説明

気化式石油燃焼装置

【課題】バーナヘッドに供給される二次空気を全体でバランス良く供給することで、耐久性を向上させた気化式石油燃焼装置を提供する。
【解決手段】加熱用ヒ−タ12を備えた気化器1で、気化ガスと燃焼空気との予混合ガスを形成し、これを混合室16を介してバ−ナヘッド23で燃焼させるもので、前記バ−ナヘッド23は交互に備えられた複数の炎孔部24と二次空気供給部25とで構成され、更に炎孔部24を凸状に形成すると共に、頂部には炎孔26を複数個形成し、更に炎孔部24両側壁には上記炎孔26と対向する上部を、該炎孔26とは反対の斜め上方に向かって屈曲させた保炎ガイド29を備えると共に、二次空気供給部25には長穴形状の二次空気孔27bを複数個備えたことで、二次空気開口面積が増え、二次空気量が増加することにより、二次空気で効率良く保炎ガイドを冷却し、バーナの耐久性が向上するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は暖房機や給湯機の燃焼部を構成する加熱用ヒ−タを備えた気化式の石油燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりこの種のものでは、加熱用ヒ−タを備えた気化器で、気化ガスと燃焼空気との予混合ガスを形成し、更に混合室内でこの混合を促進させた後、バ−ナヘッドで周囲から二次空気の供給を受けながら良好な燃焼を行わせるものであった。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特許第3210229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところでこの従来のものでは、二次空気孔を丸穴の連続で形成していたので、開口面積が大きく取れないため、二次空気量が制限されてしまい、そのため、二次空気の作用の一つであるバーナヘッド温度を下げる効果が小さく、バーナヘッドが高温となり、バーナヘッドの変形や破損が発生し、バーナの耐久性に問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで、この発明は上記課題を解決する為、特にその構成を、請求項1では、加熱用ヒ−タを備えた気化器で、気化ガスと燃焼空気との予混合ガスを形成し、これを混合室を介してバ−ナヘッドで燃焼させるものに於いて、前記バ−ナヘッドは交互に備えられた複数の炎孔部と二次空気供給部とで構成され、更に炎孔部を凸状に形成すると共に、頂部には炎孔を複数個形成し、更に炎孔部両側壁には上記炎孔と対向する上部を、該炎孔とは反対の斜め上方に向かって屈曲させた保炎ガイドを備えると共に、二次空気供給部には長穴形状の二次空気孔を複数個備えたものである。
【0005】
又請求項2では、前記二次空気供給部の二次空気孔は、高温部を長穴形状とし、低温部を丸穴形状としたものである。
【0006】
更に請求項3では、前記二次空気供給部の二次空気孔は、気化器に近い部分を丸穴形状とし、気化器より遠い部分を長穴形状としたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の請求項1によれば、長穴形状とすることで、二次空気開口面積が増え、二次空気量が増加することにより、二次空気で効率良く保炎ガイドを冷却し、保炎ガイドに連結したバーナヘッド温度を下げることが出来、バーナの耐久性が向上するものであり、更に二次空気の増加により、バーナヘッドに連結した混合室の二次空気通路を通過する風量も増加するため、混合室も合わせて温度低減出来るので、混合室の耐久性が向上する。
【0008】
又請求項2によれば、バーナヘッドの高温部では長穴で風量大、低温部では丸穴で風量小となり、二次空気風量を各部で調節出来るようになることで、バーナヘッドの温度が均一になり、温度ムラによるバーナヘッドの局部変形を抑えることが出来、耐久性が向上するものである。
【0009】
又請求項3によれば、気化器に近い部分の二次空気孔の形状を丸穴形状にし、気化器から遠い部分を長穴形状にすることにより、空気抵抗の小さい長穴を通る二次空気量が増加し、空気抵抗の大きい丸穴を通る二次空気量が減少するので、従来に比べて気化器が二次空気により冷却されにくくなり、消費電力の低減に繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次にこの発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
