説明

植物観賞用容器

【課題】単純な給水機構を有し、細かな給水管理を行うことなく植物を栽培でき、容器内
部の温度を気温よりも低く保つことのできる容器を得る。
【解決手段】水抜き孔1aが形成された底面部1と、この底面部1の外周から上方に延び
て形成された壁部2と、底面部1の内側から上方に延びて壁部2と繋がるように形成され
た壁部3とを有している。また、壁部2と壁部3との間には隙間が形成され、ここが水の
貯留される水貯留部4とされている。そして、この水貯留部4に水を注入するために、上
方には、水貯留部13と外部とを連通する給水口5が形成されている。さらに、壁部3の
内壁部と外壁部には吸水性のある多孔質セラミック層6を有する容器とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栽培や観賞を行う容器に関し、栽培や観賞される植物の給水ならびに
冷却に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から植物を植木鉢で栽培するときには、給水・日当たりなど細かな管理が必要であ
った。特に、小品盆栽や山野草の栽培では、その鑑賞価値を高めるため用土を少なくした
り、これらの植物が水はけのよい用土を好む傾向があるので、給水の管理や設置場所によ
る日照時間や鉢内温度に多くの神経を使わなければならない。
【0003】
また、多孔質からなる容器で気化熱を利用して冷却効果を備えた容器はあるが、水漏れ
や水持ちが悪いなどの課題がある。
【0004】
さらに、多孔質セラミックには優れた吸水の物はなく、吸水の速度が遅く、また、コー
ティング材として使うには層の厚みが付きにくい等の課題がある。
【特許文献1】特開2000−236752号公開
【特許文献2】特開2004−51449号公開
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、鉢植え植物の給水技術については、別容器に水を入れ、これを毛細管現象を利
用したりチューブや管などにより供給するものや、ポンプによる電動式で供給するもの、
さらに容器から水をしみ出すものが知られている。しかしながら、これらによれば、給水
機構が複雑になり、メンテナンスや取り扱いの面、さらに根腐りで植物が栽培できないと
いう問題が発生することがある。
【0006】
そこで、本発明は、細かな給水管理を行うことなく植物を栽培することが可能な容器を
提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、単純な給水機構を有する容器を提供することと、気温が高くなっても
容器内部の温度を気温よりも低く保つことのできる容器を提供することを目的とする。
【0008】
さらに、本発明は、吸水速度が速くコーティングの厚みが付き易い多孔質セラミックを
提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係る容器は、焼き物から成り、植物が植えられる用
土が収容される用土収容部と水が貯水される貯水部を有し、前記用土収容部壁部と前記貯
水部壁部の全部もしくは一部に粗粒骨材と結合材さらに中空材から成る多孔質セラミック
がコーティングされ、前記用土収容部壁部と前記貯水部壁部が前記多孔質セラミックで連
通していること、また容器内壁部と外壁部の全部もしくは一部に前記多孔質セラミックが
コーティングされ、前記容器内壁部と前記外壁部が前記多孔質セラミックで連通している
ことを特徴とする。
【0010】
前記多孔質セラミックの骨材とは長硅石、碍子、シャモット等を含み、また、結合材と
は長石類、ガラス類、糊剤などを含む。さらに、添加材とは有機中空体、無機中空体、消
失体を含む。
【0011】
前記多孔質セラミックの添加材には殺菌作用として、銅、銀、チタン、亜鉛等が含まれ
る。
【0012】
前記多孔質セラミックは骨材、結合材、添加材は目的により変動させるため、それぞれ
の調合割合は0パーセントから100パーセントである。
【0013】
前記多孔質セラミックは容器と一緒に1000度から1300度で焼成され、容器は低
吸水に成る。又は、容器の吸水性を無くすためにガラス層を一部又は、全部にコーティン
グすることを含む。多孔質セラミックは吸水率が0.1パーセントから200パーセント
、また、気孔径が0.01ミリメートルから10ミリメートルに成る。
【0014】
