説明

歩行型移植機

【課題】 機体の左右いずれかの一方側を歩行する作業者による機体の他方側に対する操作性や作業性を向上させることができる。
【解決手段】 本発明の歩行型移植機1は、走行車輪2,3により走行自在に支持された機体4と、該機体4に搭載された移植手段6,7,8と、機体4の後部に設けられて移植手段6,7,8に供給する苗を載せる苗載台5と、機体4の後方へ延設された操向ハンドル10とを備えている。そして、操向ハンドル10の下方であって機体4の後方へ延設された補助ステップ11を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜、花等の苗を移植する歩行型移植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の歩行型移植機としては、特許文献1に記載されたものを例示する。この移植機は、図5に示すように、エンジン(図示略)によって駆動する走行輪74と、本機後方に延設させる操向ハンドル90と、苗載台85と、植付爪89を有する植付装置78を設け、作業者が追従しながら植付け作業を行う歩行型のものである。そして、走行輪74の前方に前輪81を設けると共に、走行輪74の後側斜上方に延設させる操向ハンドル90の前側で走行輪74の後側上方に苗載台85を装設させ、植え付け装置78を苗載台85の前側に配設させ、苗載台85の下方に空間部を形成している。このように苗載台85下方に空間部を形成して前輪81を大きく持ち上げて旋回できるようにしている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−10701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、歩行型移植機においては、移植作業中、圃場の1以上の畝を移植機が跨いだ状態となり、両前輪81及び両走行輪74が畝間を走行する。このとき、作業者は一方の車輪側の畝間を歩行しながら、畝を跨いだ状態の移植機を操作する必要がある。このため、畝幅が広い場合や、移植機が複数の畝を跨いだ状態となっている場合、一方の車輪側を歩行する作業者が移植機における他方の車輪側に対する操作(例えば苗載台に苗箱を供給)が行い難いという課題がある。
【0005】
また、植付装置78は、側面視で走行輪74の外周よりも後方に出っ張った出っ張り部位としてのゲージローラ84を有しているので、前輪81を大きく持ち上げすぎると、該ゲージローラ84が圃場表面に衝突して損傷するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の歩行型移植機は、
走行車輪により走行自在に支持された機体と、該機体に搭載された移植手段と、前記機体の後部に設けられて前記移植手段に供給する苗を載せる苗載台と、前記機体の後方へ延設された操向ハンドルとを備えた歩行型移植機であって、
前記操向ハンドルの下方であって前記機体の後方へ延設された補助ステップを備えている。
【0007】
この構成によれば、畝幅が広い場合や、移植機が複数の畝を跨いだ状態となっている場合、一方の車輪側を歩行する作業者は、前記補助ステップに片足をかけて畝上の機体に体重を預けることができるので、移植機における他方の車輪側に対する操作(例えば他方の車輪側の苗載台に苗箱を供給)が行い易い。
【0008】
前記走行車輪は、左右一対の後輪を備え、
前記移植手段は、側面視で前記後輪の外周よりも後方又は後斜め下方に出っ張った出っ張り部位を有しており、
前記補助ステップは、前記両後輪を中心に前記機体を後傾させたときに、前記出っ張り部位よりも先に圃場表面に接地し、それ以上の後傾を阻止するように構成された態様を例示する。
【0009】
この構成によれば、前記機体を後傾させすぎることを阻止することにより、前記出っ張り部位が損傷することを防止できる。
【0010】
前記補助ステップは、前記後傾を阻止する使用位置と、該後傾を阻止しない退避位置との間で移動可能に、かつ、少なくとも前記使用位置において位置固定可能に構成された態様を例示する。
【0011】
この構成によれば、前記補助ステップを必要に応じて前記使用位置及び退避位置に適宜配置することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る歩行型移植機によれば、機体の左右いずれかの一方側を歩行する作業者による機体の他方側に対する操作性や作業性を向上させることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1〜図4は本発明を具体化した一実施形態の歩行型移植機1を示している。