説明

水硬性組成物用早強剤

【課題】水硬性組成物、特に超高強度コンクリートの初期硬化物性(凝結時間・σ1)を改善する事ができる水硬性組成物用早強剤を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される化合物からなる水硬性組成物用早強剤。
【化1】


(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基、p1は0〜2の数、q1は0又は1の数、A1Oは炭素数2又は3のオキシアルキレン基、n1はA1Oの平均付加モル数であり、6〜300の数、X1は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性組成物用早強剤、それを含有する添加剤及び水硬性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンクリート構造物のライフサイクルコストを重要視する傾向にあり、コンクリートの高耐久化・高強度化志向が高まっている。
【0003】
ライフサイクルコストの観点から、減水剤が使用されている。具体的にはナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物塩、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合塩、ポリオキシアルキレン鎖を有するポリカルボン酸系等がある。
【0004】
高強度水硬性組成物(以下。高強度コンクリートと表す)は水/水硬性粉体比の小さい配合組成で練り混ぜられて調製される。高強度コンクリートは性質上一般に、練り上がりに時間を要し、流動性の経時変化が大きく、更に粘性が高い等の傾向を示す。また、普通コンクリートに比べて水硬性粉体が多くなるため、水硬性組成物に添加される減水剤の配合量は対水硬性粉体換算では必然的に多くなってしまう。その結果、水硬性粉体の水和反応が遅れ、凝結などの初期硬化物性に影響を及ぼす事が知られている。
【0005】
一方、水硬性組成物の初期硬化物性を改善する手立てとしてグリセリン又はグリセリン誘導体と特定のポリカルボン酸系共重合体を含有するセメント用強度向上剤(特許文献1)や、特定の分子量を有するポリエチレングリコールとポリカルボン酸系共重合体を併用する事により、凝結遅延性が無く、コンクリートの強度発現性、蒸気養生後の脱型強度の向上を可能にするセメント添加剤(特許文献2)が提案されている。更に、エチレングリコール又はグリセリンの構造を有する特定の化合物を含有する水硬性組成物用早強剤(特許文献3)が提案されている。しかしながら、水/水硬性粉体比の小さい水硬性組成物に対しては、初期硬化物性の改善は十分ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−282414号公報
【特許文献2】特開2000−233957号公報
【特許文献3】国際公開第2009/119897号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
初期硬化物性を改善できる水硬性組成物用早強剤が用いられる水硬性組成物の水/水硬性粉体比に関して、特許文献1に記載された好ましい水/水硬性粉体比の範囲は15〜100重量%であり、特許文献3に記載された好ましい範囲は20〜65重量%である。特許文献2では水/セメント比の小さい高強度コンクリートでより際立った効果を発揮すると記載されているが、特許文献2の実施例の高強度コンクリートの水/セメント比は35.6%である。水/水硬性粉体比が小さい、例えば20重量%未満、更には15重量%未満のコンクリートでも初期硬化物性を改善できる水硬性組成物用早強剤が望まれる。
【0008】
本発明の課題は、水硬性組成物、特に水/水硬性粉体比が小さい超高強度コンクリートの初期硬化物性(凝結時間・σ1)を改善する事ができる水硬性組成物用早強剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記一般式(1)で表される化合物からなる水硬性組成物用早強剤に関する。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基、p1は0〜2の数、q1は0又は1の数、A1Oは炭素数2又は3のオキシアルキレン基、n1はA1Oの平均付加モル数であり、6〜300の数、X1は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0012】
また、本発明は、前記本発明の水硬性組成物用早強剤と、高性能減水剤とを含有する水硬性組成物用添加剤に関する。
【0013】
また、本発明は、前記本発明の水硬性組成物用添加剤と、水硬性粉体と、水とを含有し、水/水硬性粉体比が15重量%以下である水硬性性組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、前記本発明の水硬性組成物用早強剤〔以下、(A)成分という〕と、高性能減水剤〔以下、(B)成分という〕とを、それぞれ水硬性粉体に添加する、水/水硬性粉体比が15重量%以下である水硬性組成物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コンクリート等の水硬性組成物の初期硬化物性(凝結時間・σ1)を改善する事ができる水硬性組成物用早強剤及び添加剤が提供される。本発明は、水/水硬性粉体比が小さい超高強度コンクリートに対して好適である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<水硬性組成物用早強剤>
本発明の水硬性組成物用早強剤は、一般式(1)で表される化合物を含有する。また、一般式(1)で表される化合物は、後述する本発明の水硬性組成物用添加剤の(A)成分として用いられる。本発明の水硬性組成物用早強剤により、水硬性組成物の初期硬化物性が改善される機構が不明なるも、一般式(1)で表される化合物のアルキレンオキサイド部分と不飽和結合を有する炭化水素基部分の水硬性粉体や水との親和性の差による界面活性剤的な働きで、水硬性粉体と水との接触を促進し、水硬性粉体の硬化が促進されると考えられる。
【0017】
一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ、R1が水素原子、R2がメチル基が好ましい。また、p1は0又は1が好ましい。また、q1は1が好ましい。
【0018】
また、一般式(1)中のX1は、炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。A1Oは炭素数2又は3のオキシアルキレン基であり、アルキレンオキシドとしてエチレンオキシド(以下、EOと表記する)及び/又はプロピレンオキシド(以下、POと表記する)を用いることで形成される。A1Oは炭素数2のオキシエチレン基が好ましく、従って、アルキレンオキシドとしてEOを用いることが好ましい。アルキレンオキシドの付加形態は単独、ランダム、ブロック又は交互のいずれでもよい。なかでも、A1Oは全て炭素数2であるEOが好ましい。
【0019】
1Oの平均付加モル数n1は、6〜300の範囲であり、初期硬化物性の観点から、6〜200が好ましく、6〜150がより好ましく、6〜130が更に好ましく、15〜80がより好ましく、15〜50が更に好ましい。
【0020】
一般式(1)で表される化合物としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の炭素数1〜3のアルキル基の片末端アルキル基封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物が挙げられる。また、一般式(1)で表される化合物としては、ビニルアルコール、アリルアルコール及びメタリルアルコール等の不飽和アルコールや(メタ)アクリル酸へのアルキレンオキシド付加物を用いることができる。
【0021】
一般式(1)で表される化合物としては、好ましくはメトキシポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物であり、エチレンオキシド平均付加モル数が6〜200のメトキシポリエチレングリコールとメタクリル酸とのエステル化物が更に好ましい。
【0022】
本発明の水硬性組成物用早強剤は、一般式(1)で表される化合物からなるものである。他の成分と混合して混合物(例えば組成物)として用いることができる。他の成分との混合物である場合、一般式(1)で表される化合物の含有量は、該混合物中、60〜100重量%が好ましく、80〜100重量%がより好ましい。他の成分としては、アルコキシポリアルキレングリコールや(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0023】
一般式(1)で表される化合物は、例えば、片末端アルキル基封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化反応により製造することができる。
【0024】
エステル化反応は、反応を円滑に進行させるために片末端アルキル基封鎖ポリアルキレングリコールまたは(メタ)アクリル酸の内、沸点の低い方を過剰量に用い、反応終了後に過剰な量を留去することが望ましい。
【0025】
エステル化反応を促進するために触媒を使用することが好ましい。その例としてはp−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のスルホン酸類、硫酸、リン酸等の鉱酸類等の酸触媒を挙げることができる。
【0026】
エステル化反応中に重合が起きない様に重合禁止剤を使用することが好ましい。重合禁止剤は、ハイドロキノン、ベンゾキノン、メトキノン、BHT、フェノチアジン等から選ばれる1種以上のものを任意比率の組み合わせで用いることができる。
【0027】
又これら原料は含水状態で用いることができるが、水はエステル化反応を阻害する為、留出させることが好ましく、初期水分が大きすぎると水と(メタ)アクリル酸、片末端アルキル基封鎖ポリアルキレングリコールも留出してしまう為、全系に対して仕込み原料中の水分量は10重量%以下にすることが好ましい。
【0028】
本発明の水硬性組成物用早強剤は、初期硬化物性を改善する観点から水硬性粉体に対して、一般式(1)で表される化合物が0.01〜0.5重量%の割合で使用されることが好ましく、更に好ましくは0.01〜0.3重量%、より好ましくは0.01〜0.2重量%である。
【0029】
本発明の水硬性組成物用早強剤は、水硬性組成物に流動性と初期硬化物性を付与する観点から、高性能減水剤と共に用いることが好ましい。高性能減水剤は、JIS A6204で規定されるものである。高性能減水剤は、一般式(1)由来の構成単位又はそれに類似する構成単位を有する共重合体が好ましく、具体的には後述する(B)で挙げた共重合体が挙げられる。
【0030】
<水硬性組成物用添加剤>
本発明の水硬性組成物用添加剤は、前記水硬性組成物用早強剤〔(A)成分〕と、高性能減水剤〔(B)成分〕とを含有する。
【0031】
[(B)成分]
(B)成分としては、カルボキシル基、スルホン酸基及びリン酸基から選ばれる基を有する高分子化合物が挙げられる。該高分子化合物の重量平均分子量は、3000〜10万が好ましい。例えば、ポリカルボン酸系重合体、ナフタレン系重合体、リン酸(ヒドロキシアルキル)メタクリル酸)エステルの重合物等が挙げられる。具体的には、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を導入したポリアルキレングリコールモノエステル系単量体とアクリル酸系重合体、アミド系マクロモノマーを含むような重合体、ポリエチレンイミンを含有する重合体、炭素数2〜3のオキシアルキレン基を導入したポリアルキレングリコールモノエステル系単量体と、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルと、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルとの共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等が挙げられる。また、(B)成分としてメラミンスルホン酸ホルマリン縮合物系、アミノスルホン酸系等も挙げられる。(B)成分は市販の高性能減水剤を用いることができる。
【0032】
(B)成分は、下記一般式(2)で表される単量体由来の構成単位を有する重合体であることが好ましい。
【0033】
【化2】

