説明

水パージ剤およびそれを用いたレジストパターン形成方法

【課題】 液浸リソグラフィプロセスにおけるディフェクトを低減する。
【解決手段】 現像前の露光後加熱に先立って、液浸露光したウェハ表面の付着水を少なくとも非水溶剤を含む水パージ剤で除去する工程を含む液浸リソグラフィプロセスによるレジストパターン形成方法。液浸リソグラフィプロセスにおける露光用水を除去するための非水溶剤を含む水パージ剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液浸リソグラフィによるレジストパターン形成方法およびそれに用いるための水パージ剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路の配線の微細化が進み、サブミクロン以下のパターンが形成できる解像度に優れたリソグラフィプロセスの開発が進められている。リソグラフィプロセスは、ウェハ表面にフォトレジスト材料(感放射線性樹脂組成物)を塗布し、プレベーク(PAB処理)して形成したレジスト膜をフォトマスクを介して露光した後、露光後加熱(PEB処理:post exprosure bake)し、次いでマスクパターンを現像して、ウェハ表面にレジストパターンを形成する方法である。
【0003】
リソグラフィプロセスでは、上記で形成されたレジストパターンは、その後、現像液を除去するためリンス(洗浄)し、乾燥するが、このリンス(洗浄)液が純水であることによるパターンの崩壊あるいは剥がれなどが問題となっている。この不具合は、リンス後にパターンを乾燥する過程で、互いに隣接するパターン間に留まったリンス液(純水)の大きな表面張力によって隣接するパターン間に生じる負圧に起因してレジストパターンが変形するためとされている。このため、現像液のリンス液として、界面活性剤たとえばオキシエチレン基を有する非フッ素系の非イオン性界面活性剤を含ませた水を用いることが提案されている(たとえば特許文献1など参照)。また、レジスト材料がα−クロロ(メタ)アクリレート−α−メチルスチレン共重合体である場合の現像液のリンス液として、パー(ペルと表記することもある)フルオロカーボン系溶剤が提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
上記パーフルオロカーボン系溶剤は、精密機器、光学レンズ、電子部品などの加工において使用した水を洗い落とすための水切り剤としても知られている(たとえば特許文献3〜4など参照)。このようなフッ素系水切り剤としては、さらに、ハイドロフルオロエーテルにパーフルオロカルボン酸のアミン塩を添加したもの(特許文献5参照)、ハイドロフルオロエーテル、1,2−ジクロロエチレンおよび界面活性剤の混合液(特許文献6参照)なども提案されている。
【0005】
リソグラフィプロセスを適用すれば、現在90nm程度の線幅のパターンが可能となっているが、より微細なパターンを得るために、解像度のさらなる向上が図られている。その方法の1つに光源波長の短波長化があり、光源は、現行のKrFエキシマレーザー(248nm)から、今後、ArFエキシマレーザー(193nm)、Fレーザー(157nm)への移行が予想される。
解像度を向上させる別の手段として、最近、リソグラフィの露光過程において、投影レンズとウェハ表面のフォトレジスト層との間の空間に、空気よりも大きな屈折率を有する液体を介在させる液浸露光プロセスを応用した液浸リソグラフィが注目されている。この液浸露光プロセスは、フォトレジストパターンの解像度がNA(開口数)に反比例し、NAは露光光が通過する媒質の屈折率に比例する原理に基づいている。このため、使用する露光光源が同一であっても、露光光路空間が空気あるいは窒素などの不活性ガスである従来のリソグラフィプロセスにおいて、より短波長の光源を用いるか、もしくは高NAレンズを用いる場合に相当する解像力が得られ、焦点深度幅の低下もないことから、より微細なパターンを作製できる利点がある。たとえば、ArFエキシマレーザー(193nm)を露光光源とするリソグラフィにより達成可能なレジストパターンの線幅は、露光光路空間が空気あるいは不活性ガスである場合には65nmであるのに対し、液浸露光プロセスを適用した場合には45nmである。液浸露光プロセスに使用される液体は、通常、水または水を主成分とする水系液体である。
【0006】
一方、材料面から解像度を向上させるものとして、高感度フォトレジスト材料の開発が進んでいる。特に、露光により発生する酸の触媒作用により保護基が分解され、さらに保護基の分解により発生した酸が分解反応を加速していく化学増幅型フォトレジスト材料が用いられつつある。
