説明

樹脂組成物及び積層体ならびに電池用容器

【課題】 高速で成形した場合においても高い接着強度を有し、且つ常温及び高温状態の何れにおいても高い接着強度を有する積層体及び該積層体の接着樹脂層として好適な樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 下記のプロピレン系変性樹脂(A)30〜65重量%とプロピレン系樹脂(B)70〜35重量%とを含有することを特徴とする樹脂組成物。
(A)プロピレン系樹脂(a)がエチレン性不飽和化合物(b)で変性され、且つ、融解ピーク温度が115〜135℃、80℃の貯蔵弾性率が100MPa以上、分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.8〜2.5であるプロピレン系変性樹脂

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及び該樹脂組成物を接着樹脂層とする積層体、並びに該積層体を用いた電池用容器に関する。より具体的には、本発明は、リチウムイオン電池などの二次電池用の容器として好適に使用することが可能な樹脂組成物及び積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池の外装材となる容器には、大抵の場合、ステンレスやアルミニウム等の金属容器が用いられていた。しかし、ノート型パソコン、携帯電話など各種の電子機器の発達、普及に伴い、機器の薄型化と軽量化が進められると共に、これらに使用される電池についても薄型化と軽量化が求められている。更に、近年の電気自動車、ハイブリッドカーなどの開発に伴い、リチウムイオン電池など、大出力、大容量の電池を多数集積する傾向があるが、軽量化の要求と共に放熱性向上の要求も高まっている。
【0003】
このような要望に応えるために種々のリチウムイオン電池が研究開発されており、電池の薄型化、軽量化、表面積拡大のために電池用容器の外装材として積層シートを用いることが検討されている。電池用容器の外装材に積層シートを使用する場合、例えば、積層シートを三方シール形式、四方シール形式、ピローパウチ形式などで一端が開口する袋状とし、内部に電池の構成材料を収納すると共に、電極端子を内部から開口部を通して外側に延長し、その開口部を熱ラミネート(熱接着)により封止して電池を形成する方法が挙げられる。或いは他の方法として、積層シートを周囲にフランジを備えた薄型のトレー状に成形し、その凹部に電池の構成材料を収納すると共に、電極端子を内部から外側に延長し、その上部を積層シートの蓋材で覆ってフランジ部を熱ラミネートして密封し、電池を形成する方法なども挙げられる。
【0004】
このような電池用容器に用いる積層シートには、その薄さおよび軽さと共に、機械的強度、電解液などに対する耐薬品性、水蒸気等に対するバリヤー性、シート同士のヒートシール性(自己ヒートシール性)、シートと電極端子とのヒートシール性など様々な性能が必要であるため、シートの構成として、例えば、外側から基材層、アルミニウム層、接着樹脂層、ヒートシール樹脂層を順に積層した構成等が採られている。
上記基材層には、例えば、2軸延伸ポリエステルフィルムや2軸延伸ナイロンフィルム等の単独フィルムや、これらを積層した積層シート等が使用でき、また接着性樹脂層には、しばしば酸変性ポリオレフィンが用いられ、ヒートシール樹脂層にはポリオレフィン系樹脂、多くの場合はポリプロピレン系樹脂の単層または積層体を好適に使用することができる。また、各層の積層の方法についても種々の方法が提案されている(特許文献1、2)。
【0005】
このような構成の積層シートを用いることにより、民生用、例えば携帯電話やパソコン用の電池容器を得ることができる。一方、昨今、電気自動車やハイブリッド自動車などの自動車用途に対しても、高出力という特徴を活かしたリチウムイオン電池が期待されており、より高い生産性が求められている。しかしながら、上記の従来技術における電池容器に用いる積層シートは、自動車用途や電力系統用途などへ適用可能なレベルの高速生産性はなかった。
例えば熱ラミネートや押出ラミネートにおいては、ラミネート速度を上昇させることで生産性を向上させることが出来るが、従来は速度の上昇によって接着強度が低下し、電池の品質が低下するという問題を有していた。この問題に対し、アルミニウムの表面に特殊な処理を施すことによって接着強度を上昇させる技術が提案されている(特許文献3)が、製造工程が複雑となるため、必ずしも安価で大量生産に向いた技術とは言えない。
【0006】
また、アルミニウム層との接着性を有する樹脂についても、変性樹脂を用いた技術が古くから提案されてきた(特許文献4、5)。これらは例えば食品包装材料に用いられたり、一部はリチウム電池包装材料用に発明されたものである。ここで、自動車用途の様に長時間の大出力が求められる用途や、短時間で高電圧での充電が必要な用途においては、電池の温度が高くなりがちであるが、特に高温雰囲気でのアルミニウムと接着樹脂層間の接着力については、大幅な改善はなされていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−216707号公報
【特許文献2】特開2001−176457号公報
【特許文献3】国際公開第02/063703号パンフレット
【特許文献4】特開2003−272570号公報
【特許文献5】特許平4−189537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述の通り、より高速化する成形速度においても高い層間接着強度を有し、しかも製造方法が簡便であり、且つ常温及び高温の何れの状態においても安定して高い接着強度を発現させるための手段は未だ見出せていない状況である。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、高速で成形した場合においても高い層間接着強度を有し、且つ常温及び高温状態の何れにおいても高い接着強度を有する積層体及び該積層体の接着樹脂層として好適な樹脂組成物を提供することにある。
また、本発明は、機械的強度、電解液などに対する耐薬品性、水蒸気等に対するバリヤー性、自己ヒートシール性、シートと電極端子とのヒートシール性などに優れ、リチウムイオン電池などの二次電池用の容器として好適に使用することが可能な積層体及び該積層体の接着樹脂層として好適な樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記した従来の技術においては、何れもプロピレン単独重合体やポリエチレンを変性した樹脂を接着樹脂層に用いていることに着目し、上記の目的を達成するため鋭意検討した結果、特定のプロピレン系変性樹脂と無変性のプロピレン系樹脂とを含有する樹脂組成物を接着樹脂層とすることにより、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は、以下の[1]〜[12]を要旨とする。
[1] 下記のプロピレン系変性樹脂(A)30〜65重量%とプロピレン系樹脂(B)70〜35重量%とを含有することを特徴とする樹脂組成物。
(A)プロピレン系樹脂(a)がエチレン性不飽和化合物(b)で変性され、且つ下記(1)〜(3)の特性を有するプロピレン系変性樹脂
(1)示差走査型熱量計により得られる融解曲線における融解ピーク温度が115〜135℃
(2)固体粘弾性測定により得られる温度−貯蔵弾性率曲線において、80℃の貯蔵弾性率(G’80)が100MPa以上
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定により得られる分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.5〜2.5
【0011】
[2] プロピレン系樹脂(B)が、プロピレン・エチレン−ブロック共重合体である[
1]の樹脂組成物。
[3] プロピレン系樹脂(B)が、プロピレン単独重合部(c)20〜50重量%と、エチレン含量が40〜70重量%、且つ重量平均分子量(Mw)が20万〜60万であるエチレン・プロピレン−ランダム共重合部(d)80〜50重量%とを含有し、230℃、21.2N荷重におけるメルトフローレートが2〜20g/10分であるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体である[1]の樹脂組成物。
[4] 更に、プロピレン系変性樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)の合計100重量部に対し、ポリエチレン(C)を1〜10重量部含有する[1]〜[3]の何れかの樹脂組成物。
[5] 少なくともアルミニウム層と接着樹脂層が接してなる積層体であって、該接着樹脂層が[1]〜[4]の何れかの樹脂組成物である積層体。
[6] 少なくとも前記アルミニウム層を有するシートと、少なくとも前記接着樹脂層を有するシートとを熱ラミネートして得られる[5]の積層体。
[7] 少なくとも基材層、アルミニウム層、接着樹脂層、ヒートシール樹脂層がこの順に積層されてなる[5]又は[6]の積層体。
[8] 少なくとも基材層及び前記アルミニウム層を有するシートと、少なくとも前記接着樹脂層及びヒートシール樹脂層を有するシートとを、該アルミニウム層と該接着樹脂層とを熱ラミネートすることにより得られる[7]の積層体。
[9] 少なくとも前記アルミニウム層を有するシートと、少なくともヒートシール樹脂層を有するシートとを、前記接着樹脂組成物を介してサンドイッチラミネートすることにより得られる[7]の積層体。
[10] 接着樹脂層の厚みが10〜50μm、且つヒートシール樹脂層の厚みが20〜80μmである[7]〜[9]の何れかの積層体。
[11] [7]〜[10]の何れかの積層体を、該ヒートシール樹脂層同士が対向するように重ね合わせ、その端縁部を袋状にヒートシールして形成した電池容器。
[12] [11]の電池容器を少なくとも有するリチウムイオン電池。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高速成形、特に高速で熱ラミネートやサンドイッチラミネート成形した場合においても高い層間接着強度を有し、且つ常温及び高温状態の何れにおいても高い接着強度を有する積層体及び該積層体の接着樹脂層として好適な樹脂組成物を提供することができる。