本例の移植機1は、走行車輪としての左右一対の前輪2及び左右一対の後輪3に走行自在に支持された機体4と、該機体4の上部に設けられ、ポット苗箱の載置自在な苗載台5と、ポット苗箱から横一列ずつ取り出されたポット苗を一本ずつ搬送する苗搬送装置6と、苗搬送装置6により搬送されてきたポット苗を圃場に植え付ける植付装置7と、圃場に植え付けられたポット苗の側方の土を押圧して鎮圧するとともに株際に土を押し付けて覆土する覆土・鎮圧装置8と、後輪3、苗搬送装置6及び植付装置7を駆動する原動機としてのエンジン9と、機体4の後方へ延設された操向ハンドル10と、操向ハンドル10の下方であって機体4の後方へ延設された補助ステップ11とを備えている。本例では、苗搬送装置6、植付装置7、及び覆土・鎮圧装置8が、苗を圃場に移植する移植手段であり、植付装置7におけるホッパ形植付爪7aや、覆土・鎮圧装置8が、側面視で後輪3の外周よりも後方又は後斜め下方に出っ張った出っ張り部位12である。なお、各図において、矢印Fは機体前側を指し示している。
【0014】
機体4は、図2に示すように、左右に延びる前輪支持フレーム15及び後輪支持フレーム16を備えており、両支持フレーム15,16は、畝幅等に応じて前輪2同士の間隔及び後輪3同士の間隔を調節可能とするため、左右両端側が左右方向に伸縮可能に構成されている。前輪支持フレーム15の両端部には、それぞれ前脚部17を介して前輪2が回転自在に軸支されている。後輪支持フレーム16の両端部には、それぞれ伝動ケース18を介して後輪3が軸支されている。
【0015】
後輪支持フレーム16は、左右一対の支持筒体21と、該両支持筒体内に回転自在に支持された伝動軸22とを備えており、エンジン9の駆動力が伝動軸22と伝動ケース18に内蔵された伝動機構(図示略)とを介して後輪3に伝動されるようになっている。支持筒体21及び伝動軸22は、それぞれ機体側方側が複軸からなる伸縮可能な構造となっている。そして、支持筒体21の長さを伸縮調節すると、それに連動して伝動軸22も伸縮するようになっており、支持筒体側に設けられた長さ固定ネジ23により、伸縮長さを固定するようになっている。図2(a)は支持筒体21及び伝動軸22を縮めて前輪2同士の間隔及び後輪3同士の間隔を狭めた状態、図2(b)は支持筒体21及び伝動軸22を伸ばして前輪2同士の間隔及び後輪3同士の間隔を拡げた状態をそれぞれ示している。支持筒体21及び伝動軸22における機体側方側と、機体4との間には、該機体側の抜け止め用のストッパ25が設けられている。ストッパ25は、可撓性を有する略棒体(本例ではピアノ線)からなり、その一端側が、支持筒体21の機体側方側に連結された伝動ケース18に固定されている。また、ストッパ25の他端側は、機体側面に設けられた係止穴26に機体内方側へ遊動可能に挿入されるとともに、該他端側先端には、該先端が係止穴26から抜けないようにする抜け止め部位25aが設けられている。本例では、支持筒体21をサポートするために該支持筒体21の後方に設けられた横フレーム27を中空状に形成し、該横フレーム27の端面に係止穴26を設けることにより、ストッパ25の他端側は、中空の横フレーム27内に収容されるようになっている。支持筒体21及び伝動軸22における機体側方側と機体4とをワイヤで連結してなる従来のストッパでは、支持筒体21を縮めたときに該ワイヤにたるみができて機械の取り扱いの邪魔になる欠点があるが、図2(a)に示すように本例のストッパ25にはこの欠点がない。
【0016】
また、図1及び図3に示すように、機体4の中央下部における重心位置の前後には、一対のスタンド30,31が配設されている。各スタンド30,31は、その上端部が、機体4から垂下した支持位置PS1と、機体前方に折りたたまれた折り畳み位置PS2との間で機体4に揺動可能にそれぞれ支軸30a,31aで軸支されている。そして、両スタンド30は、互いに連動して支持位置PS1及び折り畳み位置PS2になるようにリンク32で連結されるとともに、一方(本例では後側)のスタンド31が、バネ手段33により支持位置PS1及び折り畳み位置PS2のいずれかを保持するように付勢されている。このように両スタンド30が連動するように構成したので、機体4の前後に互いに独立した(連動しない)スタンドを設けた場合と比べ、操作性がよい。また、常時、機体4の前後2箇所で機体4を支持することができ、機体4の前後に互いに独立したスタンドを設けた場合と比べ、機体4に無理がかからない。このため、軽量な機体構造を採用することが可能となる。
【0017】
