説明

樹脂の製造方法

【課題】熱硬化型樹脂の耐熱性や電気特性が向上し、溶剤に可溶であり、かつ塗装性、作業性、作業環境等に優れた新規な硬化性アミドイミド樹脂又は硬化性イミド樹脂の製造方法の提供。
【解決手段】分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物(a)と、トリカルボン酸無水物(b1)及び/又はテトラカルボン酸無水物(b2)とを、窒素原子及び硫黄原子を含有しない極性溶剤中で反応させることにより、カルボキシル基若しくは酸無水物基含有アミドイミド樹脂又はカルボキシル基若しくは酸無水物基含有イミド樹脂を製造する方法であり、前記極性溶剤がエーテル系溶剤であり、前記の分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物(a)がイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)を含むことを特徴とする樹脂の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なカルボキシル基含有アミドイミド樹脂、カルボキシル基含有イミド樹脂、それらの製造方法、及びそれらを含有する熱硬化型樹脂組成物に関するものである。該熱硬化型樹脂組成物は、各種耐熱性コーティング材料や電気絶縁材料、例えばプリント配線基板の層間絶縁材料、ビルドアップ材料、半導体の絶縁材料等、耐熱性接着剤等の分野に有用な熱硬化性イミド樹脂組成物を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電気電子産業を中心に各種分野において耐熱性や電気特性の向上が要求をされている。こうした中、各種耐熱性材料が開発されている。特に芳香族ポリイミドは、その優れた耐熱特性や機械物性の面で重要な材料である。一般にポリイミド樹脂は、多価カルボン酸無水物とジアミンから極性溶剤中でアミック酸を合成し、キャスティングした後に溶剤を蒸発させながら300℃以上の高温下にてアミック酸の脱水反応を行い、イミド閉環を行うものである。これは、イミド樹脂が溶剤に溶解しない為にポリアミック酸中間体溶液を使用するものである。また、ポリイミド樹脂系塗膜を特定の基板等に作成する場合は、こうしたポリアミック酸溶液をコーティングする方法がとられているが、ポリアミック酸からイミド化させる際には、非常に高い温度で処理を行い、脱水とイミド閉環を行わなければならない必要性から、使用可能な基板には制限がある。またポリアミック酸化合物も極性が高い為、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、メチルピロリドン(NMP)、γブチロラクトン等の極性溶剤にしか溶けず、作業環境の面や環境の保全の観点から問題がある。またポリアミック酸は、非常に加水分解しやすい材料であり、合成時や保存時に溶剤の吸水等による安定性の問題を生じやすい欠点を有している。かかる窒素や硫黄を含有する極性溶剤や、γブチロラクトン等は、溶解能力には優れているが、また一方非常に吸湿しやすい溶剤でもあり、ポリアミック酸溶液としては取り扱いが非常に困難である。
【0003】
また耐熱性樹脂としてポリアミドイミド樹脂を主成分とする組成物が提案されている。具体的には特開昭55−137161号、特開昭56−8453号、特開昭57−165450号、特開昭57−167345号、特開昭58−174441号などでは、イソシアヌレート環含有のポリイソシアネート、芳香族イソシアネート、ラクタム及び酸無水物を含有するポリカルボン酸をクレゾール系溶媒中で合成するポリアミドイミド樹脂が開示されている。こうした技術は、クレゾール溶液中で溶解した材料を提供しているが、塗膜を形成させる場合にクレゾールの如き臭気の強く、毒性のある材料を使用する事で作業環境を悪化させ、環境にも負荷を与えるものである。さらにラクタムやクレゾール溶剤は、イソシアネート基との反応を起こしてブロック化剤となる。したがって、反応時の分子成長の阻害因子となるばかりか、熱硬化時に他の硬化成分(例えばエポキシ樹脂など)と反応することで良好な物性を得られないという欠点がある。さらにブロック化剤がはずれる場合、使用機器や他の材料の汚染を引き起こす欠点を有している。
【0004】
また、特開昭59−204613号、特開昭59−142225号等では、非水分散重合により得られる粒子状ポリアミドイミド系樹脂とエポキシ樹脂などの組成物が開示されている。これらは、根本的に粒子状の材料を使うことによりイミド系樹脂の溶解性を向上させる技術であるが、粒子状であるが為に基材との塗れ性や均一性、レベリング性に問題を生じ、塗装方法やボイドの発生等の問題点を含んでいる。また、製造時、粒子状の形態を保持するために界面活性剤を使用する為、硬化後の耐熱性や熱分解生成物発生等の多くの問題を含んでいる。
【0005】
すなわち、高度な耐熱性を有するイミド系樹脂は、現在開示されている技術では通常の汎用溶剤に溶解できず、かつ溶剤溶解性を向上させるために種々の変性や手法を取り入れた場合、その他の物性や環境面での性能、性状が犠牲になってしまうのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55−137161号公報
【特許文献2】特開昭56−8453号公報
【特許文献3】特開昭57−165450号公報
【特許文献4】特開昭57−167345号公報
【特許文献5】特開昭58−174441号公報
【特許文献6】特開昭59−204613号公報