本発明によれば、機械的強度、電解液などに対する耐薬品性、水蒸気等に対するバリヤー性、自己ヒートシール性、シートと電極端子とのヒートシール性などに優れ、リチウムイオン電池などの二次電池用の容器として好適に使用することが可能な積層体及び該積層体の接着樹脂層として好適な樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に制限されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本明細書において、「〜」はその前後の数値を含む範囲を示すものとする。
【0014】
本発明の樹脂組成物は、プロピレン系変性樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)を含有することを特徴とする。
また、本発明の積層体は、少なくともアルミニウム層と接着樹脂層が接してなる積層体であって、該接着樹脂層に用いられる樹脂組成物が、プロピレン系変性樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)を含有することを特徴とする。以下、詳細に説明する。
【0015】
<プロピレン系変性樹脂(A)>
本発明においてプロピレン系変性樹脂(A)とは、プロピレン系樹脂がエチレン性不飽
和化合物でグラフトされたものである。ここで「エチレン性不飽和化合物でグラフトされた」とは、予めプロピレン系樹脂の共重合成分として該化合物を用いるのではなく、既に製造されているプロピレン系樹脂に対し、反応によって該化合物を結合させるものである。すなわち、本発明において「グラフト」とは、分子鎖長が長い側鎖として該化合物が導入される場合のみならず、プロピレン系樹脂に対して該化合物が化学結合していれば包含される。
【0016】
〔プロピレン系樹脂(a)〕
プロピレン系変性樹脂(A)の原料として用いるプロピレン系樹脂(a)は、プロピレンを主成分とする樹脂であれば限定されないが、通常、プロピレン単量体単位を50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上有する重合体であることが望ましい。
プロピレン系樹脂(a)として具体的には、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、特にプロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体が望ましい。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
ここで、プロピレンと共重合させるα−オレフィンは限定されないが、例えば、エチレンまたは炭素数4〜20のα−オレフィン等が挙げられる。炭素数4〜20のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等が挙げられる。更に、α−オレフィン以外の共重合成分として、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、ビニルアルコール等の極性モノマー;スチレン、スチレン誘導体等のスチレン系モノマー等が共重合されていてもよい。これらの単量体は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体またはブロック共重合体としては、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体が好ましい。
【0018】
プロピレン系樹脂(a)の融点は限定されないが、115〜135℃であることが好ましい。プロピレン系樹脂の融点が115℃未満であると、得られるプロピレン系変性樹脂(A)の融点が低くなり、該プロピレン系変性樹脂(A)を含有する接着樹脂層とアルミニウム層とを積層した場合に、高温時における層間の接着強度が低下する傾向がある。また、プロピレン系樹脂(a)の融点が135℃より高い場合、得られるプロピレン系変性樹脂(A)の融点が高くなるため、高速、低温でのラミネート接着強度が劣る傾向にある。
なお、プロピレン系樹脂(a)のTmは、示差走査型熱量計(DSC)を用い、昇温速度10℃/分にて測定した際の融解曲線における、融解ピーク温度を意味する。
【0019】
プロピレン系変性樹脂(A)の原料として用いるプロピレン系樹脂(a)の分子量は特に制約は無いが、プロピレン系樹脂の変性は一般にアルキルラジカルのβ開裂によって低分子量化が進行するため、変性後の樹脂の分子量がかなり小さくなってしまう。従って、プロピレン系樹脂(a)の分子量は比較的大きなものを用いることが好ましく、具体的には、重量平均分子量が20万以上、さらには30万以上のものが好ましい。
また、重量平均分子量を数平均分子量で除した分子量分布の好ましい範囲は、2.0〜3.0である。プロピレン系樹脂の分子量分布の値がこの範囲より高い(分布が広い)場合、得られるプロピレン系変性樹脂の分子量分布も高くなってしまい、低分子量成分の量が増えるなどプロピレン系変性樹脂(A)の物性に悪影響が生じる傾向にある。プロピレ
ン系樹脂の分子量分布ぼ値がこの範囲より低い(分布が狭い)ものは製造することが困難であるため、実質的に入手が困難である。
【0020】
ここでプロピレン系樹脂(a)の重量平均分子量及び分子量分布の測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により以下の通り行った値である。
装置:ウォーターズ社製 GPC 150C型
カラム:昭和電工社製 AD80M/S 3本
測定温度:140℃
濃度:20mg/10ml
溶媒:オルソジクロルベンゼン
【0021】
プロピレン系樹脂(a)としては、市販されている公知の樹脂を用いることができるが、本発明の樹脂組成物に好適なプロピレン系変性樹脂(A)を得る上で、日本ポリプロ社製「ウィンテックWFX6」などを好適に用いることができる。
【0022】
〔エチレン性不飽和化合物(b)〕
本発明においてエチレン性不飽和化合物(b)とは、1分子内にエチレン性不飽和結合を有する化合物であれば限定されないが、1分子内にエチレン性不飽和結合及び1種類以上の極性基とを合わせ持つ化合物であることが好ましい。エチレン性不飽和化合物が有する極性基としては、カルボキシル基、酸無水物基、水酸基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、イミド基、エステル基、アルコキシシラン基、酸ハライド基、およびニトリル基等が挙げられる。エチレン性不飽和化合物(b)としては、異なる極性基を有するエチレン性不飽和化合物を2種以上併用してもよい。
エチレン性不飽和化合物(b)の具体例としては、不飽和カルボン酸、その無水物または誘導体、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、アクリロニトリル、酢酸ビニル等が挙げられる。これらの中では、不飽和カルボン酸、その無水物または誘導体、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、およびエポキシ基含有エチレン性不飽和化合物が好ましい。
【0023】
前記不飽和カルボン酸及びその無水物の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸(商標))、メチル−エンドシス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(メチルナジック酸(商標))等の不飽和カルボン酸、及びこれらの無水物が挙げられる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、金属塩、飽和カルボン酸ハライド、不飽和カルボン酸アミド、不飽和カルボン酸イミドおよび不飽和カルボン酸のエステル等が挙げられる。
【0024】
酸無水物及び誘導体としては、具体的には、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、塩化マレニル、マレイミド、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエートおよびメタクリル酸メチルなどを挙げることができる。
これらの不飽和カルボン酸、その無水物または誘導体の中では、アクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸、メタクリル酸メチルが好ましい。
不飽和カルボン酸、その無水物または誘導体は、1種を単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。
【0025】
前記水酸基含有エチレン性不飽和化合物の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレ
ート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン(メタ)アクリレート、テトラメチロールエタンモノ(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−(6−ヒドロキシヘキサノイルオキシ)エチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができる。なお、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」または「メタクリレート」を意味し、(メタ)アクリル酸についても同様である。
【0026】
水酸基含有エチレン性不飽和化合物としては、10−ウンデセン−1−オール、1−オクテン−3−オール、2−メタノールノルボルネン、ヒドロキシスチレン、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、N−メチロールアクリルアミド、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、グリセリンモノアリルエーテル、アリルアルコール、アリロキシエタノール、2−ブテン−1,4−ジオール、グリセリンモノアルコールなどを使用することもできる。
これらの水酸基含有エチレン性不飽和化合物の中では、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
水酸基含有エチレン性不飽和化合物は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することができる。
