説明

樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体

【課題】金属板の板厚を変えることなく、その剛性を向上させた樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体を提供すること。
【解決手段】接着剤を用いて第一及び第二の金属板で樹脂構造体を挟んで張り合わせた複合構造体であって、前記樹脂構造体2は、その樹脂構造体2の基部表面から立ち上がる壁部7により筒状の立状体8が複数形成されており、前記壁部7における溶融される壁部先端部9と第一の金属板3が接着剤5を介して溶着され、樹脂構造体2における溶融される基部裏面10と第二の金属板4が接着剤5を介して溶着され、前記各立状体8が第一及び第二の金属板3、4とで挟まれて密閉空間6を形成されており、前記密閉空間6の空気圧が1気圧より越えた状態に加圧されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁材、床材、屋根材等の建築用部材に使用される樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリプロピレン樹脂を主たる材料とするボードとして、突状のキャップを複数有する合成樹脂製のキャップシートと、キャップの底部側に接着剤により張り合わされる合成樹脂製のバックシートと、キャップの頂部側に張り合わされる合成樹脂製のライナーシートとを積層状に構成してプラスチック気泡ボードとする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。前記のように外表面側がプラスチック製であると、プラスチックの硬度が高くないため、表面に傷がつくと白色化する恐れがあるという問題がある。
【0003】
また、前記の白色化の欠点を解消可能な技術として、外表面側を金属板とすることが考えられる。例えば、凹凸面体状に成形した無機質系の板状コアの表裏両面に、エポキシ系接着剤を介して炭酸カルシウム発泡板を貼着し、その外側にエポキシ系接着剤を介して鋼板(面板)を貼着する形態の建築用のパネル板の技術も知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−125987公報
【特許文献2】特開平07−18778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の場合は、板状コアが接着剤を介して単に接着されるため、接着時に短時間加圧ロール等により加圧されても、加圧ロールから開放された状態では、板状コアにおける凹凸部の中空部空間は加圧から開放された状態となるため、1気圧の大気圧となっている。前記のようなパネル板に曲げ力が作用した場合には、例えば、片面側の面板に圧縮力が作用し、反対面側の面板に引張力が作用するようになり、圧縮力が作用する主に圧縮縁側の面板の座屈又は局部座屈を考慮して、板厚を設定する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体における金属板の板厚を変えることなく、その剛性を向上させた樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体では、接着剤を用いて第一及び第二の金属板で樹脂構造体を挟んで張り合わせた複合構造体であって、前記樹脂構造体は、その樹脂構造体の基部表面から立ち上がる壁部により筒状の立状体が複数形成されており、前記壁部における溶融される壁部先端部と第一の金属板が接着剤を介して溶着され、樹脂構造体における溶融される基部裏面と第二の金属板が接着剤を介して溶着され、前記各立状体が第一及び第二の金属板とで挟まれて密閉空間を形成されており、前記密閉空間の空気圧が1気圧より越えた状態に加圧されていることを特徴とする。
【0008】
第2発明の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体では、接着剤を用いて金属板と樹脂構造体とを張り合わせた複合構造体であって、前記樹脂構造体は、その基部表面から立ち上がる壁部により形成される筒状の立状体を複数備えていると共に、前記壁部における壁部先端部から形成される頂板部を有して前記基部表面から中空状に膨出する複数の突起を有し、樹脂構造体の溶融される基部裏面と金属板が接着剤を介して溶着され、前記各突起が前記金属板により塞がれて突起の中空部により密閉空間を形成されており、前記密閉空間の空気圧が1気圧より越えた状態に加圧されていることを特徴とする。
【0009】
第3発明では、第1発明又は第2発明の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体において、前記樹脂構造体が溶着された金属板の非溶着面側は、前記密閉空間内における空気圧の膨張力による外方へ膨らみが形成されており、前記膨らみは、前記立状体の密閉空間ごとに形成されていることを特徴とする。
第4発明では、第1発明〜第3発明の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体において、前記壁部における溶融される壁部先端部は、加熱及び加圧されて押し潰されて拡幅壁部が形成されて溶着する部分の面積が増大された状態で、溶着されていることを特徴とする。
【0010】