【特許文献7】特開昭59−142225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、熱硬化型樹脂の耐熱性や電気特性が向上し、溶剤に可溶であり、かつ塗装性、作業性、作業環境に優れた新規な熱硬化型樹脂組成物、該組成物を構成する新規な樹脂、及び該樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物(a)と、トリカルボン酸無水物(b1)及び/又はテトラカルボン酸無水物(b2)と、を反応させて得られる新規なカルボキシル基含有アミドイミド樹脂、カルボキシル基含有イミド樹脂と、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含んでなる硬化性アミドイミド樹脂組成物、硬化性イミド樹脂組成物が、耐熱性や電気特性が向上し、溶剤に可溶であり、かつ塗装性、作業性、作業環境に優れたものであることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物(a)と、トリカルボン酸無水物(b1)及び/又はテトラカルボン酸無水物(b2)とを、窒素原子及び硫黄原子を含有しない極性溶剤中で反応させることにより、カルボキシル基若しくは酸無水物基含有アミドイミド樹脂又はカルボキシル基若しくは酸無水物基含有イミド樹脂を製造する方法であり、前記極性溶剤がエーテル系溶剤であり、前記の分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物(a)がイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)を含むことを特徴とする樹脂の製造方法を提供するものである。本発明はまた、かかるカルボキシル基若しくは酸無水物基含有アミドイミド樹脂、カルボキシル基若しくは酸無水物基含有イミド樹脂の酸価が、60〜200KOHmg/gである樹脂の製造方法を提供するものである。本発明はまた、かかる分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物(a)が、ジイソシアネートモノマー(a1)及びイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)から構成されるか、あるいはイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)のみから構成され、かつジイソシアネートモノマー(a1)とイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)との重量割合((a1)/(a2))が、0〜0.5であることを特徴とする樹脂の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性アミドイミド樹脂組成物、硬化性イミド樹脂組成物は、樹脂構造中にイミド結合を有しながらも一般の汎用溶剤に対する溶解性に優れており、優れた作業性や塗装適性、耐熱性や電気特性等の硬化物性、その他耐久性等に優れた性能を有したものである。また、本発明のカルボキシル基含有アミドイミド樹脂及び/又はカルボキシル基含有イミド樹脂は、かかる硬化性アミドイミド樹脂組成物及び/又は硬化性イミド樹脂組成物の製造に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のカルボキシル基含有アミドイミド樹脂及び/又はアミドイミド樹脂において、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物、脂環族ソシアネート化合物(a)は、汎用の溶剤に対する溶解性を向上させる必須の材料であり、全イソシアネート原料の70重量%以上あることが好ましい。また、反応時、経時的に結晶化することを考慮すると、全イソシアネート原料の80重量%以上あることが特に好ましい。
【0012】
かかる脂肪族イソシアネート化合物、脂環族イソシアネート化合物としては、例えば2官能イソシアネートモノマー(a1)として、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート(HXDI)、ノルボヌレンジイソシアネート(NBDI)、リジンジイソシアネート等の脂肪族、脂環族イソシアネート類が挙げられる。また、かかるジイソシアネート類のヌレート体等のイソシアヌレート化物(ポリイソシアネート、(a2))、例えばIPDI3N(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート)、HDI3N(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート)、HXDI3N(水添キシレンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート)、NBDI3N(ノルボルナンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート)等が挙げられる。さらに、上記イソシアネート化合物のビュレット体や上記イソシアネート化合物と各種ポリオールとのウレタン化反応によって得られるアダクト体も使用できる。特に耐熱性やTG等熱的物性や溶剤溶解性の面で、2官能イソシアネートモノマー(a1)とイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)との併用、あるいはイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)の単独使用が好ましい。
【0013】
また、系の非結晶性を損なわない範囲で芳香族のイソシアネート類(a3)も併用可能であるが、その量としては、全イソシアネート化合物の30%以下、特に20%以下が好ましい。すなわち、W‐NC0(全イソシアネート化合物(重量))=W(a1)+W(a2)+W(a3)、ただし、W(a1)、W(a2)、W(a3)は、(a1)、(a2)、(a3)それぞれの重量、芳香族のイソシアネート類の使用範囲(重量割合)は、好ましくはW(a3)/{W(al)+W(a2)+W(a3)}≦0.3であり、特に好ましくはW(a3)/{W(a1)+W(a2)+W(a3)}≦0.2である。かかる芳香族のイソシアネート類の代表例としては、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等挙げられる。同様にこうしたイソシアネートモノマーの一種類以上のビュレット体、またはヌレート体等のポリイソシアネート原料も使用可能であり、さらに上記イソシアネート化合物と各種ポリオールとのウレタン化反応によって得られるアダクト体も使用できる。
【0014】
本発明では、上述のイソシアネート化合物と特定の酸無水物から直接イミド結合を形成させることにより、安定性等に問題のあるポリアミック酸中間体を経ずに、再現性良く、溶解性の良好な樹脂系を合成できる。
【0015】
