説明

樹脂およびポジ型感光性樹脂組成物

【課題】有機溶剤への溶解性と硬化膜の密着性に優れ、ポジ型感光性樹脂組成物に用いた場合に、現像後パターン周辺部に残渣を生じることなく高い感度を有する樹脂を提供すること。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂。


(上記一般式(1)中、Rは炭素数2以上の4価の有機基を示し、Rは炭素数2以上の2価の有機基を示す。ただし、RはビスフェノールA骨格とそのOH基に接続するべンゼン骨格を有する基を10〜50%有し、Rは(CF3)2C基に連結したベンゼン骨格を有する基を10〜100%有する。Rは水素または炭素数1〜20の有機基を示す。nは10〜100,000の整数を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を主成分とする樹脂に関する。より詳しくは、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などに適した樹脂、およびそれを用いたポジ型感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミド樹脂は優れた耐熱性や電気絶縁性を有することから、LSI(Large Scale Integration)などの半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などに広く用いられている。多くのポリイミド樹脂は有機溶剤への溶解性が低いことから、その前駆体であるポリアミド酸溶液を塗布した後、高温加熱により脱水閉環させてポリイミドの膜を得る方法が一般的に用いられている。そのため、ポリイミド前駆体の有機溶剤への溶解性は、ポリイミド材料の加工上、重要な特性である。また、近年の半導体素子の微細化に伴い、ポリイミド樹脂を用いた感光性樹脂組成物のパターン加工において、高い感度が求められている。
【0003】
このような要求を満たす感光性樹脂組成物として、これまでにテトラカルボン酸残基やジアミン残基にフッ素を有するポリイミド前駆体を含むポジ型感光性含フッ素ポリイミド前駆体組成物が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。これらの組成物は有機溶剤への溶解性や感度は優れるものの、組成物から得られる硬化膜の密着性が低いという課題があった。
【0004】
さらに、特定構造のポリアミド酸を用いた感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。かかる組成物は有機溶剤への溶解性は高いものの、ポジ型感光性樹脂として用いた場合に、現像後パターン周辺部に残渣が生じるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−37885号公報
【特許文献2】国際公開第2005/121895号パンフレット
【特許文献3】特開2004−354675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題に鑑み、有機溶剤への溶解性と硬化膜の密着性に優れ、ポジ型感光性樹脂組成物に用いた場合に、現像後パターン周辺部に残渣を生じることなく高い感度を有する樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、本発明を見出すに至った。すなわち、本発明は、下記一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂である。
【0008】
【化1】

【0009】
上記一般式(1)中、Rは炭素数2以上の4価の有機基を示し、Rは炭素数2以上の2価の有機基を示す。ただし、Rは下記式(2)で表される基を10〜50%有し、Rは下記一般式(3)で表される基を10〜100%有する。Rは水素または炭素数1〜20の有機基を示す。nは10〜100,000の整数を示す。
【0010】
【化2】

【0011】
上記一般式(3)中、pおよびqは0または1を示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、有機溶剤への溶解性と硬化膜の密着性に優れる樹脂を得ることができる。さらに、本発明の樹脂を用いることにより、有機溶剤への溶解性に優れ、現像後パターン周辺部に残渣を生じることなく高い感度を有するポジ型感光性樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の樹脂は、下記一般式(1)で表される構造を主成分とする。一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂は、加熱により閉環し、耐熱性および耐溶剤性に優れたポリイミドとなるポリイミド前駆体である。ここで、主成分とは、一般式(1)におけるn個の構造単位を、樹脂の構造単位中50%以上有することを意味する。
【0014】
【化3】

【0015】
上記一般式(1)中、Rは炭素数2以上の4価の有機基を示し、Rは炭素数2以上の2価の有機基を示す。ただし、Rは下記式(2)で表される基を10〜50%有し、Rは下記一般式(3)で表される基を10〜100%有する。Rは水素または炭素数1〜20の有機基を示す。nは10〜100,000の整数を示す。下記一般式(3)中、pおよびqは0または1を示す。
【0016】
【化4】

