複数の段ごとに光源を設ける必要がない。
【0008】
本発明の請求項2に係る植物栽培装置では、支柱を栽培室の略中央に配置するとともに、栽培容器を水平断面が略二等辺三角形をなす略三角柱状とし、三角形の頂点を支柱側にして略放射状に配置する。このように栽培容器を略三角柱状とすることにより、複数の栽培容器をほぼ隙間なく略円形に並べることができる。このため請求項2に係る植物栽培装置では、狭い平面により多くの栽培容器を並べて栽培室の側方から照射される光を効果的に植物に照射することができる。
【0009】
ここで保持具は、栽培容器を戴置できる板状とすることが好ましい。保持具を板状とすれば、保持具を構成する板上に栽培容器を個々別々に戴置することで容易に栽培容器を操作できる。板の形状は特に限定されないが、略円形とすれば栽培容器を操作する際の障害となりがたいため、好ましい。
【0010】
本発明の請求項3に係る植物栽培装置では、略同一平面上に並べられた複数の栽培容器からなる複数の栽培棚のそれぞれに潅水タンクを設けることで、各段に応じて異なる種類の液体を異なる量や頻度で給液できる。このため、各段に並べて栽培される植物の育成状況に応じた施肥や給水ができる。
【0011】
本発明の請求項4に係る植物栽培装置では、支柱を回転軸として回転させることで、支柱の周囲に並べられた栽培容器は支柱の周囲を回るように動く。栽培室内には側壁に沿って光源が設けられ、側壁から支柱に向かって光が照射されるように構成されていることから、支柱を囲むように栽培容器を回転させることで、支柱を中心にして略放射状に並べられた栽培容器に対する光照射量を均一化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、多くの植物を個々別々の栽培容器に植栽して狭小なスペースで栽培できる。また、本発明の植物栽培装置は、栽培室内に配置した複数段の栽培棚のそれぞれに光源を設ける必要がないため、装置構成が簡易で、光照射に要するエネルギーを少なくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。以下、同一部材については同一符号を付し、説明を省略または簡略化する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る植物栽培装置1の斜視図である。植物栽培装置1は、開閉可能な扉19を有する略直方体状の筐体10を備える。筐体10の内部には、一端面が開口した略直方体状の空間が形成されており、この空間が栽培室20となる。栽培室20は、底壁11、天井壁12、第1の側壁(以下、右側壁)13a、第2の側壁(以下、奥側壁)13b、及び第3の側壁(以下、左側壁)13cに囲まれ、奥側壁13bに対向する面は扉19によって開閉可能に構成された開口13dとなっている。扉19は蝶番等の取り付け具により一端縁が筐体10に取り付けられ、扉19を閉じることで栽培室20は閉鎖された空間となる。
【0015】
底壁11と天井壁12とは略平行で互いに対向し、右側壁13a、奥側壁13bおよび左側壁13bはこの底壁11と天井壁12の端縁同士を接続する。右側壁13a、奥側壁13b、および左側壁13cには、光源17が取り付けられ、栽培室20の中心に向かって光が照射される。
【0016】
栽培室20に設けられる光源17には特に制限はなく、青、赤、白および緑色等の各色の発光ダイオード(以下、LED)、蛍光灯、白熱灯、または高圧ナトリウム灯等を単独または組み合わせて用いることができる。本実施形態に係る植物栽培装置1では、光源17は複数のLEDと蛍光灯とが側壁13a〜13cに略平行に並んだ構成となっている。
【0017】
光源17は側壁13a〜13c側から栽培室20の中心に向かって底壁11および天井壁12と略水平な方向から栽培室20の中心に光を照射する。しかし、光源17から照射される光の一部は栽培室20の壁面方向へ散乱するため、栽培室20の壁面に銀紙等の反射板を貼り付け、栽培室20の壁面方向に照射された光を栽培室20の中心方向へ反射させて光の利用効率を高めることが好ましい。
【0018】
栽培室20の内部には、底壁11のほぼ中心から天井壁12に向かって延びる円筒状の支柱21が設けられている。支柱21には、略円板状の複数の保持具22が設けられ、これにより略円板状の複数の棚が支柱21の伸長方向に沿って多段に配された状態となっている。各保持具22の天井壁12側の面上には、略三角柱状の栽培容器23が複数個、支柱21を取り囲んで放射状に並べて保持されている。
【0019】
なお、植物栽培装置1は、通常、底壁11側を下側、天井壁12側を上側として設置される。そこで、以下の説明に際しては、底壁11を下側、天井壁12側を上側、側壁13a〜cが延びる方向を垂直方向、底壁11および天井壁12が延びる方向を水平方向とするが、これらの用語は説明の便宜上、使用するものである。
【0020】
