説明

歩行型農作業機

【課題】 歩行型農作業機の後部ヒッチにおいて、部品点数の削減や構造の簡略化を図ると共に、後部作業機を上げ下げする際の操作性を向上させ、更には、後部作業機を装着しない作業において後部ヒッチをコンパクトに収納できるようにする。
【解決手段】 後部ヒッチ11を跳ね上げ可能な歩行型農作業機1において、後部ヒッチ11は、ミッションケース2の後部に取付けられる固定ブラケット12と、該固定ブラケット12に単一の回動支軸13を介して上下回動自在に連結される可動ブラケット14と、該可動ブラケット14に設けられる作業機連結部15と、固定ブラケット12と可動ブラケット14との間に介設され、可動ブラケット14を作業姿勢又は跳ね上げ姿勢に向けて付勢する弾機16とを備えると共に、跳ね上げ姿勢の可動ブラケット14をハンドルフレーム7に沿わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミッションケースの前部に設けられる前部作業機に加え、ミッションケースの後部に後部作業機を装着可能な歩行型農作業機に関し、特に、後部作業機が装着される後部ヒッチを、作業姿勢と跳ね上げ姿勢とに変姿可能な歩行型農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
ミッションケースの前部に設けられる前部作業機に加え、ミッションケースの後部に後部作業機を装着可能な歩行型農作業機が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。この種の歩行型農作業機では、後部作業機が装着される後部ヒッチを、作業姿勢と跳ね上げ姿勢とに変姿可能とし、機体の旋回や移動に際して後部作業機を跳ね上げ操作する必要がある。これは、機体の旋回や移動に際し、前部作業機を上昇させるためにハンドルを下げ操作すると、後部作業機が土中に突入するからである。
【特許文献1】特開平10−225205号公報
【特許文献2】特開2004−215602号公報
【特許文献3】特開2001−238504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1、2に記載される後部ヒッチは、ミッションケースの後部に取付けられる固定ブラケットと、後部作業機が装着される可動ブラケットを、複数のリンクを介して昇降自在に連結し、いわゆる平行リンク機構を構成しているため、部品点数が多く、構造が複雑になるという問題がある。また、後部ヒッチが大型化するため、後部作業機を装着しない作業において、後部ヒッチが邪魔になる可能性がある。
【0004】
一方、特許文献3に記載される歩行型農作業機では、固定ブラケットと可動ブラケットを単一の回動支軸を介して連結しているため、部品点数が少なく、構造を簡略化することが可能であるが、可動ブラケットを作業姿勢や跳ね上げ姿勢に向けて付勢する弾機を備えていないため、後部作業機を上げ下げする際の操作性に問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、ミッションケースの左右両側方に設けられる車輪と、前記ミッションケースの後部から後上方に延出するハンドルフレームと、前記ミッションケースの前部に設けられる前部作業機と、前記ミッションケースの後部に設けられ、後部作業機を着脱自在に装着可能な後部ヒッチとを備えると共に、該後部ヒッチを、作業姿勢と跳ね上げ姿勢とに変姿可能な歩行型農作業機において、前記後部ヒッチは、前記ミッションケースの後部に取付けられる固定ブラケットと、該固定ブラケットに単一の回動支軸を介して上下回動自在に連結される可動ブラケットと、該可動ブラケットに設けられる作業機連結部と、前記固定ブラケットと前記可動ブラケットとの間に介設され、前記可動ブラケットを作業姿勢又は跳ね上げ姿勢に向けて付勢する弾機とを備えると共に、跳ね上げ姿勢の前記可動ブラケットを前記ハンドルフレームに沿わせることを特徴とする。このようにすると、固定ブラケットと可動ブラケットを平行リンクで連結する場合に比べ、部品点数の削減や構造の簡略化が図れ、しかも、可動ブラケットを作業姿勢や跳ね上げ姿勢に向けて付勢する弾機を備えるので、後部作業機を上げ下げする際の操作性も向上させることができ、更には、跳ね上げ姿勢の可動ブラケットをハンドルフレームに沿わせることにより、後部作業機を装着しない作業において、後部ヒッチが邪魔になる不都合を回避できる。
また、前記弾機は、圧縮コイルバネであることを特徴とする。このようにすると、引張りコイルバネを用いる場合に比べ、後部ヒッチを更にコンパクト化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は歩行型農作業機であって、該歩行型農作業機1は、機体フレームに兼用される側面視略へ字状のミッションケース2を備えている。ミッションケース2の後端部左右両側には、車軸3を介して車輪4が軸支され、また、ミッションケース2の前端部には、左右外側方に延出するロータリ耕耘軸(前部作業機)5が軸支されている。