【0017】
が上記式(2)で表される基を10%以上有することにより、得られる樹脂の有機溶剤への溶解性が向上する。好ましくは20%以上である。一方、Rは上記式(2)で表される基を50%以下とすることで、現像後パターン周辺部に残渣が生じない。
【0018】
また、Rが上記一般式(3)で表される基を10%以上有することにより、有機溶剤への溶解性が向上し、得られる樹脂を含むポジ型感光性樹脂組成物の感度を向上させることができる。好ましくは20%以上である。一方、上限は100%であり、90%以下が好ましい。
【0019】
一般式(3)におけるpおよびqは0または1を示し、p+q=0であってもよい。得られる樹脂を含むポジ型感光性樹脂組成物のアルカリ現像性や感光性の観点から、p+q>0であることが好ましい。
【0020】
なお、一般式(3)で表される基を2種以上有してもよく、その合計量が10〜100%であればよい。
【0021】
前記一般式(1)におけるRは、前記式(2)で表される基を10〜50%有する炭素数2以上の4価の有機基であればよく、式(2)で表される基以外の基は特に限定されないが、下記式(4)で表される基を20〜90%有することが好ましい。下記式(4)で表される基を20%以上有することにより、有機溶剤への溶解性がさらに向上し、また、得られる樹脂を含むポジ型感光性樹脂組成物の感度をさらに向上させることができる。30%以上がより好ましい。また、90%以下にすることにより硬化膜の密着性に優れた樹脂を得ることができる。なお、硬化膜の密着性の観点から70%以下がより好ましい。
【0022】
【化5】

【0023】
前記一般式(1)におけるRはこれら以外の基を有してもよい。例えば、シロキサン構造を有するテトラカルボン酸の残基を1〜10%有することが好ましく、硬化膜の密着性をより向上させることができる。
【0024】
前記一般式(1)におけるRは、前記一般式(3)で表される基を10〜100%有する炭素数2以上の2価の有機基であればよく、一般式(3)で表される基以外の基は特に限定されないが、下記式(5)で表される基を10〜90%有することが好ましい。下記式(5)で表される基を10%以上有することにより、得られる樹脂を含むポジ型感光性樹脂組成物の感度をさらに向上させることができる。20%以上がより好ましい。また、90%以下にすることにより有機溶剤に対する溶解性に優れた樹脂を得ることができる。なお、有機溶剤に対する溶解性の観点から70%以下がより好ましい。
【0025】
【化6】

