説明

歩数計およびプログラム

【課題】 ユーザが自由な態様で携帯して使用した場合において、正確に歩数の計数を行うことができ、かつ、携帯電話機等の携帯型電子機器との親和性が良い歩数計を提供する。
【解決手段】 歩数計100において、収音部1は、外界の音を収音する。演算部3は、歩数計測表示プログラムに従い、収音部1によって収音される音から歩行音を求め、歩行音に基づいて歩数を算出し、表示部5に表示させる。好ましい態様では、歩数計測表示プログラムをネットワーク上のサイトからダウンロードした携帯電話機が歩数計100として機能する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、歩数計およびコンピュータを歩数計として機能させるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から提供されている歩数計として、例えば特許文献1に開示されているように、圧電センサなどを利用した振動センサにより、歩数計を装着した人体の振動を検出し、この検出結果に基づき歩数の計数を行うものがある。また、他の形態の歩数計として、例えば特許文献2に開示されているように、バネにより付勢された振り子を内蔵しており、歩数計を装着した人体の上下動により生じる振り子の振動を検出し、この検出結果に基づき歩数の計数を行うものがある。
【特許文献1】特開2006−227911号公報
【特許文献2】特開2005−174235号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述した特許文献1および2に開示されているような従来の歩数計は、ユーザの人体の振動や上下動を検出して歩数の計数を行うものである。このため、例えばユーザのベルトへ装着する等、ユーザの人体に固定しないと、正確に歩数の計数を行うことができず、例えばユーザが首にぶらさげる等、その人体に固定しない状態で携帯した場合には、正確に歩数の計数を行うことができないという問題があった。また、既存の歩数計は、歩数を計数する程度の低い演算能力しか備えておらず、また、表示画面の小さいものが殆どである。このため、例えば1日単位で歩数を求め、この求めた各日の歩数を1ヶ月に亙ってグラフ表示する等、ユーザにとって有益な情報処理を行って、その結果を表示することができないという問題がある。このような情報処理および処理結果の表示が可能な歩数計を実現するための手段として、例えば携帯電話機等のある程度の演算機能と表示機能を備えた携帯型電子機器に歩数計としての機能を持たせることが考えられる。しかし、人体の振動や上下動を検出するための機構は、収納スペースが必要であるため、歩数計としての機能を携帯電話機等の携帯型電子機器に追加するのは困難であるという問題がある。
【0004】
この発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、ユーザが自由な態様で携帯して使用した場合において、正確に歩数の計数を行うことができ、かつ、携帯電話機等の携帯型電子機器との親和性が良い歩数計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、外界の音を収音し、収音した音を示す信号を出力する収音手段と、前記収音手段の出力信号に基づき、歩行音の発生を判定して歩数を算出する演算手段と、前記演算手段により算出された歩数を表示する表示手段とを具備することを特徴とする歩数計およびコンピュータを前記演算手段として機能させるコンピュータプログラムを提供する。
かかる発明によれば、歩数計の演算手段は、収音手段の出力信号から歩行音の発生を判定し、歩数を算出するので、ユーザがその人体に固定しないような態様で歩数計を携帯した場合でも、正確に歩数を求めることができる。また、この発明による歩数計は、収音手段と、表示手段と、演算手段を備えていればよいので、携帯電話機等の携帯型電子機器の一部として実現することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態を説明する。
図1は、この発明の一実施形態である歩数計100の構成を示すブロック図である。図1に示すように、歩数計100は、収音部1と、操作部2と、演算部3と、記憶部4と、表示部5とを有する。この歩数計100は、歩数を計測する専用の歩数計として実現される場合もあるし、携帯電話機等の携帯型電子機器に組み込まれる場合もある。
【0007】
収音部1は、外界の音を収音し、収音した音響波形のサンプル列を示す音響波形データを出力する装置である。本実施形態では、ユーザの足元において発生する音を収音し、その音から歩行音を求め、この歩行音に基づいて歩数を算出する。従って、収音部1には、この歩行音を正確に収音する能力が求められる。
【0008】
