説明

残幹処理装置

【課題】 残幹処理機が傾斜面を進行する際のトップリンクの長さ調整を不要にし、残幹処理機が凹凸のある畝上を進行する際の掘起ロータによる掘り起こし深さを一定にする。
【解決手段】 残幹処理装置1は、走行機体10と、この後部に設けられた三点リンク連結機構11に装着部41を連結して走行機体10の進行によって進行方向前方側に向けて押し倒された残幹に対して残幹の根部を掘り起こすとともに根部側から引き込んで処理を施す残幹処理機40とを備える。装着部41に、三点リンク連結機構11のトップリンク11bに連結されるトップリンク連結部60を、上下方向に回動自在で且つ設定位置に固定可能に設ける。残幹処理機40の前側であって残幹処理機40の前部に設けられた掘起ロータ47の近傍位置に一対のゲージ輪を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畝に植えられた葉たばこ等の残幹を掘り起こして細断する処理を施す残幹処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
処理対象となる葉たばこや茶等は、葉部のみを収穫する作物である。このような作物は、収穫後に圃場の畝に根付いたままの幹が残されることになるが、新たに作物の栽培を行うためにはこの残幹を処理して畝を栽培可能な状態に戻す必要がある。この残幹処理の方法としては、残幹を土中に鋤き込むことが考えられるが、特に葉たばこ等は、残幹の根部に立ち枯れ病の菌が繁殖することが指摘されており、この残幹を根部ごと畝から引き抜いて回収することが推奨されている。
【0003】
この残幹の引き抜き作業は、従来は手作業で行なわれていたが、残幹から土壌に延びる根部は放射状に拡がっていて重労働であることから、これを機械化し、畝に植えられた残幹を回収処理する残幹処理装置が開発されている。
【0004】
このような残幹処理装置には、トラクタ等の走行機体と、これに取り付けられた三点リンク連結機構を介して連結された残幹処理機とを有してなるものがある。この残幹処理装置は、走行機体が畝上を進行して残幹を進行方向前方側に向けて押し倒して、残幹処理機がこの押し倒された残幹の根部を掘り起こすとともに根部側から引き込んで処理する。
【0005】
一方、三点リンク連結機構は、一般的に、左右方向に所定間隔を有して配設されて前後方向に延びる一対のロアリンクと、これらのロアリンク間の上方位置に配置されて前後方向に延びるトップリンクとを有してなり、これらのリンクの先端部に残幹処理機の装着部が取り付けられる。そして、一対のロアリンクは昇降装置によって上下方向に揺動されて、残幹処理機の前側に配設された掘起ロータを上下に移動させることができる。
【0006】
ここで、三点リンク連結機構には、ロアリンクの揺動角度が大きくなるとトップリンクの長さ調整をしなければ残幹処理機の作業姿勢を変えることができないという不都合がある。そこで、このような不都合を解消するために、図9(側面図)に示すように、装着部(文献では連結フレーム)41の頂部に三点リンク連結機構11のトップリンク11bを連結するトップリンク連結具70を回動自在で且つ設定位置固定可能に設けたものがある(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】実公平5−2025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した従来の残幹処理装置の三点リンク連結機構のトップリンクには、特許文献1に記載のトップリンク連結具が連結されておらず、トップリンクに装着部が直接的に装着されている。このため、残幹処理機が傾斜圃場において登り下り方向に形成された傾斜面を有した畝上を登る場合には、残幹処理機は後下がりの姿勢となり、掘起ロータは畝表面から離反する方向に移動しようとして、掘り起こし深さが浅くなる場合が生じる。一方、残幹処理機が畝上を下るときには、残幹処理機は前下がりの姿勢となり、掘起ロータは畝内に入り込もうとして、掘り起こし深さが深くなる場合が生じる。このため、従来の残幹処理装置では、畝が傾斜する場合には掘起ロータによる掘り起こし深さが一定にならないのを考慮して、畝の傾斜に応じてトップリンクの長さを予め調整する必要があり、作業者にとってこの調整作業は煩わしいという問題がある。
【0009】
また従来の残幹処理装置は、凹凸のある畝上を進行すると、掘起ロータによる掘り起こし深さが変化して残幹をスムースに引き込むことができなくなる虞があるという問題を有する。
