説明

歩行型移動農機

【課題】機体フレームの少なくとも一部を構成する伝動ケースにエンジンを取付支持する支持部を備え、耕耘作業機の少なくとも上方側を覆う耕耘カバーを設けるにあたり、構造を複雑化させること無く、伝動ケース側に耕耘カバーに取付けることができる歩行型移動農機を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、エンジン6からの動力を耕耘作業機3に伝動する伝動機構14が内装された伝動ケース2によって機体フレーム1の少なくとも一部を構成し、耕耘作業機3の少なくとも上方側を覆う耕耘カバー7を設け、伝動ケース2における耕耘作業機3よりも上方位置にエンジン6を取付支持する支持部4を設けた歩行型移動農機において、前記支持部4から水平方向外側に向って取付座27を一体的に延設し、該取付座27に耕耘カバー7を取付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は耕耘作業機を備えた歩行型移動農機に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンからの動力を耕耘作業機に伝動する伝動機構が内装された伝動ケースによって機体フレームの少なくとも一部を構成し、耕耘作業機の少なくとも上方側を覆う耕耘カバーを設け、伝動ケースにおける耕耘作業機よりも上方位置にエンジンを取付支持する支持部を設け、構成を簡略化させた特許文献1に示す歩行型移動農機が公知になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3420453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記文献の歩行型移動農機は、耕耘カバーを伝動ケース側に取付けるにあたり、支持部とは別にブラケットを設け、該ブラケットを介して、耕耘カバーを伝動ケース側に取付けており、部品点数が増加して構造が複雑化している。
【0005】
本発明は、機体フレームの少なくとも一部を構成する伝動ケースにエンジンを取付支持する支持部を備え、耕耘作業機の少なくとも上方側を覆う耕耘カバーを設けるにあたり、構造を複雑化させること無く、伝動ケース側に耕耘カバーを取付けることができる歩行型移動農機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため本発明は、第1に、エンジン6からの動力を耕耘作業機3に伝動する伝動機構14が内装された伝動ケース2によって機体フレーム1の少なくとも一部を構成し、耕耘作業機3の少なくとも上方側を覆う耕耘カバー7を設け、伝動ケース2における耕耘作業機3よりも上方位置にエンジン6を取付支持する支持部4を設けた歩行型移動農機において、前記支持部4から水平方向外側に向って取付座27を一体的に延設し、該取付座27に耕耘カバー7を取付けたことを特徴としている。
【0007】
第2に、耕耘カバー7がボルト固定可能なように前記取付座27を形成し、該取付座27に耕耘カバー7をボルト固定するにあたって、取っ手26を共締めしてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成によれば、前記支持部から水平方向外側に向って取付座を一体的に延設し、該取付座に耕耘カバーを取付けるため、耕耘カバーを取付けるための部材を支持部とは別に設ける必要が無く、構造が簡略化されコストを低く抑えることが可能になる他、エンジンを支持する強度の高い支持部側に耕耘カバーを取付けるため、耕耘カバーの取付強度を向上させることができる。
【0009】
また、耕耘カバーがボルト固定可能なように前記取付座を形成し、該取付座に耕耘カバーをボルト固定するにあたって、取っ手を共締めすることにより、取っ手を設けるために別途部材を設ける必要が無く、部品点数の増加を抑えて取っ手を設けることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の歩行型移動農機を適用した歩行型管理機の側面図である。
【図2】本発明の歩行型移動農機を適用した歩行型管理機の平面図である。
【図3】本発明の歩行型移動農機を適用した歩行型管理機の正面図である。
【図4】本発明の歩行型移動農機を適用した歩行型管理機の上側斜視図である。
【図5】本発明の歩行型移動農機を適用した歩行型管理機の下側斜視図である。
