説明

樹脂成形品の加飾方法

【課題】樹脂成形品の全体的な変形を抑えながら樹脂成形品の表面に適当な深さの凹凸を持つ柄を施すことができる樹脂成形品の加飾方法を提供する。
【解決手段】まず、ベース層21の表面21a上に当該ベース層21よりも熱変形温度が低い表層22を形成して樹脂成形品2を製造する。次いで、前記表層22の表面22aを加熱し、その後に、当該表面22aに加飾ロールを押し付けながら転がすことにより、前記表層22の表面22aに加飾ロールの凹凸形状を転写して当該表面に柄を加飾する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の表面に凹凸形状を付与して柄を加飾する加飾方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば木材の代わりに建築材料に用いられる樹脂成形品として、表面に木目柄が加飾されたものが知られている。このように樹脂成形品の表面に木目柄を加飾するには、例えば特許文献1に記載されているように、まず平坦な樹脂成形品の表面を加熱し、次いでこの加熱された表面に加飾ロールを押し付けながら当該加飾ロールを転がすことにより、加飾ロールの表面に施された凹凸形状を樹脂成形品の表面に転写して当該表面に木目柄を加飾する方法がある。
【特許文献1】特許第3030009号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、樹脂成形品の表面の加熱によって樹脂成形品の表面からある程度の深さの部分までが軟化してしまうため、樹脂成形品が例えば中空となっている場合には、その状態で加飾ロールを樹脂成形品の表面に押し付けると、樹脂成形品がつぶれてしまうおそれがある。それを防止するために、樹脂成形品の表面を加熱する際の加熱温度を比較的に低く設定すると、樹脂成形品の表面近傍部分が十分に軟化せず、樹脂成形品樹脂成形品の表面に転写される木目柄の凹凸は浅くなる。また、中空の樹脂成形品の内部にリブが設けられている場合には、リブの有る位置と無い位置とで凹凸の深さにムラが出る。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑み、樹脂成形品の全体的な変形を抑えながら樹脂成形品の表面に適当な深さの凹凸を持つ柄を施すことができる樹脂成形品の加飾方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の目的を達成するために、本発明は、樹脂成形品の表面に凹凸形状を付与して柄を加飾する加飾方法であって、ベース層の表面上に当該ベース層よりも熱変形温度が低い表層を形成して樹脂成形品を製造する製造工程と、前記表層の表面を加熱する加熱工程と、表面に柄が凹凸形状で施された加飾ロールを加熱された前記表層の表面に押し付けながら当該表面上を転がすことにより、前記表層の表面に凹凸形状を転写して当該表面に柄を加飾する転写工程とを含むことを特徴とするものである。
【0006】
ここで、熱変形温度とは、ベース層または表層を単層で構成したものを一定荷重下に置いて、一定速度で温度上昇させた時に所定の変形を示す温度をいう。
【0007】
この構成によれば、樹脂成形品をベース層とこのベース層よりも熱変形温度が低い表層とで構成し、加飾ロールの凹凸形状を前記表層の表面に転写する前に前記表層の表面を加熱することにより、表層とベース層の熱変形温度の差を利用して表層のみを十分に軟化させることが可能になる。そして、この状態で表層の表面に加飾ロールを押し付けることにより、ベース層の変形を抑制しつつ表層の表面に深い凹凸の柄を施すことができる。すなわち、本発明によれば、樹脂成形品の全体的な変形を抑えながら、樹脂成形品の表面に適当な深さの凹凸を持つ柄を施すことができるようになる。
【0008】
前記樹脂成形品の加飾方法において、前記加熱工程では、前記表層の表面の温度が表層の熱変形温度以上となり、かつ、前記ベース層と表層の境界面の温度がベース層の熱変形温度以下となるように表層の表面を加熱することが好ましい。
【0009】
このようにすれば、ベース層の軟化を抑えながら表層のみを十分に軟化させることができる。
【0010】
前記柄は、木目柄であることが好ましい。
【0011】
このようにすれば、深い凹凸によって良好な木質感が得られるようになる。
【0012】
前記製造工程では、発泡剤を含有する材料で表層を形成することが好ましい。