【0034】
(式中、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基、p2は0〜2の数、q2は0又は1の数、A2Oは炭素数2又は3のオキシアルキレン基、n2はA2Oの平均付加モル数であり、6〜300の数、X2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0035】
下記一般式(2)で表される単量体由来の構成単位としては、前記水硬性組成物用早強剤の一般式(1)と同様な構造の単量体を用いることができる。
【0036】
更に、(B)成分は、下記共重合体(B1)、(B2)、及び(B3)からなる群より選ばれる1種以上の共重合体であることが好ましい。
【0037】
〔共重合体(B1)〕
下記一般式(2−1)で示されるアルケニルエーテル誘導体と、下記一般式(3)で示される単量体との共重合体又はその塩
【0038】
【化3】

【0039】
(式中、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基、p2は0〜2の数、A2Oは炭素数2又は3のオキシアルキレン基、n2はA2Oの平均付加モル数であり、6〜300、好ましくは6〜200の数、X2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0040】
【化4】

【0041】
〔式中、R31〜R31は、それぞれ独立に水素原子、メチル基又は、(CH2p3COOM2、M1及びM2は、それぞれ独立に水素原子又は陽イオン、p3は0〜2の数を表す。〕
【0042】
共重合体(B1)を構成するアルケニルエーテル誘導体の一般式(2−1)に於いて、R3−CH=C(R4)(CH2p2−で示されるアルケニル基として好ましくは、ビニル基、アリル基、メタリル基等であるが、アリル基が汎用的でありより好ましい。A2Oは、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基であり、これら両方の基であってもよい。付加形態は単独、ランダム、ブロック又は交互のいずれでもよい。好ましくはオキシエチレン基である。X2は炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられ、中でもメチル基が好ましい。
【0043】
アルキレンオキシドの平均付加モル数n2は、6〜200の範囲が好ましく、フレッシュコンクリートの流動性付与と低粘性付与の観点から、6〜90がより好ましく、10〜70が更に好ましく、10〜50がより更に好ましい。
【0044】
また、前記アルケニルエーテル誘導体は、一般式(2−1)の範囲であれば、例えばA2Oがオキシエチレン基のみのものやオキシプロピレン基のみのもの等を、2種以上用いてもよい。
【0045】
一般式(3)で示される単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸系単量体、無水マレイン酸、マレイン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸系単量体、又はこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基を有していてもよいモノ、ジ、トリアルキルアンモニウム塩が好ましく、より好ましくはアクリル酸、メタクリル酸及びこれらのアルカリ金属塩である。
【0046】
共重合体(B1)は、これら一般式(2−1)で表される単量体と一般式(3)で表される単量体との共重合体、好ましくはモル比が、一般式(2−1)の単量体/一般式(3)の単量体=25/75〜50/50である共重合体又はその塩である。一般式(3)の単量体がマレイン酸の場合は無水物であってもよい。かかる共重合体(B1)の製造方法としては、特開平2−163108号、特開平5−345647号記載の方法等が挙げられる。
【0047】
また、共重合体(B1)の好ましい重量平均分子量は、フレッシュコンクリートの安定した流動性付与の観点から、3000〜30万、更には5000〜10万である。
【0048】
共重合体(B1)の一例として、マリアリムEKM、マリアリムAKM(以上、日本油脂社製)やスーパー200(電気化学社製)が挙げられる。
【0049】
<共重合体(B2)>
下記一般式(2)で表される単量体と、下記一般式(3)で表される化合物及び下記一般式(4)で表される化合物から選ばれる1種以上の単量体とを構成単位として含む共重合体。
【0050】
【化5】

【0051】
(式中、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基、p2は0〜2の数、q2は0又は1の数、A2Oは炭素数2又は3のオキシアルキレン基、n2はA2Oの平均付加モル数であり、6〜300の数、X2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0052】
【化6】

【0053】
〔式中、R31〜R31は、それぞれ独立に水素原子、メチル基又は、(CH2p3COOM2、M1及びM2は、それぞれ独立に水素原子又は陽イオン、p3は0〜2の数を表す。〕
【0054】
【化7】