第5発明では、第1発明〜第4発明のいずれかの樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体において、前記拡幅壁部は、溶着されている部分に向って漸次壁部の壁厚寸法が大きくなるように形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によると、接着剤を用いて第一及び第二の金属板で樹脂構造体を挟んで張り合わせた複合構造体であって、前記樹脂構造体は、その樹脂構造体の基部表面から立ち上がる壁部により筒状の立状体が複数形成されており、前記壁部における溶融される壁部先端部と第一の金属板が接着剤を介して溶着され、樹脂構造体における溶融される基部裏面と第二の金属板が接着剤を介して溶着され、前記各立状体が第一及び第二の金属板とで挟まれて密閉空間を形成されており、前記密閉空間の空気圧が1気圧より越えた状態に加圧されているので、複合構造体に曲げ力が作用した場合の圧縮縁側の面板には、空気圧による初期引張力が作用している状態であるので、圧縮力に初期引張力が打ち消されるまで変形を生じないので、その分、各金属板の板厚を変えることなく、簡単な構造で、複合構造体の剛性を高めることができる等の効果が得られる。また、立状体を複数備えた樹脂構造体を各金属板に溶着することで、空気圧が1気圧より越えた状態に加圧されている密閉空間を形成することができる等の効果が得られる。また、空気が充填されている密閉空間を備えた曲げ剛性の高い断熱パネルとすることができる等の効果が得られる。
【0012】
第2発明によると、接着剤を用いて金属板と樹脂構造体とを張り合わせた複合構造体であって、前記樹脂構造体は、その基部表面から立ち上がる壁部により形成される筒状の立状体を複数備えていると共に、前記壁部における壁部先端部から形成される頂板部を有して前記基部表面から中空状に膨出する複数の突起を有し、樹脂構造体の溶融される基部裏面と金属板が接着剤を介して溶着され、前記各突起が前記金属板により塞がれて突起の中空部により密閉空間を形成されており、前記密閉空間の空気圧が1気圧より越えた状態に加圧されているので、樹脂構造体の基部裏面側を金属板に溶着することで、突起の中空部を密閉空間とすることができ、また、その密閉空間の空気圧を1気圧より越えた状態に加圧して溶着した複合構造体とすることができる等の効果が得られる。
【0013】
第3発明では、第1発明又は第2発明の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体において、前記樹脂構造体が溶着された金属板の非溶着面側は、前記密閉空間内における空気圧の膨張力による外方へ膨らみが形成されており、前記膨らみは、前記立状体の密閉空間ごとに形成されているので、立状体の密閉空間ごとに形成されている膨らみにより、その部分の金属板に引張力を常時作用している状態であるので、前記膨らみがない場合に比べて、前記膨らみがあることで、複合構造体の板厚方向の中立軸からの距離が遠くなる分、及び密閉空間内の空気圧が1気圧を超えた状態であるので、内圧により初期引張力を前記膨らみの部分全体に作用させることができ、その分、膨らみ部分の剛性を高めることができ、膨らみ部分の局部座屈等が起きないようにすることができる等の効果が得られる。
【0014】
第4発明によると、壁部における溶融される壁部先端部は、加熱及び加圧されて押し潰されて拡幅壁部が形成されて溶着する部分の面積が増大された状態で、溶着されているので、樹脂構造体の金属板に対する溶着を強固な溶着とすることができ、また、樹脂構造体における溶着部分の面積が増大していることで、樹脂構造体側の接合部を強固な接合とすることができる等の効果が得られる。
【0015】
第5発明によると、拡幅壁部は、溶着されている部分に向って漸次壁部の壁厚寸法が厚くなるように形成されていることで、樹脂構造体から金属板への応力の伝達、或いは金属板から樹脂構造体への応力の伝達をスムースに伝達することができる等の効果が得られる。また、金属板と樹脂構造体の溶着部においては、立状体の壁間距離が小さくなることから壁間の金属板のスパンも小さくなり、その部分の金属板の剛性を向上させることができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)は本発明の第1実施形態の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体を示す縦断正面図、(b)は(a)のA部を拡大して示す縦断正面図である。
【図2】図1に示す本発明の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体の斜視図である。
【図3】(a)は本発明の第1実施形態の複合構造体を製造すべく、樹脂構造体を加熱された金属板に溶着して張り合わせる直前の状態を示す縦断正面図、(b)は(a)のB部を拡大して示す縦断正面図である。
【図4】(a)は本発明の第2実施形態の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体を示す縦断正面図、(b)は(a)のC部を拡大して示す縦断正面図である。
【図5】(a)及び(b)は、本発明の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体の製造工程の一形態を示す概略図である。
【図6】(a)は本発明の第2実施形態の複合構造体を製造すべく、樹脂構造体を加熱された金属板に溶着して張り合わせる直前の状態を示す縦断正面図、(b)は(a)のD部を拡大して示す縦断正面図である。
【図7】(a)は本発明の第3実施形態の複合構造体を製造すべく、樹脂構造体を加熱された金属板に溶着して張り合わせる直前の状態を示す縦断正面図、(b)は(a)のE部を拡大して示す縦断正面図である。