【図6】耕耘カバー及びエンジンの伝動ケース側への取付構造を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下図示する例に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1乃至5は、本発明の歩行型移動農機を適用した歩行型管理機の側面図、平面図、正、上側斜視図及び下側斜視図であり、図6は、耕耘カバー及びエンジンの伝動ケース側への取付構造を示す正面図である。
【0012】
図示する歩行型管理機は、機体フレーム1の一部を構成する伝動ケース2と、伝動ケース2の下端部に回転自在に支持された左右方向の耕耘ロータリ(耕耘作業機)3と、伝動ケース2の上端部に形成された支持部4に下端側が支持されたエンジン6と、耕耘ロータリ3の上方側を覆って泥の飛散等を防止する耕耘カバー7と、機体フレーム1から後方斜め上方に延設されたハンドル8と、ハンドル8の基端部から上方に向って前方に屈曲形成された把持棒(把持部)9と、ハンドル8の基端部から下方に向って突出形成された抵抗棒11とを備えている。
【0013】
上記耕耘ロータリ3は、伝動ケース2の下端部から左右両側方に突出した左右方向のロータリ軸12と、ロータリ軸12に、その全長方向に沿って所定間隔毎に軸装されて該ロータリ軸12と一体で回転する複数の耕耘爪13とから構成されている。エンジン6からの動力が伝動ケース2内の伝動機構14を介して上記ロータリ軸12に伝動され、該ロータリ軸12の軸回りに複数の耕耘爪13を回転駆動させ、圃場における耕耘作業を行う。ちなみに、伝動機構14は、上下方向の伝動軸16と、伝動軸16の下端部に配置されて上記ロータリ軸12に該伝動軸16の動力をギヤ伝動するギヤ機構(図示しない)とを備えている。
【0014】
上記伝動ケース2は、伝動軸16を収容する上下方向に延びる筒状の軸収容部2aと、軸収容部2aの下部から後側に一体的に形成されてギヤ機構が内装されるギヤ収容部2bとを備えている。
【0015】
軸収容部2a内には伝動軸16が軸回りに回転可能に支持され、ギヤ収容部2b内には上記ロータリ軸12の中途部が軸回りに回転可能に軸支され、この軸収容部2aとギヤ収容部2bとは、内部が連接されて下方が開放されており、この下方側開放部分がケース蓋2cによって開閉可能に閉塞されている。ちなみに、ケース蓋2cを取外し、軸収容部2a及びギヤ収容部2b内の下方側を開放させて、伝動機構14のメンテナンス等を行う。
【0016】
また、軸収容部2aから後方斜め上方に向ってリブ状の支持フレーム17が一体的に延設されており、この支持フレーム17と、伝動ケース2と、上述の支持部4とは、鉄やアルミ等、強度の高い金属製部材によって一体的に成形されて上述の機体フレーム1を構成している。
【0017】
この支持フレーム1の最後方箇所の上端部には、ハンドル8、把持棒9及び抵抗棒11の基端部を取付支持する複数の支持部18,19,21が一体的に形成されている。具体的には、支持部18,19,21の一つが、平断面視左右一方側が開放された半円弧状に形成されて上下方向に延びるハンドル支持部18になり、一つが、平面視左右他方側が開放された半円弧形状に形成されて上下方向に延びる把持棒支持部19になり、一つが、後方に向って斜め下方に延びる円筒状に成形されて後端側が開放された抵抗棒支持部21になる。ちなみに、把持棒支持部19はハンドル支持部18の前側に隣接し、抵抗棒支持部21はハンドル支持部18の中途部から後方斜め下方に突出形成されている。
【0018】
上記ハンドル8は、下側半部の棒状のハンドルフレーム22と、上側半部のハンドル本体23とから構成されており、ハンドルフレーム22は、後方に向って上方傾斜する金属製(具体的には鉄製,アルミ製等)の丸パイプ状部材であって、その最前方箇所である下端部(基端部)が上述のハンドル支持部18の内周側に開放側から嵌合されてボルト固定される一方で、ハンドル本体23は、基端側から先端側に向って二股状に分かれて左右の各先端部にグリップ23aが形成されており、全体が前後回動調整可能となるように基端側がハンドルフレーム22の先端側に支持されている。
【0019】
この支持構造によって、ハンドル本体23(ハンドル8)は、エンジン6の上方側に倒伏して収容される収納姿勢と、後方に向って斜め上方に突出する操作姿勢とに姿勢切換可能になり、操作姿勢で固定された状態で、操向操作具として機能する。
【0020】
