歩行作業機の車体高さ調節構造
【課題】車体の大型化や重量化及びコストの高騰などを招くことなく、作土層の浅い圃場と作土層の深い圃場とにかかわらず、所定の作業深さで作業を安定して行えるようにする。
【解決手段】左右向きの軸心P1を支点にして上下揺動する伝動ケース5と、伝動ケース5を予め設定した揺動範囲で軸心P1を支点にして上下方向に揺動操作する操作機構Eとを備え、伝動ケース5と操作機構Eとから、伝動ケース5の遊端部に備えた推進車輪6の対車体高さを変更することにより車体の対地高さを調節する車体高さ調節機構Fを構成してある歩行作業機の車体高さ調節構造において、車体高さ調節機構Fに、揺動範囲の設定変更を可能にする揺動範囲変更手段Gを備える。
【解決手段】左右向きの軸心P1を支点にして上下揺動する伝動ケース5と、伝動ケース5を予め設定した揺動範囲で軸心P1を支点にして上下方向に揺動操作する操作機構Eとを備え、伝動ケース5と操作機構Eとから、伝動ケース5の遊端部に備えた推進車輪6の対車体高さを変更することにより車体の対地高さを調節する車体高さ調節機構Fを構成してある歩行作業機の車体高さ調節構造において、車体高さ調節機構Fに、揺動範囲の設定変更を可能にする揺動範囲変更手段Gを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右向きの軸心を支点にして上下揺動する伝動ケースと、前記伝動ケースを予め設定した揺動範囲で前記軸心を支点にして上下方向に揺動操作する操作機構とを備え、前記伝動ケースと前記操作機構とから、前記伝動ケースの遊端部に備えた推進車輪の対車体高さを変更することにより車体の対地高さを調節する車体高さ調節機構を構成してある歩行作業機の車体高さ調節構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような歩行作業機の車体高さ調節構造では、車体固定部側と伝動ケース側とにわたって油圧シリンダを架設し、その油圧シリンダの作動ストロークを伝動ケースの揺動範囲に設定したものがある(例えば特許文献1参照)。
又、車体固定部側と伝動ケース側とにわたってネジ送り機構を架設し、そのネジ送り機構のネジ送り範囲を伝動ケースの揺動範囲に設定したものがある(例えば特許文献2及び3参照)。
【特許文献1】特開平9−168322号公報
【特許文献2】特開平8−103117号公報
【特許文献3】特開平5−292815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の構成によると、圃場の作土層の深さに応じて車体の対地高さを調節することにより、圃場表面に対する車体高さを一定に維持することができ、作土層の深さの変動にかかわらず所定の作業深さで作業を安定して行うことができる。
【0004】
ところで、作土層の深さにはいろいろあり、特に、灌漑設備のある一般的な作土層の浅い圃場と、灌漑設備のない作土層の深い圃場(例えば天水田)とでは、作土層の深さが大きく異なる。そのため、前述した従来の車体高さ調節構造では、それらの圃場に対応した車体の対地高さ調節を可能にするために、作動ストロークの長い大型の油圧リンダを採用する、あるいは、ネジ送り量の長い長尺の送りねじを採用する、などの改良を施す必要性が生じることになる。そのような改良を施した場合には、車体高さ調節機構の大型化や重量化、並びに、車体高さ調節機構に要するコストの高騰などを招くことになり、結果、車体の大型化や重量化及びコストの高騰などを招くことになる。
【0005】
本発明の目的は、車体の大型化や重量化及びコストの高騰などを招くことなく、作土層の浅い圃場と作土層の深い圃場とにかかわらず、所定の作業深さで作業を安定して行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、
左右向きの軸心を支点にして上下揺動する伝動ケースと、前記伝動ケースを予め設定した揺動範囲で前記軸心を支点にして上下方向に揺動操作する操作機構とを備え、
前記伝動ケースと前記操作機構とから、前記伝動ケースの遊端部に備えた推進車輪の対車体高さを変更することにより車体の対地高さを調節する車体高さ調節機構を構成してある歩行作業機の車体高さ調節構造において、
前記車体高さ調節機構に、前記揺動範囲の設定変更を可能にする揺動範囲変更手段を備えてあることを特徴とする。
【0007】
この特徴構成によると、作土層の浅い一般的な圃場で作業を行う場合には、揺動範囲変更手段により、左右向きの軸心を支点にした伝動ケースの上下方向での揺動範囲を、作土層の浅い圃場に適した揺動範囲に変更することができる。そして、その揺動範囲で車体の対地高さを調節することにより、作土層の浅い圃場での作土層の深さの変動にかかわらず所定の作業深さで作業を安定して行うことができる。
【0008】
又、作土層の深い天水田などの圃場で作業を行う場合には、揺動範囲変更手段により、左右向きの軸心を支点にした伝動ケースの上下方向での揺動範囲を、作土層の深い圃場に適した揺動範囲に変更することができる。そして、その揺動範囲で車体の対地高さを調節することにより、作土層の深い圃場での作土層の深さの変動にかかわらず所定の作業深さで作業を安定して行うことができる。
【0009】
又、揺動範囲変更手段を備えることにより、作動ストロークの長い大型の油圧リンダを採用する、あるいは、ネジ送り量の長い長尺の送りねじを採用する、などの改良を施すことなく、作土層の深さが大きく異なる圃場に対応した車体の対地高さ調節を可能にすることができる。
【0010】
従って、車体の大型化や重量化及びコストの高騰などを招くことなく、作土層の浅い圃場と作土層の深い圃場とにかかわらず、所定の作業深さで作業を安定して行うことができる。
【0011】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、
前記伝動ケースに、前記軸心を支点にして前記伝動ケースと一体揺動する揺動アームを連結し、
前記操作機構が、前記揺動アームを介して前記伝動ケースの前記揺動操作を行うように構成し、
前記揺動範囲変更手段が、前記軸心を支点にした前記伝動ケースの揺動方向で、前記伝動ケースに対する前記揺動アームの連結位置を変更することにより、前記揺動範囲を変更するように構成してあることを特徴とする。
【0012】
この特徴構成によると、伝動ケースに対する揺動アームの連結位置を変更するだけの簡単な作業で、作土層の深さに対応した伝動ケースの上下揺動範囲の設定変更を行うことができる。
【0013】
従って、作土層の深さに応じて伝動ケースの上下揺動範囲を設定変更する際の作業性を向上させることができる。
【0014】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項1又は2に記載の発明において、
前記操作機構を、左右向きの軸心を支点にした揺動が可能となるように車体固定部側に第1枢支部を介して装備される第1部材と、左右向きの軸心を支点にした揺動が可能となるように伝動ケース側に第2枢支部を介して装備される第2部材とから、車体の前後方向に沿って車体固定部側と伝動ケース側とにわたるように架設され、かつ、前記第1部材に対して前記第2部材が架設方向に変位することにより、前記伝動ケースの前記揺動操作を行うように構成し、
前記第1枢支部及び前記第2枢支部を、車体固定部側と前記第1部材のいずれか一方、又は、伝動ケース側と前記第2部材のいずれか一方に備えた軸部材と、車体固定部側と前記第1部材のいずれか他方、又は、伝動ケース側と前記第2部材のいずれか他方に、前記軸部材に外嵌するように備えたホルダ部材とから構成し、
前記第1枢支部と前記第2枢支部のいずれか一方又は双方の前記軸部材及び前記ホルダ部材を、前記第1部材又は前記第2部材よりも大径に形成してあることを特徴とする。
【0015】
この特徴構成によると、軸部材及びホルダ部材を大径に形成することにより、軸部材及びホルダ部材にかかる面圧を小さくすることができる。これにより、軸部材及びホルダ部材の耐久性を向上させることができる。又、軸部材及びホルダ部材のいずれか一方又は双方に、重量や成形の面で有利な樹脂製のものを採用することが可能になり、樹脂製のものを採用することにより、軽量化や成形の容易化を図ることができる。
【0016】
しかも、第1枢支部及び第2枢支部を上記のように構成することにより、車体に対する第1部材及び第2部材の組付けを、車体の横方向からの差し込みなどにより簡単に行うことができる。
【0017】
従って、耐久性や組付け性を向上させることができる上に、軽量化や成形の容易化を図ることが可能になる。
【0018】
本発明のうちの請求項4に記載の発明では、上記請求項1〜3のいずれか一つに記載の発明において、
前記操作機構に、車体の前後方向に沿って車体固定部側と伝動ケース側とにわたって架設される油圧シリンダを備え、
前記油圧シリンダに対する配管の接続を前記油圧シリンダの上下方向から行うように構成してあることを特徴とする。
【0019】
この特徴構成によると、油圧シリンダと油圧シリンダに対する配管とが上下方向で重なることになり、油圧シリンダに対する配管の横方向への張り出しを抑制又は防止することができる。これにより、配管の横方向への張り出しに起因した車体左右幅の増大を抑制することができる。
【0020】
又、一般的に行われている油圧シリンダに対する配管の螺合接続を、油圧シリンダに対して上下方向から行うようになることから、配管の緩み方向を油圧シリンダの振動方向とが異なるようになり、これにより、油圧シリンダの振動に起因して、油圧シリンダに対する配管の接続に緩みが生じることを抑制することができる。
【0021】
従って、車体左右幅の増大による歩行田植機としての取り扱い性の低下、及び、油圧シリンダの振動に起因した油圧シリンダに対する配管接続箇所での緩みの発生を抑制することができる。
【0022】
本発明のうちの請求項5に記載の発明では、上記請求項4に記載の発明において、
前記油圧シリンダとして複動型のものを採用し、
前記油圧シリンダおけるシリンダチューブの一端部を、前記伝動ケースの揺動支点よりも下方に位置する車体固定部側の下位部分に連結し、かつ、前記シリンダチューブの他端部を、前記伝動ケースの揺動支点よりも上方に位置する伝動ケース側の上位部分に連結し、
前記シリンダチューブの一端部に対する配管の接続を前記油圧シリンダの上方から行い、前記シリンダチューブの他端部に対する配管の接続を前記油圧シリンダの下方から行うように構成してあることを特徴とする。
【0023】
この特徴構成によると、単動型の油圧シリンダを採用した場合に招く虞ある、作土層の深い圃場での車体の後方側への引き寄せに伴って、作土層の抵抗により推進車輪とともに伝動ケースが上昇し車体が下降する、といた不都合の発生を回避することができる。
【0024】
又、油圧シリンダに対する配管の高さ位置を油圧シリンダの高さ位置に沿えることが可能になり、これにより、シリンダチューブの一端部に接続した配管に対する泥の付着を抑制することができ、又、シリンダチューブの他端部に接続した配管により、油圧シリンダの周辺に配置した各種機器に対する上方側からのメンテナンスが行いやすくなる。
【0025】
従って、不測に車高が低下する虞を回避することができる上に、配管への泥の付着を抑制することができ、かつ、油圧シリンダの周辺機器に対するメンテナンス性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例として、本発明に係る歩行作業機の車体高さ調節構造を、歩行作業機の一例である歩行田植機に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は歩行田植機の全体左側面図であり、図2は歩行田植機の全体右側面図であり、図3は歩行田植機の全体平面図であり、これらの図に示すように、この歩行田植機は、1輪式で歩行型の走行車体1に2条植え用の苗植付装置2などを装備して構成してある。
【0028】
図4は歩行田植機の前半部の構成を示す平面図であり、図1〜4に示すように、走行車体1は、その前部にエンジン3やフレーム兼用のトランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)4などを配備し、その前後中間部に、単一の走行用の伝動ケース5、単一の推進車輪6、左右一対の第1サイドフレーム7、及び、左右一対の第2サイドフレーム8、などを装備し、その後部に操縦部9を形成して構成してある。
【0029】
図5は、エンジン周りやT/Mケース周りの構成を示す要部の左側面図であり、図1〜5に示すように、エンジン3には、リコイルスタータ式のガソリンエンジンを採用してあり、その左側部にT/Mケース4を連結してある。エンジン3の真上には、燃料タンク10を配備し、上部カバー11を、エンジン3の上部や燃料タンク10を上方から覆う作業位置と、それらの上方を開放するメンテナンス位置とに変位可能に装備してある。
【0030】
T/Mケース4は、左右のメインケース12,13、左側のメインケース12に着脱可能に取り付けたギアカバー14、右側のメインケース13の前下部から右方に向けて延出するように右側のメインケース13に連結した筒状ケース15、及び、筒状ケース15の延出端である右端に連結したギアケース16、などにより構成してある。左側のメインケース12は、その側壁の前下部に、左側の第1サイドフレーム7に対する連結部12Aを形成してある。右側のメインケース13は、その側壁の後下部に伝動ケース5に対する筒状の連結部13Aを形成してある。
【0031】
図1〜4に示すように、伝動ケース5は、左右向きの軸心P1を支点にした回動が可能となるように右側のメインケース13の連結部13Aに連結した第1ギアケース17、第1ギアケース17から後方に向けて延設した筒状の軸ケース18、及び、軸ケース18の延出端に連結した第2ギアケース19、などにより、左右向きの軸心P1を支点にした上下方向への揺動操作が可能となるように構成してある。そして、その左横側方に推進車輪6が位置するように第2ギアケース19に推進車輪6を支持させてある。
【0032】
左右の第1サイドフレーム7は、伝動ケースに兼用するために丸パイプ材などにより構成してある。左側の第1サイドフレーム7は、T/Mケース4の左端部から後方に向けて延出するように、その前端を左側のメインケース12の連結部12Aに連結してある。右側の第1サイドフレーム7は、T/Mケース4の右端部から後方に向けて延出するように、その前端をギアケース16に連結してある。
【0033】
左側の第2サイドフレーム8は、その下端部が伝動ケースとして機能するように形成して、左側の第1サイドフレーム7の後端に連結してある。右側の第2サイドフレーム8は、その全体が伝動ケースとして機能するように形成して、右側の第1サイドフレーム7の後端に連結してある。
【0034】
操縦部9は、左右一対のハンドルフレーム20、左右一対の把持部21A,21Bを有する操縦ハンドル21、昇降用の操作レバー22、エンジン回転数調節用の操作レバー23、植え付け用のクラッチレバー24、及び、走行用のクラッチレバー25、などを走行車体1の後部に配備して形成してある。
【0035】
左右のハンドルフレーム20は、対応する第2サイドフレーム8から後上方に向けて延設してある。操縦ハンドル21は、左右向きの軸心(図示せず)を支点にした上下方向への揺動操作により、体格などに応じた高さ調節が可能で、かつ、その把持部21A,21Bが車体の後方に向けて延出する作業姿勢と下方に向けて延出する格納姿勢との姿勢切り替えが可能となるように、左右のハンドルフレーム20の遊端部にわたって架設してある。
