説明

毛細管力による微小力センサー、その評価法と評価装置

【課題】毛細管力による微小力センサー、その評価法と評価装置を提供する。
【解決手段】対向して接触する2物体AとBの間に発生する微小力の評価法であって、(1)A又はBを支持する所定のバネ定数のバネ状物質が存在すると想定し、AとBが脱離した際に発生する振動数と変位量と、AとBの質量に基づいてバネ定数を算出する、(2)A及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させ、A又はB、C又は複数のC群同士の間の一部とが、脱離した際に発生する変位量に基づいて微小力を算出する、ことを特徴とする微小力の評価法、その微小力センサー又はその評価装置。
【効果】粒子同士の付着力を実測値により評価できる、微小力の評価法、微小力センサー及びその評価装置を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子1個に働く微小力のセンサー、その評価法と評価装置に関するものであり、更に詳しくは、粒子同士の付着力を実測値により評価でき、微小力の標準物質や標準化法を実現できる微小力のセンサー、その評価法と評価装置に関するものである。本発明は、従来の汎用的な粉体層(即ち、個々の粒子の集合体)の付着性・流動性の間接的なセンサーや評価法(剪断試験法や破断試験法など)、粒子1個に働く付着力のセンサーや評価法(遠心分離法や衝撃分離法、原子間力顕微鏡など)では不可能であった、(1)粒子1個に働く付着力などの粉体特性の直接評価と、その付着・凝集・分散状態を評価装置内で再現すること、(2)粒子1個に働く付着力が1mN以下(好適には、10nN以下)で評価可能なこと、(3)評価必要時間(試料調製から測定値検出までに要する時間)が数10分以下で評価可能なこと、(4)数ミクロン以下の粒子1個に働く数μNレベル(好適には、10nN以下)の付着力の絶対値を担保する校正法、(5)極微量(例えば、液状物質1滴程度)の表面張力や粘度などを評価する方法、の5つの課題の全てを同時に達成し、特に試料が自由に運動することが必須の粒子同士の付着力評価に好適で、更には、微小力の標準化法や標準物質を実現できる新規な微小力センサー、その評価法と評価装置を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
粒子に働く微小力は、コピー機用トナーとキャリアや、ディスプレー材料のスペーサーとパネル、電子ペーパー粒子とパネル、医薬品のキャリアと薬品、化粧品の雲母粒子と表面改質材などの間の相互作用、印字用インクの表面張力や粘度に起因する微小力、付着力、粒子を圧壊する際に発生する破壊力、凝集体を解砕する際に必要な凝集解砕力など、汎用材料や先進材料を問わず多用されている、重要な材料特性の制御因子、或いは、評価因子である。例えば、化粧品の光学特性向上を図る制御/評価指標として、粉体層の剪断試験法や、比表面積や帯電量、雲母粒子の粒子径とアスペクト比(雲母粒子最大長と厚みの比)の比、親水/疎水バランス、電子顕微鏡観察、篩い分けや静電気評価などの粉体単位操作による粉体重量の変化など、様々な物理量や評価法が、材料種やメーカーによっても種々のバリエーションをもって用いられている。
【0003】
しかし、これらの微小力センサー、その評価法と評価装置は、知的資産の蓄積と利用の点で甚だ効率が悪く、個々の開発が、局所かつ単発で終る、という問題点があった。特に、電子ペーパーなどのディスプレー材料を代表とする、電子材料などの先進材料系では、粒子1個に働く付着力の大きさが材料特性に直接的に反映する上、ナノテクノロジーの発達を背景に、扱う粒子の大きさの微細化や、評価試料の絶対量の微量化が進展している状況では、粒子1個に働く付着力などの粉体特性を構成する個々のミクロな因子の定量化が必須である。しかし、粉体層で得られた数値を重量や表面積などで規格化した計算値では、因子を複数個、同時に内包した曖昧かつ総花的な指標に留まっており、制御又は評価指標としては使用に耐えない。粒子1個に働く付着力の計測可能な新規微小力センサー、その評価法と評価装置が切望されている(以上、例えば、非特許文献1)。
【0004】
従来の、汎用的かつ最も多用されている付着力などの微小力のセンサー、その評価法と評価装置は、粒子1個に働く付着力の直接測定で得られた生データではなく、個々の粒子の集合体である粉体層(所謂バルク粉体層)を対象とし、粉体層で得られた数値を重量や表面積で規格化するものであった。即ち、それらは、計算値であり、直接測定で得られた生データではない方法や装置である。それらの事例として、例えば、堆積した粉体層の自由表面と水平面とが成す角度である安息角や、スパチュラ角や差角、ISO企画化も行われたJenikeセルによる剪断応力試験法、Mohr応力円の破壊包絡線を基に計算する内部摩擦角、Carrの提唱に基づいた流動性と噴流性に係る経験的指数、重量又は体積基準での固め・緩め嵩密度、両者の比である圧縮度、引張り破断試験法、錠剤破断試験法、曲げ試験法などが例示される。
【0005】
更に、粉体層や粉体群では、上記とは別種の粉体特性を用いて、付着力や付着・凝集・分散特性を表現しようとする手法も提案されている。それらの事例として、例えば、光回折/散乱法などによる粒子径分布、気体置換法などによる粉体真密度や比表面積、粉体充足度などの形状係数や形状指数などの粒子の幾何学的形状指標、濡れ性や接触角、ファラデーケージ法などによる粉体と壁面との接触電位差、液状物質を分散媒としたゼータ電位、粉体充填理論に基づく配位数と空間率の理論的指標群などがある。
【0006】
以上の方法は、評価試料数を一定レベル以上に増やせば(例えば、確率論的検討によれば、数1000回以上)、熟練度や測定者による差異性を除外することが可能で、利便性やコスト面の優位性は比較的高いと考えられているようである(例えば、非特許文献2)。しかし、これらの微小力センサー、その評価法と評価装置は、粉体層で得られた数値を重量や表面積で規格化した計算値であり、それらは、粒子1個に働く付着力などの粉体特性を構成する個々のミクロ因子を、複数個、同時に内包した、曖昧かつ総花的な指標であって、定性的な指標以上の意味を持たないという問題点があった。
【0007】
更に、以上の方法は、粉体層の規格化の際、(1)「真球」状(例えば、真円仮定によるHeywood径の仮定など)、(2)単一の粒子径(即ち、粒子径の分布すら持たないという仮定)、(3)(例え粒子径分布を想定したとしても)単分散状態である、などの理想的な仮定を行う必要があった。しかし、現実に存在する粉体は、非球状(不定形)、かつ多ピークで広域(ブロード)な粒子径分布、を有するのが通常であって、真球などの仮定は、非現実的であり、その結果、上記の評価法群は、定量的数値としては信頼性が非常に低かった。
【0008】
更に、上記の評価法群の前提条件として、粉体層で得られた数値を重量や表面積で規格化するためには、真球などの理想的な充填(即ち、近接する粒子同士の配位数が数学モデルで近似可能なこと)を仮定することが必須である。しかし、上記のように、真球などの仮定が事実と異なるということは、得られた物理量(方法)が本質的に誤りを含む(これを「情報が希釈されている」と言う)という事実を表し、それらの値には、定性的な指標以上の意味を持たない、という問題点があった。
【0009】
更なる問題点として、特に剪断応力試験法などでは、粉体層を変形(圧密など)する必須工程に係る前提条件として、粉体層を構成する粒子が変形しない(即ち、剛体である)と仮定することが必須となる。しかし、実際には、実存する粒子を剛体と仮定することは非現実的である。しかも、粒子の塊(凝集体、二次粒子など)を評価する場合もあり、この場合、容易にその形態が崩壊することを考慮する必要があるが、これには、上記の評価法群では、対応できない。
【0010】
仮に、上述のような本質的な問題点を度外視するとしても、熟練度や測定者による差異性を除外し、物理量に対する信頼性を高める方法として、確率論的手段しか所与されておらず、そのような方法は、(大学などの研究領域の評価技術としては別にしても)本発明で目的とする、電子セラミックスなどの製造現場の品質管理技術としては、長大な評価時間を要し、この点でも非実現的である(以上、例えば、非特許文献2、非特許文献3)。
【0011】
従来の、汎用的で、粉体層(バルク粉体)を対象とした付着力などの微小力のセンサー、その評価法と評価装置の中でも、上記の評価法群よりも少ない量の粉体層を対象とすることが可能で、かつ、「粒子1個に働く微小力」の計測が(理念的には)可能と考えられている微小力センサー、その評価法と評価装置として、例えば、振り子式衝撃分離法、遠心分離法、振動分離法、振り子法、スプリングバランス法、画像解析法、などがあった。これらの方法のうち、例えば、遠心分離法は、基板上物質からの試料(粒子など)の遠心力による離脱が、付着力に相関すると仮定して、個々の粒子に働くミクロな付着力評価を実施しようとする方法である。
【0012】
以上の方法も、評価試料数を一定レベル以上に増やせば(例えば、確率論的検討によれば、数1000件以上)、熟練度や測定者による差異性は除外することが可能で、評価時間を度外視すれば、利便性やコスト面の優位性は比較的高いと考えられている(例えば、非特許文献2)。しかし、これらの微小力センサー、その評価法と評価装置の場合も、やはり粉体層で得られた数値を重量や表面積で規格化した計算値であることは、上記の評価法群と同様であって、曖昧かつ総花的な指標という問題点は、解消されなかった。
【0013】
更に、これらの方法でも、上記の剪断応力試験法などの評価法群と同様、(1)「真球」状(例えば、Heywood径など)、(2)単一の粒子径、(3)(例え粒子径分布を想定したとしても)単分散、などの仮定を行う必要がある。例えば、上記の評価法群の代表的存在の遠心分離法は、真密度を求め、真球の仮定により求まるHeywood径から算出した真球の体積から、質量、そして、最終的に、遠心力を計算する方法である。この評価法で、真球の仮定を行うことは、遠心力による基盤との離脱を仮定するためにも、必須である。
【0014】