【図8】(a)は本発明の第3実施形態の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体を示す縦断正面図、(b)は(a)のF部を拡大して示す縦断正面図である。
【図9】(a)は本発明の第4実施形態の複合構造体を製造すべく、樹脂構造体を加熱された金属板に溶着して張り合わせる直前の状態を示す縦断正面図、(b)は(a)のG部を拡大して示す縦断正面図である。
【図10】(a)は本発明の第4実施形態の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体を示す縦断正面図、(b)は(a)のH部を拡大して示す縦断正面図である。
【図11】(a)は本発明において用いる樹脂構造体の一形態を示す一部縦断斜視図、(b)は(a)の縦断正面図、(c)は平面図である。
【図12】(a)は本発明において用いる樹脂構造体の他の形態を示す一部縦断斜視図、(b)は(a)の縦断正面図、(c)は平面図である。
【図13】(a)は本発明において用いる樹脂構造体のさらに他の形態を示す一部縦断斜視図、(b)は(a)の縦断正面図、(c)は平面図である。
【図14】立状体内の密閉空間の空気圧が高まることにより金属板が膨出されている場合の作用を説明するための説明図である。
【図15】(a)は本発明において用いるさらに他の樹脂構造体を製作する直前の状態を示し、樹脂構造体における立状体の壁部先端部に頂板部がある場合に、樹脂構造体の基部裏面を厚板の金属板に溶着して張り合わせる直前の状態を示す縦断正面図、(b)は(a)のI部を拡大して示す縦断正面図である。
【図16】図15の状態から樹脂構造体を加熱された金属板に加圧されて溶着された状態を示す縦断正面図、(b)は(a)のJ部を拡大して示す縦断正面図である。
【図17】樹脂構造体における立状体の壁部先端部に頂板部がある場合に、樹脂構造体の基部裏面をシート状の金属板に溶着して張り合わせる直前の状態を示す縦断正面図、(b)は(a)のK部を拡大して示す縦断正面図である。
【図18】図17の状態から樹脂構造体を加熱されたシート状の金属板に加圧されて溶着された状態を示す縦断正面図、(b)は(a)のL部を拡大して示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1〜図3は、本発明の第1実施形態の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体1を示すものであって、図1(a)は樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体1の縦断正面図、(b)は(a)のA部を拡大して示す縦断正面図、図2は樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体1の斜視図、図3(a)は発明の第1実施形態の樹脂構造体を溶着して金属板に張り合わせる直前の状態を示す縦断正面図、(b)は(a)のB部を拡大して示す縦断正面図である。
【0019】
本発明の複合構造体1は、板状であり、前記第1実施形態の複合構造体1では、その板厚方向の中心部に、樹脂構造体2が配置されていると共に、樹脂構造体2の表裏両面は、加熱された第一の金属板3と第二の金属板4に設けられた接着剤層を形成している接着剤5の部分で、第一の金属板3と第二の金属板4に溶着されている。
【0020】
本発明では、樹脂構造体2の構造により、樹脂構造体2を少なくとも1枚の金属板に接着剤5を介して溶着することにより、樹脂構造体2と金属板とが共同して、空気圧が1気圧よりも超えた状態に加圧された密閉空間6を形成している形態であればよい。第1実施形態では、樹脂構造体2の基部表面15(図3参照)から起立するように立ち上がる壁部7による筒状の立状体8の壁部先端部9と樹脂構造体2の基部裏面10を、第一の金属板3と第二の金属板4により挟んで溶着していることで、筒状の立状体8の内側を密閉空間6としている。前記の密閉空間6内の空気圧は、通常、大気圧下で使用することを想定している場合は、1気圧の大気圧よりも高くすることで、密閉空間6内の空気圧による内圧を高め、これにより密閉空間6を囲む壁部7からなる立状体8及び第一の金属板3と第二の金属板4に予め初期の引張応力を導入している。これにより、面外方向の曲げ力が作用した場合に、初期の引張応力が打ち消されるまで、変形が生じないようにすることで、結果的に剛性を高めて、座屈又は局部座屈が極力生じないようにしている。使用される場所の気圧よりも前記密閉空間6の空気圧による内圧を高めるように設定されている。密閉空間6内の空気圧としては、例えば、1気圧(101325Pa=760mmHg(Torr))<密閉空間6内の空気圧≦1.1気圧〜2.0気圧に設定される。前記の密閉空間6内の空気圧は、加圧力及び加圧時における樹脂構造体2の溶融に伴う高さ変化を調整することで、調整することができる。
【0021】
