説明

検出器、インプリント装置及び物品製造方法

【課題】1つの検出器で2つの物体間の2方向における相対位置を高精度で検出する。
【解決手段】第1マーク及び第2マークの一方は、y方向にPの格子ピッチとx方向にPの格子ピッチとを有する格子パターンを含み、第1マーク及び第2マークの他方は、x方向にPの格子ピッチを有する格子パターンを含む。照明光学系は、その瞳面において、y方向に第1の極IL1とx方向に第2の極IL3、IL4とを含む光強度分布を形成し、第1の極から照明される光が第1マーク及び第2マークで回折した回折光は瞳面において検出光学系の開口に入射し、第2の極から照明される光が第1マーク及び第2マークで回折した回折光は瞳面において検出光学系の開口とは異なる場所に入射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる2つの物体間の相対位置を検出する検出器、インプリント装置及び物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の要求が進み、従来のフォトリソグラフィー技術に加え、基板上の未硬化樹脂をモールド(型)で成形し、樹脂のパターンを基板上に形成する微細加工技術が注目を集めている。この技術は、インプリント技術とも呼ばれ、基板上に数ナノメートルオーダーの微細な構造体を形成することができる。例えば、インプリント技術の1つとして、光硬化法がある。この光硬化法を採用したインプリント装置では、まず、基板上のインプリント領域であるショットに未硬化の状態の紫外線硬化樹脂(インプリント樹脂、光硬化性樹脂)を塗布する。次に、この樹脂を型により成形する。そして、紫外線を照射して樹脂を硬化させたうえで離型することにより、樹脂のパターンが基板上に形成される。
【0003】
この光硬化法に適合したインプリント装置は、例えば特許文献1に開示されている。このようなインプリント装置は、基板を保持するステ−ジ、樹脂の塗布機構、インプリントヘッド、紫外線照射部及び位置合わせ用のマ−クの検出器を有する。インプリント装置において基板とモールドとの位置合わせには、基板と型の押し付け時に、ショット毎に基板と型のそれぞれに構成されたマ−クを同時に観察してそれらのずれ量を補正する、いわゆるダイバイダイ方式が採用されている。
【0004】
特許文献1に開示されたインプリント装置では、位置合わせ用のマークが型と基板とにそれぞれ配置されている。型側のマークは計測方向に格子ピッチをもつ格子パターンを含み、基板側のマークは計測方向と計測方向に直交する方向(非計測方向)とにそれぞれ格子ピッチをもつチェッカーボード状の格子パターンを含む。マークに照明を行う照明光学系と、マークからの回折光を検出する検出光学系は、いずれも型と基板に垂直な方向から非計測方向に傾いて配置されている。すなわち、照明光学系はマークに対して非計測方向から斜入射照明を行うように構成されている。マークに斜入射で入射した光は基板側に配置されたチェッカーボード状の格子パターンによって非計測方向に回折され、検出光学系は非計測方向に関してゼロ次以外の特定の次数の回折光のみを検出するように配置されている。
【0005】
また、型に配置された格子パターンと基板に配置された格子パターンとの計測方向の格子ピッチは互いに僅かに異なっている。このような格子ピッチが互いに異なる格子パターンを重ねると、2つの格子パターンからの回折光同士の干渉により、格子パターン間の格子ピッチの差を反映した周期を有する干渉縞(いわゆるモアレ縞)が現れる。このとき、格子パターン相互の位置関係によってモアレ縞の位相が変化するので、モアレ縞の位相を観察することにより基板と型との相対位置合わせを行うことができる。このようなモアレ縞を利用して相対位置を検出する方法では、解像力が低い検出光学系を用いても、高い精度で位置合わせを行うことができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2008−522412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されている検出器では、基板側に配置されたチェッカーボード状の格子パターンによって非計測方向に回折させた光を型もしくは基板に垂直ではない方向から検出している。そのため、1つの検出器(照明光学系と検出光学系)で型と基板との間の複数方向に関する相対位置情報を取得することができない。
【0008】
本発明は、1つの検出器で2つの物体間の2方向における相対位置を高精度で検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの側面は、第1物体と第2物体とのx方向及びy方向における相対的な位置を検出する検出器であって、第1物体に配置された第1マークと、第2物体に配置された第2マークとを照明する照明光学系と、前記照明光学系によって照明された前記第1マーク及び前記第2マークで回折された回折光同士の干渉光を検出する検出光学系と、を備え、前記第1マーク及び前記第2マークの一方は、y方向にPの格子ピッチとx方向にPの格子ピッチとを有する格子パターンを含み、前記第1マーク及び前記第2マークの他方は、x方向にPの格子ピッチを有する格子パターンを含み、前記照明光学系は、その瞳面において、y方向に第1の極とx方向に第2の極とを含む光強度分布を形成し、前記第1の極から照明される光が前記第1マーク及び前記第2マークで回折した回折光は前記瞳面において前記検出光学系の開口に入射し、前記第2の極から照明される光が前記第1マーク及び前記第2マークで回折した回折光は前記瞳面において前記検出光学系の開口とは異なる場所に入射することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、1つの検出器で2つの物体間の2方向における相対位置を高精度で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態に係る照明光学系、検出光学系の瞳分布を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る検出器の一例を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る検出器の別例を示す図である。
【図4】第1実施形態に係る照明光学系、検出光学系の瞳分布を示す図である。
【図5】モアレ縞を発生するマークを示す図である。
【図6】第1実施形態に係るx方向の位置合わせ用のマークを示す図である。
【図7】第1実施形態における回折光の様子を示す図である。
【図8】第1実施形態に係るy方向の位置合わせ用のマークを示す図である。
【図9】第1実施形態に係る検出器を用いてx方向とy方向の位置合わせのためのモアレ縞を示す図である。