【0013】
このようにすれば、前記加熱工程で表層の表面を加熱すると、表層に含まれる発泡剤が発泡して表層の表面が荒れるようになるため、表面の艶が消えて木質感が向上するようになる。
【0014】
前記転写工程では、加飾ロールの表面温度を所定の温度に保った状態で当該加飾ロールを前記表層の表面に押し付けながら当該表面上を転がすことが好ましい。
【0015】
このように、加飾ロールの表面温度を所定の温度に保つことにより、表層の表面の艶の状態をコントロールすることができる。例えば、加飾ロールの表面温度を比較的に低く保てば、表面の艶が消えた状態のままで表層の表面が押されるようになるため、艶の無い表面とすることができ、逆に加飾ロールの表面温度を比較的に高く保てば、表層の表面が加飾用ローラによって再度軟化させられながら押されるようになるため、艶の有る表面とすることができる。
【0016】
また、前記転写工程の後に、前記表層の表面に前記木目柄よりも細かな筋模様をさらに施すことが好ましい。
【0017】
このようにすれば、細かな筋模様によってさらに木質感を向上させることができる。
【0018】
また、前記加熱工程の前に、前記表層の表面を研削して荒らすことが好ましい。
【0019】
このようにすれば、木肌感が得られるようになる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、樹脂成形品の全体的な変形を抑えながら、樹脂成形品の表面に適当な深さの凹凸を持つ柄を施すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
本発明の一実施形態に係る樹脂成形品の加飾方法は、製造工程と、加熱工程と、転写工程とを含んでいる。
【0023】
前記製造工程は、図1に示す製造装置1によって行われる。この製造装置1は、図2(a)に示すような樹脂成形品2を製造してこれを所望の長さで切断する工程を1つのラインで行うものであり、二軸押出機11と、成形台12と、引取機13と、切断機14とを備えている。
【0024】
前記樹脂成形品2は、所定の断面形状で特定方向に延びる板状の押出成形品である。具体的には、樹脂成形品2は、天井壁21bと底壁21cの左右両端部同士が側壁21dによって連結されることにより中空に構成されたベース層21と、このベース層21の表面21a上に、具体的には図2(a)において天井壁21bの上面の全面、右側の側壁21dの外側面、及び左側の側壁21dの外側面に形成される表層22とで構成されている。また、前記ベース層21の内部には、樹脂成形品2の幅方向に一定の間隔で並ぶ複数のリブ21eが設けられていて、ベース層21の強度が確保されている。なお、本実施形態では、ベース層21の表面21aを構成する4面のうちの3面に表層22が形成されているが、表層22は、表面21aの4面全ての面に形成されていてもよいし、1面にのみ形成されていてもよい。
【0025】
前記ベース層21を構成する材料としては、ポリスチレン(PS)、HIPS、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂等のスチレン系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル系樹脂;アクリル樹脂;ポリカーボネート等の樹脂が挙げられる。あるいは、これらの樹脂に、木粉やタルク等の充填剤を加えたものを採用することも可能である。
【0026】
前記表層22を構成する材料としては、ポリスチレン(PS)、HIPS、ABS樹脂、AES樹脂、ASA樹脂等のスチレン系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のオレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC);ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ乳酸(PLA)等のポリエステル系樹脂;アクリル樹脂;ポリカーボネート等の樹脂が挙げられる。なお、これらの樹脂は、耐候性を有することが好ましい。あるいは、これらの樹脂に、木粉やタルク等の充填剤を加えたものを採用することも可能である。さらには、これらの樹脂に、発泡剤を加えたものを採用することがより好ましい。
【0027】
