説明

植物育成用包材、及びこれを用いた播種方法

【課題】
植物体の育成に際して前記植物体への水、及び成長促進剤の供給源としての機能を発揮するとともに、発芽率の高い植物育成用包材を提供すること、及び播種作業性に優れた植物育成用包材を提供することである。
【解決手段】
水溶性または水壊性である包材中に、植物の種子および吸水性樹脂を封入してなる植物育成用包材を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物育成用包材及びこれを用いた播種方法に関するものである。更に詳しくは、本発明は、植物体の育成に際して前記植物体への水の供給源としての機能を発揮するとともに、良好な植物体の発育を促進し、土壌や砂地への適用による土壌改質および緑化促進が可能な植物育成用包材と、その植物育成用包材を播種する際の播種作業性、及び発芽率の向上に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、紙オムツ、生理用ナプキン、失禁パット等の衛生材料には、体液吸収の観点から、その構成材として吸水性樹脂が幅広く利用されている。かかる吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸部分中和物架橋体、澱粉−アクリル酸グラフト重合体の加水分解物、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体の鹸化物、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物またはこれらの架橋体、およびカチオン性モノマーの架橋体等が知られている。この吸水性樹脂は、シート状、繊維状、フィルム状とされても用いられうるが、一般には、粉末状(粒子状)とされて用いられている。かかる粉末(粒子)としては、例えば、その重量平均粒子径が200〜800μm程度である粒子状の吸水性樹脂が汎用されている。
【0003】
吸水性樹脂は保水性に優れるので、近年、農園芸用途に利用されている。例えば、特許文献1には、緑化工法、節水栽培及び砂地栽培の保水剤として利用される吸水性樹脂が開示されている。
【0004】
近年では農業の機械化に伴い種子の機械播きが実施されているが、微細な種子を均一に播種することは難しく、さらにこの微細な種子に必要量の保水剤を均一に配置させることは難しいという問題点があった。また、広大な土地へ植物の種子を播種する場合、例えば航空機から播種する方法がとられる場合があるが、保水剤も散布しようとすると、種子と保水剤を別々に散布しなければならず、種子と保水剤を均一に散布することは困難であった。
【0005】
このような問題を解決するために、特許文献4には、種子を吸水性樹脂でコーティングすることで、播種に好適でかつ発芽率の高い種子組成物が提示されている。この方法では、機械播き、航空機播種をする場合において、種子と保水剤を均一に散布することは可能であるが、種子の表面積は種子の種類により大凡決まっているので、この方法では種子一粒に対してコーティングできる吸水性樹脂量は種子の種類により制限されるという問題点があった。
【0006】
また、特許文献5には、種子と成長促進剤を水溶性カプセルで保護する種子保護カプセルが開示されている。この方法では、保存安定性に優れ、かつ種子と必要量の成長促進剤を同時に散布できるが、天候の不順があったり、砂漠地方など降雨量が少ない地域では空中散布したとしても発根に至らないという問題点があった。
【0007】
【特許文献1】特開昭58−42602号公報
【特許文献2】特開昭63−68026号公報
【特許文献3】特開昭64−51028号公報
【特許文献4】特開2005−58221号公報
【特許文献5】実用新案登録第3097021号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、植物体の育成に際して前記植物体への水、及び成長促進剤の供給源としての機能を発揮するとともに、発芽率の高い植物育成用包材を提供すること、及び播種作業性に優れた植物育成用包材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、植物の種子、吸水性樹脂、必要により多価金属化合物を水溶性または水解性の包材に封入することにより、植物体の育成に際して前記植物体への水、及び成長促進剤の供給源としての機能を発揮するとともに、発芽率の高い植物育成用包材を提供すること、及び播種作業性に優れた植物育成用包材を提供することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の植物育成用包材は、包材中に、植物の種子および吸水性樹脂を封入してなるものである。
【0010】
また、本発明の植物育成用包材は、包材中に、さらに多価金属化合物を封入してなるものである。
また、本発明の植物育成用包材は、包材が水溶性または水壊性であることを特徴とするものである。
また、本発明の植物育成用包材は、上記包剤の脱イオン水(電気伝導度5μS/cm以下)への溶解速度が10分以内であることを特徴とするものである。
また、本発明の植物育成用包材は、脱イオン水(電気伝導度5μS/cm以下)に対する10分間の吸収倍率が20〜500g/gである吸水性樹脂を使用することを特徴とするものである。
また、本発明の植物育成用包材は、多価金属化合物がカルシウム、マグネシウム、鉄、およびケイ素からなる群から選択される少なくとも一種の元素を含むことを特徴とするものである。
また、本発明の植物育成用包材は、包材が容器または袋であることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の植物育成用包材は、包材ないし植物育成用包材の容量が0.1〜100cmであることを特徴とするものである。
また、本発明の植物育成用包材は、吸水性樹脂がポリアクリル酸(塩)粒子であることを特徴とするものである。
また、本発明の植物育成用包材は、植物の種子一粒に対する吸水性樹脂の重量が、0.005g以上1.0g以下である、請求項1〜9に記載の植物育成用包材。
また、本発明の植物育成用包材は、包材が天然物を主成分とすることを特徴とするものである。
また、本発明の植物育成用包材は、包材が軟カプセルないし硬カプセルであるを特徴とするものである。
また、本発明の植物育成用包材は、包材が円筒状硬カプセルであることを特徴とするものである。
また、本発明の植物育成用包材は、植物の種子、吸水性樹脂を包材に封入した後、播種することを特徴とするものである。
