説明

気液混合攪拌装置

【課題】半導体製造装置や液晶製造装置等から排出される有毒ガス中の有害成分を除外、回収する除外装置において、被処理ガスを導水管内に導入、混合する吸気管の詰まりを防止する。
【解決手段】導水管2内に吸気管13を挿着し、該吸気管の下端13Cから排出される有毒ガスGと前記導水管内の水Wとを混合させる気液混合攪拌装置において、前記吸気管内に可撓性チューブ18を挿着して該可撓性チューブの下端部18cを前記吸気管の下端部に対向させるとともに、少なくとも前記吸気管の下端部側と前記可撓性チューブの下端部側とを離間させて振動間隙Aを形成させることにより、気液混合に伴って前記可撓性チューブが振動してその下端部が吸気管内周面に衝突し、前記可撓性チューブ下端に付着した固形物が剥離され、吸気管の詰まりを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体製造装置や液晶製造装置等から排出される有毒ガスを除害、回収するための、除害装置に関するものであるが、更に述べると、導水管内に吸気管を挿着し、該吸気管の下端から排出される有毒ガスと前記導水管内の水とを混合させる、気液混合攪拌装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造ラインや液晶製造ラインから排出されるガスには、SiO2やWO3等の微細な粉体と同時に有害なガスが含まれているので、そのまま大気中に放出することができない。そのため、従来、除害装置を用いて有毒ガスの除害を行っているが、この除害装置として、次の様なものがある。(例えば、特許文献1、参照)。
【0003】
吸気管から導入される有毒ガスを水に混入せしめて除害する装置であって,前記吸気管内を乾燥させるための気体を流入させる乾燥用管と、該気体の流入を制御する弁とを有する有毒ガスの除害装置において;前記吸気管内を洗浄させるための液体を流入させる洗浄用管と、該液体の流入を制御する弁とを有し、吸気圧力上昇時には、有毒ガスの流入を制限して前記液体を前記吸気管内に流入せしめて管内洗浄し、その後、管内乾燥手段により前記吸気管内を乾燥させて管内乾燥した後、有毒ガスを再度導入するようにした除害装置。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2005−296918
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来例では、適宜吸気管の内周面全体を洗浄乾燥させることにより該吸気管の詰まりを防止しているが、乾燥用管や洗浄用管等の設備が必要となるとともに、洗浄及び乾燥作業に時間がかかる。
【0006】
この発明は、上記事情に鑑み、簡単に、吸気管の詰まりを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件発明者は、WF(六フッ化タングステン)やSiF(四フッ化ケイ素)などの有害ガスは、水と反応して粉体となるため、前記水と前記ガスとが混合攪拌される場所に位置する、前記吸気管の下端部近傍には、前記粉体が付着しやすいことに注目するとともに、前記課題を解決するためには、前記吸気管の下端部を振動させればよいのではないか、と考えた。
【0008】
そこで、どのようにすれば、前記吸気管の下端部を振動させることができるか、について検討した。除害装置は、運転中にポンプ等の駆動により振動し、僅かに吸気管が振動しているので、この吸気管内に前記吸気管より小径の可撓性チューブを挿入し、その先端部を前記吸気管に固定した。
【0009】
そうすると、前記除害装置の振動により前記チューブが振動して該吸気管の内周面に衝突し、繰り返し該吸気管の下端部に衝撃を与えて振動させるので、前記チューブ及び吸気管に粉体が付着できないことがわかった。この発明は、前記知見に基づいてなされたものである。
【0010】
この発明は、導水管内に吸気管を挿着し、該吸気管の下端から排出される有毒ガスと前記導水管内の水とを混合させる気液混合攪拌装置において、前記吸気管内に可撓性チューブを挿着して該可撓性チューブの下端部を前記吸気管の下端部に対向させるとともに、少なくとも前記吸気管の下端部側と前記可撓性チューブの下端部側とを離間させて振動間隙を形成したことを特徴とする。
【0011】
この発明の前記可撓性チューブの下端は、前記吸気管の下端と面一であることを特徴とする。この発明の前記可撓性チューブの下端は、前記吸気管の下端より突出していることを特徴とする。この発明の前記可撓性チューブの長さは、前記吸気管の垂直方向の長さと同一、又は、それより長いことを特徴とする。