前記発泡剤を加える量は、発泡倍率が1.1〜3.0の範囲内になる程度が好ましい。発泡倍率が1.1より小さいと、発泡剤の発泡による木質感の向上がさほど見られず、発泡率が3.0より大きいと、表層22が柔らかくなりすぎて建築材料としては相応しくないからである。
【0028】
この発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の無機発泡剤;N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソ・テレフタルアミド、N,N’−ジニトロソ・ペンタメチレン・テトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾジカルボキサミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウム・アゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、P,P’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホニルヒドラジド等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4’−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホニルアジド等のアジド化合物等を挙げることができる。なかでもニトロソ化合物、アゾ化合物及びアジド化合物が好ましく使用される。また必要に応じて発泡剤と併用して発泡助剤を使用してもよい。発泡助剤とは、発泡剤の分解温度の低下、分解促進、気泡の均一化等の働きをする添加剤である。発泡助剤としては、サルチル酸、フタル酸、ステアリン酸等の有機酸;尿素及びその誘導体等をあげることができる。
【0029】
また、表層22の厚み、すなわちベース層21の表面21aから表層22の表面22aまでの距離は、表層22の表面22aに加飾しようとする木目柄の凹凸の深さよりも0.5mm以上大きな厚みに設定することが好ましい。具体的には、目的とする凹凸の深さが0.5mm以上である場合には、表層22の厚みは1〜5mmの範囲内で設定することが好ましい。
【0030】
前記製造装置1は、まず二軸押出機11で、上述した材料でベース層21を押し出し成形するとともに、その押し出し成形されたベース層21の表面21a上に上述した材料で所定の厚みの表層22を形成して樹脂成形品2を製造する。次いで、製造装置1は、成形台12で樹脂成形品2を冷却してベース層21及び表層22を硬化させた後に、引取機13で樹脂成形品2を引き取り、最後に切断機14で樹脂成形品2を所望の長さで切断する。そして、このようにして切断された樹脂成形品2が前記加熱工程及び前記転写工程に用いられる。
【0031】
前記加熱工程及び前記転写工程は、図3に示すエンボス機3によって行われる。このエンボス機3は、図3において前記樹脂成形品2が左側から右側に表層22の表面22aが上方を向く状態で搬送される過程で前記加熱工程を行った後に前記転写工程を行うものであり、加熱工程を行うための加熱手段31と、転写工程を行うための転写手段36とを備えている。
【0032】
前記加熱手段31は、前記表層22の表面22aを加熱するセラミックヒータで構成されている。より詳しくは、加熱手段31は、表層22の表面22aの温度が表層22の熱変形温度以上となり、かつ、前記ベース層21と表層22の境界面の温度がベース層21の熱変形温度以下となるように表層22の表面22aを加熱する。より好ましい加熱条件は、表層22の表面22aの温度が表層22の熱変形温度に20℃を加えた温度以上となることである。また、前記ベース層21と表層22の境界面の温度がベース層21の熱変形温度に20℃を加えた温度以下となるようにしてもよい。なお、加熱手段31としては、セラミックヒータ以外にも熱風ヒータや赤外線ヒータ等が採用可能である。
【0033】
前記転写手段36は、図4に示すように、前記加熱手段31によって表層22の表面22aが加熱された樹脂成形品2を上下から所定の圧力で挟み込む加飾ロール32及び平滑ロール33を有している。
【0034】