【0036】
図1〜3に示すように、昇降用の操作レバー22は、左側の把持部21Aを把持する手の親指による、上下向きの軸心(図示せず)を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように、操縦ハンドル21における左側の把持部21Aの前方の位置に配備してある。
【0037】
エンジン回転数調節用の操作レバー23は、右側の把持部21Bを把持する手の親指による、上下向きの軸心(図示せず)を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように、操縦ハンドル21における右側の把持部21Bの前方の位置に配備してある。
【0038】
植え付け用のクラッチレバー24は、左側の把持部21Aを把持する手による、左右向きの軸心(図示せず)を支点にした上下方向への共握り操作が可能となるように、操縦ハンドル21における左側の把持部21Aの前方の位置から左側の把持部21Aの下方に向けて延設してある。
【0039】
走行用のクラッチレバー25は、右側の把持部21Bを把持する手による、左右向きの軸心(図示せず)を支点にした上下方向への共握り操作が可能となるように、操縦ハンドル21における右側の把持部21Bの前方の位置から右側の把持部21Bの下方に向けて延設してある。
【0040】
図1〜4に示すように、苗植付装置2は、車体の走行に伴って水田での苗植え付け位置を整地する左右一対の整地フロート26を推進車輪6の左右に配備し、2条分のマット状苗を載置する苗載台27、苗載台27を左右方向に一定のストロークで往復移動させる横送り機構28、苗載台27が左右のストローク端に達するごとに苗載台27に載置した各マット状苗を所定量だけ苗載台27の下方に向けて移動させる縦送り機構29、及び、苗載台27に載置したマット状苗の下端部から所定量の苗を切り取って水田に植え付ける左右一対の植付機構30などを、左右の第2サイドフレーム8と操縦部9との間に装備して構成してある。
【0041】
左右の整地フロート26は、その後部に設定した左右向きの軸心(図示せず)を支点にして走行車体1に対して上下揺動するように装備してある。左右の植付機構30は、走行車体1の左右方向に所定間隔をあけて並ぶように配備してある。
【0042】
図6は歩行田植機の伝動構成を示す概略平面図であり、図7はT/Mケース4の縦断右側面図であり、図8は走行用の伝動構成を示す要部の展開断面図であり、図9は走行用の伝動構成を示す要部の横断平面図であり、これらの図に示すように、この歩行田植機では、エンジン3を、その出力軸31が左方のT/Mケース4に向けて延出するように姿勢設定し、その出力軸31からの動力を、T/Mケース4の内部に備えた変速装置32により変速し、その変速後の動力を走行伝動系33を介して推進車輪6に伝達する。
【0043】
図6〜8に示すように、変速装置32は、T/Mケース4の上部に備えた左右向きの第1軸34、エンジン3の出力軸31と第1軸34とに外嵌する筒軸35、それらの軸31,34,35を一体回転するように連結するキー36、T/Mケース4における上下方向中間部の後部側に備えた左右向きの第2軸37、第1軸34に一体形成した低速伝動用の第1変速ギア38、筒軸35に一体形成した高速伝動用の第2変速ギア39、第1変速ギア38と噛合するように第2軸37に相対回転可能に外嵌した低速伝動用の第3変速ギア40、第2変速ギア39と噛合するように第2軸37に外嵌した高速伝動用の第4変速ギア41、及び、第2軸37にスプライン嵌合したシフト部材42、などにより、シフト部材42を摺動操作することにより、シフト部材42が第3変速ギア40に噛合して第3変速ギア40と一体回転する低速状態と、シフト部材42が第4変速ギア41に噛合して第4変速ギア41と一体回転する高速状態との、高低2段の切り替えを行えるように構成してある。
【0044】
走行伝動系33は、T/Mケース4における底部の後部側に備えた左右向きの第3軸43、伝動ケース5に備えた前後向きの伝動軸44、第2ギアケース19に備えた左右向きの車軸45、第2軸37と一体回転する第1減速ギア46、第1減速ギア46と噛合するように第3軸43に相対回転可能に外嵌した第2減速ギア47、第3軸43に備えた走行クラッチ48、第3軸43から伝動軸44へ減速伝動するように第1ギアケース17に備えた一対のベベルギア49,50、及び、伝動軸44から車軸45へ減速伝動するように第2ギアケース19に備えた一対のベベルギア51,52、などにより構成してある。
【0045】
走行クラッチ48は、第2減速ギア47、第3軸43にスプライン嵌合したシフト部材53、及び、シフト部材53を第2減速ギア47に向けて噛合付勢する付勢バネ54、などにより、付勢バネ54の付勢によるシフト部材53の摺動操作により、シフト部材53が第2減速ギア47に噛合して第2減速ギア47と一体回転する伝動状態と、付勢バネ54の付勢に抗したシフト部材53の摺動操作により、シフト部材53が第2減速ギア47との噛合を解除して第2減速ギア47との一体回転を停止する遮断状態とに、切り換え可能に構成してある。
【0046】
図10は作業用の伝動構成を示す要部の横断平面図であり、図11は作業用の伝動構成を示す要部の展開断面図であり、図12は、左側の植付機構30に対する伝動構成や横送り機構28の支持構造を示す要部の展開断面図であり、図13は、右側の植付機構30や横送り機構28に対する伝動構成を示す要部の展開断面図であり、図6、図7、図9〜13に示すように、この歩行田植機では、変速装置32による変速後の動力を植え付け伝動系55を介して苗植付装置2に伝達する。
【0047】
植え付け伝動系55は、T/Mケース4における上下方向中間部の前部側に備えた左右向きの株間変速軸56、T/Mケース4における底部の前部側に備えた左右向きの動力分配軸57、左右の各第1サイドフレーム7に備えた前後向きの伝動軸58、左右の各第2サイドフレーム8に備えた左右向きの植付駆動軸59、第2軸37と株間変速軸56とにわたって装備した株間変速装置60、株間変速軸56と一体回転する第1減速ギア61、第1減速ギア61と噛合するように動力分配軸57に相対回転可能に備えた第2減速ギア62、動力分配軸57に備えたトルクリミッタ63と植付クラッチ64、動力分配軸57から左右の伝動軸58へ伝動するようにT/Mケース4の左右両端部に位置するギアケース16と連結部12Aとに備えた一対のベベルギア65,66、左右の伝動軸58から左右の植付駆動軸59へ伝動するように左右の第2サイドフレーム8に備えた一対のベベルギア67,68、右側の第2サイドフレーム8に備えた横送り変速装置69とチェーン伝動式の伝動装置70、などにより構成してある。
【0048】
そして、左右の第1サイドフレーム7に備えた伝動軸58、及び、左右の第2サイドフレーム8に備えた植付駆動軸59と各ベベルギア67,68により、動力分配軸57から対応する植付機構30に伝動する左右の植付伝動機構Aを構成してある。また、左右の第1サイドフレーム7及び左右の第2サイドフレーム8を、対応する植付伝動機構Aを外囲する伝動ケースに兼用してある。
【0049】
株間変速軸56は、T/Mケース4における左側のメインケース12に片持ち支持させてある。動力分配軸57は、トルクリミッタ63と植付クラッチ64とを備える左伝動軸71、左伝動軸71の右端部に左伝動軸71と一体回転するように外嵌した筒状の中間伝動軸72、及び、中間伝動軸72の右端部に中間伝動軸72と一体回転するように内嵌した右伝動軸73、を備える3分割構造に構成してある。
【0050】
株間変速装置60は、第2軸35と一体回転するように第2軸35の左端部に着脱可能に外嵌した第1株間ギア74、及び、株間変速軸56と一体回転するように株間変速軸56の左端部に着脱可能に外嵌した第2株間ギア75、により構成してある。第1株間ギア74及び第2株間ギア75は、T/Mケース4における左側のメインケース12とギアカバー14とから形成した収納空間に配備してあり、左側のメインケース12からギアカバー14を取り外すことにより、第2軸35及び株間変速軸56に対する各株間ギア74,75の付け替えや歯数の異なるものとの交換などによりギア比を変更することによる変速を行えるように構成してある。
【0051】
図14は、トルクリミッタ63及び植付クラッチ64の構成を示す要部の横断平面図であり、図6、図11及び図14に示すように、トルクリミッタ63は、第2減速ギア62、動力分配軸57と第2減速ギア62との間に相対回転可能に介装した筒軸76、筒軸76にスプライン嵌合したシフト部材77、シフト部材77を第2減速ギア62に向けて噛合付勢する付勢バネ78、及び、筒軸76にスプライン嵌合したバネ受け部材79、などにより、付勢バネ78の作用により、シフト部材77が第2減速ギア62に噛合して第2減速ギア62と一体回転する伝動状態と、植付機構30に対する過負荷に基づいて、付勢バネ78の付勢に抗して、シフト部材53が第2減速ギア62との噛合を解除して第2減速ギア62との一体回転を停止する遮断状態とに、切り替わるように構成してある。
【0052】
植付クラッチ64は、トルクリミッタ63のバネ受け部材79、動力分配軸57にスプライン嵌合したシフト部材80、及び、シフト部材80をバネ受け部材79に向けて噛合付勢する付勢バネ81、などにより、付勢バネ81の付勢によるシフト部材80の摺動操作により、シフト部材80がバネ受け部材79に噛合してバネ受け部材79と一体回転する伝動状態と、付勢バネ81の付勢に抗したシフト部材80の摺動操作により、シフト部材80がバネ受け部材79との噛合を解除してバネ受け部材79との一体回転を停止する遮断状態とに、切り換え可能に構成してある。
【0053】
横送り変速装置69は、右側の植付駆動軸59と一体回転するように植付駆動軸59の右端部に着脱可能に外嵌した第1変速ギア82、及び、中継軸83と一体回転するように中継軸83の右端部に着脱可能に外嵌した第2変速ギア84、により構成してある。第1変速ギア82及び第2変速ギア84は、右側の第2サイドフレーム8とギアカバー85とから形成した収納空間に配備してあり、右側の第2サイドフレーム8からギアカバー85を取り外すことにより、右側の植付駆動軸59及び中継軸83に対する各変速ギア82,84の付け替えや歯数の異なるものとの交換などによりギア比を変更することによる変速を行えるように構成してある。
【0054】
チェーン伝動式の伝動装置70は、横送り変速装置69による変速後の動力を、横送り機構28の横送り駆動軸86に伝達する。横送り駆動軸86の両端部には、苗載台27が左右のストローク端に達するごとに縦送り機構29を駆動させる駆動アーム87を、横送り駆動軸86と一体回転するように装備してある。
【0055】
図11に示すように、トルクリミッタ63及び植付クラッチ64は、T/Mケース4の内部において、車体の左右外側端に配備した伝動ケースである左右の第1サイドフレーム7の間に位置するように配置してある。つまり、T/Mケース4の内部に備えた伝動系88のうちの重量の大きいトルクリミッタ63及び植付クラッチ64が車体の左右中央側に位置するようになる。その結果、車体の左右バランスを向上させることができる。
【0056】
又、T/Mケース4の内部に備える伝動系88を、左右の第1サイドフレーム7における車体横方向の最外側端よりも車体の内側に位置するように配置してある。これにより、T/Mケース4において、左右の第1サイドフレーム7から車体の横外方に食み出す部分がなくなる。その結果、車体の左右バランスを向上させることができる。又、旋回時に車体を左右方向に傾斜させた場合に、T/Mケース4を水田の泥面に浸かりにくくすることができ、T/Mケース4が泥面に浸かることに起因したT/Mケース4の耐久性の低下などを防止することができる。
【0057】
そして、前述したように、重量の大きいトルクリミッタ63及び植付クラッチ64を、T/Mケース4の底部に配備した動力分配軸57に装備することにより、車体の重心位置を下げることができ、車体の安定性を向上させることができる。
【0058】
図6、図7、図10及び図11に示すように、この歩行田植機においては、前述したように、株間変速軸56をT/Mケース4における左側のメインケース12に片持ち支持させてある。これにより、株間変速軸56をT/Mケース4に両持ち支持させる場合に比較して、株間変速軸56の配置の自由度を高めることができる。そして、このように配置の自由度が高くなることにより、第2軸35に備えた第3変速ギア40及び第4変速ギア41に対して、株間変速装置60の各株間ギア74,75を側面視で重複するように配置することができ、この配置により、T/Mケース4のコンパクト化を図ることができ、このコンパクト化により、T/Mケース4の内部に貯留するオイル量を減らすことができ、このオイルの減量とT/Mケース4のコンパクト化により、車体の軽量化を図ることができる。
【0059】
又、前述したように、この歩行田植機においては、株間変速装置60を第2軸37と株間変速軸56とにわたって装備してある。これに対し、例えば、株間変速装置60を株間変速軸56と動力分配軸57とにわたって装備するように構成すると、その株間ギア74,75の付け替えや交換などによる変速を可能にするためには、株間変速装置60を、左側の第1サイドフレーム7に備えた伝動軸58に対する伝動用として動力分配軸57の左端部に備えたベベルギア65よりも左外方側に位置するように配備する必要が生じる。すると、T/Mケース4に、左側の第1サイドフレーム7から車体の左外方に食み出す部分を形成する必要が生じることになり、結果、車体の左右バランスが低下し、又、旋回時に車体を左右方向に傾斜させた場合に、T/Mケース4が水田の泥面に浸かりやすくなり、T/Mケース4が泥面に浸かることに起因したT/Mケース4の耐久性の低下などを招き易くなる。
【0060】
つまり、株間変速装置60を第2軸37と株間変速軸56とにわたって装備することにより、その株間ギア74,75の付け替えや交換などによる変速を可能にしながら、車体の左右バランスを向上させることができるとともに、T/Mケース4が泥面に浸かることに起因したT/Mケース4の耐久性の低下などを防止することができる。
【0061】
図5、図7に示すように、変速装置32は、T/Mケース4の上部に備えた偏心カム式の操作部材89を、その軸心(図示せず)を支点にして回動操作することにより、シフト部材42が第2軸37に沿って摺動するように構成してある。操作部材89は、操縦部9に備えた変速レバー(図示せず)に操作ロッド90などを介して連係してある。
【0062】
図15は走行クラッチ48の操作構造を示す要部の縦断左側面図であり、図16は走行クラッチ48の操作構造を示す要部の背面図であり、図2、図8、図15及び図16に示すように、推進車輪6と対向するT/Mケース4の後部には、T/Mケース4の内部に備えた走行クラッチ48に対する操作部としての操作アーム91を配備してある。操作アーム91は、T/Mケース4の内部に備えたシフトフォーク92と一体揺動するように、シフトフォーク92に前後向きの支軸93を介して連結してある。操作アーム91の遊端は、操縦部9に備えた走行用のクラッチレバー25に操作ワイヤ94を介して連係してある。シフトフォーク92は、走行クラッチ48のシフト部材53に係合連係してある。
【0063】