【0010】
本発明は、残幹処理機が傾斜圃場を進行する際にトップリンクの長さ調整が不要であり、また残幹処理機が凹凸のある畝上を進行する際に掘起ロータによる掘り起こし深さが変化しないことが要求されており、このような要求に応える残幹処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明の残幹処理装置は、処理対象の残幹が植えられた畝を跨いで進行する走行機体と、該走行機体の三点懸架機構に装着部を連結し走行機体の進行によって進行方向前方側に向けて押し倒された残幹に対して該残幹の根部を掘り起こすとともに該根部側から引き込んで処理を施す残幹処理機と、を備える残幹処理装置であって、装着部に、三点懸架機構(例えば、実施形態における三点リンク連結機構11)のトップリンクに連結されるトップリンク連結部を、上下方向に回動自在で且つ設定位置に固定可能に設けたことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、装着部に、三点懸架機構のトップリンクに連結されるトップリンク連結部を、上下方向に回動自在で且つ設定位置に固定可能に設けることにより、トップリンクの先端部をフリーな状態にすることができ、その結果、トップリンク連結部を介して連結された残幹処理機の前側を容易に上下方向に移動させることができる。このため、残幹処理機が傾斜した畝上を登り下りする場合、登りのときは掘起ロータが畝から離れる方向に移動して掘り起こし深さが浅くなり、下りのときは掘起ロータが畝内に入り込む方向に移動して掘り起こし深さが深くなる場合があるが、登りのときには三点懸架機構のロアリンクを予め下方に揺動させ、下りのときにはロアリンクを予め上方に揺動させておくことで、残幹処理機が傾斜面を登り下りする場合でも、掘起ロータによる掘り起こし深さを許容範囲内にすることができる。その結果、傾斜した畝を処理する場合に、畝の傾斜に応じてトップリンクの長さ調整をすることなく、深さが略一定となる畝の掘り起こしを行うことができる。
【0013】
また本発明は、残幹処理機に、高さ調整可能な左右一対又は複数対のゲージ輪を設けたことを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、残幹処理機に高さ調整可能な左右一対又は複数対のゲージ輪を設けることにより、畝に対する残幹処理機の高さを所望の大きさに調整することができる。
【0015】
また本発明の残幹処理機は、ゲージ輪の上下位置とトップリンク連結部の回動位置とを調整することによって、所定の作業姿勢に設定可能であることを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、残幹処理機はゲージ輪の上下位置とトップリンク連結部の回動位置とを調整して所定の作業姿勢に設定可能にすることにより、ゲージ輪を残幹処理機に対して上側に移動させた状態で三点懸架機構のロアアームを下方に揺動すると、残幹処理機が下方へ移動してゲージ輪が接地し、トップリンク連結部が前後方向に延びる方向に回動して、残幹処理機はゲージ輪の回転中心を回動支点として下方へ回動し、残幹処理機は後下がりの姿勢になる。その結果、残幹処理機の後部に取り付けられて残幹を収容する収容部の下面を容易に畝表面に置くことができ、収容部の取り外し作業を容易にすることができる。
【0017】
さらに本発明は、ゲージ輪を取り付ける残幹処理機の取付部が、非作業時に残幹処理機を支持可能なスタンドを取り付け可能であることを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、ゲージ輪を取り付ける残幹処理機の取付部にスタンドを取り付け可能にすることにより、スタンドを取り付けるための専用の取付部が不要となり、残幹処理機の部品点数が減少して残幹処理機全体のコストを安価にすることができる。
【0019】
また本発明は、残幹処理機の前側に設けられた一対のゲージ輪が、残幹処理機の前部に設けられた掘起ロータの近傍位置に配設されることを特徴とする。
【0020】
この発明によれば、残幹処理機の前側に設けられた一対のゲージ輪を掘起ロータの近傍位置に配設することにより、畝に対する掘起ロータの位置を略一定にすることができる。このため、残幹処理機が凹凸のある畝上を進行する場合でも、掘起ロータによる掘り起こし深さを略一定にすることができ、残幹をスムースに引き込んで残幹処理作業の作業性をより向上させることができる。