【0007】
しかしながら上記のようにレジストパターンの微細化が進むほどディフェクトが生成しやすいという問題がある。特に、液浸リソグラフィプロセスに化学増幅型フォトレジストを適用すると、多数のディフェクトが生成する。たとえば、露光時に、フォトレジスト層から酸発生剤または酸が、フォトレジスト層に接触する水と相互作用し、レジストの酸不足あるいは酸過多を生じ、最終的にT−トップ、ラウンドトップなどのパターン変形を生じるなどして所望の微細パターンが形成できない等の問題がある。この問題を解決する方法としては、フォトレジスト材料の改良あるいはトップコートの被覆が挙げられる。レジストパターン形成過程でレジスト膜が侵食されるのを避けるためトップコートを設けることは一般的であり、化学増幅型フォトレジストを用いる液浸リソグラフィーに使用するためのフォトレジスト膜の保護膜も提案されている(たとえば特許文献1など参照)。レジスト表面の保護膜は、露光後現像前にフッ素系溶剤などにより剥離される。保護膜の剥離処理は、露光後現像前に行われるPEB処理と、どちらが先でもよい。
【0008】
【特許文献1】特開2004−184648号公報
【特許文献2】特開平10−228117号公報
【特許文献3】特開平5−140776号公報
【特許文献4】特開平6−71103号公報
【特許文献5】特開2003−205201号公報
【特許文献6】特開平11−209798号公報
【特許文献7】国際公開第2004/074937号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のような液浸リソグラフィプロセスにより、特に化学増幅型フォトレジストを用いて極微細なレジストパターンを形成する場合には、プロセスの過程において保護膜を設け、さらに現像後のリンス液に界面活性剤を含む水を用いてもディフェクトが発生する。このため本発明は、化学増幅型フォトレジストを用いる場合であっても、ディフェクトを低減しうる液浸リソグラフィプロセスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく、液浸リソグラフィプロセスの各工程について検討し、ディフェクトの発生したレジスト表面、特に8インチ径程度の大径ウェハの表面に化学増幅型フォトレジストを使用した場合に発生するレジスト表面をつぶさに観察することによりディフェクトはレジスト表面に不均一に存在することを見出した。端的に表現すれば、ディフェクトはウェハの中心からほぼ扇形状の濃淡密度で存在すると見られた。このようなディフェクトパターンの知見に基づいて、ディフェクトの発生可能性を露光およびPEB処理工程に着目し、水の存在下での露光およびPEB処理によりレジストパターン間に加わるエネルギーによりパターンの変形を生じると推測した。液浸露光の実際は、投影レンズとウェハ表面のフォトレジスト層との間の約1mm程度の距離の空間内に、たとえば水を掃引させて行い、露光の終わったレジスト表面からは水を吸引除去しているため、目視上は水で覆われていない。したがって、従来、露光時の水の影響および現像後の水とディフェクトとの関係については論議されてきたが、露光後現像前の水とディフェクトとの関係については未だ着目されてないといえる。これを報告するものは見当たらない。しかしながら微視的には、上記のようなディフェクトパターンから、露光時に使用する水がPEB処理時に残存すると考えられる。また水の存在に起因するディフェクトは、露光時よりもPEB処理時のエネルギーにより多く生じると考えられる。これら知見から、液浸露光で使用した水を、PEB処理に先立って除去すればよいことに想到し、以下の本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、液浸リソグラフィにおいて、現像前の露光後加熱に先立って、液浸露光したウェハ表面に、少なくとも非水溶剤を含む水パージ剤を接触させて、該ウェハ表面に残存する付着水を除去する工程を含むレジストパターン形成方法を提供する。
【0012】