この連係により、走行用のクラッチレバー25を、操縦ハンドル21の把持部21Bに向けて共握り操作することにより、走行クラッチ48を伝動状態から遮断状態に切り換えることができる。そして、操縦部9に備えた保持機構(図示せず)の作用により、走行用のクラッチレバー25を遮断位置に保持することができ、走行クラッチ48を遮断状態に維持することができる。又、右側の把持部21Bに備えた解除レバー95を把持部21Bに向けて共握り操作することにより、保持機構によるクラッチレバー25の保持を解除することができ、走行クラッチ48の付勢バネ54の作用により、走行クラッチ48を遮断状態から伝動状態に、クラッチレバー25を遮断位置から伝動位置に戻すことができる。
【0064】
又、走行クラッチ48に対する操作アーム91を、T/Mケース4の低部よりも上方に位置するT/Mケース4の後部に配備することにより、操作アーム91などに対する泥面からの泥の跳ね上げによる泥の付着を抑制することができ、結果、操作アーム91などに泥が付着することに起因した走行クラッチ48の操作不良の発生を抑制することができる。
【0065】
図8、図15及び図16に示すように、T/Mケース4とその後方に位置する推進車輪6との間には、推進車輪6からエンジン3やT/Mケース4などへの泥跳ねを防止する泥除カバー96を配備してある。そして、走行クラッチ48に対する操作ワイヤ94は、そのインナワイヤ97における操作アーム91との連係端側が、泥除カバー96で覆われた所定の領域内で、アウタワイヤ98に対して出退変位するように配索してある。これにより、T/Mケース4と推進車輪6との間を狭くして車体の全長を短くするようにしても、推進車輪6からインナワイヤ97への泥跳ねを確実に防止することができ、結果、車体の小型化を図りながら、インナワイヤ97に泥が付着することに起因した走行クラッチ48の操作不良の発生を効果的に防止することができる。
【0066】
図1、図5、図7及び図14に示すように、T/Mケース4の前面部には、T/Mケース4の内部に備えた植付クラッチ64に対する操作部としての操作軸97を配備してある。操作軸97は、植付クラッチ64のシフト部材80に形成した乗り上げ式のカム面80Aに接当する作用位置と、カム面80Aから離間する退避位置とにわたる摺動変位が可能となるようにT/Mケース4に支持させてある。操作軸97の前端部は、操縦部9に備えた植え付け用のクラッチレバー24に揺動アーム98及び操作ワイヤ99などを介して連係してある。揺動アーム98は、左右向きの軸心(図示せず)を支点にして揺動するようにT/Mケース4に支持させてある。T/Mケース4と揺動アーム98とにわたって、操作軸97を退避位置に復帰付勢する付勢バネ100を架設してある。
【0067】
この連係により、植え付け用のクラッチレバー24を、操縦ハンドル21の把持部21Aに向けて共握り操作することにより、植付クラッチ64を伝動状態から遮断状態に切り換えることができる。そして、操縦部9に備えた保持機構(図示せず)の作用により、植え付け用のクラッチレバー24を遮断位置に保持することができ、植付クラッチ64を遮断状態に維持することができる。又、左側の把持部21Aに備えた解除レバー101を把持部21Aに向けて共握り操作することにより、保持機構によるクラッチレバー24の保持を解除することができ、植付クラッチ64の付勢バネ81や操作用の付勢バネ110の作用により、植付クラッチ64を遮断状態から伝動状態に、クラッチレバー24を遮断位置から伝動位置に戻すことができる。
【0068】
そして、変速装置32に対する操作部材89や走行クラッチ48に対する操作アーム91などが存在しないT/Mケース4の前面部に植付クラッチ64に対する操作軸97を配備したことにより、植付クラッチ64に対する揺動アーム98や操作ワイヤ99などからなる植付クラッチ用の操作機構Bを、変速装置32に対する操作ロッド90などからなる変速用の操作機構Cや、走行クラッチ48に対する操作アーム91や操作ワイヤ94などからなる走行クラッチ用の操作機構D、が存在しない領域を利用して配備することができ、その結果、植付クラッチ用の操作機構Bが、変速用の操作機構Cや走行クラッチ用の操作機構Dに干渉する虞を効果的に防止することができる。
【0069】
又、推進車輪6が存在しないT/Mケース4の前面部に植付クラッチ64に対する操作軸97を配備したことにより、推進車輪6から操作軸97などへの泥跳ねを防止することができ、操作軸97などに泥が付着することに起因した植付クラッチ64の操作不良の発生を効果的に防止することができる。
【0070】
しかも、植付クラッチ64に対する操作軸97をT/Mケース4の前面部に装備するために、重量の大きい植付クラッチ64などをT/Mケース4の前部側に配備することになり、結果、前部側にエンジン3やT/Mケース4など配備し、後部側に苗植付装置2などを配備した走行車体1の前後バランスを向上させることができ、歩行田植機としての取り扱い性を向上させることができる。
【0071】
植付クラッチ64は、シフト部材80のカム面80Aが操作軸97に乗り上がることにより伝動状態から遮断状態に切り替わった場合に、各植付機構30が、それらが描く植え付け作動軌跡(図示せず)の上部に位置する状態で作動停止するように構成してある。つまり、植付クラッチ64を、各植付機構30を上限位置にて作動停止させる上限停止機構としての機能を有するように構成してある。
【0072】
図5及び図7に示すように、T/Mケース4の内部には、その後上部にブリーザ室102を形成するための隔壁103を形成してある。T/Mケース4の後上部には、そのブリーザ室102から延出するブリーザ104を装備してある。ブリーザ104は、丸パイプ材によりコの字状に形成してあり、その両端部が下向きになり、かつ、露出側の端部がT/Mケース4よりも後方に位置する姿勢でT/Mケース4に取り付けてある。
【0073】
これにより、T/Mケース4の内部に貯留したオイルが、走行時に第3変速ギア40や第4変速ギア41などにより掻き上げられることによってブリーザ104から漏れ出す虞を防止することができる。又、輸送のために、車体の前部を下側にして起こした倒立姿勢に車体の姿勢を切り換えた場合であっても、T/Mケース4の内部に貯留したオイルがブリーザ104から漏れ出す虞を防止することができる。
【0074】
図17は油圧構成を示す要部の縦断背面図であり、図18は油圧構成を示す要部上側の横断平面図であり、図19は油圧構成を示す要部の縦断左側面図であり、図20は油圧構成を示す要部下側の横断平面図であり、図4〜6、図8及び図17〜20に示すように、T/Mケース4における上部の左側部には油圧ユニット105を配備してある。
【0075】
油圧ユニット105は、T/Mケース4の左側部に連結する油圧ブロック106に、油圧ポンプ形成用の第1凹部106A、制御弁形成用の第2凹部106B、リリーフ弁形成用の第3凹部106C、供給油路106D、戻り油路106E、第1給排油路106F、第2給排油路106G、及び、排出油路106H、などを形成し、第1凹部106Aにトロコイド式の油圧ポンプ107を、第2凹部106Bにスプール108を、第3凹部106Cにリリーフ弁109を装備して構成してある。
【0076】
尚、油圧ポンプ107として、ギアポンプ、プランジャポンプ、あるいはベーンポンプ、などの異なる構造のものを採用してもよい。
【0077】
図8及び図17〜20に示すように、第1凹部106Aは、T/Mケース4から左外側方に向けて突出させた第1軸34による油圧ポンプ107の駆動が可能となるように、T/Mケース4に接続する油圧ブロック106の右側面に形成してある。これにより、T/Mケース4の第1軸34をポンプ軸に兼用することができる。
【0078】
第2凹部106Bは、油圧ユニット105の左外側部をスプール操作部として使用することが可能となるように、油圧ブロック106の左側面から油圧ブロック106の内部に向けて左右向きに形成してある。そして、この第2凹部106Bに、スプール108をその軸心(図示せず)を支点にした回動操作が可能となるように装備することにより、スプール108を、車体高さ調節用の制御弁として機能させることができる。
【0079】
第3凹部106Cは、T/Mケース4に接続する油圧ブロック106の右側面から油圧ブロック106の内部に向けて左右向きに形成した供給油路106Dと戻り油路106Eとにわたるように、油圧ブロック106の上面から油圧ブロック106の内部に向けて上下向きに形成してある。これにより、第3凹部106Cの略全体を戻り油路の一部として利用することができる。そして、この第3凹部106Cに、ポペット110とポペット110を閉じ付勢する付勢バネ111とを配備し、バネ受け兼用のプラグ112で第3凹部106Cを閉塞することにより、リリーフ弁109を構成することができる。
【0080】
つまり、この油圧ユニット105では、リリーフ弁109を、そのポペット110の軸心方向が第1軸34と直交する上下方向となるように装備してある。これにより、リリーフ弁109を、そのポペット110の軸心方向が第1軸34の軸心(図示せず)に沿う左右方向となるように装備する場合に比較して、油圧ユニット105の左右方向の長さを短くすることができ、油圧ユニット105の重心位置を車体の左右中心に近づけることができる。そして、この重心位置の調整により、車体を左右方向に傾斜させた場合に慣性モーメントが作用しにくくなり、結果、歩行田植機としての取り扱い性の向上を図ることができる。
【0081】
又、T/Mケース4の左側部に配備した油圧ユニット105にリリーフ弁109を上下向きに装備することにより、第3凹部106Cを、T/Mケース4の内部に連通する供給油路106Dと戻り油路106Eとにわたるように形成することができ、これにより、リリーフ弁109を左右向きに装備する場合に比較して、戻り油路106Eを形成する場合の穴加工数を減らすことができ、製作の容易化やコストの削減を図ることができる。
【0082】
しかも、リリーフ弁109のプラグ位置が、スプール操作部として使用する油圧ユニット105の左外側部に位置しないことにより、リリーフ弁109に対するメンテナンスを行う際に、スプール108に対する操作系が邪魔になりにくくなり、結果、リリーフ弁109に対するメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0083】
ちなみに、リリーフ弁109を、そのポペット110の軸心方向が第1軸34と直交する前後方向となるように油圧ユニット105に装備してもよい。
【0084】
図1、図3、図4、図17及び図20に示すように、スプール108の左端部には、スプール108の軸心を支点にしてスプール108と一体で動く揺動アーム113を連結してある。揺動アーム113は、操縦部9に備えた昇降用の操作レバー22に操作ワイヤ114を介して連係してある。つまり、昇降用の操作レバー22を操作することによりスプール108を回動操作することができる。
【0085】
図21はスプール108の作動を示す要部の縦断左側面図であり、図22は車体高さ調節用の油圧配管を示す要部の右側面図であり、図1、図3〜5及び図18〜22に示すように、油圧ユニット105は、走行車体1の右側部に車体高さ調節用として備えた複動型の油圧シリンダ115に金属製の一対の配管116,117を介して接続してある。この接続により、油圧シリンダ115は、昇降用の操作レバー22を操作して、油圧ユニット105のスプール108を中立位置から上昇位置に切り換えた場合には、油圧ポンプ107により圧送されるオイルが伸長作動用の油室(図示せず)に供給され、かつ、短縮作動用の油室(図示せず)からオイルが排出されることにより伸長作動する。又、スプール108を中立位置から下降位置に切り換えた場合には、油圧ポンプ107により圧送されるオイルが短縮作動用の油室に供給され、かつ、伸長作動用の油室からオイルが排出されることにより短縮作動する。そして、スプール108を上昇位置又は下降位置から中立位置に切り換えた場合には、伸長作動用の油室及び短縮作動用の油室に対するオイルの給排が停止されることにより作動停止する。
【0086】
油圧シリンダ115は、車体の前後方向に沿う姿勢でエンジン3の右外方側に位置するように配置してある。又、油圧シリンダ115の伸長作動用の油室に接続する配管116は、油圧ユニット105からエンジン3の前方を通し、油圧シリンダ115の右外方から油圧シリンダ115の上方を通して、伸長作動用の油室に対して上方から螺合により接続してある。油圧シリンダ115の短縮作動用の油室に接続する配管117は、油圧ユニット105からエンジン3の前方を通し、油圧シリンダ115の下方を通して、短縮作動用の油室に対して下方から螺合により接続してある。
【0087】
つまり、配管116,117を、エンジン3を迂回させて油圧シリンダ115と上下方向で重なるようにして配管するようにしているのであり、これにより、エンジン3の右側部から延出するリコイルロープ118を、油圧シリンダ115や配管116,117に干渉させることなく操縦部9に向けて配索することができる。
【0088】
又、油圧シリンダ115に対して配管116,117を上下方向から螺合接続することにより、その緩み方向を油圧シリンダ115の振動方向と異ならせることができ、結果、油圧シリンダ115の振動に起因して、油圧シリンダ115に対する配管116,117の接続に緩みが生じることを抑制することができる。
【0089】
図23は車体高さ調節構造を示す要部の平面図であり、図24及び図25は車体高さ調節構造を示す要部の右側面図であり、図4及び図22〜25に示すように、油圧シリンダ115は、左右向きの軸心P1を支点にして伝動ケース5と一体揺動する揺動アーム119と、右側の第1サイドフレーム7とにわたるように、そのピストンロッド側の端部を揺動アーム119に、そのシリンダチューブ側の端部を右側の第1サイドフレーム7に、それぞれ枢支させてある。揺動アーム119は、伝動ケース5における揺動始端側の右側部に、上方に向けて延出する姿勢で着脱可能に取り付けてある。これにより、油圧シリンダ115は、その第1部材であるシリンダチューブ120から第2部材であるピストンロッド121が前上方に向けて延出する前上がり姿勢で走行車体1に装備されることになる。
【0090】
そして、このように姿勢設定した油圧シリンダ115の上部側に位置する短縮作動用の油室に対して、配管117を前述したように下方から接続することにより、その配管117を、油圧シリンダ115の下部側に位置する伸長作動用の油室に対する配管116と同様の比較的に低い位置に通すことができるようになり、結果、エンジン3やその周辺機器に対するメンテナンスが行いやすくなる。
【0091】
又、上記のように構成することにより、昇降用の操作レバー22を操作して油圧シリンダ115を伸縮作動させることにより、伝動ケース5を左右向きの軸心P1を支点にして上下揺動させることができ、この上下騒動により、推進車輪6の対車体高さを変更することができ、車体の対地高さを調節することができる。その結果、水田での作土層の深さの変動にかかわらず所定の植え付け深さで苗を安定して上付けることができる。
【0092】
つまり、昇降用の操作レバー22、揺動アーム113、操作ワイヤ114、油圧ユニット105、配管116,117、及び油圧シリンダ115、などにより、油圧シリンダ115の作動ストロークにより設定される揺動範囲で伝動ケース5を上下方向に揺動操作する操作機構Eを構成し、この操作機構E、伝動ケース5、及び揺動アーム119、などにより車体高さ調節機構Fを構成してある。