本発明において、樹脂構造体2を金属板3、4に溶着する理由は、例えば、加熱された金属板3、4の熱により、樹脂構造体2における加圧溶着して接合すべき部分を、溶融すると共に、樹脂構造体2又は樹脂構造体2における立状体8軸方向の高さ寸法(壁部7の高さ寸法)を、加熱加圧前の状態よりも若干小さくするためであり、樹脂構造体2又はその壁部7の高さ寸法が小さくなる分、予め立状体8の軸方向の高さ寸法を大きくした樹脂構造体2としておくことが望ましい。このようにすることで、密閉空間6の空気圧を高め、その状態で溶着を完了させることで、密閉空間6を囲む立状体8及び第一の金属板3と第二の金属板4に予め初期の引張応力を導入するためでもある。また、密閉空間6内の空気による空気圧を、金属板3、4と樹脂構造体2とを溶着することで容易に高めて、これらからなる複合構造体1を安価に製造することができる利点がある。膨らみ11(図4参照)に面外方向の曲げ力が作用した場合に、局部座屈或いは座屈しにくいように剛性を高めた複合構造体1とすることができるようにされている。また、密閉空間内の空気圧が1気圧よりも増加することにより、樹脂構造体2の裏面又は表裏に張り合わせた金属板の共振周波数が高くなり、周波数の低い領域で使用される場合には、共振しにくいため剛性則により複合構造体全体としての遮音性能が向上する。
【0022】
複合構造体2を製造する形態は、連続的に製造しても、断続的に製造してもよく、例えば、連続して製造する場合には、樹脂構造体2の両面を接着剤を介して金属板に溶着した複合構造体1を製造する場合には、図5(a)に示すような製造形態により製造し、樹脂構造体2の片面を接着剤を介して金属板に溶着した複合構造体1を製造する場合には、図5(b)に示す形態により製造するようにすればよい。また、断続的に製造する場合には、図示を省略するが、短尺の所定長さの樹脂構造体2の片面又は両面を、接着剤を介して短尺の所定長さの金属板に溶着することで、複合構造体1を製造するようにしてもよい。
【0023】
図5について簡単に説明すると、加熱炉23により加熱された第一の金属板3の熱により、第一の金属板3に加圧された状態で接する樹脂構造体2における各立状体8の壁部先端部9を溶融して接着剤を介して第一の金属板3に溶着し、かつ加熱炉23により加熱された第二の金属板4の熱により、第二の金属板4に加圧された状態で接する樹脂構造体2における基部裏面10を溶融して接着剤を介して第二の金属板4に溶着した形態の複合構造体1とする場合には、図5(a)に示すようにする。図5(a)の場合は、第1コイル20から繰り出される帯状の第一の金属板3の片面に、接着剤塗布ローラー或いは接着剤吹き付け装置等の接着剤塗布手段21により接着剤5を塗布して接着剤付きの帯状の第一の金属板3とし、これを、樹脂構造体を巻回したリール22から繰り出される帯状の樹脂構造体2に沿わせると共に、さらに、第2コイル25から繰り出される帯状の第二の金属板4の片面に、接着剤塗布手段21により接着剤5を塗布して接着剤付きの帯状の第二の金属板4とし、これを、樹脂構造体を巻回したリール22から繰り出される帯状の樹脂構造体2に沿わせて、加熱炉23等により帯状の樹脂構造体2の融点に近い温度に各金属板を加熱している。
前記の場合、立状体8側の溶着よりも基部裏面10側の溶着の熱量が十分必要な場合には、帯状の樹脂構造体2の立状体8側の第一の金属板3に接触する側の金属製ロール17を、樹脂構造体2の融点よりも0℃〜−5℃程度低く、帯状の樹脂構造体2の基部裏面10側の第二の金属板4に接触する金属製ロール17を、樹脂構造体2の融点よりも+5℃〜+15℃高くするようにするとよい。
図5(b)の場合は、第1コイル20から繰り出される帯状の第一の金属板3の片面に、接着剤塗布ローラー或いは接着剤吹き付け装置等の接着剤塗布手段21により接着剤5を塗布して接着剤付きの帯状の第一の金属板3とし、これを、複合構造体を巻回したリール22から繰り出される帯状の樹脂構造体2に沿わせて、加熱炉23等により帯状の樹脂構造体2の融点に近い温度に金属板を加熱する。また、駆動装置(図示を省略した。)により回転駆動される上下の金属製ロール17により金属板を加圧することで、金属板に接した帯状の樹脂構造体2の接着面側を溶融して、金属製ロール17により加圧することで密着させて、帯状の第一の金属板3に帯状の樹脂構造体2を溶着する。
前記の場合、帯状の樹脂構造体2に接触する側の金属製ロール17は、特に加熱等を必要としないが、その他の金属板3の加熱手段として金属板に接触する金属製ロール17を、樹脂構造体2の融点よりも+5℃〜+15℃とすることで、加熱された金属板に接する帯状の樹脂構造体2における溶着する面側を溶融して、加圧して密着させた状態で溶着して連続した帯状の複合構造体1を製造してもよい。上記手段により金属板3を接着剤5を介して樹脂構造体2に溶着した後、走行切断機等の切断装置により所定の長さに切断されると共に、空冷又は水冷等の手段により冷却することで所定の長さの複合構造体1を製造するようにする。
なお、連続した帯状の樹脂構造体2の基部裏面側を帯状の金属板に溶着する場合には、帯状の樹脂構造体の下側から金属板を、適宜ガイドロール24を設けて沿わせるようにし、金属板を加熱炉23により加熱すると共に金属製ロール17により樹脂構造体2に向って加圧することで、樹脂構造体2の基部裏面側を溶融して溶着するようにすればよい。
【0024】
加熱された金属板に圧着することで樹脂構造体2の接着剤塗布面側を溶融して金属板に当接し、加圧して溶着する場合に、樹脂構造体の接着面側を溶融する形態としては、次の(1)〜(3)のいずれの形態を採用するようにしてもよい。
(1)第一の金属板3又は第二の金属板4に接触する金属製ロールを加熱することで、加熱された金属板により樹脂構造体2の接着面側を溶融する形態。
(2)加熱炉23を熱風を吹き付けて金属板を加熱する熱風加熱炉とし、樹脂構造体を金属板と共に加熱炉内に通すことで、金属板を加熱し、加熱された金属板に圧着することで接着剤塗布面側を溶融し、金属製ロールは、加圧ロールとして用いる形態でもよい。
(3)加熱炉23を高周波誘導加熱により金属板を加熱する加熱炉とし、高周波誘導加熱装置内に樹脂構造体を金属板と共に通すことで、金属板を加熱し、加熱された金属板に圧着することで接着剤塗布面側を溶融し、金属製ロールは、加熱及び加圧ロールとして用いる形態でもよい。