【図10】第1実施形態における回折光を示す図である。
【図11】第1実施形態に係るインプリント装置を示す図である。
【図12】第1実施形態の変形例における照明光学系、検出光学系の瞳分布を示す図である。
【図13】第1実施形態の変形例における照明光学系、検出光学系の瞳分布を示す図である。
【図14】第2実施形態のインプリント装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について図面等を参照して説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図11を用いて第1実施形態に係るインプリント装置について説明する。このインプリント装置1は、半導体デバイスなどのデバイス製造に使用され、基板(ウエハ)8上の未硬化樹脂(インプリント材)9をモールド(型)7で成形し、樹脂9のパターンを基板8上に形成する。なお、本実施形態のインプリント装置1は、光硬化法を採用するものとする。また、以下の図においては、基板8の表面に平行な面内にx軸及びy軸をとり、x軸とy軸とに垂直な方向にz軸を取っている。このインプリント装置1は、紫外線照射部2と、検出器3と、型保持部4と、基板ステージ5と、塗布部6と備える。
【0014】
紫外線照射部2は、型7とウエハ8上の樹脂9とを接触させる押型処理の後に、樹脂9を硬化させるために、型7に対して紫外線を照射する。この紫外線照射部2は、不図示であるが、光源と、該光源から射出される紫外線を型7のパターン面7aに対して所定の形状で均一に照射するための複数の光学素子とから構成される。特に、紫外線照射部2による光の照射領域は、パターン面7aの表面積と同程度、またはパターン面7aの表面積よりもわずかに大きいことが望ましい。これは、紫外線の照射領域を必要最小限とすることで、照射に伴う熱に起因して型7またはウエハ8が膨張し、樹脂9に転写されるパターンに位置ズレや歪みが発生することを抑えるためである。加えて、ウエハ8などで反射した紫外線が後述の塗布部6に到達し、塗布部6の吐出部に残留した樹脂9を硬化させてしまうことで、後の塗布部6の動作に異常が生じることを防止するためでもある。
【0015】
光源としては、例えば、高圧水銀ランプ、各種エキシマランプ、エキシマレーザーまたは発光ダイオードなどが採用可能である。光源は、樹脂9の特性に応じて適宜選択されるが、本発明は、光源の種類、数、または波長などにより限定されるものではない。型7は、ウエハ8に対する面に所定のパターン(例えば、回路パターン等の凹凸パターン)が3次元状に形成された型である。型7の材質は、紫外線を透過させることが可能な石英などである。
【0016】
型保持部4は、真空吸着力や静電力により型7を引きつけて保持する。型保持部4は、型チャックと、樹脂9に型7を押し付けるために型チャックをz方向に駆動する駆動機構と、型7をx方向及びy方向に変形させて樹脂9に転写されるパターンの歪みを補正する補正機構とを含む。
【0017】
型7とウエハ8とは、xyz座標系においてz方向に間隔を置いて配置された第1物体と第2物体とを構成している。インプリント装置1における押型及び離型の各動作は、型7をz方向に移動させることで実現してもよいが、例えば、ウエハステージ5をz方向に移動させることで実現してもよく、または、その両方を移動させてもよい。ウエハステージ5は、ウエハ8を例えば真空吸着により保持し、かつ、xy平面内を移動可能とする。ウエハ8は、例えば、単結晶シリコンからなり、ウエハ8の被処理面には、型7により成形される紫外線硬化樹脂9が塗布される。
【0018】
インプリント装置1は、型7とウエハ8との相対的な位置関係を検出する検出器3を備える。検出器3は型7とウエハ8とにそれぞれ配置された第1マーク及び第3マーク10と第2マーク及び第4マーク11を光学的に検出して両者の相対位置を検出する。検出器3の光軸はウエハ8の表面に対して垂直になるように配置されている。検出器3は、型7及びウエハ8に配置されたマーク10,11の位置に合わせて、x方向及びy方向に駆動可能なように構成されている。また、検出器3は、マーク10,11の位置に光学系の焦点を合わせるためにz方向にも駆動可能なように構成されている。検出器3で検出された型7とウエハ8の相対位置に基づいてウエハステージ5や型7の補正機構の駆動が制御される。検出器3と位置合わせ用のマーク10,11については後で詳述する。
【0019】
塗布部6は、ウエハ8上に未硬化状態の樹脂9を塗布する。樹脂9は、紫外線を受光することにより硬化する性質を有する光硬化性樹脂であって、半導体デバイスの種類などにより適宜選択される。塗布部6は、図11に示すようにインプリント装置1の内部に設置せず、別途外部に塗布装置を準備し、この塗布装置により予め樹脂9を塗布したウエハ8をインプリント装置1の内部に導入してもよい。そのようにすれば、インプリント装置1の内部での塗布工程がなくなるため、インプリント装置1での処理の迅速化が可能となる。また、塗布部6が不要となることから、インプリント装置1全体としての製造コストを抑えることができる。
【0020】
インプリント装置1によるインプリント処理について説明する。制御部Cは、まず、不図示の基板搬送部によりウエハ8をウエハステージ5に搬送し、このウエハ8をウエハステージ5上に固定させる。続いて、制御部Cは、ウエハステージ5を塗布部6の塗布位置へ移動させ、その後、塗布部6は、塗布工程としてウエハ8の所定のショット(インプリント領域)に樹脂9を塗布する。次に、制御部Cは、ウエハ8上の塗布面が型7の直下に位置するように、ウエハステージ5を移動させる。
【0021】
次に、制御部Cは、型駆動機構を駆動させ、ウエハ8上の樹脂9に型7を押型する(押型工程)。このとき、樹脂9は、型7の押型により型7に形成されたパターン面7aに沿って流動する。さらにこの状態で、検出器3は、ウエハ8及び型7に配置されたマーク10,11を検出し、制御部Cは、ウエハステージ5の駆動による型7とウエハ8との位置合わせ、及び型7の補正機構による補正などを実施する。樹脂9のパターン面7aへの流動と、型7とウエハ8との位置合わせ及び型7の補正等が十分になされた段階で、紫外線照射部2は型7の背面(上面)から紫外線を照射し、型7を透過した紫外線により樹脂9が硬化される(硬化工程)。この際、検出器3は紫外線の光路を遮らないように退避駆動される。続いて、型駆動機構を再駆動させ、型7をウエハ8から離型させる(離型工程)ことにより、ウエハ8上に型7の凹凸パターンが転写される。
【0022】
検出器3と型7及びウエハ8にそれぞれ配置されたマーク10,11の詳細を説明する。図2は本実施形態の検出器3の構成の一例を示す。検出器3は、検出光学系21と照明光学系22で構成されている。照明光学系22は、プリズム24等を用いて光源23からの光を検出光学系21と同じ光軸上へ導き、マーク10,11を同時に斜入射照明する。