また本発明は、液浸リソグラフィプロセスにおいて、液浸露光後にウェハ表面に残存する付着水を除去するための非水溶剤を含む水パージ剤を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従い、液浸露光後にウェハ表面に残存する付着水を、現像前の露光後加熱に先立って除去することにより、ディフェクトの発生を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るレジストパターン形成方法は、液浸リソグラフィにおいて、現像前の露光後加熱に先立って、液浸露光したウェハ表面に、少なくとも非水溶剤を含む水パージ剤を接触させて、該ウェハ表面に残存する付着水を除去する工程を含む。本発明では、このウェハ表面の付着水の除去工程を含む以外は、液浸リソグラフィプロセスの各工程および各工程で使用する材料、現像液などは特に制限されない。レジスト材料の種類も制限されず、たとえば特許文献7として示したWO2004/074937などに詳細に記載されたフォトレジスト、保護膜を使用することができる。ここに記載されたフォトレジストおよび、保護膜および他の材料を引用して本明細書に記載されているものとすることができる。本発明では、なかでも化学増幅型フォトレジスト材料を好ましい材料として選択することができる。
【0015】
本発明におけるレジストパターン形成方法を、好ましい例により簡略的に示す。まず、周知の方法で、基板ウェハ表面にレジスト膜を設ける。具体的には、ウェハ表面にレジスト材料をスピナーなどでコーティングし、プレベーク(PAB処理)してレジスト膜を形成する。このレジスト層表面に、液浸露光時の水からレジスト膜を保護するためのコーティング層(保護膜)、あるいはウェハとレジスト層との間に反射防止膜を、互いに独立に設けてもよい。次いで、水系液体、通常水を介在させて液浸露光する。露光光源も特に制限されず、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、電子線、X線、難X線などの放射線を用いることができ、レジスト膜の特性に応じて選択することができる。
【0016】
次いで、露光後加熱(PEB処理)し、次いでマスクパターンを現像、リンスしてウェハ表面に形成されたレジストパターンを得るが、本発明では、PEB処理前に、後述する本発明に係る水パージ剤をウェハ表面に接触させて、液浸露光後のウェハ表面に残存する付着水を完全に除去する。水パージ剤とウェハ表面との接触方法としては、現像の際に用いられるディップ現像、パドル現像、またはスプレー現像と同様の方法を採用できる。レジスト膜表面に保護膜を有する場合には、保護膜の剥離をPEB処理前に行っても後に行ってもよい。
この水除去工程を行った後は、通常のリソグラフィプロセスに従い、PEB処理、現像、リンス、乾燥を続けて行う。特にリンス工程では、ディフェクトを生じにくいリンス剤として知られたものを使用することが好ましい。
【0017】
本発明に係る水パージ剤は、少なくとも非水溶剤を含む。この非水溶剤として、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ペルフルオロカーボン等の含フッ素溶剤を含むことが好ましい。
このような含フッ素溶剤のうちでも、ハイドロクロロフルオロカーボンとしては、CHCClF、CHClCFCF、CHClFCFCClF等が好ましい。
【0018】
ハイドロフルオロカーボンとしては、CFCFCFCHF、CFCFCFCHF、CFCFCHCF、CHFCFCFCHF、CHFCHCFCF、CFCHFCHCF、CFCHCFCHF、CHFCHFCFCHF、CFCHFCFCH、CHFCHFCHFCHF、CFCHCFCH、CFCFCHCH、CHFCHCFCH、CHFCFCFCFCF、CFCFCFCHFCF、CHFCFCFCFCHF、CFCHFCHFCFCF、CFCHFCFCHCF、CFCF(CF)CHCHF、CFCH(CF)CHCF、CFCHCFCHCF、CHFCHFCFCHFCHF、CHFCFCFCHFCH、CFCHCHCHCF、CHFCHCFCHCHF、CF(CFCHF、CF(CFCHF、CFCFCFCFCHCF、CHFCFCFCFCFCHF、CFCH(CF)CHFCFCF、CFCFCHCH(CF)CF、CFCHCFCFCHCF、CFCFCHCHCFCF、CFCFCFCFCHCH、CFCH(CF)CHCHCF、CHFCFCHCHCFCHF、CFCFCFCHCHCH等が好ましい。製品としては、ソルベイ社より販売されているCFCHCFCH(HFC−365mfc)や、日本ゼオン社より販売されているゼオローラ−H(登録商標)、デュポン社より販売されているバートレル−XF(登録商標)、旭硝子社よりAC−2000(登録商標)名で販売されているC13H等が挙げられる。
【0019】
ハイドロフルオロエーテルとしては、分離型ハイドロフルオロエーテルまたは非分離型ハイドロフルオロエーテルが好ましい。分離型ハイドロフルオロエーテルとは、エーテル性酸素原子を介してぺルフルオロアルキル基またはペルフルオロアルキレン基、およびアルキル基またはアルキレン基が結合している化合物である。非分離型ハイドロフルオロエーテルとは、部分的にフッ素化されたアルキル基またはアルキレン基を含むハイドロフルオロエーテルである。