しかし、実際には、実在する粒子を真円や真球と仮定することは、上記のように、非現実的である。しかも、この場合、基盤との離脱には、粒子の外形を巨視的に見た粒子形態や、粒子の表面を微視的に見た表面粗さが(当然のことながら)多大な影響を及ぼすが、このような基本的な粉体特性すら、この評価法では全く評価することができない。即ち、上記の評価法群の前提として、粉体層で得られた数値を重量や表面積で規格化するためには、真球などの理想的な形態を仮定することが必須である。しかし、真球などの仮定が事実と異なるということは、得られた物理量(方法)が本質的に誤りを含む(即ち、情報が希釈されている)ということであり、それらは、定性的な指標以上の意味を持たない、という問題点があった。
【0015】
仮に、上述のような本質的な問題点を度外視するとしても、熟練度や測定者による差異性を除外し、物理量に対する信頼性を高める方法として、確率論的手段しか所与されておらず、それらの方法は、本発明で目的とする、電子セラミックスなどの製造現場の品質管理技術としては、長大な評価時間を要し、非実現的である(以上、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4)。
【0016】
3番目の既往評価法として、粒子1個に働く付着力などの微小力を計測可能な微小力センサー、その評価法と評価装置として、数100ミクロンのガラス球をガラス繊維で吊るして電子天秤で測定する荒川らの先駆的な試み(非特許文献5)に始まり、(その原理を機械構造化したものと考えることができる)近年の原子間力顕微鏡(AFM)、トンネル顕微鏡(STM)、レーザ力測定装置(SFA)、磁気力顕微鏡(MFM)、摩擦力顕微鏡(LFM)など、試料表面と、探針(カンチレバー、プローブなど)表面間との分子間力などの表面相互作用を検知機構とし、探針の変位量をレーザなどの光学的手法で測定する、微小力センサー、その評価法と評価装置がある。これらの方法及び装置には、大気中・液体中・真空中を問わず測定が可能で、1ミクロン程度の微細な粒子1個に働く、数μNレベルの付着力の評価が可能である、という利点があった。
【0017】
しかし、これらの微小力センサー、その評価法と評価装置は、探針に試料(粒子など)を、探針と試料との付着力以外の手段で、固定(薬品による接着など)する手段を必須とする。その結果、これらの手段は、現実の試料状態とは異なり、試料が自由に運動することができず、実際の付着力や付着・凝集・分散特性を表現していない。これらは、言わば、仮想(モデル)的な接触状態を人為的に創造することで、粒子1個に働く付着力を(理論に留まらず)実際に計測可能にすることができる方法であった。即ち、これらは、参考値を与える方法で、直接測定で得られた生データではない方法や装置であった。従って、これらの方法は、試料が自由に運動することが必須の物理量、例えば、粒子同士の付着力、特に本発明で目的とする、電子セラミックスなどの製造現場の品質管理技術としてなどの場合、実際の接触状態を反映した数値を測定することが、本質的に不可能であった。
【0018】
更に、探針と試料との固定(接着剤など)には、試料調製のための長時間の準備作業(振動の制動、探針と試料との環境整備など)、作業繰り返し(練習)と長時間を要する熟練が必要である。その結果、それらによる作業者による品質のばらつきなどを避けることが、非常に難しかった。また、技術要素的な問題点として、上記の評価法群の技術体系が「顕微鏡」に類することから、探針と試料との固定から、試料間の離脱までを、直接観察するように開発された装置は、一般的ではない。その結果、それらの方法には、上記の探針と試料との固定を始めとする評価工程作業や、製造現場の品質管理において、作業性を著しく低下させるという問題点があった。
【0019】
これらの微小力センサー、その評価法と評価装置は、基本的に、基板状物質の性質(基板の表面粗さや表面力の大きさ、基板に対する粒状物質の付着力など)を対象に評価する、専門家・熟練者による研究室レベルの技術を脱していないと判断される。従って、これらは、本発明で目的とする、粒子1個に働く付着力の大きさが1mN以下(好適には、10nN以下)で、かつ、評価必要時間(試料調製から測定値検出までに要する時間)が数10分以下を達成し、特に試料が自由に運動することが必須の粒子同士の付着力評価に好適な、新規な微小力センサー、その評価法と評価装置、微小力の標準物質や標準化法、電子セラミックスなどの製造現場の品質管理技術とは、その技術体系を異にするものである(以上、例えば、特許文献4、特許文献5、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6)。
【0020】
また、上記の作業性や熟練度などに係る問題点は、物理量(評価因子)として、例えば、「評価時間」に収斂することが可能である。しかし、上記の試料表面と探針表面間との分子間力などの表面相互作用を検知機構とする顕微鏡法では、粉体層を評価対象とする上記の剪断応力試験法や、遠心分離法などに対するアンチテーゼとして、得られた物理量に対する本質的な低信頼性の問題が指摘される。即ち、粉体層を評価対象とする剪断応力試験法や遠心分離法などでは、評価対象の中に複数個の試料(粒子など)を本質的に含み、評価1回当りに含まれる試料数も、数10〜数100個以上を期待することは、比較的確度が高く妥当である。一方、粒子1個に働く付着力などのミクロ粉体特性を直接的に評価する顕微鏡法では、基本的に評価1回当りに含まれる試料数は1個で、評価対象の増加について、本質的な不利がある。
【0021】
このような物理量に対する信頼性を高める方法としては、下記の2法、即ち、(1)検出した物理量が目的値であることを理論的かつ客観的に証明し、物理量のゼロ点(基準)を所与して、絶対値を保障する校正法(標準化法)や校正物質(標準物質)を保証する方法、(2)上記の確率論的手段(評価試料数を一定レベル以上に増やすことで、熟練度や測定者による差異性を数学的に除外する)が、主に想定できる(例えば、非特許文献2)。
【0022】
前者(1)の校正法によると、分銅などの実負荷を基準とする方法が汎用的となる。一般的な市販センサーの場合、コストなどを理由に、数gの分銅で校正することが通常で、その結果、粒子1個に働く付着力の校正下限は、数10mN(多くの場合、50mN)程度となっている(1gf=9.8mNより計算)。分銅を厳密管理した特殊評価の場合に限り、数mg(1mgが下限)の分銅を用い、数10μN(10μNが下限)が校正し得る場合があるが、分銅の管理・維持費などにコストを要し、一般的ではなく、特に本発明で目的とする、電子セラミックスなどの製造現場の品質管理技術としては、使用に耐えない。そして、このような分銅実負荷法には、10μN以下の付着力が、本質的に担保し得ず、数ミクロン以下の微細な粒子1個に働く、数μNレベルの付着力の絶対値を保証できない、という問題点があった。
【0023】
そのため、上記レベルの微小力の校正を目的として、高精度に製作された基準試料(例えば、原子間力顕微鏡のカンチレバー、プローブなど)の固有振動数を求め、これを基準として与える固有振動数法があった(例えば、特許文献6)。原子間力顕微鏡のカンチレバーなどの探針には、工場出荷前に、カンチレバー個々に異なる固有振動数を予め求めておき、評価の前提条件(パラメーター)として製品に所与されて販売されている。しかし、この方法は、固有振動数の評価には、夜間や地下室など、特殊環境、かつ高コストな環境(制振、など)が必須で、高度な熟練度と、長大な評価時間とを要していた。
【0024】
しかも、現状では、上記手法は、原子間力顕微鏡のカンチレバーなど、特定の部材にしか固有振動数は所与されておらず、本発明で目的とするような、粒子1個に働く付着力の大きさが1mN以下(好適には、10nN以下)で、かつ評価必要時間(試料調製から測定値検出までに要する時間)が数10分以下を達成し、特に試料が自由に運動することが必須の粒子同士の付着力評価が可能な、微小力センサー、その評価法と評価装置には、部材の自由度が著しく限定され、開発が困難であった。また、上記手法は、本発明で目的とする、電子セラミックスなどの製造現場の品質管理技術としては、長大な評価時間や高コストを要し、非実現的である。
【0025】
また、一方、物理量に対する信頼性を高める方法の後者(2)、即ち、確率論的手段では、一般に、数1000回以上の評価数が下限である旨、実験的・理論的に示されており、評価1回当りに含まれる試料数が1個である、顕微鏡法では、熟練者による研究室レベルの技術を脱していないと判断され、この手法は、本発明で目的とする、電子セラミックスなどの製造現場の品質管理技術としては、非実現的である(例えば、非特許文献2)。
【0026】
以上の既往の評価法の持つ問題点を解決すべく開発された微小力センサー、その評価法と評価装置として、本発明者らが既に開発した付着力測定装置(PAF)があった(特許文献7、非特許文献4、非特許文献8、非特許文献9)。この微小力センサー、その評価法と評価装置は、基板状の物体Aと、棒状の物体Bとの間に、試料(粒状物質など)Cを存在させ、A又はBの一方を弾性的に支持する弾性支持手段と、AとBの相対位置を変化させる移動手段と、A〜Cを可視化する手段と、AとCの間に微小力で形成されたバネが存在すると想定し、AとC、又は複数のC同士の一部が離脱した際に発生する変位量より微小力を算出する手段とを、有することを特徴(技術的必須要件)としている。
【0027】
この方法及び装置は、棒状物体B(前記・原子間力顕微鏡などの探針に相当)と粒状物質C(同様、試料に相当)との固定を、AとCの間の微小力(付着力)のみを手段として行うので、試料が自由に運動することができ、実際の付着力の状態や、付着・凝集・分散特性を再現できている。この方法は、言わば、現実の接触状態を再現できる評価法であって、直接測定で得られた生データを与える、初めての方法や装置であった。従って、この手法では、試料が自由に運動することが必須の物理量、例えば、粒子同士の付着力など、実際の接触状態を反映した数値を測定することが、本質的に可能であった。更に、この方法は、探針と試料との固定から、試料間の離脱までを、直接観察できるように装置構成されているので、探針と試料との固定が比較的容易であった。その結果、この方法は、具体的(定量的)には、評価必要時間(試料調製から測定値検出までに要する時間)数10分以下を達成し得る技術的性能を有していた。このような特徴を有する上記の方法に対する客観的評価として、電子ペーパーなどの機能性材料分野の製造現場における開発や品質管理技術として、引き合いや検討が開始されている。
【0028】
