説明

樹脂配管敷設構造

【課題】 トンネル等の消火用の送水配管や、工場配管等として使用可能であり、耐圧試験時または使用時において、配管の位置ずれ等を防止可能な樹脂配管敷設構造を提供する。
【解決手段】 分岐部9は、略T字状の部材が用いられる。分岐部9近傍には、配管固定構造3が形成される。配管固定構造3は、耐圧試験時や使用時において、送水配管5の伸び等による長手方向の移動などを防止するための構造である。配管固定構造3は、主に、バタフライ弁15、固定冶具17、連結棒19等から構成される。バタフライ弁15と送水配管5とは、フランジ部21で接続される。バタフライ弁15の両側で送水配管5と接続されるそれぞれのフランジ部21の両側(バタフライ弁15に対して外側)には、当該フランジ部21を挟み込むように固定冶具17が設けられる。固定冶具17の下端は地面13にアンカ23によって固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、トンネル等の消火配管や工場配管等に用いられる樹脂配管の敷設構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、トンネル内部における火災に対して、初期消火用の消火栓がトンネル内部に設置される。図8は、従来のトンネル消火配管構造100を示す概略図であり、図9は縦断面図である。トンネル消火配管構造100は、消火栓113と、消火栓113同士を接続し、各消火栓113に送水可能な送水配管105等から構成される。
【0003】
消火栓113は、トンネル内部において所定間隔で設置される。また、トンネル下部には送水配管105が敷設される。消火栓113同士は、トンネル外部からトンネル全長にわたって設けられる送水配管105で接続される。送水配管105を流れる消火用水は、消火栓113近傍の分岐部109で分岐され、各消火栓113に送水される。送水配管105には、図示を省略した送水部がトンネル外部に接続されており、所定量の水を送水することができる。
【0004】
消火栓113は、たとえばトンネル内に50m毎に設置される。消火栓113は送水配管105と分岐部109で接続されている。分岐部109は、コンクリート製のハンドホール107内部に設置される。
【0005】
このような消火に用いられる消火配管構造(例えば特許文献1、特許文献2)の送水管としては、従来、ダクタイル鋳鉄管等の金属管が使用されてきた。このような金属管は、火災時の熱に対しても十分な耐熱性を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−571号公報
【特許文献2】特開2008−55024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、このような送水配管は、所定長さの金属管を接続しながらトンネル長手方向に対して設置される。しかしながら、金属管は重量があり、長いトンネル全長にわたって送水配管を設置する作業は、接続部が多く作業工数を要し、コスト、工期も要する。
【0008】
これに対し、送水配管を軽量かつ長尺で対応可能な樹脂製とする方法がある。樹脂製の送水配管とすることで、長手方向の接続箇所を大幅に削減することが可能であるため、接続作業が削減され、継手等の部材も削減できる。また、軽量であるため取り扱い性にも優れ、設置後の地盤変化によって送水配管に力が付与された際にも、配管自体の変形能によってこれを吸収できる。
【0009】
通常、このような消火配管は、配管を敷設した後、各消火栓等との接続の前に、耐圧試験が施される。耐圧試験は、例えば、使用時における内圧の1.5倍の圧力を配管内部に1時間付与し、配管や接続部からの漏れや破損がないかが確認される。この試験は、所定距離の管を、塞いで内圧を加える方法で行なわれる。
【0010】
しかし、樹脂製の配管を用い、使用時の1.5倍という高い圧力を付与すると、配管がその長手方向に伸びてしまう場合がある。例えば、200Φ、1.57MPa仕様の管の場合には、1.57×1.5=2.355MPaの内圧が付与される。
【0011】
この場合、管の内径が210.8mmであり、管の内面積が34882.8mm、管の肉厚断面積が14179.7mmとなる。この場合、管の両端を塞いだ状態での、両端部に付与される軸方向の力は、2.355MPa×34882.8mm=82148.9Nとなる。また、管に対しては、82148.9N/14179.7mm=5.79MPaの軸方向応力が付与される。したがって、ひずみε=σ/Eより、5.79/896=0.006のひずみが生じる。すなわち、50mにつき0.3mのひずみが生じる。
【0012】