本発明に使用されるトリカルボン酸無水物(b1)及び/又はテトラカルボン酸無水物(b2)としては、芳香族系の酸無水物化合物が好ましい。具体的には、無水トリメリット酸、ナフタレン−1,2,4−トリカルボン酸無水物等のトリカルボン酸無水物;ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノン−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ベンセン−1,2,3,4−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−3,3’4,4’−テトラカルボン酸二無水物、ビフェニル−2,2’3,3’−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,2,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、4,8−ジメチル−1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロナフタレン−1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,7−ジクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−テトラクロロナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フェテントレン−1,3,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ベリレン−3,4,9,10−テトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,3−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物等の分子内に芳香族有機基を有するテトラカルボン酸の無水物が挙げられ、これらを1種又は2種以上を用いることが可能である。また、トリカルボン酸の無水物とテトラカルボン酸の無水物を混合して使用してもよい。また場合により、2官能のジカルボン酸化合物、例えばアジピン酸、セバシン酸、フタル酸、フマル酸、マレイン酸及びこれらの酸無水物等を併用することも可能である。
【0016】
分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物(a)と、トリカルボン酸無水物(b1)及び/又はテトラカルボン酸無水物(b2)とを反応させて、本発明のカルボキシル基含有アミドイミド樹脂及び/又はカルボキシル基含有イミド樹脂を得る場合には、窒素原子及び硫黄原子を含有しない極性溶剤中で反応させることが好ましい。窒素原子及び硫黄原子を含有した極性溶剤が存在すると、環境上の問題が生じやすく、またかかるイソシアネート化合物とトリカルボン酸無水物(b1)及び/又はテトラカルボン酸無水物(b2)との反応に於いて、分子の成長が妨げられやすくなる。かかる分子の切断は、組成物とした場合に物性が低下しやすく、さらに「はじき」等の塗膜欠陥が生じやすくなる。
【0017】
本発明において、窒素原子及び硫黄原子を含有しない極性溶剤は、非プロトン性溶剤であることがより好ましい。例えばクレゾール系溶剤は、プロトンを有するフェノール性溶剤であるが、環境面でやや好ましくなく、イソシアネート化合物と反応して分子成長を阻害しやすい。また、クレゾール溶剤は、イソシアネート基との反応を起こしブロック化剤となりやすい。したがって、熱硬化時に他の硬化成分(例えばエポキシ樹脂など)と反応することで良好な物性が得られ難い。さらにブロック化剤がはずれる場合、使用機器や他の材料の汚染を起こしやすい。またアルコール系溶剤については、イソシアネートあるいは酸無水物と反応するため好ましくない。非プロトン性溶剤としては、例えば水酸基を有さないエーテル系、エステル系、ケトン系等の溶剤が挙げられ、このうち水酸基を有さないエーテル系溶剤が特に好ましい。
【0018】
本発明において、窒素原子及び硫黄原子を含有しない極性溶剤は、エーテル系溶剤であることがより好ましい。エーテル系溶剤は、弱い極性を有し、上述の分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物(a)と、トリカルボン酸無水物(b1)及び/又はテトラカルボン酸無水物(b2)との反応において優れた反応場を提供する。かかるエーテル系溶剤としては、公知慣用のものが使用可能であるが、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;あるいは低分子のエチレン−プロピレン共重合体の如き共重合ポリエーテルグリコールのジアルキルエーテルや、共重合ポリエーテルグリコールのモノアセテートモノアルキルエーテル類;あるいはこうしたポリエーテルグリコールのアルキルエステル類;ポリエーテルグリコールのモノアルキルエステルモノアルキルエーテル類などである。
【0019】
分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物(a)と、トリカルボン酸無水物(b1)及び/又はテトラカルボン酸無水物(b2)とを反応させる場合は、脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物(a)のイソシアネート基のモル数(N)と、トリカルボン酸無水物(b1)及び/又はテトラカルボン酸無水物(b2)のカルボキシル基のモル数(M1)及び酸無水物基モル数(M2)が以下の式を満足させることが好ましい。3>((M1)+(M2))/(N))>1.1。特に好ましくは、2>((M1)+(M2))/(N))>1.2である。このとき、カルボキシル基のモル数(M1)と酸無水物基モル数(M2)の和が、イソシアネート基のモル数(N)より過剰となるように配合すると、反応系中の極性が高くなり反応が潤滑に進行する。上記比率をはずれた場合、例えば1.1以下の場合は、イソシアネート基が残存し安定性等がやや悪くなる傾向がある。また3以上の場合は、酸無水物含有化合物が残存し再結晶等の分離の状態になりやすくなる。
【0020】
テトラカルボン酸無水物(b2)とトリカルボン酸無水物(b1)の配合割合((b2)/(b1))は、0〜2の割合であることが好ましい。テトラカルボン酸無水物(b2)の配合割合がこの範囲を超えて大きい場合は、イミド結合の濃度が上昇し溶剤溶解性や非結晶性が必ずしも十分でなくなる場合がある。
【0021】
本発明のカルボキシル基含有アミドイミド樹脂、カルボキシル基含有イミド樹脂の酸価は、60〜200KOHmg/gであることが好ましく、80〜180KOHmg/gであることが特に好ましい。60〜200KOHmg/gであれば、硬化物性として優れた性能を発揮する。