上記把持棒9は、金属製(具体的には鉄製,アルミ製等)の丸パイプを折り曲げ形成することにより構成され、中途部が上下方向に形成され、基端部から中途部に向って後方斜め上方に延びとともに、先端部が前方を向くように該先端部が中途部に対して下方に屈曲形成されており、把持棒9の基端部は、把持棒支持部19の内周側に開放側から嵌合されてボルト固定されている。そして、ハンドル8を収容姿勢に切換えた状態で、該構成の把持棒9を把持することで、本歩行型管理機を容易に持ち運ぶことが可能になる。
【0021】
上記抵抗棒11は、後方に向って斜め下方に傾斜した金属製(具体的には鉄製,アルミ製)の鉄パイプであって、抵抗棒11の前端部(基端部)に対して基端以外の部分である中途部及び先端部が上下方向に屈曲されおり、抵抗棒11の中途部には接地輪24が回転自在に支持されている。この抵抗棒24の基端部は筒状の抵抗棒支持部21に嵌合挿入されて固定されるが、この嵌合挿入の際に、軸回りに回動調整できる。
【0022】
この軸回りの回動調整によって、抵抗棒11は、中途部及び先端部が基端部に対して圃場面に近づく側に屈曲された作用姿勢と、遠ざかる非作用姿勢とに姿勢切換可能に構成されている。耕耘ロータリ3による耕耘作業を行う際、抵抗棒11を作用姿勢で固定した場合には、接地輪24が上方側を向いて圃場面から離間するとともに抵抗棒11が圃場に挿入され、前進走行時における機体全体の姿勢が安定する一方で、抵抗棒11を非作用姿勢で固定した場合には、接地輪24が圃場面に回転自在可能な状態で接地するとともに該抵抗棒11全体が圃場から離間した状態になる。
【0023】
次に、図1乃至6に基づき、エンジン6の支持構造及び耕耘カバー7の取付構造について説明する。
耕耘カバー7は、硬質合成樹脂製のカバー体であって、フェンダーとして機能するものであり、全体が略フラットに形成されており、取っ手26が取付固定されている。この耕耘カバー7の後部は、前部及び中途部に対して若干斜め下方に屈曲される他、耕耘カバー7の左右方向中央部は、左部及び右部に対して一段高く形成されている。
【0024】
この耕耘カバー7の左右方向中央部には、機体フレーム1の伝動ケース2上端部及び支持フレーム17上部を挿通させる切欠き状の通し部7aが形成され、ハンドル8、把持棒9及び抵抗棒11の基端部が取付支持される上述の複数の支持部18,19,21と、エンジン6が支持される支持部4は耕耘カバー7の上面側に配されている。
【0025】
この内、エンジン6を支持する支持部4は上記通し部7aよりも広い左右幅を有する方形プレート状に形成され、その四隅からは、それぞれ水平方向外側に向って取付座27が一体的に延設されており、この取付座27も支持部4とともに金属製部材によって一体的に成形される。
【0026】
エンジン6の下端部側に一体形成された接合部28は平面視で支持部4と略同一の方形状に成形され、この接合部28の下端と支持部4の上端とを一体的に接合させ、両者をボルト固定する。具体的には、両者の各四隅に穿設されたボルト挿入部4a,28aによって一体形成されるボルト穴に下方側からボルト29を係合挿入し、この4つのボルト29を締付けることにより、エンジン6を支持部4に支持固定する。この際、4つのボルト29を、それぞれ挿通されるとともに、該ボルト29のボルトヘッド29aの略全体が収容される収容孔7bが、耕耘カバー7にボルト29の数と同数(図示する例では4つ)穿設されている。
【0027】
また、図6に示すように、耕耘カバー7の上面側を支持部4及び取付座27の下面に面状に当接させた状態で、耕耘カバー7は取付座27にボルト固定されている。具体的には、4つの各取付座27に取付座側挿通孔27aが形成されるとともに、耕耘カバー7における取付座側挿通孔27aと一致する箇所にも耕耘カバー側挿通孔7cが形成され、この取付座側挿通孔27aと耕耘カバー側挿通孔7cは、単一のボルト挿通孔を形成し、該4つの各ボルト挿通孔に下方側からボルト31を挿通させ、取付座27から突出した各ボルト31の先端部にナット32を係合させ、ボルト締めすることにより、耕耘カバー7を、支持部4及び4つの取付座27に締着固定して取付ける。
【0028】
さらに、耕耘カバー7の取付座27へのボルト固定にあたっては、上述した取っ手26が共締めされている。具体的には、取っ手26が、平面視U字状の取っ手本体26aと、水平な方形状プレートであって取っ手本体26aの開放側に一体的に連結される取付部26bとから構成されており、平面視において、この取付部26bの四隅を、4つの取付座27の位置と一致させた状態で、該取付部27、耕耘カバー7及び取付座27に上述のボルト31を挿通させ、共締めする。このように共締めされた際、取っ手本体26aは、耕耘カバー7の前端部における左右方向中央部に位置した状態になる。