【0093】
図22〜25に示すように、揺動アーム119の揺動支点部には、一対1組で、左右向きの軸心P1を支点にした揺動方向での位置を異ならせた2組の、合計4つの連結孔119A〜118Dを穿設してある。つまり、揺動アーム119を伝動ケース5に1組目の連結孔119A,119Cを使用して取り付けた場合と、2組目の連結孔119B,119Dを使用して取り付けた場合とでは、伝動ケース5に対する揺動アーム119の取り付け位置が、それらの揺動方向で異なることになり、これにより、油圧シリンダ115の作動ストロークにより設定される伝動ケース5の上下方向の揺動範囲を高低2段の揺動範囲に設定変更することができる。
【0094】
具体的には、1組目の連結孔119A,119Cを使用して揺動アーム119を伝動ケース5に取り付けた場合には、伝動ケース5の揺動範囲を、車体に対する高い側の揺動範囲に設定することができ、2組目の連結孔119B,119Dを使用して揺動アーム119を伝動ケース5に取り付けた場合には、伝動ケース5の揺動範囲を、車体に対する低い側の揺動範囲に設定することができる。
【0095】
これにより、耕盤から田面にわたる作土層が比較的に浅い一般的な水田で作業を行う場合には、1組目の連結孔119A,119Cを使用して揺動アーム119を伝動ケース5に取り付けることにより、この水田での作土層の深さに応じた車体の高さ調節を適切に行うことができる。又、耕盤から田面にわたる作土層が比較的に深い天水田(灌漑設備のない水田)などの深田で作業を行う場合には、2組目の連結孔119B,119Dを使用して揺動アーム119を伝動ケース5に取り付けることにより、この深田での作土層の深さに応じた車体の高さ調節を適切に行うことができる。
【0096】
つまり、揺動アーム119の揺動支点部に穿設した4つの連結孔119A〜119Dが、左右向きの軸心P1を支点にした伝動ケース5の揺動方向で、伝動ケース5に対する揺動アーム119の連結位置を変更することにより、左右向きの軸心P1を支点にした伝動ケース5の揺動範囲を変更する揺動範囲変更手段Gとして機能し、この揺動範囲変更手段の作用により、一般的な水田と深田とにかかわらず、車体の上部側を水田に浸けることなく推進車輪6を適切に耕盤に接地させることができ、植え付け作業を良好に行うことができる。
【0097】
又、油圧シリンダ115として、一般的な水田に対する揺動範囲だけでなく深田に対する揺動範囲にも対応することのできる作動ストロークの大きい大型のものを採用する必要がないことから、大型の油圧シリンダ115を採用することによって生じる、車体重量の増加、左右バランスの低下、及びコストの高騰、などを未然に回避することができる。
【0098】
図26は油圧シリンダ115の支持構造を示す要部の縦断右側面図であり、図27は油圧シリンダ115の支持構造を示す要部の縦断背面図であり、図4及び図22〜27に示すように、油圧シリンダ115のシリンダチューブ120は、第1枢支部122を介して右側の第1サイドフレーム7に枢支させてある。油圧シリンダ115のピストンロッド121は、第2枢支部123を介して揺動アーム119に枢支させてある。
【0099】
第1枢支部122は、油圧シリンダ115のシリンダチューブ120を支持するように右側の第1サイドフレーム7から左方に向けて延設した軸部材としての支軸124と、この支軸124にその軸心P2回りに相対回動可能に外嵌するようにシリンダチューブ120の後端部に形成したホルダ部材としてのホルダ部125、により構成してある。第2枢支部123は、油圧シリンダ115のピストンロッド121に相対摺動可能に備えた軸部材126と、この軸部材126にその軸心P3回りに相対回動可能に外嵌するように揺動アーム119から右方に向けて延設したホルダ部材127、により構成してある。
【0100】
第2枢支部123において、軸部材126は、シリンダチューブ120と略同径の大径に形成した樹脂製で、ピストンロッド121の先端部に外嵌装備したサスペンションバネ128を受け止め支持するバネ受け部126Aを有するように形成してある。ホルダ部材127は、断面C字状に形成した板金製で、ピストンロッド121の挿通及び相対揺動許容する長孔127Aを形成してある。
【0101】
そして、上記のように軸部材126を大径に形成したことにより、軸部材126にかかる面圧を小さくすることができ、これにより、軸部材126に、コストの面や成形の面で有利な樹脂製のものを採用して軽量化を図りながらも、高い耐久性を得ることができる。又、軸部材126をバネ受けに兼用することにより、部品点数の削減による組付け性の向上やコストの削減を図ることができる。
【0102】
しかも、第1枢支部122及び第2枢支部123を上記のように構成したことにより、車体に対する油圧シリンダ115の組付けを、車体の右方からの差し込みなどにより簡単に行うことができる。
【0103】
尚、ピストンロッド121には、サスペンションバネ128を介して第2枢支部123の軸部材126を受け止める軸受具129や、第2枢支部123のホルダ部材127を受け止めるホルダ受具130、などを備えている。
【0104】
図28は歩行田植機の自立保持構造を示す要部の右側面図であり、図29は歩行田植機の自立保持構造を示す要部の平面図であり、図1〜4、図28及び図29に示すように、左右の第1サイドフレーム7には、歩行田植機を自立保持するためのスタンド131を装備してある。左右のスタンド131は、左右の第1サイドフレーム7の左右向きの軸心(図示せず)を支点にして、車体前方側で垂下する作用姿勢と、車体前方側で第1サイドフレーム7に略沿うようになる格納姿勢とに、姿勢切り換え可能に構成してある。又、左右の第1サイドフレーム7と対応する左右のスタンド131とにわたって、デッドポイント越えによるスタンド131の姿勢保持を可能にする引っ張りバネ132を架設してある。
【0105】
この構成により、スタンド131を作用姿勢に切り換えることにより、歩行田植機を自立保持させることができる。そして、この自立保持状態を維持したまま、車体を前進させて水田に入った場合には、水田の泥などによる抵抗がスタンド131にかかることにより、スタンド131が作用姿勢から格納姿勢に自動的に切り替わるようになる。その結果、スタンド131を作用姿勢に切り換えた状態が水田に入った後も維持されることによる車体の沈み込みを未然に回避することができる。
【0106】
図30は歩行田植機の吊り下げ支持構造を示す要部の縦断背面図であり、図1、図2及び図28〜30に示すように、この歩行田植機には、その吊り下げ搬送を可能にする複数のフック133を備えている。これらのフック133のうち、車体前部側の2つは、左右の第1サイドフレーム7の前端部に、T/Mケース4に対する連結用として備えたブラケット134に形成してある。又、車体後部側の2つは、左右一対のハンドルフレーム20に、整地フロート26や苗載台27などに対する支持用として備えたブラケット135に形成してある。
【0107】
これにより、吊り下げ搬送用の専用部品を装備する必要がなくなり、結果、部品点数の削減による組付け性の向上やコストの削減を図ることができる。
【0108】
図31は燃料供給構造を示す要部の正面図であり、図1、図2及び図31に示すように、燃料タンク10は、その排出口10Aが右下方に向かう傾斜姿勢となるように形成し、又、その排出口10Aがエンジン3のキャブレタ136の近くに位置するように配置してある。これにより、燃料タンク10を、エンジン3の上端に近接させるようにしても、燃料タンク10の排出口10Aからキャブレタ136への配管を簡単に行うことができる。
【0109】
図1〜3及び図5に示すように、この歩行田植機には作業灯137を装備してある。作業灯137は、上部カバー11から食み出している油圧ユニット105に支持ブラケット138を介して上下方向及び左右方向に向き変更可能に支持させてある。これにより、上部カバー11の内部に作業灯137を装備する場合に比較して照射範囲を広くすることができるとともに、照射方向の設定の自由度を高めることができ、結果、作業灯137を使用する夜間作業などでの作業性を向上させることができる。
【0110】
〔別実施形態〕
【0111】
〔1〕歩行作業機としては、歩行耕耘装置やバインダなどであってもよい。
【0112】
〔2〕操作機構Eとしては、油圧シリンダ115に単動型のものを採用したものであってもよい。又、油圧シリンダ115に代えて油圧モータや電動モータなどを採用したものであってもよい。
【0113】
〔3〕操作機構Eとしては、車体固定部側と伝動ケース側とにわたってネジ送り機構を架設し、そのネジ送り機構のネジ送り範囲を伝動ケースの揺動範囲に設定するように構成したものであってもよい。尚、この構成においては、第1部材120と第2部材121のいずれか一方がネジ送り軸となり、他方がネジ送り軸によりネジ送りされる螺合部材となる。
【0114】
〔4〕油圧シリンダ115を、そのピストンロッドが第1部材120となり、そのシリンダチューブが第2部材121となるように装備してもよい。
【0115】
〔5〕揺動範囲変更手段Gとしては、揺動アーム(伝動ケース側)119に対するピストンロッド(第2部材)121の取り付け位置を変更することにより、左右向きの軸心P1を支点にした伝動ケース7の上下方向での揺動範囲を変更するように構成したものであってもよい。
【0116】
〔6〕揺動範囲変更手段Gとしては、左右向きの軸心P1を支点にした伝動ケース7の上下方向での揺動範囲の変更を、3段以上行えるように構成したものであってもよい。
【0117】
〔7〕第1枢支部122の軸部材である支軸124を、シリンダチューブ120と略同径の大径に形成するようにしてもよい。又、第1枢支部122の支軸(軸部材)124と第2枢支部123の軸部材126のいずれか一方又は双方を、シリンダチューブ120よりも大径に形成するようにしてもよい。
【0118】
〔8〕第1枢支部122のホルダ部(ホルダ部材)125と第2枢支部123のホルダ部材127のいずれか一方又は双方を、シリンダチューブ120と略同径の大径に形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】歩行田植機の全体左側面図
【図2】歩行田植機の全体右側面図
【図3】歩行田植機の全体平面図
【図4】歩行田植機の前半部の構成を示す平面図
【図5】エンジン周りやT/Mケース周りの構成を示す要部の左側面図
【図6】歩行田植機の伝動構成を示す概略平面図
【図7】T/Mケースの縦断右側面図
【図8】走行用の伝動構成を示す要部の展開断面図
【図9】走行用の伝動構成を示す要部の横断平面図
【図10】作業用の伝動構成を示す要部の横断平面図
【図11】作業用の伝動構成を示す要部の展開断面図
【図12】左側の植付機構に対する伝動構成や横送り機構の支持構造を示す要部の展開断面図
【図13】右側の植付機構や横送り機構に対する伝動構成を示す要部の展開断面図
【図14】トルクリミッタ及び植付クラッチの構成を示す要部の横断平面図
【図15】走行クラッチの操作構造を示す要部の縦断左側面図
【図16】走行クラッチの操作構造を示す要部の背面図
【図17】油圧構成を示す要部の縦断背面図
【図18】油圧構成を示す要部上側の横断平面図
【図19】油圧構成を示す要部の縦断左側面図
【図20】油圧構成を示す要部下側の横断平面図
【図21】スプールの作動を示す要部の縦断左側面図
【図22】車体高さ調節用の油圧配管を示す要部の右側面図
【図23】車体高さ調節構造を示す要部の平面図
【図24】車体高さ調節構造を示す要部の右側面図
【図25】車体高さ調節構造を示す要部の右側面図
【図26】油圧シリンダの支持構造を示す要部の縦断右側面図
【図27】油圧シリンダの支持構造を示す要部の縦断背面図
【図28】歩行田植機の自立保持構造を示す要部の右側面図
【図29】歩行田植機の自立保持構造を示す要部の平面図
【図30】歩行田植機の吊り下げ支持構造を示す要部の縦断背面図
【図31】燃料供給構造を示す要部の正面図
【符号の説明】
【0120】
5 伝動ケース
7 下位部分
6 推進車輪
115 油圧シリンダ
116 配管
117 配管
119 上位部分(揺動アーム)
120 第1部材(シリンダチューブ)
121 第2部材
122 第1枢支部
123 第2枢支部
124 軸部材
125 ホルダ部材
126 軸部材
127 ホルダ部材
E 操作機構
F 車体高さ調節機構
G 揺動範囲変更手段
P1 左右向きの軸心
P2 左右向きの軸心
P3 左右向きの軸心
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右向きの軸心を支点にして上下揺動する伝動ケースと、前記伝動ケースを予め設定した揺動範囲で前記軸心を支点にして上下方向に揺動操作する操作機構とを備え、前記伝動ケースと前記操作機構とから、前記伝動ケースの遊端部に備えた推進車輪の対車体高さを変更することにより車体の対地高さを調節する車体高さ調節機構を構成してある歩行作業機の車体高さ調節構造に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような歩行作業機の車体高さ調節構造では、車体固定部側と伝動ケース側とにわたって油圧シリンダを架設し、その油圧シリンダの作動ストロークを伝動ケースの揺動範囲に設定したものがある(例えば特許文献1参照)。
又、車体固定部側と伝動ケース側とにわたってネジ送り機構を架設し、そのネジ送り機構のネジ送り範囲を伝動ケースの揺動範囲に設定したものがある(例えば特許文献2及び3参照)。
【特許文献1】特開平9−168322号公報
【特許文献2】特開平8−103117号公報
【特許文献3】特開平5−292815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の構成によると、圃場の作土層の深さに応じて車体の対地高さを調節することにより、圃場表面に対する車体高さを一定に維持することができ、作土層の深さの変動にかかわらず所定の作業深さで作業を安定して行うことができる。
【0004】
ところで、作土層の深さにはいろいろあり、特に、灌漑設備のある一般的な作土層の浅い圃場と、灌漑設備のない作土層の深い圃場(例えば天水田)とでは、作土層の深さが大きく異なる。そのため、前述した従来の車体高さ調節構造では、それらの圃場に対応した車体の対地高さ調節を可能にするために、作動ストロークの長い大型の油圧リンダを採用する、あるいは、ネジ送り量の長い長尺の送りねじを採用する、などの改良を施す必要性が生じることになる。そのような改良を施した場合には、車体高さ調節機構の大型化や重量化、並びに、車体高さ調節機構に要するコストの高騰などを招くことになり、結果、車体の大型化や重量化及びコストの高騰などを招くことになる。
【0005】
本発明の目的は、車体の大型化や重量化及びコストの高騰などを招くことなく、作土層の浅い圃場と作土層の深い圃場とにかかわらず、所定の作業深さで作業を安定して行えるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明のうちの請求項1に記載の発明では、
左右向きの軸心を支点にして上下揺動する伝動ケースと、前記伝動ケースを予め設定した揺動範囲で前記軸心を支点にして上下方向に揺動操作する操作機構とを備え、