【0020】
分離型ハイドロフルオロエーテルとしては、CFCFCFOCH、(CFCFOCH、CFCFCFOCHCH、CFCFCFCFOCH、(CFCFCFOCH、(CFCOCH、CFCFCFCFOCHCH、(CF)CFCFOCHCH、(CFCOCHCH、CFCF(OCH)CF(CF、CFCF(OCHCH)CF(CF、C11OCHCH、CFCFCFCF(OCHCH)CF(CF、CHO(CFOCH、CHOCFCFOCHCH、COCF(CF)CFOCH等が好ましい。製品としては、住友スリーエム社より販売されているノベック(登録商標)のHFE−7000,7100,7200,7500等が挙げられる。
【0021】
非分離型ハイドロフルオロエーテルとしては、CHFOCFOCHF、CHFCFOCHF、CFCFCFOCHF、CFCFOCHCHF、CHFCFOCHCF3、CHFCFCHOCF、CFCFCHOCHF、CHFCFOCHCHF、CFCHOCFCHF、CFCHOCFCHF、CHFCFCFOCH、HFCFCHOCH、CFCFCFOCHCF、CFCFCHOCFCF、CFCFCFOCHCHF、CFCFCHOCFCHF、CHFCFCHOCFCF、CHFCFCHOCFCHF、CFCHFCFCHOCF、CFCHFCFCHOCHF、CFCFCFCHOCH、(CFCHCFOCH、CFCFCFOCHCFCF、CFCFCFOCHCFCHF、CFCFCFCFOCFCHF、CF(CFOCHF、CHFOCFCFOCHF、CHFOCFOCFCFOCHF、CHFOCFOCFOCFOCHF等が好ましい。製品としては、旭硝子及びダイキン工業社より販売されているCFCHOCFCHF(HFE−347pc−f)等が挙げられる。
【0022】
ペルフルオロカーボンとしては、炭素原子数5〜15の鎖状または分岐、環状の全フッ素化炭化水素や、全フッ素化アルキルアミン、全フッ素化アルキルエーテル等が好ましい。製品としては、住友スリーエム社より販売されているフロリナート(登録商標)のFC−87,72,84,77,3255,3283,40,43,70等や、ソルベー社より販売されているガルデン(登録商標)のHT−55,70,90,110,135,170,200,230,270等や、F2ケミカル社より販売されているフルテック(登録商標)のPP−50,1,2,3,6,9,10,11等が挙げられる。
【0023】
本発明に係る水パージ剤は、上記含フッ素溶剤の単一種を含むものであっても、2種以上を含むものであってもよい。また本発明に係る水パージ剤は、上記含フッ素溶剤を主成分として含むことが好ましく、具体的に水パージ剤中の上記含フッ素溶剤の含有量を80質量%以上とすることが好ましく、90%以上とすることがより好ましい。
【0024】
また本発明に係る水パージ剤は、アルコール、含フッ素アルコール、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、窒素化合物、硫黄化合物等の上記含フッ素溶剤以外の非フッ素系溶剤を少量成分として含んでもよく、具体的に水パージ剤中、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下の量で含んでいてもよい。
【0025】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール等が好ましい。
含フッ素アルコールとしては、トリフルオロエタノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、2−(ペンタフルオロブチル)エタノール、2−(ペルフルオロエキシシル)エタノール、2−(ペルフルオロヘキシル)エタノール、2−(ペルフルオロオクチル)エタノール、2−(ペルフルオロデシル)エタノール、2−(ペルフルオロ−3−メチルブチル)エタノール、1H,1H,3H−テトラフルオロ−1−プロパノール、1H,1H,5H−オクタフルオロ−1−ヘプタノール、1H,1H,9H−ヘキサデカフルオロ−1−ノナノール、2H−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、1H,1H,3H−ヘキサフルオロ−2−ブタノール等が好ましい。
【0026】