前記加飾ロール32及び平滑ロール33は、図略の支持手段によって回転自在に支持されている。そして、これらのロール32,33間に前記樹脂成形品2が左側から差し込まれて右側に引き抜かれると、樹脂成形品2は、表層22が上方から加飾ロール32で押圧されるとともにベース層21が下方から平滑ロール33で押圧されながら、それらの間を通過するようになる。換言すれば、加飾ロール32は、表層22の表面22aに押し付けられながら当該表面22a上を転がるようになる。なお、加飾ロール32をモータ等からなる駆動手段によって図3において反時計回りに回転させるように構成して、加飾ロール32の回転によって樹脂成形品2を右側に送り出すようにしてもよい。
【0035】
また、加飾ロール32の表面には、木目柄が凹凸形状32a(図4参照)で施されている。このため、加飾ロール32が表層22の表面22aに押し付けられながら当該表面22a上を転がると、加飾ロール32の凹凸形状32aが表層22の表面22aに転写され、当該表面22aに図2(b)に示すような木目柄23が施されるようになる。
【0036】
さらには、前記加飾ロール32の表面温度は、図略の温度調整手段によって所定の温度に保たれるようになっている。このため、前記転写は、加飾ロール32の表面温度が所定の温度に保たれた状態で行われる。
【0037】
また、前記樹脂成形品2の搬送方向における前記転写手段36の下流側には、転写工程が行われた後の樹脂成形品2を上下から挟み込む補飾ロール34及び平滑ロール35が設けられている。前記補飾ロール34の表面には、前記加飾ロール32の木目柄よりも細かな筋模様が凹凸形状で施されている。すなわち、補飾ロール34の表面の凹凸形状は、加飾ロール32の表面の凹凸形状32aよりもピッチが狭くかつ凹凸の深さが浅くなっている。そして、樹脂成形品22がこれらのロール34,35間を通ることにより、前記表層22の表面22aに木目柄23よりも細かな筋模様がさらに施されるようになる。
【0038】
このように構成されたエンボス機3は、まず加熱手段31で樹脂成形品2の表層22の表面22aを上述したように加熱し、次いで転写手段36で加飾ロール32の表面温度を所定の温度に保った状態で加飾ロール32の木目柄を表層22の表面22aに転写し、最後に補飾ロール34及び平滑ロール35で木目柄23が施された表層22の表面22aにさらに筋模様を施す。
【0039】
以上説明したように、本実施形態の樹脂成形品の加飾方法では、樹脂成形品2をベース層21とこのベース層21よりも熱変形温度が低い表層22とで構成し、加飾ロール32の凹凸形状32aを表層22の表面22aに転写する前に、表層22の表面22aの温度が表層22の熱変形温度以上となり、かつ、ベース層21と表層22の境界面の温度がベース層21の熱変形温度以下となるように表層22の表面22aを加熱することにより、表層22とベース層21の熱変形温度の差を利用してベース層21の軟化を抑えながら表層22のみを十分に軟化させることができる。そして、この状態で表層22の表面22aに加飾ロール32を押し付けることにより、ベース層21の変形を抑制しつつ表層22の表面22aに深い凹凸の木目柄23を施すことができる。すなわち、本実施形態の樹脂成形品の加飾方法によれば、樹脂成形品2の全体的な変形を抑えながら、樹脂成形品2の表面に適当な深さの凹凸を持つ木目柄を施すことができるようになる。
【0040】
また、前記樹脂成形品2を製造する際に前記表層22を構成する材料として発泡剤を含有する材料を用いた場合には、表層22の表面22aを加熱する際に、表層22に含まれる発泡剤が発泡して表層22の表面22aが荒れるようになるため、表面22aの艶が消えて木質感が向上するようになる。
【0041】
さらに、本実施形態の樹脂成形品の加飾方法では、前記表層22の表面22aに加飾ロール32の凹凸形状32aを転写して木目柄23を加飾した後に、その木目柄23よりも細かな筋模様をさらに施すようにしているので、細かな筋模様によってさらに木質感を向上させることができる。
【0042】
また、前記加飾ロール32の表面温度を所定の温度に保つようにしているので、これにより表層22の表面22aの艶の状態をコントロールすることができる。例えば、加飾ロール32の表面温度を比較的に低く保てば、表面22aの艶が消えた状態のままで表層22の表面22aが押されるようになるため、艶の無い表面22aとすることができ、逆に加飾ロール32の表面温度を比較的に高く保てば、表層22の表面22aが加飾用ローラ32によって再度軟化させられながら押されるようになるため、艶の有る表面22aとすることができる。
【0043】