【0023】
光源23には例えばハロゲンランプやLED等が用いられ、樹脂9を硬化させる紫外線を含まない、可視光線や赤外線を照射するように構成されている。検出光学系21と照明光学系22はそれらを構成する光学部材の一部を共有するように構成されており、プリズム24は検出光学系21と照明光学系22の瞳面もしくはその近傍に配置されている。マーク10,11はそれぞれ格子パターンから構成され、検出光学系21は照明光学系22によって照明されたマーク10,11で回折された回折光同士の干渉により発生する干渉光(干渉縞、モアレ縞)を撮像素子25上に結像する。撮像素子25としてCCDやCMOSなどが用いられる。
【0024】
プリズム24は、その貼り合せ面において、照明光学系22の瞳面の周辺部分の光を反射するための反射膜24aを有している。また、反射膜24aは検出光学系21の瞳の大きさ(あるいは検出NA:NA)を規定する開口絞りとしても働く。プリズム24は、貼り合せ面に半透膜を有するハーフプリズムや、あるいはプリズムに限らず表面に反射膜を成膜した板状の光学素子などであってもよい。本実施形態にかかるプリズム24が配置される位置は、必ずしも検出光学系21と照明光学系22の瞳面もしくはその近傍でなくてもよい。この場合、図3に示すように検出光学系21と照明光学系22はそれぞれその瞳面に個別の開口絞り26及び27を有する。また、プリズム24にはその貼り合せ面に半透膜を有するハーフプリズム等が用いられる。
【0025】
図4に照明光学系22の瞳面に形成された光強度分布(有効光源)と検出光学系21の第1検出開口OBJとの関係を示す。照明光学系22は、その瞳面において第1の極ILと、第2の極ILと、第3の極ILと、第4の極ILとを含む光強度分布を形成している。第1の極ILは、NAP1の径を有し座標(0,NAil1)を中心位置として配置される。第2の極ILは、NAP2の径を有し座標(NAil2,0)を中心位置として配置される。第3の極ILは、NAP1の径を有し座標(0,−NAil1)を中心位置として配置される。第4の極ILは、NAP2の径を有し座標(−NAil2,0)を中心位置として配置される。なお、本実施形態では、第1乃至第4の極IL〜ILは、直径がNAP1=NAP2=NA、の円形の極である。また、NAil1=NAil2=NAilとしている。第1検出開口OBJは、検出光学系21の瞳面においてNAの開口数を有し座標(0,0)を中心位置として配置される。
【0026】
照明光学系22はマーク10,11に対して斜入射照明を行うように構成されており、マーク10,11への入射角度θは、式1で表わされる。
θ=sin−1(NAil) ・・・(1)
【0027】
照明光学系22及び検出光学系21は、NA、NA、NAilが下記の式2を満足するように構成される。すなわち、検出器3は、位置合わせマーク10,11からの正反射光(ゼロ次回折光)を検出しない暗視野構成になっている。
NAil1>NA+NAP1/2、かつ、
NAil2>NA+NAP2/2 ・・・(2)
【0028】
本実施形態では、NAil1=NAil2=NAil、NAP1=NAP2=NAであるので、式2は、式2’として表現される。
NAil>NA+NA/2 ・・・(2’)
【0029】
モアレ縞の発生の原理とモアレ縞を用いた型7とウエハ8との相対的な位置検出について説明する。図5の(a)と(b)に示すような格子ピッチが僅かに異なる格子パターン31と格子パターン32を重ねると、2つの格子パターン31,32からの回折光同士が干渉して、格子ピッチの差を反映した周期をもつ(c)のような干渉縞(モアレ縞)が発生する。モアレ縞は、2つの格子パターン31,32の相対位置関係によって明暗の位置(縞の位相)が変化する。例えば、片方を少しだけずらしてやると、図5の(c)のモアレ縞は(d)のように変化する。モアレ縞は、格子パターン31,32間の実際の相対位置ずれ量を拡大し、大きな周期の縞として発生するため、検出光学系21の解像力が低くても、精度良く2物体間の相対位置関係を計測することができる。
【0030】
モアレ縞(干渉光)を検出するために格子パターン31,32を明視野で検出(垂直方向から照明し、垂直方向から回折光を検出)しようとすると、検出器3は、格子パターン31からの0次回折光や格子パターン32からの0次回折光も検出してしまう。格子パターン31,32どちらか一方からの0次回折光はモアレ縞のコントラストを下げる要因になる。そこで、本実施形態の検出器3は、前述のように、0次回折光を検出しない暗視野の構成をとっている。斜入射で照明する暗視野の構成でもモアレ縞を検出できるように、型側及びウエハ側のマーク10,11との一方を図6の(a)に示すようなチェッカーボード状の格子パターンとし、他方を図5の(a)、(b)に示すような格子パターンにしている。型側のマーク10とウエハ側のマーク11のどちらをチェッカーボード状の格子パターンにしても、基本的に同一であるが、以下では型側のマーク10をチェッカーボード状にした場合を例に説明する。
【0031】
図6の(a)と(b)は、それぞれ型7とウエハ8のx方向に関する相対位置を検出するための型側のマーク(第1マーク)10とウエハ側のマーク(第2マーク)11を図示したものである。型側のマーク10は、y方向にPmn(P)の格子ピッチとx方向にPmm(P)の格子ピッチとを有するチェッカーボード状の格子パターン10aを含む。ウエハ側のマーク11は、x方向にのみPmmとは異なる格子ピッチP(P)を有する格子パターン11aを含む。この2つの格子パターン10a,11aを重ねた状態で検出器3によってモアレ縞(干渉光)を検出する原理について、図7を用いて説明する。
【0032】
図7の(a)と(b)は格子パターン10aと格子パターン11aをそれぞれx方向とy方向から見た図である。x方向に関する相対位置を検出するためのモアレ縞は瞳面においてy軸上に並んだ第1及び第3の極の強度分布ILとILによって発生する。格子パターン10a,11aによる回折角φは、格子ピッチをd、照明光学系22から照明される光の波長をλ、回折次数をnとして、以下の式3で表わされる。
sinφ=nλ/d ・・・(3)
【0033】
したがって、格子パターン10aによるx方向とy方向の回折角をそれぞれφmm、φmnとし、格子パターン11aによる回折角をφwとすると、式4〜式6が成り立つ。
sinφmm=nλ/Pmm ・・・(4)
sinφmn=nλ/Pmn ・・・(5)
sinφ=mλ/P ・・・(6)
【0034】
図7の(a)において、格子パターン10a及び格子パターン11aが瞳面において非計測方向であるy軸上に並んだ第1及び第3の極の強度分布IL,ILによって、y方向(非計測方向)から斜入射照明される。格子パターン10a,11aで正反射した光(0次回折光)D1,D1′は、検出器3が式2を満足するために、検出光学系21には入射しない。
