説明

樹脂基材表面への装飾皮膜の形成方法とその装飾皮膜を有する外装装飾部材

【課題】レーダ装置のレーダビーム経路内に配設される外装装飾部材において、高価なインジウムを使用することなく、インジウムより安価な金属を用いながら、インジウムを用いた場合と同等の金属光沢による優れた意匠性とレーダビーム透過性とを兼ね備えた装飾皮膜を形成する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】樹脂基材の表面に、300μm/h〜500μm/hの蒸着速度でアルミニウムを真空蒸着することにより、装飾皮膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ装置の経路内に配設させて用いられる樹脂基材表面上に、金属蒸着部からなる装飾皮膜を形成する方法と、該装飾皮膜を樹脂基材の表面に有する外装装飾部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オートクルーズシステムと呼ばれる、車両前方に搭載されているセンサによって前方車両と自車との車間距離や相対速度を測定し、この情報に基づいて、スロットルやブレーキを制御し、自車を加減速しながら車間距離をコントロールする技術が注目を集めている。このオートクルーズシステムに使用されるセンサとして、一般に、ミリ波レーダなどの電波レーダ装置が使用されている。
【0003】
図4に示すように、車両に装備されるレーダ装置100は、上述したように車両前方の位置に設けられ、その性能を発揮するために、一般に、フロントグリル101中央の背後に配置されることとなる。フロントグリル101中央には、車両製造会社のエンブレム102や該車両に特有な装飾品が装着されるのが一般的である。よって、レーダ装置から照射されるレーダビームは、フロントグリル101およびエンブレム102を透過して検出物に向かい、その検出物から戻ってきたレーダビームもまた、フロントグリル101およびエンブレム102を透過してレーダ装置に戻ることとなる。しかし、フロントグリル101は、意匠性を高めるために金属皮膜により光輝性をもたせたものであることが多く、その場合、その金属皮膜がレーダビームを遮断、又は減衰させるため、良好なレーダの感度を得ることが困難となる場合がある。
【0004】
このような事情から、レーダ装置が配置される箇所に対応するフロントグリルの部分に、レーダビームが透過可能な窓部が設けられる。フロントグリルに窓部が設けられることにより、レーダビームの出入りは容易となるが、その一方で、フロントグリルの外観が連続性を失うこととなり、また、この窓部より、車両の内側のレーダ装置やエンジンルームなどが目視可能となって、車両の外観が損なわれる恐れがある。
【0005】
その解決手段として、特許文献1には、プラスチックを複数層に積層し、前記プラスチックの外部から視認される部分に、インジウムからなる島状の金属蒸着部が不連続に存在する装飾皮膜を樹脂基材表面に有する外装装飾部材を、フロントグリルに形成した窓部に取り付けて窓部を被覆することが記載されている。そのような外装装飾部材を用いることにより、外装装飾部材中にもフロントグリルのフィン部材が連続して存在しているような印象を与えることができ、レーダビームの出入りは可能でありながら、窓部とフロントグリル本体とに一体感をもたせることができる。
【0006】
上記のように、従来、レーダ装置のレーダビーム経路内に配設される外装装飾部材において、装飾皮膜として蒸着される金属としては、電波透過性が比較的高いインジウムが一般的に用いられている。
【0007】
ところで、金属の蒸着処理では、どんな金属であっても、蒸着初期には、基材の表面に一様な膜状に形成されるのではなく、微細な島状に形成される。そして、外観上、金属光沢をもつ、と視認されるまで蒸着を続けると、ほとんどの金属の場合、各々の島状の蒸着部は成長して大きくなり、また島状の蒸着部同士が相互に連続した状態となることにより、基材の表面のほとんどが金属蒸着部で覆われ、何も蒸着されていない非蒸着部がほとんどない状態となる。すなわち、島状の蒸着部が連続構造となった装飾皮膜が形成される。
【0008】
