説明

樹脂成形体およびその製造方法

【課題】床材、壁材、柱、間柱、根太、または構造用合板に従来のねじを用いて容易かつ確実に弛み無く固定できる発泡体を内装した樹脂成形体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂成形体100は発泡体122を内装している。発泡体122にはその厚み方向に中空孔を有するねじ受け材125が挿入されている。該ねじ受け材の中空孔105には内面に突出する段部103を有する。該ねじ受け材は、該樹脂成形体の表面材を成す一方の樹脂壁内面と他方の樹脂壁内面に溶着するフランジ104を両端に備える。該ねじ受け材は、略円筒状の胴部を有しており、胴部には放射状に突出した回転止めが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形体およびその製造方法に関し、より詳細には、発泡体を内装した樹脂成形体をその厚み方向に中空孔を有するネジ受け材を介して固定することができるようにするもので、発泡断熱パネルの取り付けに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅をはじめとする建築物には、室内温度を快適に保ち、冷暖房効果を上げる目的や吸音性を上げる目的から、樹脂製発泡パネルを壁面・床面および天井面に取り付けることが行われており、樹脂製発泡パネルは、建築物の床材、壁材、柱や間柱、根太、それらに留め打ちされた構造用合板に直接釘ないしはねじによって固定されている。
【0003】
断熱パネルは発泡樹脂であるため、釘ないしはねじを打ち込むと圧縮されて挟まれるため、強固に固定することができなかったり、特に床下での使用では人がその上を繰り返し踏み渡るための繰り返し荷重により、経年によってその固定が緩むことがあった。
【0004】
例えば、特許文献1は、発泡樹脂層と熱可塑性樹脂層が一体成形された床パネルにおいて、床パネルの厚み方向に貫通したねじ穴を介して支持脚にねじで固定する構成が提案されている。また、特許文献2では、軟質材と硬質材が積層された断熱ボードの固定方法として二段ねじを用いて、軟質材にかかるねじ頭部と硬質材を固定するための固定頭部を利用して固定する方法を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−163758号公報
【特許文献2】特開平11−141002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1においては、圧縮剛性の低い発泡樹脂層を間に介してねじ止めしているため、強固に固定することが困難で、経年によるねじのゆるみが起こりやすい。また、特許文献2では、軟質材の厚みに対して、二段ねじの軟質材にかかるねじ頭部と硬質材を固定するための固定頭部の間隔が同じものを使用しなくてはならず、断熱ボードの厚みが変わる度に、それに対応する二段ねじを用意しなければならないという不便があった。
【0007】
このような技術的問題点に鑑み、本発明の目的は、床材、壁材、柱、間柱、根太、または構造用合板に従来のねじを用いて容易かつ確実に弛み無く固定できる発泡体を内装した樹脂成形体およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための本発明に係る樹脂成形体は、発泡体を内装した樹脂成形体において、発泡体にはその厚み方向に中空孔を有するネジ受け材が挿入されており、ねじ受け材の中空孔には内面に突出する段部を有することを特徴とするものである。
【0009】
そして、上記構成におけるねじ受け材は、樹脂成形体の表面材を成す一方の樹脂壁内面と他方の樹脂壁内面に溶着するフランジを両端に備えることが好適であり、さらに上記ねじ受け材は、略円筒状の胴部を有しており、前記胴部には放射状に突出した回転止めが形成されていることが好適である。
【0010】
本発明に係る前記樹脂成形体の製造方法は、発泡体を内装した樹脂成形体の成形方法であって、一対の分割金型間に2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂シートを配置する工程、発泡体に形成したねじ受け材挿入孔に段部により内径の少なくとも一部が縮径された中空孔を有するねじ受け材を挿入する工程、2枚の熱可塑性樹脂シートの間にねじ受け材が挿入された発泡体を配置する工程、型締めにより熱可塑性樹脂シートと発泡体とを融着するとともに2枚の熱可塑性樹脂シートを発泡体の外周において融着させて発泡体を内装する工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、床材、壁材、柱、間柱、根太、または構造用合板に従来のねじを用いて容易かつ確実に弛み無く固定できる発泡体を内装した樹脂成形体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る樹脂成形体の部分断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係るねじ受け材の斜視図である。
