説明

植生のための流亡防止材、これを使用した植生工法または植生帯工法、及び植生材

【課題】植生を行うための基帯(植生帯)と法面との間の「不陸(隙間)」を容易に解消できて、季節を問わず効率的な植生帯工法が行える流亡防止材を簡単な構成によって提供すること。
【解決手段】植生を行うための基帯20を法面200上に保持すべく、当該法面200上の横方向に設置される流亡防止材10であって、この流亡防止材10を、法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになる軟質部11と、この軟質部11上に一体化される硬質部12とにより構成したこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、法面の保護を行う植生を施すのに用いられる流亡防止材、これを使用した植生工法または植生帯工法、及び植生材に関し、特に、新規造成地や山間地の切り通しにできる法面や崖に植生を施すための流亡防止材、これを使用した植生工法または植生帯工法、及び植生材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
傾斜面である法面は、コンクリートで固めてしまう以外は崩れ易いものであるが、法面全面をコンクリートで固めてしまうことは、生物環境保全や景観の保護が行いにくいことから、近年では余りなされていない。むしろ、法面に植物を積極的に生育させて、その根による法面保護を行う、所謂「植生工法」が多用されてきている。
【0003】
勿論、急峻な崖や岩盤が多い法面等においては、図16にも示すように、コンクリート製の法枠を法面上に形成し、この法枠によって法面上をまず物理的に保護しておいて、この保護内に植生工法を施すことも行われている。
【0004】
以上のような植生工法としては、大別して2つの方法が一般的に採用されている。第1の植生工法は、出願人も特許文献1等において種々提案してきているような、植生植物種子を種々な形態で取り付けた「植生帯」を法面上に敷設する工法(以下、植生帯工法という)であり、第2の植生工法は、植生植物種子や根茎を土砂や植生基盤材とともに法面に吹き付ける、所謂「吹き付け工法」である。
【0005】
植生帯工法では、種子等を取り付けた植生帯(網状、シート状あるいはマット状のものがある)を法面上に敷設(一般的には、法面の上方から展開させる)するだけで植生帯工法がほぼ完了するから、急峻な山間地における法面の植生が行い易いという長所がある。
【0006】
しかしながら、展開しただけの植生帯を、法面上の凹凸にぴったりと密着させることは困難であり、この植生帯と法面との間に隙間(所謂、「不陸」)が発生し易い。この隙間が存在すれば、植生帯自体に備えた、あるいは植生帯に取り付けた植生袋に収納された種子や、植生基盤材等の、植生に使用される種々な材料の乾燥を招き易く、その結果、植生植物の種子の発芽や発根が著しく困難になる。それだけでなく、隙間あるいは不陸は、乾燥状態を形成し易いから、上記種子が折角発芽してもその後に枯れ死させてしまうことにもなる。
【0007】
また、この植生帯工法においても、長雨があったり大量の雨水が法面の上流側から流れてくると、植生帯自体が備えていた、あるいは設けてあった種子や植生基盤材等が植生帯から流れ落ち、これらが雨水によって法面から流れ去ってしまう(所謂、流亡)ことがある。
【0008】
一方、吹き付け工法では、植生植物の種子または根茎、土砂や植生基盤材等を水に混合して、ポンプによって法面上に吹き付けるものであるから、植物の生育時期を考慮して施工しなければならない。何故なら、冬季のように、植生植物が発芽(種子の場合)も生育(根茎の場合)もしない時期に行えば、発芽や生育するまでの間に、雨や解けた雪によって種子や植生基盤材が「流亡」してしまうことになるからである。
【0009】
この流亡をできるだけ防止するために、図16に示したような法枠工法が採用されるのであるが、この法枠工法では、法枠形成と法面上の物理的保護のために、法面上に「ラス網」を張設しておき、このラス網によって法面からの岩等の崩落を防止しながらこのラス網を法枠の一部とし、さらにこのラス網内に種子や植生基盤材が絡み込むようになされる。しかしながら、この法枠工法において吹き付け工法を冬季に採用すれば、発芽や生育するまでの期間に、雨や解けた雪によって種子や植生基盤材が「流亡」してしまうことは避けられない。
【0010】
特に、吹き付け工法においては、上記の「流亡防止」を図るために、吹き付ける植生基板材内に「接着剤」を混入することがあるが、この接着剤は植生植物の発芽や生育に支障を来すことがある。また、客土吹き付けや厚層吹き付けでは、高いポンプ圧が必要であることから、これらの吹き付け工法は、機械導入の困難な高所での施工には向かないこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第2774986号掲載公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
要するに、植生工法あるいは植生帯工法も、吹き付け工法も、それぞれ一長一短があるが、それでも大面積の法面であれば、スケールメリットによって短所を解消しながら施工することはできるが、小面積であると、どうしても「植生帯工法」に軍配が上がる。
【0013】
そこで、本発明者等は、大面積は勿論、小面積であっても、流亡防止を図ることができて、基帯の法面に対する「不陸」の解消が行える植生帯工法とするにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
【0014】
すなわち、本発明の第1目的は、流亡防止を図ることができて、季節を問わず効率的に施工できる、植生のための流亡防止材を簡単な構成によって提供することにある。
【0015】
また、本発明の第2目的は、流亡防止を図ることができるだけでなく、植生を行うための基帯(植生帯)と法面との間の「不陸(隙間)」を容易に解消できて、季節を問わず効率的な植生帯工法が行える流亡防止材を簡単な構成によって提供することにある。
【0016】
さらに、本発明の第3目的は、流亡防止を図ることができて、植生のために、季節を問わず効率的な施工が行える流亡防止材を使用した植生工法を提供することにある。
【0017】
また、本発明の第4目的は、流亡防止を図ることができることは勿論、基帯と法面との間の「不陸(隙間)」を容易に解消できて、季節を問わず効率的な施工が行える流亡防止材を使用した植生帯工法を提供することにある。
【0018】