収音部1の構成例としては、1個のマイクロフォンを備えた第1の構成例と、複数のマイクロフォンを備えた第2の構成例が考えられる。図2は、前者の第1の構成例を示すブロック図である。また、図4(a)は、この第1の構成例による収音部1を備えた歩数計100の外観を示す図である。この例において、収音部1は、マイクロフォン11と、マイクロフォン11から出力されるアナログ音響波形信号を増幅するアンプ12と、このアンプ12の出力信号をサンプリングし、デジタル信号である音響波形データに変換するA/D変換器13とにより構成されている。マイクロフォン11は、無指向性のマイクロフォンでもよいが、歩行音が雑音に埋もれやすい環境において歩数の計数を行う場合には、指向性または超指向性のマイクロフォンを用いるのが好ましい。
【0009】
図3は、収音部1の第2の構成例を示すブロック図である。また、図4(b)は、この第2の構成例による収音部1を備えた歩数計100の外観を示す図である。この例において、収音部1は、2個のマイクロフォン11aおよび11bと、各マイクロフォン11aおよび11bから出力されるアナログ音響波形信号を各々増幅するアンプ12aおよび12bと、アンプ12aおよび12bの出力信号を各々サンプリングし、デジタル信号である音響波形データに各々変換するA/D変換器13aおよび13bと、A/D変換器13aおよび13bの各出力信号に演算処理を施し、歩行音の成分を多く含み、歩行音以外の成分の少ない音響波形データを出力する対象音抽出部14とにより構成されている。
【0010】
対象音抽出部14の処理内容に関しては、各種の態様が考えられる。ある態様において、対象音抽出部14は、例えばA/D変換器13aおよび13bの各出力信号を遅延させて重み付け加算し、その結果を音響波形データとして出力する等して、マイクロフォン11aおよび11bの組をユーザの足元の方向に強い指向性を持ったマイクロフォンアレイとして機能させる。他の態様において、対象音抽出部14は、例えばSAFIA(sound source Segregation based on estimating incident Angle of each
Frequency component of Input signals Acquired by multiple microphones)等の周知の音源分離手法により、A/D変換器13aおよび13bの各出力信号から歩行音以外の成分の少ない音響波形データを抽出する。
【0011】
図5(a)および(b)は、歩数計100の携帯の態様の典型例を示すものである。図5(a)に示す例では、歩数計100の筐体の裏面にフック等の形態の取り付け具が設けられており、歩数計100は、この取り付け具をユーザのベルトに引っ掛けた状態でユーザの人体に固定されている。図5(b)に示す例では、歩数計100には、紐の輪が繋がれている。ユーザは、この紐の輪を自分の首に掛け、歩数計100をぶら下げた状態で装着している。例えばMEMS(Micro Electro Mechanical System)技術等により収音部1を含む歩数計100全体を小型軽量化した場合には、この図5(b)に示すような首にぶら下げた状態での歩数計100の使用も可能になる。歩数計100を構成するに当たっては、いずれの態様でも、ユーザの人体へ装着された状態において、図4(a)および(b)に示すように収音部1のマイクロフォン11またはマイクロフォン11aおよび11bが下方を向くように、歩数計100の筐体の裏面に取り付け具を設け、あるいは歩数計100の筐体に紐を取り付ける。
【0012】
また、収音部1として指向性または超指向性のものを用いる場合には、図6に例示するように、歩行音の音源の存在範囲であるユーザの足元の方向に強い指向性を持ったものを用いることが好ましい。なお、図6では、図5(a)に示すようにユーザが歩数計100をベルトに固定する場合を例に収音部1の望ましい指向性を示しているが、図5(b)に示すように歩数計100を首にぶら下げる場合も同様であり、収音部1は、ユーザの足元の方向に強い指向性を持ったものであることが望ましい。また、収音部1は、例えばマイクロフォンの後段のアンプのゲイン調整等により受音感度の調整が可能な構成としてもよい。また、図3に例示するように複数のマイクロフォン(図3の例では2個のマイクロフォン11aおよび11b)を収音部1に設けてマイクロフォンアレイを構成する場合には、対象音抽出部14が各マイクロフォンからの各出力信号を遅延させて重み付け加算する際の各遅延量や各重み値を調整可能な構成にしてもよい。この態様によれば、収音部1の指向性を調整することが可能になる。
【0013】
図1において、操作部2は、ユーザが各種のコマンドやデータを入力する際に操作する操作子の集まりである。これらの操作子には、ホールドボタン21と、表示切換ボタン22等が含まれる。ここで、ホールドボタン21は、押下される都度、OFFからONへ、ONからOFFへと切り換わるトグル式のボタンである。本実施形態における歩数計100は、このホールドボタン21がOFFである期間のみ歩数の計数を行う。歩数計100は、ホールドボタン21がONである期間は、歩数の計数は行わず、その直前のホールドボタン21がOFFである期間の歩数の最終値を維持する。また、表示切換ボタン22は、歩数表示のモードの切り換えを指示するためのボタンである。さらに詳述すると、本実施形態では、当日の歩数を表示するモード、例えば図7に示すように、当日(図示の例では2007年4月30日)が属する月の各日における歩数を時系列的にグラフ表示するモード等、複数の表示モードが用意されている。本実施形態において、これらの表示モードは序列化されており、表示切換ボタン22が押下される都度、1番目の表示モードから2番目のモードへ、2番目の表示モードから3番目の表示モードへと表示モードの切り換えが行われ、その表示モードでの歩数表示が行われるようになっている。