さらに、前記表層22の表面22aを加熱する前に、前記表層22の表面22aを研削して荒らすようにしてもよい。この研削には、例えばワイヤーブラシ、フラップホイール、ベルトサンダー等を用いることができる。このようにすれば、荒れた表面22aによって木肌感が得られるようになる。
【0044】
<実施例>
まず、前記樹脂成形品2として下記表1に示す構成の成形品A〜Fを製造するとともに、下記表1に示す構成の比較例を製造した。なお、表中の樹脂、充填剤、着色剤、可塑剤、及び発泡剤の欄の数値の単位は質量部である。
【0045】
【表1】

【0046】
成形品A〜Cは発泡剤を含有する材料で表層22を形成したものであり、成形品Fは表層22を軟質にしたものである。また、成形品B’は成形品Bに対して表層22の厚みを厚くするとともに発泡剤の量を増やしたものである。なお、成形品Fの表層22の硬度は80HDAである。また、表中の熱変形温度は、ASTM D−648により測定した温度であって、ベース層21または表層22を単層で構成した試験片の両端を油浴中で支え、荷重棒で試験片の中央を押すことによって試験片に1.82MPaの曲げ応力をかけ、油浴の温度を2℃/minで上昇させ、荷重点の試験片の撓みが0.254mmに達した時の温度である。
【0047】
<実施例1>
実施例1では、下記表2に示すように、成形品Aに対して条件1〜3の条件で加熱工程及び転写工程を行うとともに、比較例に対しても表中の条件で加熱工程及び転写工程を行った。なお、表中の評価の欄の光沢度は、堀場製作所社製のハンディ光沢計(グロスチャッカ)IG−320を用いて測定した値である。
【0048】
【表2】

【0049】
条件1では、加熱工程において、表層22の表面22aの温度が表層22の熱変形温度よりも25℃高い110℃になるように表層22の表面22aを加熱した。このようにすると、表層22の表面22aに施された木目柄の凹凸の最大深さが0.5mmとなった。また、加飾ロール32の表面温度を20℃に設定した結果、光沢度が3.0の艶の無い表面22aとなった。
【0050】
条件2では、加熱工程における加熱温度を180℃に設定した。このようにすると、表層22の表面22aに施された木目柄の凹凸の最大深さが0.8mmとなった。また、加飾ロール32の表面温度を170℃に設定した結果、表面22aの光沢度が6.0と高くなり、表面22aに艶が出るだけでなくその艶感が高くなった。
【0051】
条件3では、加熱工程における加熱温度を240℃と比較的に高く設定した。このようにすると、表層22に含まれる発泡剤の発泡が促進され、表層22の表面22aの荒れ具合がより高くなるため、転写工程後の表面22aにザラツキ感が見られるようになり、さらに木質感が向上した。このときの表面22aの光沢度は1.5であった。
【0052】
一方、比較例では、表層の熱変形温度がベース層の熱変形温度と同じで高くなっているため、加飾ロールの押圧力を大きく設定しても、表層の表面には0.2mm程度の深さの凹凸を持つ木目柄しか施せなかった。
【0053】
<実施例2>
実施例2では、下記表3に示すように、成形品Bに対して条件1〜3の条件で加熱工程及び転写工程を行うとともに、成形品B’に対しても表中の条件で加熱工程及び転写工程を行った。なお、条件2及び条件3では、加熱工程の前にベルトサンダーによって表層22の表面22aを研削して荒らすようにした。
【0054】
【表3】

【0055】
条件1では、加飾ロール32の表面温度を90℃と実施例1の条件1と条件2の中間程度に設定した結果、表層22の表面22aの光沢度が5.0となり、表面22aに低い艶感の艶を出すことができた。
【0056】
条件2では、加熱工程の前に行った研削加工によって転写工程後の表層22の表面22aにスジ感が表れるようになり、木肌感が得られるようになった。
【0057】
条件3では、加飾ロール32の表面温度を120℃に設定し、加飾ロール32の押圧力を小さく設定した。その結果、表層22の表面22aに施された木目柄の凹凸の最大深さを0.5mmと比較的良好に保ったまま、谷部のみに艶感を出すことができた。
【0058】
成形品B’では、最大深さ3.0mmの凹凸形状が施された加飾ロール32を用いることにより、表層22の表面22aに施された木目柄の凹凸の最大深さが2.8mmとなった。
【0059】
<実施例3>
実施例3では、下記表4に示すように、成形品C〜Fに対して表中の条件で加熱工程及び転写工程を行った。