また、本発明の植物育成用包材は、植物の種子、吸水性樹脂を包材に封入した後、航空播種することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の植物育成用包材を用いた場合、植物の種子が発根、および育成するために必
要な量の吸水性樹脂、および多価金属化合物が予め水溶性の包材に包まれているため、植
物体の発芽、育成に際して優れた機能を発揮するとともに、機械播き、航空機播種をする
場合においても、種子と必要量の吸水性樹脂を均一に散布することが可能な植物育成用包
材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る植物育成用包材及び播種方法について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施できる。
【0014】
(1)水溶性または水解性包材
本発明における水溶性または水解性包材は、水溶性または水解性材料から構成されるものであり、脱イオン水(電気伝導度5μS/cm以下)と接触してから1分以上30分以内に水に溶解するものであることが好ましく、さらに3分以上20分以内に溶解するものであることが好ましい。脱イオン水(電気伝導度5μS/cm以下)と接触してから30分を超えて溶解するようなものであると、灌水時に水溶性材料の溶解が遅れ、植物の種子による吸水、及び吸水性樹脂による吸水が遅れ、効果的に種子の発芽を促すことが出来なくなるおそれがある。また、脱イオン水(電気伝導度5μS/cm以下)と接触してから1分以内で溶解するようなものであると、保存中、吸湿により溶解してしまうおそれがある。ここでいう水溶性とは、物質が水にとけて水溶液をつくる性質のものをいい、水解性とは、水に触れると速やかに分離する性質であり水分散性ともいう。
【0015】
また、本発明における水溶性または水解性包材は、内部に植物の種子と吸水性樹脂、必要により多価金属化合物を投入後封入出来ることが好ましく、また、植物の種子と吸水性樹脂、必要により多価金属化合物を簡単に封入することが出来るように、形状は容器状、あるいは袋状であることが好ましく、更にカプセル状のものが好ましい。カプセルは軟カプセルであっても硬カプセルであっても何ら問題ないが、この中でも特に円筒状硬カプセルが好ましい。
【0016】
また、本発明における水溶性または水解性包材は、一つの包材中に一つの植物種子、およびそれに必要な吸水性樹脂を封入しても良いが、経済的、効率的観点から複数の植物の種子、およびそれに必要な吸水性樹脂を封入してもよく、この観点から水溶性または水解性包材の容量は0.1〜100cm、好ましくは1〜80cm、更に好ましくは2〜50cmであることが好ましい。
【0017】
この水溶性包材を構成する水溶性材料としては、例えば、寒天、豚ゼラチン、魚ゼラチン、PEG配合ゼラチンなどのゼラチン系、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース等のセルロース系、デンプン系、プルランなどの多糖類系、ポリビニルアルコールなどのアルコール系等が挙げられ、また、水解性材料を構成する水解性材料としては、紙、不織布が挙げられるが、工業的入手の容易さ、安全性の面から水溶性材料としてはプルランなど多糖類系の使用が好ましく、経済性等の観点から、この保水剤に使用する水溶性包材としては、プルランなどの多糖類計のものが望ましく、例えばカプスゲル・ジャパン株式会社製の商品名;NPcaps1号などが使用できる。
【0018】
(2)吸水性樹脂
吸水性樹脂とは粒子状であり、ヒドロゲルを形成しうる水膨潤性水不溶性の架橋重合体をいう。例えば、水膨潤性とは、脱イオン水(電気伝導度5μS/cm以下)中において10分間の吸水倍率が、20〜1,000g/g、好ましくは50〜1,000g/g、より好ましくは100〜1,000g/gという多量の水を吸収するものを指す。水不溶性とは、吸水性樹脂中の未架橋の水可溶性成分(水溶性高分子)が好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜25重量%、さらに好ましくは0〜20重量%、特に好ましくは0〜15重量%、さらに特に好ましくは0〜10重量%、最も好ましくは0〜7重量%のものを指す。水可溶性成分量が50重量%を越えると、溶出分による成長の阻害が生じ、植物育成効果が低減する場合がある。なお、飽和吸水倍率および水可溶性成分の量は、後述する測定方法によるものとする。
【0019】
水溶性包剤に封入されている吸水性樹脂としては、例えば、アクリル酸重合体部分ナト
リウム塩架橋物、カチオン系高分子凝集剤、ウレタン系樹脂吸水ポリマー等が挙げられる
が、オゾン氷が溶解することにより生成される溶解水をゲル化し得るものであれば特に限
定されるものではない。これらのゲル化剤のうち、アクリル酸重合体部分ナトリウム架橋
物は、特に水のゲル化能に優れているため好ましい。
【0020】
本発明では吸水性樹脂として例えばポリアスパラギン酸架橋体やγ−グルタミン酸架橋体のようなポリアミドタイプの吸水性樹脂、CMC架橋体などの天然物吸水性樹脂も例示されるが、好ましくは吸収特性の面から不飽和単量体を重合して得られ内部架橋構造を有する吸水性樹脂を用いることがより好ましい。さらに吸水性樹脂粒子の表面に有機二次架橋構造を有していてもよい。かかる吸水性樹脂としては、ポリアクリル酸部分中和物重合体、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、その架橋体、アクリロニトリル共重合体もしくはアクリルアミド共重合体の加水分解物の架橋体、カルボキシル基含有架橋ポリビニルアルコール変性物、架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体が挙げられる。これらの吸水性樹脂は単独で、または2種以上の混合物の形態で用いられうる。好ましくは、アクリル酸及び/又はその塩(中和物)を主成分とする単量体を重合および架橋することにより得られるポリアクリル酸部分中和物重合体が用いられる。以下、本発明の植物育成用保水材に使用される吸水性樹脂の原料やその製造に採用される反応条件について説明する。
【0021】
(a)不飽和単量体