【0025】
なお、連続した第一の金属板3及び第二の金属板4並びに樹脂構造体2に代えて、第一の金属板3及び第二の金属板4並びに樹脂構造体2を、短尺の矩形或いは長方形等の所定の最終製品寸法形態としたものを、加熱された金属板(第一の金属板3及び第二の金属板4)に圧着することで樹脂構造体2の接着面側を溶融して、金属板と共に外側から加圧して張り合わせるようにしてもよい。
【0026】
第一の金属板3等の金属板の加熱温度は、樹脂構造体2の材質がその全体に渡って均質でないために、局部的には想定している融点以下の温度で溶融が起こる場合、おおよそ、樹脂構造体2の融点(℃)±10℃の範囲で設定される。例えば、樹脂構造体2を形成している樹脂がオレフィン系樹脂で、その融点が170℃の場合、160℃〜180℃の範囲、例えば、170℃前後の範囲で設定される。前記金属製ロール17の温度(℃)は、製造方法にもよるが、例えば、前記温度170℃よりも若干高く設定される。
【0027】
前記の場合に、樹脂構造体2を加熱された金属板3(4)に当接した後の金属製ロール17による加圧時間及び接着剤5の厚さは、設計により設定される。金属板3(4)の板厚及び接着剤にもよるが、前記の接着剤5の厚さ寸法としては、例えば、3〜20μmの範囲、加圧時間としては0.05秒〜1秒程度に設定される。溶着後、適宜ブロワーやミストクーラー等で送風して複合構造体1を冷却する。
【0028】
ここで、本発明において用いられる部材について説明する。
【0029】
前記金属板3、4としては、鋼板、アルミ合金板、ステンレス板、亜鉛合金板、銅板、或いはその他の金属板を用いるようにしても、或いは表面をメッキ処理した金属板を使用するようにしてもよい。金属板3、4としては、連続した又は短尺の板状又はシート状の金属板を用いるようにしてもよい。金属板3、4の板厚寸法は、建築部分における床材、或いは屋根材等、使用される場所により、適宜設計により板厚等は設定される。
【0030】
本発明においては、立状体8における密閉空間6内の空気圧により、また、金属板の板厚により、金属板3、4が膨出されない場合と断面円弧状等に膨出される場合とがある。例えば、膨出して変形しないように所定の厚板とされる場合には、密閉空間6内の空気圧により密閉空間6の部分の金属板3、4の部分に引張力が作用した状態とされ、また、シート状の薄板の金属板とされる場合には、空気圧により断面円弧状に膨出した膨らみ11(図4参照)を形成し、かつ空気圧により断面円弧状に膨出された部分に、引張力が作用している状態とされる。前記のように薄板の金属板3、4が膨らみ11を形成していることで、曲げ力を受けた場合に、図14に示すように、膨らみ11の部分は、中立軸Xからの距離(r´)が、膨らみ11を持たない場合の距離(r)に比べて、距離の3乗に比例して大きくなるため剛性が高くなり有利であると共に、密閉空間6内の空気圧による膨張力がさらに作用して、膨らみ11部分は、初期引張力が作用していることから、曲げ力による圧縮力が作用しても、前記の初期引張力が圧縮力により打ち消されるまで変形を生じない点で有利に作用する。
【0031】
前記金属板3、4は、接着剤を塗布するまでに、適宜下地処理をするのが望ましい。熱により活性化する接着剤を用いるようにするとよく、熱により活性化する接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤、ウレタン系接着剤等を用いるようにすればよい。
【0032】
次に、本発明の複合構造体1に用いられる樹脂構造体2の各種形態について、図を参照しながら説明する。本発明を実施する場合、前記の樹脂構造体2としては、連続した形態或いは短尺の形態でもよく、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂等のオレフィン系樹脂、その他の合成樹脂を使用する。樹脂構造体2の厚さ寸法は、建築部分における床材、或いは屋根材等、使用される場所により、適宜設計により板厚等は設定される。
【0033】
樹脂構造体2は、例えば、図11(a)(b)(c)〜図12(a)(b)(c)に示すように、平板状の基部12を備え、その基部12の表面から立ち上がる壁部7を一体に備えている。前記壁部7が筒状とされている場合には、その壁部7により筒状の立状体8が、前後方向及び左右方向に間隔をおいて複数形成され、又は、図13(a)(b)(c)に示すように、前後方向及び左右方向に連続するように、複数形成されている。
【0034】
より具体的に各図を参照して説明すると、図11(a)(b)(c)に示す形態では、板状の基部12の表面から円筒状に立ち上がるように断面円形等の周側壁を一体に形成した壁部7による筒状の立状体8が、板状の基部12の前後方向(部材長手方向)及び左右方向(部材幅方向)に間隔をおいて千鳥状配置に形成され、また、前記立状体8と同心状に基部12の平板部に貫通孔が形成されて、基部を貫通するような筒状の立状体8とされている。前記の立状体8の配置形態は、前記実施形態では、一つの立状体8を中心として、その回りに等角度間隔(図示の形態では、60°の等角度間隔)をおいて設けられている。基部12よりも壁部7の板厚寸法は小さくされ、壁部先端部9に向って漸次、壁厚寸法が小さくなるように形成されている。
【0035】