そして、本発明の第5目的は、流亡防止を図ることができることは勿論、基帯と法面との間の「不陸(隙間)」を容易に解消できて、季節を問わず効率的な施工が行える流亡防止材を使用した植生材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「植生が行われる法面200上の横方向に設置される流亡防止材10であって、
この流亡防止材10を、法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになる軟質部11と、この軟質部11上に一体化される硬質部12とにより構成したことを特徴とする流亡防止材10」
である。
【0020】
この請求項1に係る流亡防止材10は、図1〜図5または図8〜図13に例示するように、法面200上の横方向に設置されるものである。この流亡防止材10を法面200に設置するには、図2及び図7に例示するように、流亡防止材10自体の重量を利用して、法面200上にただ単に載置するか、あるいは当該流亡防止材10を後述する押圧部材40等によって法面200に対して固定してもよい。
【0021】
この流亡防止材10は、図1〜図5または図8〜図13に示すように、法面200側に当接される軟質部11と、この軟質部11上に一体化されて、基帯20に取り付けられる硬質部12とにより構成したものである。
【0022】
この流亡防止材10を構成している軟質部11は、法面200側に向けて施工されるものであり、ラス網210が張設されていない法面200においては、法面200上に直接当接されたり、ラス網210が張設されている法面200においては、図11及び図12に示すように、ラス網210上に当接されるものである。
【0023】
また、この軟質部11は、当該流亡防止材10が法面200側に圧接されたとき、その軟質性によって法面200自体やラス網210の凹凸に応じて変形するものであり、図3、図4、図9あるいは図12に示すように、当該軟質部11と法面200との間の不陸(隙間)を埋めるものである。また、この軟質部11は、図5、図11、または図12に示すように、法面200上に張設したラス網210自体の編み目内を埋めるだけでなく、この編み目を通して法面200に達することによりラス網210と法面200との間の隙間を埋めて、これらの間の不陸を解消するものである。
【0024】
このため、この軟質部11を形成する材料としては、後述する実施形態で説明する合成樹脂製のスポンジの他、ヤシガラ繊維等の自然繊維、あるいは紙繊維がある。これらの自然繊維や、紙繊維等を採用する場合には、押せば潰れる程度、つまり上述した軟質性が確保できる程度の構造材として実施してもよい。
【0025】
硬質部12は、その硬質性によって、上記軟質部11を下面にて支持することは勿論、図3〜図5に示すように、その自重によって軟質部11を押圧するか、図9〜図12に示すように、押圧部材40という一部分によって法面200に固定されたとき、軟質部11の全体を押圧することになるものである。この硬質部12は、上記の機能を発揮できるのであれば、その材料については特に限定されないが、コンクリートや木材によって構成される。
【0026】
そして、以上の流亡防止材10は、図10〜図12に示すように、押圧部材40によって法面200側に圧接されることもある。この押圧部材40は、具体的にはアンカーや杭であるが、法面200上に当該流亡防止材10を圧接してその状態を維持でき、法面200からの転落が防止できるのであれば、目串のようなその他の土木資材であってもよいものである。
【0027】
さて、流亡防止材10の軟質部11は、図2または図13に示すように、法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになるものである。何故なら、この軟質部11は、その上側に一体化した硬質部12により変形しないように保持されていて、この硬質部12からの押圧力(自重または押圧部材40による)を得て変形し、この変形によって法面200またはその上のラス網210の凹凸になじむことになるからである。
【0028】
この流亡防止材10の軟質部11が、変形して法面200またはその上のラス網210の凹凸になじめば、図3〜図5あるいは図9〜図12に示すように、当該流亡防止材10は法面200上での「堰」を形成することになる。このため、当該流亡防止材10の上側から流れてきた土砂50は勿論のこと、後述する基帯20や植生袋30が有していた種子32、植生基盤材31、肥料、そして風化した基帯20や植生袋30まで「堰き止める」ことになり、これらの流亡を防止するのである。
【0029】
このように、この流亡防止材10は、土砂50や、基帯20が有していた種子32や植生基盤材31等の流亡を防止するのであるから、植生工法あるいは植生帯工法において使用された植生植物の種子32や根茎は、その発芽や成育条件が整うまで当該流亡防止材10によって保持されることになる。換言すれば、この流亡防止材10を使用すれば、植生工法あるいは植生帯工法は、雨期に限らず施工できるのであり、季節的制限を受けることなく常時施工できるのである。
【0030】
従って、この請求項1に係る流亡防止材10は、流亡防止を図ることができて、植生工法または植生帯工法を季節を問わず効率的に施工できるようにするのである。
【0031】
また、以上の課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「植生を行うための基帯20を法面200上に保持すべく、当該法面200上の横方向に設置される流亡防止材10であって、
この流亡防止材10を、法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになる軟質部11と、この軟質部11上に一体化される硬質部12とにより構成したことを特徴とする流亡防止材10」
である。
【0032】
この請求項2に係る流亡防止材10は、図1〜図5または図8〜図13に示すように、法面200上に展開されて植生帯工法を施工するための基帯20を、この基帯20の展開後または前に、法面200上に固定するものである。そのために、この流亡防止材10は、図2または図13に示すように、基帯20の幅程度の長さを有して、法面200の横方向に配置されることになるものである。
【0033】
この流亡防止材10によって基帯20を法面200に固定するには、図2及び図7に示すように、流亡防止材10自体の重量を利用して、法面200上に展開した基帯20の上に載置してもよい。あるいは、図13に示すように、当該流亡防止材10を法面200と展開した基帯20との間に収納して、当該流亡防止材10を後述する押圧部材40等によって法面200に対して固定してもよい。さらには、当該流亡防止材10を基帯20に形成しておいた収納部(図示せず)内に収納してもよい。