【0035】
D2,D2′は型側の格子パターン10aでのみ±1次で回折した光を示し、D3は型側の格子パターン10aで+/−1次で回折し、ウエハ側の格子パターン11aで−/+1次に回折した回折光を示している。D3が検出器3により型7とウエハ8との相対位置の検出に用いられる回折光である。y方向にPmnの格子ピッチをもつ型側の格子パターン10aによって角度φmnだけ回折した光D2,D2′,D3は、y軸に対して検出光学系21によって検出される角度で射出する。
【0036】
本実施形態では0次回折光を除く回折光の中で回折強度が高い、格子パターン10aで+/−1次で回折し、格子パターン11aで−/+1次に回折した回折光D3を検出するために、検出器3は、PとNA、NAil1、NAP1は下記条件を満足している。PmnとNA、NAil、NAは以下の条件式7を満足している。 言い換えると、式7を満足する範囲の波長λでy方向への回折光を検出することができる。
|NAil1−|sinφmn||=|NAil1−λ/P|<NA+NAP1/2 ・・・(7)
【0037】
本実施形態では、P=Pmn、NAil1=NAil、NAP1=NAであるから、条件式7は式7’と表現される。
|NAil−|sinφmn||=|NAil−λ/Pmn|<NA+NA/2 ・・・(7’)
【0038】
もっとも効率良く回折光D3を検出できるのは回折光D3がy方向に垂直になる場合である。そこで、光源から出力される照明光の中心波長をλcとすると、式8を満たすように照明光学系22の照明条件と型側の格子パターン10aの格子ピッチPmnが調整されていることが望ましい。
NAil−λc/Pmn=0 ・・・(8)
【0039】
以上のように、y方向(非計測方向)に関しては型側の格子パターン10aが斜入射照明され、格子パターン10aによって非計測方向に回折した回折光が検出される。次に、x方向(計測方向)に関する回折光の説明を、図7の(b)を用いて行う。瞳面のy軸上に並んだ第1及び第3の極の光強度分布IL,ILは、x軸に垂直な方向から格子パターン10a,11aに入射する。y方向の場合と同様に+/−1次の回折光を考えると、型側の格子パターン10aで+/−1次で回折し、ウエハ側の格子パターン11aで−/+1次に回折した回折光D3は、PmmとPが近いためにx軸に対して小さな角度で検出光学系21に入射する。
【0040】
図7の(c)に回折光D3の回折の様子を示す。実線の矢印は型側の格子パターン10aで+/−1次で回折し、ウエハ側の格子パターン11aで−/+1次に回折し型7を透過した回折光を表わしている。また、点線の矢印は型側の格子パターン10aを透過し、ウエハ側の格子パターン11aで−/+1次に回折し、型側の格子パターン10aで+/−1次で回折した回折光を表わしている。このときの回折光D3の回折角φΔは以下の式9で表わされる。
sinφΔ=λ×|P−Pmm|/(Pmm) ・・・(9)
【0041】
式9において|P−Pmm|/(Pmm)=1/PΔとすると式10のようになる。
sinφΔ=λ/PΔ ・・・(10)
【0042】
式10は回折光D3によって周期がPΔの干渉縞が現れることを意味する。この干渉縞がモアレ縞であり、その周期は型側の格子パターン10aとウエハ側の格子パターン11aの格子ピッチの差に依存する。ただし、本実施形態においては型側の格子パターン10aがチェッカーボード状であるため、発生するモアレ縞の周期はPΔ/2となる。このとき、型7とウエハ8の相対位置ずれはモアレ縞の明暗の位置ずれに拡大されるため、解像力が低い検出光学系21を用いても、高い精度で位置合わせを行うことができる。
【0043】
型側の格子パターン10aのみで1次回折した光D2,D2′もしくはウエハ側の格子パターン11aのみで1次回折した光D4,D4′は、角度φmmあるいはφで射出する(図7の(b))。D2,D2′,D4,D4′はモアレ縞を発生させずにノイズとなるので、検出光学系21によって検出されないことが望ましい。そのため、本実施形態では下記の式11及び12を満足するように格子パターン10a,11aの格子ピッチP,Pと検出器3の第1検出開口OBJの開口数NAが調整されている。
λ/P=|sinφmm|>NA+NAP1/2 ・・・(11)
λ/P=|sinφ|>NA+NAP1/2 ・・・(12)
【0044】
本実施形態では、P=Pmm、P=P、NAP1=NAであるから、式11、12は式11’、12’と表現される。
λ/Pmm=|sinφmm|>NA+NA/2 ・・・(11’)
λ/P=|sinφ|>NA+NA/2 ・・・(12’)
【0045】
型側の格子パターン10aとウエハ側の格子パターン11aのいずれでもx方向に回折しなかった光(0次回折光、図7の(b)のD1,D1′)はx軸に対して検出光学系21で検出される角度で射出する。また、ウエハ側の格子パターン11aで回折せずにウエハ8での反射の前後で型側の格子パターン10aでx方向に+/−n次回折と−/+n次回折した(トータルで0次の)回折光D5,D5′もx軸に対して検出光学系21で検出される角度で射出する。これらの回折光D5,D5′はモアレ縞を生成せずにモアレ縞のコントラストを低下する要因となる。しかし、本実施形態においては型側の格子パターン10aがチェッカーボード状であるため、隣り合う格子からの回折光D5,D5′の位相がπずれ、互いに打ち消し合う。したがって回折光D5,D5′の強度は抑制され、コントラストよくモアレ縞を計測することができる。図7の(d)は図7の(a)、(b)を3次元で表わした図である。なお、回折光D5、D5′に関しては強度が抑制されるため記載していない。
【0046】
以上、型7とウエハ8のX方向に関する相対位置検出のためのモアレ縞の検出について説明したが、y方向に関する相対位置検出のためのモアレ縞の検出についても、マークと照明の方向をxとyで入れ替えるだけで基本的に同一である。すなわち、型側のy方向の位置合わせ用の第3マーク10にはx方向にP(Pmn)とy方向にP(Pmm)の格子ピッチを有するチェッカーボード状の格子パターン10bを用いる。また、ウエハ側のy方向の位置合わせ用の第4マーク11にはy方向のみにP(Pmm)と異なる格子ピッチP(P)をもつ格子パターン11bを用いる(図8)。また、y方向に関する相対位置検出のためのモアレ縞は、瞳面においてx軸上に並んだ第2の極ILと第4の極ILとの光強度分布で上記2つの格子パターン10b、11bを照明することで発生する。
【0047】
式7、式11、式12と同様に、y方向に関する相対位置検出を行うために以下の式を満たす必要がある。
|NAil2−|sinφmn||=|NAil2−λ/P|<NA+NAP2/2