図2は、支柱21に取り付けられた状態の保持具22、栽培容器23を示す斜視図である。図2に示すように、本実施形態において栽培容器23は底面および開口面が略二等辺三角形状(または略扇形)の略三角柱状の有底開口容器である。栽培容器23の形状は本実施形態のものに限定されないが、本実施形態のようにそれぞれの栽培容器23に土やスポンジといった植物栽培用の培養床を充填して植物30を植栽し、複数の栽培容器23を個々別々に操作できる形状であることが好ましい。
【0021】
本実施形態では、植物30は図2に示すように栽培容器23の底辺側(栽培容器23を水平に戴置した際、略二等辺三角形の底辺側となる側。以下「後側」)に植栽することが好ましい。さらにこの栽培容器23は、三角形の頂点を中心として保持具22上に略放射状に並べることが好ましい。栽培容器23をこのように配置することにより、隣接する栽培容器23の間にほとんど隙間が生じないようにして栽培容器23を略円形に並べることができるため、栽培室20内の空間を有効に利用できる。
【0022】
保持具22は本実施形態では略円板状であり、栽培容器23を保持具22上に戴置することによって、複数の栽培容器23を広げた状態で保持する。保持具22と栽培容器23との間には特に係止構造を設ける必要はないが、保持具22を構成する円板表面に凹凸等を形成して栽培容器23の滑落を防止するようにしてもよい。本実施形態の保持具22は構成が簡易であり、円板上に栽培容器23を戴置するだけで複数の栽培容器23を保持できるため、各栽培容器23の設置や取り外しが容易である。
【0023】
なお、保持具22の構造は上記実施形態に限定されず、複数の栽培容器23を略同一平面上で互いに重ならないよう保持できる任意の部材を使用できる。保持具の他の例としては例えば、複数の係止片を備える円形リングが挙げられ、この円形リングを支柱21に取り付けるとともに、円形リングの複数の係止片のそれぞれに栽培容器を係止することで複数の栽培容器23を面上に配置した栽培棚を栽培室20内に多段に配置できる。
【0024】
また、本実施形態では保持具22を構成する円板の周縁部は円板表面から0.2〜1cm程度の高さで垂直に立ち上げられた縁壁を設けているが、平坦としてもよい。本実施形態のように保持具22を構成する円板の周縁部に縁壁を設けることにより、保持具22を栽培容器23の底部から排出される液体を集水する受け皿とすることができる。また、保持具22を構成する円板には排水管を接続してもよい。円板に排水管を設けることにより、保持具22上に溜まった液体を集水して排出することができる。
【0025】
略同一面上に略円柱形となるように並べられ棚状となった栽培容器23群(以下「栽培棚」26)の上方には、片側端面が開口し水平断面が略ドーナツ形容器で構成された潅水タンク24が設置される。潅水タンク24の底面には、各栽培容器23に水や液肥等の液体を滴下する複数の給液孔25が設けられ、単一の潅水タンク24から同一平面上に並べられた複数の栽培容器23のそれぞれに同時に液体を供給できる。潅水タンク24は、複数の栽培棚26のそれぞれに設けられ、本実施形態では、3段の栽培棚26が形成されることから、3個の潅水タンク24が支柱21に沿って設けられている。
【0026】
潅水タンク24は、栽培容器23の一部、具体的には1/2〜1/4程度を覆う大きさとして、給液孔25は図2に示すように底面の辺縁近傍に設けることが好ましい。潅水タンク24をかかる大きさおよび構成とすることにより、栽培容器23の後側に植栽された植物30の育成を潅水タンク24が阻害するおそれを防止できる。
【0027】
本実施形態では、筐体10の下部に設置された液タンク(図示せず)から支柱21に沿って長さの異なる給液管26が設けられ、各潅水タンク24に一本の給液管26の一端が開口するよう延びて、液タンクから液肥や水等を適宜、潅水タンク24に供給する。
【0028】
ここで、栽培容器23には電気抵抗器等の湿度測定器(図示せず)が配置され、湿度測定器の測定値に基づいて培養床の含水率を算出して液タンクからの給液を制御するコンピュータ等の制御手段(図示せず)が筐体10内部に配置されている。これにより、本実施形態にかかわる植物栽培装置1では、培養床が乾燥すると湿度測定器から信号が制御手段に送られ、培養床の乾湿度合いに応じて給液が行なわれるようになっている。
【0029】
同様に、栽培室20内には温度計や炭酸ガス濃度計等の環境条件計測器(図示せず)を設け、必要に応じてLED等の光源17の照度や照明時間を調整し、あるいは炭酸ガスの吹き込みや換気を行う等の環境条件の制御を行うことが好ましい。
【0030】
液タンクや制御手段は、本実施形態では筐体10の下部に配置されているが配置位置はこれに限定されず、例えば液タンクは栽培室20の上方に配置してもよく、また制御手段や、光源に電気を供給する電源(図示せず)等は筐体10の内部または外部の任意の位置に配置できる。
【0031】