【0034】
この流亡防止材10は、図1〜図5または図8〜図13に示すように、法面200側に当接される軟質部11と、この軟質部11上に一体化されて、基帯20に取り付けられる硬質部12とにより構成したものである。
【0035】
この流亡防止材10を構成している軟質部11は、法面200側に向けて施工されるものであり、ラス網210が張設されていない法面200においては、図1あるいは図2に示すように、法面200上に展開した基帯20の上に直接当接されたり、ラス網210が張設されている法面200においては、図11及び図12に示すように、ラス網210上に当接されるものである。
【0036】
また、この軟質部11は、当該流亡防止材10が法面200側に圧接されたとき、その軟質性によって法面200自体やラス網210の凹凸に応じて変形するものであり、図3、図4、図9あるいは図12に示すように、当該軟質部11と法面200との間の不陸(隙間)を埋めるものである。また、この軟質部11は、図5、図11、または図12に示すように、法面200上に張設したラス網210自体の編み目内を埋めるだけでなく、この編み目を通して法面200に達することによりラス網210と法面200との間の隙間を埋めて、これらの間の不陸を解消するものである。
【0037】
なお、当該流亡防止材10の下側に基帯20を施工する場合には、この基帯20を網状のものとしておけば、流亡防止材10が法面200側に圧接されたとき、流亡防止材10の軟質部11がその軟質性によって基帯20の編み目を通して法面200やラス網210に当接あるいは侵入する。これにより、流亡防止材10が法面200側に圧接されたとき、流亡防止材10の軟質部11がその軟質性によって法面200自体やラス網210の凹凸に応じて変形することになる。
【0038】
この軟質部11を形成する材料としては、後述する実施形態で説明する合成樹脂製のスポンジの他、ヤシガラ繊維等の自然繊維、あるいは紙繊維がある。これらの自然繊維や、紙繊維等を採用する場合には、押せば潰れる程度、つまり上述した軟質性が確保できる程度の構造材として実施してもよい。
【0039】
硬質部12は、その硬質性によって、上記軟質部11を下面にて支持することは勿論、図3〜図5に示すように、その自重によって軟質部11を押圧するか、図9〜図12に示すように、押圧部材40によって法面200に固定されたとき軟質部11を押圧することになるものである。
【0040】
この硬質部12は、上記の機能を発揮できるのであれば、その材料については特に限定されないが、コンクリートによって形成することにより押圧のための自重を大きくしたり、木材によって構成することにより、流亡防止材10のコストを低減させたり、図10や図12に示すように、当該硬質部12に基帯20を取り付け必要がある場合の、留め材13にての留め作業を簡単にする。
【0041】
なお、本発明が対象としている植生帯工法は、基帯20を法面200上から下方に向けて展開することを基本とするものであるから、この基帯20の長手方向と直交する方向に向けながら、当該流亡防止材10を基帯20上に載置するか法面200側に固定すると、この流亡防止材10は、自然に法面200の横方向に配置されることになる。
【0042】
また、以上の流亡防止材10は、図10〜図12に示すように、押圧部材40によって法面200側に圧接されることもあるが、この押圧部材40は、具体的にはアンカーや杭であるが、法面200上に当該流亡防止材10を圧接してその状態を維持でき、法面200からの転落が防止できるのであれば、目串のようなその他の土木資材であってもよいものである。
【0043】
基帯20は、現状では種々なタイプのものがあり、前述したように、例えば図6あるいは図13に示すように網状にしたもの、自然繊維から形成したシート状のもの、あるいは、シート状より厚いマット状のものなど、種々なものがある。また、この基帯20は、植生基盤材31、種子32、肥料、土壌改良材の何れか少なくとも一種を備えたもの、あるいはこれらの植生基盤材31、種子32、肥料、土壌改良材の何れか少なくとも一種を入れた植生袋30を設けたもの等、植生に必要なものを備えたものであってもよい。
【0044】
なお、種子32としては、当該基帯20自体が予め備えていたもの、あるいは予め設けてあった植生袋30内にあったものは勿論、自然に飛来してきたものがある。同様に、土砂50についても、当該基帯20自体が有していたものや、当該流亡防止材10上の法面200表面から流れ落ちて来たものがある。
【0045】
何れにしても、この基帯20は、展開する前には巻回しておくことができて、法面200の上端から転がすと法面200上への展開が容易に行える程度の可撓性を有したものである。勿論、図2または図13に示すように、上述した流亡防止材10の軟質部11が容易に入り込める程度の「目」を有していたり、図7または図15に示すような収納部21を有したものである。
【0046】
この基帯20には、例えば図13に示すように、工場等で流亡防止材10を予め取り付けておくか、あるいは法面200上に展開した基帯20の例えば下側に横側から挿入して、上になった基帯20とに対して固定されるものである。
【0047】
さて、流亡防止材10の軟質部11は、図2または図13に示すように、法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになるものである。何故なら、この軟質部11は、その上側に一体化した硬質部12により変形しないように保持されていて、この硬質部12からの押圧力(自重または押圧部材40による)を得て変形し、この変形によって法面200またはその上のラス網210の凹凸になじむことになるからである。
【0048】
この流亡防止材10の軟質部11が、変形して法面200またはその上のラス網210の凹凸になじめば、図3〜図5あるいは図9〜図12に示すように、当該流亡防止材10は法面200上での「堰」を形成することになる。このため、当該流亡防止材10の上側から流れてきた土砂50は勿論のこと、基帯20や後述する植生袋30が備えていた種子32、植生基盤材31、肥料、そして風化した基帯20や植生袋30まで「堰き止める」ことになり、これらの流亡を防止するのである。
【0049】
この流亡防止材10は、基帯20を使用した植生帯工法の施工後において、土砂50や、基帯20が有していた種子32や植生基盤材31等の流亡を防止するのであるから、当該基帯20を使用した植生帯工法において使用された植生植物の種子32や根茎は、その発芽や成育条件が整うまで当該流亡防止材10によって保持されることになる。換言すれば、この基帯20を使用した植生帯工法は、雨期に限らず施工できるのであり、季節的制限を受けることなく常時施工できるのである。
