説明

水系炭素含有不定形耐火物

【課題】本発明の目的は、耐スラグ溶損性、耐焼結性に優れた水系炭素含有不定形耐火物を提供することにある。
【解決手段】本発明の水系炭素含有不定形耐火物は、耐火原料、カーボンブラック原料及び結合剤を必須の構成成分とする水系炭素含有不定形耐火物において、DBP吸収量が80ml/100g未満であり、平均一次粒子径の異なる2種または3種以上のカーボンブラック原料を併用し、最も平均一次粒子径の大きいカーボンブラック原料(A)の平均一次粒子径(a)と最も平均一次粒子径が小さいカーボンブラック原料(B)の平均一次粒子径(b)の比率(a/b)が2以上であり、カーボンブラック原料(A)とカーボンブラック原料(B)の質量比(A/B)を0.5〜50とし、且つカーボンブラック原料の合計量が3〜25質量%の範囲内にあることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種製銑・製鋼炉等の内張りあるいは補修に用いられる水系炭素含有不定形耐火物に関する。
【背景技術】
【0002】
耐火物の材質として、ピッチ、黒鉛、コークス、カーボンブラック等の炭素質原料が添加された炭素含有耐火物が知られている。炭素含有耐火物は、炭素がもつ高熱伝導性とスラグに濡れ難い特性によって耐食性及び耐スポーリング性に優れた効果をもつ。また、炭素質原料は基本的に焼結作用が著しく低いため、耐火物が高温下で長期間使用される時に問題となる過焼結を抑制する効果を有する。
【0003】
一方、炭素質原料を不定形耐火物に適用する場合には、一般的に炭素質原料が水に濡れ難いことに起因して、施工時の流動性に劣る。そこで、流動性確保のために施工水分を多くすることが必要となり、その分、耐火物組織は気孔率が大きくなり、強度が低下する。
【0004】
そこで、例えば特許文献1には、黒鉛に表面樹脂コートしたものに低発泡性かつ親水性界面活性剤で被覆したことを特徴とする不定形耐火物用表面処理黒鉛(請求項1);黒鉛に表面樹脂コートしたものに低発泡性かつ親水性界面活性剤で被覆した表面処理黒鉛を1〜10重量%(質量%)、炭化珪素5〜30重量%(質量%)、蝋石1〜20重量%(質量%)、バインダー1〜10重量%(質量%)および残部がアルミナおよび/またはアルミナ・シリカ質材料よりなることを特徴とする溶銑予備処理用不定形耐火物(請求項2)が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、黒鉛質粉体と耐火性化合物粉体から主としてなる組成物であって、黒鉛質粉体が黒鉛粉体の黒鉛粒子の表面に、黒鉛粒子より平均粒径が小さくかつ親水性を有する金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属硼化物および金属から選ばれる1種以上である小粒子が固着されたものであり、組成物中に黒鉛質粉体が炭素量に換算して2〜40重量%(質量%)含まれていることを特徴とする黒鉛含有不定形耐火物用組成物(請求項1);黒鉛粉体70〜97重量%(質量%)と平均粒径が黒鉛粉体の黒鉛粒子の40%以下である親水性を有する金属酸化物、金属炭化物、金属窒化物、金属硼化物および金属から選ばれる1種以上の粒子からなる粉末3〜30重量%(質量%)との混合粉体を高速気流中で衝撃処理することにより黒鉛粒子の表面に親水性の小粒子を固着せしめた黒鉛質粉体とし、この黒鉛質粉体に耐火性化合物粉体を加えて混合し、この混合物中の黒鉛質粉体の配合量を炭素量に換算して2〜40重量%(質量%)とすることを特徴とする黒鉛含有不定形耐火物用組成物の調製方法(請求項6)が開示されている。上記特許文献1及び2は、いずれも黒鉛に親水性処理を施したものであるが、親水性化は充分とは言えず、緻密な耐火組織が得られないために、大きな耐用性の向上には至っていない。
【0006】
更に、特許文献3には、親水処理と100mμ以下の超微粒子の除去を行った平均粒径200mμ以上のカーボンブラックを耐火超微粉として使用した流し込み耐火物(第1項)が開示されている。
【0007】
また、特許文献4には、径が0.02〜0.50μm程度の粒子径が大きくストラクチャーの発達していない球状カーボンブラックを耐火骨材に0.1〜3重量%(質量%)添加した特定炭素含有不定形耐火物(請求項1);粒子径が大きく球状粒子でストラクチャーが発達していない球状カーボンブラックが、サーマル級またはミディアムサーマル、ファインサーマルのようなサーマル法によって製造された球状カーボンブラックである特定炭素含有不定形耐火物(請求項2)が開示されている。また、特許文献4の[0036]段落には、「サーマル級またはミディアムサーマル、ファインサーマルのようなサーマル法によって製造された球状カーボンブラックを不定形耐火物に添加することにより混練時の流動性を下げることなく炭素原料を添加することができるため、キャスタブルの組織は緻密化し、耐食性は向上する」旨の記載がある。しかし、特許文献4に記載されているようなカーボンブラックを水系不定形耐火物へ3質量%を超えて添加しても、流動性の低下を招く。また、カーボンブラックの添加量が3質量%以下では、炭素質原料の添加量としては充分とは言えず、炭素質原料本来の優れた特性を発揮させることはできない。