【0060】
【表4】

【0061】
表4から分かるように、成形品C〜Fに対しても、表層22の表面22aに深い凹凸の木目柄23を施すことができた。なお、成形品D〜Fについては、表層22を構成する材料に発泡剤が含有されていないため、光沢度の測定は省略した。
【0062】
前記実施形態では、樹脂成形品2のベース層21が中空となっているが、ベース層21は中実となっていてもよい。
【0063】
また、前記実施形態では、樹脂成形品2が二軸押出機11によって押し出し成形されるようになっているが、樹脂成形品2は他の成形方法によってベース層21と表層22とが形成されたものであってもよい。例えば、モールド成形によってベース層21を形成した後に、このベース層21の表面21a上に表層22を構成する樹脂を溶融状態で塗布して硬化させることにより樹脂成形品2を成形してもよい。
【0064】
また、前記実施形態では、エンボス機3と製造装置1とを独立させているが、エンボス機3を製造装置1の引取機13と切断機14の間に設置して、加熱工程及び転写工程をオンラインで行うことも可能である。
【0065】
さらに、樹脂成形品2の表層22の表面22aに加飾する柄は、木目柄23に限らず他の柄であってもよい。ただし、表層22の表面22aに木目柄23を加飾する場合には、深い凹凸によって良好な木質感が得られるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る樹脂成形品の加飾方法における製造工程を行う製造装置の模式図である。
【図2】(a)は加熱工程の前の樹脂成形品の斜視図、(b)は転写工程の後の樹脂成形品の斜視図である。
【図3】前記加飾方法における加熱工程及び転写工程を行うエンボス機の模式図である。
【図4】前記エンボス機により転写工程が行われる際の樹脂成形品の断面図である。
【符号の説明】
【0067】
2 樹脂成形品
21 ベース層
21a 表面
22 表層
22a 表面
23 木目柄
3 エンボス機
31 加熱手段
32 加飾ロール
32a 凹凸形状
34 補飾ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂成形品の表面に凹凸形状を付与して柄を加飾する加飾方法であって、
ベース層の表面上に当該ベース層よりも熱変形温度が低い表層を形成して樹脂成形品を製造する製造工程と、
前記表層の表面を加熱する加熱工程と、
表面に柄が凹凸形状で施された加飾ロールを加熱された前記表層の表面に押し付けながら当該表面上を転がすことにより、前記表層の表面に凹凸形状を転写して当該表面に柄を加飾する転写工程とを含むことを特徴とする樹脂成形品の加飾方法。
【請求項2】
前記加熱工程では、前記表層の表面の温度が表層の熱変形温度以上となり、かつ、前記ベース層と表層の境界面の温度がベース層の熱変形温度以下となるように表層の表面を加熱することを特徴とする請求項1に記載の樹脂成形品の加飾方法。
【請求項3】
前記柄は、木目柄であることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂成形品の加飾方法。
【請求項4】
前記製造工程では、発泡剤を含有する材料で表層を形成することを特徴とする請求項3に記載の樹脂成形品の加飾方法。
【請求項5】
前記転写工程では、加飾ロールの表面温度を所定の温度に保った状態で当該加飾ロールを前記表層の表面に押し付けながら当該表面上を転がすことを特徴とする請求項4に記載の樹脂成形品の加飾方法。
【請求項6】
前記転写工程の後に、前記表層の表面に前記木目柄よりも細かな筋模様をさらに施すことを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項に記載の樹脂成形品の加飾方法。
【請求項7】
前記加熱工程の前に、前記表層の表面を研削して荒らすことを特徴とする請求項3〜6のいずれか1項に記載の樹脂成形品の加飾方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−120019(P2008−120019A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−308401(P2006−308401)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】