【0050】
従って、この請求項2に係る流亡防止材10は、流亡防止を図ることができるだけでなく、植生を行うための基帯20と法面200との間の「不陸(隙間)」を容易に解消できて、季節を問わず効率的な植生帯工法が行えるようにするのである。
【0051】
さらに、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「法面200の植生を行う植生工法であって、
法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになる軟質部11と、この軟質部11上に一体化される硬質部12とにより構成した流亡防止材10によって、法面200上に展開施工した基帯20を法面200に保持させるとともに、
この流亡防止材10の硬質部12を法面200に圧接させることによって、軟質部11が法面200と流亡防止材10との間の隙間を埋めるようにしたことを特徴とする植生工法」
である。
【0052】
すなわち、この請求項3に係る植生工法は、上記請求項1または2で述べたのと同様な、軟質部11と、この軟質部11上に一体化される硬質部12とにより構成した流亡防止材10を使用するものであり、この流亡防止材10の軟質部11によって法面200と流亡防止材10との間の隙間(不陸)が埋められるようにしながら施工されるものである。
【0053】
流亡防止材10の軟質部11は、法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになるものである。何故なら、この軟質部11は、その上側に一体化した硬質部12により変形しないように保持されていて、この硬質部12からの押圧力を得て変形し、この変形によって法面200またはその上のラス網210の凹凸になじむことになるからである。
【0054】
この流亡防止材10の軟質部11が、変形して法面200またはその上のラス網210の凹凸になじめば、当該流亡防止材10は法面200上での「堰」を形成することになる。このため、当該流亡防止材10の上側から流れてきた土砂50は勿論のこと、基帯20や後述する植生袋30が備えていた種子32、植生基盤材31、肥料、そして風化した基帯20や植生袋30まで「堰き止める」ことになり、これらの流亡を防止するのである。
【0055】
従って、この請求項3に係る流亡防止材10を使用した植生工法は、流亡防止材10を使用することによって、当該流亡防止材10の上側から流れてきた土砂50は勿論のこと、基帯20や後述する植生袋30が備えていた種子32、植生基盤材31、肥料、そして風化した基帯20や植生袋30まで「堰き止める」ことになり、これらの流亡を防止するとともに、基帯20と法面200との間の「不陸(隙間)」を容易に解消できて、季節を問わず効率的な施工が行えるものとなっているのである。
【0056】
上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「植生を行うための基帯20を法面200上に展開施工して、当該法面200の植生を行う植生帯工法であって、
法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになる軟質部11と、この軟質部11上に一体化される硬質部12とにより構成した流亡防止材10によって、法面200上に展開施工した基帯20を法面200に保持させるとともに、
この流亡防止材10の硬質部12を法面200に圧接させることによって、軟質部11が法面200と流亡防止材10との間の隙間を埋めるようにしたことを特徴とする植生帯工法」
である。
【0057】
すなわち、この請求項4に係る植生帯工法は、上記請求項2で述べたのと同様な、軟質部11と、この軟質部11上に一体化される硬質部12とにより構成した流亡防止材10を使用するものであり、この流亡防止材10の軟質部11によって法面200と流亡防止材10との間の隙間(不陸)が埋められるようにしながら施工されるものである。
【0058】
この流亡防止材10は、上記請求項2に係るものと同様であり、図2または図13に示すように、軟質部11と、この軟質部11上に一体化される硬質部12とにより構成したものであって、軟質部11は、法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになるものである。何故なら、この軟質部11は、その上側に一体化した硬質部12により変形しないように保持されていて、この硬質部12からの押圧力を得て変形し、この変形によって法面200またはその上のラス網210の凹凸になじむことになるからである。
【0059】
この流亡防止材10の軟質部11が、変形して法面200またはその上のラス網210の凹凸になじめば、図3〜図5あるいは図9〜図12に示すように、当該流亡防止材10は法面200上での「堰」を形成することになる。このため、当該流亡防止材10の上側から流れてきた土砂50は勿論のこと、基帯20や後述する植生袋30が備えていた種子32、植生基盤材31、肥料、そして風化した基帯20や植生袋30まで「堰き止める」ことになり、これらの流亡を防止するのである。
【0060】
従って、この請求項4に係る流亡防止材10を使用した植生帯工法は、流亡防止材10を使用することによって、流亡防止を図ることができることは勿論、基帯20と法面200との間の「不陸(隙間)」を容易に解消できて、季節を問わず効率的な施工が行えるものとなっているのである。
【0061】
また、以上の課題を解決するために、請求項5に係る発明の採った手段は、後述する最良形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「法面200の植生を行うための植生材100であって、
法面200上に敷設されることになる基帯20と、この基帯20を法面200上に保持させる流亡防止材10とを備え、
この流亡防止材10を、法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになる軟質部11と、この軟質部11上に一体化される硬質部12とにより構成したことを特徴とする植生材100」
である。
【0062】
この請求項5に係る植生材100は、図1または図8に示すように、法面200上に展開されることになる基帯20と、この基帯20の展開前または後に、基帯20上、またはこの基帯20と法面200との間、あるいは基帯20自身に形成した収納部内(図示せず)に配置あるいは収納されることになる流亡防止材10とを備えたものであり、この流亡防止材10は請求項2に係るそれと同様なものである。
【0063】