【0027】
前記エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物の具体例としては、不飽和グリシジルエーテル類、エポキシアルケン類などが挙げられる。
より具体的なものとしては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、イタコン酸のモノまたはジグリシジルエステル、ブテントリカルボン酸のモノ、ジまたはトリグリシジルエステル、テトラコン酸のモノまたはジグリシジルエステル、エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸(商標))のモノまたはジグリシジルエステル、エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジメチル−2,3−ジカルボン酸(メチルナジック酸(商標))のモノまたはジグリシジルエステル、アリルコハク酸のモノまたはジグリシジルエステル、p−スチレンカルボン酸のグリシジルエステル、アリルグリシジルエーテル、2−メチルアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−エポキシ−1−ペンテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,5−エポキシ−1−ヘキセン、およびビニルシクロヘキセンモノオキシドなどが挙げられる。
これらの中ではグリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートが好ましい。
エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することができる。
【0028】
以上の中でも、エチレン性不飽和化合物(b)としては、変性(グラフト)操作が容易であり、反応効率が高く、且つアルミニウム等の金属への接着性能に優れる不飽和カルボン酸無水物が特に好ましく、無水マレイン酸が最も好ましい。
【0029】
〔変性方法〕
プロピレン系樹脂(a)のエチレン性不飽和化合物(b)による変性には、常用されている任意の方法を採用することができ、熱のみの反応でも得ることができるが、加熱条件下で有機過酸化物の存在下に変性を行うことが好ましい。上記のような変性反応は、溶媒の存在下に行うこともできるし、また溶媒の非存在下に行うこともできる。
【0030】
溶媒の存在下で変性を行う方法は、通常、溶媒中にプロピレン系樹脂(a)、エチレン性不飽和化合物(b)、及び必要により後述する有機過酸化物又はアゾ化合物を溶解または分散させて反応を行う。
溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、灯油などの脂肪族炭化水素、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、シクロドデカンなどの脂環族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、エチルトルエン、トリメチルベンゼン、シメン、ジイソプロピルベンゼンなどの芳香族炭化水素、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、o−ジクロロベンゼン、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエタン、テトラクロロエチレンなどのハロゲン化炭化水素などを例示することができる。
【0031】
溶媒の存在下で変性を行う場合の反応条件は限定されないが、温度は通常50〜250℃、好ましくは60〜200℃であり、反応時間は通常15分〜20時間、好ましくは0.5〜10時間程度である。変性反応は、常圧、加圧いずれの条件下においても実施することができる。
反応に供給されるエチレン性不飽和化合物(b)の割合は任意であるが、プロピレン系樹脂(a)100重量部に対し、通常0.2〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部である。
【0032】
溶媒の非存在下で変性を行う場合は、溶融状態で混練して変性反応を行うことが好ましい。具体的には、各成分の全部または一部をヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、ブレンダー等により混合して、該混合物を混練する方法等を挙げることができる。混練の手段としては、バンバリーミキサー、プラストミル、ブラベンダープラストグラフ、一軸又は二軸の押出機、ロール等の従来公知の混練手段が広く採用可能である。
【0033】
溶融混練による好ましい変性方法としては、一軸又は二軸押出機を用い、予め十分に予備混合したプロピレン系樹脂(a)、エチレン性不飽和化合物(b)、及び後述する有機過酸化物又はアゾ化合物を押出機の供給口より供給して混練を行う方法が挙げられる。
混練温度(例えば、押出機におけるシリンダー温度)は限定されないが、通常100〜300℃、好ましくは160〜250℃である。混練温度が低すぎるとグラフト量が向上しない場合があり、また、混練温度が高すぎると樹脂の分解が起こる場合がある。混練時間は限定されないが、通常0.1〜30分、好ましくは0.5〜5分である。混練時間が短か過ぎると十分なグラフト量が得られない場合があり、また、混練時間が長すぎると樹脂の分解が起こる場合がある。
【0034】
本発明においてプロピレン系変性樹脂(A)を溶融混練で製造する場合、エチレン性不飽和化合物(b)の使用量は任意であるが、プロピレン系樹脂(a)100重量部に対し、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜5重量部である。また、有機過酸化物又はアゾ化合物の使用量は任意であるが、プロピレン系樹脂(a)100重量部に対し、通常0.001〜10重量部、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜4重量部である。
【0035】
変性に用いることができる有機化酸化物は限定されないが、具体的には、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バラレート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン等のペルオキシケタール類;ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3等のジアルキルペルオキシド類;アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、2,5−ジクロロ
ベンゾイルペルオキシド、m−トリオイルペルオキシド等のジアシルペルオキシド類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシイソブチレート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウリレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルペルオキシイソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシマレイックアシッド、t−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、クミルペルオキシオクテート等のペルオキシエステル類;ジ(2−エチルヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)ペルオキシジカーボネート、等のペルオキシジカーボネート類;t−ブチルハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロペルオキシド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロペルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロペルオキシド等のハイドロペルオキシド類などを挙げることができる。これらの中では、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジクミルペルオキシドなどが好ましい。
【0036】
また、変性に用いることができるアゾ化合物は限定されないが、具体的には、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレ−ト等を使用することが出来る。
これらの有機化酸化物又はアゾ化合物は、プロピレン系樹脂(a)の種類や変性の条件に応じて適宜選択することができ、2種以上を併用してもよい。
【0037】
〔プロピレン系変性樹脂(A)〕
プロピレン系変性樹脂(A)の融解ピーク温度(Tm)は、115〜135℃の範囲にあることが重要である。プロピレン系変性樹脂(A)のTmが前記下限値を下回る場合は、アルミニウム層と接着樹脂層との間の高温における接着強度が低下するので好ましくない。また、Tmが前記上限値を上回る場合は低温、高速でラミネート成形した際の接着強度が低下するので好ましくない。
本発明において、アルミニウム層と接着樹脂層との接着に主体的に寄与するのはプロピレン系変性樹脂(A)であり、積層体の成形時には通常、プロピレン系変性樹脂(A)のTmと同等以上の温度まで接着樹脂層を加熱させる必要がある。しかしながら積層体製造時の速度が高速化すると、接着樹脂層の温度が容易には上昇しないため良好な接着強度が得られない。即ち、プロピレン系変性樹脂(A)のTmを前記範囲内とすることで、より低温、高速での積層体の製造が可能となる。
【0038】
なお、プロピレン系変性樹脂(A)のTmは、示差走査型熱量計(DSC)を用い、昇温速度10℃/分にて測定した際の融解曲線における、融解ピーク温度を意味する。
プロピレン系変性樹脂(A)のTmを前記範囲とするための手段は種々挙げられるが、プロピレン系樹脂(a)の選択および最適化、エチレン性不飽和化合物(b)の種類、グラフト量等によって制御することができる。
【0039】
プロピレン系変性樹脂(A)の80℃における貯蔵弾性率(G’80)は、100MPa以上である。本発明の樹脂組成物を含有する接着樹脂層とアルミニウム層を有する積層