しかし、前記の基板状の物体Aと棒状の物体B間に試料(粒状物質など)Cを存在させ、AとC間に微小力で形成されたバネが存在すると想定、AとC、又は複数のC同士の一部が離脱した際に発生する変位量より微小力を算出する付着力測定装置(PAF)には、(1)AとBとが離脱した際に発生する変位量(及び振動数)の測定手段がなく、A又はBを支持するバネ状物質のバネ定数kの算出手段がない、(2)Aと、B又はCが離脱した際に発生する変位量の計測手段(変位計)の精度不足、(3)A〜Cなどの振動を制動する制振手段の欠落、(4)Bの材質の多様化と精度、及びそれらと試料とのバランス不足、(5)絶対値を保障する校正法(標準化法)や校正物質(標準物質)の欠如、(6)極微量、例えば、液状物質1滴程度の表面張力や粘度などを評価する方法には不適、などの問題があった。
【0029】
即ち、評価の再現性と作業性とを保証できる範囲としては、測定可能な試料(粒状物質など)の大きさは数10〜100ミクロンが限界(前記・原子間力顕微鏡などの様な、数〜10数ミクロン以下は不可)で、その結果、粒子1個に働く付着力の評価可能な大きさが数10〜100nN以上(前記・原子間力顕微鏡などの様な、数〜10nN以下は不可)となり、電子ペーパーなどの機能性材料分野や、最近のナノテクノロジーに係る製造現場での開発や品質管理技術として必要な、数〜10数ミクロン以下の評価可能な試料(粒状物質など)の大きさや、数〜10nN以下の評価可能な付着力の大きさが達成できない、という致命的な問題点が明らかとなってきていた。
【0030】
特に、本発明者らの先願発明(付着力測定装置PAF)は、対抗して接触する2物体間AとBの間に発生する微小力のセンサー、その評価法と評価装置であって、A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、AとBとが離脱した際に発生する振動数Tと変位量の最大値λmax1、A又はBの質量mとから、フックの法則と運動方程式とを用いることにより、k=m×(2π÷Tでkを算出しなければならない。しかし、上記のように、AとBとが離脱した際に発生する変位量(及び振動数)の測定手段がないことに加え、基板状の物体Aと試料(粒状物質など)Cが離脱した際に発生する変位量の計測手段(変位計)、A〜Cなどの振動を制動する制振手段の精度不足、棒状の物体Bの材質、絶対値を保障する校正法(標準化法)や校正物質(標準物質)などに問題があった。その結果、先願発明(付着力測定装置PAF)は、AとB間にCを存在させ、AとC間に微小力で形成されたバネが存在すると想定し、AとC、又は複数のC同士の一部が離脱した際に発生する変位量より微小力を算出する構成であるため、AとBとが離脱した際に発生する変位量などよりkを算出することができず、何らかの別の手段で、バネ定数kを算出しなければ、微小力Fを測定できなかった。更には、変位量の計測手段や制振手段の精度、棒状物体の材質、校正手段の問題から、微小力の評価範囲も小さかった(特許文献7、非特許文献4、非特許文献8、非特許文献9)。
【0031】
そのため、現状では、前記の試料表面と探針表面間との分子間力などの表面相互作用を検知機構とする原子間力顕微鏡などの従来技術を援用し、更に、夜間や地下室など、特殊、かつ高コストな環境下で評価することで、変位量評価とバネ定数k算出を便宜的に行っていた。しかし、この状況は、自己技術の中で作業を完結することができず、技術体系的に未完成であることを意味する。更にまた、このことは、製造現場での開発や品質管理技術としては、別途外注しなければならない工程を含む点で、致命的な低作業性を引き起こす原因となっていた。
【0032】
更に、対象とする技術分野のより上位概念に係る問題点として、上記の検出した物理量が目的値であることを理論的かつ客観的に証明し、物理量のゼロ点(基準)を所与して、絶対値を保障する校正法(標準化法)や校正物質(標準物質)を保証するという課題がある。本発明のように、粒子1個に働く付着力などのミクロ粉体特性を直接的に評価し、数〜10nN以下の小さな微小力を対象とする場合、顕微鏡法と同様、検出した物理量が目的の微小力であることを理論的かつ客観的に証明し、物理量のゼロ点(基準)を所与して、絶対値を保障する校正法(標準化法)や校正物質(標準物質)が、評価時間や品質管理技術の観点からも、必須である。しかし、現状では、上記のようなレベルの微小力の標準化法や、標準物質は存在しなかった。そのため、例えば、原子間力顕微鏡などの従来技術により、評価時間を度外視することで、AとBが離脱した際に発生する微小力Fと変位量λからkを算出していたが、得られた物理量の信頼性(絶対値)を担保する手段がなかった。この問題点は、本発明者らが開発した付着力測定装置(PAF)に留まらず、試料表面と探針表面間との分子間力などの表面相互作用を検知機構とする顕微鏡法にも共通する、本発明で解決を目指した技術上の本質的な課題である。
【0033】
更にまた、対象とする技術分野の、影響度が高く、かつ、ニーズの高い問題点として、コピー機用トナーやキャリア、電子ペーパー、最先端印刷機器の印字用インク、薬剤などの微小力を支配する、液状物質の表面張力、及び粘度など、液状物質特性の評価の問題があった。このようなナノテクノロジーに分類される材料系には、評価・検討される試料の絶対量が極端に微量、かつ高価で、従来の粘度評価法などが適用できない、という問題点があった。
【0034】
例えば、従来の液状物質の粘度評価法には、オストワルド法などの毛細管粘度計、落球式粘度計、B型などの共軸2軸円筒型回転粘度計、単一円筒型回転粘度計、E型などの円錐―平板型回転粘度計などがある(例えば、非特許文献10)。しかし、現状では、試料量が比較的微量でも許容され得るE型などの円錐―平板型回転粘度計でも、数cc程度は用いることが必須であって、それ以上の極微量(例えば、液状物質1滴程度)試料の表面張力や粘度などを評価できる方法は開発されていなかった。
【0035】
以上の既往の評価法の持つ問題点を、粒子1個に働く付着力などの微小力の評価可能な大きさを横軸に、評価必要時間(試料調製から測定値検出までに要する時間)を縦軸にとり、従来の微小力評価法及び校正法と、本発明技術との対象範囲(評価可能範囲)との差異性を、図1(微小力評価法)、及び、図2(微小力校正法)に、整理した。即ち、既往の微小力センサー、その評価法と評価装置に関して、物質(センサー)及び方法(評価法)、装置の面から(上記の主たる6つの方法について)現状を俯瞰すると、(1)粉体層で得られた数値を重量や表面積で規格化した計算値として求める剪断応力試験法などは、単位評価試料数当りの試料数と利便性は満足されるが、粒子1個に働く付着力などのミクロ粉体特性の直接評価や、評価精度、評価時間が不可、であった。
【0036】
次の、粉体層を利用して粒子1個に働く付着力などのミクロ粉体特性を理論的に求める遠心分離法などは、単位評価試料数当りの試料数と利便性は満足されるが、粒子1個に働く付着力などのミクロ粉体特性の直接評価や、評価精度、評価時間が不可、であった。
【0037】
3番目の、試料表面と探針表面間との分子間力などの表面相互作用を検知機構とする顕微鏡法などは、粒子1個に働く付着力などのミクロ粉体特性の直接評価や評価精度は満足されるが、現実の付着・凝集・分散状態の再構成化、試料が自由に運動する状態での粒子同士の付着力の現実性(信頼性)、評価時間、絶対値を保障する校正法などが不可、であった。
【0038】
4番目の、基板状の物体Aと棒状の物体B間に試料(粒状物質など)Cを存在させ、AとC間に微小力で形成されたバネが存在すると想定、AとC、又は複数のC同士の一部が離脱した際に発生する変位量より微小力を算出する付着力測定装置(PAF)法は、粒子1個に働く付着力などのミクロ粉体特性の直接評価、現実の付着・凝集・分散状態の再構成化、試料が自由に運動する状態での粒子同士の付着力の現実性(信頼性)、評価時間などは満足されるが、評価精度、絶対値を保障する校正法などが不可、であった。
【0039】
5番目の、微小力において、検出物理量が目的値であることを理論的かつ客観的に証明し、物理量のゼロ点(基準)を所与し、絶対値を保障する校正法(標準化法)や校正物質(標準物質)を保証する方法は、分銅実負荷法では、評価時間は満足されるが、評価精度が不可、固有振動数法では、評価精度は満足されるが、評価時間が不可、であった。
【0040】
最後の、極微量(例えば、液状物質1滴程度)の表面張力や粘度などを評価する方法は、開発されていなかった。
【0041】
従って、微小力センサー、その評価法と評価装置に関し、(1)粒子1個に働く付着力などの粉体特性の直接評価と、その付着・凝集・分散状態を評価装置内で再現すること、(2)粒子1個に働く付着力が1mN以下(好適には、10nN以下)で評価可能なこと、(3)評価必要時間(試料調製から測定値検出までに要する時間)が数10分以下で評価可能なこと、(4)数ミクロン以下の粒子1個に働く数μNレベル(好適には、10nN以下)の付着力の絶対値を担保する校正法、(5)極微量(例えば、液状物質1滴程度)の表面張力や粘度などを評価する方法、の全てを同時に満たすことは、現時点では不可能であった。
【0042】
本発明者らは、上記の状況を踏まえ、種々検討を重ねる中で、粒子1個に働く付着力などの微小力の構成要素に着目した。即ち、粒子に働く微小力は、分子間力、静電気力、液架橋力(毛管凝縮力)などから構成され、取り扱う雰囲気(湿度、真空度、構成ガス組成など)や、粉体特性(粒子径、モルフォロジー(外的形状、内的構造など)、巨視的扁平度、微視的表面粗さ、材質に基づく親水(撥油)〜疎水(撥水)性などにより影響を受け、これらが、個々の材料系で適宜選択され、制御して用いられている(例えば、非特許文献2)。この中で、本発明者らは、液架橋力(毛管凝縮力)、又は一般的に毛細管力は、大気中(=水分が本質的に存在)はもちろん、多くの雰囲気中で粒子に働く付着力の支配的因子であり、気相中の粒子の付着力の中で、最も影響度が大きいと考えられていること、に着目した。
【0043】
毛細管力は、粒子表面に存在する液状物質の表面張力や粘度により変化するが、再現性良く測定される数値としては、現時点では数100nN程度とされている。一方、一般に、センサーや評価法、評価装置において、評価精度(保証し得る最小の物理量の大きさ)は、0.5%と考えるのが通念である。この両者を組み合わせると、0.1nNまでの、粒子の付着力の絶対値を担保できる手段、を所与し得る可能性が見出せる。しかし、現時点では、これらの技術は、粒子表面の粉体工学的(学術的)な検討と、センサーなどの現場の技術開発(工業)的な検討とが個別に行われているのみで、この両者を組み合わせることは、現状では全く考慮されていなかった。