すなわち、この植生材100は、図1、または図8の(a)に示すように、上述してきた流亡防止材10と、基帯20とを備えたものであり、これらの流亡防止材10及び基帯20を、工場で予め一体化して構成されることもあるし、法面200上に展開した後の基帯20を、流亡防止材10によって現場にて法面200上に押さえ付けるようにすることもある。
【0064】
さて、上記のような植生材100を施工した法面200にあっては、図3〜図5あるいは図9〜図12に示すように、法面200自体が有している凹凸や、法面200上のラス網210によって形成されている凹凸が、流亡防止材10の押し潰された軟質部11によって埋められて、「不陸(隙間)」が解消される。このため、各流亡防止材10は、法面200上に「堰」を形成することになるから、種子32や土砂50を受け止めることになり、これらの種子32や土砂50の流亡を防止するのである。
【0065】
また、この植生材100を構成している基帯20は、流亡防止材10を取り付けたものであっても、そうでないものであっても、巻回しておくことができるものであるから、当該植生材100の運搬や保管、そして展開が容易に行えるのである。つまり、本発明に係る植生材100は、高所での施工は勿論、法枠内(小面積)での施工も、容易に行えるものとなっているのである。
【0066】
そして、この植生材100は、例えば冬季に施工しておいても、その各流亡防止材10が法面200上に「堰」を形成することなって種子32や土砂50を受け止め、これらの種子32や土砂50の流亡を防止するのであるから、結果的に季節を問わない施工が行えるものとなっているのである。
【0067】
従って、この請求項5に係る植生材100は、流亡防止材10や基帯20と法面200戸の間の「不陸(隙間)」を容易に解消できて、季節を問わず効率的な植生帯工法が行えるものとなっているのである。
【0068】
また、上記課題を解決するために、請求項6に係る発明の採った手段は、上記請求項5に記載の植生材100について、
「流亡防止材10は法面200上に圧接する押圧部材40を備えたこと」
である。
【0069】
上記請求項5の植生材100では、これを構成している流亡防止材10が確実に法面200上に圧接されることが好ましいが、この請求項6の植生材100で圧接は、押圧部材40によって確実に行えるものとなる。この押圧部材40は、当該植生材100に一体化されている必要はないが、施工現場で流亡防止材10を法面200に圧接できるようになっていればよい。
【0070】
このような機能を発揮する押圧部材40としては、前述したように、アンカー、目串、杭、この杭を利用する縄等、様々な土木資材が採用できるが、図9等に示すような「首」を有するアンカーが、持ち運びする上でも施工する上でも最も簡便である。
【0071】
従って、この請求項6に係る植生材100は、上記請求項5のそれと同様な機能を発揮する他、流亡防止材10の法面200に対する圧接を簡単に行えるものとなっているのである。
【0072】
そして、以上の課題を解決するために、請求項7に係る発明の採った手段は、上記請求項5または請求項6の植生材100について、
「基帯20は植生袋30を備えたものであること」
としたことである。
【0073】
この請求項7の植生材100では、図6中の実線、図8の(b)または図9中の仮想線、あるいは図14中の実線にて示したように、基帯20が植生袋30を備えたものとしたものであり、この場合、植生袋30は基帯20の上側に取り付けてもよく、基帯20の裏面側に取り付けるようにしたものであってもよいものである。また、この植生袋30の基帯20に対する取付方法としては、図7あるいは図15にも示すように、基帯20に、法面200に施工したとき横方向となる方向の収納部21を形成しておき、この収納部21内に植生袋30を挿入するように実施してもよいものである。
【0074】
この植生袋30は、図7及び図15中に示すように、紙や自然繊維で生分解し易い材料によって形成した袋内に、種子32、この種子32のための植生基盤材31のいずれか少なくとも一種を閉じ込んだものである。さらに、植生基盤材31としては、一般的な肥料は勿論、土砂、土壌改良材、成育基盤材等、「植生」に必要あるいは好ましい種々な物質のいずれか少なくとも一種がある。
【0075】
以上のような植生袋30を有する基帯20を法面200上に展開して各流亡防止材10によって基帯20の支持を行えば、雨等によって植生袋30の袋が自然に破壊されて、中の植生基盤材31や種子32が法面200上にこぼれ落ちる。勿論、中には、基帯20に止まった袋の一部に種子32が止まったままとなることもある。そして、これらの種子32が法面200上や植生袋30の残渣内で発芽して成育し、植生が進行する。
【0076】
ここで、発芽する前に雨等によって種子32が流れたとしても、法面200上の随所で「堰」を形成している上記流亡防止材10によって止まることになるから、法面200外へ流亡してしまうことはない。このため、ここでも、これらの種子32が法面200上や植生袋30の残渣内で発芽して成育し、植生が進行する。
【0077】
従って、この請求項7に係る植生材100は、上記請求項5または請求項6のそれと同様な機能を発揮する他、植生袋30を基帯20に取り付けたことによって、種子32の法面200上への分散と、発芽、成育をより確実に行えるものとなっている。
【発明の効果】
【0078】
以上、説明した通り、請求項1に係る発明においては、
「植生が行われる法面200上の横方向に設置される流亡防止材10であって、
この流亡防止材10を、前記法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになる軟質部11と、この軟質部11上に一体化される硬質部12とにより構成したこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、流亡防止を図ることができて、季節を問わず効率的に施工できる、植生のための流亡防止材10を簡単な構成によって提供することができるのである。
【0079】
また、請求項2に係る発明においては、
「植生を行うための基帯20を法面200上に保持すべく、当該法面200上の横方向に設置される流亡防止材10であって、
この流亡防止材10を、前記法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになる軟質部11と、この軟質部11上に一体化される硬質部12とにより構成したこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、流亡防止を図ることができるだけでなく、植生を行うための基帯20(植生帯)と法面200との間の「不陸(隙間)」を容易に解消できて、季節を問わず効率的な植生帯工法が行える流亡防止材10を簡単な構成によって提供することができるのである。