【0055】
(式中、R41は水素原子又はメチル基、Yは水素原子又は陽イオンを表す。)
【0056】
一般式(3)で示される単量体としては、前記共重合体(B1)で挙げたものが使用できる。好ましい単量体は前記共重合体(B1)で示したものと同じである。
【0057】
一般式(4)で示される単量体としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、又はこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキルアンモニウム塩が使用される。
【0058】
共重合体(B2)としては、更に、下記の共重合体(B2−1)及び共重合体(B2−2)が挙げられる。
共重合体(B2−1):一般式(2)中のn2が100〜300の数である単量体(i)と、前記一般式(3)及び下記一般式(4)で表される化合物から選ばれる1種以上の単量体(ii)とを構成単位として含み、それらのモル比が(ii)/(i)=70/30〜95/5である共重合体。
共重合体(B2−2):一般式(2)中のn2が2〜90の数である単量体(iii)と、前記一般式(3)及び前記一般式(4)で表される化合物から選ばれる1種以上の単量体(ii)とを構成単位として含み、それらのモル比が(ii)/(iii)=60/40〜90/10である共重合体。
【0059】
〔共重合体(B2−1)〕
共重合体(B2−1)は、炭素数2又は3のアルキレンオキシドを平均付加モル数で100〜300モル付加した前記一般式(2)で表される単量体(i)と、前記一般式(3)及び/又は(4)、好ましくは一般式(3)で表される単量体(ii)とを、(ii)/(i)=70/30〜95/5のモル比で共重合して得られる。フレッシュコンクリートの安定した初期流動性付与の観点から、単量体(i)におけるアルキレンオキシドの平均付加モル数n2は100〜300の範囲であり、100〜250が好ましく、100〜200が更に好ましく、100〜150がより更に好ましい。なお、共重合体(B2−1)を得るための単量体において、n2が異なる複数の単量体(i)を用いる場合は、全単量体(i)のn2の平均値が100〜300の範囲にあるように組成を調整する。例えば、2種の単量体(i)を用いる場合、一方はn2=100〜290、他方はn2’=100〜300で、n2≠n2’かつn2’≧n2+10であることが好ましく、n2’≧n2+30であることがより好ましく、n2’≧n2+50であることがより更に好ましい。更に、本発明の効果を損なわない範囲で、n2が90超100未満の単量体を併用することもできる。
【0060】
単量体(i)としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル基封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物や、(メタ)アクリル酸へのEO及び/又はPO付加物が好ましく用いられる。付加形態は単独、ランダム、ブロック又は交互のいずれでもよい。より好ましくはメトキシポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物であり、エチレンオキシド平均付加モル数が100〜200のメトキシポリエチレングリコールとメタクリル酸とのエステル化物が更に好ましい。
【0061】
一般式(3)で示される単量体としては、前記共重合体(B1)で挙げたものが使用できる。好ましい単量体は前記共重合体(B1)で示したものと同じである。
【0062】
一般式(4)で示される単量体としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、又はこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、水酸基が置換されていてもよいモノ、ジ、トリアルキルアンモニウム塩が使用される。
【0063】
好ましくは、共重合体(B2−1)は、前記単量体(i)と、一般式(3)及び(4)で表される単量体の1種以上(ii)とを合わせて50重量%以上、更には80〜100重量%、より更には100重量%含有する単量体混合物を重合して得られる。
【0064】
共重合体(B2−1)を構成する単量体(i)と単量体(ii)は、(ii)/(i)=70/30〜95/5のモル比で共重合され、フレッシュコンクリートの安定した初期流動性付与の観点から、(ii)/(i)で、好ましくは75/25〜95/5、より好ましくは80/20〜95/5、より更に好ましくは85/15〜95/5のモル比で共重合される。
【0065】
共重合体(B2−1)の重量平均分子量は、フレッシュコンクリートの安定した初期流動性付与の観点から、5000〜500000の範囲が好ましく、20000〜100000の範囲がより好ましく、30000〜85000の範囲が更に好ましい。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(標準物質ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)による。
【0066】
共重合体(B2−1)は公知の方法で製造できる。例えば、特開平7−223852号公報、特開平4−209737号公報、特開昭58−74552号公報の溶液重合法が挙げられ、水や炭素数1〜4の低級アルコール中、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の重合開始剤存在下、必要なら亜硫酸水素ナトリウムやメルカプトエタノール等を添加し、50〜100℃で0.5〜10時間反応させればよい。
【0067】
共重合体(B2−1)の原料として他の共重合可能なモノマーを併用でき、具体的には、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜12)エステル、(メタ)アクリルアミド、スチレン、スチレンスルホン酸等が挙げられる。
【0068】
〔共重合体(B2−2)〕
共重合体(B2−2)は、炭素数2又は3のアルキレンオキシドを平均付加モル数で2〜90モル付加した前記一般式(2)で表される単量体(iii)と、前記一般式(3)及び/又は(4)、好ましくは一般式(3)で表される単量体(ii)とを、(ii)/(iii)=60/40〜90/10のモル比で共重合して得られる。フレッシュコンクリートの安定した流動性付与と流動保持性付与の観点から、単量体(iii)におけるアルキレンオキシドの平均付加モル数n3は2〜90の範囲であり、5〜70が好ましく、5〜50が更に好ましく、5〜40がより更に好ましい。なお、共重合体(B2−2)を得るための単量体混合物において、n2が異なる複数の単量体(iii)を用いる場合は、全単量体(iii)のn2の平均値が2〜90の範囲にあるように組成を調整する。例えば、2種の単量体(iii)を用いる場合、一方はn2=2〜87、他方はn2’=2〜90で、n2≠n2’かつn2’≧n2+3であることが好ましく、n2’≧n2+5であることがより好ましく、n2’≧n2+10であることがより更に好ましい。更に、本発明の効果を損なわない範囲で、n2が90超100未満の単量体を併用することもできる。
【0069】
単量体(iii)としては、メトキシポリエチレングリコール、メトキシポリプロピレングリコール、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコール等の片末端アルキル基封鎖ポリアルキレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物や、(メタ)アクリル酸へのEO及び/又はPO付加物が好ましく用いられる。付加形態は単独、ランダム、ブロック又は交互のいずれでもよい。より好ましくはメトキシポリエチレングリコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物である。特に、水/水硬性粉体比が15重量%以下の場合、初期分散性と粘性の観点から、EO平均付加モル数が2〜90のメトキシポリエチレングリコールとアクリル酸とのエステル化物が更に好ましい。
【0070】
一般式(3)で示される単量体及び一般式(4)で示される単量体としては、前記共重合体(B2−1)で挙げたものが使用できる。好ましい単量体は前記共重合体(B2−1)で示したものと同じである。
【0071】
好ましくは、共重合体(B2−1)は、前記単量体(iii)と、一般式(3)及び(4)で表される単量体の1種以上(ii)とを合わせて50重量%以上、更には80〜100重量%、より更に100重量%含有する単量体混合物を重合して得られる。
【0072】
共重合体(B2−2)を構成する単量体(iii)と単量体(ii)は、(ii)/(iii)=60/40〜90/10のモル比で共重合され、フレッシュコンクリートの安定した流動保持性付与の観点から、(ii)/(iii)で、好ましくは65/35〜90/10、より好ましくは65/35〜85/15、より更に好ましくは65/35〜80/20のモル比で共重合される。
【0073】
共重合体(B2−2)の重量平均分子量は、フレッシュコンクリートの流動性の点より5000〜500000の範囲が良く、20000〜100000、更に30000〜85000の範囲がフレッシュコンクリートの流動性により更に優れる。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(標準物質ポリスチレンスルホン酸ナトリウム換算)による。
【0074】
共重合体(B2−2)は公知の方法で製造できる。例えば、特開平7−223852号公報、特開平4−209737号公報、特開昭58−74552号公報の溶液重合法が挙げられ、水や炭素数1〜4の低級アルコール中、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の重合開始剤存在下、必要なら亜硫酸水素ナトリウムやメルカプトエタノール等を添加し、50〜100℃で0.5〜10時間反応させればよい。
【0075】
共重合体(B2−2)の原料として他の共重合可能なモノマーを併用でき、具体的には、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜12)エステル、(メタ)アクリルアミド、スチレン、スチレンスルホン酸等が挙げられる。
【0076】
<共重合体(B3)>
下記一般式(2)で表される単量体と、下記一般式(5)で表される単量体と、下記一般式(6)で表される単量体とを、共重合して得られるリン酸エステル系共重合体。
【0077】
【化8】

【0078】
(式中、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基、p2は0〜2の数、q2は0又は1の数、A2Oは炭素数2又は3のオキシアルキレン基、n2はA2Oの平均付加モル数であり、6〜300の数、X2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0079】
【化9】

【0080】
(式中、R51は水素原子又はメチル基、OR52は炭素数2〜12のオキシアルキレン基、m1はOR52の平均付加モル数であり、1〜30の数、M3は水素原子又は陽イオンを表す。)
【0081】
【化10】