前記多孔質セラミック層の焼成後の厚みは、0.01ミリメートルから100ミリメー
トルに成る。
【0015】
前記多孔質セラミックの気孔が連通していて濡れ性が良いとさらに吸水性が良くなる。
【0016】
このような発明によれば、容器の植物に安定的に水が供給されて植物が乾燥しすぎるこ
とがなくなるので、給水の管理に神経質になることなく植物を栽培することが可能になる

【0017】
また、多孔質セラミックから水が用土に供給されるので、単純な給水機構を有する容器
を得ることが可能になる。
【0018】
さらに、多孔質セラミックから成る外壁部から積極的に水が気化して大量の気化熱が容
器内部より奪われるので、容器内部の温度を気温よりも低く保つことが可能になる。
【0019】
また、本発明に係る植物栽培手段は、多孔質セラミックが壁面にコーティングされてい
ることから容器底部からの水漏れを防ぎ、毛細管により水を吸水し容器壁面を水が通過し
植物に水を供給する。また前記多孔質セラミックは表面積が大きく、気化する面積が大き
くなるため大量の水が気化し容器内部の温度を気温よりも低く保つことが可能になる。
【発明の効果】
【0020】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば以下の効果を奏することができる。
【0021】
多孔質セラミック層から吸水された水貯留部の水が用土に供給されるので、たとえば数
日から数週間に一度程度の少ない給水回数でも、少量の用土あるいは水はけのよい用土に
植えられた植物に対して適度な水分が供給される。これにより、鉢植えの植物における取
り扱い上の注意点の大部分を占める水管理において植物が乾燥しすぎることがなくなるの
で、給水の管理に神経質になることなく植物を栽培することが可能になる。
【0022】
多孔質セラミック層から吸水された水貯留部の水が用土に供給されるので、単純な給水
機構を有する容器を得ることが可能になる。
【0023】
多孔質セラミックから成る外壁部から積極的に水が気化して大量の気化熱が容器の内部
より吸収されるので、非常に高温となる夏でも容器内部の温度を気温よりも低く保つこと
が可能になる。これにより、高山植物や山野草などを快適な環境下で栽培することができ
る。
【0024】
多孔質セラミックは粗粒骨材から成るため表面積が大きく、気化する面積が大きくなる
ため大量の水が気化し容器内部の温度を気温よりも低く保つことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつさらに具体的に説明する。ここで、添
付図面において同一の機能を有する部材には同一の符号を付しており、また、重複した説
明は省略されている。なお、発明の実施の形態は、本発明が実施される特に有用な形態と
してのものであり、本発明がその実施の形態に限定されるものではない。
【0026】
図1は本発明の実施の形態における植木鉢を示す断面図である。ここで、本明細書にお
いて植木鉢とは、植木や草花等の植物を植える狭義の植木鉢のみならず、植物や野菜など
を数株ずつ栽培することが可能なプランターも含まれる。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態の植木鉢は、水抜き孔1aが形成された底面部1と、
この底面部1の外周から上方に延びて形成された壁部2と、底面部1の内側から上方に延
びて壁部2と繋がるように形成された壁部3とを有している。
【0028】
壁部2と壁部3との間には隙間が形成され、ここが水の貯留される水貯留部4とされて
いる。そして、この水貯留部4に水を注入するために、上方には給水口5が形成されてい
る。
【0029】
壁部3の内壁部と外壁部には多孔質セラミック層6を有している。
【0030】
壁部3に包囲されるようにして、栽培対象の植物7が植えられる用土8が収容される空
間である用土収容部9が形成されている。
【0031】
図2は本発明の実施の形態における要部であり、図1のbの拡大した断面図である。多
孔質セラミック層6から吸水した水貯留部4の水が図2の水の動き10のように用土8に
毛細管現象により供給される。たとえば数日から数週間に一度程度の少ない給水回数でも
、少量の用土8あるいは水はけのよい用土8に植えられた植物7に対して、水貯留部4の
水がなくなるまで適度な水分が供給されることになる。
【0032】
これにより、乾きやすい植物7や葉に水をかけない方がよい植物7の栽培、あるいは真