さらに、樹脂管の外周に螺旋巻きされた補強層の影響を受け、樹脂配管の伸びとともに樹脂配管が周方向に捻じれる恐れがある。このような伸びや捻じれが生じると、配管の分岐部と、これと接続される消火栓との位置や方向(配管角度)がずれてしまう恐れがある。
【0013】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、トンネル等の消火用の送水配管や、工場配管等として使用可能であり、耐圧試験時または使用時において、配管の位置ずれ等を防止可能な樹脂配管敷設構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前述した目的を達するために本発明は、樹脂配管の敷設構造であって、樹脂管体と、前記樹脂管体の外周に設けられ、帯状体が巻きつけられて形成される補強層と、前記補強層の外周に設けられる保護層とを具備する樹脂配管を用い、前記樹脂配管の敷設方向の所定の間隔で、前記樹脂配管が長手方向に移動することを防止するため配管を固定する配管固定部が形成されることを特徴とする樹脂配管敷設構造である。前記配管固定部は、さらに前記樹脂配管の周方向の回転を防止することが可能な回転防止機構を備えていることが望ましい。
【0015】
前記配管固定部の少なくとも一部は、前記樹脂配管と他の部材の接続部、または前記樹脂配管同士の接続部に形成されるフランジ部に形成され、前記フランジ部の移動を規制することで、前記樹脂配管の長手方向の移動を規制してもよい。
【0016】
前記フランジ部は、前記樹脂配管と弁体との接続部に形成され、前記フランジ部には固定冶具が接続され、前記固定冶具によって前記フランジ部を地面に対して固定することで、前記樹脂配管の長手方向の移動が規制されるとともに前記樹脂配管の周方向の回転が規制されてもよく、前記フランジ部は、前記樹脂配管と弁体との接続部に形成され、前記弁体の両側の前記フランジ部には、それぞれ固定冶具が設けられ、それぞれの固定冶具同士は連結されており、前記固定冶具を地面に対して固定して、前記固定冶具と前記フランジ部とを接触させることで、前記樹脂配管の長手方向の移動を規制してもよい。
【0017】
前記配管固定部の少なくとも一部は、前記樹脂配管の外周に設けられる保持材と、前記保持部材に取り付けられて地面に固定される固定部材とを具備し、前記保持部材は筒状であり、前記保持部材に前記樹脂配管を挿通した状態で、前記保持部材の内面は前記樹脂配管の外面と熱融着し、前記保持部材の外周面の両端部には拡径部が形成され、断面において、前記保持部材の前記拡径部で挟まれた部位の少なくとも一部には、直線部が形成され、前記固定部材は、前記直線部と接触するように配置されて地面に固定され、前記拡径部が前記固定部材と接触することで、前記樹脂配管の長手方向の移動が規制されるとともに、前記固定部材が前記直線部と接触することで、前記樹脂配管の周方向の回転が規制されてもよい。
【0018】
本発明によれば、トンネル内に敷設される送水配管が樹脂製であるため、敷設作業性に優れる。また、樹脂配管を用いても、所定間隔で長手方向への移動が固定されるため、分岐部の位置ずれを防止することができる。また、周方向への捻じれを固定することで、分岐部の角度(向き)がずれることを防止することができる。
【0019】
また、長手方向の固定にフランジ部を用いることで、簡易な構造で配管の長手方向の移動を防止することができる。この際、固定冶具をフランジ部に接続して、固定冶具によってフランジ部を地面に固定することで、配管の長手方向と周方向の捻じれの両者を同時に防止することができる。
【0020】
また、配管の外周に保持部材を接続し、保持部材によって固定部材を保持するとともに、固定部材を地面に固定することで、任意の位置で配管の長手方向と周方向の捻じれの両者を同時に防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、トンネル等の消火用の送水配管や、工場配管等として使用可能であり、耐圧試験時または使用時において、配管の位置ずれ等を防止可能な樹脂配管敷設構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】樹脂配管敷設構造1の分岐部近傍を示す図で、(a)は正面図、(b)は平面図。
【図2】配管固定構造3を示す図で、(a)は図1(a)のA部拡大図、(b)は(a)のB−B線断面図。
【図3】配管固定構造3aを示す図。
【図4】配管固定構造30を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)のE−E線断面図。
【図5】(a)は配管固定構造30aを示す図、(b)は配管固定構造30bを示す図。