それに対して、インジウムは、外観上、金属光沢をもつ、と視認されるまで蒸着を続けた場合でも、基材の表面はインジウムが蒸着された微細な島状の蒸着部と、何も蒸着されていない非蒸着部とが混在した装飾皮膜、すなわち、インジウムによる島状の蒸着部が不連続に存在する装飾皮膜が形成される。そして、レーダビームのほとんどは前記非蒸着部を透過して出入りする。つまり、基材の表面に形成されたインジウムの蒸着層は、金属光沢による優れた意匠性とレーダビーム透過性の両方を兼ね備えることができる。しかしながら、蒸着金属としてインジウムを用いる場合、インジウムは高価であることから、原料コストが高くなるという問題を内在している。
【0009】
特許文献2には、電波透過性を有する外装装飾部材において、樹脂基材の表面に第1膜として、インジウムを蒸着し、該第1膜を空気に触れさせて改質させた表面に、第2膜として、インジウム以外の金属、例えばクロムを蒸着することによって前記した形態の装飾皮膜を形成することが記載されている。この形成方法を採用することにより、高価なインジウムの使用量を低減することができる。
【0010】
また、特許文献3には、電波レーダユニットの前方に配設される車両の外装装飾部材において、前記した装飾皮膜を形成する蒸着金属としてインジウムの他に、電波透過性が比較的高い、クロム、錫、アルミニウム及び金を用い得ることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−159039号公報
【特許文献2】特開2007−162125号公報
【特許文献3】特開2008−24254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
レーダ装置のレーダビーム経路内に配設される外装装飾部材において、特許文献2に記載の技術を採用することにより、インジウムの使用量が低減されると同時に、樹脂基材上に金属光沢による優れた意匠性とレーダビーム透過性を有する装飾皮膜が形成することができる。しかし、少ないながらも、インジウムを使用している以上、コスト低減には限界がある。また、2段階に分けて蒸着を行っていることで、生産効率の低下も懸念される。
【0013】
特許文献3では、電波レーダユニットの前方に配設された車両の外装装飾部材の装飾皮膜を形成する蒸着金属としてインジウム以外に、クロム、錫、アルミニウム及び金を用い得るとの記載があるが、それ以上の記載、すなわち、蒸着方法など、具体的な処理態様については、記述がなされていない。
【0014】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、レーダ装置のレーダビーム経路内に配設される外装装飾部材を形成するに際し、高価なインジウムを使用することなく、インジウムより安価な金属を用いながら、インジウムを用いた場合と同等の金属光沢による優れた意匠性とレーダビーム透過性とを兼ね備えた装飾皮膜を形成することを可能とする、より改良された樹脂基材表面への装飾皮膜の形成方法を提供することを目的とする。また、インジウムより安価な金属を用いながら、インジウムを用いた場合と同等の金属光沢による優れた意匠性とレーダビーム透過性とを兼ね備えた装飾皮膜を有する、レーダ装置のレーダビーム経路内に配設される外装装飾部材を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明者らは、上記の課題を解決すべく、特許文献3などにおいて、電波レーダユニットの前方に配設される車両の外装装飾部材において、従来から使用可能であると提案されている、電波透過性が比較的高い、クロム、錫、アルミニウム及び金の中でも、特に、蒸着処理によって、島状の蒸着部が不連続に存在する、すなわち、不連続構造の装飾皮膜を形成しやすいと考えられるアルミニウムに注目し、従来知られているインジウムを蒸着する場合と同じ蒸着条件で樹脂基材上に蒸着する実験を行った。しかし、金属光沢による優れた意匠性を有する装飾皮膜は形成できなかった。
その理由は、次のように考えられる。すなわち、金属の蒸着処理においては、蒸着初期には基材上に金属の核が形成され、それが蒸着時間とともに成長していき、また、単位面積当たりに生じる前記金属の核の数は蒸着速度が小さいと少なく、蒸着速度が大きくなると増えていくことが知られている。
【0016】
図1(b)に示すように、蒸着速度が小さいときには、基材1に形成される金属の核20の数は少なく、金属の核20は隣同士が大きく離れて形成される。金属の核20は時間とともに成長し、島状の金属蒸着部21となる。この場合、島状の金属蒸着部21は隣同士が大きく離れて形成され、島上の金属蒸着部21間の金属非蒸着部22の部分が大きいので、装飾皮膜2は、金属光沢が低く、意匠性が悪いと視認される。
【0017】