補助ステップ11は、図1及び図4に示すように、機体後端部に軸35aで上下回動可能に軸支された略U字状の回動フレーム35と、該回動フレーム35の後端部に取り付けられたステップ部材36と、回動フレーム35の位置を固定する位置固定部37とを備えている。本例の位置固定部は、固定ネジ37aで回動フレーム35の位置を固定するように構成されている。また、本例の補助ステップ11は、ステップ部材36が圃場表面Hに近接した高さにある使用位置PT1と、ステップ部材36が圃場表面Hから離れて上方に退避した退避位置PT2との間でのみ、回動フレーム35が回動可能になっており、位置固定部37により位置固定した状態で用いられる。移植作業中は、作業者が適宜補助ステップ11に足を掛けることができるように、補助ステップ11を使用位置PT1に固定しておく。補助ステップ11が使用位置PT1に固定されている場合において、例えば機体4を旋回させるために、作業者が操向ハンドル10を持って両後輪3を中心に機体4を後傾させたときは、補助ステップ11(本例では補助ステップ11の先端部)が出っ張り部位12よりも先に圃場表面Hに接地し、それ以上の後傾を阻止するようになっている。
【0018】
以上のように構成された本例の歩行型移植機1によれば、操向ハンドル10の下方であって機体4の後方へ延設された補助ステップ11を備えている。このため、畝幅が広い場合や、移植機1が複数の畝を跨いだ状態となっている場合、一方の車輪側を歩行する作業者は、補助ステップ11に片足をかけて畝上の機体4に体重を預けることができるので、移植機1における他方の車輪側に対する操作(例えば他方の車輪側の苗載台5に苗箱を供給)が行い易い。
【0019】
また、補助ステップ11は、両後輪3を中心に機体4を後傾させたときに、出っ張り部位12よりも先に圃場表面Hに接地し、それ以上の後傾を阻止するように構成されている。このため、機体4を後傾させすぎることを阻止することにより、出っ張り部位12が損傷することを防止できる。
【0020】
また、補助ステップ11は、前記後傾を阻止する使用位置PT1と、該後傾を阻止しない退避位置PT2との間で移動可能に、かつ、少なくとも使用位置PT1において位置固定可能に構成されているので、補助ステップ11を必要に応じて使用位置PT1及び退避位置PT2に適宜配置することができる。
【0021】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下に示すように発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)複数の補助ステップ11を設けること。
(2)回動フレーム35やステップ部材36の配設位置や、個数、サイズ、形状等を適宜変更すること。
(3)位置固定部37の構造を適宜変更すること。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明を具体化した一実施形態に係る歩行型移植機を示す側面図である。
【図2】同移植機の左前部の平面図であり、(a)は前輪同士の間隔及び後輪同士の間隔を狭めた状態、(b)は前輪同士の間隔及び後輪同士の間隔を拡げた状態をそれぞれ示す図である。
【図3】同移植機のスタンドの動作を示す図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
【図4】同移植機の背面図である。
【図5】従来の歩行型移植機の側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 歩行型移植機
2 前輪
3 後輪
4 機体
5 苗載台
6 苗搬送装置
7 植付装置
7a ホッパ形植付爪
8 覆土・鎮圧装置
9 エンジン
10 操向ハンドル
11 補助ステップ
12 出っ張り部位
35 回動フレーム
36 ステップ部材
37 位置固定部
H 圃場表面
PT1 使用位置
PT2 退避位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車輪により走行自在に支持された機体と、該機体に搭載された移植手段と、前記機体の後部に設けられて前記移植手段に供給する苗を載せる苗載台と、前記機体の後方へ延設された操向ハンドルとを備えた歩行型移植機であって、
前記操向ハンドルの下方であって前記機体の後方へ延設された補助ステップを備えた歩行型移植機。
【請求項2】
前記走行車輪は、左右一対の後輪を備え、
前記移植手段は、側面視で前記後輪の外周よりも後方又は後斜め下方に出っ張った出っ張り部位を有しており、
前記補助ステップは、前記両後輪を中心に前記機体を後傾させたときに、前記出っ張り部位よりも先に圃場表面に接地し、それ以上の後傾を阻止するように構成された請求項1記載の歩行型移植機。
【請求項3】
前記補助ステップは、前記後傾を阻止する使用位置と、該後傾を阻止しない退避位置との間で移動可能に、かつ、少なくとも前記使用位置において位置固定可能に構成された請求項2記載の歩行型移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−151518(P2007−151518A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355481(P2005−355481)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】