体は、高温領域での過酷な使用環境においても良好な接着特性を有するが、そのためには高温環境下でアルミニウム層と接着樹脂層との間の接着強度を高いレベルで維持することが必要である。G’80を100MPa以上とすることにより、80℃での接着強度は必要な強度を保持することが可能となる。プロピレン系変性樹脂(A)のG’80が100MPa未満であると、80℃での接着強度が実用強度に達しないため好ましくない。
プロピレン系変性樹脂(A)のG’80は、前記と同様の理由により200MPa以上であることがより好ましい。
【0040】
G’80の上限値は特に制限されないが、1000MPaを超えることはプロピレン系
樹脂においては実質的に困難である。
なお、プロピレン系変性樹脂(A)の貯蔵弾性率(G’80)の測定は、固体粘弾性測定装置(DMS)としてTAインスツルメンツ社製、RSA3を用い、昇温速度5℃/分にて測定した際の80℃における貯蔵弾性率を意味する。
プロピレン系変性樹脂(A)のG’80を前記範囲とするための手段は種々挙げられるが、プロピレン系樹脂(a)の選択および最適化、プロピレン系樹脂(a)の分子量及び分子量分布、エチレン性不飽和化合物(b)の種類、グラフト量等によって制御することができる。
【0041】
プロピレン系変性樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は1.5〜2.5の範囲である。Mw/Mnは分子量分布の尺度であるが、Mw/Mnの値が前記範囲を超える場合は分子量分布が広いため、高分子量成分が増加する一方、ワックスのような低分子量成分も増加する。この結果、接着力は向上するが、本発明の樹脂組成物の機械的強度が低下するため好ましくない。また、Mw/Mnの値が前記範囲未満の場合は、本発明の樹脂組成物を接着樹脂層とする積層体を製造する際の押出成形の負荷が上昇するなど、成形性が悪化するため好ましくない。なお、Mw/Mnの好ましい範囲は1.8〜2.2である。
プロピレン系変性樹脂(A)のMw/Mnを前記範囲とするための手段は種々挙げられるが、プロピレン系樹脂(a)の種類、分子量及び分子量分布、エチレン性不飽和化合物(b)の種類、グラフト量等によって制御することができる。
【0042】
ここで、プロピレン系変性樹脂(A)のMw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定により得られる値を意味し、その測定条件は前記のプロピレン系樹脂(a)における測定と同様である。但し、無水マレイン酸をグラフトしたプロピレン系変性樹脂(A)のMw/Mnを測定する際には、グラフトせずに残留した酸がGPCのカラムに吸着することを避けるため、予め、以下の処理を行った後にGPC測定を行うものとする。
[GPCの前処理方法]
テフロン(登録商標)製の容器中にキシレンを投入し、該キシレン溶媒中にプロピレン系変性樹脂(A)を投入する。次いでメタノールとトリメチルシリルジアゾメタンを投入し、テフロン(登録商標)製容器全体をステンレスの密閉容器で密閉した後、135℃、1時間加熱することにより、無水マレイン酸をメチルエステル化処理し、GPC測定用サンプルとする。
【0043】
プロピレン系変性樹脂(A)のグラフト量は限定されないが、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上であり、通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。グラフト量が前記下限値未満である場合は、本発明の樹脂組成物を接着樹脂層とする積層体の層間接着力が低下する傾向がある。一方、グラフト量が前記上限値を超過する場合は、本発明の樹脂組成物中に未反応のエチレン性不飽和化合物(b)が多く残留してブリードアウトする傾向がある。
なお、エチレン性不飽和化合物(b)による変性(グラフト化)は、エチレン性不飽和化合物(b)の100%がグラフト反応に供されず、プロピレン系樹脂(a)と反応していない化合物が残留する場合がある。本発明においてグラフト量とは、プロピレン系変性樹脂(A)をそのまま上記の通りの方法で測定した値を意味し、未反応のエチレン性不飽和化合物(b)を包含していてもよい。
【0044】
プロピレン系変性樹脂(A)のグラフト量は、公知の方法で確認することが可能であり、H−NMR、赤外吸収スペクトル、高周波プラズマ発光分析装置を用いたICP発光分析法等により確認することができる。
具体的には、エチレン性不飽和化合物(b)として不飽和カルボン酸またはその誘導体を用いる場合には、グラフト量の測定は、プロピレン系変性樹脂(A)を厚さ100μmのシートにプレス成形して試験サンプルとし、赤外線吸収スペクトル法を用い、樹脂中のカルボン酸またはその誘導体特有の吸収(1900〜1600cm-1(C=O伸縮振動帯)のカルボニル特性吸収)を測定することにより求めることができる。
本発明において、エチレン性不飽和化合物(b)として不飽和カルボン酸またはその誘導体を用いる場合、上記の「グラフト量」を「酸含量」という場合がある。すなわち、不飽和カルボン酸またはその誘導体をエチレン性不飽和化合物(b)として用いる場合、「グラフト量」は「酸含量」と同義である。
【0045】
プロピレン系変性樹脂(A)の230℃、21.2N荷重におけるメルトフローレートは限定されないが、好ましい範囲は10〜500g/10分であり、より好ましくは20〜200g/10分である。
【0046】
<プロピレン系樹脂(B)>
本発明においてプロピレン系樹脂(B)は、エチレン性不飽和化合物でグラフトされていないプロピレン系樹脂である。従って、プロピレン系樹脂(B)は、プロピレン系樹脂(a)と同じものが挙げられる。
プロピレン系樹脂(B)の230℃、21.2N荷重におけるメルトフローレートは限定されないが、好ましい範囲は2〜20g/10分である。プロピレン系樹脂(B)のメルトフローレートが前記上限値よりも高い場合は機械物性が低下して、結果として本発明の樹脂組成物の接着強度が低下する傾向があり、メルトフローレートが前記下限値よりも低い場合は流動性が悪化して成形しにくい傾向がある。
【0047】
プロピレン系樹脂(B)としてはプロピレン単独重合体であってもよいが、共重合体であることが好ましい。具体的には、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体等が挙げられ、中でも、プロピレン−α−オレフィンブロック共重合体が好ましい。ここでα−オレフィンとしては、プロピレン系樹脂(a)として前記したものと同様である。プロピレン系樹脂(B)としては、特にプロピレン・エチレン−ブロック共重合体が望ましい。ここでエチレンのブロックとは、エチレン単独重合体のブロックのみならず、エチレンとプロピレンとのランダム共重合体ブロック等をも包含するものである。
プロピレン・エチレン−ブロック共重合体は通常、プロピレン重合体ブロックのドメインと、エチレン重合体ブロックのドメインとを有する。このように異なるドメインを有するブロック共重合体をプロピレン系樹脂(B)として用いることにより、当該プロピレン系樹脂(B)とプロピレン系変性樹脂(A)との親和性が高まるとともに、本発明の樹脂組成物が常温及び高温状態の何れにおいても高い接着強度を有し、機械的強度、耐薬品性、水蒸気等に対するバリヤー性、ヒートシール性などに優れたものとなるため好ましい。
【0048】
〔プロピレン・エチレン−ブロック共重合体〕
以下に、プロピレン系樹脂(B)として好適であるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体について、特に好ましい態様を詳述する。
プロピレン系樹脂(B)として好適に用いることができるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体としては、プロピレン単独重合部分(c)と、エチレン・プロピレン−ランダム共重合部分(d)とを含有する共重合体が挙げられる。
プロピレン単独重合部分(c)とエチレン・プロピレン−ランダム共重合部分(d)との含有割合は限定されないが、プロピレン単独重合部分(c)が20〜50重量%、エチレン・プロピレン−ランダム共重合部分(d)が80〜50重量%であることが好ましい。
【0049】
プロピレン単独重合部分(c)が前記上限値を超える場合、本発明の樹脂組成物の強度が低下するため、結果として該樹脂組成物を含有する接着樹脂層とアルミニウム層間の接着強度が低下する傾向がある。また、プロピレン単独重合部分(c)が前記下限値未満の場合、本発明の樹脂組成物にべたつきが生じる場合や、柔らかくなり過ぎて加工がしにくくなる傾向がある。
プロピレン単独重合部分(c)とエチレン・プロピレン−ランダム共重合部分(d)との含有割合の好ましい範囲は、上記と同様の理由により、プロピレン単独重合部分(c)が30〜45重量%、エチレン・プロピレン−ランダム共重合部分(d)が70〜55重量%である。
【0050】
プロピレン・エチレン−ランダム共重合部分(d)中のエチレン含量は限定されないが、40〜70重量%であることが好ましい。エチレン含量が前記上限値を超える場合、本発明の樹脂組成物を含有する接着樹脂層とアルミニウム層との界面にプロピレン・エチレン−ランダム共重合部分(d)に由来するワックスがブリードアウトして接着強度を低下させる傾向にあり、エチレン含量が前記下限値未満の場合、本発明の樹脂組成物の強度が低下し、結果として積層体とした際の接着強度が低下する傾向がある。
【0051】
プロピレン・エチレン−ランダム共重合部分(d)の重量平均分子量は限定されないが、20万〜60万の範囲にあることが好ましい。重量平均分子量が前記上限値より大きいと、得られる成形品に流れムラ、異ブツ、といった外観不良が生じる傾向がある。これは、本発明の樹脂組成物中でプロピレン・エチレン−ランダム共重合部分(d)はドメインとして存在するが、重量平均分子量が大きいと該ドメイン部分の流動性が低下するためと考えられる。一方、重量平均分子量が前記下限値より小さい場合は、本発明の積層体における接着樹脂層とアルミニウム層間の接着強度が低下する傾向がある。これは、接着樹脂層を構成する本発明の樹脂組成物中のプロピレン系樹脂(B)において、該ドメインが流動して配向しやすい傾向となり、その結果、当該ドメインの厚みが薄くなるためと考えられる。
該プロピレン・エチレン−ランダム共重合部分(d)の更に好ましい範囲は30万〜50万である。
【0052】