【0082】
(式中、R61及びR63は、それぞれ水素原子又はメチル基、OR62及びOR64は、それぞれ炭素数2〜12のオキシアルキレン基、m2及びm3は、それぞれOR62及びOR64の平均付加モル数であり、独立に1〜30の数、M4は水素原子又は陽イオンを表す。)
【0083】
共重合体(B3)は、硬化体の初期の圧縮強度を向上させる事と粘性低減効果の観点から好ましい。
【0084】
一般式(2)の単量体について、A2Oはエチレンオキシ基(以下、EO基と表記する)を含むことがより好ましく、EO基が70モル%以上、更に80モル%以上、更に90モル%以上、より更に全てがEO基であることが好ましい。また、X2はメチル基が好ましい。具体的には、ω−メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステル、ω−メトキシポリオキシアルキレンアクリル酸エステル等を挙げることができ、ω−メトキシポリオキシアルキレンメタクリル酸エステルがより好ましい。ここで、一般式(2)中のn2は、重合体の水硬性組成物に対する分散性と粘性付与効果の点で、6〜200が好ましく、より好ましくは6〜120である。また、平均n2個の繰り返し単位中にAOが異なるもので、ランダム付加又はブロック付加又はこれらの混在を含むものであっても良い。A2Oは、EO基以外にもプロピレンオキシ基等を含むことができる。
【0085】
一般式(5)で表される単量体としては、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステル、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸エステル、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートアシッドリン酸エステル等が挙げられる。中でも、製造の容易さ及び製造物の品質安定性の観点から、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルが好ましい。
【0086】
一般式(5)で表される単量体としては、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)アクリル酸〕エステル等が挙げられる。中でも、製造の容易さ及び製造物の品質安定性の観点から、リン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステルが好ましい。
【0087】
一般式(5)で表される単量体及び一般式(6)で表される単量体の何れも、これらの化合物のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、アルキルアンモニウム塩などであっても良い。
【0088】
一般式(5)で表される単量体のm1並びに一般式(6)で表される単量体のm2及びm3は、それぞれ1〜20が好ましく、1〜10が更に好ましく、1〜5がより好ましい。
【0089】
一般式(5)で表される単量体及び一般式(6)で表される単量体として、これらを含む混合単量体を用いることができる。すなわち、モノエステル体とジエステル体とを含む市販品を使用することができ、例えば、ホスマーM、ホスマーPE、ホスマーP(以上、ユニケミカル)、JAMP514、JAMP514P、JMP100(以上、城北化学)、ライトエステルP−1M、ライトアクリレートP−1A(以上、共栄社化学)、MR200(大八化学)、カヤマー(日本化薬)、Ethyleneglycol methacrylate phosphate(アルドリッチ試薬)などとして入手できる。
【0090】
共重合体(B3)の製造方法は、適当な溶媒により調製した上記一般式(5)で表される単量体及び/又は一般式(6)で表される単量体を含有する単量体溶液を、好ましくは所定量の連鎖移動剤の存在下で、他の単量体と共重合させる。また、共重合可能な他の単量体や重合開始剤等を用いても良い。例えば、特開2006−52381号公報に記載の重合法が挙げられる。
【0091】
本発明の水硬性組成物用添加剤において、(A)成分の含有量は、脱型強度の向上の観点から、0.5重量%以上が好ましく、また、製品の均一安定化の観点から50重量%以下が好ましい。従って、0.5〜50重量%が好ましく、更に好ましくは1〜30重量%、更により好ましくは1.5〜15重量%である。
【0092】
本発明の水硬性組成物用添加剤において、(B)成分の合計含有量は、モルタル粘性の低下の観点から、5重量%以上が好ましく、また、製品の均一安定化の観点から50重量%以下が好ましい。従って、5〜50重量%が好ましく、更に好ましくは10〜40重量%、より好ましくは20〜35重量%である。
【0093】
フレッシュコンクリートの作業性の観点から、(B)成分は共重合体(B2−2)を含むことが好ましい。中でも、共重合体(B2−2)の単独又は及び共重合体(B2−1)と共重合体(B2−2)の併用が好ましい。(B)成分中、共重合体(B2−2)が50重量%以上、更に50〜95重量%、より更に70〜90重量%であることが好ましい。また、共重合体(B2−1)は、練上がり速度、初期硬化物性改善及び練り上がり性の向上と、低粘性の両立との観点から、(B)成分中、1〜40重量%、更に5〜30重量%、より更に10〜25重量%が好ましい。
【0094】
また、本発明の水硬性組成物用添加剤では、水硬性組成物の製造時の材料混練性と初期硬化物性改善の観点から、(A)成分と(B)成分の重量比が(A)/(B)=1/99〜20/80であることが好ましく、より好ましくは1/99〜30/70、更に好ましくは1.5/98.5〜40/60、更により好ましくは2/98〜20/80である。
【0095】
また、本発明の水硬性組成物用添加剤では、当該水硬性組成物用添加剤の計量等、取り扱い性の観点から、(A)成分と(B)成分の合計含有量が10〜100重量%であることが好ましく、更に好ましくは10〜70重量%、より好ましくは15〜60重量%、より更に好ましくは20〜45重量%である。本発明の水硬性組成物用添加剤には、(A)成分と(B)成分以外の成分として、水や後述する添加剤を含有することができる。
【0096】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、水硬性組成物の製造時の材料混練性と初期硬化物性改善の観点から、水硬性粉体に対して、(A)成分と(B)成分の合計で0.1〜10重量%の割合で使用されることが好ましく、更に好ましくは0.2〜5重量%、より好ましくは0.2〜3重量%である。
【0097】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、水硬性組成物の初期硬化物性改善の観点から、水硬性粉体に対して、(A)成分が0.01〜0.5重量%の割合で使用されることが好ましく、更に好ましくは0.01〜0.3重量%、より好ましくは0.01〜0.2重量%である。
【0098】
また、本発明の水硬性組成物用添加剤は、水硬性組成物の流動性の観点から、水硬性粉体に対して、(B)成分が0.01〜10重量%の割合で使用されることが好ましく、更に好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.1〜2重量%である。
【0099】
本発明の水硬性組成物用早強剤を用いた水硬性組成物が初期硬化物性を改善する機構の詳細は不明であるが、(A)成分と(B)成分を併用すると、(B)成分が水硬性粉体表面に吸着する際に、(A)成分の不飽和結合を有する炭化水素基部分が(B)成分の主鎖と疎水性相互作用により、(B)成分の分子サイズがあたかも大きくなったようになる。そして、(B)成分間の水硬性粉体表面での吸着間隔が広くなると考えられる。このため、(B)成分による水硬性粉体の被覆される量、つまり吸着面積が小さくなる事により、水硬性粉体が水と十分に接触することで硬化反応が妨げられず、早硬性が発現すると考えられる。また、一般に(B)成分の吸着面積が小さくなる事により、分散性が低下すると考えられるが、本発明ではその影響は認められていない。これは、(A)成分のポリアルキレングリコールが、水硬性粉体間の立体的な反発する作用を生じさせるためと考えられる。
【0100】
さらに、(B)成分がポリアルキレングリコールの構造を有する場合、すなわち一般式(2)で表される単量体由来の構成単位を有する重合体の場合は、(A)成分と(B)成分のポリアルキレングリコール間に水を介した相互作用も生じると考えられる。この場合、前記(B)成分間の水硬性粉体表面での吸着間隔が広くなる作用に加え、(A)成分のポリアルキレングリコールが(B)成分のポリアルキレングリコールと共に水硬性粉体間の立体的な反発する作用を発揮すると考えられる。
【0101】