【0021】
また本発明は、走行機体に、該走行機体の進行によって進行方向前方側に向けて押し倒された残幹を機体幅方向中央寄りに誘導する誘導装置を設けたことを特徴とする。
【0022】
この発明によれば、走行機体に残幹を機体幅方向中央寄りに誘導する誘導装置を設けることにより、進行方向前方側に向けて押し倒された残幹の殆ど全ての部分を走行機体の進行方向と略同一方向にすることができる。このため、残幹が機体内に引き込まれる動作がよりスムースになり、残幹処理作業の作業性をさらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係わる残幹処理装置によれば、装着部に、三点懸架機構のトップリンクに連結されるトップリンク連結部を、上下方向に回動自在で且つ設定位置に固定可能に設け、残幹処理機の前側に設けられた一対のゲージ輪を残幹処理機の前部に設けられた掘起ロータの近傍位置に配設することにより、残幹処理機が傾斜面を進行する際にトップリンクの長さ調整が不要であり、また残幹処理機が凹凸のある畝上を進行する際に掘起ロータによる掘り起こし深さが変化しない残幹処理装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係わる残幹処理装置の好ましい実施の形態を図1から図8に基づいて説明する。本実施の形態は、各種の残幹処理装置のうち、葉たばこ、ひまわり及びトウモロコシ等の残幹を処理する残幹処理装置を例にして説明する。
【0025】
残幹処理装置1は、図1(側面図)に示すように、処理対象の残幹が植えられた畝Uを跨いで進行する走行機体10と、この走行機体10の後部に設けられた三点リンク連結機構11に装着部41を連結して走行機体10の前進走行によって進行方向前方側に向けて押し倒された残幹に対して残幹の根部を掘り起こすとともに根部側から引き込んで処理を施す残幹処理機40とを備える。
【0026】
走行機体10は、車体12の前後に前輪13及び後輪14を配設して走行可能であり、車体前部にエンジン(図示せず)が搭載され、車体後部に運転キャビン15が設けられている。車体12の前端部には、走行機体10の前進走行によって進行方向前方側に向けて押し倒された残幹を機体幅方向中央寄りに誘導する誘導装置20が取り付けられている。誘導装置20は、図4(a)(平面図)に示すように、車体12の前端部に取り付けられて前方へ延びる支持枠体21と、支持枠体21の前側に配設されて機体幅方向に延びる誘導部材22とを有してなる。誘導部材22は機体幅方向内側に進むに従って後方側に延びて平面視において逆く字状に形成されている。
【0027】
走行機体10に設けられた三点リンク連結機構11は、図1に示すように、機体幅方向に所定間隔を有して配設されて後方側に延びて上下方向に回動自在に取り付けられた一対のロアリンク11aと、これらのロアリンク11a間の上方位置に配置されて後方側に延びて上下方向に回動自在に取り付けられたトップリンク11bと、ロアリンク11aを上下方向に揺動させる昇降装置(図示せず)とを有してなる。これらのリンクの先端部に前述した残幹処理機40の装着部41が取り付けられている。昇降装置は、運転キャビン15内に設けられた操作装置(図示せず)によって操作されてロアリンク11aの揺動角度の調整が可能である。
【0028】
残幹処理機40は、処理対象の残幹が植えられた畝を跨いで進行する機体フレーム42と、機体フレーム42に搭載されて残幹処理作業を施す残幹処理部45とを備える。
【0029】
残幹処理部45は、進行方向前方に向けて押し倒された残幹に対して、残幹の根部を掘り起こすと共に根部側から残幹を機体内に引き込む掘起部46と、引き込まれた残幹を搬送して細断して送り出す切断装置48と、細断されて送り出された残幹の断片を収容する収容部50とを有してなる。
【0030】
機体フレーム42の前側に前述した装着部41が設けられている。装着部41は、機体フレーム42の前側上部に配設されて前方側に延びてトップリンク11bと連結されるトップマスト41aと、機体フレーム42の前側両側部に配設されて一対のロアリンク11aと連結されるサイドマスト41bとを有してなる。装着部41の上側の中央部には、入力軸52aを備えた入力部52が設けられている。入力軸52aは、走行機体10のPTO軸10aからの動力が図示しない伝動軸を介して伝達されるようになっている。
【0031】