図12(a)(b)(c)に示す樹脂構造体2では、前記の図11(a)(b)(c)に示す形態と相違している部分は、壁部7の壁部先端部9に接続する頂板部13を備え、壁部7における壁部先端部が頂板部13により閉塞され、頂板部13を含めた立状体8が全体としてキャップ状の突起14とされていることで相違している。図12(a)(b)(c)に示す形態では、前記壁部7における壁部先端部9から一体に形成される頂板部13を有し、立状体8における周側壁の全周の壁部先端部9から頂板部13が形成されていることで、基部表面から中空状に膨出する複数のキャップ状の突起14が形成されている。前記の頂板部13の寸法は、前記の壁部7の板厚寸法よりも小さくされている。
【0036】
図13(a)(b)(c)に示す樹脂構造体2では、壁部7は、基部12から立ち上がるように、前後方向に連続した前後方向の壁部7と、部材幅方向の左右方向の壁部7とが、間隔をおいて形成されていると共に直角に交差するように形成されていることで、隣接する立状体8との間で周側壁を共通する連続する立状体8を形成した形態の樹脂構造体2とされている。
【0037】
前記のように、樹脂構造体2における立状体8が、樹脂構造体2の表裏両面に貫通するような筒状の立状体8である場合には、樹脂構造体2の表裏両面を、それぞれ金属板3、4に溶着することで、各立状体8と表裏の金属板3、4とで、共同して加圧された密閉空間6を形成することができる。
【0038】
図1〜図3に示す形態では、図11に示す形態の樹脂構造体2の立状体8の壁部先端部9側及び基部裏面10側(特に、加圧される部分)を、接着剤5が塗布され加熱炉23により加熱された第一の金属板3又は第二の金属板4により挟むように配置すると共に、第一の金属板3と第二の金属板4の外側から駆動装置(図示を省略した。)により回転駆動される金属製ロール17で挟んで加圧(又は加熱と加圧)することで、金属板3、4の熱により樹脂構造体2の立状体8の壁部先端部9側及び基部裏面10側を溶融し、接着剤5を介して溶着した形態である。図示を省略するが、樹脂構造体2の立状体8の壁部先端部9側又は基部裏面10側の両側を同時に金属板に溶着する以外にも、樹脂構造体2の立状体8の壁部先端部9側又は基部裏面10側の片側づつ、接着剤5が塗布され加熱された第一の金属板3又は第二の金属板4ごとに、加圧するように溶着してもよい。樹脂構造体2を片側づつ溶着する場合には、金属板が配置されず溶着されない樹脂構造体2の面は、溶融する必要がないから、樹脂構造体2と直接接触する金属製ロール17は加熱する必要はない。
【0039】
樹脂構造体2における壁部先端部9及び基部裏面10(特に、壁部7の基部裏面側)側は、加熱された金属板3、4の熱により加熱されて溶融された状態で、かつ加圧ロール(金属製ロール17)等により加圧されることで、溶融した部分が押し潰されて、拡幅壁部7aが形成されて、溶着する部分の面積が増大された状態で、溶着されている。そのため、樹脂構造体2と金属板3、4との溶着を強固な溶着とすることができる。また、加熱された金属板3、4から樹脂構造体2への熱伝導による溶融は徐々に進行するものであるため、前記の拡幅壁部7aは、溶着されている部分に向って漸次壁部の壁厚寸法が厚くなるように形成されており、そのため、溶着が確実で強固な溶着とされている。
【0040】
前記の基部裏面10側では、基部裏面10における壁起立裏面部18が接着剤5を介して金属板4に溶着されている。前記の壁起立裏面部18は、基部裏面10側であって、立状体8における基端側の基部裏面10側の部分であり、樹脂構造体2の基部裏面10側を第二の金属板4の熱を利用して溶融すると共に加圧して溶着する場合に、立状体8を基部裏面側に延長した部分が加圧及び熱により特に溶融することで、立状体8における基端側の基部裏面側寄り部分に、金属板側に向って幅寸法が漸次大きくなる拡幅壁部7a壁が形成されて、加圧されて溶着される面積が増大する。そのため、立状体8を有する樹脂構造体2の基部裏面10側を、確実に溶着して、接合強度を溶融しない場合に比べて向上させることができる。
【0041】
また、前記拡幅壁部7aは、溶着されている部分に向って漸次壁部の壁厚寸法が厚くなるように形成されていることで、樹脂構造体2から各金属板3、4への応力の伝達、或いは各金属板3、4から樹脂構造体2への応力の伝達をスムースに伝達することができる。また、金属板3、4と樹脂構造体2の溶着部においては、立状体の壁間距離が小さくなることから壁間の金属板部分のスパンも小さくなり、その部分の金属板の剛性を向上させて、曲げ力が作用した場合の変形を小さくすることができる等の効果が得られる。
【0042】
前記のような樹脂構造体2と鋼板等の金属板3、4との複合構造体1を製作する場合には、図3に示すように、接着剤が塗布されて加熱された金属板3、4間に、樹脂構造体2を配置して、加圧ロール(図示を省略した)により加圧力を作用させて、前記樹脂構造体2を挟んで、前記樹脂構造体2を加熱された金属板3、4により、樹脂構造体2における壁部先端部9及び基部裏面10側を一部溶融することで、接着剤と樹脂構造体2との溶着、及び溶融された接着剤を金属板3、4に溶着して、ブロワーやミストクーラー等で冷却することで、樹脂構造体2及び金属板3(4)の収縮(樹脂構造体2の方が金属板よりも熱膨張率が大きい)の違いもあり、一層、密閉空間6内の圧力を高めた状態で確実に溶着するようにしている。
【0043】