本発明の水硬性組成物用添加剤が共重合体(B3)を含有する場合、本発明の水硬性組成物用添加剤において、(A)成分と共重合体(B3)の合計含有量は5〜50重量%、更に10〜40重量%が好ましい。その場合、(A)成分と共重合体(B3)の重量比(A)/共重合体(B3)が75/25〜97/3であることが好ましい。この重量比において、共重合体(B3)が占める上限値は(A)/共重合体(B3)=75/25、更に77/23、より更に79/21が好ましい。一方、共重合体(B3)が占める下限値は(A)/共重合体(B3)=97/2、更に95/4、より更に93/6が好ましい。
【0102】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、各種セメントを始めとし、水和反応によって硬化性を示すあらゆる無機系の水硬性粉体に使用することができる。
【0103】
セメントとして、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、エコセメント(例えばJIS R5214等)が挙げられる。セメント以外の水硬性粉体として、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカヒューム等が含まれてよく、また、非水硬性の石灰石微粉末等が含まれていてよい。セメントと混合されたシリカヒュームセメントや高炉セメントを用いてもよい。
【0104】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、その他の添加剤(材)を含有することもできる。例えば、樹脂石鹸、飽和もしくは不飽和脂肪酸、ヒドロキシステアリン酸ナトリウム、ラウリルサルフェート、アルキルベンゼンスルホン酸(塩)、アルカンスルホネート、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテル硫酸エステル(塩)、ポリオキシアルキレンアルキル(フェニル)エーテルリン酸エステル(塩)、蛋白質材料、アルケニルコハク酸、α−オレフィンスルホネート等のAE剤;グルコン酸、グルコヘプトン酸、アラボン酸、リンゴ酸、クエン酸等のオキシカルボン酸系、デキストリン、単糖類、オリゴ糖類、多糖類等の糖系、糖アルコール系等の遅延剤;起泡剤;増粘剤;珪砂;塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、臭化カルシウム、沃化カルシウム等の可溶性カルシウム塩、塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物等、硫酸塩、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸塩、チオ硫酸塩、蟻酸(塩)、アルカノールアミン等の他の早強剤又は促進剤;発泡剤;樹脂酸(塩)、脂肪酸エステル、油脂、シリコーン、パラフィン、アスファルト、ワックス等の防水剤;高炉スラグ;流動化剤;ジメチルポリシロキサン系、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル系、鉱油系、油脂系、オキシアルキレン系、アルコール系、アミド系等の消泡剤;防泡剤;フライアッシュ;シリカヒューム;亜硝酸塩、燐酸塩、酸化亜鉛等の防錆剤;メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系、β−1,3−グルカン、キサンタンガム等の天然物系、ポリアクリル酸アミド、ポリエチレングリコール、オレイルアルコールのエチレンオキシド付加物もしくはこれとビニルシクロヘキセンジエポキシドとの反応物等の合成系等の水溶性高分子;(メタ)アクリル酸アルキル等の高分子エマルジョンが挙げられる。
【0105】
また、本発明の水硬性組成物用添加剤は、生コンクリート、コンクリート振動製品分野の外、セルフレベリング用、耐火物用、プラスター用、石膏スラリー用、軽量又は重量コンクリート用、AE用、補修用、プレパックド用、トレーミー用、地盤改良用、グラウト用、寒中用等の種々のコンクリートの何れの分野においても有用である。
【0106】
本発明の水硬性組成物用添加剤は、組成物の形態であってもよい。
【0107】
<水硬性組成物>
本発明は、上記本発明の水硬性組成物用添加剤と、水硬性粉体と、水とを含有する。水硬性組成物は、流動性の発現と初期硬化物性の改善の観点から、水/水硬性粉体比が15重量%以下、更に10〜15重量%であることが好ましい。
【0108】
本発明の水硬性組成物は、前記水硬性組成物用添加剤と、水硬性粉体と、水とを、水/水硬性粉体比が15重量%以下となるように混合するが、その混合方法、混合装置などは公知の手段を採用できる。また、水硬性粉体、水、本発明の添加剤の使用量は、水硬性組成物の用途、組成などに応じて、好ましくは前記した範囲で、適宜選定できる。
【0109】
本発明により製造される水硬性組成物は、水及び水硬性粉体(セメント)を含有する、ペースト、モルタル、コンクリート等であるが、骨材を含有してもよい。骨材として細骨材や粗骨材等が挙げられ、細骨材は山砂、陸砂、川砂、砕砂が好ましく、粗骨材は山砂利、陸砂利、川砂利、砕石が好ましい。用途によっては、軽量骨材を使用してもよい。なお、骨材の用語は、「コンクリート総覧」(1998年6月10日、技術書院発行)による。
【0110】
該水硬性組成物は、セメントの水和反応に必要な水量を維持しつつ、より高強度で施工可能なコンクリートを製造する観点から、水/水硬性粉体比〔スラリー中の水と水硬性粉体の重量百分率(重量%)、(水の重量)/(水硬性粉体の重量比)×100で算出され、通常W/Pと略記されるが、粉体がセメントの場合、W/Cと略記される。〕が10〜55重量%であることができる。流動性の発現と初期硬化物性の改善の発現の観点から、水/水硬性粉体比が15重量%以下、更に10〜15重量%、より更に10〜14重量%、更に10〜13重量%であることが好ましい。本発明の早強剤や添加剤はこの範囲の水/水硬性粉体比の水硬性組成物に使用することができる。
【0111】
本発明の水硬性組成物において、水硬性粉体の単位量は、好ましくは300〜2000kg/m3、より好ましくは500〜1800kg/m3、更に好ましくは850〜1450kg/m3である。
【0112】
また、本発明の水硬性組成物において、水の単位量は、好ましくは120〜190kg/m3、より好ましくは150〜185kg/m3、更に好ましくは160〜170kg/m3である。
【0113】
本発明の水硬性組成物は、(A)成分、(B)成分、水及び水硬性粉体を混合することにより得られる。水硬性組成物の流動性と硬化時間を調整する観点から、(A)成分である早強剤と(B)成分である高性能減水剤とをそれぞれ別々に水硬性粉体に添加しても良い。具体的には、(A)成分と(B)成分とを、それぞれ水硬性粉体に添加する方法が挙げられる。その際、水は、単独で添加〔(A)成分、(B)成分と別に添加〕、(A)成分である早強剤と予め混合して添加、(B)成分である高性能減水剤と予め混合して添加、水硬性粉体と予め混合して添加、のいずれの方法で添加してもよい。また、水硬性粉体と水との混合の際に(A)成分と(B)成分と水とを予め混合し、水硬性粉体に添加する方法も用いることもできる。また、添加の作業性を向上する観点から(A)成分と(B)成分を含有する添加剤と、水と、水硬性粉体とを混合しても良い。また、(A)成分と(B)成分は、(A)/(B)重量比や水硬性粉体に対する添加量が前記した範囲となるように用いることが好ましい。
【実施例】
【0114】
<水硬性組成物用添加剤>
(1)(A)成分
(A)成分として以下の表1に示すものを用いた。A−1は新中村化学社製NKエステルM230G、A−2は新中村化学社製NKエステルM90Gを用い、A−3は下記の方法で製造した。A−4は和光純薬工業社製の特級試薬を用いた。
【0115】
(A−3の製造)
80℃で溶融したエチレンオキシド平均付加モル数120のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(重量平均分子量5312)1700gを、温度計、攪拌機(東京理科器械社製MAZELA Z−1100)、攪拌棒、滴下ロート、窒素導入管及び還流冷却器を備えた3Lガラス製反応容器に仕込んだ。次いで、攪拌しながら窒素置換をし、ハイドロキノン5.1g、p−トルエンスルホン酸63重量%水溶液86.9gを滴下した。次いで、メタクリル酸90重量%水溶液918g(ポリエチレングリコールモノメチルエーテルに対して30モル倍となる量)を滴下した。窒素を導入しながら、反応容器内圧力を26.7kPaに制御し、加熱を開始した。撹拌機の回転数は工程終了まで、250r/minを維持した。
【0116】
反応液温度が105℃に到達した時点を反応開始時刻とし、引き続き加熱して反応液温度を110℃に維持して反応を行った。圧力は、反応開始1時間後に12〜13.3kPaに減圧したのち、そのまま維持した。反応開始から6時間後に圧力を常圧に戻し、p−トルエンスルホン酸の固形分に対して1.05倍当量の水酸化ナトリウム48重量%水溶液を添加して中和し、反応を終了させた。反応終了後、反応液温度を120±10℃に維持し、真空蒸留法により、未反応のメタクリル酸を回収し、エステル化反応物(A−3)の水溶液を得た。
【0117】
【表1】