【図3】(a)は本発明の実施形態に係るねじ受け材の上面図であり、(b)は(a)に示したb−b線における部分断面図であり、(c)は(a)に示したc−c線における部分断面図であり、(d)は底面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る成形装置とともに、溶融樹脂シートが分割金型の間に配置された状態を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型の外枠を溶融樹脂シートの側面に当接させている状態を示す図である。
【図6】本発明の実施形態に係る成形装置において、溶融樹脂シートを賦形している状態を示す図である。
【図7】本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型を型締めした状態を示す図である。
【図8】本発明の実施形態に係る成形装置において、分割金型を型開きした状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る樹脂成形体100の実施形態を図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
図1に示すように、樹脂成形体100は、ねじ受け材挿入孔121を有する発泡体122と、発泡体122の外表面123全体に融着された樹脂壁124と、ねじ受け材挿入孔121に保持されたねじ受け材125とを有する。
【0014】
一方の樹脂壁124aおよび他方の樹脂壁124bからなる樹脂壁124それぞれの周縁部には、互いに対向する樹脂壁の側に湾曲したへり127Aおよび127Bが形成され、へり127A、Bの端周面128同士が突き合わせられて、周壁129を構成する。発泡体122が有するねじ受け材挿入孔121は、発泡体122の厚み方向に貫通しており、ねじ受け材125はねじ受け材挿入孔121に保持される。ねじ受け材125の長手方向両端にはフランジ104が形成されており、フランジ104aは一方の樹脂壁124a内表面に融着され、フランジ104bは他方の樹脂壁124bの内表面に融着される。
【0015】
発泡体122に設けられた複数のねじ受け材挿入孔121は、発泡体122の厚み方向に垂直に貫通しており、その径はねじ受け材125の胴部133の径と同径またはそれ以下が好ましく、発泡体122の製造工程上で型成形により作成しても、製造後の打ち抜き、切削等の2次加工により作成してもよい。
【0016】
発泡体122は、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂およびこれらの混合物、さらにフェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン等の熱硬化性樹脂を用いることができる。発泡体122の発泡倍率あるいはその厚みは、仕様用途において必要とされる断熱性能や防音・吸音性能の観点から定めればよく、たとえば発泡倍率5〜50倍、厚み10〜100mm程度が好適である。
発泡剤としては、物理発泡剤、化学発泡剤およびその混合物のいずれを用いてもよい。
物理発泡剤としては、空気、炭酸ガス、窒素ガス、水等の無機系物理発泡剤、およびブタン、ペンタン、ヘキサン、ジクロロメタン、ジクロロエタン等の有機系物理発泡剤、さらにはそれらの超臨界流体を用いることができる。
【0017】
図1乃至図3に示すように、ねじ受け材125には、その長さ方向に貫通し途中に段部103を有する中空孔105が設けられている。段部103は、ねじを螺合する際にねじ込み量を調整するためのものであり、中空孔105内に挿入されたねじ107を螺合していくと段部103の位置でねじ107の頭部108が段部の突出部分に引っかかり、それ以上ねじが前進することが防止される。中空孔105は段部103を境に孔径が変えられており、ねじ挿入口132側の径は、ねじ107の頭部108の径よりも大きくなっており、他方はねじ107のねじ部109の径よりも大きく且つ頭部108の径よりも小さい径になっている。図1乃至3に示すねじ受け材125において段部103は、ねじ受け材125の中空孔105内面の全周に連続して形成されているもので説明されているが、ねじ107の頭部108が引っかかることでねじ107の前進が抑制されればよく、中空孔105内面の周方向に断続的に複数形成することもできる。
【0018】
ねじ受け材125のフランジ104には、アンカー穴130が設けられており、後に述べる製造工程の中で溶融した樹脂壁124の内壁がアンカー穴130内に入り込み固化することにより、樹脂壁124とねじ受け材125の溶着強度を高め、ねじ107を螺合する際にねじ受け材125が供回りすることを防止することができる。さらに、アンカー穴130に代えてフランジ104表面にシボ加工や細かな凹凸形状を設けることにより同様の効果を得ることも可能である。