夏の乾きやすい時期での栽培などを含め、日常の頻繁な給水作業が軽減されて鉢植えの植
物7が乾燥しすぎることがなくなり、給水の管理に神経質になることなく植物を栽培する
ことが可能になる。
【0033】
そして、このように多孔質セラミック層6から吸水した水が用土8に供給されるので、
単純な給水機構を有する植木鉢を得ることが可能になる。
【0034】
図3は本発明の実施の形態におけるその他の植木鉢を示す断面図である。図3に示すよ
うに、本実施の形態の植木鉢は、底面部1と、この底面部1の外周から上方に延びて形成
された壁部3で形成され、壁部3に底面部1と平行な仕切り壁部11を有している。
【0035】
仕切り壁部11の下部に水の貯留される水貯留部4と仕切り壁部11の上部に用土収容
部9が形成されている。
【0036】
壁部3の内壁部と外壁部には多孔質セラミック層6を有している。
【0037】
多孔質セラミック層6から吸水した水貯留部4の水が上部の用土収容部9の用土8に毛
細管現象により供給されるので、たとえば数日から数週間に一度程度の少ない給水回数で
も、少量の用土8あるいは水はけのよい用土8に植えられた植物7に対して、水貯留部4
の水がなくなるまで適度な水分が供給されることになる。
【0038】
図4は本発明の実施の形態における花瓶を示す断面図である。ここで、本明細書におい
て花器とは、植木や草花等の植物を生ける狭義の花器のみならず、花瓶や水盤、水性植物
用鉢も含まれる。
【0039】
図4に示すように、本実施の形態の花器は、底面部1と、この底面部1の外周から上方
に延びて形成された壁部2を有した容器12と、また、別の容器13とを有している。
【0040】
容器12に水の貯留される水貯留部4が有り、壁部2の内壁部と外壁部には多孔質セラ
ミック層6を有している。
【0041】
壁部2に包囲されるようにして、観賞用の植物14が生けられ水4が収容される空間で
ある水収容部4が形成されている。
【0042】
本実施の形態の花器によれば、多孔質セラミック層6から吸水した水貯留部4の水が毛
細管現象により壁部2の外壁を通過し、この通過した水が気化し容器内部の温度を気温よ
りも低く保つことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の多孔質セラミックを利用し屋上緑化用製品、ヒートアイランド防止製品、空調
製品、液体移動品などに利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の植物観賞用植木鉢の断面見取り図である。
【図2】本発明の植物観賞用植木鉢の要部の図1のbの拡大図である。
【図3】本発明の植物観賞用植木鉢の他の形態の断面見取り図である。
【図4】本発明の植物観賞用容器の断面見取り図である。
【符号の説明】
【0045】
1;底面部
1a;水抜き孔
b;要部
2;壁部
3;壁部
4;水貯水部
5;吸水口
6;多孔質セラミック層
7;植物
8;用土
9;用土収容部
10;水の流れ
11;仕切り壁部
12;容器
13;容器
14;植物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器は焼き物から成り、植物が植えられる用土が収容される用土収容部と水が貯水され
る貯水部を有し、前記用土収容部壁部と前記貯水部壁部の全部もしくは一部に吸水性のあ
る多孔質セラミックがコーティングされ、前記用土収容部壁部と前記貯水部壁部が前記多
孔質セラミックで連通していることを特徴とする植物観賞用容器。
【請求項2】
容器は焼き物から成り、容器内壁部と外壁部の全部もしくは一部に請求項1記載の前記
多孔質セラミックがコーティングされ、前記容器内壁部と前記外壁部が前記吸水性のある
多孔質セラミックで連通していることを特徴とする植物観賞用容器。
【請求項3】
前記多孔質セラミックは骨材と結合材さらに添加材から成ることを特徴とする請求項1
から2記載の植物観賞用容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−101778(P2006−101778A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293669(P2004−293669)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(391048049)滋賀県 (81)
【Fターム(参考)】