【図6】保持部材41を示す図で、(a)は保持部材41を送水配管5に取り付けた状態を示す斜視図、(b)は断面図。
【図7】配管固定構造40を示す図で、(a)は正面図、(b)は(a)のF−F線断面図。
【図8】トンネル消火配管構造100を示す斜視図。
【図9】トンネル消火配管構造100を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、樹脂配管敷設構造1の分岐部近傍を示す図で、図1(a)は正面図、図1(b)は平面図である。なお、図1に示す、樹脂配管敷設構造1(分岐部9近傍)は、例えば、図8、図9で示したトンネル消火配管構造等における一部である。
【0024】
送水配管5は、主に、樹脂製の管体の外周に補強層が形成され、補強層の外周に保護層が設けられる。管体は、例えば耐熱性のある架橋ポリエチレン製である。補強層は、例えば、補強帯状体が螺旋状に巻きつけられて形成される。補強帯状体としては、ポリアリレート繊維などの繊維補強テープを用いることができ、また、スーパ繊維製のテープであるクラレ社製のベクトラン(登録商標)を使用することができる。
【0025】
ベクトラン(登録商標)は、難燃性で、耐クリープ性にも優れていて、熱分解温度も450℃以上と高く、火災発生時、分岐部温度が80℃の温度でも、消火配管の耐圧性を保つのに十分な強度(たとえば約1200MPa)を有する。なお、ポリアリレート繊維製テープの巻き付けは、例えば、テープ幅方向の端部同士をラップさせるように巻きつけてもよく、または、多少のギャップを設けて巻きつけてもよい。また、ポリアリレート繊維製テープを正逆2重に巻きつけるなど、複数回巻きつけて補強層を形成してもよい。なお、ポリアリレート繊維製テープの巻き付け方法は、ポリアリレート繊維製テープの強度や必要とされる耐内圧に応じて適宜決定される。
【0026】
保護層は、樹脂製であり、例えば難燃性ポリオレフィンが用いられる。保護層は、送水配管5の敷設作業時における外傷防止のために用いられる。また、送水配管5を露出配管する場合には、送水配管5として耐候性が要求される。このため、保護層には、カーボンブラックを1%以上配合することが望ましい。
【0027】
送水配管は、EF(Electro Fusion)接続や、突き合わせ接続、機械継手による接続等で、複数本が接続されて長手方向に敷設される。樹脂配管敷設構造1においては、前述の通り、所定間隔で消火栓が接続される。消火栓との接続部には、ハンドホール7が設けられ、ハンドホール7の内部で分岐部9と送水配管5とが接続される。
【0028】
図1(b)に示すように、分岐部9は、略T字状の部材が用いられる。分岐部9を構成する管体は送水配管5と同様に樹脂製であり、外周に補強帯状体が巻きつけられて補強層が形成される。分岐部9は、両側端がハンドホール7の側壁部(側面)を貫通する送水配管5とハンドホール7内部で接続される。
【0029】
分岐部9を構成する分岐管体は例えばポリエチレン製である。当該分岐管体の外周には、送水配管5と同様に補強層が形成される。分岐部に形成される補強層は、分岐管体の耐内圧特性を向上するためのものである。なお、分岐管体の補強層は、たとえばポリアリレート繊維のテープが巻きつけられ、前述した送水配管5の補強層と同様のものを使用できる。
【0030】
また、補強層の外周には、断熱層を形成してもよい。断熱層は、トンネル内の温度がハンドホール7内に伝達した際に、分岐部9の温度上昇を抑制するためのものである。さらに、断熱層の外周には、必要に応じて防水層を設けても良い。防水層は、外部の水が断熱層に侵入することを防止するためのものである。防水層としては、耐熱性の高いポリイミド、フッ化樹脂製等のテープや、架橋ポリエチレンの熱収縮チューブ等を用いることができる。
【0031】
耐圧試験を行った後、分岐部9の分岐端部(T字状の分岐部でありトンネル壁面方向に向いて配置される)は、鋼管11と、例えば互いのフランジ同士で接続される。ハンドホール7内部で分岐部9と接続される鋼管11は、ハンドホール7内でトンネル壁面方向に配設され、トンネル壁面に沿って上方に屈曲されてハンドホール7の外部(トンネル内部)に導出される。なお、トンネル壁面(内壁面)は、ハンドホール7設置部においてやや窪んでおり、ハンドホール7との間に鋼管11が導出可能な空間が形成される。鋼管11は、ハンドホール7の上方の図示を省略した消火栓と接続される。
【0032】
また、トンネル内部とハンドホール7内部との間(隙間や蓋部)には、必要に応じて断熱材が設けられる。断熱材は、トンネル内部側とハンドホール内部側との境界部を通じて、トンネルからの熱がハンドホール7内部に伝達することを抑制する。断熱材はセラミックファイバー、ロックウール、グラスウール等の繊維系断熱材や、架橋発泡ポリエチレン、発泡ウレタン等の発泡系断熱材、ケイ酸カルシウム等の無機系断熱材が使用できる。