【0014】
演算部3は、例えば各種のプログラムを記憶したフラッシュメモリ等のプログラムメモリと、このプログラムメモリに記憶されたプログラムを実行するCPUと、CPUがワークエリアとして使用するRAMとにより構成されている。
【0015】
プログラムメモリに記憶されたプログラムのうち主要なものとして、演算部3のCPUに歩数計測表示処理を実行させる歩数計測表示プログラムがある。ここで、歩数計測表示処理は、収音部1から出力される音響波形データから歩行音の発生を判定する処理と、この判定結果に基づいて歩数を計数する処理とを含む。後者の歩数を計数する処理では、上述したホールドボタン21のON/OFFを検知して、歩数の計数の行うか否かの切り換え制御を行う。また、歩数計測表示処理は、上述した表示切換ボタン22の操作により設定される表示モードに従い、計数結果である歩数を表示部5に表示させる処理を含む。
【0016】
その他、歩数計測表示処理には、操作部2に対して与えられる操作に従って、収音部1の受音感度を調整する処理を含めてもよい。あるいは、収音部1をマイクロフォンアレイとする場合において、収音部1の指向性を操作部2に与えられる操作に従って調整する処理を歩数計測表示処理に含めてもよい。
【0017】
歩数計測表示プログラムの他、プログラムメモリには、カレンダプログラムが記憶されている。これは、図示しないクロックジェネレータが出力するクロックをカウントすることにより、日付および時刻を示す現在日時データを発生する処理を演算部3のCPUに実行させるプログラムである。演算部3のCPUは、例えば歩数計測表示プログラムを実行しつつ、クロック発生時の割り込み処理としてカレンダプログラムを実行することにより、歩数計測表示プログラムとカレンダプログラムを並列的に実行する。その際、歩数計測表示プログラムでは、カレンダプログラムの実行により発生する現在日時データを利用して、1日単位での歩数の処理を行う。
【0018】
記憶部4は、EEPROM等の書き換え可能な不揮発性のメモリまたはバッテリバックアップされたRAM等により構成されている。この記憶部4には、現時点における歩数を示す当日歩数データを記憶するための当日歩数記憶領域と、過去一定期間内の各日の歩数を各々示す複数の過去歩数データを日付に対応付けて各々記憶するための過去歩数記憶領域が設けられている。これらの当日歩数記憶領域および過去歩数記憶領域は、歩数計測表示プログラムによって、その記憶内容の書き換えが行われる。また、記憶部4には、表示部5の表示対象となる画像データを記憶する表示画像記憶領域が設けられている。この表示画像記憶領域の記憶内容の書き換えも歩数計測表示プログラムによって行われる。表示部5は、例えば液晶表示パネルとその駆動回路により構成されており、所定時間長のフレーム周期毎に、記憶部4の表示画像記憶領域内の画像データを読み出し、画像として表示する。
【0019】
本実施形態における歩数計測表示プログラムは、ネットワーク上のサイトから例えば携帯電話機にダウンロードさせるようにしてもよい。この場合、歩数計測表示プログラムをダウンロードした携帯電話機は、通常、収音部1や表示部5として機能する装置を備えているので、歩数計100として機能させることが可能である。
【0020】
次に本実施形態の動作について説明する。ユーザは、歩数計100に歩数の計数を行わせたいとき、歩数計100を装着後、ホールドボタン21をOFFにして、歩行を開始する。この間、収音部1は、外界の音を収音する。その際、図5(a)または(b)に示すように歩数計100が装着された状態において、収音部1のマイクロフォンが下方を向いていると、下方において発生するユーザの歩行音が収音部1によって収音される。また、図6に例示するように、収音部1がユーザの足元の方向に強い指向性を有している場合、歩行音は外界の雑音に埋もれることなく収音されることとなる。
【0021】