1はアルミダイキャストから成る横椀状の気化器で、正面は燃料噴射ノズル2及び一次空気の噴出口3を備えた蓋体4で閉塞され、底部に仕切壁5で2つに仕切られた混合ガスの流出口6を形成している。
【0011】
前記気化器1は燃料噴射ノズル2と対向する内面を、該燃料噴射ノズル2に対して垂直に形成し垂直気化面7とすると共に、燃油が吹き付けられる部分は該燃油の均一な拡散を計る為に平坦面8とし、更にこの平坦面8の周囲には長さの異なる複数個のビ−ド9を水平方向で且つそれぞれ平行に複数段配置して、流下する燃油の蛇行路10を形成しているものである。
【0012】
又上記平坦面8及び蛇行路10は、燃料噴射ノズル2の噴射孔11が左右に1つずつ形成されているので、これに対向して垂直気化面7上の左右にそれぞれ1つずつ設けられている。
【0013】
12は気化器1に鋳込まれたU字状のシ−ズヒ−タから成る加熱用ヒ−タで、垂直気化面7上方から燃料噴射ノズル2側に突出し、該垂直気化面7の上方空間を覆う上側壁13と、垂直気化面7下方から稍突出し流出口6を形成する下側壁14とに鋳込まれているものである。
【0014】
15は気化器1の蛇行路10最終端に備えられた平面から見て台形の案内壁で、気化器1内で形成される気化ガスと燃焼用一次空気による混合ガスを、底部の2つの流出口6にスム−ズに分割して案内するものである。
【0015】
16は気化器1下部に備えられたアルミダイキャスト製の混合室で、流出口6に連通し混合ガスの整流を行うように1段下方に凹ませて大容量とした整流室17と、該整流室17に連通し先細状に区画成形され間に下方に連通する二次空気室18を交互に有する複数のガス室19とを一体成形して構成され、更に整流室17底部にはU字状のシ−ズヒ−タから成る補助ヒ−タ20が鋳込まれており、予熱時の一定時間のみ通電され混合室16を予熱するものである。
【0016】
又上記混合室16内面には、耐熱塗料を塗布し微細凹凸の塗装面21を形成することで、混合ガスの流通抵抗として該混合ガスの噴出速度を均一にすると共に整流の促進を計るものである。
【0017】
22は各ガス室19入口に上方から垂下して備えられた整流板で、一枚板に切欠部と屈曲片とを交互に形成して構成され、ガス室19入口面積の約1/6を上方から閉塞することによって、ガス室19への送風力を抑制して火炎の片寄りを防止して、全体的に均一な火炎を形成するようにしているものである。
【0018】
23は混合室16のガス室19及び二次空気室18上で気化器1の背面側に形成されたバ−ナヘッドで、前記ガス室19上に固定される凸状の炎孔部24と、該炎孔部24間隔で二次空気室18と連通した二次空気供給部25とで構成され、炎孔部24頂部にはほぼ中央部から側壁まで延設された細長逆L字状の炎孔26が、長手方向に沿って左右交互に形成され、更に二次空気供給部25底部には二次空気室18と連通する二次空気孔27を、炎孔部24のフランジ部28に形成しているものである。
【0019】
前記二次空気孔27は、気化器1に近く低温部分の1/3を直径約3mmで一列9個の丸穴形状の二次空気孔27aとし、気化器1から遠く高温部分の2/3を幅約3mm、長さ約13mmで一列8個の長穴形状の二次空気孔27bとしており、供給される二次空気量が丸穴と長穴とは相違することを利用して、均一にバーナヘッド23を冷却し耐久性を向上させるものである。
【0020】
29は炎孔部24両側に固着された保炎ガイドで、炎孔26と対向する上部を該炎孔26とは反対側の斜め上方に向かって屈曲させ、炎孔26に形成される火炎の広がりを抑制すると共に下方から供給される二次空気の案内を行うものである。
【0021】
30は炎孔部24内に備えられた耐熱性の整流アミで、線径0.29mmの線材を36メッシュに編み上げて構成され、炎孔26から噴出する混合ガスの最後の整流を行うものである。
【0022】