【0022】
分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物(a)が、イソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)を含んでなる組成で構成された場合、さらに優れた硬化物性や溶解性の性能を示し好ましい。具体的には、ジイソシアネートモノマー(a1)とイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)の重量割合がW(a1)/W(a2)が0〜0.5、特に0〜0.3であるとき優れた性能を発揮し好ましい。W(a1)/W(a2)=0の場合は、イソシアネート成分がすべてイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)であることを意味し、上記テトラカルボン酸無水物(b2)とトリカルボン酸無水物(b1)のモル比((b2)/(b1))が0〜1の範囲で合成が可能である。
【0023】
イミド化反応は、溶剤中あるいは無溶剤中で、イソシアネート化合物(a)の一種類以上と、トリカルボン酸無水物(b1)及び/又はテトラカルボン酸無水物(b2)のl種以上とを混合し、撹拌を行いながら昇温して行うことが好ましい。反応温度は、好ましくは50℃〜250℃、特に好ましくは70℃〜180℃である。反応温度が低い場合は反応速度が遅くなりやすく、また反応温度が高い場合は副反応や分解等が起こりやすい。反応は、脱炭酸を伴いながら無水酸基とイソシアネート基がイミド基を形成する。反応の進行は、赤外スベクトルや、酸価、イソシアネート基の定量等の分析手段により追跡することができる。赤外スペクトルでは、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が反応とともに減少し、さらに1860cm-1と850cm-1に特性吸収を有する酸無水物基が減少する。一方725cm-1と1780cm-1と1720cm-1にイミド基の吸収が増加する。反応は、目的とする酸価、粘度、分子量等を確認しながら、温度を下げて終了させても良い。しかしながら、経時の安定性等の面からイソシアネート基が消失するまで反応を続行させることがより好ましい。また、反応中や反応後は、合成される樹脂の物性を損なわない範囲で、触媒、酸化防止剤、界面活性剤、その他溶剤等を添加してもよい。
【0024】
本発明の方法により得られるカルボキシル基含有アミドイミド樹脂、カルボキシル基含有イミド樹脂としては、例えば以下のものが挙げられる。
【0025】
(例1)脂肪族、脂環族ジイソシアネート類と芳香族トリカルボン酸無水物(b1)の反応により得られる(式1)で表されるイミド樹脂。
【0026】
【化1】

【0027】
(Raは、2価の脂肪族、脂環族ジイソシアネート類の残基を示す。nは、繰り返し単位で0〜30である。また、Rbは、以下の構造式(式2)または(式3)で示される構造単位である。
【0028】
【化2】

【0029】
【化3】

【0030】
(Rは、炭素数6〜20の置換基を有しても良い芳香族トリカルボン酸残基である。)Rcは、以下の構造式(式4)で示される構造単位である。
【0031】
【化4】

【0032】
(Rは、前記と同一である。))
【0033】
(例2)例1において芳香族トリカルボン酸無水物(b1)とテトラカルボン酸無水物(b2)を併用した場合、(式5)で表されるイミド樹脂。
【0034】
【化5】

【0035】
(Rb’は、上記(式2)、(式3)、又は以下の(式6)で表される構造単位であり、
【0036】
【化6】

【0037】
(Rは、炭素数6〜20の置換基を有していてもよい芳香族テトラカルボン酸無水物残基を示す。)Rc’は、上記(式4)、又は以下の(式7)、(式8)で表される構造単位のものであり、
【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
(Rは前記と同一である。)Ra及びnは前記と同一である。)
【0041】
(例3)脂肪族、脂環族のイソシアヌレート型トリイソシアネートと芳香族トリカルボン酸無水物(b1)の反応により得られる(式9)で表されるイミド樹脂。
【0042】
【化9】

【0043】
(Rdは、以下の(式10)で表される3価の有機基であり、
【0044】
【化10】

【0045】
(Raは前記と同一である。)Rb、Rc、nは前記と同一である。)
【0046】
(例4)脂肪族、脂環族のイソシアヌレート型トリイソシアネートと、芳香族トリカルボン酸無水物(b1)及びテトラカルボン酸無水物(b2)との反応により得られる(式11)で表されるイミド樹脂。
【0047】
【化11】

【0048】
(Rb’、Rc’、Rdは前記と同一である。)
【0049】
また、ジイソシアネート化合物とイソシアヌレート型トリイソシアネートを併用した場合は、上記(式1)と(式9)の複合の構造を有することになり、その末端構造としては、(式1)でのRc−Ra−と(式9)での(Rc)−Rd−の構造が分子末端に存在する。また、主鎖骨格の構造も(式1)での−Ra−Rb−の単位と(式9)での−Rd(Rc)−Rb−の構造が存在する。さらに非結晶性や溶解性を損なわない程度に芳香族イソシアネート化合物を併用することが可能であるが、その場合は、上記式中のRaが一部2価の芳香族基となる。
【0050】
本発明の硬化性アミドイミド樹脂組成物、硬化性イミド樹脂組成物は、前記カルボキシル基含有アミドイミド樹脂及び/又はカルボキシル基含有イミド樹脂((A)成分)と、分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物((B)成分)を含んでなるものである。(B)成分としては、公知慣用のエポキシ樹脂を使用することが可能である。また、(B)成分は、軟化点50℃以上であることが特に好ましい。軟化点が50℃以上であれば、硬化性アミドイミド樹脂組成物、硬化性イミド樹脂組成物の物性がより優れたものとなる。
【0051】
かかるエポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールS型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンと各種フェノール類とを反応させて得られる各種ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のエポキシ化物、2,2’,6,6’−テトラメチルビフェノールのエポキシ化物、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノール)のエポキシ化物、ナフトールやビナフトールあるいはナフトールやビナフトールのノボラック変性等ナフタレン骨格から誘導されたエポキシ、フルオレン骨格のフェノール樹脂をエポキシ化して得られるエポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂等が挙げられる。またネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテルのごとき脂肪族エポキシ樹脂や、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、ビス−(3,4−エポキシビシクロヘキシル)アジペートのごときシクロヘキセンを酸化させてえられる脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートのごときヘテロ環含有のエポキシ樹脂も使用可能である。
【0052】
また、(メタ)アクリロイル基やビニル基等重合性不飽和二重結合を有するエポキシ化合物の不飽和基を重合させて得られるエポキシ基含有重合系樹脂及びその他の重合性不飽和結合を有するモノマー類との共重合体も使用可能である。
【0053】
かかる(メタ)アクリロイル基とエポキシ基を併せ持つ化合物として、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、4−ヒドロキジブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、5−ヒドロキシ−3−メチルペンチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、ラクトン変成(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、ビニルシクロヘキセンオキシドなどが挙げられる。
【0054】
上述の(A)成分と(B)成分は、各種目的とする物性に対応して自由に配合することが可能であるが、TG等の熱的物性、耐水性、機械物性等の面で(A)成分のカルボキシル基のモル数n(COOH)と(B)成分のエポキシ基のモル数n(EPOXY)が、4>n(EPOXY)/n(COOH)>0.8の範囲で配合されることが好ましい。n(EPOXY)/n(COOH)が4以上の場合は硬化塗膜の特性としてTGが得られにくく、また0.8以下の場合は耐水性等で問題を生じる場合がある。
【0055】
熱硬化させる場合は、エポキシ−カルボン酸系の硬化触媒等の併用を行っても良い。かかるエポキシ‐カルボン酸系硬化触媒としては、反応促進のための第1級から第3級までのアミンや第4級アンモニュウム塩、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物類等の窒素系化合物類、TPP(トリフェニルホスフィン)、アルキル置換されたトリアルキルフォニルホスフィン等のフォスフィン系化合物やその誘導体、これらのフォスホニュウム塩、あるいはジアルキル尿素類、カルボン酸類、フェノール類、またはメチロール基含有化合物類などの公知のエポキシ硬化促進剤等が挙げられ、これらを少量併用する事が可能である。
【0056】
また、(A)成分と(B)成分とを含んでなる硬化性アミドイミド樹脂組成物及び/又は硬化性イミド樹脂組成物は、被塗装物に塗装、キャスティング等施した後に、加熱により硬化させることができる。硬化温度は、80℃〜300℃、特に120℃〜250℃が好ましい。また、各種温度でのステップ硬化を行っても良い。また、50℃〜120℃程度の温度で半硬化させたシート状あるいは塗膜状の組成物を貯蔵して、必要な時に上述の硬化温度にて処理を施してもよい。(A)成分と(B)成分との硬化反応は、基本的にカルボキシル基とエポキシ基との反応であり、かかる(A)成分と(B)成分の種類や配合割合、硬化条件等を選択することにより、優れた物性等を有する硬化性アミドイミド樹脂組成物及び/又は硬化性イミド樹脂組成物を得ることができる。本発明の硬化性アミドイミド樹脂組成物、硬化性イミド樹脂組成物には、必要に応じて、その他溶剤、各種レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、沈降防止剤、レオロジーコントロール剤等の各種添加剤や、硫酸バリウム、酸化ケイ素、タルク、クレー、炭酸カルシウム、シリカ、コロイダルシリカ、ガラスなどの公知慣用の充填剤、各種金属粉末、ガラス繊維やカーボンファイバー、ケブラー繊維等の繊維状充填剤など、あるいはフタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラック、シリカなどの公知慣用の着色用顔料、その他密着性付与剤類等を配合してもよい。また必要に応じてアクリル樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニル樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルスルフォン等ポリマーを配合することも可能である。
【実施例】
【0057】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
(合成例1)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート)1496部、IPDI(イソホロンジイソシアネート)888部(4mol)及び無水トリメリット酸960部(5mol)を加え、160℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で4時間反応させた。系内は薄茶色のクリア液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、725cm-1、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で85KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量1600であった。この樹脂をX1とする。
【0059】