【0026】
前記一般式(1)におけるRはこれら以外の基を有してもよい。例えば、ビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、ビス(p−アミノ−フェニル)オクタメチルペンタシロキサンなどのシロキサン構造を有する脂肪族ジアミンの残基を1〜10%有することが好ましく、硬化膜の密着性をより向上させることができる。
【0027】
一般式(1)中、Rは水素または炭素数1〜20の有機基を示す。有機基としては炭化水素基が好ましい。得られる樹脂を含むポジ型感光性樹脂組成物の安定性とアルカリ現像液に対する溶解性の観点から、Rは、炭素数1〜16の炭化水素基を少なくとも1つ含有し、その他は水素であることが好ましい。
【0028】
一般式(1)中、nは樹脂の繰り返し数を表し、10〜100,000の整数を示す。本発明における繰り返し数nは、ポリスチレン換算によるゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により重量平均分子量(Mw)を測定することで容易に算出できる。繰り返し単位の分子量をM、樹脂の重量平均分子量をMwとすると、n=Mw/Mである。
【0029】
本発明の樹脂は、モノマー成分であるR基を有するテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体(以下、酸成分)とR基を有するジアミン化合物(以下、アミン成分)のモル比を変えることで任意の重合度の樹脂が得られる。酸成分とアミン成分の内、より多く含む成分をA、少ない成分をBとしてAのモル数を1とした場合、Bのモル数は0.5〜1.0が好ましい。得られる樹脂の伸度向上の観点から、Aのモル数を1とした場合のBのモル数は0.6以上がより好ましく、0.7以上がさらに好ましい。一方、得られる樹脂の有機溶剤に対する溶解性や、得られる樹脂を含む感光性樹脂組成物のアルカリ現像液に対する溶解性の観点から、Aのモル数を1とした場合のBのモル数は0.95以下がより好ましく、0.9以下がさらに好ましい。
【0030】
本発明の樹脂は、前記一般式(1)で表される構造単位を主成分とするものであれば、他の構造単位を含んでもよい。例えば、前記一般式(1)で表される構造単位をイミド閉環させた構造単位を5〜50%有してもよい。
【0031】
また、一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂は、モノアミン、酸無水物、酸クロリド、モノカルボン酸などの末端封止剤により末端を封止してもよい。樹脂の末端を水酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、チオール基、ビニル基、エチニル基またはアリル基を有する末端封止剤により封止することで、樹脂のアルカリ水溶液に対する溶解速度を好ましい範囲に容易に調整することができる。末端封止剤は、樹脂の全アミン成分に対して0.1〜60モル%使用することが好ましく、より好ましくは5〜50モル%である。
【0032】
一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂は、公知のポリイミドの製造方法に準じて製造することができる。例えば、(1)R基を有するテトラカルボン酸二無水物とR基を有するジアミン化合物、末端封止剤であるモノアミノ化合物を、低温条件下で反応させる方法、(2)R基を有するテトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後R基を有するジアミン化合物、末端封止剤であるモノアミノ化合物と縮合剤の存在下で反応させる方法、(3)R基を有するテトラカルボン酸二無水物とアルコールとによりジエステルを得、その後残りの2つのカルボキシル基を酸クロリド化し、R基を有するジアミン化合物、末端封止剤であるモノアミノ化合物と反応させる方法などを挙げることができる。上記の方法で重合させた樹脂は、多量の水やメタノール/水の混合液などに投入し、沈殿させてろ別乾燥し、単離することが望ましい。この沈殿操作によって未反応のモノマーや、2量体や3量体などのオリゴマー成分が除去され、熱硬化後の膜特性が向上する。
【0033】
以下、好ましい例として、ポリイミド前駆体を製造する方法の例について述べる。まず、R基を有するジアミン化合物を重合溶媒中に溶解する。この溶液に、実質的にジアミン化合物と等モル量の、R基を有するテトラカルボン酸二無水物を徐々に添加する。メカニカルスターラーを用い、−20〜100℃、好ましくは10〜50℃で0.5〜100時間、より好ましくは2〜24時間撹拌する。末端封止剤を用いる場合には、テトラカルボン酸二無水物を添加後、所用温度、所要時間で撹拌した後、末端封止剤を徐々に添加してもよいし、一度に加えて、反応させてもよい。
【0034】
重合溶媒は、原料モノマーであるテトラカルボン酸二無水物類とジアミン類を溶解できればよく、その種類は特に限定されない。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンのアミド類、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトンなどの環状エステル類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート類、トリエチレングリコールなどのグリコール類、m−クレゾール、p−クレゾールなどのフェノール類、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。重合溶媒は、得られる樹脂100重量部に対して100〜1900重量部使用することが好ましく、150〜950重量部がより好ましい。
【0035】
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物について説明する。本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(a)前記一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂、(b)キノンジアジド化合物および(c)溶剤を含有する。
【0036】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(a)先に説明した本発明の樹脂を含有する。これらを2種以上含有してもよい。