31は気化器1背面からバ−ナヘッド23上に突出した縦長の吸熱フィンで、燃焼ガスとの接触面積を多くしてヒ−トバック量を増大させる為に複数に分割形成され、燃焼時には燃焼熱のヒ−トバックを気化熱として利用し加熱用ヒ−タ12の省電力化を計るものであり、上端はバ−ナヘッド23側に向かって下り傾斜した傾斜部32とし、上昇してくる燃焼熱の抜けを良くしているものである。
【0023】
更に前記各吸熱フィン31間下部には炎孔部24が位置するように配設され、そしてこの吸熱フィン31間の炎孔部24には他の炎孔26の約10倍の大きさとなる2つの四角形から成る大炎孔33を形成し、又各吸熱フィン31の突出端面には下端から上端へ抜ける縦溝34をほぼ中央部に1本設け、大火力燃焼時には大炎孔33に形成される火炎の広がりで、この縦溝34にも火炎が入り込み吸熱面積が増大するように構成されているものである。
【0024】
35は吸熱フィン31上方に備えられたL字状の抑止板で、気化器1側から吸熱フィン31上約2/3まで張り出して該吸熱フィン31間及び縦溝34上を覆い、この間を上昇して来る燃焼熱の上昇力を抑制するものであり、又吸熱フィン31上方全体を覆うまで張り出させた場合には、抑止板35自体にスリットや穴を形成して抑制力を調節するようにしても良いものである。
【0025】
36は吸熱フィン31間の気化器1背面壁に横方向R状の凸部を複数個連続して形成した凹凸面で、吸熱面積を増大させると共に、燃焼熱の上昇力を制御し十分なヒ−トバックを得るようにしているもので、特にR形状であるから燃焼熱に乱流を起こさせることなく、スム−ズにその上昇力のみを抑制することが出来るものである。
【0026】
37はバ−ナ部23の上方を囲った燃焼室で、外周は空気室38を介してカバ−枠39で覆われている。
40は燃焼ファンで、風路41を介して噴出口3と空気室38に連通し、噴出口3には燃焼用の一次空気を供給し、空気室38には気化器1側方を通り混合室16下方からバ−ナ部23の二次空気供給部25へ供給される二次空気及び、燃焼室37を冷却する空気を供給するものである。
42は燃料噴射ノズル2に送油管43を介して燃油を供給する電磁ポンプ、44は遮熱板である。
【0027】
次にこの発明一実施形態の作動について説明する。
今加熱用ヒ−タ12に通電し気化器1を所定温度まで加熱すれば、これを適所に備えた温度センサ−(図示せず)で検知し、燃焼ファン40及び電磁ポンプ42を駆動させることで、気化器1には燃料噴射ノズル2から燃油が、又噴出口3からは燃焼用の一次空気がそれぞれ供給される。
【0028】
そして気化器1では、燃料噴射ノズル2から噴射された燃油は、垂直気化面7の平坦面8に衝突し凹凸がないので均一に周囲に拡散するが、直ぐには落下せず周囲のビ−ド9上を供給される一次空気の送風力もあって蛇行路10に沿って順次移動し、十分な気化時間となって気化が促進されると共に、ビ−ド9による凹凸で供給される一次空気も乱流を起こし気化ガスとの混合も十分に行われ、良好な混合ガスを得ることが出来るものである。
【0029】
従って、垂直気化面7によって軽量・コンパクトな気化器1を得て、小型で強力な燃焼装置が得られると共に、気化能力を低下させることなく常に十分な混合ガスを形成することが出来るものである。
【0030】
又垂直気化面7で気化された気化ガスは、該垂直気化面7に衝突して跳ね返される一次空気と共に、横椀状の気化器1内で加熱用ヒ−タ12を備えた上下側壁13・14側に流れるが、この上下側壁13・14は加熱用ヒ−タ12によって十分加熱されているので、気化ガスの気化は更に促進されると共に、一次空気も良好に加熱され、しかも気化器1は横椀状で気化ガスと一次空気とは直ぐには流出せず、ある程度気化器1内にとどまり十分混合した後、流出口6から流出されるものである。
【0031】
一方この流出口6から流出した混合ガスは混合室16内に流入するが、該混合室16は上記気化器1の予熱と同時に通電される補助ヒ−タ20によって一定時間加熱され、高温の予熱状態が維持されているので、流入した混合ガスは液化することながないものである。
【0032】
そして、混合ガスは整流室17で整流を促進した後、直ぐに複数のガス室19に細かく分割して流入し、内壁面の塗装面21による微細凹凸と先細形状とによって、炎孔部24の炎孔26から噴出する混合ガスの噴出速度は、長手方向に関係なく全体が均一となり、又混合ガスは炎孔26から噴出される直前に整流アミ30を通過して最後に整流されて噴出し、適宜点火手段(図示せず)で点火されれば燃焼が開始されるものである。