【0012】
この発明の前記可撓性チューブは、前記吸気管の垂直方向の長さより短く、かつ、前記吸気管の下端部側にのみ設けられていることを特徴とする。この発明の前記振動間隙は、前記吸気管の垂直方向全長にわたって設けられていることを特徴とする。この発明の前記可撓性チューブの下端部に、前記導水管内を流れる水が衝突する拡径部を連設したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、前記吸気管内に可撓性チューブを挿着して該可撓性チューブの下端部を前記吸気管の下端部に対向させるとともに、少なくとも前記吸気管の下端部側と前記可撓性チューブの下端部側とを離間させて振動間隙を形成したので、気液混合攪拌装置が振動すると、前記可撓性チューブが振動してその下端部が吸気管の内周面に衝突する。そのため、前記該チューブの下端部に付着する粉体は、剥離される。従って、簡単に、吸気管の詰まりを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】本発明の第2実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1実施の形態を図1、図2に基づいて説明する。
有毒ガスの除害装置の液体槽1には、処理液、例えば、水Wが貯溜されている。この液体槽1には、該液体槽1内の液Wを循環させるための循環路5が配置されている。この循環路5には、導水管2と吸気管13を備えた気液混合攪拌装置4が設けられている。
【0016】
前記導水管2は、L字状に形成され、その上端は前記循環路5に連結され、その下端2aには、前記導水管2より小径の混合気液管14が連結されている。前記液体槽1の上部には、除害されたガス(処理済ガス)を排気するための排気口1aが突設されている。
【0017】
前記導水管2内には、吸気管13が挿着されているが、この吸気管13は、例えば、直径(内径)20mmのエンビ管である。該吸気管13は、前記導水管2の曲がり部を突き抜けて突出しており、その上端部13aには、有害ガスGの供給ラインの接続手段と、可撓性チューブ18の上端部18aを固定する保持手段が設けられている。
【0018】
前記可撓性チューブ18は、例えば、直径(外径)16mmのテフロン(登録商標)製パイプであり、前記吸気管13の垂直方向の長さより僅かに長く形成されている。前記吸気管13の内周面13bと前記可撓性チューブ18の外周面18aとの間には、振動間隙Aが形成されている。この振動間隙Aは、例えば、2mmであるが、その値は必要に応じて適宜選択される。
【0019】
前記チューブ18の下端部18cは、前記吸気管13の下端部13cと対向しているが、前記チューブ18の下端は、前記吸気管13の下端より僅かに突出している。このチューブ18の下端の突出量は、前記衝撃間隙Aと同等であるが、必要に応じて適宜選択される。
【0020】
導水管2の下端2a側の内周面には、吸気管13の直径より大きな直径を有する狭路リング19が嵌着され、該狭路リング19には、前記吸気管13の下端部13cを保持する楕円板20が設けられている。
【0021】
次に、本実施形態の作動について説明する。図示しないポンプにより液体層1内の液Wが循環路5に送られると、前記液Wは前記導水管2内に流れこむとともに、楕円板20の作用により螺旋流となる。前記可撓性チューブ18内を流下する有害ガスGは前記液Wと混合攪拌され、微細気泡状なる。この混合気液WGは混合気液管14を介して液体槽1内に戻されて、除害される。その後、除害されたガス(処理済みガス)は、排気口1aを介して生産ライン等に送り込まれる。
【0022】
除害装置を連続運転していると、有害ガスGと水Wとの反応により発生した粉体が、前記気液混合攪拌装置4のチューブ18の下端部18cに付着し堆積しようとする。
【0023】
しかし、前記除害装置の運転中には、ポンプ等の駆動に伴い振動が発生し、前記吸気管13及可撓性チューブ18が振動する。このとき、可撓性チューブ18は、吸気管13より柔らかくて変位しやすいため、吸気管13に比べて大きく揺れるので、前記可撓性チューブ18の下端部18cは、振動間隙A内を径方向に変位し、吸気管13の下端部13cへの衝突を繰り返す。そのため、前記チューブ中央部18の下端部18cに付着した粉体は、剥がれ落ちるので、該チューブ18及び吸気管13が粉体により詰まることはない。