逆に、蒸着速度が大きいときには、図1(c)に示すように、基材1に形成される金属の核20の数が多くなり、金属の核20は、隣同士が接触するように形成されたり、又は、先にできた金属の核20の上に新たに金属の核20が形成されたりする。複数の金属の核20が接着することによって、複数の核だったものが、1つの核となり、その核自体が島状の金属蒸着部21となったり、または、金属の核20が成長した、島状の金属蒸着部21同士が接触して1つの金属蒸着部21となったりする。結果として、金属蒸着部21同士が接着するくらいに密に形成された、連続構造に近い装飾皮膜2となる。この形態の装飾皮膜2は、金属光沢が高く、意匠性に優れていると視認される。しかし、この場合、金属蒸着部21の間に金属非蒸着部が存在しないことから、レーダビームの透過が困難となり、透過減衰量が非常に大きくなる。
【0018】
すなわち、レーダ装置のレーダビーム経路内に配設される外装装飾部材が有する装飾皮膜を形成するにあたって、前記外装装飾部材が、金属光沢による優れた意匠性と、必要となるレーダビームの透過性とを両立するためには、蒸着金属の種類に依存する適切な蒸着速度範囲があり、アルミニウムについて、この蒸着速度の適正な範囲を見出すことにより、前記課題を解決できると考えた。
【0019】
そこで、アルミニウムの蒸着速度を種々変更して、樹脂基材の表面に装飾皮膜を形成する実験を行い、レーダ装置のレーダビーム経路内に配設させて用いられる樹脂基材上にアルミニウムによる装飾皮膜を形成するのに最適な蒸着速度を見出し、本発明を完成するに至った。
【0020】
すなわち、本発明の樹脂基材表面への装飾皮膜の形成方法は、レーダ装置のレーダビーム経路内に配設させて用いられる樹脂基材の表面に、金属蒸着部が不連続に存在する装飾皮膜を形成する方法であって、蒸着金属として、アルミニウムを用い、前記樹脂基材にアルミニウムを300μm/h〜500μm/hの蒸着速度で蒸着させることを特徴とする。上記の形成方法において、より好ましくは、前記蒸着速度を300μm/h〜450μm/hとする。また、上記の形成方法において、好ましくは、装飾皮膜の厚さが1〜5μmとなるようにする。
【0021】
また、本発明は、上記の形成方法で形成された装飾皮膜を樹脂基材の表面に有する外装装飾部材も開示する。
本発明の外装装飾部材は、樹脂基材表面に島状のアルミニウム蒸着部が不連続に存在する装飾皮膜を有する、レーダ装置のレーダビーム経路内に配設される外装装飾部材であって、装飾皮膜を形成する金属蒸着部の厚さが1〜5μmであり、島状に蒸着されたアルミニウム蒸着部が前記樹脂基材に占める密度(島密度)が40個/μmであり、ミリ波透過減衰量が2dB以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明による樹脂基材表面への装飾皮膜の形成方法によると、コストを下げて、かつ先行特許文献2に示すような2段階蒸着に比べてより簡易な形成方法によって、金属光沢による優れた意匠性と高いレーダビーム透過性を両立できる装飾皮膜を樹脂基材の表面に形成することができる。また、そのようにして形成された装飾皮膜を樹脂基材の表面に有する外装装飾部材を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】樹脂基材の表面に形成される装飾皮膜の構造を示した外装装飾部材の模式的な拡大断面図である。
【図2】本願の実施例での蒸着速度とミリ波透過減衰量の関係を示したグラフである。
【図3】本願の実施例での蒸着速度と島密度の関係を示したグラフである。
【図4】車両前方のフロントグリルおよびエンブレムと、車両内部に配置されたレーダ装置の配置関係を示した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明による樹脂基材表面への装飾皮膜の形成方法について、実施の形態に基づいて説明する。
図1(a)は、本発明の形成方法によって形成された島状の金属蒸着部が不連続に存在する、すなわち不連続構造の装飾皮膜を有する外装装飾部材の一例の模式的な拡大断面図であり、1は樹脂基材を、2はアルミニウムからなる装飾皮膜を示す。20〜22は、装飾皮膜2を形成している各要素を示しており、20は蒸着初期に形成されるアルミニウムの核、21はアルミニウムの核が時間とともに成長することによって形成される島状のアルミニウム蒸着部、22は島状のアルミニウム蒸着部間のアルミニウム非蒸着部を示す。
【0025】