【0008】
上述のような問題点を解決するために、例えば特許文献5には、窒素吸着法による比表面積(m/g)が10〜30であるカーボンブラック原料3〜15重量%(質量%)を含有してなることを特徴とする水系炭素含有不定形耐火物(請求項1);窒素吸着法による比表面積(m/g)が10〜30であるカーボンブラック原料3〜15重量%(質量%)と、当該カーボンブラック原料1重量%(質量%)に対しβ−ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩を0.02〜0.03重量%(質量%)の比率で含有してなることを特徴とする水系炭素含有不定形耐火物(請求項2);窒素吸着法による比表面積(m/g)が10〜30であるカーボンブラック原料3〜15重量%(質量%)と、当該カーボンブラック原料1重量%(質量%)に対しβ−ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩を0.02〜0.03重量%(質量%)の比率で含有し、かつ残部の材料のうち、粒径10μm以下の超微粉が2〜15重量%(質量%)であることを特徴とする水系炭素含有不定形耐火物(請求項3)が開示されている。即ち、特許文献5では、窒素吸着法による比表面積(m/g)が10〜30であるカーボンブラック原料を3〜15質量%使用することで、他のカーボンブラック原料と比較して流動性確保のための施工水分を格段に少なくすることができ、そのため、カーボンブラック原料を多量に添加することができ、不定形耐火物の耐スポーリング性を格段に向上させることができ、耐スラグ溶損性も向上できるとしている。ここで、カーボンブラック原料の比表面積が小さいことは、粒子径が大きいことを意味している。
【0009】
更に、特許文献6には、カーボンブラック及びカーボンブラックを黒鉛化してなるグラファイト粒子から選ばれるDBP吸収量(x)が80ml/100g以上の炭素質粒子(A)、カーボンブラック及びカーボンブラックを黒鉛化してなるグラファイト粒子から選ばれるDBP吸収量(x)が80ml/100g未満の炭素質粒子(B)、及び耐火骨材(C)からなる耐火物原料組成物(請求項1);請求項1〜9のいずれかに記載の耐火物原料組成物を成形してなる耐火物(請求項11)が開示されている。
【0010】
【特許文献1】特開平4−12064号公報 特許請求の範囲
【特許文献2】特開平5−194044号公報 特許請求の範囲
【特許文献3】特開昭58−125669号公報 特許請求の範囲
【特許文献4】特開平7−17773号公報 特許請求の範囲 [0036]段落
【特許文献5】特開2001−253783号公報 特許請求の範囲
【特許文献6】特開2002−316865号公報 特許請求の範囲
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、特許文献3ないし5に記載されているような技術においては、単一種類のカーボンブラック原料を使用するのが一般的であり、粒子径が比較的大きいカーボンブラック原料を使用することによって、施工水分量を増加させることなく、ある程度の炭素質原料含有量を確保し、耐スラグ溶損性や耐スポーリング性の向上を図っていた。一方、炭素質原料の作用の一つである過焼結抑制に対しては、一般的に粒子径が小さい方が有利であるが、粒子径の小さいカーボンブラック原料を使用すると施工水分量が増加して緻密な組織が得られない。
【0012】
また、特許文献6は、DBP吸収量の異なる2種の炭素質粒子を使用するものであるが、バインダーとしてフェノール樹脂あるいはピッチ等を主成分とする有機バインダーを使用するような非水系耐火物を対象とするものであり、本発明者らの検証では、水系炭素含有不定形耐火物に特許文献6に記載されている2種の炭素質粒子を使用すると、施工水分量は大幅に増加し、得られる施工体の組織はルーズになるという課題が存在する。
【0013】
従って、本発明の目的は、耐スラグ溶損性、耐焼結性に優れた水系炭素含有不定形耐火物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