機体フレーム42の後側下部には左右一対のゲージ輪55が回転自在に設けられている。ゲージ輪55は、上下方向に延びる支持部材56の下端部に回転自在に取り付けられ、支持部材56は、機体フレーム42の後側の側部に設けられた取付部43に固定された状態で取り付けられている。
【0032】
掘起部46は、装着部41の下方に配置された掘起ロータ47を備える。掘起ロータ47は、機体幅方向に回転動自在に支持された回転駆動軸(図示せず)に放射状に取り付けられた複数の掘起爪47aを有してなり、前述した入力部52に入力された駆動力を受けて掘起爪47aが残幹の根部を下側から上側へすくい上げる矢印A方向(以下、アップカット方向)に回転するように構成されている。このため、掘起ロータ47が回転すると、残幹の根部は下側から上側へすくい上げられて掘り起こされると共に、掘起爪47aの回転方向下流側に引き込まれるようにして搬送される。
【0033】
切断装置48は、掘起ロータ47によって機体内に引き込まれた残幹を細断する切断ロータ48aを備える。切断ロータ48aは、前述した入力部52aに入力された駆動力を受けて回転するように構成されている。切断ロータ48aによって細断された残幹は、切断装置48の後側上部に設けられたシュータ58を通って収容部50に搬送される。
【0034】
収容部50は、機体フレーム42の後部に設けられた支持体53に掛止可能に取り付けられる。収容部50は、フレキシブルな材料(例えば、合成樹脂材料等)で形成されて有底容器状であり、上部に開口する開口部の周縁部が支持体53に掛止されて吊り下げられた状態で保持される。
【0035】
このように構成された残幹処理機40の装着部41のトップマスト41aの先端部には、トップリンク連結部60が上下方向に回動自在で且つ設定位置に固定可能に設けられている。トップリンク連結部60は棒状部材であり、その基端側がトップマスト41aの先端部に枢結されて上下方向に回動自在であり、先端部がトップリンク11bに回動自在に取り付けられている。このため、ロアリンク11aを上下方向に揺動させると、残幹処理機40はゲージ輪55の回動中心Oを回動支点として前側が上下方向に移動する。
【0036】
さらに詳細には、ロアリンク11aを上方へ揺動させると、図2(側面図)に示すように、ロアリンク11aの先端部は、ロアリンク11aの回動中心Pを回動支点としロアリンク11aの長さを回動半径としたときのロアリンク11aの先端部が描く回動軌跡に沿って上側に移動する。このため、ロアリンク11aの先端部は、移動前の位置に対して上方且つ前側位置に移動する。これと同時に、トップマスト41aの先端部は、ゲージ輪55の回転中心Oを回動支点として後方側に移動する。このため、トップリンク連結部60の回動支点Qは走行機体10から後側へ離反する方向に移動する。その結果、トップリンク連結部60の回動支点Qの位置が走行機体10から遠ざかることになり、この遠くなる距離分の長さを補うために、トップリンク連結部60は下方へ回動して走行機体10側へ延びた姿勢になる。このため、ロアリンク11aの上方への揺動が規制されることはなく、掘起ロータ47を大きなリフト量で上方に移動させることができる。
【0037】
一方、ロアリンク11aを下方へ揺動させると、図3(側面図)に示すように、ロアリンク11aの先端部は、ロアリンク11aの回動中心Pを回動支点としロアリンク11aの長さを回動半径としたときのロアリンク11aの先端部が描く回動軌跡に沿って下側に移動する。このため、ロアリンク11aの先端部は、移動前より下方且つ後側位置に移動する。これと同時に、トップマスト41aの先端部は、ゲージ輪55の回転中心Oを回動支点として前側に移動する。つまり、トップリンク連結部60の回動中心Qは走行機体10に接近する方向に移動する。このため、この接近する距離の分を打ち消すために、トップリンク連結部60は上方へ回動する。その結果、ロアリンク11aの下方への揺動が規制されることはなく、掘起ロータ47を大きなリフト量で下方に移動させることができる。
【0038】
トップリンク連結部60の基端部にはロックピン(図示せず)を通すためのロック孔(図示せず)が設けられており、またトップマスト41aの先端部にはロック孔に挿通されたロックピンを通すための貫通孔(図示せず)が上下方向に所定間隔を有して複数設けられている。このため、ロック孔を複数の貫通孔のいずれかに連通させた状態でこれらの孔にロックピンを挿通することにより、トップリンク連結部60をトップマスト41aの先端部の設定位置に固定することができる。
【0039】