プロピレン系樹脂(B)として用いるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体の230℃、21.2N荷重におけるメルトフローレートは限定されないが、好ましい範囲は2〜20g/10分である。プロピレン系樹脂(B)のメルトフローレートが前記上限値よりも高い場合は機械物性が低下して、結果として本発明の樹脂組成物の接着強度が低下する傾向があり、メルトフローレートが前記下限値よりも低い場合は流動性が悪化して成形しにくい傾向がある。
【0053】
プロピレン系樹脂(B)として用いるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体の製造方法は限定されないが、通常、高立体規則性触媒を用いてスラリー重合、気相重合あるいは液相塊状重合により製造されるもので、重合方式としてはバッチ重合、連続重合のどちらの方式も採用することができる。
プロピレン・エチレン−ブロック共重合体を製造するに際しては、最初にプロピレンの単独重合によってプロピレン単独重合部分(c)を形成し、次にエチレンとプロピレンとのランダム共重合によってエチレン・プロピレン−ランダム共重合部分(d)を形成したものが品質上から好ましい。例えば、塩化マグネシウムに四塩化チタン、有機酸ハライド及び有機珪素化合物を接触させて形成した固体成分に、有機アルミニウム化合物成分を組合せた触媒を用いてプロピレンの単独重合を行い、次いでエチレンとプロピレンとのランダム共重合を行うことによって製造することができる。
【0054】
プロピレン系樹脂(B)として用いるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体は、本
発明の効果を損なわない範囲内でプロピレン及びエチレン以外の不飽和化合物、例えば1−ブテン等のα−オレフィンや、酢酸ビニル等のビニルエステルを含有する三元系以上の共重合体であってもよく、また、これらの混合物であってもよい。また、プロピレン・エチレン−ブロック共重合体の形状は限定されず、ペレット状でもパウダー状であっても構わない。
【0055】
このようなプロピレン・エチレン−ブロック共重合体の例として、三菱化学社製「ゼラス 7023」やサンアロマー社製「キャタロイ CA7320A」などを好適に用いることができる。
【0056】
<ポリエチレン(C)>
本発明の樹脂組成物は、さらにポリエチレン(C)を含有していてもよい。樹脂組成物中にポリエチレン(C)を含有することにより、本発明の樹脂組成物の成形性を更に好適にすることができる場合がある。
ポリエチレン(C)の190℃、21.2N荷重におけるメルトフローレートは限定されないが、2〜20g/10分であることが好ましい。メルトフローレートが前記上限値よりも高い場合は加工性の改良効果が乏しい傾向にあり、前記下限値よりも低い場合は流動性が悪化して成形し難くなる傾向がある。
【0057】
ポリエチレン(C)は、エチレンを主成分とする樹脂であれば限定されないが、通常、エチレン単量体単位を70重量%以上、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上有する重合体であることが望ましい。
エチレンと共重合可能な単量体は限定されないが、具体的には、プロピレンや、前記した炭素数4〜20のα−オレフィン等が挙げられ、更には、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、ビニルアルコール等の極性モノマー;スチレン、スチレン誘導体等のスチレン系モノマー等が共重合されていてもよい。これらの単量体は、1種を用いても、2種以上を併用してもよい。
また、異なるポリエチレンを2種以上併用することもできる。
【0058】
ポリエチレン(C)としてはエチレン単独重合体が好ましく、具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒系線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の何れであってもよい。これらの中でも、ポリエチレン(C)としては低密度ポリエチレンが好ましく、特に高圧法低密度ポリエチレンが好ましい。ポリエチレン(C)として高圧法低密度ポリエチレンを用いることにより、本発明の樹脂組成物を接着樹脂層として押出ラミネート成形する際に、好適な成形性を付与することが出来る。
【0059】
ポリエチレン(C)として高圧法低密度ポリエチレンを用いる場合、一般にいわゆる高圧法で製造されるものであれば特に制限はなく、また、市販されているものを適宜使用することができる。具体的には、日本ポリエチレン社製「ノバテックLD LC600A」などを好適に使用することができる。
【0060】
<樹脂組成物>
本発明の樹脂組成物は、プロピレン系変性樹脂(A)30〜65重量%と、プロピレン系樹脂(B)70〜35重量%とを含有する(但し、プロピレン系変性樹脂(A)とプロピレン系樹脂(B)との合計量を100重量%とする)。プロピレン系変性樹脂(A)の含有量が前記上限値を上回ると、本発明の樹脂組成物の接着力は向上するものの、機械的強度が低下するため、結果として接着強度が低下するため好ましくない。一方、プロピレン系変性樹脂(A)の含有量が前記下限値を下回ると、接着力そのものが低下するため好ましくない。
プロピレン系変性樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)の好ましい配合割合は、プロピレン系変性樹脂(A)35〜60重量%と、プロピレン系樹脂(B)65〜40重量%である。
【0061】
本発明の樹脂組成物においてポリエチレン(C)を含有する場合、その含有割合は限定されないが、プロピレン系変性樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)の合計100重量部に対し、ポリエチレン(C)を1〜10重量部含有することが好ましい。ポリエチレン(C)は、プロピレン系変性樹脂(A)やプロピレン系樹脂(B)に較べて融点が低いため、その含有量が前記上限値を超える場合は、本発明の樹脂組成物の高温における接着強度が低下する傾向がある。ポリエチレン(C)の含有量の好ましい範囲は、3〜8重量部である。
【0062】
本発明の樹脂組成物の230℃、21.2N荷重におけるメルトフローレートは限定されないが、好ましい範囲は1〜100g/10分であり、より好ましくは5〜20g/10分である。
【0063】
〔その他の成分〕
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、上記成分(A)、(B)及び(C)の他に、更に付加的成分(任意成分)を配合することもできる。
このような付加的成分としては、ポリオレフィン樹脂用配合剤として従来より使用される公知の核剤、フェノール系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、中和剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、金属不活性剤、過酸化物、充填剤、抗菌防黴剤、蛍光増白剤といった各種添加剤を加えることができる。これら添加剤の配合量は限定されないが、本発明の樹脂組成物中に通常0.0001〜3重量%、好ましくは0.001〜1重量%である。
【0064】
上記核剤の具体例としては、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸ナトリウム、タルク、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール等のソルビトール系化合物、ヒドロキシ−ジ(t−ブチル安息香酸アルミニウム、2,2−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)燐酸と炭素数8〜20の脂肪族モノカルボン酸リチウム塩混合物(旭電化社製 商品名NA21)等を挙げることができる。
【0065】
上記フェノール系酸化防止剤の具体例としては、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等を挙げることができる。
【0066】
上記燐系酸化防止剤の具体例としては、トリス(ミックスド、モノ及びジノニルフェニルホスファイト)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、4,4´−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4´−ビフェ
ニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4´−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト等を挙げることができる。
【0067】
上記硫黄系酸化防止剤の具体例としては、ジ−ステアリル−チオ−ジ−プロピオネート、ジ−ミリスチル−チオ−ジ−プロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(3−ラウリル−チオ−プロピオネート)等を挙げることができる。
上記中和剤の具体例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ハイドロタルサイト、ミズカラック(水沢化学(株)製)等を挙げることができる。
【0068】
上記ヒンダードアミン系の安定剤の具体例としては、琥珀酸ジメチルと1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの重縮合物、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、N,N−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン・2,4−ビス[N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ]−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]]、ポリ[(6−モルホリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等を挙げることができる。
【0069】