前記伝動ケースと前記操作機構とから、前記伝動ケースの遊端部に備えた推進車輪の対車体高さを変更することにより車体の対地高さを調節する車体高さ調節機構を構成してある歩行作業機の車体高さ調節構造において、
前記車体高さ調節機構に、前記揺動範囲の設定変更を可能にする揺動範囲変更手段を備えてあることを特徴とする。
【0007】
この特徴構成によると、作土層の浅い一般的な圃場で作業を行う場合には、揺動範囲変更手段により、左右向きの軸心を支点にした伝動ケースの上下方向での揺動範囲を、作土層の浅い圃場に適した揺動範囲に変更することができる。そして、その揺動範囲で車体の対地高さを調節することにより、作土層の浅い圃場での作土層の深さの変動にかかわらず所定の作業深さで作業を安定して行うことができる。
【0008】
又、作土層の深い天水田などの圃場で作業を行う場合には、揺動範囲変更手段により、左右向きの軸心を支点にした伝動ケースの上下方向での揺動範囲を、作土層の深い圃場に適した揺動範囲に変更することができる。そして、その揺動範囲で車体の対地高さを調節することにより、作土層の深い圃場での作土層の深さの変動にかかわらず所定の作業深さで作業を安定して行うことができる。
【0009】
又、揺動範囲変更手段を備えることにより、作動ストロークの長い大型の油圧リンダを採用する、あるいは、ネジ送り量の長い長尺の送りねじを採用する、などの改良を施すことなく、作土層の深さが大きく異なる圃場に対応した車体の対地高さ調節を可能にすることができる。
【0010】
従って、車体の大型化や重量化及びコストの高騰などを招くことなく、作土層の浅い圃場と作土層の深い圃場とにかかわらず、所定の作業深さで作業を安定して行うことができる。
【0011】
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、
前記伝動ケースに、前記軸心を支点にして前記伝動ケースと一体揺動する揺動アームを連結し、
前記操作機構が、前記揺動アームを介して前記伝動ケースの前記揺動操作を行うように構成し、
前記揺動範囲変更手段が、前記軸心を支点にした前記伝動ケースの揺動方向で、前記伝動ケースに対する前記揺動アームの連結位置を変更することにより、前記揺動範囲を変更するように構成してあることを特徴とする。
【0012】
この特徴構成によると、伝動ケースに対する揺動アームの連結位置を変更するだけの簡単な作業で、作土層の深さに対応した伝動ケースの上下揺動範囲の設定変更を行うことができる。
【0013】
従って、作土層の深さに応じて伝動ケースの上下揺動範囲を設定変更する際の作業性を向上させることができる。
【0014】
本発明のうちの請求項3に記載の発明では、上記請求項1又は2に記載の発明において、
前記操作機構を、左右向きの軸心を支点にした揺動が可能となるように車体固定部側に第1枢支部を介して装備される第1部材と、左右向きの軸心を支点にした揺動が可能となるように伝動ケース側に第2枢支部を介して装備される第2部材とから、車体の前後方向に沿って車体固定部側と伝動ケース側とにわたるように架設され、かつ、前記第1部材に対して前記第2部材が架設方向に変位することにより、前記伝動ケースの前記揺動操作を行うように構成し、
前記第1枢支部及び前記第2枢支部を、車体固定部側と前記第1部材のいずれか一方、又は、伝動ケース側と前記第2部材のいずれか一方に備えた軸部材と、車体固定部側と前記第1部材のいずれか他方、又は、伝動ケース側と前記第2部材のいずれか他方に、前記軸部材に外嵌するように備えたホルダ部材とから構成し、
前記第1枢支部と前記第2枢支部のいずれか一方又は双方の前記軸部材及び前記ホルダ部材を、前記第1部材又は前記第2部材よりも大径に形成してあることを特徴とする。
【0015】
この特徴構成によると、軸部材及びホルダ部材を大径に形成することにより、軸部材及びホルダ部材にかかる面圧を小さくすることができる。これにより、軸部材及びホルダ部材の耐久性を向上させることができる。又、軸部材及びホルダ部材のいずれか一方又は双方に、重量や成形の面で有利な樹脂製のものを採用することが可能になり、樹脂製のものを採用することにより、軽量化や成形の容易化を図ることができる。
【0016】
しかも、第1枢支部及び第2枢支部を上記のように構成することにより、車体に対する第1部材及び第2部材の組付けを、車体の横方向からの差し込みなどにより簡単に行うことができる。
【0017】
従って、耐久性や組付け性を向上させることができる上に、軽量化や成形の容易化を図ることが可能になる。
【0018】
本発明のうちの請求項4に記載の発明では、上記請求項1〜3のいずれか一つに記載の発明において、
前記操作機構に、車体の前後方向に沿って車体固定部側と伝動ケース側とにわたって架設される油圧シリンダを備え、
前記油圧シリンダに対する配管の接続を前記油圧シリンダの上下方向から行うように構成してあることを特徴とする。
【0019】
この特徴構成によると、油圧シリンダと油圧シリンダに対する配管とが上下方向で重なることになり、油圧シリンダに対する配管の横方向への張り出しを抑制又は防止することができる。これにより、配管の横方向への張り出しに起因した車体左右幅の増大を抑制することができる。
【0020】
又、一般的に行われている油圧シリンダに対する配管の螺合接続を、油圧シリンダに対して上下方向から行うようになることから、配管の緩み方向を油圧シリンダの振動方向とが異なるようになり、これにより、油圧シリンダの振動に起因して、油圧シリンダに対する配管の接続に緩みが生じることを抑制することができる。
【0021】
従って、車体左右幅の増大による歩行田植機としての取り扱い性の低下、及び、油圧シリンダの振動に起因した油圧シリンダに対する配管接続箇所での緩みの発生を抑制することができる。
【0022】
本発明のうちの請求項5に記載の発明では、上記請求項4に記載の発明において、
前記油圧シリンダとして複動型のものを採用し、
前記油圧シリンダおけるシリンダチューブの一端部を、前記伝動ケースの揺動支点よりも下方に位置する車体固定部側の下位部分に連結し、かつ、前記シリンダチューブの他端部を、前記伝動ケースの揺動支点よりも上方に位置する伝動ケース側の上位部分に連結し、
前記シリンダチューブの一端部に対する配管の接続を前記油圧シリンダの上方から行い、前記シリンダチューブの他端部に対する配管の接続を前記油圧シリンダの下方から行うように構成してあることを特徴とする。
【0023】
この特徴構成によると、単動型の油圧シリンダを採用した場合に招く虞ある、作土層の深い圃場での車体の後方側への引き寄せに伴って、作土層の抵抗により推進車輪とともに伝動ケースが上昇し車体が下降する、といた不都合の発生を回避することができる。
【0024】
又、油圧シリンダに対する配管の高さ位置を油圧シリンダの高さ位置に沿えることが可能になり、これにより、シリンダチューブの一端部に接続した配管に対する泥の付着を抑制することができ、又、シリンダチューブの他端部に接続した配管により、油圧シリンダの周辺に配置した各種機器に対する上方側からのメンテナンスが行いやすくなる。
【0025】
従って、不測に車高が低下する虞を回避することができる上に、配管への泥の付着を抑制することができ、かつ、油圧シリンダの周辺機器に対するメンテナンス性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態の一例として、本発明に係る歩行作業機の車体高さ調節構造を、歩行作業機の一例である歩行田植機に適用した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は歩行田植機の全体左側面図であり、図2は歩行田植機の全体右側面図であり、図3は歩行田植機の全体平面図であり、これらの図に示すように、この歩行田植機は、1輪式で歩行型の走行車体1に2条植え用の苗植付装置2などを装備して構成してある。
【0028】
図4は歩行田植機の前半部の構成を示す平面図であり、図1〜4に示すように、走行車体1は、その前部にエンジン3やフレーム兼用のトランスミッションケース(以下、T/Mケースと称する)4などを配備し、その前後中間部に、単一の走行用の伝動ケース5、単一の推進車輪6、左右一対の第1サイドフレーム7、及び、左右一対の第2サイドフレーム8、などを装備し、その後部に操縦部9を形成して構成してある。
【0029】
図5は、エンジン周りやT/Mケース周りの構成を示す要部の左側面図であり、図1〜5に示すように、エンジン3には、リコイルスタータ式のガソリンエンジンを採用してあり、その左側部にT/Mケース4を連結してある。エンジン3の真上には、燃料タンク10を配備し、上部カバー11を、エンジン3の上部や燃料タンク10を上方から覆う作業位置と、それらの上方を開放するメンテナンス位置とに変位可能に装備してある。
【0030】
T/Mケース4は、左右のメインケース12,13、左側のメインケース12に着脱可能に取り付けたギアカバー14、右側のメインケース13の前下部から右方に向けて延出するように右側のメインケース13に連結した筒状ケース15、及び、筒状ケース15の延出端である右端に連結したギアケース16、などにより構成してある。左側のメインケース12は、その側壁の前下部に、左側の第1サイドフレーム7に対する連結部12Aを形成してある。右側のメインケース13は、その側壁の後下部に伝動ケース5に対する筒状の連結部13Aを形成してある。
【0031】
図1〜4に示すように、伝動ケース5は、左右向きの軸心P1を支点にした回動が可能となるように右側のメインケース13の連結部13Aに連結した第1ギアケース17、第1ギアケース17から後方に向けて延設した筒状の軸ケース18、及び、軸ケース18の延出端に連結した第2ギアケース19、などにより、左右向きの軸心P1を支点にした上下方向への揺動操作が可能となるように構成してある。そして、その左横側方に推進車輪6が位置するように第2ギアケース19に推進車輪6を支持させてある。
【0032】
左右の第1サイドフレーム7は、伝動ケースに兼用するために丸パイプ材などにより構成してある。左側の第1サイドフレーム7は、T/Mケース4の左端部から後方に向けて延出するように、その前端を左側のメインケース12の連結部12Aに連結してある。右側の第1サイドフレーム7は、T/Mケース4の右端部から後方に向けて延出するように、その前端をギアケース16に連結してある。
【0033】
左側の第2サイドフレーム8は、その下端部が伝動ケースとして機能するように形成して、左側の第1サイドフレーム7の後端に連結してある。右側の第2サイドフレーム8は、その全体が伝動ケースとして機能するように形成して、右側の第1サイドフレーム7の後端に連結してある。
【0034】
操縦部9は、左右一対のハンドルフレーム20、左右一対の把持部21A,21Bを有する操縦ハンドル21、昇降用の操作レバー22、エンジン回転数調節用の操作レバー23、植え付け用のクラッチレバー24、及び、走行用のクラッチレバー25、などを走行車体1の後部に配備して形成してある。
【0035】
左右のハンドルフレーム20は、対応する第2サイドフレーム8から後上方に向けて延設してある。操縦ハンドル21は、左右向きの軸心(図示せず)を支点にした上下方向への揺動操作により、体格などに応じた高さ調節が可能で、かつ、その把持部21A,21Bが車体の後方に向けて延出する作業姿勢と下方に向けて延出する格納姿勢との姿勢切り替えが可能となるように、左右のハンドルフレーム20の遊端部にわたって架設してある。
【0036】
図1〜3に示すように、昇降用の操作レバー22は、左側の把持部21Aを把持する手の親指による、上下向きの軸心(図示せず)を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように、操縦ハンドル21における左側の把持部21Aの前方の位置に配備してある。
【0037】
エンジン回転数調節用の操作レバー23は、右側の把持部21Bを把持する手の親指による、上下向きの軸心(図示せず)を支点にした左右方向への揺動操作が可能となるように、操縦ハンドル21における右側の把持部21Bの前方の位置に配備してある。
【0038】
植え付け用のクラッチレバー24は、左側の把持部21Aを把持する手による、左右向きの軸心(図示せず)を支点にした上下方向への共握り操作が可能となるように、操縦ハンドル21における左側の把持部21Aの前方の位置から左側の把持部21Aの下方に向けて延設してある。
【0039】
走行用のクラッチレバー25は、右側の把持部21Bを把持する手による、左右向きの軸心(図示せず)を支点にした上下方向への共握り操作が可能となるように、操縦ハンドル21における右側の把持部21Bの前方の位置から右側の把持部21Bの下方に向けて延設してある。
【0040】
図1〜4に示すように、苗植付装置2は、車体の走行に伴って水田での苗植え付け位置を整地する左右一対の整地フロート26を推進車輪6の左右に配備し、2条分のマット状苗を載置する苗載台27、苗載台27を左右方向に一定のストロークで往復移動させる横送り機構28、苗載台27が左右のストローク端に達するごとに苗載台27に載置した各マット状苗を所定量だけ苗載台27の下方に向けて移動させる縦送り機構29、及び、苗載台27に載置したマット状苗の下端部から所定量の苗を切り取って水田に植え付ける左右一対の植付機構30などを、左右の第2サイドフレーム8と操縦部9との間に装備して構成してある。
【0041】
左右の整地フロート26は、その後部に設定した左右向きの軸心(図示せず)を支点にして走行車体1に対して上下揺動するように装備してある。左右の植付機構30は、走行車体1の左右方向に所定間隔をあけて並ぶように配備してある。
【0042】
図6は歩行田植機の伝動構成を示す概略平面図であり、図7はT/Mケース4の縦断右側面図であり、図8は走行用の伝動構成を示す要部の展開断面図であり、図9は走行用の伝動構成を示す要部の横断平面図であり、これらの図に示すように、この歩行田植機では、エンジン3を、その出力軸31が左方のT/Mケース4に向けて延出するように姿勢設定し、その出力軸31からの動力を、T/Mケース4の内部に備えた変速装置32により変速し、その変速後の動力を走行伝動系33を介して推進車輪6に伝達する。
【0043】
図6〜8に示すように、変速装置32は、T/Mケース4の上部に備えた左右向きの第1軸34、エンジン3の出力軸31と第1軸34とに外嵌する筒軸35、それらの軸31,34,35を一体回転するように連結するキー36、T/Mケース4における上下方向中間部の後部側に備えた左右向きの第2軸37、第1軸34に一体形成した低速伝動用の第1変速ギア38、筒軸35に一体形成した高速伝動用の第2変速ギア39、第1変速ギア38と噛合するように第2軸37に相対回転可能に外嵌した低速伝動用の第3変速ギア40、第2変速ギア39と噛合するように第2軸37に外嵌した高速伝動用の第4変速ギア41、及び、第2軸37にスプライン嵌合したシフト部材42、などにより、シフト部材42を摺動操作することにより、シフト部材42が第3変速ギア40に噛合して第3変速ギア40と一体回転する低速状態と、シフト部材42が第4変速ギア41に噛合して第4変速ギア41と一体回転する高速状態との、高低2段の切り替えを行えるように構成してある。
【0044】