【0118】
(2)(B)成分
(2−1)
(B)成分の一部として以下の表2に示すものを用いた。表2中、Mwは重量平均分子量である。下記B−1及びB−2は、特開平7−223852号公報の製造例記載の方法に準拠して製造した。得られた共重合体水溶液に含まれる未反応のω−メトキシポリエチレングリコールモノメタアクリレートの含有量を、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)のピーク面積で確認したところ、B−1及びB−2のいずれも共重合体に対して1/125未満(重量比)であった。
【0119】
(2−2)
(B)成分の一部として、以下の製造例で得られたB−3を用いた。表2にB−3の概略を示した。
【0120】
〔製造例〕(共重合体B−3の製造)
攪拌機付きガラス製反応容器(四つ口フラスコ)に水423gを仕込み、攪拌しながら窒素置換をし、窒素雰囲気中で80℃まで昇温した。ω−メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートの水溶液(エチレンオキサイドの平均付加モル数23)407g(有効分60.8重量%、水分35重量%)とリン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸エステルとリン酸ジ−〔(2−ヒドロキシエチル)メタクリル酸〕エステル混合物であるリン酸エステル化物(X)65.0gと3−メルカプトプロピオン酸4.1gを混合した水溶液と過硫酸アンモニウム7.6gを水30.4gに溶解した水溶液の2者を、フラスコの別の口から同時に1.5時間かけて添加した。添加重量後1時間の熟成後、さらに過硫酸アンモニウム1.7gを水6.7gに溶解した水溶液を30分かけて滴下した。その後1.5時間80℃で熟成した後に30重量%水酸化ナトリウム水溶液63.5gで中和し、共重合体B−3(重量平均分子量34000)を含有する水溶液を得た。得られた共重合体水溶液に含まれる未反応のω−メトキシポリエチレングリコールモノメタアクリレートの含有量を、1H−NMRのピーク面積で確認したところ、共重合体に対して1/250未満(重量比)であった。
【0121】
なお、本例の製造例で用いたリン酸エステル化物(X)は次の製法により得られたものである。反応容器中にメタクリル酸2−ヒドロキシエチル200gと85重量%リン酸(H3PO4)36.0gを仕込み、五酸化二リン(無水リン酸)(P25)89.1gを温度が60℃を超えないように冷却しながら徐々に添加した。終了後、反応温度を80℃に設定し、6時間反応させ、冷却後、リン酸エステル化物(X)を得た。
【0122】
【表2】