不飽和単量体(以下単に「単量体」と略す)としては、アクリル酸および/またはその塩を主成分として使用することが好ましい。その他の単量体を併用してもよい。併用される単量体として、メタクリル酸、(無水)マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、イタコン酸、ビニルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリロキシアルカンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩やアンモニウム塩、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルアセトアミド、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、イソブチレン、ラウリル(メタ)アクリレート等の水溶性または疎水性不飽和単量体等を共重合成分とするものが挙げられる。
【0022】
本発明でアクリル酸(塩)以外の単量体を用いる場合には、前記アクリル酸(塩)以外の単量体は、主成分として用いるアクリル酸及びその塩の合計量に対して、好ましくは30モル%以下(下限0モル%)、より好ましくは10モル%以下、最も好ましくは5モル%以下の割合である。この割合が30モル%を超える場合は未架橋の水可溶性成分が増加するので好ましくない。前記使用量の範囲であれば、最終的に得られる植物育成用保水材の植物成長促進や吸水特性以外に抗菌性等といった別の機能を付与すると共に、植物育成用保水材をより一層安価に得ることができる。
【0023】
なお、単量体に酸基含有の不飽和単量体を使用する場合、その塩としてはアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩が挙げられる。得られる植物育成用保水材としての機能、工業的入手の容易さ、安全性の面からナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩が好ましい。さらに植物体内の生理作用によるためか理由は不明であるが、前記ナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩よりなる群から選択される2種以上の組み合わせからなる塩を使用することで、より良い植物成長を促進することができる。
【0024】
また特に、カルボキシル基を有する不飽和単量体の塩について、その塩としての対イオンの量は、例えば、ナトリウムイオンやカリウムイオン、アンモニウムイオン等の一価の対イオン量が、前記カルボキシル基のモル数に対して1モル%以上であり、好ましくは10モル%以上であり、より好ましくは15モル%以上である。また、前記一価の対イオン量は、前記カルボキシル基のモル数に対して好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、さらに好ましくは75モル%以下である。具体的には、前記カルボキシル基に対する一価の対イオン量は、前記カルボキシル基のモル数に対して、通常0〜90モル%、好ましくは5〜80モル%、より好ましくは5〜75モル%である。
【0025】
前記したように前記吸水性樹脂の有するカルボキシル基の一価の対イオン量が5モル%未満、特に1モル%未満の場合、植物育成用保水材の吸水特性、例えば飽和吸水倍率や吸水速度が低下する場合もあり好ましくない。また、一価の対イオン量が75モル%、特に90モル%を超える場合はマグネシウムやカルシウム、亜鉛等の植物にとって有用な栄養塩に対する、カルボキシル基含有吸水性樹脂自身の吸収能力が強まるために植物体の成長阻害を引き起こす場合もあり好ましくない。なお、一価の対イオン量は、一価のナトリウムやカリウム等のアルカリ金属やアンモニアやアミンによるアクリル酸の中和率(前記アクリル酸塩のモル%を指す)である。上記塩を形成するためには単量体の状態でアクリル酸を水酸化ナトリウムや炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアや炭酸アンモニウム等で中和してもよく、アクリル酸およびアクリル酸塩を混合してもよい。また、単量体の重合途中または重合後に重合体として中和してもよい。上述した手段を併用してもよい。
【0026】
(b)架橋性単量体(内部架橋剤)
吸水性樹脂は架橋構造を必須に有する。吸水性樹脂は架橋性単量体を使用しない自己架橋型のものであってもよい。一分子中に、2個以上の重合性不飽和基や、2個以上の反応性基を有する架橋性単量体(吸水性樹脂の内部架橋剤とも言う)を共重合又は反応させたものがさらに好ましい。これら内部架橋剤の具体例としては、例えば、N,N'−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチルロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ポリエチレンイミン、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0027】
これら内部架橋剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。また、これら内部架橋剤は、反応系に一括添加してもよく、分割添加してもよい。少なくとも1種または2種類以上の内部架橋剤を使用する場合には、最終的に得られる吸水性樹脂や植物育成用保水材の吸収特性等を考慮して、2個以上の重合性不飽和基を有する化合物を重合時に必須に用いることが好ましい。
【0028】
これら内部架橋剤の使用量は前記単量体(内部架橋剤を除く)の量に対して、好ましくは0.001〜2モル%、より好ましくは0.005〜0.5モル%、さらに好ましくは0.01〜0.2モル%、特に好ましくは0.03〜0.15モル%の範囲内とされる。上記内部架橋剤の使用量が0.001モル%よりも少ない場合、並びに、2モル%よりも多い場合には、充分な吸収特性が得られないおそれがある。
上記内部架橋剤を用いて架橋構造を重合体内部に導入する場合には、上記内部架橋剤を、上記単量体の重合前あるいは重合途中、あるいは重合後、または中和後に反応系に添加するようにすればよい。
【0029】
(c)重合開始剤