走行伝動系33は、T/Mケース4における底部の後部側に備えた左右向きの第3軸43、伝動ケース5に備えた前後向きの伝動軸44、第2ギアケース19に備えた左右向きの車軸45、第2軸37と一体回転する第1減速ギア46、第1減速ギア46と噛合するように第3軸43に相対回転可能に外嵌した第2減速ギア47、第3軸43に備えた走行クラッチ48、第3軸43から伝動軸44へ減速伝動するように第1ギアケース17に備えた一対のベベルギア49,50、及び、伝動軸44から車軸45へ減速伝動するように第2ギアケース19に備えた一対のベベルギア51,52、などにより構成してある。
【0045】
走行クラッチ48は、第2減速ギア47、第3軸43にスプライン嵌合したシフト部材53、及び、シフト部材53を第2減速ギア47に向けて噛合付勢する付勢バネ54、などにより、付勢バネ54の付勢によるシフト部材53の摺動操作により、シフト部材53が第2減速ギア47に噛合して第2減速ギア47と一体回転する伝動状態と、付勢バネ54の付勢に抗したシフト部材53の摺動操作により、シフト部材53が第2減速ギア47との噛合を解除して第2減速ギア47との一体回転を停止する遮断状態とに、切り換え可能に構成してある。
【0046】
図10は作業用の伝動構成を示す要部の横断平面図であり、図11は作業用の伝動構成を示す要部の展開断面図であり、図12は、左側の植付機構30に対する伝動構成や横送り機構28の支持構造を示す要部の展開断面図であり、図13は、右側の植付機構30や横送り機構28に対する伝動構成を示す要部の展開断面図であり、図6、図7、図9〜13に示すように、この歩行田植機では、変速装置32による変速後の動力を植え付け伝動系55を介して苗植付装置2に伝達する。
【0047】
植え付け伝動系55は、T/Mケース4における上下方向中間部の前部側に備えた左右向きの株間変速軸56、T/Mケース4における底部の前部側に備えた左右向きの動力分配軸57、左右の各第1サイドフレーム7に備えた前後向きの伝動軸58、左右の各第2サイドフレーム8に備えた左右向きの植付駆動軸59、第2軸37と株間変速軸56とにわたって装備した株間変速装置60、株間変速軸56と一体回転する第1減速ギア61、第1減速ギア61と噛合するように動力分配軸57に相対回転可能に備えた第2減速ギア62、動力分配軸57に備えたトルクリミッタ63と植付クラッチ64、動力分配軸57から左右の伝動軸58へ伝動するようにT/Mケース4の左右両端部に位置するギアケース16と連結部12Aとに備えた一対のベベルギア65,66、左右の伝動軸58から左右の植付駆動軸59へ伝動するように左右の第2サイドフレーム8に備えた一対のベベルギア67,68、右側の第2サイドフレーム8に備えた横送り変速装置69とチェーン伝動式の伝動装置70、などにより構成してある。
【0048】
そして、左右の第1サイドフレーム7に備えた伝動軸58、及び、左右の第2サイドフレーム8に備えた植付駆動軸59と各ベベルギア67,68により、動力分配軸57から対応する植付機構30に伝動する左右の植付伝動機構Aを構成してある。また、左右の第1サイドフレーム7及び左右の第2サイドフレーム8を、対応する植付伝動機構Aを外囲する伝動ケースに兼用してある。
【0049】
株間変速軸56は、T/Mケース4における左側のメインケース12に片持ち支持させてある。動力分配軸57は、トルクリミッタ63と植付クラッチ64とを備える左伝動軸71、左伝動軸71の右端部に左伝動軸71と一体回転するように外嵌した筒状の中間伝動軸72、及び、中間伝動軸72の右端部に中間伝動軸72と一体回転するように内嵌した右伝動軸73、を備える3分割構造に構成してある。
【0050】
株間変速装置60は、第2軸35と一体回転するように第2軸35の左端部に着脱可能に外嵌した第1株間ギア74、及び、株間変速軸56と一体回転するように株間変速軸56の左端部に着脱可能に外嵌した第2株間ギア75、により構成してある。第1株間ギア74及び第2株間ギア75は、T/Mケース4における左側のメインケース12とギアカバー14とから形成した収納空間に配備してあり、左側のメインケース12からギアカバー14を取り外すことにより、第2軸35及び株間変速軸56に対する各株間ギア74,75の付け替えや歯数の異なるものとの交換などによりギア比を変更することによる変速を行えるように構成してある。
【0051】
図14は、トルクリミッタ63及び植付クラッチ64の構成を示す要部の横断平面図であり、図6、図11及び図14に示すように、トルクリミッタ63は、第2減速ギア62、動力分配軸57と第2減速ギア62との間に相対回転可能に介装した筒軸76、筒軸76にスプライン嵌合したシフト部材77、シフト部材77を第2減速ギア62に向けて噛合付勢する付勢バネ78、及び、筒軸76にスプライン嵌合したバネ受け部材79、などにより、付勢バネ78の作用により、シフト部材77が第2減速ギア62に噛合して第2減速ギア62と一体回転する伝動状態と、植付機構30に対する過負荷に基づいて、付勢バネ78の付勢に抗して、シフト部材53が第2減速ギア62との噛合を解除して第2減速ギア62との一体回転を停止する遮断状態とに、切り替わるように構成してある。
【0052】
植付クラッチ64は、トルクリミッタ63のバネ受け部材79、動力分配軸57にスプライン嵌合したシフト部材80、及び、シフト部材80をバネ受け部材79に向けて噛合付勢する付勢バネ81、などにより、付勢バネ81の付勢によるシフト部材80の摺動操作により、シフト部材80がバネ受け部材79に噛合してバネ受け部材79と一体回転する伝動状態と、付勢バネ81の付勢に抗したシフト部材80の摺動操作により、シフト部材80がバネ受け部材79との噛合を解除してバネ受け部材79との一体回転を停止する遮断状態とに、切り換え可能に構成してある。
【0053】
横送り変速装置69は、右側の植付駆動軸59と一体回転するように植付駆動軸59の右端部に着脱可能に外嵌した第1変速ギア82、及び、中継軸83と一体回転するように中継軸83の右端部に着脱可能に外嵌した第2変速ギア84、により構成してある。第1変速ギア82及び第2変速ギア84は、右側の第2サイドフレーム8とギアカバー85とから形成した収納空間に配備してあり、右側の第2サイドフレーム8からギアカバー85を取り外すことにより、右側の植付駆動軸59及び中継軸83に対する各変速ギア82,84の付け替えや歯数の異なるものとの交換などによりギア比を変更することによる変速を行えるように構成してある。
【0054】
チェーン伝動式の伝動装置70は、横送り変速装置69による変速後の動力を、横送り機構28の横送り駆動軸86に伝達する。横送り駆動軸86の両端部には、苗載台27が左右のストローク端に達するごとに縦送り機構29を駆動させる駆動アーム87を、横送り駆動軸86と一体回転するように装備してある。
【0055】
図11に示すように、トルクリミッタ63及び植付クラッチ64は、T/Mケース4の内部において、車体の左右外側端に配備した伝動ケースである左右の第1サイドフレーム7の間に位置するように配置してある。つまり、T/Mケース4の内部に備えた伝動系88のうちの重量の大きいトルクリミッタ63及び植付クラッチ64が車体の左右中央側に位置するようになる。その結果、車体の左右バランスを向上させることができる。
【0056】
又、T/Mケース4の内部に備える伝動系88を、左右の第1サイドフレーム7における車体横方向の最外側端よりも車体の内側に位置するように配置してある。これにより、T/Mケース4において、左右の第1サイドフレーム7から車体の横外方に食み出す部分がなくなる。その結果、車体の左右バランスを向上させることができる。又、旋回時に車体を左右方向に傾斜させた場合に、T/Mケース4を水田の泥面に浸かりにくくすることができ、T/Mケース4が泥面に浸かることに起因したT/Mケース4の耐久性の低下などを防止することができる。
【0057】
そして、前述したように、重量の大きいトルクリミッタ63及び植付クラッチ64を、T/Mケース4の底部に配備した動力分配軸57に装備することにより、車体の重心位置を下げることができ、車体の安定性を向上させることができる。
【0058】
図6、図7、図10及び図11に示すように、この歩行田植機においては、前述したように、株間変速軸56をT/Mケース4における左側のメインケース12に片持ち支持させてある。これにより、株間変速軸56をT/Mケース4に両持ち支持させる場合に比較して、株間変速軸56の配置の自由度を高めることができる。そして、このように配置の自由度が高くなることにより、第2軸35に備えた第3変速ギア40及び第4変速ギア41に対して、株間変速装置60の各株間ギア74,75を側面視で重複するように配置することができ、この配置により、T/Mケース4のコンパクト化を図ることができ、このコンパクト化により、T/Mケース4の内部に貯留するオイル量を減らすことができ、このオイルの減量とT/Mケース4のコンパクト化により、車体の軽量化を図ることができる。
【0059】
又、前述したように、この歩行田植機においては、株間変速装置60を第2軸37と株間変速軸56とにわたって装備してある。これに対し、例えば、株間変速装置60を株間変速軸56と動力分配軸57とにわたって装備するように構成すると、その株間ギア74,75の付け替えや交換などによる変速を可能にするためには、株間変速装置60を、左側の第1サイドフレーム7に備えた伝動軸58に対する伝動用として動力分配軸57の左端部に備えたベベルギア65よりも左外方側に位置するように配備する必要が生じる。すると、T/Mケース4に、左側の第1サイドフレーム7から車体の左外方に食み出す部分を形成する必要が生じることになり、結果、車体の左右バランスが低下し、又、旋回時に車体を左右方向に傾斜させた場合に、T/Mケース4が水田の泥面に浸かりやすくなり、T/Mケース4が泥面に浸かることに起因したT/Mケース4の耐久性の低下などを招き易くなる。
【0060】
つまり、株間変速装置60を第2軸37と株間変速軸56とにわたって装備することにより、その株間ギア74,75の付け替えや交換などによる変速を可能にしながら、車体の左右バランスを向上させることができるとともに、T/Mケース4が泥面に浸かることに起因したT/Mケース4の耐久性の低下などを防止することができる。
【0061】
図5、図7に示すように、変速装置32は、T/Mケース4の上部に備えた偏心カム式の操作部材89を、その軸心(図示せず)を支点にして回動操作することにより、シフト部材42が第2軸37に沿って摺動するように構成してある。操作部材89は、操縦部9に備えた変速レバー(図示せず)に操作ロッド90などを介して連係してある。
【0062】
図15は走行クラッチ48の操作構造を示す要部の縦断左側面図であり、図16は走行クラッチ48の操作構造を示す要部の背面図であり、図2、図8、図15及び図16に示すように、推進車輪6と対向するT/Mケース4の後部には、T/Mケース4の内部に備えた走行クラッチ48に対する操作部としての操作アーム91を配備してある。操作アーム91は、T/Mケース4の内部に備えたシフトフォーク92と一体揺動するように、シフトフォーク92に前後向きの支軸93を介して連結してある。操作アーム91の遊端は、操縦部9に備えた走行用のクラッチレバー25に操作ワイヤ94を介して連係してある。シフトフォーク92は、走行クラッチ48のシフト部材53に係合連係してある。
【0063】
この連係により、走行用のクラッチレバー25を、操縦ハンドル21の把持部21Bに向けて共握り操作することにより、走行クラッチ48を伝動状態から遮断状態に切り換えることができる。そして、操縦部9に備えた保持機構(図示せず)の作用により、走行用のクラッチレバー25を遮断位置に保持することができ、走行クラッチ48を遮断状態に維持することができる。又、右側の把持部21Bに備えた解除レバー95を把持部21Bに向けて共握り操作することにより、保持機構によるクラッチレバー25の保持を解除することができ、走行クラッチ48の付勢バネ54の作用により、走行クラッチ48を遮断状態から伝動状態に、クラッチレバー25を遮断位置から伝動位置に戻すことができる。
【0064】
又、走行クラッチ48に対する操作アーム91を、T/Mケース4の低部よりも上方に位置するT/Mケース4の後部に配備することにより、操作アーム91などに対する泥面からの泥の跳ね上げによる泥の付着を抑制することができ、結果、操作アーム91などに泥が付着することに起因した走行クラッチ48の操作不良の発生を抑制することができる。
【0065】
図8、図15及び図16に示すように、T/Mケース4とその後方に位置する推進車輪6との間には、推進車輪6からエンジン3やT/Mケース4などへの泥跳ねを防止する泥除カバー96を配備してある。そして、走行クラッチ48に対する操作ワイヤ94は、そのインナワイヤ97における操作アーム91との連係端側が、泥除カバー96で覆われた所定の領域内で、アウタワイヤ98に対して出退変位するように配索してある。これにより、T/Mケース4と推進車輪6との間を狭くして車体の全長を短くするようにしても、推進車輪6からインナワイヤ97への泥跳ねを確実に防止することができ、結果、車体の小型化を図りながら、インナワイヤ97に泥が付着することに起因した走行クラッチ48の操作不良の発生を効果的に防止することができる。
【0066】
図1、図5、図7及び図14に示すように、T/Mケース4の前面部には、T/Mケース4の内部に備えた植付クラッチ64に対する操作部としての操作軸97を配備してある。操作軸97は、植付クラッチ64のシフト部材80に形成した乗り上げ式のカム面80Aに接当する作用位置と、カム面80Aから離間する退避位置とにわたる摺動変位が可能となるようにT/Mケース4に支持させてある。操作軸97の前端部は、操縦部9に備えた植え付け用のクラッチレバー24に揺動アーム98及び操作ワイヤ99などを介して連係してある。揺動アーム98は、左右向きの軸心(図示せず)を支点にして揺動するようにT/Mケース4に支持させてある。T/Mケース4と揺動アーム98とにわたって、操作軸97を退避位置に復帰付勢する付勢バネ100を架設してある。
【0067】
この連係により、植え付け用のクラッチレバー24を、操縦ハンドル21の把持部21Aに向けて共握り操作することにより、植付クラッチ64を伝動状態から遮断状態に切り換えることができる。そして、操縦部9に備えた保持機構(図示せず)の作用により、植え付け用のクラッチレバー24を遮断位置に保持することができ、植付クラッチ64を遮断状態に維持することができる。又、左側の把持部21Aに備えた解除レバー101を把持部21Aに向けて共握り操作することにより、保持機構によるクラッチレバー24の保持を解除することができ、植付クラッチ64の付勢バネ81や操作用の付勢バネ110の作用により、植付クラッチ64を遮断状態から伝動状態に、クラッチレバー24を遮断位置から伝動位置に戻すことができる。
【0068】
そして、変速装置32に対する操作部材89や走行クラッチ48に対する操作アーム91などが存在しないT/Mケース4の前面部に植付クラッチ64に対する操作軸97を配備したことにより、植付クラッチ64に対する揺動アーム98や操作ワイヤ99などからなる植付クラッチ用の操作機構Bを、変速装置32に対する操作ロッド90などからなる変速用の操作機構Cや、走行クラッチ48に対する操作アーム91や操作ワイヤ94などからなる走行クラッチ用の操作機構D、が存在しない領域を利用して配備することができ、その結果、植付クラッチ用の操作機構Bが、変速用の操作機構Cや走行クラッチ用の操作機構Dに干渉する虞を効果的に防止することができる。