【0037】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(b)キノンジアジド化合物を含有する。キノンジアジド化合物としては、ポリヒドロキシ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステルで結合したもの、ポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がスルホンアミド結合したもの、ポリヒドロキシポリアミノ化合物にキノンジアジドのスルホン酸がエステル結合および/またはスルホンアミド結合したものなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらポリヒドロキシ化合物やポリアミノ化合物の全ての官能基がキノンジアジドで置換されていなくてもよいが、露光部と未露光部のコントラストの観点から、官能基全体の50モル%以上がキノンジアジドで置換されていることが好ましい。このようなキノンジアジド化合物を用いることで、一般的な紫外線である水銀灯のi線(365nm)、h線(405nm)、g線(436nm)に感光するポジ型の感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0038】
ポリヒドロキシ化合物としては、Bis−Z、BisP−EZ、TekP−4HBPA、TrisP−HAP、TrisP−PA、TrisP−SA、TrisOCR−PA、BisOCHP−Z、BisP−MZ、BisP−PZ、BisP−IPZ、BisOCP−IPZ、BisP−CP、BisRS−2P、BisRS−3P、BisP−OCHP、メチレントリス−FR−CR、BisRS−26X、DML−MBPC、DML−MBOC、DML−OCHP、DML−PCHP、DML−PC、DML−PTBP、DML−34X、DML−EP、DML−POP、ジメチロール−BisOC−P、DML−PFP、DML−PSBP、DML−MTrisPC、TriML−P、TriML−35XL、TML−BP、TML−HQ、TML−pp−BPF、TML−BPA、TMOM−BP、HML−TPPHBA、HML−TPHAP(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIR−OC、BIP−PC、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−PCHP、BIP−BIOC−F、4PC、BIR−BIPC−F、TEP−BIP−A、46DMOC、46DMOEP、TM−BIP−A(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)、2,6−ジメトキシメチル−4−t−ブチルフェノール、2,6−ジメトキシメチル−p−クレゾール、2,6−ジアセトキシメチル−p−クレゾール、ナフトール、テトラヒドロキシベンゾフェノン、没食子酸メチルエステル、ビスフェノールA、ビスフェノールE、メチレンビスフェノール、BisP−AP(商品名、本州化学工業(株)製)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
ポリアミノ化合物としては、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィドなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
ポリヒドロキシポリアミノ化合物としては、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、3,3’−ジヒドロキシベンジジンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本発明において、キノンジアジドは5−ナフトキノンジアジドスルホニル基、4−ナフトキノンジアジドスルホニル基のいずれも好ましく用いられる。4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物はi線露光(波長365nm)に適しており、5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物はg線露光(波長436nm)に適している。本発明においては、露光する波長によって4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物、5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を選択することが好ましい。また、同一分子中に4−ナフトキノンジアジドスルホニル基、5−ナフトキノンジアジドスルホニル基を有するナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよいし、4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を含有してもよい。
【0042】
キノンジアジド化合物の分子量は、350以上1600以下が好ましい。
【0043】
また、(b)キノンジアジド化合物の含有量は、(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂100重量部に対し、好ましくは3重量部以上40重量部以下である。
【0044】
(b)キノンジアジド化合物は、例えば、5−ナフトキノンジアジドスルホニルクロライドとフェノール化合物をトリエチルアミン存在下で反応させる方法などにより得ることができる。
【0045】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(c)溶剤を含有する。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性の非プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトン類、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシメチルプロパネート、3−エトキシエチルプロパネート、酢酸エチル、乳酸エチルなどのエステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。(c)溶剤の含有量は、(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂100重量部に対して、好ましくは100重量部以上1500重量部以下である。
【0046】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、前記(a)〜(c)以外の成分を含有してもよく、アルコキシメチル基含有化合物を含有することが好ましい。アルコキシメチル基は150℃以上の温度領域で架橋反応を生じるため、アルコキシメチル基含有化合物を含有することにより、熱処理により架橋し、優れた機械特性を有する硬化膜を得ることができる。アルコキシメチル基含有化合物の含有量は、一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂100重量部に対して、好ましくは10重量部以上30重量部以下である。