前記の加圧力としては、設計により予定する密閉空間6内の空気圧により適宜設定される。例えば、加圧用の金属製ロールによる加圧圧力として、長さ1m当り、35〜50kg程度の線状の加圧によるとよい。金属製ロールによる線接触による線状の加圧方法以外にも、金属板全面を加圧する面状の加圧としてもよいが、複合構造体1を製作する上では、ロールによる線状加圧のほうが有利である。例えば、溶着する前の密閉空間6内の空気圧をP(kg/mm2)とし複数の立状体8に渡る長さl当りの荷重をW(kg/mm)、溶着した後の密閉空間6内の空気圧をP´(kg/mm2)とし、複数の立状体8に渡る長さl当りの合計の加圧荷重をW´(kg/mm)とした場合、荷重増加分は、W´−W=(P´−P)lとなり、密閉空間6内の内圧増加は、(W´−W)/l
となる。
【0044】
加熱温度(℃)は、樹脂構造体2は、全体にわたり均質ではないため、おおよそ、樹脂の融点(℃)±10℃の範囲において、適宜、工場内の温度等を考慮して、加熱用の金属ロールと金属板3、4の接触時間等を調整して行う。
【0045】
前記樹脂構造体2、各種金属板3、4、各種公知の接着剤を、設計により適宜、選択して、所望の性能を発揮する複合構造体1を製作するようにする。
【0046】
前記のように、樹脂構造体2の表裏両面の金属板3,4に溶着してもよいが、図15に示すように、樹脂構造体2が、その壁部先端部から一体に連設された頂板部13を有し、断面凸形又は凹形の溝部を形成している形態の突起14を、前後方向及び左右方向に間隔をおいて備えた形態では、その基部裏面10を金属板4に溶着することで、樹脂構造体2と1枚の金属板4とからなる、片面金属板付きの複合構造体1とすることもできる。そのような片面金属板付きの複合構造体1における樹脂構造体2の突起14の頂板部13側の壁部先端部9を、接着剤が塗布されて加熱された金属板3に押し付けて溶融して溶着することで、図7〜図8に示す複合構造体1とすることができる。図9〜図10に示すように、金属板3、4の板厚寸法が小さい場合には、頂板部13が断面円弧状に金属板と共に膨出する形態となっていてもよい。このように頂板部13が断面円弧状に膨出する形態となっていると、複合構造体1の表面が千鳥状等に膨出していることで、美観出して意匠効果を高めることができる。
【0047】
図7〜8に示す複合構造体1は、後記の実施形態でも同様であるが、金属板3、4と接着剤を介して接触している樹脂構造体2が加熱・加圧されて溶融される部分で、溶着されていることで、確実に溶着させることができるため、溶融されていない部分の樹脂構造体2又は加圧ロールにより加圧されていない部分の樹脂構造体2或いは頂板部13の外表面等の接着剤が単に接触している部分(或いは頂板部13の外表面は接着剤が塗布されていなくてもよい)は、溶着されていなくてもよい。
【0048】
図4、図6には、本発明の第2実施形態の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体1が示されている。この形態では、金属板3、4として、板厚寸法が、例えば、0.01mm〜2mmの鋼板或いはステンレス板等の金属板3、4が用いられ、そのような金属板3、4に樹脂構造体2が溶着されている。
【0049】
第2実施形態のように、第一の金属板3及び第二の金属板4の板厚寸法が小さくなると、密閉空間6の空気圧の膨張力により、第一の金属板3及び第二の金属板4の樹脂構造体2の溶着部分内側を外側に向って凸に突出する膨らみ11が立状体8の密閉空間6ごとに形成されている。壁部先端部9側が溶着されている第一の金属板3側の膨らみ11が、基部裏面側が溶着されている第二の金属板4の膨らみ11よりは、その周囲が溶着されて拘束される度合いが小さいために、膨らみ11が大きくなっている。前記のように、第一の金属板3と第二の金属板4を部分的に膨らみ11を形成する上でも、樹脂構造体2を溶着することで、第一の金属板3及び第二の金属板4との溶着時の樹脂構造体2の接合部の溶融による変形の自由度を確保した状態で溶着している。前記のように、第一の金属板3と第二の金属板4との溶着部分の内側部分を、密閉空間6部分の空気圧による膨張力により膨らみ11を形成していると、空気圧により初期引張力が作用することで、曲げ力が作用し圧縮力を受けた場合に、初期引張力が消失するまで、変形が生じないため、座屈を抑制して、結果的に剛性を高めることができると共に、複数の膨らみ11により美観を生じ意匠性が向上する。
【0050】
前記膨らみ11は、前記立状体の密閉空間6ごとに形成されているので、その部分の金属板に引張力を常時作用している状態であり、図14(a)に示すように、前記膨らみ11がない場合に比べて、図14(b)に示すように、前記膨らみ11があることで、複合構造体1の板厚方向の中立軸Xからの距離が遠くなる分、面内方向X軸周りの断面二次モーメントが大きくなるため、剛性を向上させることができる。また、複合構造体1は、通常、大気圧下又は加圧雰囲気内に配置されて使用される場合が多いため、前記密閉空間6内の空気圧が1気圧を超えた状態であるので、内圧により初期引張力を前記膨らみ11の部分全体に作用させることができ、その分、膨らみ部分の剛性を高めることができ、膨らみ部分の局部座屈等が起きないようにすることができる。
【0051】
図14(a)(b)を参照してさらに説明する。第一の金属板3と第二の金属板4の位置がかわらないように、樹脂構造体2を各金属板3、4に溶着していると仮定した場合について検討する。図14(a)に示すように、面内方向のX軸から前記密閉空間6に対応した金属板3、4部分(ハッチングを施した部分)の重心Gまでの距離をr、金属板3、4の板厚寸法をt、球面状に膨らむ部分の長さをl、面外方向への高さの増加分をΔh、一部球面状に膨らみ11を形成して変形した場合前記X軸から重心Gまでの距離をr´、図21(a)に示す形態のX軸周りの断面二次モーメントをI、一部球面状に変形した膨らみ11部分の断面二次モーメントをI´とする。例えば、l=10(mm)、t=1(mm)、r=5(mm)、Δh=1(mm)とすると、r’=5.672(mm)となり、また、I’=323.4(mm4)、I=250.8(mm4)となる。つまり、断面二次モーメントの増加分(I´−I)は、I’― I=72.6(mm4)となり、剛性を向上させることができる。