演算部3のCPUは、歩数計測表示プログラムに従い、収音部1が出力する音響波形データを処理して、歩行音を検出する。図8は、この歩数計測表示プログラムにおける歩行音の検出処理の一例を示すものである。この例では、音響波形データの振幅を閾値と比較し、振幅が閾値を越えた時点において歩行音が発生したと判定する。また、雑音を除去して歩行音を正確に検出するため、歩行音が発生したと判定した時点から一定時間(例えば人間が一歩踏み出すのに要する最低限の時間)はマスク期間とし、このマスク期間に音響波形データの振幅が閾値を越えたとしても歩行音が発生したとは判定しない。このようにマスク期間を設けることは、歩行音の発生を正確に検出するのに役立つ。例えば、足を引きずって歩くユーザ等の場合、足を1回踏み出すときに、例えば足の踵とつま先が時間的に前後して着地し、2回に分けて着地音が発生することがある。このような1歩踏み出す度に2回発生する着地音の各々を歩行音として計数したのでは、不正確な歩数の計測になる。本実施形態のように、歩行音の発生を判定した直後にマスク期間を設けた場合には、このような2回発生する着地音のうちの後の着地音を無視し、正確な歩数の計数を行うことができる。図8において、▽マークは、以上のような処理により歩行音が発生したと判定したタイミングを示している。
【0022】
演算部3のCPUは、ホールドボタン21がOFFである期間、歩数計測表示プログラムに従い、歩行音が発生したと判定する度に、記憶部4の当日歩数記憶領域内の当日歩数データを1だけ増加させる。また、演算部3のCPUは、カレンダプログラムの実行により発生する現在日時データを監視する。そして、現在日時データが示す日付が変わったとき、当日歩数記憶領域に格納された当日歩数データと現在日時データが示す日付の1日前の日付とを対応付けて、過去歩数記憶領域に格納する。そして、当日歩数記憶領域に当日歩数データの初期値として「0」を格納する。
【0023】
また、演算部3のCPUは、歩数計測表示プログラムに従い、表示切換ボタン22の操作により設定された表示モードでの歩数表示を行うための表示制御を行う。さらに詳述すると、演算部3のCPUは、現在の表示モードが当日の歩数を表示するモードである場合、記憶部4の当日歩数記憶領域内の当日歩数データに従って、歩数を示す画像データを生成し、記憶部4の表示画像記憶領域に格納する。これにより、前掲図4(a)または(b)に例示されているように、歩数計100の表示部5にその当日における現在の歩数が表示される。また、演算部3のCPUは、当日が属する月の各日における歩数を時系列的にグラフ表示するモードが現在の表示モードである場合、記憶部4の過去歩数記憶領域内の過去歩数データを参照して、当日が属する月の各日における歩数を時系列的に示すグラフの画像データを生成し、記憶部4の表示画像記憶領域に格納する。これにより、前掲図7に示すようなグラフが歩数計100の表示部5に表示される。
【0024】
以上説明したように、本実施形態によれば、歩数計100の演算部3は、収音部1により収音される音から歩行音を求め、この歩行音に基づいて歩数を算出するので、ユーザが歩数計100を首にぶら下げる等、その人体に固定しないような態様で歩数計100を携帯した場合でも、正確に歩数を求めることができる。また、本実施形態による歩数計100は、歩行を検知するための手段として、振動センサや振り子などの機構が不要であるので、装置全体をコンパクトにすることができる利点がある。また、本実施形態による歩数計100は、収音部1と、表示部5と、演算部3を備えていれば実現可能であるので、携帯電話機等の携帯型電子機器の一部として実現することが可能である。例えば携帯電話機を本実施形態による歩数計100として機能させるようにした場合、携帯電話機の表示画面は、既存の歩数計の表示画面より広いので、現在の歩数を表示するに止まらず、例えば前掲図7の月間の歩数のグラフ表示など、歩数の計測結果に関する多彩な表示を行い、有益な情報をユーザに提供することができる。さらに歩数計100を携帯電話機等として実現した場合には、ユーザは携帯電話機と別体の歩数計100を持ち歩く必要がなく、通常、常に携帯している携帯電話機により歩数の計数を行うことができ、利便性が増すという効果がある。また、歩数計100を携帯電話機等として実現した場合には、歩数の計数結果について、携帯電話機等が元々有している情報処理機能を利用した情報処理を行うことも可能になる。例えば、日々得られる歩数の計数結果にユーザがメモを付加し、日記のような形式で携帯電話機のメモリに保存する、といった処理も可能になる。
【0025】
以上、この発明の各実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0026】
(1)歩数計測表示処理において、収音部1から得られる音響波形データに対し、歩行音のスペクトルが属すると考えられる帯域の成分のみを選択するフィルタ処理を施し、このフィルタ処理を経た音響波形データについて、上述した閾値との比較を行い、歩行音が発生したか否かの判定を行うようにしてもよい。
【0027】
(2)歩数計測表示処理に、歩行音の発生する時間間隔を求め、ユーザが歩いているのか走っているのかを判定し、判定結果を表示部5に表示させる処理を含めてもよい。あるいは、歩行音の発生する時間間隔を監視することにより、ユーザが歩いているいる時間帯と走っている時間帯を求めて記憶部4に記憶し、歩いている時間帯と走っている時間帯が分かるように表示部5に表示させる処理を歩数計測表示処理に含めてもよい。
【0028】
