説明

樹脂芯材の製造方法

【課題】自動車用ウェザーストリップに埋設される略U字状で片側部分又は両側部分に複数の打抜き部が形成されたフィッシュボーンタイプの熱可塑性樹脂製の芯材を、容易かつ円滑に製造することのできる方法を提供する。
【解決手段】樹脂芯材20を略U字状に押出成形し、押出成形した樹脂芯材20の内側凹部21に打抜き刃11を挿入し、樹脂芯材20を固定して、打抜き刃11を樹脂芯材20の内側から外側に向けて打抜いて打抜き部22を形成し、樹脂芯材20の固定を解除して、樹脂芯材20を長手方向に所定距離、移動させた後、再び固定して、打抜き刃11を樹脂芯材20の内側から外側に向けて打抜く工程を、所定回数、繰り返し行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ウェザーストリップに埋設される略U字状で、片側部分又は両側部分に複数の打抜き部を有する、いわゆるフィッシュボーンタイプの熱可塑性樹脂製芯材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用ウェザーストリップに埋設される略U字状でフィッシュボーンタイプの熱可塑性樹脂製の芯材40は、図7に示すように、金属製の芯材と同様に、熱可塑性樹脂を平板状に押出成形した後、打抜き機30によって所定部分を打抜くことによって製造されている。
【0003】
この従来の製造方法では、図8に示すように(打抜き部分省略)、あらかじめ樹脂芯材40を略U字状に折曲げ加工し、その後、ウェザーストリップ本体部を形成する熱可塑性樹脂またはゴムと共に同時押出成形するか、あるいは、平板状のまま押出成形した後に略U字状に折曲げ加工する必要がある。
【0004】
しかし、こうした従来の製造方法では、樹脂芯材40を充分に溶融させて折曲げ加工しなければ、元の平板状態に戻るといった問題が発生する。また、溶融し過ぎると、樹脂芯材40が変形するといった問題が発生する。従って、樹脂芯材の製造は困難を伴うものであった。
【0005】
なお、従来、樹脂芯材を略U字状に押出成形した後、所定部分を打抜き機によって打抜き、フィッシュボーンタイプの樹脂芯材を成形する手段が提案されているが、具体的な方法については開示されていない(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−370272号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、これまで略U字状でフィッシュボーンタイプの熱可塑性樹脂製の芯材を容易に製造する方法は提案されていない。
【0007】
そこで本発明の目的とするところは、自動車用ウェザーストリップに埋設される略U字状でフィッシュボーンタイプの熱可塑性樹脂製の芯材を、容易かつ円滑に製造することのできる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の発明は、自動車用ウェザーストリップに埋設される略U字状で片側部分又は両側部分に複数の打抜き部が形成されたフィッシュボーンタイプの熱可塑性樹脂製の樹脂芯材を製造する方法であって、樹脂芯材(20)を略U字状に押出成形し、前記押出成形した樹脂芯材(20)の内側凹部(21)に打抜き刃(11)を挿入し、前記打抜き刃(11)を前記樹脂芯材(20)の内側から外側に向けて打抜いて打抜き部(22)を形成することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、自動車用ウェザーストリップに埋設される略U字状で片側部分又は両側部分に複数の打抜き部が形成されたフィッシュボーンタイプの熱可塑性樹脂製の樹脂芯材を製造する方法であって、樹脂芯材(20)を略U字状に押出成形し、前記押出成形した樹脂芯材(20)の内側凹部(21)に打抜き刃(11)を挿入し、前記打抜き刃(11)を前記樹脂芯材(20)の内側から外側に向けて打抜いて打抜き部(22)を形成し、前記樹脂芯材(20)の固定を解除して、前記樹脂芯材(20)を長手方向に所定距離、移動させた後、再び固定して、前記打抜き刃(11)を樹脂芯材(20)の内側から外側に向けて打抜く工程を、所定回数、繰り返し行ってなることを特徴とする。
【0010】
さらに、請求項3に記載の発明は、自動車用ウェザーストリップに埋設される略U字状で片側部分又は両側部分に複数の打抜き部が形成されたフィッシュボーンタイプの熱可塑性樹脂製の樹脂芯材を製造する方法であって、樹脂芯材(20)を略U字状に押出成形し、前記押出成形した樹脂芯材(20)の内側凹部(21)に打抜き刃(11)を挿入し、前記打抜き刃(11)と樹脂芯材(20)を同じ速度で移動させながら、連続的に前記打抜き刃(11)を樹脂芯材(20)の内側から外側に向けて打抜いて打抜き部(22)を形成することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3に記載の樹脂芯材の製造方法において、前記樹脂芯材(20)の打抜き刃(11)の刃先形状を曲面状(11a)にしたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4に記載の樹脂芯材の製造方法において、前記打抜き刃(11)の厚みより、それを支持する支持部(12)の厚みを厚くした段付き形状の打抜き治具(10)で打抜きを行うことを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の樹脂芯材の製造方法において、前記打抜き刃(11)の刃先形状の厚みに対して、前記支持部(12)の厚さを3倍以上としたことを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6に記載の樹脂芯材の製造方法において、前記打抜き刃(11)の刃先形状の長さを前記樹脂芯材(20)の厚みより0.1mm〜1.0mm長くしたことを特徴とする。