【0033】
更に火炎が形成される炎孔26は、炎孔部24頂部に左右交互に設けられているので、残部が十分確保され強度的に強く長期間の燃焼でも焼損する心配はないものであり、又大火力燃焼で火炎が大きくなったとしても、成形される火炎は左右交互であり互いに干渉することもなく良好な燃焼炎が得られるものである。
【0034】
更に各炎孔部24間にはそれぞれ二次空気供給部25が形成されると共に、炎孔部24の側壁面まで炎孔26が延設されこれを保炎ガイド29が案内しているので、各炎孔26に形成される火炎の広がりは保炎ガイド29が抑制し屈曲部分で火炎の案内も行い、又火炎は二次空気供給部25上に張り出し、ここに下方の二次空気孔27からの二次空気がスム−ズに且つ確実に供給され、完全燃焼の良好な燃焼が行われるものである。
【0035】
この時、二次空気孔27では、気化器1に近い丸穴形状の二次空気孔27aからは、流通抵抗が大きく風量小の二次空気が供給されて、保炎ガイド29を冷却した後に燃焼されるものであり、一方気化器1から遠い長穴形状の二次空気孔27bからは、流通抵抗が小さく風量大の二次空気が供給され、保炎ガイド29を強力に冷却した後に燃焼されるものであり、気化器1の近くは該気化器1がヒートバック用に熱を奪うので、低温部分であるから、冷却用の二次空気はそれ程必要とせず、又気化器1自身もヒートバックの関係で冷却されないほうが、消費電力を抑えられるので、丸穴形状の二次空気孔27aを位置させており、逆に気化器1から遠くなれば熱が奪われないので、高温部分となるから、冷却用の二次空気は必要であり、長穴形状の二次空気孔27bを位置させて、バランスをとって全体が均一の冷却状態となるようして、耐久性の向上を図るものである。
【0036】
又上記の燃焼時吸熱フィン31間では、大炎孔33に他より大きな火炎が形成され、多量の燃焼熱が吸熱フィン31間を上昇することで、該吸熱フィン31を介して気化器1は十分なヒ−トバック量を得て、燃焼開始後は加熱用ヒ−タ12に通電することなく、ヒ−トバックで気化熱を得ることが出来確実に省電力化を計れるものである。
【0037】
そして、燃焼室37上方に内方を水が流通する給湯用熱交換器(図示せず)等を設置すれば、燃焼音も小さく応答性が良い良好な給湯を得ることが出来るものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明一実施形態を付した気化式石油燃焼装置の断面図。
【図2】同燃焼室の横断面図。
【図3】同要部の断面図。
【図4】同要部の分解斜視図。
【図5】同要部の拡大断面図。
【図6】同気化器の正面図。
【符号の説明】
【0039】
1 気化器
12 加熱用ヒ−タ
16 混合室
23 バ−ナヘッド
24 炎孔部
25 二次空気供給部
26 炎孔
27 二次空気孔
27a 丸穴形状の二次空気孔
27b 長穴形状の二次空気孔
29 保炎ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱用ヒ−タを備えた気化器で、気化ガスと燃焼空気との予混合ガスを形成し、これを混合室を介してバ−ナヘッドで燃焼させるものに於いて、前記バ−ナヘッドは交互に備えられた複数の炎孔部と二次空気供給部とで構成され、更に炎孔部を凸状に形成すると共に、頂部には炎孔を複数個形成し、更に炎孔部両側壁には上記炎孔と対向する上部を、該炎孔とは反対の斜め上方に向かって屈曲させた保炎ガイドを備えると共に、二次空気供給部には長穴形状の二次空気孔を複数個備えた事を特徴とする気化式石油燃焼装置。
【請求項2】
前記二次空気供給部の二次空気孔は、高温部を長穴形状とし、低温部を丸穴形状とした事を特徴とする請求項1記載の気化式石油燃焼装置。
【請求項3】
前記二次空気供給部の二次空気孔は、気化器に近い部分を丸穴形状とし、気化器より遠い部分を長穴形状とした事を特徴とする請求項1記載の気化式石油燃焼装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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