本発明に用いられる吸水性樹脂を得るために上述の不飽和単量体を重合するに際して使用される開始剤としては過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過酢酸カリウム、過酢酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過炭酸ナトリウム、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素、2,2'−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩等のラジカル重合開始剤や、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等の光重合開始剤を用いることができる。これら重合開始剤の使用量は物性面から通常0.001〜2モル%、好ましくは0.01〜0.1モル%(対全単量体)である。これらの重合開始剤の量が0.001モル%未満の場合には未反応の残存単量体が多くなり、一方重合開始剤の量が2モル%を超える場合には重合の制御が困難となるので好ましくない。
【0030】
(d)重合方法
本発明に用いられる吸水性樹脂を得るために上述の単量体を重合するに際しては、バルク重合や沈殿重合を行うことが可能である。性能面や重合の制御の容易さ、さらに膨潤ゲルの吸収特性の観点から、上記単量体を水溶液とすることによる水溶液重合や逆相懸濁重合を行うことが好ましい。
単量体を水溶液とする場合の前記水溶液(以下、「単量体水溶液」と称する)中の単量体の濃度は、水溶液の温度や単量体の種類によって決まり、特に限定されるものではない。当該濃度は10〜80重量%の範囲内が好ましく、20〜60重量%の範囲内がさらに好ましい。また、上記水溶液重合を行う際には、水以外の溶媒を必要に応じて併用してもよい。併用される溶媒の種類は、特に限定されるものではない。
【0031】
上記の重合を開始させる際には、前述(c)の重合開始剤を使用して開始させる。また、前述重合開始剤の他にも紫外線や電子線、γ線などの活性エネルギー線を単独あるいは重合開始剤と併用してもよい。重合開始時の温度は、使用する重合開始剤の種類にもよるが、15〜130℃の範囲が好ましく、20〜120℃の範囲がより好ましい。重合開始時の温度が上記の範囲をはずれると、得られる吸水性樹脂の残存単量体の増加や、過度の自己架橋反応が進行して吸水性樹脂の吸水性能が低下するおそれがあるので好ましくない。
【0032】
なお、「逆相懸濁重合」とは、単量体水溶液を疎水性有機溶媒に懸濁させる重合法である。例えば、米国特許第4093776号明細書、同第4367323号明細書、同第4446261号明細書、同第4683274号明細書、同第5244735号明細書などの米国特許に記載されている。水溶液重合は分散溶媒を用いずに単量体水溶液を重合する方法である。例えば、米国特許第4625001号明細書、同第4873299号明細書、同第4286082号明細書、同第4973632号明細書、同第4985518号明細書、同第5124416号明細書、同第5250640号明細書、同第5264495号明細書、同第5145906号明細書、同第5380808号明細書などの米国特許や、欧州特許第0811636号明細書、同第0955086号明細書,同第0922717号明細書などの欧州特許に記載されている。これら重合法に例示の単量体や開始剤なども本発明では適用できる。
【0033】
重合後、通常は含水ゲル状架橋重合体である。本発明では、含水率が10〜50重量%の場合はこの含水ゲル状架橋重合体を吸水性樹脂(A)として使用することもできる。このような吸水性樹脂は、例えば、含水率10〜50重量%の含水ゲル状架橋重合体をミートチョッパーなどで細切し、これにカルシウム化合物などの無機化合物をその表面に担持させることにより得られる。
【0034】
(e)乾燥
一方、含水ゲル状架橋重合体を、必要に応じて乾燥し、乾燥の前および/または後で通常粉砕して使用することもできる。熱風乾燥する場合は通常60℃〜250℃、好ましくは100℃〜220℃、より好ましくは120℃〜200℃の温度範囲で行われる。乾燥時間は、重合体の表面積、含水率、および乾燥機の種類に依存し、目的とする含水率になるように選択される。本発明に用いることのできる吸水性樹脂の含水率(吸水性樹脂や植物育成用保水材に含まれる水分量で規定され、180℃で3時間熱風乾燥したときの乾燥減量で測定される)は特に限定されない。得られる植物育成用保水材の固体状態での物性面や取り扱い性から室温でも流動性を示す粉末である。よって前記粉末は、好ましくは0〜50重量%、より好ましくは0〜40重量%、さらに好ましくは0〜30重量%、特に好ましくは0〜20重量%、最も好ましくは0〜10重量%の含水率を有する。吸水性樹脂の好ましい粒子径は後述する。
【0035】
なお、上記逆相懸濁重合による重合方法を用いた場合には通常重合反応終了後に得られる含水ゲル状架橋重合体を、例えばヘキサン等の炭化水素の有機溶媒中に分散させた状態で共沸脱水して含水率を0〜50重量%、好ましくは0〜30重量%、より好ましくは0〜20重量%とした後に、デカンテーションあるいは蒸発により有機溶媒と分離し、必要に応じてさらに別法で乾燥することができる。また、乾燥方法としては、加熱乾燥、熱風乾燥、減圧乾燥、赤外線乾燥、マイクロ波乾燥、疎水性有機溶媒との共沸による脱水、高温の水蒸気を用いた高湿乾燥等目的の含水率となるように種々の方法を採用することができ、特に限定されるものではない。
【0036】
(f)有機二次架橋処理(表面架橋処理)
本発明の植物育成用保水材に用いられる吸水性樹脂は、上記の架橋重合の後、必要により乾燥粉砕したものに、さらに表面に架橋(二次架橋)処理をしてもよい。表面架橋処理については、植物育成用保水材を適用する土壌の塩濃度や土壌を形成する鉱物種等の性状、灌水で使用される水質等を考慮して必要に応じてなされる。
有機二次架橋処理が共有結合性架橋剤を用いて行われる場合、上記表面に架橋を行うための架橋剤としては、種々のものがあるが、物性の観点から、一般的には、多価アルコール化合物、エポキシ化合物、多価アミン化合物またはそのハロエポキシ化合物との縮合物、オキサゾリン化合物、モノ、ジ、またはポリオキサゾリジノン化合物、多価金属塩、アルキレンカーボネート化合物等が用いられている。本発明で用いられる表面架橋剤としては、具体的には、米国特許第6228930号明細書、同第6071976号明細書、同第6254990号明細書などに例示されている。モノ、ジ、トリ、テトラまたはポリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,3,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノールなどの多価アルコール化合物;エチレングリコールジグリシジルエーテルやグリシドールなどのエポキシ化合物;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン等の多価アミン化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α−メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;上記多価アミン化合物と上記ハロエポキシ化合物との縮合物;2−オキサゾリジノンなどのオキサゾリジノン化合物;エチレンカーボネートなどのアルキレンカーボネート化合物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらの架橋剤の中でも少なくとも多価アルコールを用いることが好ましい。炭素数2〜10、好ましくは炭素数3〜8の多価アルコールが用いられることが好ましい。