【0015】
なお、カッコ内の記号は、図面および後述する発明を実施するための最良の形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1乃至請求項3に記載の発明によれば、略U字状に押出成形した樹脂芯材の内側凹部に打抜き刃を挿入した後、当該打抜き刃を樹脂芯材の内側から外側に向けて打抜く工程を行うので、打抜きと同時に打抜きカスを樹脂芯材の外側に排出することができる。
これにより、打抜きカスを樹脂芯材の内側凹部に溜めることなく円滑に排出することができるので、打抜き刃の折れを防止して、樹脂芯材を容易かつ円滑に製造することができる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至請求項3に記載の発明の作用効果に加えて、樹脂芯材の打抜き刃の刃先形状を曲面状にしたので、直線面に設定した場合と異なり、打抜き時の応力が一点に集中するのを阻止することにより、打抜き刃の折れを防止することができる。
これによって、樹脂芯材をさらに容易かつ円滑に製造することができる。
【0018】
さらに、請求項5に記載の発明によれば、請求項1乃至4に記載の発明の作用効果に加えて、打抜き刃の厚みより、それを支持する支持部の厚みを厚く、例えば、請求項6に記載の発明のように3倍以上の厚みした段付き形状の打抜き治具で打抜きを行うので、打抜き刃の支持強度を高めて、当該打抜き刃の折れを、さらに防止することができる。
これにより、樹脂芯材をより容易かつ円滑に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1乃至図6を参照して、本発明の実施形態に係る樹脂芯材の製造方法について説明する。図1乃至図4は製造工程を示す斜視図および正面図、図5はこの製造方法に使用する打抜き治具10の打抜き刃11周りの断面図、図6はこの製造方法によって製造される樹脂芯材20を示す斜視図である。
【0020】
本発明の実施形態に係る樹脂芯材の製造方法は、自動車用ウェザーストリップに埋設される略U字状で片側部分又は両側部分に複数の打抜き部が形成されたフィッシュボーンタイプの熱可塑性樹脂製の樹脂芯材を製造する方法である。
【0021】
この製造方法は、まず、図1に示すように、押出成形機1によって樹脂芯材20を略U字状に押出成形する。
次に、図2に示すように、押出成形した樹脂芯材20の内側凹部21に打抜き刃11を挿入すると共に、図3に示すように、その樹脂芯材20をその上から押え具2によって固定し、その外側面を中央空間部3aを有する当て具3によって固定する。
そして、図4に示すように、打抜き刃11を樹脂芯材20の内側から外側に向けて移動させて打抜き、打抜き部22を形成すると共に、それによって発生した打抜きカス23を、当て具3の中央空間部3aを通して外側に排出する。
【0022】
次に、打抜き刃11を元の位置に復帰させると共に、樹脂芯材20の固定を解除した後、樹脂芯材20を長手方向に所定距離移動させる。そして、樹脂芯材20を再び固定して、打抜き刃11を樹脂芯材20の内側から外側に向けて打抜く。
【0023】
こうした工程を、所定回数、繰り返し行い、樹脂芯材20の片側に複数の打抜き部22を形成する。そして、片側に複数の打抜き部22を形成した後、他方側にも同様の工程を施して複数の打抜き部22を形成し、図6に示すようなフィッシュボーンタイプの樹脂芯材20を製造している。特に打抜き刃11と樹脂芯材20を同じ速度で移動させながら、連続的に打抜き刃11を樹脂芯材20の内側から外側に向けて打抜いて打抜き部22を形成することが好ましい。
【0024】
本実施形態に係る樹脂芯材の製造方法によれば、打抜き刃11を、樹脂芯材20の内側凹部21に挿入した後、そこから外側に向けて移動させ樹脂芯材20を打抜くので、その際に発生する打抜きカス23を打抜きと同時に外側に排出することができる。
従って、打抜きカス23が樹脂芯材20の内側凹部21に詰まって打抜き刃11が折れてしまうといった事態を回避することができ、樹脂芯材20を容易かつ円滑に製造することができる。
【0025】
なお、本実施形態では、樹脂芯材20の打抜きを、図3に示すように、樹脂芯材20の打抜き刃11の先端の刃先形状を曲面状の面(R面)11aにしている。
これによって、打抜き時の応力が徐々に打抜き刃11に伝わるようにして、当該打抜き刃11の折れを防止している。
また打抜き刃11の刃先形状の長さを樹脂芯材20の厚みより0.1mm〜1.0mm長くしている。
【0026】