【0047】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、シラン化合物を含有することができる。シラン化合物を含有することにより、硬化膜の密着性が向上する。シラン化合物の具体例としては、N−フェニルアミノエチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノエチルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニルアミノブチルトリメトキシシラン、N−フェニルアミノブチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシランなどを挙げることができる。シラン化合物の含有量は、(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上15重量部以下である。
【0048】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、必要に応じてフェノール性水酸基を有する化合物を含有することができる。フェノール性水酸基を有する化合物を含有することにより、得られるポジ型感光性樹脂組成物は、露光前はアルカリ現像液にほとんど溶解せず、露光すると容易にアルカリ現像液に溶解するために、現像による膜減りが少なく、かつ短時間で現像が容易になる。このため、パターン加工性が向上する。フェノール性水酸基を有する化合物の好ましい例としては、Bis−Z、TekP−4HBPA、TRisP−HAP、TrisP−PA、BisRS−2P、BisRS−3P(以上、商品名、本州化学工業(株)製)、BIR−PC、BIR−PTBP、BIR−BIPC−F(以上、商品名、旭有機材工業(株)製)などが挙げられる。フェノール性水酸基を有する化合物の含有量は、(a)一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂100重量部に対して、好ましくは3重量部以上40重量部以下である。なお、本発明においては、フェノール性水酸基を有する化合物であってもキノンジアジドを有する場合は(b)キノンジアジド化合物に分類するものとする。
【0049】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、必要に応じて(b)キノンジアジド化合物以外の光酸発生剤を含有してもよい。露光によって発生した酸成分を適度に安定化させる光酸発生剤としては、スルホニウム塩、ホスホニウム塩またはジアゾニウム塩が好ましい。本発明のポジ型感光性樹脂組成物から得られる硬化膜は永久膜として使用するため、リンなどが残存することは環境上好ましくなく、また膜の色調も考慮する必要があることから、これらの中ではスルホニウム塩が好ましく用いられる。
【0050】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(a)成分以外に他のアルカリ可溶性樹脂を含有してもよい。具体的には、アルカリ可溶性ポリイミド樹脂、アルカリ可溶性ポリベンゾオキサゾール樹脂前駆体、アクリル酸を共重合したアクリルポリマー、ノボラック樹脂、シロキサン樹脂などが挙げられる。このような樹脂は、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、トリエチルアミン、ジメチルアミノピリジン、モノエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリの水溶液に溶解するものである。これらのアルカリ可溶性樹脂を含有することにより、硬化膜の密着性や優れた感度を保ちながら、各アルカリ可溶性樹脂の特性を付与することができる。本発明の一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂は他のアルカリ可溶性樹脂との相溶性に優れることから、他のアルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型感光性樹脂組成物を露光・現像して得られる現像膜において生じやすい白濁を抑制することができる。
【0051】
また、本発明の感光性樹脂組成物は、必要に応じて、基材との塗れ性を向上させる目的で界面活性剤、乳酸エチルやプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、エタノールなどのアルコール類、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類を含有してもよい。また、二酸化ケイ素、二酸化チタンなどの無機粒子、あるいはポリイミドの粉末などを含有してもよい。
【0052】
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物の製造方法を例示する。上記(a)〜(c)の各成分、および必要によりその他成分をガラス製のフラスコやステンレス製の容器に入れて、メカニカルスターラーなどによって撹拌溶解させる方法、超音波で溶解させる方法、遊星式撹拌脱泡装置で撹拌溶解させる方法などが挙げられる。ポジ型感光性樹脂組成物の粘度は、1〜10,000mPa・sが好ましい。また、異物を除去するために0.1μm〜5μmのポアサイズのフィルターで濾過してもよい。
【0053】
次に、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いて耐熱性樹脂被膜のパターンを形成する方法について、例を挙げて説明する。
【0054】
まず、ポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布する。基板はシリコンウエハ、セラミックス類、ガリウムヒ素、金属、ガラス、金属酸化絶縁膜、窒化ケイ素、ITOなどが用いられるが、これらに限定されない。塗布方法はスピンナを用いた回転塗布、スプレー塗布、ロールコーティング、スリットダイコーティングなどの方法が挙げられる。塗布膜厚は、塗布手法、ポジ型感光性樹脂組成物の固形分濃度、粘度などによって異なるが、乾燥後の膜厚が0.1〜150μmになるように塗布することが一般的である。
【0055】
次に、ポジ型感光性樹脂組成物を塗布した基板を乾燥して、感光性樹脂膜を得る。乾燥はオーブン、ホットプレート、赤外線などを使用し、50℃〜150℃の範囲で1分間〜数時間行うことが好ましい。
【0056】
次に、この感光性樹脂膜上に所望のパターンを有するマスクを通して化学線を照射し、露光する。露光に用いられる化学線としては紫外線、可視光線、電子線、X線などが挙げられるが、本発明では水銀灯のi線(波長365nm)、h線(波長405nm)、g線(波長436nm)を用いることが好ましい。