【0033】
分岐部9近傍には、配管固定構造3が形成される。配管固定構造3は、耐圧試験時や使用時において、送水配管5の伸び等による長手方向の移動などを防止するための構造である。
【0034】
図2(a)は、配管固定構造3を示す図で、図1(a)のA部拡大図である。配管固定構造3は、主に、バタフライ弁15、固定冶具17、連結棒19等から構成される。送水配管5には、たとえば、バタフライ弁15が接続される。バタフライ弁15と送水配管5とは、金属製のフランジ部21で接続される。なお、送水配管5と接続される部材としては、バタフライ弁21に限られず、他の弁等の部材であってもよい。また、送水配管5同士が直接フランジ部で接続されてもよい。
【0035】
バタフライ弁15の両側で送水配管5と接続されるそれぞれのフランジ部21の両側(バタフライ弁15に対して外側)には、当該フランジ部21を両側から挟み込むように一対の金属製の固定冶具17が設けられる。なお、送水配管5同士がフランジ部で接続される場合には、フランジ部が1箇所となるが、当該フランジ部を一対の固定冶具で挟み込めばよい。
【0036】
図2(b)は図2(a)のB−B線断面図である。固定冶具17はたとえば図示したようなU字状の部材である。固定冶具17の幅は、フランジ部21の外径よりも狭く、フランジ部21(フランジ部21を連結するボルト等)と接触するように形成される。また、固定冶具17の下端は地面13にアンカ23によって固定される。なお、固定には、別途コの字状のチャンネル部材を用いても良い。
【0037】
また、一対の固定冶具17同士はバタフライ弁15(フランジ部21)をまたぐように連結棒19で連結される。すなわち、バタフライ弁15(フランジ部21)が一対の固定冶具17で挟まれて、固定冶具17を介して地面13に固定される。
【0038】
したがって、フランジ部21が長手方向に移動しようとすると(図中矢印C方向)、フランジ部21が固定冶具17と接触して、その移動が規制されるため、フランジ部21が長手方向に移動することを防止することができる。すなわち、送水配管5が長手方向に伸びても、配管固定構造3の部位においては、送水配管5の長手方向の位置がずれることを防止することができる。これにより、配管が配管ルートに沿って少し余長を生じ浮き上がろうとする力が配管に働くが、この浮き上がりは配管固定構造を設ける間隔を密に設定すれば、小さくすることができる。
【0039】
なお、図3に示す配管固定構造3aのように、バタフライ弁15の両端に、別途短管25を設けても良い。短管25は送水配管5と同様の断面構造であるが、バタフライ弁15のフランジ部21と、送水配管5のフランジ部21aとの外径が異なる場合に、それぞれのフランジ部同士を接続するためのものである。
【0040】
この場合には、バタフライ弁15のフランジ部21ではなく、送水配管5のそれぞれのフランジ部21aを挟み込むように固定冶具17を設ければよい。すなわち、一対の固定冶具17は、フランジ部21a(およびこれと接続される短管25およびバタフライ弁15)を挟み込み、地面13に固定される。したがって、フランジ部21aが固定冶具17と接触してその移動が規制されるため、送水配管5が長手方向に伸びても(図中矢印C方向)、配管固定構造3aの部位においては、送水配管5の長手方向の位置がずれることを防止することができる。
【0041】
なお、トンネル消火配管構造は、例えば以下のように施工される。まず、トンネル側部に送水配管5の設置部として、たとえばコンクリートにより溝を形成する。送水配管5の設置部の所定距離ごとにハンドホールを形成する。ハンドホール7は、例えば、設置される消火栓の設置間隔で設置される。ハンドホール7は、例えば50m毎に設置される。なお、ハンドホール7はコンクリート製である。ハンドホール7は三方を側壁で囲まれており、開口側面がトンネル内壁面側に当接するように設置される。
【0042】
次に、送水配管5をトンネル長手方向に設置する。この場合、例えば送水配管5は内径100mmφであれば150m程度の長尺のものが使用できる。したがって、送水配管5をトンネル長手方向に設置し、ハンドホール設置部で切断すれば良い。このようにすることで、送水配管同士を接続する必要がないので、送水配管5の設置工事が容易で、工事費用の低下が可能になる。
【0043】
ハンドホール7内部には分岐部9が設置される。分岐部9には、補強層等が形成される。また、分岐部近傍において、前述の配管固定構造が設置される。すなわち、必要に応じてバタフライ弁等と送水配管とが接続され、接続部に固定冶具が配置される。固定冶具は地面に固定される。また、それぞれの固定冶具同士が連結棒で連結される。