脂肪族炭化水素としては、ペンタン、2−メチルブタン、3−メチルペンタン、ヘキサン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、オクタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルヘキサン、デカン、ウンデカン、ドデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等が好ましい。
脂環式炭化水素としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が好ましい。
芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が好ましい。
【0027】
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン等が好ましい。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プチル、プロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ペンチル等が好ましい。
エーテルとしては、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が好ましい。
【0028】
窒素化合物としては、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が好ましい。
硫黄化合物としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が好ましい。
【0029】
本発明に係る水パージ剤は、水との界面張力を低下させて付着水の除去効率を向上させるため、界面活性剤を含んでもよい。水パージ剤の界面活性剤含有量は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
界面活性剤としては、含フッ素界面活性剤、フッ素原子を含まない界面活性剤等が挙げられる。含フッ素界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0030】
ノニオン性含フッ素界面活性剤としては、ペルフルオロアルキル基を含む重合性単量体に基づく重合単位とポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を含む重合性単量体に基づく重合単位からなる共重合体、ペルフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等が好ましい。ペルフルオロアルキル基の炭素原子数は4〜8が好ましい。
アニオン性含フッ素界面活性剤としては、ペルフルオロアルキルカルボン酸およびその金属塩またはアミン塩、ペルフルオロアルキルスルホン酸およびその金属塩またはアミン塩等が好ましい。ペルフルオロアルキル基の炭素原子数は4〜8が好ましい。
カチオン性フッ素界面活性剤としては、ペルフルオロアルキルカルボン酸にアンモニウム基が2価の有機基で連結された化合物等が好ましい。ペルフルオロアルキル基の炭素原子数は4〜8が好ましい。
両性フッ素界面活性剤としては、ペルフルオロアルキルカルボン酸にアミンオキシド基が2価の有機基で連結された化合物等が好ましい。ペルフルオロアルキル基の炭素原子数は4〜8が好ましい。
【0031】
非イオン性界面としては、たとえば下記化合物(1)〜(3)が挙げられる。
(1)下記式1A〜1Cで示される単位から選ばれる少なくとも1種の単位を含む重合体。
−C(R)(COOX)−CH− …式1A
−C(R)(COOR)−CH− …式1B
−C(R)(COOR)−CH− …式1C
上記各式において、R、R、Rはそれぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表し、Rはオキシアルキレン単位の1種以上が1個以上連なった基(ただし該基は酸素原子でRと結合する。)、Rは水素原子または炭素原子数1〜20のアルキル基を表し、または、COORは−COOHであってもよく、Rは炭素原子数1〜20のアルキル基を表す。
Xは、R−Y−で表される基である。ただし、Rは炭素原子数1〜20のフルオロアルキル基を表し、アルキル鎖中にエーテル性の酸素原子を含んでいてもよい。
またYは−(CH−、または−(CH−NR−SO−で示される基であり、nは2〜10の整数、Rは水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。