【0044】
具体的な一例として、例えば、試料表面と探針表面間との分子間力などの表面相互作用を検知機構とする顕微鏡法などでは、液状物質中の粒子や、粒子表面に液状物質が存在する場合の、粒子1個に働く付着力の評価法が検討されている。しかし、何れも、従来の顕微鏡法などで得られた信号を、液状物質のそれと類推する方法と言え、その技術体系から脱し切れておらず、上記で列挙した問題点は解決されていない(特許文献1、特許文献2、特許文献8、非特許文献4、非特許文献7)。しかし、この現状は、既往の技術群が経験則に基づく知見の蓄積で得られた成果であったためで、現象の「本質的な限定要素」が明確化されていないこと、異分野の知見を組み合わせるという発想の希薄さ、などが理由であって、工業技術としての限界ではないと推定される。
【0045】
【特許文献1】特開平11−258081号公報
【特許文献2】特開2003−98065号公報
【特許文献3】特開2004−286725号公報
【特許文献4】特開2002−62253号公報
【特許文献5】特開2003−294608号公報
【特許文献6】特開平10−239145号公報
【特許文献7】特開2001−183289号公報
【特許文献8】特開2004−144573号公報
【特許文献9】特開平06−117818号公報
【特許文献10】特願2004−29991
【非特許文献1】樫本明生、板状マイカ/微小ポリメチルメタクリレート球状粉体混合系の組成と粉体物性、色材協会誌、Vol.74、p.593−597(2001)
【非特許文献2】粉体工学会編、粉体工学の基礎、日刊工業新聞社、p.133−144(1992)
【非特許文献3】日本粉体工業技術協会編、粉体工学概論、粉体工学情報センター、p.31−34(1995)
【非特許文献4】島田泰拓、米澤頼信、砂田久一、野中隆盛、加藤賢三、森下広、微小粒子間付着力測定装置の開発、粉体工学会誌、Vol.37、p.658−664(2000)
【非特許文献5】荒川正文、安田真一、粒子間相互作用の直接測定、材料、Vol.26、p.46−50(1977)
【非特許文献6】藤井政俊、原子間力顕微鏡による力の測定、色材協会誌、Vol.72、p.34−42(1999)
【非特許文献7】東谷公、神田陽一、原子間力顕微鏡による固液界面特性のin−situ評価、粉体工学会誌、Vol.35、31−39(1998)
【非特許文献8】島田泰拓、中山真希、米澤頼信、砂田久一、微小粒子間付着力測定装置を用いた付着力測定と帯電性の影響、粉体と工業、Vol.33、p.51−60(2005)
【非特許文献9】S.Watano、T.Hamashita、T.Suzuki、Removal of Fine Powders from Film Surface 1.Effect of Electrostatics Force on the Removal Efficiency、Chem.Pharm.Bull.、Vol.50、p.1258−1261(2002)
【非特許文献10】JIS、液体の粘度−測定方法、Z8803(1991)http://www.jisc.go.jp/app/pagerにて閲覧可能
【非特許文献11】特許庁、技術分野別特許マップ、一般13耐震・免震・制振構造・装置、1.2.3章、制振技術(1999)
【非特許文献12】日本油化学会編、油化学便覧、第四版、丸善(株)、p.268(2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0046】
本発明が解決しようとする課題と、解決手段を表す概念及び思想について、本発明者らは、図4(水平方向に対向して接触する2物体間AとBの間に想定したバネ定数k1のバネ状物質と微小力Fとの関係)、及び、図5(AとB以外の任意の物体Cを、BとC間の微小力だけを手段として保持し、水平方向に対抗してAと接触させた際に、AとCの間に想定したバネ定数kのバネ状物質と微小力Fとの関係)、及び、図6(AとBの間に表面張力γの液状物質を存在させ、AとBの間に想定したバネ定数kのバネ状物質と微小力Fとの関係)、及び、図7(図6の状態からA又はBと液状物質とが離脱した際の関係)に、整理して示した。
【0047】
本発明者らは、上記状況に鑑み、従来技術の有する諸問題を抜本的に解決することを可能とする新しい技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、本発明者らが開発した、基板状の物体Aと棒状の物体B間に試料(粒状物質、など)Cを存在させ、AとC間に微小力で形成されたバネが存在すると想定、AとC、又は複数のC同士の一部が離脱した際に発生する変位量より微小力を算出する付着力測定装置(PAF)法(特許文献7、非特許文献4、非特許文献6)の有する現状の6つの問題点、(1)AとBとが離脱した際に発生する変位量(及び振動数)の測定手段がなくA又はBを支持するバネ状物質のバネ定数kの算出手段がない、(2)Aと、B又はCが離脱した際に発生する変位量の計測手段(変位計)の精度不足、(3)A〜Cなどの振動を制動する制振手段の欠落、(4)Bの材質の多様化と精度、及びそれらと試料とのバランス不足、(5)絶対値を保障する校正法(標準化法)や校正物質(標準物質)の欠如、(6)極微量、例えば、液状物質1滴程度の表面張力や粘度などを評価する方法の欠如、に対し、それらの解決手段を鋭意検討した。
【0048】
その結果、対向して接触する2物体AとBの間に発生する微小力の評価法であって、(1)A又はBを支持する所定のバネ定数のバネ状物質が存在すると想定し、AとBが脱離した際に発生する振動数と変位量と、AとBの質量に基づいてバネ定数を算出する、(2)A及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させ、A又はB、C又は複数のC群同士の間の一部とが、脱離した際に発生する変位量に基づいて微小力を算出する、更に、(3)対向して接触する2物体AとBの間に表面張力γの液状物質を存在させ、AとBが離脱した際に発生する変位量と、A又はB、C又は複数のC群同士の間の一部とが、脱離した際に発生する変位量に基づいて微小力を算出する、という、3つの手段よりなることを特徴とする微小力の評価法を構築することに成功した。本発明は、上記3つの手段よりなる微小力の評価法、微小力センサー及び微小力評価装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0049】
上記の課題を解決するため、本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)対向して接触する2物体AとBの間に発生する微小力の評価法であって、1)A又はBを支持する所定のバネ定数のバネ状物質が存在すると想定し、AとBが脱離した際に発生する振動数と変位量と、AとBの質量に基づいてバネ定数を算出する、2)A及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させ、A又はB、C又は複数のC群同士の間の一部とが、脱離した際に発生する変位量に基づいて微小力を算出する、ことを特徴とする微小力の評価法。
(2)1)A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、AとBとが離脱した際に発生する振動数Tと変位量の最大値λmax1、A又はBの質量mから、バネ定数k=m×(2π÷Tを算出する、2)A及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させ、A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、A又はBと、C又は、複数のC群同士の間の一部とが、離脱した際に発生する変位量の最大値λmax2より、微小力F=k×λmax2を算出する、前記(1)に記載の微小力の評価法。
(3)1)AとBの間、又はA及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させ、AとBの間に表面張力γの液状物質を存在させ、A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、A又はBと、液状物質とが離脱した際に発生する変位量の最大値λmax3から、バネ定数k=F÷λmax3を算出する、2)A及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させ、A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、A又はBと、C又は、複数のC群同士の間の一部とが、離脱した際に発生する変位量の最大値λmax2より、微小力F=k×λmax2を算出する、前記(1)又は(2)に記載の微小力の評価法。
(4)対向して接触する2物体AとBの間に表面張力γの液状物質を存在させ、AとBが離脱した際に発生する変位量より、AとBの間の液状物質の粘度を求める、前記(1)から(3)の何れかに記載の微小力の評価法。
(5)変位量の最大値λmax2を、測定可能範囲±10mm以下、及び/又は測定可能最大長に対するレーザ直線性±5%以下、及び/又は分解能10ミクロン以下、の、CCDレーザ式、又は正反射レーザ式、又は拡散反射型レーザ式、又は光ファイバー式の変位計により、評価する、前記(1)から(4)の何れかに記載の微小力の評価法。
(6)変位量の最大値λmax2を、水平及び/又は鉛直方向の固有振動数10Hz以下の除振台により、評価する、前記(1)から(5)の何れかに記載の微小力の評価法。
(7)物体Cが平均長さ3mm以下の粒状物質である、前記(1)から(6)の何れかに記載の微小力の評価法。
(8)微小力が、分子間力、静電気力、液架橋による毛細管力、磁力、物体Cが非弾性的に変化する際に発生する力の、何れかである、前記(1)から(7)の何れかに記載の微小力の評価法。
(9)物体A〜Cの存在する雰囲気が、真空中、大気中、任意のガス中、任意の液状物質中の、何れかである、前記(1)から(8)の何れかに記載の微小力の評価法。
(10)A及びB、及び/又はC間に存在させる液状物質が、10nN以下の微小力Fを評価できる表面張力γ又は粘度μを有し、不揮発性である、前記(1)から(9)の何れかに記載の微小力の評価法。