さらに、本実施形態では、図5に示すように、打抜き刃11の厚みより、それを支持する支持部12の厚みをおよそ3倍(3倍以上にすることもできる)厚くした段付き形状の打抜き治具10で打抜きを行っている。
これにより、打抜き刃11を強固に安定して支持することができるので、当該打抜き刃11の折れをさらに効果的に防止することができ、樹脂芯材20をさらに容易かつ円滑に製造することができる。
【0027】
なお、本実施形態においては、樹脂芯材20をその長手方向に所定距離、移動させて、その両側部分に打抜き部22を形成しているが、それに代えて、樹脂芯材20側を固定し、打抜き刃11(打抜き治具10)の方を移動させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施形態において、樹脂芯材を押出成形する工程を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態において、樹脂芯材の内側凹部に打抜き刃を挿入した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態において、樹脂芯材を固定した状態を示す正面図である。
【図4】本発明の実施形態において、樹脂芯材を打抜いた状態を示す正面図である。
【図5】本発明の実施形態において使用する打抜き治具の打抜き刃周りの断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係る製造方法によって製造した樹脂芯材を示す斜視図である。
【図7】従来例に係る樹脂芯材の製造方法を示す斜視図である。
【図8】従来例に係る樹脂芯材の製造方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
1 押出成形機
2 押え具
3 当て具
3a 中央空間部
10 打抜き治具
11 打抜き刃
11a R面
12 支持部
20 樹脂芯材
21 内側凹部
22 打抜き部
23 打抜きカス
30 打抜き機
40 樹脂芯材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ウェザーストリップに埋設される略U字状で片側部分又は両側部分に複数の打抜き部が形成されたフィッシュボーンタイプの熱可塑性樹脂製の樹脂芯材を製造する方法であって、
樹脂芯材を略U字状に押出成形し、
前記押出成形した樹脂芯材の内側凹部に打抜き刃を挿入し、
前記打抜き刃を前記樹脂芯材の内側から外側に向けて打抜いて打抜き部を形成することを特徴とする樹脂芯材の製造方法。
【請求項2】
自動車用ウェザーストリップに埋設される略U字状で片側部分又は両側部分に複数の打抜き部が形成されたフィッシュボーンタイプの熱可塑性樹脂製の樹脂芯材を製造する方法であって、
樹脂芯材を略U字状に押出成形し、
前記押出成形した樹脂芯材の内側凹部に打抜き刃を挿入し、
前記打抜き刃を前記樹脂芯材の内側から外側に向けて打抜いて打抜き部を形成し、
前記樹脂芯材の固定を解除して、前記樹脂芯材を長手方向に所定距離、移動させた後、再び固定して、前記打抜き刃を樹脂芯材の内側から外側に向けて打抜く工程を、所定回数、繰り返し行ってなることを特徴とする樹脂芯材の製造方法。
【請求項3】
自動車用ウェザーストリップに埋設される略U字状で片側部分又は両側部分に複数の打抜き部が形成されたフィッシュボーンタイプの熱可塑性樹脂製の樹脂芯材を製造する方法であって、
樹脂芯材を略U字状に押出成形し、
前記押出成形した樹脂芯材の内側凹部に打抜き刃を挿入し、
前記打抜き刃と樹脂芯材を同じ速度で移動させながら、連続的に前記打抜き刃を樹脂芯材の内側から外側に向けて打抜いて打抜き部を形成することを特徴とする樹脂芯材の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂芯材の打抜き刃の刃先形状を曲面状にしたことを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか一つに記載の樹脂芯材の製造方法。
【請求項5】
前記打抜き刃の厚みより、それを支持する支持部の厚みを厚くした段付き形状の打抜き治具で打抜きを行うことを特徴とする請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の樹脂芯材の製造方法。
【請求項6】
前記打抜き刃の刃先形状の厚みに対して、前記支持部の厚さを3倍以上としたことを特徴とする請求項5に記載の樹脂芯材の製造方法。
【請求項7】
前記打抜き刃の刃先形状の長さを前記樹脂芯材の厚みより0.1mm〜1.0mm長くしたことを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載の樹脂芯材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−110953(P2006−110953A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303309(P2004−303309)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000196107)西川ゴム工業株式会社 (454)
【Fターム(参考)】