【0037】
表面架橋剤の使用量は、用いる化合物やそれらの組み合わせ等にもよるが、吸水性樹脂(表面架橋をする前の状態の吸水性樹脂)100重量部に対して、0.001重量部〜10重量部の範囲内が好ましく、0.01重量部〜5重量部の範囲内がより好ましい。本発明において、表面架橋には水を用いることが好ましい。この際、使用される水の量は、使用する吸水性樹脂(表面架橋をする前の状態の吸水性樹脂)の含水率にもよるが、通常、前記吸水性樹脂100重量部に対し0.5〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部の範囲である。また、本発明において、水以外に親水性有機溶媒を用いてもよい。前記親水性有機溶媒の使用量は、表面架橋をする前の吸水性樹脂100重量部に対して0〜10重量部、好ましくは0〜5重量部、より好ましくは0〜3重量部の範囲である。さらに、本発明では種々の混合方法のうち、必要により水及び/または親水性有機溶媒を予め混合した後、次いで、その水溶液を吸水性樹脂に噴霧あるいは滴下混合する方法が好ましく、噴霧する方法がより好ましい。噴霧される液滴の大きさは、平均300μm以下(下限0.1μm)が好ましく、200μm以下がより好ましい。
【0038】
有機二次架橋処理がポリイオン結合性架橋でなされる場合、吸水性樹脂は、米国特許第5382610号明細書や特開平6−370号公報記載のポリアルキレンアミン、変性ポリアミン、ポリエチレンイミン、変性ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン等によって被覆されうる。
【0039】
表面架橋処理に際して、吸水性樹脂(表面架橋をする前の状態の吸水性樹脂)と前記表面架橋剤、水や親水性有機溶媒を混合する際に用いられる混合装置としては両者を均一にかつ確実に混合するために、大きな混合力を備えていることが好ましい。上記の混合装置としては例えば、円筒型混合機、二重壁円錐混合機、高速攪拌型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型ニーダー、粉砕型ニーダー、回転式混合機、気流型混合機、タービュライザー、バッチ式レディゲミキサー、連続式レディゲミキサー等が好適である。
【0040】
なお、表面架橋剤の混合に際しては、表面架橋前に多価金属化合物(B)と混合したり、または、前記多価金属化合物と共存させても本発明の植物育成用保水材を得ることができる。前記多価金属化合物については後述する。また表面架橋剤の混合に際し、本発明の効果を妨げない範囲で、混合系中に、前記多価金属化合物以外に例えば二酸化珪素等の水不溶性微粒子粉体や界面活性剤を共存させてもよい。
【0041】
表面架橋剤を混合後の吸水性樹脂は好ましくは加熱処理される。上記加熱処理を行う際の条件としては、表面架橋する前の吸水性樹脂温度もしくは熱媒温度(特に、熱媒温度)は、好ましくは100〜250℃、より好ましくは150〜250℃であり、加熱時間は、好ましくは1分〜2時間の範囲である。温度と時間の組み合わせの好適例としては、180℃で0.1〜1.5時間、200℃で0.1〜1時間である。なお、吸水性樹脂が逆相懸濁重合で得られる場合には、重合終了後の共沸脱水途中および/または共沸脱水終了時において、例えば含水率が50重量%以下、好ましくは40重量%以下、より好ましくは30重量%以下の吸水性樹脂とともに上記表面架橋剤を疎水性有機溶媒中に分散させることにより、表面が架橋処理された吸水性樹脂を得ることができる。
【0042】
(g)吸水性樹脂の粒子径
本発明の植物育成用保水材に使用する吸水性樹脂の粒子径に限定はなく、用途によって適宜選択することができる。吸水性樹脂の重量平均粒子径は、後述する実施例に記載する方法で規定される。例えば、植物育成用保水材として使用するには、150μm未満の粒子径は好ましくは0〜20重量%であり、より好ましくは0〜10重量%であり、特に好ましくは0〜5重量%である。150μm以下の粒子径が20重量%を超えると、吸水性樹脂から溶出される水可溶分量が増加するために植物成長阻害を引き起こす場合がある。 また、600μm以上の粒子が全体の10重量%以上であり、好ましくは20重量%以上である。さらに、好適に用いられる吸水性樹脂の重量平均粒子径は、200〜1,000μmであり、好ましくは300〜1,000μm、特に好ましくは300〜800μmである。重量平均粒子径が1,000μmを超える場合は吸水速度が大きく低下するために植物育成用の吸水性樹脂としての取り扱い性が低下する場合がある。また重量平均粒子径が特に200μm未満の場合は吸水ゲル状態での表面積が大きいため乾燥しやすく、植物体への水分供給以上に水分の蒸散が早いため好ましくない。なお、重量平均粒子径は、後記する実施例に記載する方法で測定する。
【0043】
(h)吸水性樹脂の使用量
水溶性包剤にに封入される吸水性樹脂の量は、植物の種子、吸水性樹脂の種類に応じて適宜変更することができるが、一般的に、一粒の植物種子に対し0.005〜1.0gの吸水性樹脂が水溶性包剤に封入されていることが好ましく、特に0.01〜0.1gの吸水性樹脂が水溶性包剤に封入されていることが好ましい。1粒の植物種子に対し吸水性樹脂の量が0.005g未満であると、植物種子に対して保水効果を十分発揮することができず、灌水量が少ない場合、植物種子の成長が不十分となるおそれがある。
1粒の植物種子に対し吸水性樹脂の量が0.1gを超えると、ゲル化した吸水性樹脂が種子の周囲を覆ってしまい、植物種子に対して過剰の水分を供給することとなり植物種子が窒息してしまうおそれがあり、また、ゲル層が厚くなりすぎるため発根した根がゲル層をがら突出するまでの期間が長くなり、この間に種子内のエネルギーが使い果たされて出芽できなくなるおそれがある。