(11)物体Aが基板状物質、物体Bが棒状物質であり、AとBの間に粒状物質Cを存在させ、A又はBの一方を弾性的に支持する弾性支持手段と、AとBの相対位置を変化させる移動手段と、A〜Cを可視化する手段と、A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が、また、AとCの間に微小力F4で形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、AとBとが離脱した際に発生する変位量を直接測定する変位量の測定手段と、バネ定数kを算出する手段と、AとC又は複数のC同士の一部が離脱した際に発生する変位量を直接測定する変位量の測定手段と、バネ定数kを算出する手段と、A〜Cの振動を制振する手段、とを有することを特徴とする微小力センサー、又はその評価装置。
(12)前記弾性支持手段の一端が固定され、他端が棒状物質Bを支持し、前記移動手段が、固定端に対し前記基板状物質Aを相対的に移動させる手段である、前記(11)に記載の微小力センサー、又はその評価装置。
(13)前記の物体AとCが離脱した際に発生する変位量λの測定手段が、測定可能範囲±10mm以上、及び/又は測定可能最大長に対するレーザ直線性±5%以上、及び/又は分解能10ミクロン以上の、CCDレーザ式、又は正反射レーザ式、又は拡散反射型レーザ式、又は光ファイバー式の変位計により、評価する手段を有する、前記(11)又は(12)に記載の微小力センサー、又はその評価装置。
(14)水平及び/又は鉛直方向の固有振動数10Hz以下の除振台で評価する手段を有する、前記(11)から(13)の何れかに記載の微小力センサー、又はその評価装置。
(15)前記棒状物質Bの材質が、超硬合金、ステンレス、アルミニウム、ダイヤモンドの何れかである、前記(11)から(14)の何れかに記載の微小力センサー、又はその評価装置。
(16)前記基板状物質Aが移動ステージに取り付けられ、前記移動ステージがステッピングモーター又はサーボモーターの動作により移動する、前記(11)から(15)の何れかに記載の微小力センサー、又はその評価装置。
(17)A〜Cを可視化する手段が、顕微鏡、CCDカメラ、デジタルカメラの何れかである、前記(11)から(16)の何れかに記載の微小力センサー、又はその評価装置。
【0050】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明は、以上の着想を実現すべく鋭意検討した結果構築されたものであって、その基本構成は、具体的に先願(特許文献7)との差異性を強調して明示すると、(1)対向して接触する2物体A又はBを支持する所定のバネ定数のバネ状物質が存在すると想定し、AとBが脱離した際に発生する振動数と変位量と、AとBの質量に基づいてバネ定数を算出する、(2)A及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させ、A又はB、C又は複数のC群同士の間の一部とが、脱離した際に発生する変位量に基づいて微小力を算出する、(3)更に、2物体AとBの間に表面張力γの液状物質を存在させ、AとBが離脱した際に発生する変位量と、A又はB、C又は複数のC群同士の間の一部とが、脱離した際に発生する変位量に基づいて微小力を算出する、以上3点の手段を、同時に、又は連続的に、又は断続的に組み合わせること、を特徴とするものである。
【0051】
本発明において、対向して接触する2物体A又はBを支持するバネ状物質のバネ定数の算出については、A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、AとBとが離脱した際に発生する振動数Tと変位量の最大値λmax1、A又はBの質量mとから、フックの法則と運動方程式とを用いることにより構成される次の式、
=m×(2π÷T
により、バネ定数kを算出する。
【0052】
次に、微小力の算出については、A及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させ、A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、A又はBと、C又は、複数のC群同士の間の一部とが、離脱した際に発生する変位量の最大値λmax2とフックの法則より、F=k×λmax1とF=k×λmax2との両バネ系に成り立つ次の相似関係、即ち、
/λmax1=F/λmax2(=k=k
を、用いることにより構成される次の計算式、
=k×λmax2
により、微小力Fを算出する。
【0053】
更に、本発明においては、AとBの間、又はA及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させ、AとBの間に表面張力γの液状物質を存在させ、A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、A又はBと、液状物質とが離脱した際に発生する変位量の最大値λmax3から構成される次の計算式、
=F÷λmin3
ここで、Fは、
=γ×Lmin3
又は、
=(πRmin)×γ×(R31―1―Rmin―1)+γ×Lmin3
又は、
=(πR32)×γ×sinα×(R31―1―Rmin―1
+γ×(2πR32)×sinα×sin(α+θ)
但し、
min3は、A又はBと、液状物質とが離脱した際の、液状物質の鉛直方向の最小長2Rminから算出した周囲長、
31は、AとBの間の液状物質が、AとB互いの中心を結ぶ中心軸線に対し、内側に凸にくびれを形成した際、そのくびれ部分の曲率半径、
2R32は、A又はBの鉛直方向の最大長(A又はBが球の場合は直径)、
αは、AとBの間の液状物質が鉛直方向の最大長を示すA又はBの接触点に対し、その接触点と、A又はBとの中心を結ぶ直線を引き、その直線と、AとB互いの中心を結ぶ中心軸線とが、成す角度、
θは、AとBの間の液状物質が鉛直方向の最大長を示すA又はBの接触点に対し、その接触点から、AとBの間の液状物質に引いた接線と、その接触点から、A又はBに引いた接線が成す角度、
により、バネ定数kを算出し、A及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させ、A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、A又はBと、C又は、複数のC群同士の間の一部とが、離脱した際に発生する変位量の最大値λmax2とフックの法則より、F=k×λmax1とF=k×λmax3との両バネ系に成り立つ次の相似関係、即ち、
/λmax1=F/λmax3(=k=k
また、更には、F=k×λmax1とF=k×λmax2との両バネ系に成り立つ次の相似関係、即ち、
/λmax1=F/λmax2(=k=k
とを、用いることにより構成される次の計算式、
=k×λmax2
により、微小力Fを算出する。
【0054】
本発明において、対向して接触する2物体間AとBの間、又はA及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させ、AとBの間に表面張力γの液状物質を存在させ、AとBが離脱した際に発生する変位量λより、AとBの間の液状物質の粘度(又は粘性係数、Coefficient of viscosity)μ、及び/又は、動粘度(又は動粘性係数、Kinematic viscosity、粘度÷液状物質の密度)を求める手段(例えば、非特許文献10など)については、AとBの間に円管内の層流を仮定し、ハーゲン・ポアゾイユの式(即ち、円管内の層流の粘度の計算式)、
μ=128×λ×(V/t)÷{(4γ/2Rmin)×π×(2Rmin
但し、
λは、AとBが離脱した際に発生する変位量、
2Rminは、AとBの間の液状物質の鉛直方向の最小長、
Vは、AとBの間の液状物質の体積、
tは、AとBとの相互運動(即ち、離脱)開始時から、離脱完了までの時間、
により、算出する手段、などが例示されるが、AとBが離脱した際に発生する変位量λを利用することが可能であれば良く、特に制限されるものではない。
【0055】
本発明においては、変位量の最大値λmax2を、測定可能範囲±10mm以下、及び/又は測定可能最大長に対するレーザ直線性±5%以下、及び/又は分解能10ミクロン以下、のCCDレーザ式、又は正反射レーザ式、又は拡散反射型レーザ式、又は光ファイバー式の変位計により、評価する手段が好適とされる。本発明者らは、変位量の計測手段(変位計)について、現状の技術レベルと、微小力センサーへの適用可能性とを、装置工学的に再検討した(例えば、特許文献7、特許文献9、非特許文献4など)。その結果、本発明者らは、本発明で対象とする、電子ペーパーなどの機能性材料分野の製造現場の開発や、品質管理技術としての実現可能性の観点から、先ず、(ア)レーザ変位計、その改良型の(イ)複数レーザ式変位計(ダブルビーム型など)、その他、(ウ)光ファイバー式変位計、(エ)ドップラー式変位計、(オ)歪ゲージ式変位計、(カ)直接接触式変位計、の6種類に着目した。
【0056】
上記(ア)のレーザ変位計は、本発明者らが開発した、基板状の物体Aと棒状の物体B間に試料(粒状物質など)Cを存在させ、AとC間に微小力で形成されたバネが存在すると想定、AとC、又は複数のC同士の一部が離脱した際に発生する変位量より微小力を算出する付着力測定装置(PAF)法(特許文献7、非特許文献4、非特許文献6)においても言及されている。
【0057】
この方法は、比較的正確かつ安価で、高コストパフォーマンスを有するが、前記のように、現時点では、評価精度の点で問題があった。即ち、レーザ変位計においては、評価可能範囲(距離)と、変位計から出る信号との比例関係(直線性)が保持できる範囲が、実質的な精度を意味する。従来の微小力センサー、その評価法と評価装置において、汎用されてタイプの変位計は、測定可能範囲±0.2mm、測定可能最大長に対するレーザ直線性±0.05%、分解能0.01ミクロン、程度であった。その結果、実質的な評価精度Lは、
=(0.2×2)×0.0005=0.0002mm(0.2ミクロン)
であった。
【0058】