上記重合体としては、具体的には、フルオロアルキル側鎖を有する、アクリレートまたはメタクリレートと、親水性側鎖を有する、アクリレートまたはメタクリレートとの共重合体が挙げられる。
【0032】
(2)下記式2で示される化合物。
−CHCH(OH)CHO−Y−CHCH(OH)CH−R …式2
式2において、2つのRは同一であっても異なっていてもよく、それぞれ炭素原子数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基を表し、アルキル鎖中にエーテル性の酸素原子を含んでいてもよい。Yは直鎖状または分岐状のオキシアルキレン単位が1個以上連なった2価の基を表し、該基は酸素原子でCHと結合する。
式2で示される化合物の具体例としては、R基とグリシジル基を有する含フッ素エポキシオキサイドと、親水性の主鎖をもつジオールを反応させて得られる一連の化合物が挙げられる。
【0033】
(3)下記式3で示される化合物。
−(CH−O−Y−R …式3
式3において、Rは炭素原子数1〜20の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基を表し、アルキル鎖中にエーテル性の酸素原子を含んでいてもよい。nは2〜10の整数、Rは水素原子または炭素原子数1〜4のアルキル基を表す。Yは直鎖状または分岐状のオキシアルキレン単位が1個以上連なった2価の基を表し、該基は酸素原子でRと結合する。
式3で示される化合物の具体例としては、R基とフッ素アルコールとアルキレンオキサイドとの反応により合成される一連の化合物が挙げられる。
【0034】
フッ素原子を含まない界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性、両性のいずれの界面活性剤を用いてもよいが、ノニオン性界面活性剤が好ましく、オキシエチレン基を有するノニオン性界面活性剤が特に好ましい。オキシエチレン基を有するノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、アセチレンアルコール類、アセチレングリコール類のエチレンオキシド付加物またはエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド付加物等が好ましい。
【0035】
本発明に係る水パージ剤は、表面張力の小さい含フッ素溶剤を主成分として含むことが好ましく、したがって上記界面活性剤としては、該含フッ素溶剤に対する溶解性の高い含フッ素界面活性剤が好ましい。さらに、界面張力を小さくするための手段としては、含フッ素溶剤に対する溶解性が高く、分子中に親水性部位を有するものが好ましい。この親水性部位は、レジスト材料に対し影響をもつような酸性度を避けることが望ましいことを考慮して、含フッ素界面活性剤のうちでも非イオン系界面活性剤がより好ましい。
【実施例】
【0036】
次に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
シリコンウェア上に、ArF用ポジ型レジスト組成物をスピンコートし、ホットプレートを用いて120℃にて90秒間プレベークを行い、膜厚150μmのレジスト膜を形成する。次いで、ArF液浸露光装置を用いて、パターン露光を行う。続いて、エタノールの5質量%と、HFE−347pc−fの95質量%とを含む水パージ剤をスピンコートし、120℃にて90秒間露光した後ベークを行う。さらに、2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて60秒間現像を行い、その後水にてリンスし、乾燥を行う。
上記のようにして得られる130nmのラインアンドスペースが1:1であるパターンをSEMで観察し、ディフェクトが無いことを確認する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液浸リソグラフィにおいて、現像前の露光後加熱に先立って、液浸露光したウェハ表面に、少なくとも非水溶剤を含む水パージ剤を接触させて、該ウェハ表面に残存する付着水を除去する工程を含むレジストパターン形成方法。
【請求項2】
液浸リソグラフィプロセスにおいて、液浸露光後にウェハ表面に残存する付着水を除去するための非水溶剤を含む水パージ剤。

【公開番号】特開2006−278693(P2006−278693A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95371(P2005−95371)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】