【0052】
図9及び図10には、本発明の第3実施形態の樹脂構造体と金属板との複合構造体1が示されている。この形態では、各立状体8の先端部に一体に頂板部13が形成された樹脂構造体2が用いられ、そのような樹脂構造体2の表裏両面を部分的に、加熱された金属板の熱を利用して溶融することで、鋼板等の薄板金属板からなる加熱された第一の金属板3と第二の金属板4に溶着している。なお、樹脂構造体2の表裏両面側を予め加熱して温度を高めた状態で、さらに加熱された金属板3、4による熱を利用して溶融するようにしてもよい。
【0053】
図15及び図16に示す形態と同様に、図17及び図18に示すように、頂板部13を有する形態の樹脂構造体2である場合には、樹脂構造体2の基部裏面を溶融して接着剤を介して薄板の金属板3に溶着することで、裏面側の金属板3に外側に凸の膨らみ11を設けた形態で、立状体8からなる突起14の頂板部13を外側に凸に膨らみ11を形成した形態の複合構造体1とすることもできる。図15及び図16に示す形態の複合構造体1から、突起14側を、第二の金属板4における金属板の熱を利用して、加熱溶融して、金属板4側の接着剤5を介して加熱溶着することで、図4、図6に示す形態の複合構造体1とすることができる。
【0054】
図13に示すような形態の樹脂構造体2では、隣り合う立状体8相互は、一部の壁部7を共通とする立状体8が前後方向及び左右方向に連続しているため、このような樹脂構造体2を、金属板に溶着すると、前後方向及び左右方向に小間隔をおいて連続して、密閉空間を形成することができる。
【0055】
本発明を実施する場合、前記金属製ロール17は、ロール表面にゴム等をライニングしていてもよい。また、金属製ロール17は、回転可能なロールであれば駆動装置を備えていなくともよい。
【符号の説明】
【0056】
1 樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体
2 樹脂構造体
3 第一の金属板
4 第二の金属板
5 接着剤
6 密閉空間
7 壁部
7a 拡幅壁部
8 立状体
9 壁部先端部
10 基部裏面
11 膨らみ
12 基部
13 頂板部
14 突起
15 基部表面
17 金属製ロール
18 壁起立裏面部
20 第1コイル
21 接着剤塗布手段
22 リール
23 加熱炉
24 ガイドロール
25 第2コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を用いて第一及び第二の金属板で樹脂構造体を挟んで張り合わせた複合構造体であって、
前記樹脂構造体は、その樹脂構造体の基部表面から立ち上がる壁部により筒状の立状体が複数形成されており、
前記壁部における溶融される壁部先端部と第一の金属板が接着剤を介して溶着され、
樹脂構造体における溶融される基部裏面と第二の金属板が接着剤を介して溶着され、
前記各立状体が第一及び第二の金属板とで挟まれて密閉空間を形成されており、前記密閉空間の空気圧が1気圧より越えた状態に加圧されていること
を特徴とする樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体。
【請求項2】
接着剤を用いて金属板と樹脂構造体とを張り合わせた複合構造体であって、
前記樹脂構造体は、その基部表面から立ち上がる壁部により形成される筒状の立状体を複数備えていると共に、前記壁部における壁部先端部から形成される頂板部を有して前記基部表面から中空状に膨出する複数の突起を有し、
樹脂構造体の溶融される基部裏面と金属板が接着剤を介して溶着され、
前記各突起が前記金属板により塞がれて突起の中空部により密閉空間を形成されており、前記密閉空間の空気圧が1気圧より越えた状態に加圧されていること
を特徴とする樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体。
【請求項3】
前記樹脂構造体が溶着された金属板の非溶着面側は、前記密閉空間内における空気圧の膨張力による外方へ膨らみが形成されており、前記膨らみは、前記立状体の密閉空間ごとに形成されていること
を特徴とする請求項1又は2記載に記載の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体。
【請求項4】
前記壁部における溶融される壁部先端部は、加熱及び加圧されて押し潰されて拡幅壁部が形成されて溶着する部分の面積が増大された状態で、溶着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体。
【請求項5】
前記拡幅壁部は、溶着されている部分に向って漸次壁部の壁厚寸法が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂構造体と金属板とからなる複合構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−78855(P2013−78855A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218570(P2011−218570)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】