一方、従来の微小力センサー、その評価法と評価装置においては、採用されていないが、近年開発されたレーザ変位計として、CCDレーザがあった。これは、650nmのクラス1(JIS C6802)の半導体レーザを用いるもので、測定可能範囲±10mm以下、測定可能最大長に対するレーザ直線性±0.03%以下、分解能0.01ミクロン以下、を保証できる。その結果、実質的な評価精度Lは、
=(1×2)×0.0003=0.0006mm(0.6ミクロン)
となって、上記の汎用品より値が大きく、一見、低精度に思われる。しかし、実は、レーザ変位計における直線性は、原点付近が重要で、末端近傍は、原点程の高精度を要求しないことが分かっている。そこで、測定可能範囲の中心部±0.2mmの範囲と、それ以降±0.2〜10mmの範囲とを、切り替える信号処理アルゴリズムを採用することで、
=(0.2×2)×0.0003≒0.0001mm(0.1ミクロン)
という、従来の倍の精度を達成することが可能となる。
【0059】
上記(イ)の複数レーザ式変位計(ダブルビーム型など)は、試料の一点に、複数個所からレーザを照射して評価するため、より正確な変位評価ができ、高精度化問題に対応でき、本発明の対象技術として有力である。但し、レーザ系が複数化するため、コストパフォーマンスは低下する。
【0060】
上記(ウ)のヘテロダイン型などの光ファイバー式変位計は、比較的正確かつ安価で、高コストパフォーマンスを有し、更に、高速振動も検知可能で、高精度化問題に対応でき、本発明の対象技術として有力である。但し、試料面との距離がmm〜数cmレベルである場合が一般的で、試料位置を調整する際、変位計が損傷したり、試料を傷つける危険性も高かった。そこで、試料との接触を防止するフェールセーフ(Fail safe)やフールプルーフ(Fool proof)機構を考慮する必要があり、コスト面の不利が否めなかった。
【0061】
上記(エ)のドップラー式変位計は、上記の評価法に比較し、試料との距離が比較的とれ、また、高速な振動も評価可能で、技術的には有望である。しかし、一般的に、高価で、試料との距離があるため、この点が逆に欠点となり、初期条件設定に長時間を要し、評価時間問題が再燃する恐れがある。上記(オ)の歪ゲージ式変位計は、歪ゲージ自体は安価であるが、精度は期待できず、また、ゲージの接着剤の種類や接着方法などによりデータが変化する恐れがあり、信頼性に劣る。上記(カ)の直接接触式変位計は、比較的安価で、試料冶具次第で精度も期待し得るが、高周波振動に追従できない恐れがある。
【0062】
その他、試料表面と探針表面間との分子間力などの表面相互作用を検知機構とする顕微鏡法(原子間力顕微鏡など)も、変位計の一種と考えられるが、本発明とは技術体系を異にするため、検討から除外した。本発明では、種々の理論的・実験的検討によって、変位量λを、測定可能範囲±10mm以下、測定可能最大長に対するレーザ直線性±0.03%以下、分解能0.01ミクロン以下で評価可能な、CCDレーザ、又は正反射又は拡散反射型レーザ、又は光ファイバー式の変位計が好適とされるが、測定可能範囲と測定可能最大長に対するレーザ直線性が保証されれば、方法に関して、特に制限されるものではない。
【0063】
本発明においては、変位量の最大値λmax2を、水平及び/又は鉛直方向の固有振動数10Hz以下の除振台により、評価する手段が好適とされる。本発明者らは、振動を制動する制振技術や装置(除振台、など)について、現状の技術レベルと、微小力センサーへの適用可能性とを、装置工学的に再検討した(例えば、非特許文献11など)。その結果、本発明で対象とする、電子ペーパーなどの機能性材料分野の製造現場の開発や、品質管理技術としての実現可能性の観点から、(ア)ロケット技術(衝撃緩衝機構)を応用した、水平・鉛直の両方向にヒンジ・ピポット・板バネから成る「負のバネ定数」を有する仮想バネで架台を支持する機械式、(イ)振動センサーで検知した振動と反位相の振動を意識的に所与して相殺させる方式(アクティブ制御型)、(ウ)ピストンを利用した空気バネ式、(エ)コイル式、(オ)ゴム式、の5種類、に着目した。
【0064】
一般に、物体を、振動を制動する制振装置(除振台、など)で支持した場合、振動の周波数と、振動の伝達率(除振台の振動が物体に伝わる割合)との関係を調べた場合、伝達率が極大(最大)となる周波数(固有振動数f)が存在し、振動伝達率ζをdb(デシベル)で次式のように表すことが多い、
[db値]=20log10ζ=20log10(χ/χ
但し、χは対象物体の変位(又は速度、加速度)、χは除振台の変位(又は速度、加速度)である。物体の振動数fと、固有振動数fとの比f/fを振動数比と言い、一般に、制振効果を得るためには、振動数比の√2以上でなければならず、また、この値が大きい程、振動伝達率が低く、即ち、防振効果が優れることを意味する。換言すれば、それ以上の物体の振動数fしか制振できないということで、従って、固有振動数fを低くすることが重要で、物体の振動数fとのマージンが大きく、より優れた除振台となる。
【0065】
本発明者らが開発した、基板状の物体Aと棒状の物体B間に試料(粒状物質など)Cを存在させ、AとC間に微小力で形成されたバネが存在すると想定、AとC、又は複数のC同士の一部が離脱した際に発生する変位量より微小力を算出する付着力測定装置(PAF)法(特許文献7、非特許文献4、非特許文献8、非特許文献9)において、架台に積載された評価系の振動数fは、ほぼ3〜7Hz、好適には4〜6Hzであった。
【0066】
上記(ア)の水平・鉛直の両方向にヒンジ・ピポット・板バネから成る「負のバネ定数」を有する仮想バネで架台を支持する機械式の振動を制動する制振技術や装置(除振台など)は、水平及び鉛直の両方向について、固有振動数0.5Hz程度が保証され、現状の技術で、最小の固有振動数が担保される。上記(イ)の振動センサーで検知した振動と反位相の振動を意識的に所与して相殺させる方式(アクティブ制御型)は、固有振動数1Hz程度の装置が開発されているが、振動数が1.5Hz程度(即ち、マイクロウェーブレベル)以下の短い振動数(即ち、長い周期)となると、反位相振動を所与する電気回路による応答が間に合わず、共振を起こす可能性があった。また、装置構造的に複雑となり、コスト面の不利が否めなかった。
【0067】
上記(ウ)のピストンを利用した空気バネ式は、固有振動数2〜3Hz程度の装置が開発されているが、本発明の対象系の架台に積載された評価系の振動数f=5〜10Hz、好適には6〜7Hzに近く、振動数比を大きく取れないため、大きな制振効果が得られなかった。また、上記(エ)コイル式、上記(オ)ゴム式、などは、上記(ウ)空気バネ式以上に振動数比を大きく取れないため、制振効果が得られなかった。
【0068】
本発明においては、種々の理論的・実験的検討によって、変位量λを、水平及び鉛直方向の固有振動数0.5Hz以下で除振可能な、水平・鉛直の両方向にヒンジ・ピポット・板バネから成る「負のバネ定数」を有する仮想バネで架台を支持する機械式の除振台を好適とするが、水平及び鉛直方向の固有振動数が保証されれば、方法に関して、特に制限されるものではない。
【0069】
本発明において、AとBの間に表面張力γの液状物質を存在させる手段については、水平方向に対向して接触する2物体間AとBの間、又は、A及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させた時の2物体間AとBの間、何れの場合でもよく、方法に関して、特に制限されるものではない。
【0070】
本発明において、対向して接触する2物体間AとBの間に所与する物体Cについては、以下の物体が例示される。平均長さ3mm以下の粒状物質、特に、コピー機用トナーとキャリアや、ディスプレー材料のスペーサーとパネル、電子ペーパー粒子とパネル、医薬品のキャリアと薬品、吸入療法用経肺薬剤(又は吸入用製剤、DPI製剤;Dry Powder Inhaler)、錠剤用薬剤粉体、軟膏剤、化粧品の雲母粒子と表面改質材、半導体素子の保護・絶縁などを目的としたパッケージング(封止)材料、絶縁材料、電極・導電材料、電気粘性流体、化学機械研磨用スラリー、射出成形や鋳込み成形などのセラミック成形プロセス原料、基板材料、セラミック電子材料、セラミック構造材料、充填剤や嵩増剤などの各種フィラー系粉体、など、平均粒子径がサブミクロン〜10数ミクロンの範囲の、先進工業材料系に用いられる原料粉体が好適なものとして例示される。しかし、これらに、特に制限されるものではなく、例えば、無機材料から成る材料については、樹脂封止型半導体装置で使用されるケイ素系酸化物、ケイ素、アルミニウム又はチタンなどの酸化物、窒化物又は炭化物、Au、Ag、Pd、Pt、Cu又はAlなどの金属系材料、高熱伝導性が注目される窒化アルミニウム(AlN)、耐食・耐薬品性や高光学特性が注目される酸窒化アルミニウム(γ―AlONなど)、高機械的特性などが注目される窒化ケイ素(Si)や炭化ケイ素(SiC)、純鉄(Fe)、窒化鉄(FeN)、絹雲母や白雲母、金雲母と総称される雲母族系粘土鉱物、振草産セリサイト(組成がSiO60.0%以下、及びAl30.0%以上、及びKO6.0%以上、及び平均粒子径15ミクロン以下)から成る含水ケイ酸アルミニウムカリウム、層状ケイ酸塩、ワセリンなどの油脂系、有機材料、なども使用可能である。更に、溶解度に関しても制限されるものではなく、非水溶性の粉体であっても、任意の溶媒に対する易溶性の物質であっても、特に問題ではない。
【0071】
本発明において、コピー機用のトナーとキャリアの組合せなど、粒状物質(粒子、又は、粉体)表面、及び/又は、内部が複合化された粒状物質は、好適な評価対象で、粉体表面に粉体の形状又は構造を制御するための粒状物質又は液状物質又はガス状物質が、粒状又は棒状又は膜状又は多孔状又は不定形状に、付着又は被覆又は結合した粒状物質が例示されるが、特に制限はなく、物質の相(固体又は液体又は気体など)、形状や構造(粒状又は棒状又は膜状又は多孔状、不定形)、材質(金属又は高分子又は酸化物又は非酸化物など)、大きさ、添加量、複合構造化を図る方法、などについて、特に制限は無く、限定されない。更に、金、銀、銅、白金、鉄、チタンなどの金属系、チタン系化合物、ホウ素系化合物、亜鉛系化合物などの各種機能付与・促進剤、エタノール、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、アラビアゴムなどの各種高分子添加剤、パラフィンやグラファイトなどの炭素系粉体材料、各種界面活性剤、各種バインダー、加熱により分解してガス状物質を発生する性質を有する粒状物質又は液状物質又はガス状物質(アゾ系物質などの発泡剤など)、セリサイトなどの板状粉体、などが例示される。また、複合状態を作製する方法は、粉体の混合や電気炉中の加熱、粉砕、剪断応力を利用した機械的複合化法などの固相法、液体中のゼータ電位差や加水分解、錯体反応やエマルション法などを利用する液相法、ガス中の蒸発−凝縮現象、核生成、静電気力、液架橋力などを利用する気相法、などが例示されるが、特に制限はない。