【0057】
感光性樹脂膜から耐熱性樹脂被膜のパターンを形成するには、露光後、現像液を用いて露光部を除去すればよい。現像液は、テトラメチルアンモニウムの水溶液、ジエタノールアミン、ジエチルアミノエタノール、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン、メチルアミン、ジメチルアミン、酢酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエチルメタクリレート、シクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなどのアルカリ性を示す化合物の水溶液が好ましい。場合によっては、これらのアルカリ水溶液にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジメチルアクリルアミドなどの極性溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル類、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類などを1種以上添加してもよい。現像後は水にてリンス処理をすることが一般的である。リンス処理には、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシメチルプロパネートなどのエステル類などを1種以上水に添加してもよい。
【0058】
現像後、200℃〜500℃の温度を加えて耐熱性樹脂被膜に変換する。この加熱処理は温度を選び、段階的に昇温するか、ある温度範囲を選び連続的に昇温しながら5分間〜5時間実施することが好ましい。一例としては、130℃、200℃、350℃で各30分間ずつ熱処理する方法、室温より320℃まで2時間かけて直線的に昇温する方法などが挙げられる。
【0059】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物により形成した耐熱性樹脂被膜は、半導体のパッシベーション膜、半導体素子の保護膜、高密度実装用多層配線の層間絶縁膜、有機電界発光素子の絶縁層などの用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0060】
以下実施例等をあげて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。なお、実施例中の樹脂およびポジ型感光性樹脂組成物の評価は以下の方法により行った。
【0061】
(1)有機溶剤に対する溶解性評価
THF(テトラヒドロフラン)、アセトン、およびMMP(3−メトキシメチルプロパネート)にポリマー粉末を1重量%、5重量%、10重量%の固形分濃度になるように添加して室温で1時間撹拌した後、目視で状態を観察した。1重量%、5重量%、10重量%のいずれも不溶の樹脂が確認されなかったものを◎、10重量%において不溶の樹脂が確認され、1重量%、5重量%においては不溶の樹脂が観察されなかったものを○、5重量%、10重量%において不溶の樹脂が確認され、1重量%においては不溶の樹脂が観察されなかったものを△、1重量%濃度において不溶の樹脂が確認された樹脂を×と評価した。
【0062】
(2)硬化膜の密着性評価
シリコンウエハ上にポジ型感光性樹脂組成物(以下ワニスと呼ぶ)を回転塗布し、次いで、120℃のホットプレート(東京エレクトロン(株)製の塗布現像装置Mark−7使用)で3分間ベークし、厚さ8μmのプリベーク膜を作製した。この膜をオーブンに投入して170℃で30分間、次いで300℃で1時間熱処理して硬化膜を得た。熱処理は窒素中で行った。硬化膜に2mm間隔で10行10列の碁盤目状の切り込みをいれ、100時間のプレッシャークッカーテスト(以降、PCTと記載する、使用装置タバイ(株)製EHS−221MD)処理を行った。PCT処理なし(0時間)、100時間のそれぞれについて、“セロテープ(登録商標)”(ニチバン(株)製)による引き剥がしを行い、100マスのうち何マス剥がれたかによって密着性の評価を行った。剥がれ個数が10未満を良好、10以上を不良と評価した。PCT処理は121℃、0.21MPaの飽和条件で行った。
【0063】
(3)感度評価
現像膜の作製
6インチシリコンウエハ上にワニスを回転塗布し、次いで、120℃のホットプレート(東京エレクトロン(株)製の塗布現像装置Mark−7使用)で3分間ベークし、厚さ5μmのプリベーク膜を作製した。この膜を、i線ステッパー(GCA製DSW−8000)を用いて0〜500mJ/cmの露光量にて10mJ/cmステップで露光した。露光後、2.38重量%のテトラメチルアンモニウム(TMAH)水溶液(三菱ガス化学(株)製、ELM−D)で90秒間現像し、ついで純水でリンスして現像膜を得た。
【0064】
膜厚の測定方法
大日本スクリーン製造(株)製ラムダエースSTM−602を使用し、プリベーク後の膜は、屈折率1.629で測定した。
【0065】
感度の算出
露光および現像後、露光部が完全に溶出してなくなった露光量(最小露光量Ethという)を感度とした。Ethが300mJ/cm以下であれば高感度であると判断できる。250mJ/cm以下がより好ましく、200mJ/cm以下がさらに好ましい。
【0066】
(4)パターンエッジ残渣
(3)と同様の方法にてパターン加工を行い、光学顕微鏡(オリンパス(株)製、MX61L使用)で倍率20倍として、20μmの正方形のビアホールパターンを観察した。この時エッジ部に現像残りが生じていないものを合格、生じているものを不合格とした。
【0067】
以下の実施例、比較例に示す酸二無水物、ジアミンの略記号の名称は下記の通りである。
BSAA:2,2−ビス〔4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル〕プロパン二無水物
6FDA:4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BAHF:2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン
SiDA:1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン
4,4’−DAE:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
THF:テトラヒドロフラン
MMP:3−メトキシメチルプロパネート
またBSAA、6FDA、BPDA、BAHF、SiDAおよび4,4’−DAEについいては、構造式を以下に示す。
【0068】
【化7】