【0019】
また、図2に示すようにねじ受け材125の外面には、中空孔105と同方向に向かって配列した薄板状又は三角形断面で、中空孔105の中心軸CLから頂点までの距離がねじ受け材挿入孔121の径より大きい回転止め131が複数設けられており、ねじ受け挿入孔121へ挿入した時にねじ受け材125の胴部133から放射状に突出した回転止め131a、b、c、dが発泡体122に食い込み、ねじ107で床材106に固定する際にねじ受け材125がねじ受け材挿入孔121内で回転してしまうのを防ぐ効果がある。
【0020】
一方、樹脂壁124の材料は、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、エンジニアリングプラスチックス、などから形成された熱可塑性樹脂シートによって成形される。より詳細には、後に説明するように、樹脂壁124a、樹脂壁124bは、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP1、P2を垂下させて成形され、熱可塑性樹脂製シートP1、P2は、ドローダウン、ネックインなどにより肉厚のバラツキが発生することを防止する観点から溶融張力の高い樹脂材料を用いることが好ましく、一方で金型への転写性、追従性を良好とするため流動性の高い樹脂材料を用いることが好ましい。
【0021】
より具体的にはエチレン、プロピレン、ブテン、イソプレン、ペンテン、メチルペンテン等のオレフィン類の単独重合体あるいは共重合体であるポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン)であって、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0g/10分以下、さらに好ましくは0.3〜1.5g/10分のもの、またはアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ポリスチレン、高衝撃ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等の非晶性樹脂であって、200℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度200℃、試験荷重2.16kgにて測定)が3.0〜60g/10分、さらに好ましくは30〜50g/10分でかつ、230℃におけるメルトテンション(株式会社東洋精機製作所製メルトテンションテスターを用い、余熱温度230℃、押出速度5.7mm/分で、直径2.095mm、長さ8mmのオリフィスからストランドを押し出し、このストランドを直径50mmのローラに巻き取り速度100rpmで巻き取ったときの張力を示す)が50mN以上、好ましくは120mN以上のものを用いて形成される。
【0022】
また、熱可塑性樹脂製シートP1、P2には衝撃により割れが生じることを防止するため、水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーが30wt%未満、好ましくは15wt%未満の範囲で添加されていることが好ましい。具体的には水素添加スチレン系熱可塑性エラストマーとしてスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレンブロック共重合体、水添スチレン−ブタジエンゴムおよびその混合物が好適であり、スチレン含有量が30wt%未満、好ましくは20wt%未満であり、230℃におけるMFR(JIS K−7210に準じて試験温度230℃、試験荷重2.16kgにて測定)は1.0〜10g/10分、好ましくは5.0g/10分以下で、かつ1.0g/10分以上あるものがよい。
【0023】
さらに、熱可塑性樹脂製シートP1、P2には、添加剤が含まれていてもよく、その添加剤としては、シリカ、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、ガラス繊維、カーボン繊維等の無機フィラー、可塑剤、安定剤、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、発泡剤等が挙げられる。具体的にはシリカ、マイカ、ガラス繊維等を成形樹脂に対して50wt%以下、好ましくは10〜30wt%添加する。
【0024】
ねじ受け材125は、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、ポリカーボネート、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂およびこれらの混合物、または熱硬化性樹脂でもよいが、樹脂壁124の内壁と強固に融着させることが好ましく、後に説明する製造工程において、熱可塑性樹脂製シートPの持つ熱量でフランジ104の表面が軟化・溶融し、熱可塑性樹脂製シートPと溶着し、冷却されることにより強固に固着されることを可能にするために、熱可塑性樹脂が好ましく、さらに好ましくは樹脂壁124と同材料とすることでより強固に固着することが可能となる。