【0044】
送水配管5と分岐部9とが接続され、配管固定構造が設置された後、分岐部9の分岐方向および送水配管5の両端が塞がれて、内部に所定の圧力で流体が導入され、所定時間、耐内圧試験が施される。漏れや破損部がないことが確認されると、送水配管5が河砂等で埋設される。さらに鋼管11と分岐部9が接続される。なお、送水配管5の埋設部上方にはコンクリート等の蓋が設けられ、ハンドホール7の上方には鉄製等の蓋が設けられる。以上により、トンネル消火配管構造が構築される。
【0045】
以上、第1の実施の形態によれば、送水配管5と他の部材との接続部、または送水配管5同士の接続部に設けられるフランジ部を利用し、当該フランジ部の両側から固定冶具によってその移動が規制されるため、配管固定構造部において、送水配管5の長手方向の移動を防止することができる。したがって、耐圧試験等を行ったとしても、配管固定構造近傍において、分岐部9と、消火栓等における鋼管11との接続部の位置ずれを防止することができる。
【0046】
次に、第2の実施の形態について説明する。図4は、第2の実施の形態にかかる配管固定構造30を示す図であり、図4(a)は正面図、図4(b)は図4(a)のE−E線断面図である。なお、以下の説明において、第1の実施形態にかかる配管固定構造3と同様の機能を奏する構成については、図2等と同様の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0047】
配管固定構造30は配管固定構造3と異なり、固定冶具31が用いられる。配管固定構造30は、配管固定構造3(3a)と同様に、送水配管5と他の部材との接続部、または送水配管5同士の接続部に設けられるフランジ部が利用される。固定冶具31は、フランジ部21にボルト等で取り付けられる。
【0048】
図4(b)に示すように、固定冶具31には、送水配管5との干渉を避けるため、送水配管5の外形に応じた切欠きが形成される。また、固定冶具31には、フランジ部21の固定用ボルトの配列に対応する位置にスリット33が設けられる。すなわち、スリット33は、フランジ部21におけるボルトの配列径と略同一の径で形成され、フランジ部21の周方向の少なくとも一部に重なるように形成される。
【0049】
フランジ部21の接続に用いられる複数のボルトはスリット33を貫通する。すなわち、固定冶具31は、フランジ部21に対して、周方向の複数の箇所でボルトおよびナットで固定される。また、固定冶具31は、地面13にアンカ23によって固定される。したがって、フランジ部21は、固定冶具31を介して地面13に固定される。
【0050】
配管固定構造30によれば、送水配管5が長手方向に伸びても(図中矢印C方向)、配管固定構造30の部位においては、フランジ部21が固定冶具31を介して地面13に固定される。このため、送水配管5の長手方向の位置がずれることを防止することができる。また、固定冶具31がフランジ部21の周方向に対しても固定されるため、送水配管5のねじれ(図中矢印D方向)による周方向の位置ずれも防止することができる。
【0051】
なお、図5(a)に示す配管固定構造30aのように、一対のフランジ部21の両側に、それぞれ固定冶具31を設けても良い。配管固定構造30aも、配管固定構造30と同様に、フランジ部21の長手方向(図中矢印C方向)の移動および周方向(図中矢印D方向)の回転を防止することができる。
【0052】
また、図5(b)に示す配管固定構造30bのように、一対のフランジ部21を、固定板35を介して地面に固定しても良い。配管固定構造30bも、配管固定構造30と同様に、フランジ部21の長手方向(図中矢印C方向)の移動および周方向(図中矢印D方向)の回転を防止することができる。また、固定板35を用いることで、固定冶具31の固定位置を、バタフライ弁15の位置に応じて調整することができる。
【0053】
なお、配管固定構造30、30a、30bは、配管固定構造1等と略同様の手順で施工することができる。すなわち、分岐部9近傍に接続されたバタフライ弁15等との接続部におけるフランジ部に、フランジ部同士の接合用のボルト等を利用して、固定冶具31をフランジ部に接続し、さらに固定冶具31の下部を(必要に応じて固定板35を介して)地面13に固定すればよい。
【0054】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態にかかる配管固定構造3と同様に、送水配管5と他の部材との接続部、または送水配管5同士の接続部に設けられるフランジ部を利用し、当該フランジ部が固定冶具31によって地面13に固定される。このため、配管固定構造部において、フランジ部21の長手方向の移動および周方向の回転が規制され、送水配管5の長手方向の移動およびねじれを防止することができる。したがって、耐圧試験等を行ったとしても、配管固定構造近傍において、分岐部9と、消火栓等における鋼管11との接続部の位置ずれを防止することができる。