【0069】
合成例1 ヒドロキシル基含有ジアミン化合物(a)の合成
BAHF18.3g(0.05モル)をアセトン100mL、プロピレンオキシド17.4g(0.3モル)に溶解させ、−15℃に冷却した。ここに3−ニトロベンゾイルクロリド20.4g(0.11モル)をアセトン100mLに溶解させた溶液を滴下した。滴下終了後、−15℃で4時間反応させ、その後室温に戻した。析出した白色固体をろ別し、50℃で真空乾燥した。
【0070】
得られた白色固体30gを300mLのステンレスオートクレーブに入れ、メチルセロソルブ250mLに分散させ、5%パラジウム−炭素を2g加えた。ここに水素を風船で導入して、還元反応を室温で行った。約2時間後、風船がこれ以上しぼまないことを確認して反応を終了させた。反応終了後、ろ過して触媒であるパラジウム化合物を除き、ロータリーエバポレーターで濃縮し、下記式で表されるヒドロキシル基含有ジアミン化合物(a)を得た。得られた固体をそのまま反応に使用した。
【0071】
【化8】

【0072】
合成例2 キノンジアジド化合物(b)の合成
乾燥窒素気流下、TrisP−PA(商品名、本州化学工業(株)製)21.22g(0.05モル)と5−ナフトキノンジアジドスルホニル酸クロリド33.58g(0.125モル)を1,4−ジオキサン50gに溶解させ、室温にした。ここに、1,4−ジオキサン50gと混合したトリエチルアミン15.18gを、系内が35℃以上にならないように滴下した。滴下後30℃で2時間撹拌した。トリエチルアミン塩を濾過し、ろ液を水に投入した。その後、析出した沈殿をろ過で集めた。この沈殿を真空乾燥機で乾燥させ、下記式で表されるキノンジアジド化合物(b)を得た。
【0073】
【化9】