【0123】
<コンクリートの調製及び評価>
表3又は表4に示す配合条件で、100Lの強制二軸ミキサーを用いて、セメント(C)、細骨材(S)を投入し空練りを30秒行った。目標スランプ65±10cm、目標空気連行量3.0%以下となるよう、添加剤組成物及び消泡剤(主成分は、脂肪酸エステル)を含む練り水(W)を加え、360秒間混練りしモルタルを調製した後、粗骨材(G)を投入し、引き続き120秒間混練りしコンクリートを排出した。尚、低温条件としてセメント、細骨材、粗骨材、そして練り水を10℃の温度で保存し、試験を実施した。
【0124】
このコンクリートについて、以下に示す試験法にしたがって、スランプ値、空気量、圧縮強度、凝結時間を、それぞれ以下の方法で行った。なお、水硬性組成物用添加剤組成物は表5、6に示す添加量となるように練り水に添加して用いた。評価結果を表5、6に示した。
・スランプ値:JIS−A1101に従って測定した。
・空気量:JIS−A1128に従って測定した。
・圧縮強度:JIS−A1108に従って測定した。
・凝結時間:JIS−A1147に従って測定した。始発と終結の判定は、始発が3.5N/mm2、終結が28N/mm2になった時間である。
【0125】
【表3】