【0069】
又、推進車輪6が存在しないT/Mケース4の前面部に植付クラッチ64に対する操作軸97を配備したことにより、推進車輪6から操作軸97などへの泥跳ねを防止することができ、操作軸97などに泥が付着することに起因した植付クラッチ64の操作不良の発生を効果的に防止することができる。
【0070】
しかも、植付クラッチ64に対する操作軸97をT/Mケース4の前面部に装備するために、重量の大きい植付クラッチ64などをT/Mケース4の前部側に配備することになり、結果、前部側にエンジン3やT/Mケース4など配備し、後部側に苗植付装置2などを配備した走行車体1の前後バランスを向上させることができ、歩行田植機としての取り扱い性を向上させることができる。
【0071】
植付クラッチ64は、シフト部材80のカム面80Aが操作軸97に乗り上がることにより伝動状態から遮断状態に切り替わった場合に、各植付機構30が、それらが描く植え付け作動軌跡(図示せず)の上部に位置する状態で作動停止するように構成してある。つまり、植付クラッチ64を、各植付機構30を上限位置にて作動停止させる上限停止機構としての機能を有するように構成してある。
【0072】
図5及び図7に示すように、T/Mケース4の内部には、その後上部にブリーザ室102を形成するための隔壁103を形成してある。T/Mケース4の後上部には、そのブリーザ室102から延出するブリーザ104を装備してある。ブリーザ104は、丸パイプ材によりコの字状に形成してあり、その両端部が下向きになり、かつ、露出側の端部がT/Mケース4よりも後方に位置する姿勢でT/Mケース4に取り付けてある。
【0073】
これにより、T/Mケース4の内部に貯留したオイルが、走行時に第3変速ギア40や第4変速ギア41などにより掻き上げられることによってブリーザ104から漏れ出す虞を防止することができる。又、輸送のために、車体の前部を下側にして起こした倒立姿勢に車体の姿勢を切り換えた場合であっても、T/Mケース4の内部に貯留したオイルがブリーザ104から漏れ出す虞を防止することができる。
【0074】
図17は油圧構成を示す要部の縦断背面図であり、図18は油圧構成を示す要部上側の横断平面図であり、図19は油圧構成を示す要部の縦断左側面図であり、図20は油圧構成を示す要部下側の横断平面図であり、図4〜6、図8及び図17〜20に示すように、T/Mケース4における上部の左側部には油圧ユニット105を配備してある。
【0075】
油圧ユニット105は、T/Mケース4の左側部に連結する油圧ブロック106に、油圧ポンプ形成用の第1凹部106A、制御弁形成用の第2凹部106B、リリーフ弁形成用の第3凹部106C、供給油路106D、戻り油路106E、第1給排油路106F、第2給排油路106G、及び、排出油路106H、などを形成し、第1凹部106Aにトロコイド式の油圧ポンプ107を、第2凹部106Bにスプール108を、第3凹部106Cにリリーフ弁109を装備して構成してある。
【0076】
尚、油圧ポンプ107として、ギアポンプ、プランジャポンプ、あるいはベーンポンプ、などの異なる構造のものを採用してもよい。
【0077】
図8及び図17〜20に示すように、第1凹部106Aは、T/Mケース4から左外側方に向けて突出させた第1軸34による油圧ポンプ107の駆動が可能となるように、T/Mケース4に接続する油圧ブロック106の右側面に形成してある。これにより、T/Mケース4の第1軸34をポンプ軸に兼用することができる。
【0078】
第2凹部106Bは、油圧ユニット105の左外側部をスプール操作部として使用することが可能となるように、油圧ブロック106の左側面から油圧ブロック106の内部に向けて左右向きに形成してある。そして、この第2凹部106Bに、スプール108をその軸心(図示せず)を支点にした回動操作が可能となるように装備することにより、スプール108を、車体高さ調節用の制御弁として機能させることができる。
【0079】
第3凹部106Cは、T/Mケース4に接続する油圧ブロック106の右側面から油圧ブロック106の内部に向けて左右向きに形成した供給油路106Dと戻り油路106Eとにわたるように、油圧ブロック106の上面から油圧ブロック106の内部に向けて上下向きに形成してある。これにより、第3凹部106Cの略全体を戻り油路の一部として利用することができる。そして、この第3凹部106Cに、ポペット110とポペット110を閉じ付勢する付勢バネ111とを配備し、バネ受け兼用のプラグ112で第3凹部106Cを閉塞することにより、リリーフ弁109を構成することができる。
【0080】
つまり、この油圧ユニット105では、リリーフ弁109を、そのポペット110の軸心方向が第1軸34と直交する上下方向となるように装備してある。これにより、リリーフ弁109を、そのポペット110の軸心方向が第1軸34の軸心(図示せず)に沿う左右方向となるように装備する場合に比較して、油圧ユニット105の左右方向の長さを短くすることができ、油圧ユニット105の重心位置を車体の左右中心に近づけることができる。そして、この重心位置の調整により、車体を左右方向に傾斜させた場合に慣性モーメントが作用しにくくなり、結果、歩行田植機としての取り扱い性の向上を図ることができる。
【0081】
又、T/Mケース4の左側部に配備した油圧ユニット105にリリーフ弁109を上下向きに装備することにより、第3凹部106Cを、T/Mケース4の内部に連通する供給油路106Dと戻り油路106Eとにわたるように形成することができ、これにより、リリーフ弁109を左右向きに装備する場合に比較して、戻り油路106Eを形成する場合の穴加工数を減らすことができ、製作の容易化やコストの削減を図ることができる。
【0082】
しかも、リリーフ弁109のプラグ位置が、スプール操作部として使用する油圧ユニット105の左外側部に位置しないことにより、リリーフ弁109に対するメンテナンスを行う際に、スプール108に対する操作系が邪魔になりにくくなり、結果、リリーフ弁109に対するメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0083】
ちなみに、リリーフ弁109を、そのポペット110の軸心方向が第1軸34と直交する前後方向となるように油圧ユニット105に装備してもよい。
【0084】
図1、図3、図4、図17及び図20に示すように、スプール108の左端部には、スプール108の軸心を支点にしてスプール108と一体で動く揺動アーム113を連結してある。揺動アーム113は、操縦部9に備えた昇降用の操作レバー22に操作ワイヤ114を介して連係してある。つまり、昇降用の操作レバー22を操作することによりスプール108を回動操作することができる。
【0085】
図21はスプール108の作動を示す要部の縦断左側面図であり、図22は車体高さ調節用の油圧配管を示す要部の右側面図であり、図1、図3〜5及び図18〜22に示すように、油圧ユニット105は、走行車体1の右側部に車体高さ調節用として備えた複動型の油圧シリンダ115に金属製の一対の配管116,117を介して接続してある。この接続により、油圧シリンダ115は、昇降用の操作レバー22を操作して、油圧ユニット105のスプール108を中立位置から上昇位置に切り換えた場合には、油圧ポンプ107により圧送されるオイルが伸長作動用の油室(図示せず)に供給され、かつ、短縮作動用の油室(図示せず)からオイルが排出されることにより伸長作動する。又、スプール108を中立位置から下降位置に切り換えた場合には、油圧ポンプ107により圧送されるオイルが短縮作動用の油室に供給され、かつ、伸長作動用の油室からオイルが排出されることにより短縮作動する。そして、スプール108を上昇位置又は下降位置から中立位置に切り換えた場合には、伸長作動用の油室及び短縮作動用の油室に対するオイルの給排が停止されることにより作動停止する。
【0086】
油圧シリンダ115は、車体の前後方向に沿う姿勢でエンジン3の右外方側に位置するように配置してある。又、油圧シリンダ115の伸長作動用の油室に接続する配管116は、油圧ユニット105からエンジン3の前方を通し、油圧シリンダ115の右外方から油圧シリンダ115の上方を通して、伸長作動用の油室に対して上方から螺合により接続してある。油圧シリンダ115の短縮作動用の油室に接続する配管117は、油圧ユニット105からエンジン3の前方を通し、油圧シリンダ115の下方を通して、短縮作動用の油室に対して下方から螺合により接続してある。
【0087】
つまり、配管116,117を、エンジン3を迂回させて油圧シリンダ115と上下方向で重なるようにして配管するようにしているのであり、これにより、エンジン3の右側部から延出するリコイルロープ118を、油圧シリンダ115や配管116,117に干渉させることなく操縦部9に向けて配索することができる。
【0088】
又、油圧シリンダ115に対して配管116,117を上下方向から螺合接続することにより、その緩み方向を油圧シリンダ115の振動方向と異ならせることができ、結果、油圧シリンダ115の振動に起因して、油圧シリンダ115に対する配管116,117の接続に緩みが生じることを抑制することができる。
【0089】
図23は車体高さ調節構造を示す要部の平面図であり、図24及び図25は車体高さ調節構造を示す要部の右側面図であり、図4及び図22〜25に示すように、油圧シリンダ115は、左右向きの軸心P1を支点にして伝動ケース5と一体揺動する揺動アーム119と、右側の第1サイドフレーム7とにわたるように、そのピストンロッド側の端部を揺動アーム119に、そのシリンダチューブ側の端部を右側の第1サイドフレーム7に、それぞれ枢支させてある。揺動アーム119は、伝動ケース5における揺動始端側の右側部に、上方に向けて延出する姿勢で着脱可能に取り付けてある。これにより、油圧シリンダ115は、その第1部材であるシリンダチューブ120から第2部材であるピストンロッド121が前上方に向けて延出する前上がり姿勢で走行車体1に装備されることになる。
【0090】
そして、このように姿勢設定した油圧シリンダ115の上部側に位置する短縮作動用の油室に対して、配管117を前述したように下方から接続することにより、その配管117を、油圧シリンダ115の下部側に位置する伸長作動用の油室に対する配管116と同様の比較的に低い位置に通すことができるようになり、結果、エンジン3やその周辺機器に対するメンテナンスが行いやすくなる。
【0091】
又、上記のように構成することにより、昇降用の操作レバー22を操作して油圧シリンダ115を伸縮作動させることにより、伝動ケース5を左右向きの軸心P1を支点にして上下揺動させることができ、この上下騒動により、推進車輪6の対車体高さを変更することができ、車体の対地高さを調節することができる。その結果、水田での作土層の深さの変動にかかわらず所定の植え付け深さで苗を安定して上付けることができる。
【0092】
つまり、昇降用の操作レバー22、揺動アーム113、操作ワイヤ114、油圧ユニット105、配管116,117、及び油圧シリンダ115、などにより、油圧シリンダ115の作動ストロークにより設定される揺動範囲で伝動ケース5を上下方向に揺動操作する操作機構Eを構成し、この操作機構E、伝動ケース5、及び揺動アーム119、などにより車体高さ調節機構Fを構成してある。
【0093】
図22〜25に示すように、揺動アーム119の揺動支点部には、一対1組で、左右向きの軸心P1を支点にした揺動方向での位置を異ならせた2組の、合計4つの連結孔119A〜118Dを穿設してある。つまり、揺動アーム119を伝動ケース5に1組目の連結孔119A,119Cを使用して取り付けた場合と、2組目の連結孔119B,119Dを使用して取り付けた場合とでは、伝動ケース5に対する揺動アーム119の取り付け位置が、それらの揺動方向で異なることになり、これにより、油圧シリンダ115の作動ストロークにより設定される伝動ケース5の上下方向の揺動範囲を高低2段の揺動範囲に設定変更することができる。
【0094】
具体的には、1組目の連結孔119A,119Cを使用して揺動アーム119を伝動ケース5に取り付けた場合には、伝動ケース5の揺動範囲を、車体に対する高い側の揺動範囲に設定することができ、2組目の連結孔119B,119Dを使用して揺動アーム119を伝動ケース5に取り付けた場合には、伝動ケース5の揺動範囲を、車体に対する低い側の揺動範囲に設定することができる。
【0095】
これにより、耕盤から田面にわたる作土層が比較的に浅い一般的な水田で作業を行う場合には、1組目の連結孔119A,119Cを使用して揺動アーム119を伝動ケース5に取り付けることにより、この水田での作土層の深さに応じた車体の高さ調節を適切に行うことができる。又、耕盤から田面にわたる作土層が比較的に深い天水田(灌漑設備のない水田)などの深田で作業を行う場合には、2組目の連結孔119B,119Dを使用して揺動アーム119を伝動ケース5に取り付けることにより、この深田での作土層の深さに応じた車体の高さ調節を適切に行うことができる。
【0096】
つまり、揺動アーム119の揺動支点部に穿設した4つの連結孔119A〜119Dが、左右向きの軸心P1を支点にした伝動ケース5の揺動方向で、伝動ケース5に対する揺動アーム119の連結位置を変更することにより、左右向きの軸心P1を支点にした伝動ケース5の揺動範囲を変更する揺動範囲変更手段Gとして機能し、この揺動範囲変更手段の作用により、一般的な水田と深田とにかかわらず、車体の上部側を水田に浸けることなく推進車輪6を適切に耕盤に接地させることができ、植え付け作業を良好に行うことができる。
【0097】
又、油圧シリンダ115として、一般的な水田に対する揺動範囲だけでなく深田に対する揺動範囲にも対応することのできる作動ストロークの大きい大型のものを採用する必要がないことから、大型の油圧シリンダ115を採用することによって生じる、車体重量の増加、左右バランスの低下、及びコストの高騰、などを未然に回避することができる。
【0098】
図26は油圧シリンダ115の支持構造を示す要部の縦断右側面図であり、図27は油圧シリンダ115の支持構造を示す要部の縦断背面図であり、図4及び図22〜27に示すように、油圧シリンダ115のシリンダチューブ120は、第1枢支部122を介して右側の第1サイドフレーム7に枢支させてある。油圧シリンダ115のピストンロッド121は、第2枢支部123を介して揺動アーム119に枢支させてある。
【0099】
第1枢支部122は、油圧シリンダ115のシリンダチューブ120を支持するように右側の第1サイドフレーム7から左方に向けて延設した軸部材としての支軸124と、この支軸124にその軸心P2回りに相対回動可能に外嵌するようにシリンダチューブ120の後端部に形成したホルダ部材としてのホルダ部125、により構成してある。第2枢支部123は、油圧シリンダ115のピストンロッド121に相対摺動可能に備えた軸部材126と、この軸部材126にその軸心P3回りに相対回動可能に外嵌するように揺動アーム119から右方に向けて延設したホルダ部材127、により構成してある。
【0100】
第2枢支部123において、軸部材126は、シリンダチューブ120と略同径の大径に形成した樹脂製で、ピストンロッド121の先端部に外嵌装備したサスペンションバネ128を受け止め支持するバネ受け部126Aを有するように形成してある。ホルダ部材127は、断面C字状に形成した板金製で、ピストンロッド121の挿通及び相対揺動許容する長孔127Aを形成してある。