上記滑剤の具体例としては、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、エチレンビスステアロイド等の高級脂肪酸アミド、シリコンオイル、高級脂肪酸エステル等を挙げることができる。
帯電防止剤としては、高級脂肪酸グリセリンエステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミド脂肪酸モノエステル等を挙げることができる。
【0070】
充填剤は、有機充填剤と無機充填剤に大別される。有機充填剤としては、澱粉、セルロース微粒子、木粉、おから、モミ殻、フスマ等の天然由来のポリマーやこれらの変性品等が挙げられる。また、無機充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、ワラストナイト、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カルシウム、アルミノ珪酸ナトリウム、珪酸マグネシウム、ガラスバルーン、カーボンブラック、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、ゼオライト、ハイドロタルサイト、金属繊維、金属ウイスカー、セラミックウイスカー、チタン酸カリウム、窒化ホウ素、グラファイト、炭素繊維、ガラス繊維等が挙げられる。
【0071】
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲内で、上記した成分(A)、(B)及び(C)以外の成分として、更に他の樹脂を配合することもできる。具体的には、例えば、エチレン・プロピレン系ゴム、エチレン・ブテン系ゴム、エチレン・ヘキセン系ゴム、エチレン・オクテン系ゴム等のオレフィン系熱可塑性エラストマーや、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーのほか、成分(A)、(B)及び(C)以外のポリオレフィン樹脂;塩化ビニル樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系樹脂;ポリスチレン等のスチ
レン系樹脂等の熱可塑性樹脂等を配合することもできる。これらの熱可塑性エラストマーや熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの配合量は限定されないが、本発明の樹脂組成物中に、最大30重量%、好ましくは20重量%まで配合することができる。
【0072】
〔樹脂組成物の製造方法〕
本発明の樹脂組成物は、プロピレン系変性樹脂(A)、プロピレン系樹脂(B)及び、必要に応じ、高圧法低密度ポリエチレン(C)や付加的成分を所定の割合で混合することにより得ることができる。混合の方法については、原料成分が均一に分散すれば特に制限は無い。すなわち、上述の各原料成分等を同時に又は任意の順序で混合することにより、各成分が均一に分布した樹脂組成物を得ることができる。
より均一な樹脂組成物とするためには、所定量の上記原料成分を溶融混練して樹脂組成物とすることが好ましい。混合の方法については、原料成分が均一に分散すれば特に制限は無い。すなわち、上述の各原料成分等を同時に又は任意の順序で混合することにより、各成分が均一に分布した樹脂組成物を得ることができる。
【0073】
溶融混練には、従来公知のあらゆる方法を用いることが出来るが、通常、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等により均一に混合した後、バンバリーミキサー、ニーダーブレンダー、一軸又は二軸の混練押出機にて実施することができる。これらの中でも一軸又は二軸の混練押出機により混合或いは溶融混練を行なうことが好ましい。
一般的な混練の温度は180〜270℃程度であるが、樹脂組成物の熱劣化を防止するために窒素シールを行いながら混練することも可能である。また、混練機は上述したものを二種以上組み合わせることもできる。この溶融混練物は、冷却し切断してペレット化することが好ましい。
【0074】
なお、前記の付加的成分は、成分(A)、(B)及び(C)を溶融混練する際に添加してもよいし、成分(A)、(B)及び(C)のうち少なくとも何れか1つ以上の成分に予め含有させておいてもよい。さらには溶融混練後に直接添加、あるいは、本発明の効果を著しく損なわない範囲においてマスターバッチとして添加することも可能である。また、これらの複合的な手法により添加してもよい。
【0075】
<成形品>
本発明の樹脂組成物から得られる成形品には限定は無く、種々の押出成形品や射出成形品とすることができる。成形品の製造方法も特に制限は無く、具体的には、押出成形、インフレーション成形、ブロー成形、射出成形及び、押出成形で得られたシートの真空成形、圧空成形、真空圧空成形等の各種成形方法が挙げられる。
【0076】
また、本発明の樹脂組成物を単独で使用し、単層シートなどの成形品とすることもできるが、本発明の樹脂組成物は、後述する種々の金属や樹脂との接着力に優れるので、これらを基材とした積層体として利用するとより効果的である。
本発明の樹脂組成物を用いた積層体は、本発明の樹脂組成物を含有する層を含む2層または3層以上に積層された積層体であり、具体的には、積層シート、積層延伸フィルム、積層チューブ等が挙げられる。樹脂組成物を含有する層以外の層を構成する材料は限定されないが、具体的には、金属層や樹脂層が例示される。特に、本発明の樹脂組成物を接着樹脂層とする積層体であることが好ましい。
【0077】
〔積層体〕
次に、本発明の積層体について説明する。本発明の積層体は、上述した本発明の樹脂組成物を含有する接着樹脂層(以下、接着樹脂層という場合がある)とアルミニウム層とを
少なくとも含む積層体である。本発明の積層体は、これらの2層のみからなる積層体であっても、更に他の層を有する3層以上の積層体であってもよい。
本発明の積層体におけるアルミニウム層は、実質的に金属アルミニウムを主成分とする層であればよいが、具体的には、アルミニウム箔(アルミニウムフォイル)のほか、アルミニウムの蒸着層であってもよい。また、アルミニウム箔においては、表面を処理したものであってもよく、具体的には、電解陽極酸化処理(表面に酸化アルミニウムを形成)、化成処理、電気メッキ処理、無電解メッキ等が挙げられる。
【0078】
積層体を構成する接着樹脂層及びアルミニウム層以外の層は限定されないが、具体的には、基材層やヒートシール樹脂層が挙げられる。本発明の積層体が基材層やヒートシール樹脂層を有する場合の層構成は任意であるが、接着樹脂層とアルミニウム層が接していることが好ましく、また、基材層とアルミニウム層が接していることが好ましく、また、接着樹脂層とヒートシール樹脂層が接していることが好ましい。特に、少なくとも基材層、アルミニウム層、接着樹脂層、ヒートシール樹脂層がこの順に積層されてなる積層体が好ましい。
【0079】
積層体を構成する基材層は限定されないが、具体的には、紙;鉄、銅、ステンレス等の金属;セロファン;織布;不織布;高分子重合体のシート等が挙げられる。高分子重合体のシートとしては、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−4−メチルペンテン−1等のポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のビニル共重合体;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン7、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン610、ポリメタキシリレンアジパミド等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート等のシートを挙げることができる。
【0080】
ヒートシール樹脂層を構成する樹脂は限定されないが、具体的には、ポリエチレン、エチレン・α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸誘導体共重合体、ポリエステル、共重合ポリエステル等を挙げることができる。これらの中でもポリプロピレン系樹脂が好ましく、特にプロピレン・エチレンランダム共重合体を用いることが好ましい。
なお、本発明においてヒートシール樹脂層とは、加熱により熱融着可能な層であればよいが、例えば、融点が150℃以下のものが挙げられる。基材層がこのような融点をもつ場合は、基材層がヒートシール樹脂層を兼ねていてもよいが、通常、基材層はヒートシール時にも溶融しないことが好ましい。このため、基材層の融点はヒートシール樹脂層の融点よりも高いことが好ましく、その融点の差が15℃以上であることがより好ましい。
【0081】
特に、ヒートシール樹脂層を構成する樹脂の融点は140〜150℃程度であることが好ましい。融点が前記範囲であると、熱ラミネート成形体を製造する際に、加熱ロール温度を135〜140℃程度とすることができ、高速成形で高い接着力をもつ積層体を得ることが可能となる傾向にある。このようなプロピレン・エチレンランダム共重合体の具体例としては、日本ポリプロ社製「ノバテックPP FW4B」などを好適に用いることができる。
【0082】
本発明の積層体を構成する各層は、延伸された層であってもよく、延伸方法は1軸延伸であっても2軸延伸であってもよい。また、延伸後の熱処理を施した状態であっても、熱処理しない状態であってもよい。
本発明の積層体の各層の厚みは限定されず、層構成、用途、最終製品の形状、要求され
る物性等により任意に設定することができる。通常、積層体の総厚みは5〜400μmであり、10〜300μmであることが好ましく、20〜200μmであることがより好ましい。
本発明の積層体において、接着樹脂層の厚みは限定されないが、通常10〜50μmであり、10〜40μmであることが好ましく、15〜30μmであることがより好ましい。接着樹脂層の厚みが上記下限値未満の場合は、所望の接着強度を得ることが難しい傾向にある。また、接着樹脂層の厚みが上記上限値を越える場合、コストや生産性の点で好ましくない傾向にある。
【0083】
