説明

水中筋力訓練機

【課題】
浮きの空気調節をもって負荷調節が行なえ、浮きの位置調節に係る構成が簡素で安価に製作できる水中筋力訓練機を提供することである。
【解決手段】
プール(3)内に設けられる支持枠(4)と、支持枠(4)をプール縁(5)へ止める係止具(6)と、支持枠(4)に昇降可能に取着される昇降枠(7)と、昇降枠(7)に取着され水面に浮く浮き(2)と、昇降枠(7)に取着される足押板(8)とからなり、支持枠(4)に支持された患者が下肢伸展動作で足押板(8)と共に浮き(2)を下方に移動させると、浮き(2)の浮力が前記下肢伸展動作の負荷となる水中筋力訓練機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リハビリを受ける者(以下患者という)が下肢の各筋のパワーアップを図る水中に設けた水中筋力訓練機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来装置は、フロート、運動負荷を与えるための機構、利用者支持部、フレーム構造、等を備えたものにおいて、柱部、支持・係合アーム、壁面当接部を有する水中エクササイズが開示されている。
【0003】
前記従来装置では、プール等への取り付け及び取り外しが容易であり、効果的なエクササイズを行なうことができる。
【0004】
しかし、前記従来装置は、負荷調節を複数のフロートの数を調節することによって行なっていた為、フロートを複数個準備しなければならずコストアップとなる。
又、訓練の開始に際してフロートの位置を決めるが、その位置を決める構成が開示されていない。
【特許文献1】登実3084479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
解決しようとする課題は、浮きの空気調節をもって負荷調節が行なえ、又、浮きの位置調節に係る構成が簡素で安価に製作できる水中筋力訓練機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、浮きの空気調節をもって負荷調節が行なえ、又、浮きの位置調節に係る構成が簡素で安価に製作できる水中筋力訓練機を提供することである。
即ち、本発明は、プール(3)内に設けられる支持枠(4)と、支持枠(4)をプール縁(5)へ止める係止具(6)と、支持枠(4)に昇降可能に取着される昇降枠(7)と、昇降枠(7)に取着され水面に浮く浮き(2)と、昇降枠(7)に取着される足押板(8)とからなり、支持枠(4)に支持された患者が下肢伸展動作で足押板(8)と共に浮き(2)を下方に移動させると、浮き(2)の浮力が前記下肢伸展動作の負荷となることを特徴とする水中筋力訓練機である。
又、浮き(2)内の空気量を調節することによって浮力を調節する調節器(24)が、浮き(2)に設けられる。
更に、調節器(24)は、浮き(2)の気密を図る上・下弁部(32)(25)と、上・下弁部(32)(25)を開閉する操作レバー(26)とから構成され、前記操作レバー(26)の操作で、上・下弁部(32)(25)を開状態になし、且つ、浮き(2)を昇降調節し、浮き(2)内の空気を外部へ入出させ、収納空気量を調節する。
更に又、操作レバー(26)は、浮き(2)の上・下弁部(32)(25)を開閉する開閉操作と、浮き(2)を取付枠(20)の適宜位置に固定する固定操作とをなすものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、プール3内に設けられる支持枠4と、支持枠4をプール縁5へ止める係止具6と、支持枠4に昇降可能に取着される昇降枠7と、昇降枠7に取着され水面に浮く浮き2と、昇降枠7に取着される足押板8とからなり、支持枠4に支持された患者が下肢伸展動作で足押板8と共に浮き2を下方に移動させると、浮き2の浮力が前記下肢伸展動作の負荷となるから、日常動作に近い立位で、水中で、レッグプレスを行なうので、効果的な訓練ができ、好都合である。
温水中で行なえば、下肢の関節の動きが円滑であり、心身共にリラックス状態で訓練でき、好都合である。
【0008】