λ/P=|sinφmm|>NA+NAP2/2
λ/P=|sinφ|>NA+NAP2/2
【0048】
以上、格子パターン10aと格子パターン10bの格子ピッチがそれぞれ同じで、格子パターン11aと格子パターン11bの格子ピッチがそれぞれ同じである場合について説明したが、本発明はこれに限定されることはない。すなわち、格子パターン10aと格子パターン10bの格子ピッチはそれぞれ異なっていてもよく、また、格子パターン11aと格子パターン11bの格子ピッチはそれぞれ異なっていてもよい。さらには、検出光学系21の光軸から第1及び第3の極IL,ILの中心までの距離NAil1と光軸から第2及び第4の極IL,ILの中心までの距離NAil2はそれぞれ異なっていてもよい。
【0049】
本実施形態の検出器3は、1つのモアレ縞を検出するのに2方向から位置合わせ用のマークを斜入射照明して垂直方向から検出しているので、1方向から斜入射照明して斜め方向から検出する従来の検出器と比べて、2倍の光量を確保することができる。これにより、検出器3は、2物体の相対位置を精度よく検出することができる。本実施形態の検出器3は、式7を満足する範囲の波長λで回折光を検出できることは既に述べたとおりであるが、この波長範囲はできる限り広いことが望ましい。したがって、照明光学系22は複数波長の光で第1マーク乃至第4マーク10,11を照明することが望ましい。
【0050】
ウエハ8に形成された第2及び第4マーク11はウエハ8の表面に剥き出しになっていることは少なく、数層から数十層積まれたプロセスの内部に構成されている場合が多い。マーク11の上部に透明な物質からなる層が形成されている場合、いわゆる薄膜干渉によって、照明光の波長によってはマーク11から返ってくる光の強度が非常に弱くなることがある。このとき、照明光の波長λを変えてやれば、薄膜干渉の条件から外れ、マーク11が見えるようになる。これに基づき、検出器3で観察する場合も照明光の波長λを広い範囲で可変とし、ウエハ8を作成するプロセスによって、最もよく検出できる条件を決定できることが望ましい。決定対象の条件は、マークの格子ピッチP〜P、開口数NA、第1及び第2の極の中心位置、照明光の波長範囲、中心波長等である。照明光の波長λは光源23としてハロゲンランプのような広帯域に複数波長を持つ光源を用いてバンドパスフィルタなどで所望の波長帯域を切り出しても良いし、LEDのような単色光光源で中心波長の異なるものを複数備えて切り替えても良い。
【0051】
図9のように格子パターン10aと格子パターン11a、格子パターン10bと格子パターン11bとをそれぞれ重ねたマークを図4のような照明光学系22の光強度分布IL〜ILと検出開口OBJを有する検出器3の視野40に同時に入れる。そうすることによって、x方向とy方向に関する位置合わせのためのモアレ縞を1つの検出器3により同時に観察することができる。すなわち、本実施形態では、1つの検出器3(検出光学系21と照明光学系22)によって2方向の相対位置情報を比較的安価で簡易な装置構成で同時に取得することができる。
【0052】
x方向とy方向に関するモアレ縞を同時に観察して位置を合わせる方法において、x方向に関する相対位置の検出に用いる照明光の光強度分布は図4に記載の第1及び第3の極IL及びILであり、第2及び第4の極IL及びILは用いない。同様に、y方向に関する相対位置の検出に用いる照明光の光強度分布は図4に記載の第2及び第4の極IL及びILであり、第1及び第3の極IL及びILは用いない。x方向とy方向に関する相対位置の検出を同時に行うには照明光をy方向とx方向から斜入射照明する必要がある。
【0053】
このとき、相対位置の検出に用いない照明光の光強度分布も位置合わせ用のマーク10及び11に照射されるため、相対位置の検出に用いない照明光の光強度分布によってもマーク10及び11で回折光が生じることになる。その回折光が検出光学系21で検出されると、相対位置の検出に用いるモアレ縞のコントラストが下がるため、計測精度が低下することがある。
【0054】
図6に示す型7とウエハ8のx方向に関する相対位置を検出するための第1及び第2マーク10,11に、y方向に関する相対位置を検出するための照明光の光強度分布(図4のIL及びIL)を照射した場合について図10を用いて説明する。図10の(a)において、瞳面において計測方向であるx軸上に並んだ光強度分布IL,ILによって、格子パターン10aと格子パターン11aが斜入射で照明される。格子パターン10a及び11aで正反射した光(0次回折光)D11,D11′は、検出器3が式2を満足するために、検出開口OBJをとは異なる場所に入射し、検出光学系21には入射しない。D12、D12′はx方向にPmmの周期をもつ型側の格子パターン10aでのみ±1次で回折して角度φmmだけ回折した光である。本実施形態においては型側の格子パターン10aがチェッカーボード状であるため、隣り合う格子からの回折光D12、D12′の位相がπずれ、互いに打ち消し合うので、強度を抑制することができる。
【0055】
D13、D13′はウエハ側の格子パターン11aでのみ±1次で回折して角度φだけ回折した光である。回折光D13、D13′は、以下の式13を満たす場合、検出開口OBJに入射しないので検出光学系21によって検出されない。
|λ/P−NAil2|≧NA+NAP2/2
|λ/P−NAil2|≧NA+NAP2/2・・・(13)
【0056】
本実施形態では、P=P、NAil2=NAil、NAP2=NAであるので、式13は式13’となる。
|λ/P−NAil|≧NA+NA/2 ・・・(13’)
【0057】
式13について図1を用いて説明する。図1に照明光学系22の光強度分布IL、ILと検出開口OBJとの関係を示す。図1では瞳の大きさを開口数NAで示している。本実施形態の照明光学系22の光強度分布はIL及びILの2つの極から構成されている。簡略化のため、ILとILの極のみを示しているが、図4に記載のIL及びILの極がある場合においても同様の考え方で関係式を得ることができる。また、回折光についても説明の便宜上必要な光強度分布のみ図示している。光強度分布IL1mはy方向の照明光ILが型側の格子パターン10aによって回折した後の光強度分布を表している。さらに光強度分布IL1mがウエハ側の格子パターン11aで回折することによって検出開口OBJ内に回折光IL1mwが入り、モアレ縞が検出光学系21によって検出される。
【0058】
図1の(a)は、式13’を満たさない場合の回折光の光強度分布を図示したものである。つまり、ウエハ側の格子パターン11aの格子ピッチPと型側の格子パターン10aの非計測方向の格子ピッチPmnの差が小さい場合を考える。このとき、型側の格子パターン10aによる回折光IL1mと計測に用いない照明光ILのゼロ次回折光D11がほぼ同じ入射角度をもってウエハ側の格子パターン11aに照射される。そのため、計測に用いない照明光ILによって生じるウエハ側の格子パターン11aからの回折光D13が検出されることになる。