【0055】
次に、第3の実施の形態について説明する。図6は、保持部材41を示す図であり、図6(a)は保持部材41を送水配管5に取り付けた状態を示す斜視図、(b)は断面図である。
【0056】
保持部材41は内部に送水配管5を挿通可能な筒状の部材である。保持部材41の長手方向のほぼ中央には保持部45が設けられる。また、保持部材41の保持部45の両側には、保持部45よりも径の大きな拡径部43が設けられる。
【0057】
保持部45は、断面がたとえば矩形である。すなわち、保持部45の外周の少なくとも一部には、断面において直線部47が形成される。図6(a)に示すように、保持部45の断面が略矩形であれば、保持部45の断面外周には、複数の直線部47が形成される。なお、拡径部43は、保持部45の直線部45よりも外方に膨出されて形成されれば、断面形状は円形である必要はない。
【0058】
図6(b)に示すように、保持部材41は、いわゆるEF継手(Electro Fusion継手)と同様の内部構造を有する。すなわち、保持部材41に埋め込まれた電熱線に通電することにより発熱させ、保持部材41に挿入された送水配管5の外面を溶かし、一体化させて接合するものである。すなわち、送水配管5と保持部材41は、電気融着によって接続される。なお、保持部材41のターミナル、配線および電源等は図示を省略する。
【0059】
また、図6に示す例では、送水配管5の任意の位置に保持部材41を固定した状態を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、送水配管5同士の突き合わせ部に保持部材41を設けて(保持部材41の両側からそれぞれ送水配管5の端部を挿入して)、保持部材41を継手(EF継手)として利用しても良い。この場合には、保持部材41は、送水配管5同士の接続継手としての機能と、後述する配管固定部としての機能の両者の機能を奏するものとなる。
【0060】
図7は、保持部材41を用いた配管固定構造40を示す図で、図7(a)は正面図、図7(b)は図7(a)のF−F線断面図である。保持部材41の保持部45(拡径部43で挟まれた部位)には、固定部材49が配置される。固定部材49はたとえばU字状の部材である。固定部材49の幅は、拡径部43の外径よりも狭く、固定部材49の直線部における内側が、直線部47の外面と接触するように形成される。また、固定部材49の下端は地面13にアンカ23によって固定される。なお、固定には、別途コの字状の部材を用いても良い。
【0061】
図7(a)に示すように、固定部材49が拡径部43の内側面と接触するため、保持部材41が固定部材49によって、その長手方向の移動(図中矢印C方向)が規制される。また、固定部材49の一部(直線部)が、保持部材41の直線部47と接触する。例えば、図示した例では、略矩形の保持部45の両側の直線部47が、固定部材49によって挟まれる。このため、保持部材41が周方向に回転する(図中矢印D方向)ことが規制される。
【0062】
すなわち、配管固定構造40によれば、送水配管5が長手方向に伸びても、配管固定構造40の部位においては、送水配管5の長手方向の位置がずれることを防止することができる。また、固定部材49によって、保持部材41の周方向への回転が規制されるため、送水配管5のねじれによる周方向の位置ずれを防止することができる。
【0063】
なお、配管固定構造40は、例えば以下のように施工される。まず、配管固定構造を形成する部位の送水配管5に保持部材41をあらかじめ挿通する。送水配管5の敷設完了後、保持部材41の直線部47の向きが、固定部材49による接触方向と合うよう保持部材41を送水配管5の外周に接合する。なお、送水配管5同士の接続部に用いる場合には、両端から送水配管5を挿通して、上述のように向きを合わせて送水配管同士を接続する。
【0064】
次に、保持部45に固定部材49を配置して、固定部材49の直線部が保持部材41の直線部47に接触するように配置し、固定部材49の端部を地面13に固定する。以上により、配管固定構造40が施工される。
【0065】
第3の実施の形態によれば、第2の実施の形態にかかる配管固定構造3と同様に、保持部材41および固定部材49によって、送水配管5の長手方向の移動および周方向の回転が規制され、送水配管5の長手方向の移動およびねじれを防止することができる。したがって、耐圧試験等を行ったとしても、配管固定構造近傍において、分岐部9と、消火栓等における鋼管11との接続部の位置ずれを防止することができる。