【0024】
本発明の第2実施の形態を図3に基づいて説明するが、図1、図2と同一図面符号はその名称も機能も同一である。この実施形態と前記第1実施形態との相違点は、可撓性チューブ18の下端部18cに、前記導水管2内を流れる水が衝突する拡径部18dを連設したことである。この拡径部18dは、略円錐台状に形成され、その上端の外径は前記可撓性チューブ18の下端の外径と等しく、前記拡径部18dの下端の外径は、前記吸気管13の外径とほぼ等しく形成されている。この拡径部18dの形状、大きさ等は必要に応じて適宜変更される。
【0025】
この実施形態では、前記導水管2内を流れる水Wは前記可撓性チューブ18の拡径部18dに衝突するので、該チューブ18の下端部18cに衝撃力を与える。そのため、前記可撓性チューブ18の下端部18cは、前記気液混合攪拌装置4の振動のほかに、前記衝撃力も受けるので、前記可撓性チューブ18の下端部18cには、激しい振動が発生する。よって、該チューブ18の下端部18cは、第1実施形態における振動よりも強い振動を受けることになるので、粉体の付着防止効果をより一層向上させることができる。
【0026】
この発明の実施形態は、上記に限定されるものはなく、例えば、次のようにしても良い。
イ:前記可撓性チューブ18の下端を前記吸気管13の下端から突出させる代わりに、両下端を面一(突出量ゼロ)に位置するようしても良い
ロ:前記可撓性チューブ18の長さは、前記吸気管13の垂直方向の長さより長く形成する代わりに、同一に形成しても良い。
【0027】
ハ:前記可撓性チューブ18は、前記吸気管13の垂直方向の長さより短く、かつ、前記吸気管13の下端部側にのみ、例えば、吸気管13の垂直方向の長さの下半分の長さ、に形成し、その上端部を吸気管13の内周面に固定しても良い。
【0028】
二:前記振動間隙Aは、前記吸気管13の垂直方向の全長にわたって設ける代わりに、その下端部側のみ、例えば、吸気管13の垂直方向の長さの下半分の長さに設け、それ以外の部分は、吸気管13の内周面13bと前記チューブ18の外周面18aとを密着させて前記振動間隙Aを省略しても良い。
【符号の説明】
【0029】
1 液体槽
2 導水管
4 気液混合攪拌装置
13 吸気管
18 可撓性チューブ
W 液
G 有害ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導水管内に吸気管を挿着し、該吸気管の下端から排出される有毒ガスと前記導水管内の水とを混合させる気液混合攪拌装置において、
前記吸気管内に可撓性チューブを挿着して該可撓性チューブの下端部を前記吸気管の下端部に対向させるとともに、
少なくとも前記吸気管の下端部側と前記可撓性チューブの下端部側とを離間させて振動間隙を形成したことを特徴とする気液混合攪拌装置。
【請求項2】
前記可撓性チューブの下端は、前記吸気管の下端と面一であることを特徴とする請求項1記載の気液混合攪拌装置。
【請求項3】
前記可撓性チューブの下端は、前記吸気管の下端より突出していることを特徴とする請求項1記載の気液混合攪拌装置。
【請求項4】
前記可撓性チューブの長さは、前記吸気管の垂直方向の長さと同一、又は、それより長いことを特徴とする請求項1、2、又は、3記載の気液混合攪拌装置。
【請求項5】
前記可撓性チューブは、前記吸気管の垂直方向の長さより短く、かつ、前記吸気管の下端部側にのみ設けられていることを特徴とする請求項1、2、又は、3記載の気液混合攪拌装置。
【請求項6】
前記振動間隙は、前記吸気管の垂直方向全長にわたって設けられていることを特徴とする請求項1記載の気液混合攪拌装置。
【請求項7】
前記可撓性チューブの下端部に、前記導水管内を流れる水が衝突する拡径部を連設したことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、又は、6記載の気液混合攪拌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−125816(P2011−125816A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288301(P2009−288301)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【出願人】(593129423)株式会社東設 (13)
【Fターム(参考)】