本発明は、浮き2内の空気量を調節することによって浮力を調節する調節器24が、浮き2に設けられるから、調節器24の操作で、浮力を調節する操作が簡単に行なえ、従来技術における浮き2の数量を選択する操作、及び、浮き2を昇降枠7の適宜位置へ掛止する操作等が不要となり、好都合である。
【0009】
本発明に係る調節器24は、浮き2の気密を図る上・下弁部32・25と、上・下弁部32・25を開閉する操作レバー26とから構成され、前記操作レバー26の操作で、上・下弁部32・25を開状態になし、且つ、浮き2を昇降調節し、浮き2内の空気を外部へ入出させ、収納空気量を調節するものであるから、負荷調節が、操作レバー26を下げ又は下げるだけの簡単な操作で行なえ、好都合である。
【0010】
本発明に係る操作レバー26は、浮き2の上・下弁部32・25を開閉する開閉操作と、浮き2を取付枠20の適宜位置に固定する固定操作とをなすから、1つの操作レバー26の操作で、浮き2の空気の通路28閉め操作と、浮き2の昇降枠7への固定操作の2つの操作が、簡単に行なえ、手数が省け、好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
浮き2の空気調節で負荷調節を行なえ、浮き2の位置調節で初期位置の設定もできる簡素で構成で安価に製作できるものを、プール3内に設けられる支持枠4と、支持枠4をプール縁5へ止める係止具6と、支持枠4に昇降可能に取着される昇降枠7と、昇降枠7に取着される浮き2と、昇降枠7に取着される足押板8とからなり、支持枠4に支持された患者は下肢の伸展動作で足押板8と共に浮き2を下方に移動させると、浮き2の浮力が前記移動の負荷となる水中水中筋力訓練機で、実現した。
【実施例1】
【0012】
図1〜6に本発明の実施例1の水中筋力訓練機1を示す。
図1、2は実施例1の左側面図、図3は実施例1の正面図、図4は実施例1の平面図、図5、6は実施例1に係る浮き2を示す部分図である。
【0013】
実施例1の水中筋力訓練機1を用いて、患者は、胸から下の身体を水中に浸けた立位で、屈曲した膝関節を伸展して浮き2を沈め、下肢の筋力訓練を行なう。
即ち、プール3内に在って患者を支持する支持枠4と、支持枠4をプール縁5へ止める係止具6と、支持枠4に昇降可能に取着される昇降枠7と、昇降枠7に取着される浮き2と、昇降枠7に取着される足押板8とからなる。
患者は下肢の伸展動作で足押板8を下方に移動させる。
移動に伴ない浮き2が水中に沈み、浮き2の浮力が前記移動の負荷となる。
【0014】
係止具6は、横アーム9と、横アーム9をプール縁5に固定する固定具10とからなる。
【0015】
支持枠4の後部には、前記係止具6と、プール壁35に当接される当て具39とが取着され、係止具6で支持枠4はプール壁35に取り付けられる。
支持枠4の前部には、背当て11と、肩当て12と、肩当て12の先に設けられる握具13と、枕14とが取着される。
支持枠4の左・右側板15a・15bのそれぞれ前部には、2個の上ローラー16と2個の下ローラー17が取着される。
肩当て12は高さ調節できるものであり、止め具38で止められる。
【0016】
昇降枠7は、支持枠4の囲いの中に昇降可能に設けられており、摺動枠18と、上枠19と、取付枠20と、下枠21とからなる。
摺動枠18は、その上部は前記2個の上ローラー16の間に挟まれ、その下部は前記2個の下ローラー17の間に挟まれ、これらの上・下ローラー16・17で昇降可能に支持される。
【0017】
浮き2(具体例では、左浮き2aと右浮き2bとでなる)は、取付枠20に貫通されたうえ移動固定可能に取着される。
浮き2は、取着部22と、タンク23と、取着部22とタンク23とにわたって形成される調節器24と、タンク23を上方に付勢するバネ31とからなる。
浮き2には、取付枠20と共に水中に沈められると、浮力が働く。
浮き2は、足押板8を患者が押し下げた時、足押板8を押し上げるように働く。
【0018】
取着部22は連結辺36で連結される上・下取着部22a・22bからなり、タンク23は上・下取着部22a・22bの間に昇降可能に設けられる。上取着部22aには取り付け枠20に密着固定可能なテーパ部34が形成される。