本発明の積層体において、アルミニウム層の厚みは限定されないが、アルミニウム箔の場合は通常5〜200μmであり、7〜100μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。アルミニウム層の厚みが上記下限値未満の場合は、絞り加工等の後加工工程にてピンホールが発生し易い傾向にある。また、アルミニウム層の厚みが上記上限値を越える場合、絞り加工や賦型加工を行いにくい傾向にある。アルミニウム層としてアルミ蒸着層を用いる場合、アルミ蒸着層の厚みは通常1〜500nmであり、1〜200nmであることが望ましい。アルミ蒸着層の厚みが上記下限値未満の場合は、本発明の積層体のガスバリア性が十分に得られない傾向にある。アルミ蒸着層の厚みが上記上限値を超える場合は、ガスバリア性の更なる向上効果は期待できない一方で、成形加工性が低下する傾向にあり、更にはコストが上昇する傾向にある。
【0084】
本発明の積層体において、ヒートシール樹脂層の厚みは限定されないが、通常5〜80μmであり、5〜50μmであることが好ましく、5〜20μmであることがより好ましい。ヒートシール樹脂層の厚みが上記下限値未満の場合はヒートシール強度が低下する傾向にある。また、ヒートシール樹脂層の厚みが上記上限値を越える場合、コストや生産性の点で好ましくない傾向にある。
本発明の積層体において、基材層の厚みは限定されず、用途や要求される物性等により異なるが、通常10〜100μmであり、15〜80μmであることが好ましく、20〜60μmであることがより好ましい。
【0085】
本発明の積層体は、アルミニウム層と接着樹脂層との界面の接着強度が良好であるため、常温においては1500g/15mm幅以上とすることが可能であり、80℃雰囲気下においては800g/15mm幅以上とすることが可能である。
【0086】
〔積層体の製造方法〕
本発明の積層体を製造する方法としては、従来より公知の種々の方法を採用することができる。
本発明の積層体は、接着樹脂層とアルミニウム層とを少なくとも含む積層体であるので、例えば、接着樹脂層を有するシートを得た後、この表面にアルミニウム蒸着することによって本発明の積層体とすることもできるが、通常は、予め製造しておいたアルミニウム層シートの表面に少なくとも接着樹脂層を押出ラミネートするか、或いは、予め製造しておいたアルミニウム層シート及び接着樹脂層を有するシートを熱ラミネートする方法が採用される。
更には、基材層やヒートシール樹脂層を含めた多層体とするために、熱ラミネート法や押出ラミネート法を適宜組合わせて採用することが出来る。
【0087】
本発明の積層体が、アルミニウム層及び接着樹脂層のほかに基材層やヒートシール樹脂層を有する場合、熱ラミネート法によって積層体とすることができる。熱ラミネート法とは、予め単層または多層シートを複数製造しておき、これらのシート同士を加熱して融着させる方法であり、具体的には、複数のシートを重ねた状態で加熱ロールに通過させることにより熱融着させることができる。
具体的には、予め共押出シート成形法や押出ラミネート法などにて積層された接着樹脂層とヒートシール樹脂層を少なくとも有する2層以上のシートを用いる場合や、予め押出ラミネート法などにて積層された基材層とアルミニウム層とを少なくとも有する2層以上のシートを用いることができる。このような場合、アルミニウム層と接着樹脂層が接するように対向させて積層させることが好ましい。
【0088】
本発明の積層体として、基材層、アルミニウム層、接着樹脂層、ヒートシール樹脂層の4層を少なくとも有する積層体を製造する方法は限定されないが、例えば、少なくとも基材層及びアルミニウム層を有するシートと、少なくとも接着樹脂層及びヒートシール樹脂層を有するシートとをそれぞれ製造しておき、これらのシートを熱ラミネートすることによって得る方法が挙げられる。この場合、前者シートのアルミニウム層側と後者シートの接着樹脂層側とを熱ラミネートして積層体とすることが好ましい。
【0089】
上記の例のように、少なくとも接着樹脂層を有するシートと、少なくともヒートシール樹脂層を有するシートとを熱ラミネートする場合においては、加熱ロール温度を高くすると、高速成形で高い接着強度が得られる傾向にあるが、加熱ロール温度をヒートシール樹脂層が溶融する温度以上とした場合、ヒートシール樹脂層が溶けて加熱ロールに張り付くなど、加工上の不具合を生じやすい。このため、ヒートシール樹脂層としてポリプロピレン系樹脂を用いる場合はプロピレン・エチレンランダム共重合体を選択することが好ましく、更には、その融点が140〜150℃程度のものを用いることが好ましい。
【0090】
その場合、加熱ロール温度を135〜140℃程度とすることでヒートシール樹脂層の溶融張り付きを抑えながら、高速成形で高い接着力をもつ積層体を得ることが可能となる。
尚、熱ラミネート時の加工速度は、接着強度と生産性のバランスの点で、20〜100m/分で行うことが好ましい。
【0091】
また、本発明の積層体が、アルミニウム層及び接着樹脂層のほかに基材層やヒートシール樹脂層を有する場合、押出ラミネート法によって積層体とすることもできる。押出ラミネート法とは、溶融した樹脂を押出成形機のTダイより押し出し、別途製造しておいたシートとともに冷却ロールとゴムロールの間で圧着固化させて積層体を得る製造法である。押出ラミネート法の具体的な態様は特に制限されるものではなく、公知の方法にて実施することができ、例えば逐次押出ラミネート法、サンドイッチラミネート法、共押出法を用いることも可能である。
更に基材層の表面には予めコロナ放電処理を行ったり、必要に応じてアンカーコート剤を塗布しながら押出ラミネートを行うことも可能である。また、必要に応じて接着樹脂層を構成する溶融樹脂面へオゾン処理を行うことも可能である。
【0092】
本発明の積層体として、基材層、アルミニウム層、接着樹脂層、ヒートシール樹脂層の4層を少なくとも有する積層体を製造する方法として、上記の押出ラミネート法を用いる場合、具体的には、基材層及びアルミニウム層を有するシートを予め製造しておき、該シートに対し、少なくとも接着樹脂層及びヒートシール樹脂層を共押出ラミネート成形することによって得ることができる。
【0093】
また、本発明の積層体が、アルミニウム層及び接着樹脂層のほかに基材層やヒートシール樹脂層を有する場合、サンドイッチラミネート成形によって積層体とすることもできる。サンドイッチラミネート成形とは、予め単層または多層シートを複数製造しておき、これらのシートの間に溶融した樹脂を押出成形機のTダイより押し出し、冷却ロールとゴムロールの間で圧着固化させて積層体を得る製造法である。具体的には、ヒートシール樹脂層を有するシートとアルミニウム層を有するシートとの間に本発明の樹脂組成物を溶融押
出して、サンドイッチラミネート成形を行うことが好ましい。この場合、1工程で上記の層構成を有する積層体とすることが可能となる。サンドイッチラミネート成形に用いる際のヒートシール樹脂層を有するシートの具体的な例としては、フタムラ社製「太閤FC FHK2」などを好適に用いることができる。
【0094】
サンドイッチラミネート成形時の押出温度は250〜300℃が好ましく、加工速度(ラミネート速度)は50〜150m/minが好ましい。押出温度が上記下限値より低い場合や、加工速度が上記上限値よりも高い場合は、高い接着強度が得られにくい傾向にある。押出温度が上記上限値よりも高い場合は押出樹脂の熱劣化を招き、発煙や油滴、ヤケ異物混入の原因となる傾向がある。加工速度が上記下限値よりも低い場合は、生産性に劣る傾向がある。
【0095】
なお、上記の種々の成形方法において、予め成形しておいたシートを用いる場合、当該シートは無延伸であっても延伸されていてもよい。延伸されたシート(延伸フィルム)を用いる場合、延伸方法は1軸延伸であっても2軸延伸であってもよい。また、延伸後の熱処理を施した状態であっても、熱処理しない状態であってもよいが、積層体の耐熱性の点では熱処理を施したものであることが好ましい。
【0096】
<用途>
本発明の積層体は、高速で成形した場合においても高い層間接着強度を有し、且つ常温及び高温状態の何れにおいても高い接着強度を有する。また、本発明の積層体は、機械的強度、電解液などに対する耐薬品性、水蒸気等に対するバリヤー性、自己ヒートシール性、シートと電極端子とのヒートシール性などに優れるため、電池用の容器、具体的にはリチウムイオン電池などの二次電池用の容器等として好適に使用することができる。
【0097】
本発明の積層体を電池用の容器として用いる場合の具体的態様は限定されないが、例えば、積層体を三方シール形式、四方シール形式、ピローパウチ形式などで一端が開口する袋状とし、内部に電池の構成材料を収納すると共に、電極端子を内部から開口部を通して外側に延長し、その開口部を熱ラミネートにより封止して電池を形成する方法が挙げられる。或いは他の方法として、積層シートを周囲にフランジを備えた薄型のトレー状に成形し、その凹部に電池の構成材料を収納すると共に、電極端子を内部から外側に延長し、その上部を積層シートの蓋材で覆ってフランジ部を熱ラミネートして密封し、電池を形成してもよい。
また、本発明の積層体は、上記の用途のほか、レトルト食品包装材料、一般食品包装材料、湿布薬など医薬品や医療品用の医療包装材料、建装材料、防湿シート等の用途にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0098】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例において使用した測定方法は次の通りである。
〔メルトフローレート(MFR)〕
タカラ・サーミスタ社製、メルトインデクサ L244を用い、180℃又は230℃、21.2N荷重にてJIS K7210(1999)に準じて測定した。
【0099】
〔成分(B)の重量平均分子量(Mw)〕
ゲルパーミエーションクロマトグラフ(ウォーターズ社製、GPC150C型)を用い、以下の条件にて行った。
カラム:昭和電工社製 AD80M/S 3本
測定温度:140℃
濃度:20mg/10ml
溶媒:オルソジクロルベンゼン
【0100】
〔成分(A)の分子量分布(Mw/Mn)〕
テフロン(登録商標)製の容器中にキシレンを投入し、該キシレン溶媒中にプロピレン系変性樹脂(A)を投入した。次いでメタノールとトリメチルシリルジアゾメタンを投入し、テフロン(登録商標)製容器全体をステンレスの密閉容器で密閉した後、135℃、1時間加熱することにより、無水マレイン酸をメチルエステル化処理し、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)測定用サンプルとした。
この処理サンプルを用い、上記の成分(B)のMwを測定した方法と同様に測定した。
【0101】
〔Tm〕