【0007】
ミッションケース2の上部には、エンジン6が搭載されている。エンジン6は、テンションクラッチからなるメインクラッチ(図示せず)を介して、ミッションケース2に動力を入力している。ミッションケース2には、走行動力を変速する走行変速機構と、耕耘動力を変速する耕耘変速機構とを含むトランスミッションが内装されている。すなわち、本実施形態のミッションケース2は、エンジン6から車輪4に駆動力を伝動する走行伝動ケースと、エンジン6からロータリ耕耘軸5に駆動力を伝動する耕転伝動ケースとに兼用されている。
【0008】
ミッションケース2の後部には、後上方に向かって延出するハンドルフレーム7がボルト固定されている。ハンドルフレーム7の先端部には、平面視で略U字状に形成されるハンドル8の基端部がノブ付きボルト9を介して取り付けられている。ノブ付きボルト9を締めると、ハンドル8が固定される一方、ノブ付きボルト9を緩めると、ハンドル8の前後回動(折畳み)が許容される。
【0009】
更に、ミッションケース2の後部には、後部作業機10を着脱自在に装着可能な後部ヒッチ11が設けられている。例えば、図1に示すように、後部ヒッチ11に畝立器からなる後部作業機10を装着すると、前部作業機(ロータリ耕耘軸5)による耕耘作業と、後部作業機10による畝立作業を同時に行うことが可能になる。
【0010】
後部ヒッチ11は、作業姿勢と跳ね上げ姿勢とに変姿自在に構成され、機体の旋回や移動に際して後部作業機10の跳ね上げ操作を可能にしている。具体的に説明すると、本実施形態の後部ヒッチ11は、ミッションケース2の後部にボルト固定される固定ブラケット12と、固定ブラケット12に単一の回動支軸13を介して上下回動自在に連結される可動ブラケット14と、可動ブラケット14に設けられる作業機連結部15と、固定ブラケット12と可動ブラケット14との間に介設され、支点越えによって可動ブラケット14を作業姿勢又は跳ね上げ姿勢に向けて付勢する弾機16とを備えて構成されている。
【0011】
後部ヒッチ11をこのように構成すると、固定ブラケット12と可動ブラケット14を平行リンクで連結する場合に比べ、部品点数の削減や構造の簡略化が図れ、しかも、可動ブラケット14を作業姿勢や跳ね上げ姿勢に向けて付勢する弾機16を備えるので、後部作業機10を上げ下げする際の操作性も向上させることができる。尚、作業機連結部15は、上下方向を向くパイプであり、ここに後部作業機10側の連結バー10aを挿入し、これをピン15aで抜止めすることにより、後部作業機10が後部ヒッチ11に装着される。
【0012】
可動ブラケット14は、跳ね上げ姿勢のとき、ハンドルフレーム7に沿うように構成される。例えば、本実施形態では、可動ブラケット14を跳ね上げると、僅かな間隔を存して、可動ブラケット14とハンドルフレーム7が略平行な姿勢になる。このようにすると、可動ブラケット14とハンドルフレーム7の干渉を回避できるだけでなく、後部作業機10を装着せずに作業を行う際に後部ヒッチ11が邪魔になる不都合を回避できる。
【0013】
可動ブラケット14の上方への回動範囲は、上限ストッパ12aによって規制される。本実施形態の上限ストッパ12aは、固定ブラケット12の左右上端部を外方に曲折して形成され、可動ブラケット14の上端部に接当することにより、可動ブラケット14の回動規制を行う。上限ストッパ12aをこのように構成すると、専用のストッパ部材が不要になるので、部品点数の削減や構造の簡略化が図れるだけでなく、上限ストッパ12aによって固定ブラケット12の強度も高めることができる。
【0014】
また、可動ブラケット14は、平面視コ字状に形成され、弾機16の左右両側方を覆っている。このようにすると、弾機に塵埃や残渣が付着しにくいだけでなく、後部ヒッチ11の外観を向上させることができる。しかも、本実施形態の弾機16は、圧縮コイルバネで構成してあるため、引張りコイルバネを用いる場合に比べ、後部ヒッチ11を更にコンパクト化することができる。
【0015】
固定ブラケット12には、弾機16の一端を支持する軸部材17が左右方向を向いて貫通状に架設され、また、可動ブラケット14にも、弾機16の他端を支持する軸部材18が左右方向を向いて貫通状に架設されている。ここで、可動ブラケット14に設けられる軸部材18は、抜止めリング18aを用いて抜止めされる一方、固定ブラケット12に設けられる軸部材17は、可動ブラケット14の内側面を利用して抜止めされる。このようにすると、軸部材17を抜止めする専用の抜止め部材が不要になるので、部品点数の削減及び構造の簡略化が図れる。