(合成例2)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにPGMAC(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)1464部、IPDI(イソホロンジイソシアネート)888部(2mo1)、NBDI(ノルボルナンジイソシアネート)412部(2mol)及び無水トリメリット酸960部(5mol)を加え、130℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で4時間反応させた。系内は薄茶色のクリア液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、725cm-1、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で90KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量1500であった。この樹脂をX2とする。
【0060】
(合成例3)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート)1496部、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=18.2)2760部(4mol)及び無水トリメリット酸1728部(9mol)を加え、150℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で8時間反応させた。系内は薄茶色のクリア液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、725cm-1、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で95KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量4100であった。この樹脂をX3とする。
【0061】
(合成例4)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート)4416部、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=18.2)2760部(3mol)、H6XDI(水添キシレンジイソシアネート)192部(1mol)、無水トリメリット酸1728部(8mol)及び無水ピロメリット酸218部(lmol)を加え、150℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で8時間反応させた。系内は薄茶色のクリア液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、725cm-1、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で105KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量5900であった。この樹脂をX4とする。
【0062】
(合成例5)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート)4254部、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート:NC0%=18.2)2070部(3mol)、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)250部(1mol)及び無水トリメリット酸1728部(8mol)を加え、150℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で8時間反応させた。系内は茶色のクリア液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、725cm-1、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で85KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量4100であった。この樹脂をX5とする。
【0063】
(合成例6)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート)3786部、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート:NC0%=18.2)2076部(3mol)、HDI3N(ヘキサメチレンジイソシアネート:NC0%=24.7)510部(lmol)及び無水トリメリット酸の1728部(9mol)を加え、150℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で8時間反応させた。系内は茶色のクリア液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、725cm-1、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で120KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量5100であった。この樹脂をX6とする。
【0064】
(合成例7)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート)2384部、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=18.2)1398部(2mol)、無水トリメリット酸768部(4mol)及び無水ピロメリット酸218部(lmo1)を加え、120℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で8時問反応させた。系内はオレンジ色のクリア液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、725cm-1、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された。酸価は、固形分換算で140KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量2800であった。この樹脂をX7とする。
【0065】