【0025】
次に、本実施形態に係る樹脂成形体100の製造方法について、以下に詳細に説明する。まず、樹脂成形体100の製造装置について、以下に説明する。
【0026】
図4に示すように、樹脂成形体100の成形装置は、押出装置12と、押出装置12の下方に配置された型締装置10とを有し、押出装置12から押出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを型締装置10に送り、型締装置10により溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPを成形するようにして、樹脂壁124を形成する。ここに、2枚の熱可塑性樹脂それぞれを押し出して、型締装置10まで送るまでの装置は、同様であるので、一方のみ説明し、他方については同様な参照番号を付することによりその説明は省略する。
【0027】
押出装置12は、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、ホッパー16が付設されたシリンダー18と、シリンダー18内に設けられたスクリュー(図示せず)と、スクリューに連結された油圧モーター20と、シリンダー18と内部が連通したアキュムレータ22と、アキュムレータ22内に設けられたプランジャー24とを有し、ホッパー16から投入された樹脂ペレットが、シリンダー18内で油圧モーター20によるスクリューの回転により溶融、混練され、溶融状態の樹脂がアキュムレータ室22に移送されて一定量貯留され、プランジャー24の駆動によりTダイ28に向けて溶融樹脂を送り、押出スリット34を通じて連続的な熱可塑性樹脂製シートPが押し出され、間隔を隔てて配置された一対のローラー30によって挟圧されながら下方へ向かって送り出されて分割金型32の間に垂下される。これにより、後に詳細に説明するように、熱可塑性樹脂製シートPが上下方向(押出方向)に一様な厚みを有する状態で、分割金型32の間に配置される。
【0028】
押出装置12の押出の能力は、成形する樹脂成形品の大きさ、熱可塑性樹脂製シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から適宜選択する。より具体的には、実用的な観点から、間欠押出における1ショットの押出量は好ましくは1〜10kgであり、押出スリット34からの樹脂の押出速度は、数百kg/時以上、より好ましくは700kg/時以上である。また、熱可塑性樹脂製シートPのドローダウンあるいはネックイン発生防止の観点から、熱可塑性樹脂製シートPの押出工程はなるべく短いのが好ましく、樹脂の種類、MFR値、メルトテンション値に依存するが、一般的に、押出工程は40秒以内、より好ましくは10〜20秒以内に完了するのがよい。このため、熱可塑性樹脂の押出スリット34からの単位面積、単位時間当たりの押出量は、50kg/時cm2以上、より好ましくは150kg/時cm2以上である。
【0029】
一対のローラー30の回転により一対のローラー30間に挟み込まれた熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出すことで、熱可塑性樹脂製シートPを延伸薄肉化することが可能であり、押し出される熱可塑性樹脂製シートPの押出速度と一対のローラー30による熱可塑性樹脂製シートPの送り出し速度との関係を調整することにより、ドローダウンあるいはネックインの発生を防止することが可能であるから、樹脂の種類、特にMFR値およびメルトテンション値、あるいは単位時間当たりの押出量に対する制約を小さくすることが可能である。
【0030】
図4に示すように、Tダイ28に設けられる押出スリット34は、鉛直下向きに配置され、押出スリット34から押し出された連続熱可塑性樹脂製シートPは、そのまま押出スリット34から垂下する形態で、鉛直下向きに送られるようにしている。押出スリット34は、その間隔を可変とすることにより、連続熱可塑性樹脂製シートPの厚みを変更することが可能である。
【0031】
一対のローラー30について説明すれば、一対のローラー30は、押出スリット34の下方において、各々の回転軸が互いに平行にほぼ水平に配置され、一方が回転駆動ローラー30Aであり、他方が被回転駆動ローラー30Bである。より詳細には、図4に示すように、一対のローラー30は、押出スリット34から下方に垂下する形態で押し出される熱可塑性樹脂製シートPに関して、線対称となるように配置される。
【0032】