示差走査型熱量計(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製、DSC6200型)を用い、昇温速度10℃/分にて測定し、融解曲線における融解ピーク温度を測定した。
〔G’80〕
固体粘弾性測定装置(TAインスツルメンツ社製、RSA3)を用い、昇温速度5℃/分にて測定し、80℃における貯蔵弾性率を測定した。
〔酸含量(グラフト量)〕
プロピレン系変性樹脂(A)を厚さ100μmのシートにプレス成形して試験サンプルとし、赤外線吸収スペクトル法を用い、樹脂中のカルボン酸またはその誘導体特有の吸収(1900〜1600cm-1(C=O伸縮振動帯)のカルボニル特性吸収)を測定することにより求めた。
【0102】
本発明の実施例及び比較例では、以下の原料を用いた。
<成分(A)の原料>
a1: プロピレン−エチレンランダム共重合体(日本ポリプロ社製、製品名「ウィンテック WFX6」。MFR(230℃、21.2N荷重)2g/10分)
a2: プロピレン単独重合体(日本ポリプロ社製、製品名「ノバテックPP MA3」。MFR(230℃、21.2N荷重)10g/10分)
a3: プロピレン−ブテンランダム共重合体(三井化学社製、製品名「タフマー XM7070」。MFR(230℃、21.2N荷重)7g/10分)
a4: プロピレン−エチレンランダム共重合体(ダウ・ケミカル社製、製品名「Versify2300」。MFR(230℃、21.2N荷重)2g/10分、密度0.866g/cm、エチレン含有量12重量%)
【0103】
<成分(A)の製造>
プロピレン−エチレン共重合体として上記のa1〜a4を用い、これらの何れかと無水マレイン酸及びベンゾイルパーオキサイドを表−1に示す通りの配合比率にてよく攪拌した後、2軸押出機(テクノベル社製、KZW15)を使用し、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数500rpm、吐出量1kg/hにて溶融混練し、押出された溶融ストランドを水冷、カッティングすることにより、表−1に示すプロピレン系変性樹脂(A−1〜A−5)を得た。なお、表−1においてA−6は、原料a1を変性処理せずにそのまま使用した。プロピレン系変性樹脂(A−1〜A−6)のTm、G’80、Mw/Mn、180℃、21.2N荷重におけるMFR、酸含量の測定結果を表−1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
<成分(B)>
B−1:プロピレン・エチレン−ブロック共重合体(サンアロマー社製、製品名「キャタロイ CA7320A」)
B−2:プロピレン・エチレン−ランダム共重合体(日本ポリプロ社製、製品名「ウィンテック WFX4T」)
B−3:プロピレン・エチレン−ブロック共重合体(サンアロマー社製、製品名「キャタロイ C200F」)
B−4:プロピレン・エチレン−ブロック共重合体(日本ポリプロ社製、製品名「ノバテックPP BC3E」)
B−1〜B−4についての230℃、21.2N荷重におけるMFR、プロピレン単独重合部分及びエチレン・プロピレンランダム共重合部分の重量比率、エチレン・プロピレンランダム共重合部分のエチレン含量及び重量平均分子量について、表−2に示す。
【0106】
【表2】

【0107】
<成分(C)>
C−1:低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製、製品名「ノバテックLD LC600A」)
【0108】
<実施例1>
成分AとしてA−1を、成分BとしてB−1を使用し、A−1とB−1を重量比35:65として配合し、よく攪拌した後、2軸押出機(テクノベル社製、KZW15)を使用し、シリンダー温度;210℃、スクリュー回転数:400rpm、吐出量;3kg/hにて溶融混練し、押出された溶融ストランドを水冷、カッティングすることにより接着樹脂組成物のペレットを得た。
【0109】
プラコー社製3種3層Tダイシート成形機を使用し、上記で得られた接着樹脂組成物を
巻き取りロールの内層側(接着樹脂層)、ポリプロピレン(日本ポリプロ社製「ノバテックPP FY4;MFR:5g/10分(230℃、21.2N)」)を中間層、ポリプロピレン(日本ポリプロ社製「ノバテックPP FW4B;MFR:7g/10分(230℃、21.2N)」)を外層側(ヒートシール樹脂層)として、ダイス温度:220℃で共押出成形し、厚さ70μm(接着樹脂層20μm、中間層40μm、ヒートシール樹脂層10μm)の積層シートを得た。得られた積層シートを以下の方法で接着性評価を行った結果を表−3に示す。
【0110】
〔接着性評価〕
上記で得られた積層シートと、アルミ箔(住友軽金属社製「ベスパ 厚さ40μm」)を、接着樹脂組成物層とアルミ箔が対向するように重ね、熱ラミネーター(テスター産業社製)を用い、ロール温度:150℃、線圧:3kg/m、引取速度:10m/分で熱圧着し、冷却後、幅15mmの短冊型試験片を切り出した(積層シートの押出方向(MD方向)を短冊の長辺とした)。この試験片を23℃又は80℃の何れかの条件にて、恒温槽付き引張試験機(島津製作所社製「オートグラフ AG−2000」)にて300mm/分の条件で180°剥離試験を行った。なお、評価はn=3の平均値とした。
【0111】
<実施例2〜5、比較例1〜6>
表−3又は表−4に示す通りの原料の種類及び配合比率とした以外は実施例1と同様にして接着樹脂組成物のペレットを得た。更に得られた接着樹脂組成物を接着樹脂層に用いる他は実施例1と同様にして積層シートを得、実施例1と同様にして接着性の評価を行った。評価結果を表−3及び表−4に示す。
【0112】
【表3】

【0113】
【表4】

【0114】
<実施例6>
表−5に示す通りの原料の種類及び配合比率とした以外は実施例1と同様にして接着樹脂組成物のペレットを得た。
住友重機モダン社製ラミネーターを使用し、40mmφ押出機に設置された幅450mm幅のダイスより上記接着樹脂組成物を押出温度280℃でアルミ箔(住友軽金属社製「ベスパ 厚さ40μm」)上に押し出すとともに、冷却ロール側に配置した無延伸ポリプロピレンシート(フタムラ社製「太閤FC FHK2 厚さ60μm)とでサンドイッチラミネート成形を行い、加工速度50m/分で接着層の厚みが20μmの積層シートを得た。得られた積層シートを実施例1と同様にして接着性の評価を行った結果を表−5に示す。
【0115】
<実施例7、比較例7>
表−5に示す通りの原料の種類及び配合比率とした以外は実施例6と同様にして接着樹脂組成物のペレットを得た。更に得られた接着樹脂組成物を接着樹脂層に用いる他は実施例6と同様にして積層シートを得、実施例1と同様にして接着性の評価を行った。評価結果を表−5に示す。
【0116】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のプロピレン系変性樹脂(A)30〜65重量%とプロピレン系樹脂(B)70〜35重量%とを含有することを特徴とする樹脂組成物。
(A):プロピレン系樹脂(a)がエチレン性不飽和化合物(b)で変性され、且つ下記(1)〜(3)の特性を有するプロピレン系変性樹脂
(1)示差走査型熱量計により得られる融解曲線における融解ピーク温度が115〜135℃
(2)固体粘弾性測定により得られる温度−貯蔵弾性率曲線において、80℃の貯蔵弾性率(G’80)が100MPa以上
(3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定により得られる分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1.5〜2.5
【請求項2】
プロピレン系樹脂(B)が、プロピレン・エチレン−ブロック共重合体である請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
プロピレン系樹脂(B)が、プロピレン単独重合部(c)20〜50重量%と、エチレン含量が40〜70重量%、且つ重量平均分子量(Mw)が20万〜60万であるエチレン・プロピレン−ランダム共重合部(d)80〜50重量%とを含有し、230℃、21.2N荷重におけるメルトフローレートが2〜20g/10分であるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
更に、プロピレン系変性樹脂(A)及びプロピレン系樹脂(B)の合計100重量部に対し、ポリエチレン(C)を1〜10重量部含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
少なくともアルミニウム層と接着樹脂層が接してなる積層体であって、該接着樹脂層が請求項1〜4の何れかに記載の樹脂組成物であることを特徴とする積層体。
【請求項6】
少なくとも前記アルミニウム層を有するシートと、少なくとも前記接着樹脂層を有するシートとを熱ラミネートして得られる請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
少なくとも基材層、アルミニウム層、接着樹脂層、ヒートシール樹脂層がこの順に積層されてなる請求項5又は6に記載の積層体。
【請求項8】
少なくとも基材層及び前記アルミニウム層を有するシートと、少なくとも前記接着樹脂層及びヒートシール樹脂層を有するシートとを、該アルミニウム層と該接着樹脂層とを熱ラミネートすることにより得られる請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
少なくとも前記アルミニウム層を有するシートと、少なくともヒートシール樹脂層を有するシートとを、前記接着樹脂組成物を介してサンドイッチラミネートすることにより得られる請求項7に記載の積層体。
【請求項10】
接着樹脂層の厚みが10〜50μm、ヒートシール樹脂層の厚みが20〜80μmである請求項7〜9の何れかに記載の積層体。
【請求項11】
請求項7〜10の何れかに記載の積層体を、該ヒートシール樹脂層同士が対向するように重ね合わせ、その端縁部をヒートシールして袋状に形成した電池用容器。
【請求項12】
請求項11に記載の電池用容器を少なくとも有するリチウムイオン電池。

【公開番号】特開2013−87152(P2013−87152A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−227061(P2011−227061)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】