【0044】
(3)多価金属化合物
本発明における多価金属化合物とは、カルシウム、マグネシウム、鉄及び珪素からなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素を含むことを特徴とするものであり、カルシウム、マグネシウム、鉄及び珪素からなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素を含む硫酸塩、炭酸塩等の無機の正塩及び複塩、乳酸や脂肪酸等との有機塩、水酸化物並びに酸化物が挙げられる。これらの中でも、植物の発芽成長等の植物体に対する生理作用に良い環境を与えるという観点から、カルシウム、マグネシウム、鉄及び珪素からなる群から選ばれる1種又は2種以上の元素を含む化合物の硫酸塩、炭酸塩等の無機の正塩及び複塩;乳酸や脂肪酸等との有機塩;水酸化物並びに酸化物が好ましい。具体的には、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム等のカルシウム化合物、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、乳酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム等のマグネシウム化合物、酸化鉄、酸化珪素等の、上記溶解度範囲を有する無機化合物が例示される。より具体的には、これらの多価金属化合物は、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム等のカルシウム化合物と、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、乳酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム及び酸化鉄のいずれかとの混合物である。前述したように、これらの化合物はカルシウムを必須に含むことが好ましい。
【0045】
植物成長特性、経済性等の観点から、この保水剤に含まれうる上記多価金属化合物としては、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウムが最も好ましい。
水溶性包剤にに封入される前記多価金属化合物の含有量は、前記吸水性樹脂(固形分)に対して通常5〜50重量%、好ましくは7〜50重量%、より好ましくは9〜50重量%、次に好ましくは10〜50重量%であり、さらに好ましくは10〜45重量%、さらにより好ましくは15〜45重量%、特に好ましくは15〜40重量%、最も好ましくは15〜30重量%である。特に5重量%未満の場合は植物成長阻害作用を低減する効果が低く、一方、50重量%を超えると吸水性樹脂の吸水倍率の低下を引き起こす場合がある。また、本発明の植物育成用包材では、前記吸水性樹脂の表面に、吸水性樹脂の7〜50重量%、好ましくは10〜40重量%、特に好ましくは20〜40重量%の前記多価金属化合物が存在することが好適である。表面に前記多価金属化合物が上記範囲で存在すれば、植物からのカルシウムイオンの捕獲を抑制でき、かつカルシウム徐放性を容易に発揮できるからである。
【0046】
(4)その他
本発明の植物育成用包材は、用途に応じて、更に、消臭剤、抗菌剤、害虫及び動物の忌避剤、農薬(殺虫剤、殺菌剤、除草剤等)、植物活力剤、植物延命剤、植物ホルモン、キンコン菌、ミネラル、顔料、染料、増粘剤、粘着剤、塩類、pH調整剤、カオリン土、粘土や土壌等を0〜30重量%、好ましくは0〜10重量%、より好ましくは0〜1重量%含んでいてもよい。
【0047】
特に、植物ホルモンとしては、発根とカルス化を促進する2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、ナフタレン酢酸、インドール酢酸等のオーキシン、芽の分化を促進するカイネチン、ゼアチン、インペンテニルアデニン、ベンジルアデニン等のサイトカイニンが挙げられる。その他、茎や葉梢の成長を促進するジベレリン、成長バランスの調節作用を有するアブシジン酸、開花や果実の成熟を促進するエチレン等も挙げられる。必要となるホルモンは、植物の種類によっても異なる。これらの植物ホルモンは単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。特に、乳酸、酢酸、木酢等の抗菌作用を示すものや抗菌剤を前記植物育成用保水材に含有させておくことが好ましい。これらの添加量は、植物育成用包材に対して0〜10重量部、好ましくは0〜5重量部、より好ましくは0〜1重量部である。
【0048】
(5)植物の種子
本発明の植物育成用包材に用いられる植物の種子とは、特に限定されるものではないが例えば以下のものがあげられる。
穀類
米、トウモロコシ、大麦、小麦、ライ麦、カラス麦、はと麦、キビ、アワ、ヒエなどがあ
げられる。
野菜類
インゲン、うまい菜、エンドウ、カイラン、カブ、カボチャ、からし菜、カリフラワー、キャベツ、キュウリ、キンサイ、ケール、コールラビ、コウサイタイ、コマツナ、コラード、ゴボウ、サイシン、サヤエンドウ、サラダ菜、山東菜、シュンギク、スイートコーン、セルリー、ソバ、ソラマメ、タアサイ、体菜、高菜、タマネギ、ダイコン、チヂミナ、チマサンチュ、チンゲンサイ、ツケナ、豆苗、とうもろこし、トマト、ナス、菜花、ニラ、ニンジン、ネギ、野沢菜、ハクサイ、パクチョイ、パセリ、広島菜、ビーツ、ビタミン菜、ふだんな、ブロッコリー、べかな、ホウレンソウ、ミズナ、ミツバ、レタス、小豆、大豆、リョクトウ、蕎麦等が挙げられる。
花類
アグロステンマ、アスター、アリッサム、アルメリア、アンドロサセ、F1ナチュレ系、エリシマム、オステオスペルマム、おだまき、カーネーション、かすみ草、カンパニュラ、ガザニア、金魚草、金盞花、ギリア、クラスペディア、クリサンセマム、コスミディウム、コスモス、ゴデチャ、サポナリア、シネラリア、パンジー、シレネ、スイートピー、スカビオサ、スティパ、ストック、セラスチウム、セリンセ、セントーレア、ダスティーミラー、チェイランサス、千鳥草、つりがね草、帝王貝細工、デージー、ディディスカス、ディモルフォセカ、デルフィニウム、トルコ桔梗、撫子、なでしこ、菜の花、ニーレンベルギア、ニゲラ、ネモフィラ、花げし、花菜、花菱草、葉牡丹、バーベナ、パンジー、ひまわり、姫金魚草、ビオラ、フェリシア、フロックス、ブプレウルム、ヘリオフィラ、ヘリクリサム、ベニジューム、ペンステモン、ポピー、松虫草、マリーゴールド、むぎ、矢車草、ユーストマ、夕霧草、リナリア、リビングストンデージー、リモニューム、ルドベキア、ルナリア、ルピナス、れんげ、ローダンセ、ローレンティア、ロナス、ロベリア、ワイルドフラワー、わすれな草、綿などがあげられる