樹脂基材としては、特に限定されないが、熱可塑性樹脂が好ましく、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等の板材、シート材、フィルム材が例示できる。中でも、ポリカーボネートは、耐候性の理由から好ましい。樹脂基材1の表面には、予め装飾皮膜の下地となる従来公知の下地膜が形成されていてもよいし、形成されていなくてもよい。
【0026】
前記樹脂基材1の上、又は前記下地膜の上に300μm/h〜500μm/hの蒸着速度でアルミニウムを真空蒸着することで、前記した不連続構造の装飾皮膜2が形成される。蒸着方法には特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。蒸着速度は、電圧・電流を変更することによって変更できる。後の実施例に示すように、蒸着速度は400μm/h前後であることは好ましく、蒸着速度が300μm/h未満の場合には、金属光沢が低く、意匠性が悪いといった不都合があり、500μm/hを超える場合には、レーダビームの透過性が悪いといった不都合があって、いずれも好ましくない。
【0027】
本発明において、装飾皮膜の膜厚は特に限定されないが、1〜5μmが好ましい。1μm未満では、光輝性が低下する傾向となり、5μmを超えると、レーダビームの透過性を損なう傾向となるからである。なお、膜厚は、蒸着速度と時間とを選択することで、適宜設定することができる。
【0028】
また、本発明の外装装飾部材においては、ミリ波透過減衰量が2dB以下であり、かつ、装飾皮膜の金属光沢を満足するために、島状のアルミニウム蒸着部の島密度が40個/μm以上であることが好ましい。ミリ波透過減衰量は2dB以下であっても、島密度が40個/μm未満では、樹脂基材表面上における島状のアルミニウム蒸着部が占める割合が低く、この場合には、金属光沢を満足しない恐れがあるので好ましくない。島密度が40個/μm以上であって金属光沢を満足している場合であっても、ミリ波透過減衰量が2dBを超えるものは、本発明の外装装飾部材として、好ましくない。この態様は、1個当たりの島状のアルミニウム蒸着部が大きくなりすぎて、非蒸着部の面積が少なくなる場合に、起こり得る。
【0029】
本発明の装飾皮膜の形成方法によって形成された装飾皮膜を有する外装装飾部材は、従来のインジウムを用いた場合と同様に、レーダビーム透過性がよく、金属光沢による意匠性が高いため、車両のレーダビーム透過カバーとして使用が可能である。また、金属として安価なアルミニウムを採用しており、製造コストも低減する。前記透過カバーの具体的な適用部位としては、自動車のフロントグリル、エンブレム等が挙げられる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例と比較例を示す。
[実施例1〜4及び比較例1〜8]
板厚1mmの板状のポリカーボネート基材を用い、次の表1に示すとおり、実施例1〜4及び比較例1〜8の蒸着速度で、アルミニウムによる膜厚2μmの装飾皮膜を成膜し、装飾皮膜の島密度、ミリ波透過減衰量、および、色調(金属光沢)を調べた。
【0031】
蒸着条件は、アルバック機工社の真空蒸着装置を用い、加熱方式は電気加熱方式で、到達真空度1.3×10−4Pa以下とした。
【0032】
装飾皮膜の島密度は、装飾皮膜をSEMで観察し、500μm×500μmの範囲内にある島状のアルミニウム蒸着部の数を数え、1μmあたりの島状の蒸着数を島密度とした。
【0033】
ミリ波透過減衰量は、車載用のミリ波レーダの適用周波数である76.5GHzでのミリ波透過減衰量をヒューレットパッカード社のホーンアンテナを用いて測定した。色調は目視により、車両の外装装飾部材として、求められる金属光沢を満足するときはOK、金属光沢が不足するときはNGと判断した。
【0034】
【表1】

【0035】
[考察]
図2に、蒸着速度とミリ波透過減衰量の関係をグラフとして示した。グラフ中では、表1に示すように、実施例1〜4をA〜D、比較例1〜8をE〜Lと示した。良好なレーダ性能をもつとされるのは、ミリ波透過減衰量が2dB以下とされているが、2dB以下のミリ波透過減衰量のものは、A〜Iの条件のものだけだった。これに、表1の色調(金属光沢)の結果を加えてみると、300μm/h〜500μm/hの蒸着速度でアルミニウムを蒸着した場合のみ、金属光沢、ミリ波透過減衰量を共に満足する結果が得られることが分かる。
【0036】