【0126】
表中の使用材料は以下のものである。
C:SFPC(登録商標)(シリカヒュームプレミックスセメント、太平洋セメント株式会社製) 密度:3.07g/cm3
W:水道水
S:細骨材 京都府城陽産山砂 密度:2.55g/cm3
G:粗骨材 高知県鳥形山産石灰砕石 密度:2.72g/cm3
【0127】
【表4】

【0128】
表中の使用材料は以下のものである。
C:SFCS(登録商標)(シリカヒュームセメントスーパー、宇部三菱セメント株式会社製) 密度:3.01g/cm3
W:水道水
S:細骨材 京都府城陽産山砂 密度:2.55g/cm3
G:粗骨材 高知県鳥形山産石灰砕石 密度:2.72g/cm3
【0129】
【表5】

【0130】
【表6】

【0131】
表中、水硬性組成物用添加剤組成物の添加量は、セメント重量に対する有効分の重量%である。
【0132】
表5に示されるように、水/水硬性粉体比が12.0重量%である配合1において、実施例1−1〜1−7では、比較例1−1〜1−3に比べて初期(24時間後)の圧縮強度が5〜50%程度大きい値となっており、初期硬化物性改善に優れている。また、実施例1−4では、(B)成分を併用する事により、より高い初期(24時間後)の圧縮強度が得られている。また、実施例1−5では、(B)成分を2種併用した系で更にリン酸エステル系共重合体である(B)成分を使用することにより、更に初期(24時間後)の圧縮強度が向上している。比較例1−1と比較例1−2の対比から、(A)成分に該当しないA−4を用いても初期硬化物性は向上しないことがわかる。また、表6の結果から、セメント種が異なっても上記表5と同様の傾向が認められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物からなる水硬性組成物用早強剤。
【化1】


(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基、p1は0〜2の数、q1は0又は1の数、A1Oは炭素数2又は3のオキシアルキレン基、n1はA1Oの平均付加モル数であり、6〜300の数、X1は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【請求項2】
請求項1記載の水硬性組成物用早強剤〔以下、(A)成分という〕と、高性能減水剤〔以下、(B)成分という〕とを含有する水硬性組成物用添加剤。
【請求項3】
(B)成分が、下記一般式(2)で表される単量体由来の構成単位を有する重合体である請求項2記載の水硬性組成物用添加剤。
【化2】


(式中、R3及びR4は、それぞれ独立に水素原子又はメチル基、p2は0〜2の数、q2は0又は1の数、A2Oは炭素数2又は3のオキシアルキレン基、n2はA2Oの平均付加モル数であり、6〜300の数、X2は水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【請求項4】
(A)成分と(B)成分の重量比が、(A)/(B)で1/99〜20/80である請求項2又は3記載の水硬性組成物用添加剤。
【請求項5】
請求項2〜4何れか1項記載の水硬性組成物用添加剤と、水硬性粉体と、水とを含有し、水/水硬性粉体比が15重量%以下である水硬性性組成物。
【請求項6】
請求項1記載の水硬性組成物用早強剤と、高性能減水剤とを、それぞれ水硬性粉体に添加する、水/水硬性粉体比が15重量%以下である水硬性組成物の製造方法。

【公開番号】特開2011−116587(P2011−116587A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275292(P2009−275292)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】