次に、本発明に係わる残幹処理装置1によって畝Uに植えられた残幹Zの残幹処理作業を行う動作について説明する。図4(a)(平面図)及び(b)(側面図)に示すように、先ず、走行機体10の後部に残幹処理機40を装着し、走行機体10が畝Uを跨ぐことができる位置に走行機体10を設置する。そして、走行機体10を畝Uに沿って前進走行させるとともに、走行機体10からの動力を残幹処理機40の入力部52に伝達させる。残幹処理機40に動力が伝達されると、掘起ロータ47はアップカット方向(矢印A方向)に回転し、切断装置48が駆動する。
【0040】
そして、このような状態で走行機体10が前進走行すると、残幹Zの茎部Zkは走行機体10の前進走行によって前側に向けて押し倒される。ここで、前側に向けて押し倒された残幹Zの茎部Zkが左右方向に傾いていると、この茎部Zkは誘導部材22によって傾きが矯正されて機体幅方向中央寄りに誘導される。このため、残幹Zは左右方向に傾きの小さい状態で機体内に引き込まれることになり、残幹Zの機体内への引き込みを確実にすることができる。
【0041】
誘導部材22によって傾きが矯正された残幹Zは、掘起ロータ47によってその根部Znが下側から上側へすくい上げられて掘り起こされると共に、根部Znが先行するようにして掘起爪47aの回転方向下流側に引き込まれる。そして、残幹Zは、切断装置48によって細断され、シュータ58内を通って収容部50に収容される。このようにして、畝Uに植えられた残幹Zは走行機体10の前進走行とともに連続的に処理される。
【0042】
次に、残幹Zが植えられた畝Uが傾斜している場合の残幹処理作業について説明する。先ず、残幹処理装置1が登り下り方向に形成された傾斜面を有した畝U上を登りながら処理を行う場合について説明する。登りのときは、残幹処理機40は後下がりの姿勢になり、掘起ロータ47は畝Uから離れる方向に移動して掘り起こし深さが浅くなる。このため、残幹Zの根部Znの掘り起こしが不十分となって残幹Zのスムースな引き込みが困難となり、処理の作業性が低下する虞が増大する。一方、下りのときは掘起ロータ47が畝U内に入り込む方向に移動して掘り起こし深さが深くなり、牽引抵抗が増大して所望の作業速度が低下する虞が増大する。
【0043】
このように畝Uが傾斜している場合、本発明の残幹処理装置1では、登りのときには三点リンク連結機構11のロアリンク11aを予め下方に揺動させ、下りのときにはロアリンク11aを予め上方に揺動させておくことで、残幹処理機40が傾斜面を登り下りする場合でも、掘起ロータ47による掘り起こし深さを許容範囲内にすることができる。その結果、畝Uが傾斜していても、トップリンク11bの長さ調整を不要にすることができる。
【0044】
なお、前述した実施の形態では、ゲージ輪55は機体フレーム42の後側下部に設けた場合を示したが、図5(側面図)に示すように、機体フレーム42の前側下部であって掘起ロータ47の近傍位置に、左右一対のゲージ輪55'をさらに設けてもよい。ゲージ輪55'は上下方向に延びる支持部材56の下端部に回転自在に支持され、支持部材56は、機体フレーム42の前側の側部に設けられた取付部43'に取り付けられる。取付部43'は上下方向に貫通する挿着孔を有し、この挿着孔に支持部材56を挿通してロックピン(図示せず)によって支持部材56を固定する。
【0045】
このように、一対のゲージ輪55'を掘起ロータ47の近傍位置に配設することにより、図6(側面図)に示すように、畝Uに対する掘起ロータ47の位置を略一定にすることができる。このため、残幹処理機40が凹凸のある畝上を進行する場合でも、掘起ロータ47による掘り起こし深さを略一定にすることができ、残幹をスムースに引き込んで残幹処理作業の作業性をより向上させることができる。
【0046】
また図7(側面図)に示すように、取付部43'にスタンド63を取り付けてもよい。このスタンド63は取付部43'に挿着可能な支持部材56の下端部にキャスタ64を回動自在に取り付けて構成されている。つまり、取付部43'は、前述した図6に示すゲージ輪55'とスタンド63のいずれも装着可能である。このため、スタンド63を取り付けるための専用の取付部を設ける必要が無く、残幹処理機40の部品点数が減少して残幹処理装置1全体のコストを安価にすることができる。また非作業時において、残幹処理機40を走行機体10から離した状態での移動を容易にすることができる。
【0047】