樹木類
センダン、アカメガシワ、ノイバラ、ヌルデ、アキグミ、カラキグミ、チョウセンマツ、ポプラ、サジー、ヤマハゼ、ハゼノキなどが挙げられる。
この中でも、穀類、野菜類、綿などのいわゆる商品作物の植物の種子の使用が好ましい。商品作物とは、自己消費よりも市場での販売を目的として生産する農作物のことである。
【0049】
(5)植物育成用包材の製造方法
本発明での植物育成用保水剤の製造方法の好ましい一例は下記である。
製法1
脱イオン水(電気伝導度5μS/cm以下)への溶解速度が1分以上30分以下であるプルラン製カプセル中に、綿花の種1粒と、脱イオン水(電気伝導度5μS/cm以下)の10分間の吸収倍率が20〜500g/gであるポリアクリル酸(塩)系架橋重合体(吸水性樹脂)0.05g、多価金属化合物として硫酸カルシウム0.01gを封入することにより、本発明の植物育成用包材を作成できる。
製法2
脱イオン水(電気伝導度5μS/cm以下)への溶解速度が1分以上30分以下であるプルラン製カプセル中に、綿花の種1粒と、脱イオン水(電気伝導度5μS/cm以下)の10分間の吸収倍率が20〜500g/gである表面処理されたポリアクリル酸(塩)系架橋重合体(吸水性樹脂)0.05g、多価金属化合物として硫酸カルシウム0.01gを封入することにより、本発明の植物育成用包材を作成できる。
製法3
脱イオン水(電気伝導度5μS/cm以下)への溶解速度が1分以上30分以下であるプルラン製カプセル中に、綿花の種1粒と、多価金属化合物として硫酸カルシウム0.01gをコーティングした脱イオン水(電気伝導度5μS/cm以下)の10分間の吸収倍率が20〜500g/gであるポリアクリル酸(塩)系架橋重合体(吸水性樹脂)0.05gを封入することにより、本発明の植物育成用包材を作成できる。
【0050】
(6)播種方法
本発明の植物育成用包材は予め植物の種子と必要量の吸水性樹脂が水溶性包材に封入されていることから、灌水により水溶性包材が溶解後、吸水性樹脂が灌水を吸水してゲル化する。植物の種子はこのゲルから必要な水分を得て発芽、出芽後、根が地中へ伸びていく。つまり、本発明の植物育成用包材を使用すると、植物の種子、吸水性樹脂を別々に散布する必要がないため、播種作業性が良好となる。
また、本発明の植物育成用包材は予め植物の種子と必要量の吸水性樹脂が水溶性包材に封入されていることから、播種は必ずしも地中にする必要はなく、地表に播いてもよい。また、本発明の植物育成用包材は、機械式播種機を使用して播種しても良い。機械式播種機としては、例えば背負い式散粒機、整列播種機SP−G11(コンマ製作所株式会社製)、うずまき全自動播種機THK−3017(株式会社スズテック製)などがある。
【0051】
また、本発明の植物育成用包材は、予め植物の種子と必要量の吸水性樹脂が水溶性包材に封入されていることから、航空播種法が更に好ましい。ここで言う航空播種とは、ヘリコプター、セスナ機などの航空機より上空から播種するものであり、中国では内蒙古自治区や陜西省の半乾燥地緑化に多く用いられており、「飛播造林」と呼ばれている。播種される植物の種子はその土地に自生する植物が用いられることが多く、ヨモギ類・マメ科の低木や草本・マツ類等がよく使われる。
【実施例】
【0052】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、これらの実施例は何ら本発明を制限するものではない。また、特に記載ない場合、「部」は「重量部」を意味する。
測定方法
(1)吸水倍率(10分間)
サンプルである吸水性樹脂の粉末0.02gを不織布製の袋(60mm×80mm)に均一に入れ、25℃に調温した500mlのイオン交換水(電気伝導度5μS/cm以下)に浸漬した。10分間静置後に袋を引き上げ、遠心分離機を用いて250Gで3分間水切りを行った後、袋の重量W(g)を測定した。同様の操作を吸水性樹脂粉末を用いずに行い、そのときの重量W(g)を測定した。これら重量W、Wから、次式に従って飽和吸水倍率(g/g)を算出した。
飽和吸水倍率(g/g)=(W2(g)−W1(g))/吸水性樹脂の重量(0.02g)
(2)包剤の脱イオン水(電気伝導度5μS/cm以下)への溶解速度
包材1個を25℃に調温した包材について、その容量に対して大過剰のイオン交換水中(電気伝導度5μS/cm以下)に投入した。目視にて包材の溶解を確認し、投入から溶解までの時間を測定した。
同じ包材について、同様の作業を5回繰り返してその平均時間を算出した。
(3)重量平均粒子径(質量平均粒子径)
吸水性樹脂サンプル粉末を5600μm、4750μm、4000μm、3350μm、2800μm、2360μm、2000μm、1700μm、1400μm、1000μm、850μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μmのJIS(日本工業規格)標準ふるいでふるい分けした。残留百分率を対数確率紙にプロットした。これにより、重量平均粒子径(D50)を読み取った。なお、上記ふるいがない場合は、JIS標準ふるいを参考に適宜使用することで測定することができる。
【0053】
ふるい分けは吸水性樹脂サンプル粉末10gを室温(20〜25℃)、相対湿度50%RHの条件下で、前記のJIS標準ふるい(The IIDA TESTING SIEVE:内径80mm)に仕込み、ロータップ型ふるい振盪機(株式会社飯田製作所製「ES−65型ふるい振盪機」:回転数230rpm、衝撃数130rpm)により10分間分級した。なお、「重量平均粒子径(D50)」とは、米国特許第5051259号明細書などにあるように一定目開きの標準ふるいで粒子全体の50重量%に対応する標準ふるいの粒子径のことである。
【0054】
(4)発芽率
植物育成用包材の10個を培地の表面から深さ2cmの位置へ埋めた、或いは培地表面においた。これに、灌水として水道水(姫路市)100mlを与えた。灌水頻度は、培地表面が乾燥する度に100mlの灌水を与えた。この灌水を与えたサンプルを室温20℃〜25℃に保った部屋に2週間保存し、2週間後の発芽を目視にて確認した。
【0055】
[実施例1]