【0072】
本発明において、水平方向に対向して接触する2物体間AとBの間に所与する液状物質については、不揮発性という性質と、かつ、下記2条件、(1)粒子1個に働く付着力の評価可能な大きさが1mN以下(好適には、10nN以下)、(2)数ミクロン以下の粒子1個に働く数μN(好適には、10nN以下)レベルの付着力の絶対値を担保する校正法、を、保証する程度の、低い表面張力を有する物質を好適とし、ヒマシ油、大豆油、アマニ油などの油類、などが例示されるが、特に制限されるものではなく、コピー機用トナー、キャリア、電子ペーパー、最先端印刷機器の印字用インク、薬剤、特に、吸入用製剤(又はDPI製剤、Dry Powder Inhaler)、錠剤、軟膏剤、ワセリンなどの油脂系なども対象となる。
【0073】
本発明において、水平方向に対向して接触する2物体間AとBの材質については、超硬合金、ステンレス、アルミニウム、ダイヤモンドが好適なものとして例示されるが、特に制限はない。
【0074】
更に、本発明において、対抗して接触する2物体AとB、及びAとB間の物体Cを可視化する手段については、顕微鏡(光学式、電子走査型、透過型、原子間力式など)、CCDカメラ、デジタルカメラ、などが例示されるが、特に制限はない。
【発明の効果】
【0075】
本発明により、以下のような効果が奏される。
1.従来の微小力のセンサー、その評価法と評価装置が持つ欠点、即ち、(1)粒子1個に働く付着力などの粉体特性の直接評価と、その付着・凝集・分散状態を評価装置内で再現すること、(2)粒子1個に働く付着力が1mN以下(好適には、10nN以下)で評価可能なこと、(3)評価必要時間(試料調製から測定値検出までに要する時間)が数10分以下で評価可能なこと、(4)数ミクロン以下の粒子1個に働く数μNレベル(好適には、10nN以下)の付着力の絶対値を担保する校正法、(5)極微量(例えば、液状物質1滴程度)の表面張力や粘度などを評価する方法、の全てを同時に解決できる。
2.先願(特許文献7)との差異性を強調して明示すると、付着力測定装置(PAF)法(特許文献7、非特許文献4、非特許文献6)の有する現状の6つの問題点、(1)AとBとが離脱した際に発生する変位量(及び振動数)の測定手段がなくA又はBを支持するバネ状物質のバネ定数kの算出手段がない、(2)Aと、B又はCが離脱した際に発生する変位量の計測手段(変位計)の精度不足、(3)A〜Cなどの振動を制動する制振手段の欠落、(4)Bの材質の多様化と精度、及びそれらと試料とのバランス不足、(5)絶対値を保障する校正法(標準化法)や校正物質(標準物質)の欠如、(6)極微量、例えば、液状物質1滴程度の表面張力や粘度などを評価する方法の欠如、に対し、解決手段を提供し得る。
3.本発明が対象とする技術分野、即ち、粒子1個に働く付着力や微小力や、個々の粒子の集合体である粉体層(バルク粉体)に働く付着力や微小力を対象とする微小力センサー、その評価法と評価装置において、本発明の技術的位置付けを俯瞰した場合、従来の2種類の評価法が夫々個別に有していた長所、即ち、現実性に乏しいモデル系評価だが、精密評価が可能なミクロ評価法(顕微鏡法など)の持つ精度と、総花的指標しか所与できないが、物理量の数学的信頼性は高いマクロ評価法(剪断応力試験法、遠心法など)の持つ確度とを併せ持つ、言わばミクロとマクロの中間的なメゾスコピック領域に位置し、当該技術分野全般を対象とできるメタ視点を与え、同時に、絶対値を保障する校正法(標準化法)や校正物質(標準物質)、更には、極微量(例えば、液状物質1滴程度)の表面張力や粘度等を評価する方法を所与することが可能であって、言わば既往の評価法のミッシングリンク(Missing−link)を埋めるという、格別の効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって、何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0077】
本発明で対象とする装置系の内、代表的な装置として、基板状の物体Aと棒状の物体B間に試料(粒状物質など)Cを存在させ、AとC間に微小力で形成されたバネが存在すると想定、AとC、又は複数のC同士の一部が離脱した際に発生する変位量より微小力を算出する付着力測定のための装置を構成して、バネ定数kを算出する以下の実施例を展開した。
【0078】
即ち、水平方向に対向して接触する2物体間AとBの間に、A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、AとBとが離脱した際に発生する振動数Tと変位量の最大値λmax1、A又はBの質量mとから、フックの法則と運動方程式とを用いることにより構成される次の式、
=m×(2π÷T
より、バネ定数kを算出した。
【0079】
本実施例では、質量mを、0.01〜0.09gまで、複数変化させ、その時々の振動数Tを計測した。但し、mは、質量(Y軸)と振動数(X軸)の関係図より、Y切片で補正した。またTは、バネの初期固有振動数で補正した。
その結果、バネ定数kは、約0.185N/mと、算出された。
【実施例2】
【0080】
本発明で対象とする装置系の内、代表的な装置として、基板状の物体Aと棒状の物体B間に試料(粒状物質など)Cを存在させ、AとC間に微小力で形成されたバネが存在すると想定、AとC、又は複数のC同士の一部が離脱した際に発生する変位量より微小力を算出する付着力測定装置(PAF)を、また、本発明で対象とする材料系の内、代表的な材料として、振草絹雲母(マイカ)を(特許文献10)夫々用いて、振草絹雲母(マイカ)に作用する微小力Fを算出する以下の実施例を展開した(図8)。
【0081】
基板状の物体A(Axes movable stage)と棒状の物体B(Contact needle)間に試料C(振草絹雲母(マイカ))を存在させ、AとC間に微小力で形成されたバネ(Plate spring)が存在すると想定、AとCとが離脱(図7の符号71)した際、バネ(Plate spring)の変位量を、レーザ変位計で測定し、変位量の最大値(図7の符号72)を求めた。
【0082】
その結果、変位量の最大値λmax2は、約0.19ミクロンであった。従って、F=k×λmax1とF=k×λmax2との両バネ系に成り立つ相似関係、即ち、
/λmax1=F/λmax2(=k=k
を用いることにより、
=k×λmax2=0.185(N/m)×0.19×10−6(m)
≒35(nN)
と算出された。
【実施例3】
【0083】
本発明で対象とする装置系の内、代表的な装置として、基板状の物体Aと棒状の物体B間に試料(粒状物質など)Cを存在させ、AとC間に微小力で形成されたバネが存在すると想定、AとC、又は複数のC同士の一部が離脱した際に発生する変位量より微小力を算出する付着力測定装置(PAF)を、また、本発明で対象とする液状物質の材料系の内、代表的な材料として、ヒマシ油(非特許文献12)を、夫々用いて、バネ定数kを算出する以下の実施例を展開した。
水平方向に対向して接触する2物体間AとBの間に、A及びB以外の任意の物体C(ガラスビーズ)をAとBの間に存在させ、AとBの間に表面張力γ(39mN/m)の液状物質(ヒマシ油)を存在させ、AとBが離脱した際に発生する変位量の最大値λmax3を測定した(表1)。
そして、更に、
=F÷λmax3
ここで、Fは、
=γ×Lmin3
但し、
min3は、A又はBと、液状物質とが離脱した際の、液状物質の鉛直方向の最小
長2Rminから算出した周囲長、
以上により、バネ定数kを算出した(表1)。
【実施例4】
【0084】
上記実施例3において、別試料のヒマシ油を用いた以外は、実施例3と同様にして、バネ定数を算出した(表1)。
【実施例5】
【0085】
上記実施例3において、試料調製方法の異なるヒマシ油を用いた以外は、実施例3と同様にして、バネ定数を算出した(表1)。
【0086】
【表1】

【0087】
本発明の実施例では、実施例3〜5の平均値0.176N/mを用いて、以下の実施例に適用した。
【実施例6】
【0088】
本発明で対象とする装置系の内、代表的な装置として、基板状の物体Aと棒状の物体B間に試料(粒状物質など)Cを存在させ、AとC間に微小力で形成されたバネが存在すると想定、AとC、又は複数のC同士の一部が離脱した際に発生する変位量より微小力を算出する付着力測定装置(PAF)を、本発明で対象とする液状物質の材料系の内、代表的な材料として、ヒマシ油(非特許文献12)を、また、更に、本発明で対象とする材料系の内、代表的な材料として、振草絹雲母(マイカ)を(特許文献10)、夫々用いて、振草絹雲母(マイカ)に作用する微小力Fを算出する以下の実施例を展開した。
【0089】
基板状の物体A(Axes movable stage)と棒状の物体B(Contact needle)間に試料C(振草絹雲母(マイカ))を存在させ、AとC間に微小力で形成されたバネ(Plate spring)が存在すると想定、AとCとが離脱(図7の符号71)した際、バネ(Plate spring)の変位量を、レーザ変位計で測定し、変位量の最大値(図7の符号72)を求めた。
【0090】
その結果、変位量の最大値λmax2は、約0.19ミクロンであった。従って、F=k×λmax1とF=k×λmax2との両バネ系に成り立つ相似関係、即ち、
/λmax1=F/λmax2(=k=k
を用いることにより、
=k×λmax2=0.176(N/m)×0.19×10−6(m)
≒33(nN)
と算出された。
【産業上の利用可能性】
【0091】
以上詳述したように、本発明は、毛細管力による微小力センサー、その評価法と評価装置に係るものであり、本発明により、粒子同士の付着力を実測値により評価できる、微小力センサー、その評価法と評価装置を提供できる。また、本発明により、微小力の標準物質や標準化法を実現できる微小力センサー、その評価法と評価装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の技術の構成と、先願(特許文献7)の構成との差異性を整理した比較図である。