【0080】
さらに、請求項3に係る発明においては、
「法面200の植生を行う植生工法であって、
前記法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになる軟質部11と、この軟質部11上に一体化される硬質部12とにより構成した流亡防止材10を、当該法面200上の横方向に設置するとともに、
この流亡防止材10を前記硬質部12にて前記法面200に圧接させることにより前記軟質部11を変形させて、当該軟質部11が前記法面200と流亡防止材10との間の隙間を埋めるようにしたことを特徴とする植生工法」
にその特徴があり、これにより、流亡防止を図ることができて、植生のために、季節を問わず効率的な施工が行える流亡防止材10を使用した植生工法を提供することができるのである。
【0081】
また、請求項4に係る発明においては、
「植生を行うための基帯20を法面200上に展開施工して、当該法面200の植生を行う植生帯工法であって、
前記法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになる軟質部11と、この軟質部11上に一体化される硬質部12とにより構成した流亡防止材10によって、前記法面200上に展開施工した前記基帯20を前記法面200に保持させるとともに、
この流亡防止材10を前記硬質部12にて前記法面200に圧接させることによって、前記軟質部11が前記法面200と流亡防止材10との間の隙間を埋めるようにしたことを特徴とする植生帯工法」
にその特徴があり、これにより、流亡防止を図ることができることは勿論、基帯20と法面200との間の「不陸(隙間)」を容易に解消できて、季節を問わず効率的な施工が行える流亡防止材10を使用した植生帯工法を提供することができるのである。
【0082】
そして、請求項5に係る発明においては、
「法面200の植生を行うための植生材100であって、
前記法面200上に敷設されることになる基帯20と、この基帯20を前記法面200上に保持させる流亡防止材10とを備え、
この流亡防止材10を、前記法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになる軟質部11と、この軟質部11上に一体化される硬質部12とにより構成したこと」
にその構成上の特徴があり、これにより、流亡防止を図ることができることは勿論、基帯20と法面200との間の「不陸(隙間)」を容易に解消できて、季節を問わず効率的な施工が行える流亡防止材10を使用した植生材100を提供することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明に係る植生材100の施工例を示すもので、植生袋30を有さない植生材100を施工した法面200の断面図である。
【図2】同植生材100の最もシンプルな形態を示す展開部分斜視図である。
【図3】図1中に示した2本の流亡防止材10の間を拡大して示した法面200の断面図である。
【図4】図4中の1本の流亡防止材10の周囲の拡大断面図である。
【図5】ラス網210を採用した法面200において施工した流亡防止材10の周囲の拡大断面図である。
【図6】本発明に係る植生材100の施工例を示すもので、植生袋30を備えた植生材100を施工した法面200の断面図である。
【図7】植生材100を構成している基帯20の他の例を示す部分斜視図である。
【図8】本発明に係る植生材100の施工例を示すもので、(a)は植生袋30を有さない植生材100を施工した法面200の断面図、(b)は植生袋30を備えた植生材100を施工した法面200の断面図である。
【図9】図8中に示した2本の流亡防止材10の間を拡大して示した法面200の断面図である。
【図10】図9中の1本の流亡防止材10の周囲の拡大断面図である。
【図11】法面200上のラス網210が敷設してある場合の2本の流亡防止材10間の部分拡大断面図である。
【図12】図11中の1本の流亡防止材10の周囲を示す拡大断面図である。
【図13】本発明に係る植生材100の最もシンプルな形態を示す展開部分斜視図である。
【図14】同植生材100の部分拡大縦断面図である。
【図15】同植生材100を構成している基帯20の他の例を示す部分斜視図である。
【図16】従来の一般的な法枠内に吹き付け工法を施工している様子を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0084】
以上のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した各実施の形態に従って説明するが、これらの実施形態は上記各請求項に係る発明を含むものであり、実施例1と実施例2がある。
【0085】
(実施例1)
図1〜図7には、流亡防止材10、これを使用した植生帯工法、及び植生材100を含んだ第1実施例が示してあり、流亡防止材10は、図1〜図5に示したように、法面200上に展開されることになる基帯20を、この基帯20の展開後または前に、法面200上に固定するものである。そのために、この流亡防止材10は、図2に示したように、法面200側に当接されて、当該法面200との間の隙間を埋めることになる軟質部11と、この軟質部11上に一体化される硬質部12とを備えたものであって、基帯20の幅程度の長さを有して、法面200の横方向に配置される。
【0086】
この流亡防止材10によって基帯20を法面200に固定するには、図2及び図7に示したように、流亡防止材10自体の重量を利用するか、当該流亡防止材10を法面200と展開した基帯20との間に収納して、当該流亡防止材10を後述する押圧部材40等によって法面200に対して固定する。あるいは、基帯20が収納部(図示せず)を有するものであれば、この収納部内に当該流亡防止材10を収納するようにしてもよい。
【0087】
この流亡防止材10の軟質部11は、当該流亡防止材10が法面200側に圧接されたとき、その軟質性によって法面200自体やラス網210の凹凸に応じて変形するものであり、図3または図4に示したように、当該軟質部11と法面200との間の不陸(隙間)を埋めるものである。
【0088】
また、この軟質部11は、図5に示したように、法面200上に張設したラス網210自体の編み目内を埋めるだけでなく、この編み目を通して法面200に達することによりラス網210と法面200との間の隙間を埋めて、これらの間の不陸を解消するものである。
【0089】