(3)歩行場所の判定機能を歩数計測表示処理に含めてもよい。この態様において、歩数計測表示処理では、音響波形データと閾値との比較により、歩行音が発生したと判定する度に、歩行音が属すると考えられる区間内の音響波形データの周波数解析を行って、歩行音のスペクトル分布を求める。そして、この歩行音のスペクトル分布に基づき、ユーザが柔らかい場所を歩行しているのか硬い場所を歩行しているのかを判定し、判定結果に従って、記憶部4への歩数の記録を行う。具体的には、判定した歩行音が柔らかい場所での歩行によるものである場合には、柔らかい場所での歩数を1だけ増加させ、判定した歩行音が硬い場所での歩行によるものである場合には、硬い場所での歩数を1だけ増加させる、という具合に、柔らかい場所と硬い場所とで別々に歩数の計数を行うのである。そして、表示部5による歩数の表示も、柔らかい場所と硬い場所とで別々に歩数の表示を行う。この態様によれば、ユーザは、自分がどのような場所を歩行してきたかを知ることができ、以後の歩行のコースの選択の参考にすることができる。
【0029】
(4)歩数計測表示処理に、歩行が適正であるか否かを判定する処理を含めてもよい。この態様において、歩数計測表示処理では、音響波形データの振幅が閾値を越えて、歩行音が発生したと判定した後のマスク期間において、音響波形データの振幅が連続的(バースト的)に閾値を越える回数を求める。この回数が1回である場合、適切な歩行の歩数を1だけ増加させる。一方、この回数が2回以上である場合、ユーザが足を引きずりながら歩いている等の原因により、ユーザの足の複数箇所が時間的に前後して着地したものと考えられるので、不適切な歩行の歩数を1だけ増加させる。そして、表示部5による歩数の表示も、適切な歩行と不適切な歩行とで別々に歩数の表示を行う。この態様によれば、ユーザは、自分がどの程度適切な歩行を行っているかを定量的に把握することができる。
【0030】
(5)マスク期間では収音部1の動作および演算部3における音響波形データの処理を停止させるようにしてもよい。あるいは操作部2の操作により動作モードとして省電力モードが指定された場合に、マスク期間では収音部1の動作および演算部3における音響波形データの処理を停止させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の一実施形態である歩数計100の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態における収音部1の第1の構成例を示すブロック図である。
【図3】同実施形態における収音部1の第2の構成例を示すブロック図である。
【図4】同実施形態における歩数計100の外観を示す図である。
【図5】同実施形態における歩数計100の携帯の態様を示す図である。
【図6】同実施形態における収音部1の望ましい指向性を示す図である。
【図7】同実施形態における歩数表示例を示す図である。
【図8】同実施形態における歩行音の発生の判定方法を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
100……歩数計、1……収音部、2……操作部、3……演算部、4……記憶部、5……表示部、21……ホールドボタン、22……表示切換ボタン、11,11a,11b……マイクロフォン、12,12a,12b……アンプ、13,13a,13b……A/D変換器、14……対象音抽出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外界の音を収音し、収音した音を示す信号を出力する収音手段と、
前記収音手段の出力信号に基づき、歩行音の発生を判定して歩数を算出する演算手段と、
前記演算手段により算出された歩数を表示する表示手段と
を具備することを特徴とする歩数計。
【請求項2】
前記収音手段は、前記歩数計のユーザの足元付近に高い指向性を有することを特徴とする請求項1に記載の歩数計。
【請求項3】
前記演算手段は、前記収音手段の出力信号の振幅が閾値を越えたとき、歩行音が発生したと判定し、この歩行音の発生を判定したタイミングから一定時間内は、前記収音手段の出力信号の振幅が閾値を越えたとしても、歩行音が発生したと判定しないことを特徴とする請求項1または2に記載の歩数計。
【請求項4】
前記演算手段は、前記収音手段の出力信号に対し、歩行音のスペクトルが属する帯域の成分のみを選択するフィルタ処理を施し、このフィルタ処理を経た信号を用いて、前記歩行音の発生に関する判定を行うことを特徴とする請求項3に記載の歩数計。
【請求項5】
コンピュータを、
外界の音を収音する収音手段から収音した音を示す出力信号を取得し、この出力信号に基づいて、歩行音の発生を判定して歩数を算出し、表示手段に歩数を表示させる演算手段として機能させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−37570(P2009−37570A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203611(P2007−203611)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】