【0059】
これに対して、図1の(b)は式13’を満足する場合の回折光の光強度分布を図示したものである。ウエハ側の格子パターン11aの格子ピッチPと型側の格子パターン10aの非計測方向の格子ピッチPmnの差が大きい(図ではP<Pmn)。そのため、型側の格子パターン10aによる回折光IL1mと計測に用いない照明光ILのゼロ次回折光D11が異なる入射角度をもってウエハ側の格子パターン11aに照射される。
【0060】
そのため、計測に用いない照明光ILによって生じるウエハ側の格子パターン11aからの回折光D13は検出開口OBJの外に回折されるので、回折光D13は検出されない。P>Pmnとなる場合、2次回折光以上の高次の回折光が検出される可能性があるが、1次回折光と比較して微弱である。したがって、式13’(又は式13)を満たすことで、型側の格子パターン10aの0次回折光であってウエハ側の格子パターン11aで1次回折した光が検出されなくなるため、精度よくx方向とy方向の相対位置を計測することができる。
【0061】
図10の(a)に示す回折光D14,D14′は型側の格子パターン10aで+/−1次で回折し、ウエハ側の格子パターン11aで−/+1次に回折した回折光である。図7の(b)と同様にこのときの回折角φΔは式9で表わされ、この回折光D14,D14′の干渉縞がモアレ縞となる。次に、y方向(非計測方向)に関する回折光の説明を、図10の(b)を用いて行う。
【0062】
回折光D11,D11′は、型側の格子パターン10aとウエハ側の格子パターン11aのいずれにおいてもy方向に回折しなかった光、つまり0次の回折光である。また、型側の格子パターン10aを透過時に+/−n次回折し、ウエハ側の格子パターン11aで回折せずに反射し、型側の格子パターン10aでそれぞれy方向に−/+n次回折した(トータルでゼロ次の)回折光もD11,D11′に含まれる。次に、型側の格子パターン10aによる1次回折光を図10の(b)のD12,D12′,D14,D14′に示している。それぞれ±1次で回折しており、z軸に対して角度φmnで射出する。図10の(c)は図10の(a)、(b)を3次元で表わした図である。
【0063】
以上、型7とウエハ8のx方向に関する相対位置を検出するためのモアレ縞の検出において検出に用いない方向の照明光が照射された場合について説明した。y方向に関する相対位置を検出するためのモアレ縞の検出についても、位置合わせ用のマークと照明の方向をxとyで入れ替えるだけで基本的に同一である。したがって、y方向の計測において、式13と同様の関係式14を満たす必要がある。
|λ/P−NAil1|≧NA+NAP1/2
|λ/P−NAil|≧NA+NAP1/2 ・・・(14)
【0064】
格子パターン10aと格子パターン10bの格子ピッチはそれぞれ異なっていてもよく、また、格子パターン11aと格子パターン11bの格子ピッチはそれぞれ異なっていてもよい。さらには、光軸からIL及びILまでの距離と光軸からIL及びILまでの距離はそれぞれ異なっていてもよい。ILからILの4つの光強度分布の大きさがそれぞれ異なっていてもよい。ところで、本実施形態の検出器3では式13及び式14を満足する範囲の波長λで相対位置の検出に用いない照明光からの回折光を除去してコントラスト良くモアレ縞を検出できることは既に述べたとおりであるが、この波長範囲はできる限り広いことが望ましい。
【0065】
図12に第1実施形態の変形例に係る照明光学系22の光強度分布と検出光学系21の検出開口との関係を示す。図12では図4と同様に瞳の大きさを開口数NAで示している。本実施形態の変形例の照明光学系22の光強度分布はILからILの4つの極を含む。ILからILはそれぞれ直径NAの円形の極である。第1の極ILと第3の極ILは瞳面のy軸上の光軸からそれぞれプラス方向とマイナス方向にNAilだけ離れた位置に配置されている。第2の極ILと第4の極ILは瞳面のx軸上の光軸からそれぞれプラス方向とマイナス方向にNAilだけ離れた位置に配置されている。
【0066】
OBJからOBJはそれぞれ直径NAの円形の第1〜第5検出開口を示している。第1検出開口OBJは原点位置に、第2乃至第5検出開口OBJ〜OBJはx軸、y軸からそれぞれプラス方向とマイナス方向にNAil1又はNAil2の位置に配置している。つまり、第2〜第5検出開口OBJ〜OBJは、座標(NAil1,NAil2)、(−NAil1,NAil2)、(−NAil1,−NAil2)及び(NAil1,−NAil2)をそれぞれ中心位置として配置されている。図12は図4と比較して、4つの検出開口OBJ〜OBJを4隅に追加して配置した構造となっている。
【0067】
図12に示す検出器3の光強度分布と検出開口を用いて図6のx方向に関する相対位置を検出するためのマークを検出した場合について説明する。図12の第1検出開口OBJによって検出されるx方向に関する相対位置を検出するためのモアレ縞は、前述のように、瞳面においてy軸上に並んだ強度分布ILとILによって発生する。
【0068】
同様の考え方で、検出開口OBJによって検出されるx方向に関する相対位置検出のためのモアレ縞は、瞳面においてy軸上に並んだ強度分布ILによって発生する。同様に検出開口OBJ,OBJによって検出されるx方向に関する相対位置を検出するためのモアレ縞は強度分布ILによって発生し、検出開口OBJによって検出されるx方向に関する相対位置を検出するためのモアレ縞は強度分布ILによって発生する。図12の検出開口内に記載された括弧内のIL〜ILの表示はそれぞれの検出開口によって検出されるx方向に関する相対位置を検出するためのモアレ縞が発生する強度分布を示している。
【0069】
このように、検出開口の数を追加して配置したのは、相対位置を検出するためのモアレ縞の光量を増加させるためである。図12に示す実施例の場合、4隅に検出開口OBJ〜OBJを追加して配置することによって、中心の第1検出開口OBJのみの場合と比較して、相対位置を検出するためのモアレ縞の光量は3倍になる。
【0070】
図13に第1実施形態の変形例に係る照明光学系22の光強度分布と検出開口との関係を示す。図12に示すように4隅に検出開口を配置すると、検出器3において必要とされるNAの範囲が拡大されるため、検出器3の径が大きくなる。図13の光強度分布と検出開口との関係を用いることによって、検出器3のNAを図4から変更せずに、図4と比較して検出される相対位置を検出するためのモアレ縞の光量を増やすことができる。
【0071】