さらに、本実施形態では支柱21を回転させるため、筐体10内部にモータ等の駆動手段(図示せず)を設け、駆動手段と支柱21とをベルト(図示せず)で接続している。この植物栽培装置1では、ベルトを介して駆動手段と接続した支柱21を回転軸として略円板状の保持具22を略水平方向に回転させることができるため、保持具22に保持された栽培容器23の位置を容易に変化させることができる。
【0032】
なお、栽培室20の側壁13a〜13cのそれぞれに配置する光源の量や種類を変化させるとともに、支柱21を回転させる角度や時間を調整することで、同一の栽培棚26の複数の栽培容器23のそれぞれに異なる種類の植物30を植栽することもできる。
【0033】
次に、前記実施形態に係る植物栽培装置1の使用方法について説明する。まず、栽培容器23に培養土等を充填し、図2に示すように植物30を栽培容器23の後端側に植栽する。この栽培容器23を保持具22上に戴置した状態で栽培室20に収容し、潅水タンク24から適宜給液しながら制御手段で温度、湿度、光源からの光照射量等を調整して植物30を育成する。
【0034】
本発明の植物栽培装置1では、光源は主として植物30の植栽面に対して水平方向から光を照射するように設置されているが、保持具22の表面、特に下側表面に銀紙等の反射材を貼り付け、植栽面に対して上方から垂直方向下向きにも光照射が行なわれるようにしてもよい。また、同一平面上で隣接する栽培容器23の間に区画板を立設してこの区画板に反射材を貼り付けて、光を反射させてもよい。
【0035】
さらに、栽培室20の内部に保持具22の周囲を取り囲むよう、透明なビニールシートやプラスチック製の円筒等のカバーを設け、区画板の互いに対向する一組の端縁の一方を支柱21に、他方をカバーの内面に接触させることにより、栽培棚26を複数の空間に区分してもよい。区画板により互いに隣接する栽培容器23を別個の空間に収容し、栽培室20の側方からの光照射量等を調整することで、同一平面に戴置された栽培容器23に植栽されて栽培される植物30の栽培条件を変化させることができる。
【0036】
図3は、本発明の他の実施形態に係る植物栽培装置2を示す斜視図である。本実施形態に係る植物栽培装置2は筐体60が植物栽培装置1の筐体10と異なる。筐体60は、2枚の開閉可能な扉69を備え、内部に栽培室70が形成されている。栽培室70には図1の植物栽培装置1と同様に光源、支柱、保持具、および栽培容器が設けられるが、扉69を開いた状態では保持具と当該保持具上に戴置された栽培容器の一部が栽培室70の外部に露出する構成となっている。この植物栽培装置2は、図1の植物栽培装置1に比べ、より狭いスペースに設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、室内などの構造物の内部に設置して植物を人工的に栽培する植物栽培装置に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る植物栽培装置の斜視図である。
【図2】前記植物栽培装置の栽培室の内部に設けられる部材を示す斜視図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る植物栽培装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1、2 植物栽培装置
10、60 筐体
11 底壁
12 天井壁
13a〜13c 側壁
17 光源
20、70 栽培室
21 支柱
22 保持具
23 栽培容器
24 潅水タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物が植栽される複数の栽培容器を収容する閉鎖可能な栽培室を備える筐体と、前記栽培室に設けられて前記栽培容器に植栽される植物に光を照射する光源と、を備える植物栽培装置であって、
前記栽培室は、互いに向かい合う底壁および天井壁と、これら底壁および天井壁に略直交する側壁と、この側壁に略並行に延びる支柱と、を備え、
前記光源は、前記栽培室の中心に向かって光を照射するように前記栽培室の側壁に沿って設けられ、
前記支柱が延びる方向に沿って、前記複数の栽培容器を略同一平面に並べて保持する複数の保持具が多段に設けられている植物栽培装置。
【請求項2】
前記栽培室の略中央に前記支柱を設け、
前記栽培容器を略三角柱状とし、
前記複数の保持具はそれぞれ、前記複数の栽培容器を前記支柱の周囲に略放射状に並べて保持することを特徴とする請求項1に記載の植物栽培装置。
【請求項3】
略同一平面に並べられた前記複数の栽培容器に液体を供給する複数の潅水タンクを前記支柱に沿って多段に設けることを特徴とする請求項1または2に記載の植物栽培装置。
【請求項4】
前記支柱を回転軸として、略放射状に並べられた前記複数の栽培容器を回転させる回転手段をさらに設けることを特徴とする請求項2または3に記載の植物栽培装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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