それぞれのローラーの直径およびローラーの軸方向長さは、成形すべき熱可塑性樹脂製シートPの押出速度、シートの押出方向長さおよび幅、ならびに樹脂の種類等に応じて適宜設定すればよいが、後に説明するように、一対のローラー30間に熱可塑性樹脂製シートPを挟み込んだ状態で、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを円滑に下方に送り出す観点から、回転駆動ローラー30Aの径は、被回転駆動ローラー30Bの径より若干大きいのが好ましい。ローラーの径は50〜300mmの範囲であることが好ましく、熱可塑性樹脂製シートPとの接触においてローラーの曲率が大きすぎてもまた、小さすぎても熱可塑性樹脂製シートPがローラーへ巻き付く不具合の原因となる。
一方、型締装置10も、押出装置12と同様に、従来既知のタイプであり、その詳しい説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bと、金型32A,Bを溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPの供給方向に対して略直交する方向に、開位置と閉位置との間で移動させる金型駆動装置とを有する。
【0033】
図4に示すように、2つの分割形式の金型32A,Bは、キャビティ116を対向させた状態で配置され、それぞれキャビティ116が略鉛直方向を向くように配置される。それぞれのキャビティ116の表面には、溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPに基づいて成形される成形品の外形、および表面形状に応じて凹凸119が設けられる。
【0034】
2つの分割形式の金型32A,Bそれぞれにおいて、キャビティ116のまわりには、ピンチオフ部118が形成され、このピンチオフ部118は、キャビティ116のまわりに環状に形成され、対向する金型32A,Bに向かって突出する。これにより、2つの分割形式の金型32A,Bを型締する際、それぞれのピンチオフ部118の先端部が当接し、2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂製シートP1、P2の周縁にパーティングラインPLが形成されるように溶着される。
【0035】
金型32Aの外周部には、型枠33Aが密封状態で摺動可能に外嵌し、図示しない型枠移動装置により、型枠33Aが、金型32Aに対して相対的に移動可能としている。より詳細には、型枠33Aは、金型32Aに対して金型32Bに向かって突出することにより、金型32A,B間に配置された熱可塑性樹脂製シートP1の側面に当接可能である。金型32Bについても同様に、型枠33Bが設けられている。
【0036】
金型駆動装置については、従来と同様のものであり、その説明は省略するが、2つの分割形式の金型32A,Bはそれぞれ、金型駆動装置により駆動され、開位置において、2つの分割金型32A,Bの間に、2枚の溶融状態の連続熱可塑性樹脂製シートPが配置可能なようにされ、一方閉位置において、2つの分割金型32A,Bのピンチオフ部118が当接し、環状のピンチオフ部118が互いに当接することにより、2つの分割金型32A,B内に密閉空間が形成されるようにしている。開位置から閉位置への各金型32A,Bの移動について、閉位置、すなわち、ピンチオフ部118同士が互いに当接する位置は、2枚の溶融状態の連続熱可塑性樹脂製シートP1、P2間で、両熱可塑性樹脂製シートP1、P2から等距離の位置とし、各金型32A,Bが金型駆動装置により駆動されてその位置に向かって移動するようにしている。
なお、一方の連続熱可塑性樹脂製シートP1用の押出装置および一対のローラーと、他方の一方の連続熱可塑性樹脂製シートP2用の押出装置および一対のローラーとは、この閉位置に関して対称に配置されている。
【0037】
図6に示すように、分割金型32Aの内部には、真空吸引室80が設けられ、真空吸引室80は吸引穴82を介してキャビティ116Aに連通し、真空吸引室80から吸引穴82を介して吸引することにより、キャビティ116Aに向かって熱可塑性樹脂製シートP1を吸着させて、キャビティ116Aの外表面に沿った形状に賦形するようにしている。より詳細には、キャビティ116Aの外表面123に設けた凹凸119により、一方の樹脂壁124aの材料である熱可塑性樹脂製シートP1の外表面117を賦形するようにしている。熱可塑性樹脂製シートP2についても同様に賦形するようにしている。
一方、分割金型32Bには、金型32A、Bを型締したときに両金型により形成される密閉空間内から吹き込み圧をかけることが可能なように、従来既知のブローピン(図示せず)が設置されている。
【0038】
以上の構成を有する樹脂成形体100の成形装置10を利用した樹脂成形体100の製造方法について、図面を参照しながら以下に説明する。
内表面120にねじ受け材挿入孔を有する発泡体122を予め成形するとともに、ねじ受け材125を準備する。
【0039】