このため、この軟質部11を形成する材料としては、合成樹脂製のスポンジの他、ヤシガラ繊維等の自然繊維、あるいは紙繊維がある。これらの自然繊維や、紙繊維等を採用する場合には、押せば潰れる程度、つまり上述した軟質性が確保できる程度の構造材として実施してもよい。
【0090】
このように、軟質部11を、合成樹脂製のスポンジ、ヤシガラ繊維等の自然繊維、あるいは紙繊維によって形成すると、軟質性は勿論、「透水性」をも有したものとすることができるから有利である。この軟質部11が透水性を有していれば、当該軟質部11が水だけを下流側に流して、植生基盤材31や種子32等を堰き止めるからである。また、この軟質部11が透水性であれば、軟質部11自体がある程度の「保水力」も有することになるから、堰き止めた種子32等のための発芽あるいは成育条件を整えることにもなるからである。
【0091】
硬質部12は、その硬質性によって、上記軟質部11を下面にて支持することは勿論、図3〜図5に示したように、その自重によって軟質部11を押圧するか、押圧部材40によって法面200に固定されたとき軟質部11を押圧することになるものである。
【0092】
この硬質部12は、上記の機能を発揮できるのであれば、その材料については特に限定されないが、コンクリートによって形成することにより押圧のための自重を大きくしたり、木材によって構成することにより、流亡防止材10のコストを低減させたり、当該硬質部12に基帯20を取り付け必要がある場合の、留め材13にての留め作業を簡単にする。
【0093】
基帯20は、現状では種々なタイプのものがあり、前述したように、例えば図6に示したように網状にしたもの、自然繊維から形成したシート状のもの、あるいは、シート状より厚いマット状のものなど、種々なものがある。
【0094】
また、この基帯20は、植生基盤材31、種子32、肥料、土壌改良材の何れか少なくとも一種を備えたもの、あるいはこれらの植生基盤材31、種子32、肥料、土壌改良材の何れか少なくとも一種を入れた植生袋30を設けたもの等、植生に必要なものを備えたものであってもよい。
【0095】
なお、種子32としては、当該植生材100自体が予め備えていたか、あるいは植生材100に設けてあった植生袋30内にあったものは勿論、自然に飛来してきたものがある。同様に、土砂50についても、当該植生材100自体が有していたものや、当該流亡防止材10上の法面200表面から流れ落ちて来たものがある。
【0096】
何れにしても、この基帯20は、展開する前には巻回しておくことができて、法面200の上端から転がすと法面200上への展開が容易に行える程度の可撓性を有したものである。勿論、図2に示したように、上述した流亡防止材10の軟質部11が容易に入り込める程度の「目」を有していたり、図7または図15に示したような収納部21を有したものである。
【0097】
押圧部材40は、流亡防止材10がこれのみで基帯20を法面200側に圧接する十分な重量を有していない場合等に採用されるものであるが、具体的にはアンカーや杭が採用され、法面200上に当該流亡防止材10を圧接してその状態を維持できるのであれば、目串や縄のようなその他の土木資材であってもよいものである。
【0098】
植生材100は、図1に示したように、法面200上に展開されることになる上述した基帯20と、この基帯20の展開前または後に、基帯20上、またはこの基帯20と法面200との間、あるいは基帯20自身に形成した収納部内(図示せず)に配置あるいは収納されることになる上述した流亡防止材10とを備えたものである。
【0099】
すなわち、この植生材100は、図1に示したように、上述してきた流亡防止材10と、基帯20とを備えたものであり、これらの流亡防止材10及び基帯20は、工場で予め一体化したり、法面200上に展開した後の基帯20を、流亡防止材10によって現場にて固定する(この際、上述したアンカーや杭を使用することもある)等、種々な植生帯工法が実施できるものである。
【0100】
(実施例2)
図8〜図15には、流亡防止材10、これを使用した植生帯工法、及び植生材100を含んだ第2実施例が示してあり、この第2実施例と上記第1実施例での共通する各部材については、第1実施例中で使用したのと同一の符号を使用する。また、この第2実施例の説明中では、上記第1実施例で説明した部材と同一部材については、図8〜図15中に同一符号を付してその説明を省略することがある。
【0101】
図8には、本発明に係る植生材100によって施工した法面200の断面が2種類示してある。図8の(a)では、法面200の表面に対して横方向に配置される複数の流亡防止材10によって基帯20を支えながら施工した例が示してあり、図8の(b)では、その基帯20に植生袋30を設けたものを採用した例が示してある。
【0102】
植生材100を構成するための基帯20としては、本実施形態では、図13及び図14に示したような網状体を採用したが、これに限られるものではない。この基帯20は、例えば、生分解可能な自然繊維をそのまま使用したり、あるいは合成繊維に混紡したりして、シート状に形成したものや、シートを厚くしたことになるマット状のものであってもよい。
【0103】
また、この基帯20を網状体とした場合には、後述する流亡防止材10によって支えられる部分は「疎」にして材料を節約し、法面200に直接接触して目串などによって固定され得る部分を「密」にして、この部分の下側になっている法面200の土砂の流亡を防止するように構成してもよい。
【0104】
さらに、この基帯20を網状体とした場合には、図15に示したように、その一部に法面200の横方向に位置することになる収納部21を形成するようにしてもよい。この収納部21内には、種子32や植生基盤材31を収納した植生袋30を収納しておき、自然に破れた植生袋30から零れた種子32や植生基盤材31を、収納部21の編み目から法面200上に自然落下し得るようにするのである。
【0105】
以上のようにした基帯20の適宜位置には、複数の流亡防止材10が取り付けられる。これらの流亡防止材10の基帯20に対する取付は、工場において行ってもよいし、基帯20を法面200上に展開した後に施工現場で行ってもよい。
【0106】
この流亡防止材10は、図9〜図14に示したように、法面200側に当接される軟質部11と、この軟質部11上に一体化されて、基帯20に取り付けられる硬質部12とにより構成したものである。
【0107】