【0029】
ちなみに、図2及び4に示すように、耕耘カバー7には、上記支持部4及び取付座27の下端側を収容するように下方が窪んだ凹部7dが形成されており、支持部4に耕耘カバー7をボルト固定させた際、支持部4によって、耕耘カバー7の上面側に必要以上の凹凸が形成されるのを防止している。これに加えて、図6に示すように、取付座27にも各ナットを収容する凹部27bが形成され、必要以上に凹凸が形成されるのを抑制している。
【0030】
次に、図6に基づき、伝動軸16への動力伝動構成について説明する。
エンジン6からは下方に向って上下方向の出力軸33が突出しており、該出力軸33はエンジン6で発生させた動力によって軸回りに回転駆動される。この出力軸33の突出端部である下端部に設けられた円盤状の遠心クラッチ(クラッチ)34と、遠心クラッチ34が嵌合挿入されるように遠心クラッチ34側(具体的には上方側)が開放された筒状のクラッチドラム36とによって、伝動軸16にエンジン動力が断続伝動される。
【0031】
具体的には、伝動軸16の上端にクラッチドラム36が一体回転するように取付固定されており、該クラッチドラム36に嵌合挿入された遠心クラッチ34がエンジン動力によって所定回転数以上で回転されると、遠心力によって該遠心クラッチ34の径が拡大してその外周面がクラッチドラム36の内周面に圧接され、クラッチドラム36と遠心クラッチ34とが一体的に回転し、伝動軸16にエンジン動力が伝動される。
【0032】
ちなみに、この遠心クラッチ34、クラッチドラム36及び伝動軸16を設置するため、支持部4は上下に開放された円柱状のスペース(図示しない)を内部に有するとともに、エンジン6の接合部28も、下方が開放された円柱状のスペース(図示しない)を内部に有し、この両スペースが、支持部4と接合部28との連結固定時、一体的に連接されて上述の各種部材を設置するための設置スペース(図示しない)を形成するように、該支持部4及び接合部28が形成されている。
【0033】
以上のように構成される本歩行型管理機によれば、一体的に形成される機体フレーム1
に各種部材が効率的に取付けられ、全体の構成が簡略化され、製造コストを低く抑えることが容易になる他、取っ手27と、把持棒9とを両手が把持することにより、運びも容易になる。
【0034】
また、支持部4及び支持部4に一体成形された取付座27によって、エンジン6及び耕耘カバー7を機体フレーム1側に取付支持しているが、両者は、共締めされてはおらず、各別のボルト29,31によってボルト固定されているため、支持部4側(具体的には支持部4及び取付座27)から各別に取外し可能になり、メンテナンス性が向上する。
【符号の説明】
【0035】
1 機体フレーム
2 伝動ケース
3 耕耘ロータリ(耕耘作業機)
4 支持部
6 エンジン
7 耕耘カバー(カバー体,フェンダー)
14 伝動機構
26 取っ手
27 取付座

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン(6)からの動力を耕耘作業機(3)に伝動する伝動機構(14)が内装された伝動ケース(2)によって機体フレーム(1)の少なくとも一部を構成し、耕耘作業機(3)の少なくとも上方側を覆う耕耘カバー(7)を設け、伝動ケース(2)における耕耘作業機(3)よりも上方位置にエンジン(6)を取付支持する支持部(4)を設けた歩行型移動農機において、前記支持部(4)から水平方向外側に向って取付座(27)を一体的に延設し、該取付座(27)に耕耘カバー(7)を取付けた歩行型移動農機。
【請求項2】
耕耘カバー(7)がボルト固定可能なように前記取付座(27)を形成し、該取付座(27)に耕耘カバー(7)をボルト固定するにあたって、取っ手(26)を共締めしてなる請求項1の歩行型移動農機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−188784(P2011−188784A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56879(P2010−56879)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】