図13の4隅の検出開口は、図12の4隅の検出開口の円の内側の領域のうちで座標(0,0)を中心とし(NAil1+NAP1/2)と(NAil2+NAP2/2)のうち大きい方を半径とする円の内側の部分である。つまり、図13の検出開口OBJでは相対位置を検出するためのモアレ縞が全面で検出され、4隅の検出開口OBJ〜OBJでは相対位置を検出するためのモアレ縞が図13の太線部内で検出される。したがって、中心の第1検出開口OBJのみの場合と比較して、相対位置を検出するためのモアレ縞の検出される光量は増加することが分かる。
【0072】
[第2実施形態]
次に、図14を用いて第2実施形態に係るインプリント装置1について説明する。本実施形態のインプリント装置1は、投影光学系12を更に備えることを除いて、その構成やインプリント処理の方法については第1実施形態と基本的に同じである。投影光学系12は型7の直上に配置されており、型7とウエハ8にそれぞれ形成された位置合わせ用のマーク10及び11の像を投影光学系12の投影面13に投影する。また、投影光学系12は、その内部にダイクロイックミラー14を備えている。ダイクロイックミラー14は光の波長によって選択的に反射あるいは透過させる光学部材であり、例えば樹脂9を硬化させる紫外線を反射して、マークを10及び11を照明する可視光線あるいは赤外線を透過するように構成されている。
【0073】
検出器3は投影光学系12(及びダイクロイックミラー14)を通して型7とウエハ8のマーク10及び11を照明し、投影光学系12の投影面13に投影されたモアレ縞の像を検出することで、型7とウエハ8との相対位置を検出する。紫外線照射部2は投影光学系12の側方からダイクロイックミラー14に紫外線を照射し、ダイクロイックミラー14で反射した紫外線が投影光学系12の内部を通じて凹凸パターンに所定の形状で均一に照射されるように構成されている。従って、投影光学系12内部のダイクロイックミラー14と型7との間の光学部材は、紫外線を透過する石英などで製作されている。このような構成にすることによって、型7及びウエハ8に対してその光軸が垂直になるように配置された検出器3を用いても、紫外線照射時に検出器3を退避させる必要がなくなる。すなわち、検出器3の退避にかかる時間が必要なくなるため、インプリント装置1の生産性を高めることができる。
【0074】
ダイクロイックミラー14は、紫外線を透過して可視光線あるいは赤外線を反射するように構成することも可能である。この場合、投影光学系12の光路はダイクロイックミラー14によって折り曲げられ、検出器3と紫外線照射部2との位置関係が図14と逆になる。すなわち紫外線照射部2が型7の上方に配置されることになる。また、本実施形態に係るインプリント装置1では、投影光学系12の投影面13の近傍に折り曲げミラー15が配置されている。折り曲げミラー15によって、検出器3から照明される照明光と位置合わせ用のマーク10及び11からの回折光はその光束径が小さい位置でXY面に平行な方向に折り曲げられる。したがって、波長範囲や照明光量の増加のために検出光学系21や照明光学系22のNAを拡大して検出器3の径が増大しても、検出器3をXY方向に近接して配置することができるとともに、位置合わせ用のマーク10及び11の配置の自由度が高くなる。
【0075】
投影光学系12が構成されていない場合、検出器3は型保持部4に構成された型駆動機構や型7の補正機構との干渉を避けるために、型7からやや離れた位置に配置するか、その径をなるべく小さくする必要がある。検出器3を型7から離れた位置に配置すると、その光束径が拡がるために検出器3は大きくなってしまい、その結果、検出器3のコストが増大し、検出できるマーク10及び11の配置の制限も厳しくなってしまう。また、検出器3の径を小さくすると、検出光学系21及び照明光学系22のNAが小さくなるため、マーク10,11を照明する光量の減少や、検出波長の狭帯域化を招き、結果として型7とウエハ8との相対位置合わせの精度を低下させてしまう。
【0076】
以上のように、投影光学系12を構成することにより、型駆動機構や型7の補正機構との干渉や、マーク10及び11の配置の制限を気にすることなく、検出光学系21や照明光学系22のNAを拡大することができる。その結果、検出器3の検出波長範囲の拡大や、照明光量の増加を行うことができ、ひいてはより高い精度で型7とウエハ8の相対位置合わせを行うことができる。また、配置する空間を確保することができれば、投影光学系12を構成せずに検出光学系21や照明光学系22を別々の光学系で構成することもできる。
【0077】
[第3実施形態]
物品の製造方法について説明する。物品としてのデバイス(半導体集積回路素子、液晶表示素子等)の製造方法は、上述したインプリント装置1を用いて基板(ウエハ、ガラスプレート、フィルム状基板)にパターンを形成する工程を含む。さらに、該製造方法は、パターンを形成された基板をエッチングする工程を含み得る。なお、パターンドメディア(記録媒体)や光学素子などの他の物品を製造する場合には、該製造方法は、エッチングの代わりにパターンを形成された基板を加工する他の処理を含み得る。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0078】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1物体と第2物体とのx方向及びy方向における相対的な位置を検出する検出器であって、
第1物体に配置された第1マークと、第2物体に配置された第2マークとを照明する照明光学系と、
前記照明光学系によって照明された前記第1マーク及び前記第2マークで回折された回折光同士の干渉光を検出する検出光学系と、
を備え、
前記第1マーク及び前記第2マークの一方は、y方向にPの格子ピッチとx方向にPの格子ピッチとを有する格子パターンを含み、前記第1マーク及び前記第2マークの他方は、x方向にPの格子ピッチを有する格子パターンを含み、
前記照明光学系は、その瞳面において、y方向に第1の極とx方向に第2の極とを含む光強度分布を形成し、
前記第1の極から照明される光が前記第1マーク及び前記第2マークで回折した回折光は前記瞳面において前記検出光学系の開口に入射し、前記第2の極から照明される光が前記第1マーク及び前記第2マークで回折した回折光は前記瞳面において前記検出光学系の開口とは異なる場所に入射することを特徴とする検出器。
【請求項2】
第1物体と第2物体とのx方向及びy方向における相対的な位置を検出する検出器であって、
第1物体に配置された第1マーク及び第3マークと、第2物体に配置された第2マーク及び第4マークとを照明する照明光学系と、
前記照明光学系によって照明された前記第1マーク及び前記第2マークで回折された回折光同士の干渉光と前記第3マーク及び前記第4マークで回折された回折光同士の干渉光を検出する検出光学系と、
を備え、