また前述した実施の形態では、ゲージ輪55を機体フレーム42の後側下部に固定した状態で設けた場合を示したが、この左右一対のゲージ輪55を、図8(a)(側面図)及び(b)(側面図)に示すように、機体フレーム42に対して上下位置調整可能に設けてもよい。即ち、機体フレーム42の後側部に取り付けられた取付部43に上下方向に所定間隔を有して複数の貫通孔を配設し、ゲージ輪55を回転自在に支持する支持部材56に貫通孔に連通可能な挿通孔を設け、取付部43に支持部材56を上下位置調整して挿着し、連通した貫通孔と挿通孔にロックピンを挿着することで、ゲージ輪55を機体フレーム42に対して所望の上下位置に固定することができる。
【0048】
このようにゲージ輪55を機体フレーム42の後部に上下位置調整可能に設けることにより、トップリンク連結部60の回動位置調整と相まって、残幹処理機40を所定の作業姿勢に設定することができる。例えば、ゲージ輪55を機体に対して上方位置に位置調整した状態で三点リンク連結機構11のロアアーム11bを下方に揺動すると、残幹処理機40の前側上部は走行機体10から後側に離反する方向に移動してトップリンク連結部60は下方へ回動して前後方向に延びる姿勢になる。このため、残幹処理機40は後下がりの姿勢となり、その結果、残幹処理機40の後部に取り付けられた収容部50の下面を容易に畝U表面に置くことができ、収容部50の取り外し作業を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態に係わる残幹処理装置の側面図を示す。
【図2】残幹処理装置に設けられたトップリンク連結部の動作を説明するための残幹処理装置の側面図を示す。
【図3】残幹処理装置に設けられたトップリンク連結部の動作を説明するための残幹処理装置の側面図を示す。
【図4】残幹処理装置に設けられた誘導装置を示し、同図(a)は誘導装置の平面図であり、同図(b)は誘導装置の側面図である。
【図5】残幹処理機の他の実施の形態を示す側面図である。
【図6】この他の実施の形態の残幹処理機の動作を説明するための側面図である。
【図7】残幹処理機の他の実施の形態を示す側面図である。
【図8】残幹処理機の他の実施の形態を示す側面図である。
【図9】従来の装着部に取り付けられたトップリンク連結部の側面図を示す。
【符号の説明】
【0050】
1 残幹処理装置
10 走行機体
11 三点リンク連結機構(三点懸架機構)
11b トップリンク
20 誘導装置
40 残幹処理機
41 装着部
43' 取付部
47 掘起ローラ
55,55' ゲージ輪
60 トップリンク連結部
63 スタンド
U 畝
Z 残幹
Zn 根部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象の残幹が植えられた畝を跨いで進行する走行機体と、該走行機体の三点懸架機構に装着部を連結し前記走行機体の進行によって進行方向前方側に向けて押し倒された残幹に対して該残幹の根部を掘り起こすとともに該根部側から引き込んで処理を施す残幹処理機と、を備える残幹処理装置であって、
前記装着部に、前記三点懸架機構のトップリンクに連結されるトップリンク連結部を、上下方向に回動自在で且つ設定位置に固定可能に設けたことを特徴とする残幹処理装置。
【請求項2】
前記残幹処理機に、高さ調整可能な左右一対又は複数対のゲージ輪を設けたことを特徴とする請求項1に記載の残幹処理装置。
【請求項3】
前記残幹処理機は、前記ゲージ輪の上下位置と前記トップリンク連結部の回動位置とを調整することによって、所定の作業姿勢に設定可能であることを特徴とする請求項2に記載の残幹処理装置。
【請求項4】
前記ゲージ輪を取り付ける前記残幹処理機の取付部は、非作業時に前記残幹処理機を支持可能なスタンドを取り付け可能であることを特徴とする請求項2又は3に記載の残幹処理装置。
【請求項5】
前記残幹処理機の前側に設けられた一対のゲージ輪は、前記残幹処理機の前部に設けられた掘起ロータの近傍位置に配設されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の残幹処理装置。
【請求項6】
前記走行機体に、該走行機体の進行によって進行方向前方側に向けて押し倒された残幹を機体幅方向中央寄りに誘導する誘導装置を設けたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の残幹処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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