【0074】
実施例1
乾燥窒素気流下、BAHF18.31g(0.050モル)、4,4’−DAE5.01g(0.025モル)、SiDA1.24g(0.005モル)をNMP240gに溶解させた。ここにBSAA5.20g(0.010モル)、BPDA27.92g(0.090モル)をNMP20gとともに加えて、40℃で1時間反応させた。その後、N,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール17.87g(0.150モル)をNMP30gで希釈した溶液を10分かけて滴下した。滴下後、40℃で1時間撹拌した。反応終了後、溶液を水5Lに投入して、固体の沈殿をろ過で集めた。樹脂固体を50℃の真空乾燥機で72時間乾燥しポリイミド前駆体の樹脂Aを得た。
【0075】
得られた樹脂A17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスAを得た。得られた樹脂A、ワニスAを用いて前記のように、有機溶剤に対する溶解性、硬化膜の密着性、感度、パターンエッジ残渣の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0076】
実施例2
BSAA5.20gを10.41g(0.020モル)、BPDA27.92gを24.82g(0.080モル)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Bを得た。得られた樹脂B17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスBを得た。得られた樹脂B、ワニスBを用いて実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
【0077】
実施例3
BSAA5.20gを26.02g(0.050モル)、BPDA27.92gを15.51g(0.050モル)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Cを得た。このようにして得られた樹脂C17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスCを得た。得られた樹脂C、ワニスCを用いて実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
【0078】
実施例4
BAHF18.31gを2.93g(0.008モル)、4,4’−DAE5.01gを13.42g(0.067モル)に変更したこと以外は実施例3と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Dを得た。このようにして得られた樹脂D17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスDを得た。得られた樹脂D、ワニスDを用いて実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
【0079】
実施例5
BAHF2.93gを5.86g(0.016モル)、4,4’−DAE13.42gを11.81g(0.059モル)に変更したこと以外は実施例4と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Eを得た。得られた樹脂E17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスEを得た。得られた樹脂E、ワニスEを用いて実施例1と同様に評価した結果を表2に示す。
【0080】
実施例6
BAHF2.93gを27.47g(0.075モル)に変更し、4,4’−DAEを添加しなかったこと以外は実施例4と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Fを得た。得られた樹脂F17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスFを得た。得られた樹脂F、ワニスFを用いて実施例1と同様にして評価した結果を表2に示す。
【0081】
実施例7
BSAA26.02gを15.61g(0.030モル)に変更し、新たに6FDA8.88g(0.020モル)を添加したこと以外は実施例3と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Gを得た。得られた樹脂G17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL50gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスGを得た。得られた樹脂G、ワニスGを用いて実施例1と同様にして評価した結果を表2に示す。
【0082】
実施例8
6FDA8.88gを13.33g(0.030モル)、BPDA15.51gを12.41g(0.040モル)に変更したこと以外は実施例7と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Hを得た。得られた樹脂H17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスHを得た。得られた樹脂H、ワニスHを用いて実施例1と同様にして評価した結果を表2に示す。
【0083】
実施例9
6FDA8.88gを31.10g(0.070モル)に変更し、BPDAを添加しなかったこと以外は実施例7と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Iを得た。得られた樹脂I17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスIを得た。得られた樹脂I、ワニスIを用いて実施例1と同様にして評価した結果を表2に示す。
【0084】
実施例10
BSAA15.61gを5.20g(0.010モル)、6FDA31.10gを39.98g(0.090モル)に変更したこと以外は実施例9と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Jを得た。得られた樹脂J17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスJを得た。得られた樹脂J、ワニスJを用いて実施例1と同様にして評価した結果を表2に示す。
【0085】
実施例11
4,4’−DAE5.01gを3.40g(0.017モル)に変更し、新たに合成例1で得られたジアミン化合物(a)を4.84g(0.008モル)添加したこと以外は実施例9と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Kを得た。得られた樹脂K17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスKを得た。得られた樹脂K、ワニスKを用いて実施例1と同様にして評価した結果を表2に示す。
【0086】
実施例12
4,4’−DAE3.40gを1.80g(0.009モル)、ジアミン化合物(a)4.84gを9.67g(0.016モル)に変更したこと以外は実施例11と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Lを得た。得られた樹脂L17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスLを得た。得られた樹脂L、ワニスLを用いて実施例1と同様にして評価した結果を表2に示す。
【0087】
実施例13
BAHF18.31gを6.96g(0.019モル)、ジアミン化合物(a)9.67gを33.85g(0.056モル)に変更し、4,4’−DAEを添加しなかったこと以外は実施例12と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Mを得た。得られた樹脂M17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスMを得た。得られた樹脂M、ワニスMを用いて実施例1と同様にして評価した結果を表2に示す。
【0088】
実施例14
BAHF6.96gを4.03g(0.011モル)、ジアミン化合物(a)33.85gを38.69g(0.064モル)に変更したこと以外は実施例13と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Nを得た。得られた樹脂N17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスNを得た。得られた樹脂N、ワニスNを用いて実施例1と同様にして評価した結果を表2に示す。
【0089】
実施例15
BAHF27.47gを34.79g(0.095モル)に変更したこと以外は実施例6と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Oを得た。得られた樹脂O17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスOを得た。得られた樹脂O、ワニスOを用いて実施例1と同様にして評価した結果を表2に示す。
【0090】
比較例1
BPDA27.92gを31.02g(0.100モル)に変更し、BSAAを添加しなかったこと以外は実施例1と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Pを得た。得られた樹脂P17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスPを得た。得られた樹脂P、ワニスPを用いて実施例1と同様にして評価したところ、一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂において、Rが一般式(2)で表される基を有していないため、MMPに対する溶解性評価において、1重量%濃度で不溶の樹脂が確認され、有機溶剤に対する溶解性が不十分であった。詳細な結果を表2に示す。
【0091】
比較例2
6FDA39.98gを44.42g(0.100モル)に変更し、BSAAを添加しなかったこと以外は実施例10と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Qを得た。得られた樹脂Q17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスQを得た。得られた樹脂Q、ワニスQを用いて実施例1と同様にして評価したところ、一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂において、Rが一般式(2)で表される基を有していないため、硬化膜の密着性評価において、剥がれ個数がPCT処理なしで12個、PCT処理100時間で85個となり、硬化膜の密着性が不良であった。詳細な結果を表2に示す。
【0092】
比較例3
BSAA26.02gを31.23g(0.060モル)、BPDA15.51gを12.41g(0.040モル)に変更したこと以外は実施例3と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Rを得た。得られた樹脂R17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスRを得た。得られた樹脂R、ワニスRを用いて実施例1と同様にして評価したところ、一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂において、Rが一般式(2)で表される基を60%有しているため、パターンエッジ残渣評価を行ったところ、エッジ部に現像残りが生じていた。詳細な結果を表2に示す。
【0093】
比較例4
BPDA12.41gを6FDA17.77g(0.040モル)に変更したこと以外は比較例3と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Sを得た。得られた樹脂S17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスSを得た。得られた樹脂S、ワニスSを用いて実施例1と同様にして評価したところ、一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂において、Rが一般式(2)で表される基を60%有しているため、パターンエッジ残渣評価を行ったところ、エッジ部に現像残りが生じていた。詳細な結果を表2に示す。
【0094】
比較例5
4,4’−DAE13.42gを15.02g(0.075モル)に変更し、BAHFを添加しなかったこと以外は実施例4と同様にして、ポリイミド前駆体の樹脂Tを得た。得られた樹脂T17.5g、合成例2で得られたキノンジアジド化合物(b)2.5gをGBL30gに加えてポジ型感光性樹脂組成物のワニスTを得た。得られた樹脂T、ワニスTを用いて実施例1と同様にして評価したところ、一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂において、Rが一般式(3)で表される基を有していないため、MMPに対する溶解性評価において、1重量%濃度で不溶の樹脂が確認され、有機溶剤に対する溶解性が不十分であった。また感度評価において、Ethは330mJ/cmとなり、感度が不十分であった。詳細な結果を表2に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構造を主成分とする樹脂。
【化1】

(上記一般式(1)中、Rは炭素数2以上の4価の有機基を示し、Rは炭素数2以上の2価の有機基を示す。ただし、Rは下記式(2)で表される基を10〜50%有し、Rは下記一般式(3)で表される基を10〜100%有する。Rは水素または炭素数1〜20の有機基を示す。nは10〜100,000の整数を示す。)
【化2】

(上記一般式(3)中、pおよびqは0または1を示す。)
【請求項2】
前記一般式(1)におけるRが、さらに下記式(4)で表される基を20〜90%有する請求項1記載の樹脂。
【化3】

【請求項3】
前記一般式(1)におけるRが、さらに下記式(5)で表される基を10〜90%有する請求項1または2記載の樹脂。
【化4】

【請求項4】
(a)請求項1〜3いずれか記載の樹脂、(b)キノンジアジド化合物および(c)溶剤を含有するポジ型感光性樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−202059(P2011−202059A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71530(P2010−71530)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】