(合成例8)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート)2488部、IPDI3N(イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート型トリイソシアネート:NCO%=18.2)1398部(2mo1)、無水トリメリット酸768部(4mo1)及びベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物(BPDA)322部(lmol)を加え、120℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行した。この温度で8時間反応させた。系内はオレンジ色のクリア液体となり、赤外スペクトルにて特性吸収を測定した結果、イソシアネート基の特性吸収である2270cm-1が完全に消滅し、725cm-1、1780cm-1、1720cm-1にイミド基の吸収が確認された.酸価は、固形分換算で140KOHmg/gで、分子量はポリスチレン換算で数平均分子量2900であった。この樹脂をX8とする。
【0066】
〈比較合成例1)撹伴装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノメチルエニテルアセテート)2210部、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)1250部(4mol)及びTMA(無水トリメリット酸)960部(5mol)を加え、150℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行したが、約1時間後よりフラスコ壁に非溶解成分が多量に発生し、約2時間後には内容物がすべて固化し、撹拌が出来なくなった。内容物を粉砕して取り出したこの樹脂をY−1とする。
【0067】
(比較合成例2)撹拌装置、温度計、コンデンサーを付けたフラスコにEDGA(ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート)1742部、TDI(トリレンジイソシアネート)870部(5mol)及びPMDA(無水ヒロメリット酸)872部(4mol)を加え、150℃まで昇温した。反応は、発泡とともに進行したが、約1時間後よりフラスコ壁に非溶解成分が多量に発生し、約2時間後には内容物がすべて固化し、撹拌が出来なくなった。内容物を粉砕して取り出したこの樹脂をY−2とする。
【0068】
合成後の各樹脂の外観を、透明液体である場合を○、固体化したものを×として評価した。さらに、各樹脂サンプルをガラス基板に塗装し、その外観を、均一に塗装された場合を○、はじきやクレーター等の塗装欠陥を生じた場合を×として評価した。以上の合成例、比較合成例に示される樹脂の配合、特性値、上記評価結果等を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
a1:ジイソシアネートモノマーのモル数(mol)
a2:イソシアヌレート型ポリイソシアネートのモル数(mol)
a3:芳香族系イソシアネートのモル数(mol)
N:系中の全イソシアネート基のモル数(mol)
b1:トリカルボン酸無水物のモル数(mol)
b2:テトラカルボン酸無水物のモル数(mol)
M1:カルボキシル基のモル数(mol)
M2:酸無水物基のモル数(mol)
M1+M2:カルボキシル基のモル数+酸無水物基のモル数(mol)
(M1+M2)/N:(カルボキシル基のモル数+酸無水物基のモル数(mol))/系中の全イソシアネート基のモル数(mol)
W(a1/a2):ジイソシアネートモノマーとイソシアヌレート型ポリイソシアネートのモル数(mol)
W{a3/(a1+a2+a3)}:使用したイソシアネート原料中の芳香族イソシアネート使用量の重量%
b2/b1:テトラカルボン酸無水物(mol)/トリカルボン酸無水物(mol)
IPDI:イソホロンジイソシアネート
NBDI:ノルボヌレンジイソシアネート
HXDI:水添キシレンジイソシアネート
IPDI3N:イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート3量体
HDI3N:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート3量体
MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
TDI:トリレンジイソシアネート
TMA:トリメリット酸無水物
PMDA:ピロメリット酸2無水物
BPDA:ベンゾフェノンテトラカルボン酸2無水物
AN:酸価(KOHmg/g)
MN:数平均分子量(ポリスチレン換算)
EDGA:ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGMAC:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
DMF:ジメチルホルムアミド
【0071】
実施例1〜8及び比較例1、2
上記合成例及び比較合成例で得られた樹脂を用い、表2に示す配合で、して、硬化性アミドイミド樹脂組成物、硬化性イミド樹脂組成物を調整した。
【0072】
【表2】

【0073】
イミド樹脂の配合量:固形分重量
N680:オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂 軟化点80℃ エポキシ当量=212g/eq
TPP:トリフェニルフォスフィン(硬化触媒)
HP7200:ジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂 軟化点62℃ エポキシ当量=264g/eq(大日本インキ(株)製)
EXA4700:ナフタレンノボラック型エポキシ樹脂 軟化点93℃ エポキシ当量=163g/eq(大日本インキ(株)製)
N770:フェノールノボラック型エポキシ樹脂 軟化点70℃ エポキシ当量=187g/eq(大日本インキ(株)製)
EP850:ビスフェノールA型エポキシ樹脂 エポキシ当量=188g/eq
TD2090:フェノールノボラック型エポキシ樹脂 軟化点120℃ 水酸基当量=105g/eq
表2における配合は、重量換算値であり、かつ固形分の配合量を示す。実際の配合においては、塗装できる粘度までEDGAにて希釈を行った。
【0074】
試験例1(外観評価)