20モル%のアクリル酸と80モル%アクリル酸ナトリウムからなる単量体水溶液5500g(単量体濃度38重量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数8)12.0gを溶解し反応液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、シグマ型羽根を2本有する内容積10Lのジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら反応系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム 2.46g及びL−アスコルビン酸0.10gを添加したところ、凡そ1分後に重合が開始した。重合を開始して60分経過前に含水ゲル状重合体を取り出した。得られた含水ゲル状重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。
この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目開き300μm)の金網上に広げ、 150℃で90分間熱風乾燥した。次いで得られた乾燥物を、振動ミルを用いて粉砕し、さらに金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂(1)を得た。
吸水性樹脂の10分間の吸水倍率は、90g/gであり、重量平均分子量D50は、550μmであった。
【0056】
続いてカプスゲル・ジャパン株式会社製のプルラン製カプセル(商品名;NPcaps1号)に、綿花種子1粒、吸水性樹脂(1)0.025gを封入し、植物育成用包材(1)を得た。なお、NPcaps1号の脱イオン水への溶解速度は7分であった。
底穴に見開き38μmの金網を備え付けたビニル樹脂製植木鉢(縦5cm、横5cm、高さ5cm)に培養土(タキイ種苗(株)製、商品名「タキイ培養土」)を投入し、次に植物育成用包材(1)を培養土の表面から深さ2cmの位置へ埋めた。
これに、灌水として水道水(姫路市)100mlを与えた。灌水頻度は、培養土表面が乾燥する度に100mlの灌水を与えた。
同じ作業を10回繰り返し、それぞれ2週間後の発芽率を確認した。その結果を表1に示す。
【0057】
[実施例2]
実施例1で得た吸水性樹脂(1)300gを、レディゲミキサー(レディゲ社製、タイプ:M5R)に投入し、硫酸カルシウムの50重量%の濃度で含有するスラリーを60g滴下しながら330rpmで15秒間攪拌混合した。混合後120℃で10分間熱風乾燥し、目開き2mmの金網を通過させて吸水性樹脂(2)を得た。
続いてカプスゲル・ジャパン株式会社製のプルラン製カプセル(商品名;NPcaps1号)に、綿の種子1粒、吸水性樹脂(1)0.03gを封入し、植物育成用包材(2)を得た。なお、NPcaps1号の脱イオン水への溶解速度は7分であった。
底穴に見開き38μmの金網を備え付けたビニル樹脂製植木鉢(縦5cm、横5cm、高さ5cm)に培養土(タキイ種苗(株)製、商品名「タキイ培養土」)を投入し、植物育成用包材(2)を培養土の表面から深さ2cmの位置へ埋めた。
これに、灌水として水道水(姫路市)100mlを与えた。灌水頻度は、培養土表面が乾燥する度に100mlの灌水を与えた。
同じ作業を10回繰り返し、それぞれ2週間後の発芽率を確認した。その結果を表1に示す。
【0058】
[実施例3]
高さ30mの建物から、航空播種した場合を想定し、地上のマサ土へ実施例1で得た植物育成用包材(1)を播いた。その後、地上で植物育成用包材(1)を周囲のマサ土とともに回収し、底穴に見開き38μmの金網を備え付けたビニル樹脂製植木鉢(縦5cm、横5cm、高さ5cm)に植え替えた。
これに、灌水として水道水(姫路市)100mlを与えた。灌水頻度は、培養土表面が乾燥する度に100mlの灌水を与えた。
同じ作業を10回繰り返し、それぞれ2週間後の発芽率を確認した。その結果を表1に示す。
【0059】
[比較例1]
実施例1で植物育成用包材(1)を綿の種子1粒と置き換える他は同様の操作をおこなった。その結果を表1に示す。
【0060】
[比較例2]
実施例3で植物育成用包材(1)を綿の種子1粒と吸水性樹脂(1)0.025gに置き換える他は同様の操作をおこなった。その結果を表1に示す。
【0061】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性または水壊性である包材中に、植物の種子および吸水性樹脂を封入
してなる植物育成用包材。
【請求項2】
包材中に、さらに多価金属化合物を封入してなる請求項1に記載の植物育成用包材。
【請求項3】
包材の脱イオン水(電気伝導度5μS/cm以下)への溶解速度が1分以上30分以内である請求項1〜2に記載の植物育成用包材。
【請求項4】
吸水性樹脂の脱イオン水(電気伝導度5μS/cm以下)に対する10分間の吸収倍率が20〜500g/gである請求項1〜3に記載の植物育成用包材。
【請求項5】
多価金属化合物がカルシウム、マグネシウム、鉄、およびケイ素からなる化合物から選択される少なくとも一種である請求項1〜4に記載の植物育成用包材。
【請求項6】
包材が容器または袋である請求項1〜5に記載の植物育成用包材。
【請求項7】
包材ないし植物育成用包材の容量が0.1〜100cmである請求項1〜6に記載の植物育成用包材。
【請求項8】
吸水性樹脂がポリアクリル酸(塩)粒子である、請求項1〜7に記載の植物育成用包材。
【請求項9】
植物の種子一粒に対する吸水性樹脂の重量が、0.005g以上1.0g以下である、請求項1〜8に記載の植物育成用包材。
【請求項10】
包材が天然物を主成分とする、請求項1〜9に記載の植物育成用包材。
【請求項11】
包材が軟カプセルないし硬カプセルである、請求項1〜10に記載の植物育成用包材。
【請求項12】
包材が円筒状硬カプセルである、請求項1〜11に記載の植物育成用包材。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか記載の植物育成用包材を播種することを特徴とする播種方法。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか記載の植物育成用包材を航空播種することを特徴とする航空播種方法。

【公開番号】特開2010−88388(P2010−88388A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−263598(P2008−263598)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)
【Fターム(参考)】