【0101】
そして、上記のように軸部材126を大径に形成したことにより、軸部材126にかかる面圧を小さくすることができ、これにより、軸部材126に、コストの面や成形の面で有利な樹脂製のものを採用して軽量化を図りながらも、高い耐久性を得ることができる。又、軸部材126をバネ受けに兼用することにより、部品点数の削減による組付け性の向上やコストの削減を図ることができる。
【0102】
しかも、第1枢支部122及び第2枢支部123を上記のように構成したことにより、車体に対する油圧シリンダ115の組付けを、車体の右方からの差し込みなどにより簡単に行うことができる。
【0103】
尚、ピストンロッド121には、サスペンションバネ128を介して第2枢支部123の軸部材126を受け止める軸受具129や、第2枢支部123のホルダ部材127を受け止めるホルダ受具130、などを備えている。
【0104】
図28は歩行田植機の自立保持構造を示す要部の右側面図であり、図29は歩行田植機の自立保持構造を示す要部の平面図であり、図1〜4、図28及び図29に示すように、左右の第1サイドフレーム7には、歩行田植機を自立保持するためのスタンド131を装備してある。左右のスタンド131は、左右の第1サイドフレーム7の左右向きの軸心(図示せず)を支点にして、車体前方側で垂下する作用姿勢と、車体前方側で第1サイドフレーム7に略沿うようになる格納姿勢とに、姿勢切り換え可能に構成してある。又、左右の第1サイドフレーム7と対応する左右のスタンド131とにわたって、デッドポイント越えによるスタンド131の姿勢保持を可能にする引っ張りバネ132を架設してある。
【0105】
この構成により、スタンド131を作用姿勢に切り換えることにより、歩行田植機を自立保持させることができる。そして、この自立保持状態を維持したまま、車体を前進させて水田に入った場合には、水田の泥などによる抵抗がスタンド131にかかることにより、スタンド131が作用姿勢から格納姿勢に自動的に切り替わるようになる。その結果、スタンド131を作用姿勢に切り換えた状態が水田に入った後も維持されることによる車体の沈み込みを未然に回避することができる。
【0106】
図30は歩行田植機の吊り下げ支持構造を示す要部の縦断背面図であり、図1、図2及び図28〜30に示すように、この歩行田植機には、その吊り下げ搬送を可能にする複数のフック133を備えている。これらのフック133のうち、車体前部側の2つは、左右の第1サイドフレーム7の前端部に、T/Mケース4に対する連結用として備えたブラケット134に形成してある。又、車体後部側の2つは、左右一対のハンドルフレーム20に、整地フロート26や苗載台27などに対する支持用として備えたブラケット135に形成してある。
【0107】
これにより、吊り下げ搬送用の専用部品を装備する必要がなくなり、結果、部品点数の削減による組付け性の向上やコストの削減を図ることができる。
【0108】
図31は燃料供給構造を示す要部の正面図であり、図1、図2及び図31に示すように、燃料タンク10は、その排出口10Aが右下方に向かう傾斜姿勢となるように形成し、又、その排出口10Aがエンジン3のキャブレタ136の近くに位置するように配置してある。これにより、燃料タンク10を、エンジン3の上端に近接させるようにしても、燃料タンク10の排出口10Aからキャブレタ136への配管を簡単に行うことができる。
【0109】
図1〜3及び図5に示すように、この歩行田植機には作業灯137を装備してある。作業灯137は、上部カバー11から食み出している油圧ユニット105に支持ブラケット138を介して上下方向及び左右方向に向き変更可能に支持させてある。これにより、上部カバー11の内部に作業灯137を装備する場合に比較して照射範囲を広くすることができるとともに、照射方向の設定の自由度を高めることができ、結果、作業灯137を使用する夜間作業などでの作業性を向上させることができる。
【0110】
〔別実施形態〕
【0111】
〔1〕歩行作業機としては、歩行耕耘装置やバインダなどであってもよい。
【0112】
〔2〕操作機構Eとしては、油圧シリンダ115に単動型のものを採用したものであってもよい。又、油圧シリンダ115に代えて油圧モータや電動モータなどを採用したものであってもよい。
【0113】
〔3〕操作機構Eとしては、車体固定部側と伝動ケース側とにわたってネジ送り機構を架設し、そのネジ送り機構のネジ送り範囲を伝動ケースの揺動範囲に設定するように構成したものであってもよい。尚、この構成においては、第1部材120と第2部材121のいずれか一方がネジ送り軸となり、他方がネジ送り軸によりネジ送りされる螺合部材となる。
【0114】
〔4〕油圧シリンダ115を、そのピストンロッドが第1部材120となり、そのシリンダチューブが第2部材121となるように装備してもよい。
【0115】
〔5〕揺動範囲変更手段Gとしては、揺動アーム(伝動ケース側)119に対するピストンロッド(第2部材)121の取り付け位置を変更することにより、左右向きの軸心P1を支点にした伝動ケース7の上下方向での揺動範囲を変更するように構成したものであってもよい。
【0116】
〔6〕揺動範囲変更手段Gとしては、左右向きの軸心P1を支点にした伝動ケース7の上下方向での揺動範囲の変更を、3段以上行えるように構成したものであってもよい。
【0117】
〔7〕第1枢支部122の軸部材である支軸124を、シリンダチューブ120と略同径の大径に形成するようにしてもよい。又、第1枢支部122の支軸(軸部材)124と第2枢支部123の軸部材126のいずれか一方又は双方を、シリンダチューブ120よりも大径に形成するようにしてもよい。
【0118】
〔8〕第1枢支部122のホルダ部(ホルダ部材)125と第2枢支部123のホルダ部材127のいずれか一方又は双方を、シリンダチューブ120と略同径の大径に形成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】歩行田植機の全体左側面図
【図2】歩行田植機の全体右側面図
【図3】歩行田植機の全体平面図
【図4】歩行田植機の前半部の構成を示す平面図
【図5】エンジン周りやT/Mケース周りの構成を示す要部の左側面図
【図6】歩行田植機の伝動構成を示す概略平面図
【図7】T/Mケースの縦断右側面図
【図8】走行用の伝動構成を示す要部の展開断面図
【図9】走行用の伝動構成を示す要部の横断平面図
【図10】作業用の伝動構成を示す要部の横断平面図
【図11】作業用の伝動構成を示す要部の展開断面図
【図12】左側の植付機構に対する伝動構成や横送り機構の支持構造を示す要部の展開断面図
【図13】右側の植付機構や横送り機構に対する伝動構成を示す要部の展開断面図
【図14】トルクリミッタ及び植付クラッチの構成を示す要部の横断平面図
【図15】走行クラッチの操作構造を示す要部の縦断左側面図
【図16】走行クラッチの操作構造を示す要部の背面図
【図17】油圧構成を示す要部の縦断背面図
【図18】油圧構成を示す要部上側の横断平面図
【図19】油圧構成を示す要部の縦断左側面図
【図20】油圧構成を示す要部下側の横断平面図
【図21】スプールの作動を示す要部の縦断左側面図
【図22】車体高さ調節用の油圧配管を示す要部の右側面図
【図23】車体高さ調節構造を示す要部の平面図
【図24】車体高さ調節構造を示す要部の右側面図
【図25】車体高さ調節構造を示す要部の右側面図
【図26】油圧シリンダの支持構造を示す要部の縦断右側面図
【図27】油圧シリンダの支持構造を示す要部の縦断背面図
【図28】歩行田植機の自立保持構造を示す要部の右側面図
【図29】歩行田植機の自立保持構造を示す要部の平面図
【図30】歩行田植機の吊り下げ支持構造を示す要部の縦断背面図
【図31】燃料供給構造を示す要部の正面図
【符号の説明】
【0120】
5 伝動ケース
7 下位部分
6 推進車輪
115 油圧シリンダ
116 配管
117 配管
119 上位部分(揺動アーム)
120 第1部材(シリンダチューブ)
121 第2部材
122 第1枢支部
123 第2枢支部
124 軸部材
125 ホルダ部材
126 軸部材
127 ホルダ部材
E 操作機構
F 車体高さ調節機構
G 揺動範囲変更手段
P1 左右向きの軸心
P2 左右向きの軸心
P3 左右向きの軸心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右向きの軸心を支点にして上下揺動する伝動ケースと、前記伝動ケースを予め設定した揺動範囲で前記軸心を支点にして上下方向に揺動操作する操作機構とを備え、
前記伝動ケースと前記操作機構とから、前記伝動ケースの遊端部に備えた推進車輪の対車体高さを変更することにより車体の対地高さを調節する車体高さ調節機構を構成してある歩行作業機の車体高さ調節構造であって、
前記車体高さ調節機構に、前記揺動範囲の設定変更を可能にする揺動範囲変更手段を備えてあることを特徴とする歩行作業機の車体高さ調節構造。
【請求項2】
前記伝動ケースに、前記軸心を支点にして前記伝動ケースと一体揺動する揺動アームを連結し、
前記操作機構が、前記揺動アームを介して前記伝動ケースの前記揺動操作を行うように構成し、
前記揺動範囲変更手段が、前記軸心を支点にした前記伝動ケースの揺動方向で、前記伝動ケースに対する前記揺動アームの連結位置を変更することにより、前記揺動範囲を変更するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の歩行作業機の車体高さ調節構造。
【請求項3】
前記操作機構を、左右向きの軸心を支点にした揺動が可能となるように車体固定部側に第1枢支部を介して装備される第1部材と、左右向きの軸心を支点にした揺動が可能となるように伝動ケース側に第2枢支部を介して装備される第2部材とから、車体の前後方向に沿って車体固定部側と伝動ケース側とにわたるように架設され、かつ、前記第1部材に対して前記第2部材が架設方向に変位することにより、前記伝動ケースの前記揺動操作を行うように構成し、
前記第1枢支部及び前記第2枢支部を、車体固定部側と前記第1部材のいずれか一方、又は、伝動ケース側と前記第2部材のいずれか一方に備えた軸部材と、車体固定部側と前記第1部材のいずれか他方、又は、伝動ケース側と前記第2部材のいずれか他方に、前記軸部材に外嵌するように備えたホルダ部材とから構成し、
前記第1枢支部と前記第2枢支部のいずれか一方又は双方の前記軸部材及び前記ホルダ部材を、前記第1部材又は前記第2部材よりも大径に形成してあることを特徴とする請求項1又は2に記載の歩行作業機の車体高さ調節構造。
【請求項4】
前記操作機構に、車体の前後方向に沿って車体固定部側と伝動ケース側とにわたって架設される油圧シリンダを備え、
前記油圧シリンダに対する配管の接続を前記油圧シリンダの上下方向から行うように構成してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の歩行作業機の車体高さ調節構造。
【請求項5】
前記油圧シリンダとして複動型のものを採用し、
前記油圧シリンダおけるシリンダチューブの一端部を、前記伝動ケースの揺動支点よりも下方に位置する車体固定部側の下位部分に連結し、かつ、前記シリンダチューブの他端部を、前記伝動ケースの揺動支点よりも上方に位置する伝動ケース側の上位部分に連結し、
前記シリンダチューブの一端部に対する配管の接続を前記油圧シリンダの上方から行い、前記シリンダチューブの他端部に対する配管の接続を前記油圧シリンダの下方から行うように構成してあることを特徴とする請求項4に記載の歩行作業機の車体高さ調節構造。
【請求項1】
左右向きの軸心を支点にして上下揺動する伝動ケースと、前記伝動ケースを予め設定した揺動範囲で前記軸心を支点にして上下方向に揺動操作する操作機構とを備え、
前記伝動ケースと前記操作機構とから、前記伝動ケースの遊端部に備えた推進車輪の対車体高さを変更することにより車体の対地高さを調節する車体高さ調節機構を構成してある歩行作業機の車体高さ調節構造であって、
前記車体高さ調節機構に、前記揺動範囲の設定変更を可能にする揺動範囲変更手段を備えてあることを特徴とする歩行作業機の車体高さ調節構造。
【請求項2】
前記伝動ケースに、前記軸心を支点にして前記伝動ケースと一体揺動する揺動アームを連結し、
前記操作機構が、前記揺動アームを介して前記伝動ケースの前記揺動操作を行うように構成し、
前記揺動範囲変更手段が、前記軸心を支点にした前記伝動ケースの揺動方向で、前記伝動ケースに対する前記揺動アームの連結位置を変更することにより、前記揺動範囲を変更するように構成してあることを特徴とする請求項1に記載の歩行作業機の車体高さ調節構造。
【請求項3】
前記操作機構を、左右向きの軸心を支点にした揺動が可能となるように車体固定部側に第1枢支部を介して装備される第1部材と、左右向きの軸心を支点にした揺動が可能となるように伝動ケース側に第2枢支部を介して装備される第2部材とから、車体の前後方向に沿って車体固定部側と伝動ケース側とにわたるように架設され、かつ、前記第1部材に対して前記第2部材が架設方向に変位することにより、前記伝動ケースの前記揺動操作を行うように構成し、
前記第1枢支部及び前記第2枢支部を、車体固定部側と前記第1部材のいずれか一方、又は、伝動ケース側と前記第2部材のいずれか一方に備えた軸部材と、車体固定部側と前記第1部材のいずれか他方、又は、伝動ケース側と前記第2部材のいずれか他方に、前記軸部材に外嵌するように備えたホルダ部材とから構成し、
前記第1枢支部と前記第2枢支部のいずれか一方又は双方の前記軸部材及び前記ホルダ部材を、前記第1部材又は前記第2部材よりも大径に形成してあることを特徴とする請求項1又は2に記載の歩行作業機の車体高さ調節構造。
【請求項4】
前記操作機構に、車体の前後方向に沿って車体固定部側と伝動ケース側とにわたって架設される油圧シリンダを備え、
前記油圧シリンダに対する配管の接続を前記油圧シリンダの上下方向から行うように構成してあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の歩行作業機の車体高さ調節構造。
【請求項5】
前記油圧シリンダとして複動型のものを採用し、
前記油圧シリンダおけるシリンダチューブの一端部を、前記伝動ケースの揺動支点よりも下方に位置する車体固定部側の下位部分に連結し、かつ、前記シリンダチューブの他端部を、前記伝動ケースの揺動支点よりも上方に位置する伝動ケース側の上位部分に連結し、
前記シリンダチューブの一端部に対する配管の接続を前記油圧シリンダの上方から行い、前記シリンダチューブの他端部に対する配管の接続を前記油圧シリンダの下方から行うように構成してあることを特徴とする請求項4に記載の歩行作業機の車体高さ調節構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【公開番号】特開2010−35535(P2010−35535A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205554(P2008−205554)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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