【0019】
タンク23は空気及び水を収容するものであり、該タンク23の上部には下弁部25が設けられる。下弁部25には前記テーパ部34に外嵌可能な嵌り穴33が形成される。
【0020】
調節器24は、浮き2の浮力を調節するものであり、浮き2の上部の気密を図り又は気密を解除するものである。
調節器24は、上弁部32と、操作レバー26と、前記下弁部25と、下弁部25に設けられるシール部材27と、上弁部32と下弁部25との間に生じる通路28とからなる。
調節器24は、浮き2の上部の気密を解除しておいて、手動で浮き2を昇降させ、浮力の大きさを調節するものである。浮き2を持ち上げると、浮き2は吸気し、浮力は増大する。浮き2を押し下げると、浮き2は排気し、浮力は減少する。
【0021】
操作レバー26は、その中部が軸30で上弁部32に軸支され、その先部には梃子部31が形成される。
操作レバー26はその操作によって、上・下弁部32・25を開状態になするものである。更に、浮き2を昇降調節し、浮き2内の空気を外部へ入出させ、収納空気量を調節するものである。
操作レバー26は、浮き2の上・下弁部32・25を接合又は離間させ、上・下弁部32・25の弁作用を作動させる開閉操作をなすものである。
更に、テーパ部34に嵌り穴33を外嵌させて、浮き2を取付枠20の適宜位置に固定する固定操作をなすものである。
【0022】
足押板8(具体例では、左足押板8aと右足押板8bとでなる)は、患者が足を当接するものであり、訓練中に、患者が屈曲した膝を伸展して押し下げるものである。
左足押板8aと右足押板8bは、別々に独立して作動するものである。
【0023】
実施例1を使用する際には、先ず、患者を支持枠4で支持する。患者の背を背当て11に当接し、頭を枕14に当て、肩を肩当て12に当てる。足を足押板8に当接する。膝を屈曲した立位を取り、訓練準備をする。
【0024】
浮き2の空気量を所定の量に調節すると共に、浮き2を取付枠20に固定し、初期状態を作る。浮力が下肢の訓練動作に係る負荷となる。
空気量が訓練中の浮力の大きさに比例し、この浮力の大きさは負荷の大きさである。
【0025】
空気量を調節する際は、操作レバー26で上弁部32と下弁部25とでなる弁を開操作する。
操作レバー26を、握って、上げ又は下げる。この上げ又は下げ操作により、操作レバー26が下弁部25及びタンク23を押し下げる。
タンク23が下がると、上弁部32と下弁部25の密着が離れ、上弁部32と下弁部25との間に通路28が生じ、タンク23が外部と連通する。
上記連通状態下では、前記通路28及び開口穴29から浮き2の中の空気が排出され、又は、外気が流入可能となる。
【0026】
操作レバー26を持ち上げ又は下げると、テーパ部34から嵌り穴33が抜け、取付枠20とテーパ部34の固定が解除される。
【0027】
調節器24で、浮き2の気密を解除し、手動で浮き2を昇降させ、浮き2内の空気量を調節し、浮力を調節する。
操作レバー26を握り下げた前記解除状態で、浮き2を下降させると、水が、浮き2の下部の給排水口37から進入し、浮き2内の空気が排出され減る。
この浮き2を水中に浸入させると、浮き2内の空気は少なく、浮力は小さく、昇降枠7の下降に掛かる負荷は小さい。
【0028】
操作レバー26を握り上げた前記解除状態で、浮き2を上昇させると、浮き2内の水が給排水口37から流出する。水に代わって浮き2内に、外気が吸気され空気が増える。
この浮き2を水中に浸入させると、浮き2内の空気が多く、浮力は大きく、昇降枠の下降に掛かる負荷は大きい。
【0029】
空気量の調節が完了したら、操作レバー26で、上弁部32と下弁部25とでなる弁を閉操作すると同時に、浮き2を取付枠20の適宜位置に固定する固定操作をなす。
即ち、操作レバー26を放し水平位置に戻すと、バネ31の復原力でタンク23が上昇し、嵌り穴33がテーパ部34に外嵌し、テーパ部34が取付枠20に圧接し固定される。同時に、タンク23が上がると、上弁部32と下弁部25が密着し、上弁部32と下弁部25との間に通路28が消失し、タンク23の上部が密閉する。