前記第1マーク及び前記第2マークの一方は、y方向にPの格子ピッチとx方向にPの格子ピッチとを有する格子パターンを含み、前記第1マーク及び前記第2マークの他方は、x方向にPの格子ピッチを有する格子パターンを含み、前記第3マーク及び前記第4マークの一方は、y方向にPの格子ピッチとx方向にPの格子ピッチとを有する格子パターンを含み、前記第3マーク及び前記第4マークの他方は、y方向にPの格子ピッチを有する格子パターンを含み、
前記照明光学系は、その瞳面において、y方向に第1の極とx方向に、第2の極とを含む光強度分布を形成し、
前記第1の極から照明される光が前記第1マーク及び前記第2マークで回折した回折光は前記瞳面において前記検出光学系の開口に入射し、前記第2の極から照明される光が前記第1マーク及び前記第2マークで回折した回折光は前記瞳面において前記検出光学系の開口とは異なる場所に入射し、
前記第2の極から照明される光が前記第3マーク及び前記第4マークで回折した回折光は前記瞳面において前記検出光学系の開口に入射し、前記第1の極から照明される光が前記第3マーク及び前記第4マークで回折した回折光は前記瞳面において前記検出光学系の開口とは異なる場所に入射することを特徴とする検出器。
【請求項3】
前記第1の極は、前記照明光学系の瞳面において、y方向にNAP1の直径を有し座標(0,NAil1)を中心位置とし、
前記第2の極は、前記照明光学系の瞳面において、x方向にNAP2の直径を有し座標(NAil2,0)を中心位置とし、
前記検出光学系の開口は、前記瞳面においてNAの半径を有し座標(0,0)を中心位置とし、
前記照明光学系から照明される光の波長をλとしたとき、
|λ/P−NAil2|≧NA+NAP2/2、
|λ/P−NAil2|≧NA+NAP2/2、
|λ/P−NAil1|≧NA+NAP1/2、
|λ/P−NAil1|≧NA+NAP1/2、
|NAil1−λ/P|<NA+NAP1/2、及び、
|NAil2−λ/P|<NA+NAP2/2の関係を満たすことを特徴とする請求項2に記載の検出器。
【請求項4】
λ/P>NA+NAP1/2、λ/P>NA+NAP1/2、λ/P>NA+NAP2/2、及び、λ/P>NA+NAP2/2の関係をさらに満たすことを特徴とする請求項3に記載の検出器。
【請求項5】
NAil1>NA+NAP1/2、及び、NAil2>NA+NAP2/2の関係をさらに満たすことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の検出器。
【請求項6】
前記照明光学系は複数波長の光で前記第1の極と前記第2の極とを含む光強度分布を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の検出器。
【請求項7】
前記検出光学系の開口の半径、前記第1の極の直径及び前記第2の極の直径の少なくともいずれかは可変であることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の検出器。
【請求項8】
前記検出光学系により検出された回折光の強度またはコントラストに基づいて、前記第1マークないし前記第4マークの格子ピッチのいずれか、前記検出光学系の開口の半径、前記第1の極の中心位置、前記第2の極の中心位置、前記照明光学系の照明光の中心波長、前記照明光の波長範囲のうちの少なくとも1つを決定することを特徴とする請求項2乃至請求項7のいずれか1項に記載の検出器。
【請求項9】
前記照明光学系は、その瞳面においてNAP1の直径を有し座標(0,−NAil1)を中心位置とする第3の極とNAP2の直径を有し座標(−NAil2,0)を中心位置とする第4の極とをさらに含む光強度分布を形成することを特徴とする請求項3乃至請求項8のいずれか1項に記載の検出器。
【請求項10】
前記検出光学系は、その瞳面において座標(NAil1,NAil2)、(−NAil1,NAil2)、(−NAil1,−NAil2)及び(NAil1,−NAil2)をそれぞれ中心位置としNAの半径を有する4つの検出開口をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の検出器。
【請求項11】
前記検出光学系は、その瞳面において座標(NAil1,NAil2)、(−NAil1,NAil2)、(−NAil1,−NAil2)及び(NAil1,−NAil2)をそれぞれ中心位置とし半径がNAの4つの円の内側の領域のうちで座標(0,0)を中心位置とし(NAil1+NAP1/2)と(NAil2+NAP2/2)のうち大きい方を半径とする円の内側の部分の検出開口をさらに有することを特徴とする請求項9に記載の検出器。
【請求項12】
第1物体と第2物体とのそれぞれに形成されたマークで回折された回折光同士の干渉光を検出する検出器であって、
第1物体に配置された第1マーク及び第3マークと、第2物体に配置された第2マーク及び第4マークとを照明する第1の極と第2の極とを含む光強度分布を形成する照明光学系と、
前記照明光学系によって照明された前記第1マーク及び前記第2マークで回折された回折光同士の干渉光と前記第3マーク及び前記第4マークで回折された回折光同士の干渉光を検出する検出光学系と、
を備え、
前記検出光学系は前記第1の極の光が前記第1マーク及び前記第2マークに照射され回折された回折光同士の干渉光を検出し、前記第2の極の光が前記第3マーク及び前記第4マークに照射され回折された回折光同士の干渉光を検出し、
前記検出光学系は前記第2の極の光が前記第3マーク及び前記第4マークに照射され回折された回折光と、前記第2の極の光が前記第1マーク及び前記第2マークに照射され回折された回折光とを検出しないことを特徴とする検出器。
【請求項13】
基板に塗布された樹脂に型のパターン面を押し付けて前記樹脂を硬化させ、該硬化された樹脂のパターンを前記基板に形成するインプリント装置であって、
前記型に配置されたマークと前記基板に配置されたマークとを検出する請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の検出器を備えることを特徴とするインプリント装置。
【請求項14】
請求項13に記載のインプリント装置を用いてパターンを基板に形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された基板を加工する工程と、
を含む物品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−102139(P2013−102139A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220718(P2012−220718)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】