【図2】本発明の技術の対象範囲(評価可能範囲)と、従来の微小力評価法との差異性を、粒子1個に働く付着力などの微小力の評価可能な大きさを横軸に、評価必要時間(試料調製から測定値検出までに要する時間)を縦軸にとり、微小力評価法について整理した俯瞰図である。
【図3】本発明の技術の対象範囲(評価可能範囲)と、従来の微小力校正法との差異性を、粒子1個に働く付着力などの微小力の評価可能な大きさを横軸に、評価必要時間(試料調製から測定値検出までに要する時間)を縦軸にとり、微小力校正法について整理した俯瞰図である。
【図4】本発明が解決しようとする課題と、解決手段を表す概念及び思想について、水平方向に対向して接触する2物体間AとBの間に想定したバネ定数k1のバネ状物質と微小力Fとの関係を示す図である。
【図5】本発明が解決しようとする課題と、解決手段を表す概念及び思想について、AとB以外の任意の物体Cを、BとC間の微小力だけを手段として保持し、水平方向に対抗してAと接触させた際に、AとCの間に想定したバネ定数kのバネ状物質と微小力Fとの関係を示す図である。
【図6】本発明が解決しようとする課題と、解決手段を表す概念及び思想について、AとBの間に表面張力γの液状物質を存在させ、AとBの間に想定したバネ定数kのバネ状物質と微小力F2との関係を示す図である。
【図7】本発明が解決しようとする課題と、解決手段を表す概念及び思想について、図6の状態からA又はBと液状物質とが離脱した際の関係を示す図である。
【図8】実施例2で示した、物体AとBとの距離と、A及びB以外の任意の物体Cの変位量の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0093】
11 対向して接触する物体A
12 AとB以外の任意の物体C
13 対向して接触する物体B
14 AとBの間に微小力で形成されたバネ状物質
15 AとBの間の表面張力γの液状物質
41 水平方向に対向して接触する物体A
42 水平方向に対向して接触する物体B
43 AとBの間に微小力で形成されたバネ定数kのバネ状物質
44 AとBが離脱した際に発生する微小力F
51 AとB以外の任意の物体C
52 AとCの間の微小力F
53 Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質
61 AとBの間の微小力F2
62 F2で形成されたバネ定数kのバネ状物質
63 AとBの間の液状物質の鉛直方向の最小長2R
64 2Rから算出した周囲長L
65 AとBの間の液状物質が、AとB互いの中心を結ぶ中心軸線に対し、内側に凸にくびれを形成した際、そのくびれ部分の曲率半径R
66 A又はBの鉛直方向の最大長(A又はBが球の場合は直径)2R
67 AとBの間の液状物質が鉛直方向の最大長を示すA又はBの接触点に対し、その接触点と、A又はBとの中心を結ぶ直線を引き、その直線と、AとB互いの中心を結ぶ中心軸線とが成す角度α
68 AとBの間の液状物質が鉛直方向の最大長を示すA又はBの接触点に対し、その接触点から、AとBの間の液状物質に引いた接線と、その接触点から、A又はBに引いた接線が成す角度θ
71 AとBの間に表面張力γの液状物質を存在させ、A又はBと液状物質とが離脱した際の変位
81 実施例2及び/又は実施例6で示した、基板状の物体Aと棒状の物体B間に試料(粒状物質、など)Cを存在させ、AとC間に微小力で形成されたバネが存在すると想定、AとC、又は複数のC同士の一部が離脱した点
82 実施例2及び/又は実施例6で示した、基板状の物体Aと棒状の物体B間に試料(粒状物質、など)Cを存在させ、AとC間に微小力で形成されたバネが存在すると想定、AとC、又は複数のC同士の一部が離脱した際に発生する変位量の最大値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して接触する2物体AとBの間に発生する微小力の評価法であって、(1)A又はBを支持する所定のバネ定数のバネ状物質が存在すると想定し、AとBが脱離した際に発生する振動数と変位量と、AとBの質量に基づいてバネ定数を算出する、(2)A及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させ、A又はB、C又は複数のC群同士の間の一部とが、脱離した際に発生する変位量に基づいて微小力を算出する、ことを特徴とする微小力の評価法。
【請求項2】
(1)A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、AとBとが離脱した際に発生する振動数Tと変位量の最大値λmax1、A又はBの質量mから、バネ定数k=m×(2π÷Tを算出する、(2)A及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させ、A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、A又はBと、C又は、複数のC群同士の間の一部とが、離脱した際に発生する変位量の最大値λmax2より、微小力F=k×λmax2を算出する、請求項1に記載の微小力の評価法。
【請求項3】
(1)AとBの間、又はA及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させ、AとBの間に表面張力γの液状物質を存在させ、A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、A又はBと、液状物質とが離脱した際に発生する変位量の最大値λmax3から、バネ定数k=F÷λmax3を算出する、(2)A及びB以外の任意の物体CをAとBの間に存在させ、A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、A又はBと、C又は、複数のC群同士の間の一部とが、離脱した際に発生する変位量の最大値λmax2より、微小力F=k×λmax2を算出する、請求項1又は2に記載の微小力の評価法。
【請求項4】
対向して接触する2物体AとBの間に表面張力γの液状物質を存在させ、AとBが離脱した際に発生する変位量より、AとBの間の液状物質の粘度を求める、請求項1から3の何れかに記載の微小力の評価法。
【請求項5】
変位量の最大値λmax2を、測定可能範囲±10mm以下、及び/又は測定可能最大長に対するレーザ直線性±5%以下、及び/又は分解能10ミクロン以下、の、CCDレーザ式、又は正反射レーザ式、又は拡散反射型レーザ式、又は光ファイバー式の変位計により、評価する、請求項1から4の何れかに記載の微小力の評価法。
【請求項6】
変位量の最大値λmax2を、水平及び/又は鉛直方向の固有振動数10Hz以下の除振台により、評価する、請求項1から5の何れかに記載の微小力の評価法。
【請求項7】
物体Cが平均長さ3mm以下の粒状物質である、請求項1から6の何れかに記載の微小力の評価法。
【請求項8】
微小力が、分子間力、静電気力、液架橋による毛細管力、磁力、物体Cが非弾性的に変化する際に発生する力の、何れかである、請求項1から7の何れかに記載の微小力の評価法。
【請求項9】
物体A〜Cの存在する雰囲気が、真空中、大気中、任意のガス中、任意の液状物質中の、何れかである、請求項1から8の何れかに記載の微小力の評価法。
【請求項10】
A及びB、及び/又はC間に存在させる液状物質が、10nN以下の微小力Fを評価できる表面張力γ又は粘度μを有し、不揮発性である、請求項1から9の何れかに記載の微小力の評価法。
【請求項11】
物体Aが基板状物質、物体Bが棒状物質であり、AとBの間に粒状物質Cを存在させ、A又はBの一方を弾性的に支持する弾性支持手段と、AとBの相対位置を変化させる移動手段と、A〜Cを可視化する手段と、A又はBを支持する微小力Fで形成されたバネ定数kのバネ状物質が、また、AとCの間に微小力F4で形成されたバネ定数kのバネ状物質が存在すると想定し、AとBとが離脱した際に発生する変位量を直接測定する変位量の測定手段と、バネ定数kを算出する手段と、AとC又は複数のC同士の一部が離脱した際に発生する変位量を直接測定する変位量の測定手段と、バネ定数kを算出する手段と、A〜Cの振動を制振する手段、とを有することを特徴とする微小力センサー、又はその評価装置。
【請求項12】
前記弾性支持手段の一端が固定され、他端が棒状物質Bを支持し、前記移動手段が、固定端に対し前記基板状物質Aを相対的に移動させる手段である、請求項11に記載の微小力センサー、又はその評価装置。
【請求項13】
前記の物体AとCが離脱した際に発生する変位量λの測定手段が、測定可能範囲±10mm以上、及び/又は測定可能最大長に対するレーザ直線性±5%以上、及び/又は分解能10ミクロン以上の、CCDレーザ式、又は正反射レーザ式、又は拡散反射型レーザ式、又は光ファイバー式の変位計により、評価する手段を有する、請求項11又は12に記載の微小力センサー、又はその評価装置。
【請求項14】
水平及び/又は鉛直方向の固有振動数10Hz以下の除振台で評価する手段を有する、請求項11から13の何れかに記載の微小力センサー、又はその評価装置。
【請求項15】
前記棒状物質Bの材質が、超硬合金、ステンレス、アルミニウム、ダイヤモンドの何れかである、請求項11から14の何れかに記載の微小力センサー、又はその評価装置。
【請求項16】
前記基板状物質Aが移動ステージに取り付けられ、前記移動ステージがステッピングモーター又はサーボモーターの動作により移動する、請求項11から15の何れかに記載の微小力センサー、又はその評価装置。
【請求項17】
A〜Cを可視化する手段が、顕微鏡、CCDカメラ、デジタルカメラの何れかである、請求項11から16の何れかに記載の微小力センサー、又はその評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−212367(P2007−212367A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−34558(P2006−34558)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(599002043)学校法人 名城大学 (142)
【Fターム(参考)】