取着部22が調節した適宜位置に固定されると、この取着部22により、浮き2が取付枠20の適宜位置に固定される。
上記浮き2の昇降操作で浮き2内の空気量を増減調節し、この空気量の調節をもって患者に与える負荷を調節する。
【0030】
次に、患者は膝を伸展し足押板8を押し下げ、往運動する。昇降枠7及び取付枠20が下降すると共に浮き2が水中に進入する。
浮き2が浮力を発生する。浮力が、足押板8を介して、患者の伸展動作に負荷を掛ける。
【0031】
続いて、患者は膝に力を抜く。浮力により足押板8が上昇する。足押板8の上昇にまかせて膝を屈曲し、複運動する。
患者は前記往復運動を所定時間又は所定回数繰り返し行なう。
患者は、左足の訓練と、右足の訓練とを、同時に又は別々に、実施できる。
又、他の構成として、左・右足押板8a・8bを適宜な連結具(図示省略)で連結して、左足と右足とを同期させて訓練してもよい。
所定の訓練を行なった後に、患者は、下肢の力を抜き、肩当て12、背当て11等から離れ、訓練を終了する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
プール3内に設けられる支持枠4と、支持枠4をプール縁5へ止める係止具6と、支持枠4に昇降可能に取着される昇降枠7と、昇降枠7に取着され水面に浮く浮き2と、昇降枠7に取着される足押板8とからなり、支持枠4に支持された患者が下肢伸展動作で足押板8と共に浮き2を下方に移動させると、浮き2の浮力が前記下肢伸展動作の負荷となるものとし、浮き2の空気調節で負荷調節が行なえ、浮き2の位置調節で初期位置の設定もでき簡素な構成で安価に製作できる水中筋力訓練機に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施例1の右側面図である。
【図2】本発明の実施例1の右側面図である。
【図3】本発明の実施例1の正面図である。
【図4】本発明の実施例1の平面図である。
【図5】本発明の実施例1に係る浮きの部分図である。
【図6】本発明の実施例1に係る浮きの部分図である。
【符号の説明】
【0034】
1 水中筋力訓練機
2 浮き
3 プール
4 支持枠
5 プール縁
6 係止具
7 昇降枠
8 足押板
20 取付枠
24 調節器
25 下弁部
26 操作レバー
32 上弁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プール(3)内に設けられる支持枠(4)と、支持枠(4)をプール縁(5)へ止める係止具(6)と、支持枠(4)に昇降可能に取着される昇降枠(7)と、昇降枠(7)に取着され水面に浮く浮き(2)と、昇降枠(7)に取着される足押板(8)とからなり、
支持枠(4)に支持された患者が下肢伸展動作で足押板(8)と共に浮き(2)を下方に移動させると、浮き(2)の浮力が前記下肢伸展動作の負荷となることを特徴とする水中筋力訓練機。
【請求項2】
浮き(2)内の空気量を調節することによって浮力を調節する調節器(24)が、浮き(2)に設けられることを特徴とする請求項1記載の水中筋力訓練機。
【請求項3】
調節器(24)は、浮き(2)の気密を図る上・下弁部(32)(25)と、上・下弁部(32)(25)を開閉する操作レバー(26)とから構成され、
前記操作レバー(26)の操作で、上・下弁部(32)(25)を開状態になし、且つ、浮き(2)を昇降調節し、浮き(2)内の空気を外部へ入出させ、収納空気量を調節することを特徴とする請求項2記載の水中筋力訓練機。
【請求項4】
操作レバー(26)は、浮き(2)の上・下弁部(32)(25)を開閉する開閉操作と、浮き(2)を取付枠(20)の適宜位置に固定する固定操作とをなすものであることを特徴とする請求項3記載の水中水中筋力訓練機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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