より詳細には、発泡体122の製造について説明すれば、たとえばポリオレフィン系樹脂を押出機(図示せず)に供給し、加熱溶融しつつ混練してから所定量の発泡剤を添加し、押出機内で更に混練して発泡製溶融樹脂とし、発泡製溶融樹脂を発泡に適した樹脂温度および発泡製溶融樹脂が発泡を開始しない圧力下に維持しながらアキュームレータ(図示せず)に充填する。次いで、押出ヘッドのダイ先端のゲートを開いた状態で、アキュームレータのラム(図示せず)を押すことにより、発泡製溶融樹脂が低圧域に開放されて、発泡製の筒状パリソンが形成される。この筒状パリソンをたとえば、一対の金型の間に配置し、一対の金型を型締して、内部から加圧することにより、発泡体122を成形することができる。
なお、発泡体122はポリスチレン製発泡ビーズを用いた既知の製法により成形されたものを用いてもよい。
【0040】
次いで、発泡体122に設けられたねじ受け材挿入孔121にねじ受け材125を挿入し、内装体140として一体化する。
【0041】
次いで、図4において、溶融混練した熱可塑性樹脂をアキュムレータ22内に所定量貯留し、Tダイ28に設けられた所定間隔の押出スリット34から、貯留された熱可塑性樹脂を単位時間当たり所定押出量で間欠的に押し出すことにより、熱可塑性樹脂はスウェルし、溶融状態のシート状に下方に垂下するように所定の厚みにて所定押出速度で押し出される。
【0042】
次いで、一対のローラー30を開位置に移動し、押出スリット34の下方に配置された一対のローラー30同士の間隔を熱可塑性樹脂製シートPの厚みより広げることにより、下方に押し出された溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPの最下部が一対のローラー30間に円滑に供給されるようにする。なお、ローラー30同士の間隔を熱可塑性樹脂製シートPの厚みより広げるタイミングは、押し出し開始後でなく、ワンショットごとに二次成形が終了時点で行ってもよい。
【0043】
次いで、一対のローラー30同士を互いに近接させて閉位置に移動し、一対のローラー30同士の間隔を狭めて熱可塑性樹脂製シートPを挟み込み、ローラーの回転により熱可塑性樹脂製シートPを下方に送り出す。
【0044】
次いで、図4に示すように、押出方向に一様な厚みを形成した熱可塑性樹脂製シートPを一対のローラー30の下方に配置された分割金型32A,B間に配置する。これにより、熱可塑性樹脂製シートPは、ピンチオフ部118のまわりにはみ出す形態で位置決めされる。
【0045】
以上の工程を、2枚の熱可塑性樹脂製シートP1、P2それぞれについて行い、上面側表皮材シート124Aの材料である熱可塑性樹脂製シートP2と、下面側表皮材シート124Bの材料である熱可塑性樹脂製シートP1とを互いに間隔を隔てた状態で、分割金型32A,B間に配置する。
この場合、2枚の熱可塑性樹脂製シートP1、P2はそれぞれ、互いに独立に、押し出しスリット34の間隔、あるいは一対のローラ30の回転速度を調整することにより、分割金型32A,B間に配置される際の厚みを調整可能である。
【0046】
次いで、図5に示すように、型枠33Aを金型32Aに対して、下面側表皮材シート124Bの材料である熱可塑性樹脂製シートP1に向かって、金型32Aに対向する熱可塑性樹脂製シートP1の外表面117に当たるまで移動させる。なお、型枠33Bについても同様に、熱可塑性樹脂製シートP2の外表面117に当たるまで移動させる。
【0047】
次いで、図5および図6に示すように、金型32Aのキャビティ116A、型枠33Aの内周面102、および金型32Aに対向する熱可塑性樹脂製シートP1の外表面117により構成された第1密閉空間84を通じて、真空吸引室80から吸引穴82を介して吸引することにより、熱可塑性樹脂製シートP1をキャビティ116Aに対して押し付けて、キャビティ116Aの凹凸表面に沿った形状に熱可塑性樹脂製シートP1を賦形する。熱可塑性樹脂製シートP2についても同様に吸引して、賦形する。
【0048】
次いで、図6に示すように、予め成形した内装体140を分割金型32の間に配置し、熱可塑性樹脂製シートP1に対して押し付けて、溶着させる。内装体140は、たとえば既知の吸着式マニュプレータを用いて、内装体140の側面を吸着保持しながら分割金型32の間に配置し、熱可塑性樹脂製シートP1に対して溶着させることにより、吸着式マニュプレータを内装体140から脱着して、分割金型32の間から引っ込めればよい。
【0049】