上記実施例及び比較例で得られた硬化性アミドイミド樹脂組成物、硬化性イミド樹脂組成物を、ガラス基板上に硬化後の膜厚が70〜80ミクロンになるように塗装を行った。次いでこの塗装板を120℃の乾燥機で20分乾燥した後、150℃で1時間硬化させ、硬化塗膜の外観を判定した。結果を表3に示す。
評価基準
◎:均一で異物等が見られない。
×:はじきや、異物、不溶解物が確認できる。
【0075】
試験例2(TG、引っ張り試験)
TG、引っ張り試験用試験片の作成
上記実施例及び比較例で得られた硬化性アミドイミド樹脂組成物、硬化性イミド樹脂組成物を、硬化後の膜厚が70〜80ミクロンになるように、ブリキ基板上に塗装を行った。次いでこの塗装板を120℃の乾燥機で20分乾燥した後、150℃と170℃で1時間硬化させた2水準の硬化塗膜を作成した。室温まで冷却した後、硬化膜を所定の大きさに切り出し、基板から単離して測定用試料とした。これらを以下の方法で測定した。結果を表3に示す。
【0076】
TG測定方法
動的粘弾性を測定し、得られたスペクトルのTanδの最大の温度をTGとした。尚、動的粘弾性は、以下の条件で測定した。
測定機器:レオバイブロンRSA−II(レオメトッリク社製)
治具:引っ張り
チャック間:20mm
測定温度:25℃〜300℃
測定周波数:1HZ
昇温速度:3℃/min
【0077】
引っ張り試験測定方法
測定機器:テンシロン(東洋ボールドウィン社製)
サンプル形状:10mX70mm
チャック間:20mm
引っ張り速度:10mm/min
測定雰囲気:22℃、45%RH
【0078】
試験例3(PCT(プレッシャークッカー)耐性試験、半田耐熱試験)
PCT耐性試験、半田耐熱試験用サンプルピース作成
上記実施例及び比較例で得られた硬化性アミドイミド樹脂組成物、硬化性イミド樹脂組成物を、予めエッチングした銅回路パターン形成したガラスエポキシ系プリント基板上に、硬化後の膜厚が70〜80ミクロンになるように塗装を行った。次いでこの塗装板を120℃の乾燥機で20分乾燥した後、170℃で1時間硬化させてテストピースを作成した。これらを以下の方法で測定した。結果を表3に示す。
【0079】
PCT耐性試験方法
PCT試験機(株式会社平山製作所PC−304RllI)121℃、100%RH(飽和蒸気圧下)で50時間の処理を行い、室温状態にもどした後、外観の変化を目視にて行い、付着性についてクロスカットのセロテープ(登録商標)剥離試験を行った。外観については以下の基準で評価を行った。
◎:PCT試験前と全く変化が見られない。
○:PCT試験前とほぼ変化が見られない。
△:一部にブリスター等が見られる。
×:全面にブリスターあるいは白化、溶解等が発生している。
【0080】
半田耐熱試験方法
JlS C−6481の試験法に準じ作成されたテストピースを、260℃の半田浴に10秒フローさせるのを1サイクルとして、3サイクル行った。塗膜の膨れ等の異常と密着性を、以下の基準で総合評価した。
◎:全く変化が見られない。
○:ほぼ変化が見られない。
△:一部に欠陥や剥離等が見られる。
×:全面に塗膜欠陥や剥離等が発生している。
【0081】
【表3】

【0082】
TG:ガラス転移温度(℃)
破断強度:MPa
破断伸度:%
【0083】
表3の結果から明らかなように、実施例はすべて汎用の溶剤に溶解しており、硬化後に優れた外観や作業性を有している。比較例1、2に見られるように、イソシアネート分として全量芳香族系イソシアネートを使用したものは、溶剤に溶解せず、固化し、エポキシとの配合では、相溶しなかった。塗装外観は不良であり、以後の物性評価を行う試料が作成できなかった。実施例の硬化塗膜は、非常に高いTGを示し、特にいずれも硬化温度以上のガラス転移点を有しており、低温においても耐熱性を発揮できうる材料といえる。また、PCT耐性や半田耐熱試験においても非常に高い耐性を有している。一方、比較例4、5の組成は、一般的な耐熱性塗膜を得るエポキシ/フェノール系の硬化システムであるが、実施例に比較して低いTGであった。また破断伸度やPCT耐性、半田耐熱性においても悪い結果であった。尚、比較例5は硬化塗膜が脆く、引っ張り試験用のサンプルの単離ができなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物(a)と、トリカルボン酸無水物(b1)及び/又はテトラカルボン酸無水物(b2)とを、窒素原子及び硫黄原子を含有しない極性溶剤中で反応させることにより、カルボキシル基若しくは酸無水物基含有アミドイミド樹脂又はカルボキシル基若しくは酸無水物基含有イミド樹脂を製造する方法であり、前記極性溶剤がエーテル系溶剤であり、前記の分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物(a)がイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)を含むことを特徴とする樹脂の製造方法。
【請求項2】
カルボキシル基若しくは酸無水物基含有アミドイミド樹脂、カルボキシル基若しくは酸無水物基含有イミド樹脂の酸価が、60〜200KOHmg/gである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族イソシアネート化合物及び/又は脂環族イソシアネート化合物(a)が、ジイソシアネートモノマー(a1)及びイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)から構成されるか、あるいはイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)のみから構成され、かつジイソシアネートモノマー(a1)とイソシアヌレート型ポリイソシアネート(a2)との重量割合((a1)/(a2))が、0〜0.5であることを特徴とする請求項1又は2記載の製造方法。

【公開番号】特開2010−156000(P2010−156000A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91343(P2010−91343)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【分割の表示】特願2000−132810(P2000−132810)の分割
【原出願日】平成12年5月1日(2000.5.1)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】