図3に、蒸着速度と島密度の関係をグラフ化して示した。グラフにおいて、横軸は蒸着速度、縦軸は島密度である。グラフ中では、表1に示すように、実施例1〜4をA〜D、比較例1〜8をE〜Lと示した。蒸着速度400μm/hあたりまでは、蒸着速度に比例して、島密度は増加していくが、400μm/hを超えたあたりから、蒸着速度が大きくなっているにも関わらず、島密度が低下していく。特に、実施例1〜4では、最も少ない島密度で実施例1の42個/μm、最も多い島密度では実施例3の78個/μmとなっており、金属光沢(とミリ波透過性)を満足するためには島密度40個/μm以上が必要であると考えられる。
【0037】
これは、Iの速度範囲では、図1(b)に基づき、先に説明したようにして、IIの速度範囲では、図1(a)のような、IIIの速度範囲では図1(c)に基づき、先に説明したようにして、それぞれ装飾皮膜が形成されているからであると考えられる。すなわち、Iの速度範囲では、蒸着時に形成されるアルミニウムの核20の数が少ないため、アルミニウムの核20が時間とともに成長した島状のアルミニウム蒸着部21の数も少なく、島密度が低い。そのために、図3に示すように、ミリ波透過減衰量は2dB以下の条件は満足するが、良好な金属光沢は得られない。
【0038】
IIの速度範囲では、アルミニウムの核20が隣同士が接触しない程度に密に形成されるため、アルミニウムの核20が時間とともに成長した島状のアルミニウム蒸着部21の数が多く、島密度が高くなる。そのために、図3に示すように、ミリ波透過減衰量は2dB以下の条件と良好な金属光沢の双方を満足する。
【0039】
IIIの速度範囲では、アルミニウムの核20の数が多くなり、隣同士が接触、または、形成された核の上に新たに核が形成されるなどして、複数の核が接着して1つとなって、島状のアルミニウム蒸着部21を形成したり、アルミニウムの核20が成長した島状のアルミニウム蒸着部21同士が接触して1つとなったりすることにより、島状のアルミニウム蒸着部21の数が減少している。そのために、島密度は低下しているが、良好な金属光沢は得られるが、図3に示すように、ミリ波透過減衰量は2dB以下の条件を満足しないものとなる。
【符号の説明】
【0040】
1…樹脂基材
2…装飾皮膜 20…金属(アルミニウム)の核
21…島状の金属(アルミニウム)蒸着部 22…金属(アルミニウム)非蒸着部
100…レーダ装置 101…フロントグリル 102…エンブレム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダ装置のレーダビーム経路内に配設させて用いられる樹脂基材の表面に、金属蒸着部が不連続に存在する装飾皮膜を形成する方法であって、
前記樹脂基材にアルミニウムを300μm/h〜500μm/hの蒸着速度で蒸着させることを特徴とする樹脂基材表面への装飾皮膜の形成方法。
【請求項2】
レーダ装置のレーダビーム経路内に配設させて用いられる樹脂基材の表面に、金属蒸着部が不連続に存在する装飾皮膜を形成する方法であって、
前記樹脂基材にアルミニウムを300μm/h〜450μm/hの蒸着速度で蒸着させることを特徴とする請求項1記載の樹脂基材表面への装飾皮膜の形成方法。
【請求項3】
装飾皮膜を形成する金属蒸着部の厚さが1〜5μmとなるようにアルミニウムの蒸着処理を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂基材表面への装飾皮膜の形成方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の形成方法で形成された装飾皮膜を有する外装装飾部材。
【請求項5】
樹脂基材表面に島状のアルミニウム蒸着部が不連続に存在する装飾皮膜を有する、レーダ装置のレーダビーム経路内に配設される外装装飾部材であって、
装飾皮膜を形成する金属蒸着部の厚さが1〜5μmであり、島状に蒸着されたアルミニウム蒸着部が前記樹脂基材に占める密度(島密度)が40個/μm以上であり、ミリ波透過減衰量が2dB以下であることを特徴とする外装装飾部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−27434(P2011−27434A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170463(P2009−170463)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】