【0066】
また、保持部材41は、フランジ部の有無によらず任意の位置に配置することもできる。このため、設置位置の自由度が大きい。また、保持部材41を送水配管5同士の接続継手として利用することもできる。
【0067】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0068】
たとえば、送水配管5は、トンネルの消火配管以外に用いることもできる。たとえば、一般の構造物の消火配管や、工場配管、上下水道配管、農水配管などいずれにも適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1………樹脂配管敷設構造
3、3a、30、30a、30b、40………配管固定構造
5………送水配管
7………ハンドホール
9………分岐部
11………鋼管
13………地面
15………バタフライ弁
17………固定冶具
19………連結棒
21………フランジ部
23………アンカ
25………短管
31………固定冶具
33………スリット
35………固定板
41………保持部材
43………拡径部
45………保持部
47………直線部
49………固定部材
100………トンネル消火配管
103………トンネル
105………送水配管
107………ハンドホール
109………分岐部
113………消火栓

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂配管の敷設構造であって、
樹脂管体と、前記樹脂管体の外周に設けられ、帯状体が巻きつけられて形成される補強層と、前記補強層の外周に設けられる保護層とを具備する樹脂配管を用い、
前記樹脂配管の敷設方向の所定の間隔で、前記樹脂配管が長手方向に移動することを防止するため前記樹脂配管を固定する配管固定部が形成されることを特徴とする樹脂配管敷設構造。
【請求項2】
前記配管固定部は、さらに前記樹脂配管の周方向の回転を防止することが可能な回転防止機構を備えていることを特徴とする請求項1記載の樹脂配管敷設構造。
【請求項3】
前記配管固定部の少なくとも一部は、前記樹脂配管と他の部材の接続部、または前記樹脂配管同士の接続部に形成されるフランジ部に形成され、前記フランジ部の移動を規制することで、前記樹脂配管の長手方向の移動を規制することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂配管敷設構造。
【請求項4】
前記フランジ部は、前記樹脂配管と弁体との接続部に形成され、
前記フランジ部には固定冶具が接続され、前記固定冶具によって前記フランジ部を地面に対して固定することで、前記樹脂配管の長手方向の移動が規制されるとともに前記樹脂配管の周方向の回転が規制されることを特徴とする請求項3記載の樹脂配管敷設構造。
【請求項5】
前記フランジ部は、前記樹脂配管と弁体との接続部に形成され、
前記弁体の両側の前記フランジ部には、それぞれ固定冶具が設けられ、それぞれの固定冶具同士は連結されており、前記固定冶具を地面に対して固定して、前記固定冶具と前記フランジ部とを接触させることで、前記樹脂配管の長手方向の移動を規制することを特徴とする請求項3記載の樹脂配管敷設構造
【請求項6】
前記配管固定部の少なくとも一部は、前記樹脂配管の外周に設けられる保持材と、前記保持部材に取り付けられて地面に固定される固定部材とを具備し、
前記保持部材は筒状であり、前記保持部材に前記樹脂配管を挿通した状態で、前記保持部材の内面は前記樹脂配管の外面と熱融着し、
前記保持部材の外周面の両端部には拡径部が形成され、断面において、前記保持部材の前記拡径部で挟まれた部位の少なくとも一部には、直線部が形成され、前記固定部材は、前記直線部と接触するように配置されて地面に固定され、
前記拡径部が前記固定部材と接触することで、前記樹脂配管の長手方向の移動が規制されるとともに、前記固定部材が前記直線部と接触することで、前記樹脂配管の周方向の回転が規制されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の樹脂配管敷設構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−19516(P2013−19516A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155102(P2011−155102)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】