次いで、図7に示すように、熱可塑性樹脂製シートP1、P2それぞれの外表面117に当接する型枠33A、33Bをそのままの位置に保持した状態で熱可塑性樹脂製シートP1、P2を吸引保持しつつ、それぞれの環状のピンチオフ部118A,B同士が当接するまで両金型32A,Bを互いに近づく向きに移動させる。この場合、ピンチオフ部118A,B同士の型締方向の当接位置は、互いに離間する2枚の熱可塑性樹脂製シートP1,P2の間となるところ、図7に示すように、ピンチオフ部118A,B同士が当接することにより、2枚の熱可塑性樹脂製シートP1,P2は互いの周縁部126同士が溶着固定され、内部に内装体140を配置した状態で、熱可塑性樹脂製シートの周縁によって密閉された周壁129を形成するとともに、下面側表皮材シート124bおよび上面側表皮材シート124aそれぞれが、内装体140と溶着される。
【0050】
次いで、金型32Aと金型32Bとにより内部に形成された第2密閉空間86を通じて熱可塑性樹脂製シートP1,P2を加圧するとともに、第1密閉空間84を通じて金型32Aの側から熱可塑性樹脂製シートP1を引き続き吸引する。熱可塑性樹脂製シートP2についても同様に引き続き吸引する。
【0051】
次いで、図8に示すように、分割金型32A,Bを型開きして、成形された薄板樹脂製パネル100を取り出し、ピンチオフ部118A,Bの外側のバリ部分Bを切断し、これで成形が完了する。
【0052】
以上のように、一次成形において溶融樹脂を間欠的に押し出すたびに、以上のような工程を繰り返すことにより、シート状の薄板樹脂製パネル100を次々に成形することが可能であり、一次成形(押出成形)により熱可塑性樹脂を間欠的に溶融状態の熱可塑性樹脂製シートPとして押し出し、二次成形(ブロー成形あるいは真空成形)により押し出された熱可塑性樹脂製シートPを金型を用いて成形することが可能である。
【0053】
図1は、住宅で用いる床下収納庫や床下点検口等において、このように製造された樹脂成形体100を断熱蓋として用いる状態を示しており、より詳細には、床材106の裏面からネジ107によって樹脂成形体を固定している。
【0054】
より具体的には、樹脂成形体100のねじ受け材125が有する段部103付中空孔105を利用してフローリング材に樹脂成形体を固定することにより、発泡体単体または表皮付発泡体を直に床材106へねじ止めする場合に比べて、ねじの締め付け方向に剛性のある軸型をなすねじ受け材125を利用することにより、より強固に弛み無く固定することが可能である。
【符号の説明】
【0055】
P 熱可塑性樹脂製シート
PL パーティングライン
CL 中心軸
10 型締装置
12 押出装置
16 ホッパー
18 シリンダー
20 油圧モーター
22 アキュムレータ
24 プランジャー
28 Tダイ
30 ローラー
32 分割金型
33 型枠
34 押出スリット
80 真空吸引室
82 真空吸引穴
84 第1密閉空間
86 第2密閉空間
100 樹脂成形体
102 ねじ穴
103 段部
104 フランジ
105 中空孔
106 床材
107 ねじ
108 頭部
109 ねじ部
116 キャビティ
117 外表面
118 ピンチオフ部
119 凹凸
121 ねじ受け材挿入孔
122 発泡体
123 外表面
124 樹脂壁
125 ねじ受け材
126 周縁部
127 へり
128 端周面
129 周壁
130 アンカー穴
131 回転止め
132 ねじ挿入口
133 胴部
140 内装体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡体を内装した樹脂成形体において、発泡体にはその厚み方向に中空孔を有するネジ受け材が挿入されており、ねじ受け材の中空孔には内面に突出する段部を有することを特徴とする樹脂成形体。
【請求項2】
ねじ受け材は、樹脂成形体の表面材を成す一方の樹脂壁内面と他方の樹脂壁内面に溶着するフランジを両端に備えることを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形体。
【請求項3】
ねじ受け材は、略円筒状の胴部を有しており、前記胴部には放射状に突出した回転止めが形成されていることを特徴とする請求項1記載の樹脂成形体。
【請求項4】
発泡体を内装した樹脂成形体の成形方法であって、一対の分割金型間に2枚の溶融状態の熱可塑性樹脂シートを配置する工程、発泡体に形成したねじ受け材挿入孔に段部により内径の少なくとも一部が縮径された中空孔を有するねじ受け材を挿入する工程、2枚の熱可塑性樹脂シートの間にねじ受け材が挿入された発泡体を配置する工程、型締めにより熱可塑性樹脂シートと発泡体とを融着するとともに2枚の熱可塑性樹脂シートを発泡体の外周において融着させて発泡体を内装する工程を有することを特徴とする樹脂成形体の成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−158075(P2012−158075A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18981(P2011−18981)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000104674)キョーラク株式会社 (292)
【Fターム(参考)】