【0016】
可動ブラケット14の外側面には、跳ね上げられた可動ブラケット14の下降をロックする下降ロック機構19が設けられている。これは、跳ね上げられた後部作業機10が勝手に下降することを防ぐためであり、所定のロック解除操作により後部作業機10の下降を許容することが要求される。本実施形態の下降ロック機構19は、固定ブラケット12に形成されるロック孔12bと、可動ブラケット14に出没自在に設けられ、可動ブラケット14が跳ね上げ姿勢に操作されたとき、ロック孔12aに係合するロックピン20と、該ロックピン20を係合方向に付勢する弾機21と、ロックピン20をロック解除操作(引張り操作)するための摘みプレート22とを備えて構成されている。
【0017】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、ミッションケース2の左右両側方に設けられる車輪4と、ミッションケース2の後部から後上方に延出するハンドルフレーム7と、ミッションケース2の前部に設けられる前部作業機(ロータリ耕耘軸5)と、ミッションケース2の後部に設けられ、後部作業機10を着脱自在に装着可能な後部ヒッチ11とを備えると共に、後部ヒッチ11を、作業姿勢と跳ね上げ姿勢とに変姿可能な歩行型農作業機1において、後部ヒッチ11は、ミッションケース2の後部に取付けられる固定ブラケット12と、該固定ブラケット12に単一の回動支軸13を介して上下回動自在に連結される可動ブラケット14と、該可動ブラケット14に設けられる作業機連結部15と、固定ブラケット12と可動ブラケット14との間に介設され、可動ブラケット14を作業姿勢又は跳ね上げ姿勢に向けて付勢する弾機16とを備えると共に、跳ね上げ姿勢の可動ブラケット14をハンドルフレーム7に沿わせるように構成したので、固定ブラケット12と可動ブラケット14を平行リンクで連結する場合に比べ、部品点数の削減や構造の簡略化が図れ、しかも、可動ブラケット14を作業姿勢や跳ね上げ姿勢に向けて付勢する弾機16を備えるので、後部作業機10を上げ下げする際の操作性も向上させることができ、更には、跳ね上げ姿勢の可動ブラケット14をハンドルフレーム7に沿わせることにより、後部作業機10を装着しない作業において、後部ヒッチ11が邪魔になる不都合を回避できる。また、弾機16は、圧縮コイルバネで構成されるため、引張りコイルバネを用いる場合に比べ、後部ヒッチ11を更にコンパクト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】歩行型農作業機の側面図である。
【図2】後部ヒッチの側面図である。
【図3】後部ヒッチの断面図である。
【図4】後部ヒッチを側方から見た斜視図である。
【図5】後部ヒッチを上方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0019】
1 歩行型農作業機
2 ミッションケース
4 車輪
5 ロータリ耕耘軸(前部作業機)
6 エンジン
7 ハンドルフレーム
10 後部作業機
11 後部ヒッチ
12 固定ブラケット
13 回動支軸
14 可動ブラケット
15 作業機連結部
16 弾機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミッションケースの左右両側方に設けられる車輪と、
前記ミッションケースの後部から後上方に延出するハンドルフレームと、
前記ミッションケースの前部に設けられる前部作業機と、
前記ミッションケースの後部に設けられ、後部作業機を着脱自在に装着可能な後部ヒッチとを備えると共に、
該後部ヒッチを、作業姿勢と跳ね上げ姿勢とに変姿可能な歩行型農作業機において、
前記後部ヒッチは、
前記ミッションケースの後部に取付けられる固定ブラケットと、
該固定ブラケットに単一の回動支軸を介して上下回動自在に連結される可動ブラケットと、
該可動ブラケットに設けられる作業機連結部と、
前記固定ブラケットと前記可動ブラケットとの間に介設され、前記可動ブラケットを作業姿勢又は跳ね上げ姿勢に向けて付勢する弾機とを備えると共に、
跳ね上げ姿勢の前記可動ブラケットを前記ハンドルフレームに沿わせることを特徴とする歩行型農作業機。
【請求項2】
前記弾機は、圧縮コイルバネであることを特徴とする請求項1記載の歩行型農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−333808(P2006−333808A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−163746(P2005−163746)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】