本実施形態における軟質部11は、例えばスポンジによって形成したものであり、当該流亡防止材10をアンカーや目串等の押圧部材40等によって法面200側に圧接されたとき、その軟質性及び可撓性によって法面200自体やラス網210の凹凸になじみ、図9〜図12に示したように、当該軟質部11と法面200またはラス網210との間の隙間を埋めて、これらの間の不陸(隙間)を解消するものである。つまり、この軟質部11は、法面200側、すなわち、ラス網210が張設されていない法面200においては、図9及び図10に示したように、法面200そのものの上に直接、ラス網210が張設されている法面200においては、図11及び図12に示したように、ラス網210上に当接されるものである。
【0108】
この軟質部11を形成する材料としては、上記のスポンジの他、ヤシガラ繊維等の自然繊維、あるいは紙繊維がある。これらの自然繊維や、紙繊維等を採用する場合には、押せば潰れる程度、つまり上述した軟質性が確保できる程度の構造材として実施してもよい。
【0109】
この軟質部11には、図13に示したように、多数の切り込み14を入れておくと都合がよい。当該軟質部11を構成材の1つとする流亡防止材10は、上述したように押圧部材40等を使用して法面200に対して押圧状体で固定されるものであるが、この押圧時に、各切り込み14によって当該軟質部11がより変形し易くなって、法面200自体やラス網210の凹凸になじみ易くなるからである。
【0110】
また、流亡防止材10を構成している本実施形態の硬質部12は木材によって構成した。木材は、安価に入手できるし、当該硬質部12に基帯20を取り付けるに当たって、留め材13にて図10や図12に示したように簡単に行えるため、有利である。この硬質部12は、その硬質性によって、上記軟質部11を下面にて支持することは勿論、上面にて基帯20を支持することになる。
【0111】
図13に示した実施形態の植生材100では、基帯20として網状体を採用して、この網状体に対しては、種子32やその肥料が添着してある。この植生材100は植物による法面200の保護を積極的に行うものだからである。一方、図14に示した実施形態の植生材100では、その基帯20に対して、図9及び図14に示したように、植生基盤材31、種子32、肥料、土壌改良材の何れか少なくとも一種を備えたもの、あるいはこれらの植生基盤材31、種子32、肥料、土壌改良材の何れか少なくとも一種を入れた植生袋30を設けたり、あるいは図15に示したように、基帯20の収納部21内にこの植生袋30を収納してある。
【0112】
植生袋30は、水に溶解し易い材料や生分解し易い材料によって形成した袋内に、植生基盤材31、種子32、肥料、土壌改良材の何れか少なくとも一種を備えたもの、あるいはこれらの植生基盤材31、種子32、肥料、土壌改良材の何れか少なくとも一種を収納したものであり、これらの種子32や植生基盤材31を法面200に対して広く分散できるようにするとともに、雨が降ったときに、これらの種子32や植生基盤材31を法面200上に散布できるようにしたものである。つまり、この植生袋30は、当該植生材100の施工直後に植生を行うものではなく、一定の時間が経過して時が来れば植生が行われるようにする一種の時期調整具である。勿論、法面200上の堰となる各流亡防止材10も、前述したように一種の時期調整具である。この場合の来るべき「時期」とは、種子32の発芽や植生植物の成育に適した温度や湿度が十分な季節のことである。
【0113】
換言すれば、当該植生材100は、植生植物の発芽あるいは成育に適した時期でなくても施工が実施できるものであり、これによる緑化コストを低減させることができるものなのである。
【符号の説明】
【0114】
100 植生材
10 流亡防止材
11 軟質部
12 硬質部
13 留め材
14 切り込み
20 基帯
21 収納部
30 植生袋
31 植生基盤材
32 種子
40 押圧部材
50 土砂
200 法面
210 ラス網

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植生が行われる法面上の横方向に設置される流亡防止材であって、
この流亡防止材を、前記法面側に当接されて、当該法面との間の隙間を埋めることになる軟質部と、この軟質部上に一体化される硬質部とにより構成したことを特徴とする流亡防止材。
【請求項2】
植生を行うための基帯を法面上に保持すべく、当該法面上の横方向に設置される流亡防止材であって、
この流亡防止材を、前記法面側に当接されて、当該法面との間の隙間を埋めることになる軟質部と、この軟質部上に一体化される硬質部とにより構成したことを特徴とする流亡防止材。
【請求項3】
法面の植生を行う植生工法であって、
前記法面側に当接されて、当該法面との間の隙間を埋めることになる軟質部と、この軟質部上に一体化される硬質部とにより構成した流亡防止材を、当該法面上の横方向に設置するとともに、
この流亡防止材を前記硬質部にて前記法面に圧接させることにより前記軟質部を変形させて、当該軟質部が前記法面と流亡防止材との間の隙間を埋めるようにしたことを特徴とする植生工法。
【請求項4】
植生を行うための基帯を法面上に展開施工して、当該法面の植生を行う植生帯工法であって、
前記法面側に当接されて、当該法面との間の隙間を埋めることになる軟質部と、この軟質部上に一体化される硬質部とにより構成した流亡防止材によって、前記法面上に展開施工した前記基帯を前記法面に保持させるとともに、
この流亡防止材を前記硬質部にて前記法面に圧接させることによって、前記軟質部が前記法面と流亡防止材との間の隙間を埋めるようにしたことを特徴とする植生帯工法。
【請求項5】
法面の植生を行うための植生材であって、
前記法面上に敷設されることになる基帯と、この基帯を前記法面上に保持させる流亡防止材とを備え、
この流亡防止材を、前記法面側に当接されて、当該法面との間の隙間を埋めることになる軟質部と、この軟質部上に一体化される硬質部とにより構成したことを特徴とする植生材。
【請求項6】
前記流亡防止材は前記法面上に圧接する押圧部材を備えたことを特徴とする請求項5に記載の植生材。
【請求項7】
前記基帯は植生袋を備えたものであることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の植生材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−226181(P2011−226181A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97963(P2010−97963)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000226747)日新産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】