即ち、本発明の水系炭素含有不定形耐火物は、耐火原料、カーボンブラック原料及び結合剤を必須の構成成分とする水系炭素含有不定形耐火物において、DBP吸収量が80ml/100g未満であり、平均一次粒子径の異なる2種または3種以上のカーボンブラック原料を併用し、最も平均一次粒子径の大きいカーボンブラック原料(A)の平均一次粒子径(a)と最も平均一次粒子径が小さいカーボンブラック原料(B)の平均一次粒子径(b)の比率(a/b)が2以上であり、カーボンブラック原料(A)とカーボンブラック原料(B)の質量比(A/B)を0.5〜50とし、且つカーボンブラック原料の合計量が3〜25質量%の範囲内にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の水系炭素含有不定形耐火物によれば、従来からの不定形耐火物と比較して特定の特性を有する2種または3種以上のカーボンブラック原料を特定比率で用いることにより、耐スラグ溶損性と耐焼結性を高いレベルで両立させることが可能となり、耐スラグ溶損性が高いことにより、スラグによる耐火物の溶損作用が軽減される他、耐焼結性が高いことにより、稼働面付近の過焼結によって起こる亀裂や剥離損傷を抑制することができ、従来よりも耐久性に優れた水系炭素含有不定形耐火物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の水系炭素含有不定形耐火物は、平均一次粒子径の小さなカーボンブラック原料を使用しても、従来のカーボンブラック原料を含有する不定形耐火物に比して施工水分量が低減でき、緻密で強固な耐火組織を有し、耐スラグ溶損性のみならず、耐焼結性にも優れたものであり、流し込み施工や湿式吹付施工用のキャスタブル耐火物としても使用可能なものである。
【0017】
水系炭素含有不定形耐火物と、それに添加されるカーボンブラック原料の物理化学特性について鋭意研究の結果、使用するカーボンブラック原料が特定のDBP吸収量であり、且つ平均一次粒子径の小さなカーボンブラック原料と平均一次粒子径の大きなカーボンブラック原料とを特定の比率で組み合わせて使用することによって、従来のカーボンブラック原料を添加した水系炭素含有不定形耐火物と比較して格段に流動性が優れ、緻密性を維持しつつカーボンブラック原料を多量に添加することができるようになり、水系炭素含有不定形耐火物の耐スラグ溶損性及び耐焼結性を向上させることができるものである。
【0018】
詳しくは、次の(A)ないし(E)の事実を見出し、本発明に至ったものである:
(A)DBP吸収量が小さく、且つ平均一次粒子径の小さなカーボンブラック原料を、平均一次粒子径の大きなカーボンブラック原料と特定比率で組み合わせて使用することにより、低水分量で流動性が得られる;
(B)平均一次粒子径の小さなカーボンブラック原料と平均一次粒子径の大きなカーボンブラック原料の平均一次粒子径の比率が2以上であれば、低水分量化の効果が特に大きい;
(C)施工水分量は、平均一次粒子径が小さいカーボンブラック原料を単独で使用した場合よりもはるかに少ない。また、平均一次粒子径が大きなカーボンブラックを単独で使用した場合よりも少なくできる;
(D)施工水分量が少ないこと及び細密充填効果のため、組織をより緻密にすることができ、従来のカーボンブラック原料を使用した水系炭素含有不定形耐火物と比較して耐スラグ溶損性が向上する;
(E)平均一次粒子径の小さなカーボンブラックを使用することにより、焼結抑制効果が格段に向上する。
【0019】
本発明の水系炭素含有不定形耐火物は、DBP吸収量が80ml/100g未満であり、平均一次粒子径の異なる2種または3種以上のカーボンブラック原料を併用し、最も平均一次粒子径の大きいカーボンブラック原料(A)の平均一次粒子径(a)と最も平均一次粒子径が小さいカーボンブラック原料(B)の平均一次粒子径(b)の比率(a/b)が2以上であり、カーボンブラック原料(A)とカーボンブラック原料(B)の質量比(A/B)を0.5〜50とし、且つカーボンブラック原料の合計量が3〜25質量%の範囲内にあることを特徴とするものである。なお、「平均一次粒子径」は、電子顕微鏡を用いた方法によるものである。具体的には、例えばカーボンブラック便覧(カーボンブラック協会、図書出版社刊、1971)に記載されている方法、即ち、振り掛け法、懸濁法、支持膜包含法、包埋法などにより作成した試料を電子顕微鏡を用いて観察し、統計的に十分な信頼性を得るのに必要な数だけ個々の粒子径を実測する。そして、実測した粒子径diの個数がniであった場合、平均粒子径dは次の式によって求められる:
d=Σnidi/Σni
【0020】
また、「DBP吸収量」とは、JIS K6217−4に規定された方法によって測定された値である。カーボンブラック原料のDBP吸収量が80ml/100g以上になると、カーボンブラック原料を添加した水系炭素含有不定形耐火物の流動性が著しく低下し、カーボンブラック原料の添加量が少量に限定されるために好ましくない。なお、本発明に使用されるカーボンブラック原料のDBP吸収量は、好ましくは20〜70ml/100g、更に好ましくは20〜60ml/100gの範囲内である。
【0021】
また、本発明に使用されるDBP吸収量が80ml/100g未満の平均一次粒子径の異なる2種または3種以上のカーボンブラック原料のうち、最も平均一次粒子径の大きいカーボンブラック原料(A)の平均一次粒子径(a)と、最も平均一次粒子径の小さいカーボンブラック原料(B)の平均一次粒子径(b)の比率(a/b)は、2以上、好ましくは3以上である。ここで、上記比率(a/b)が2未満では、得られる水系炭素含有不定形耐火物の施工水分量が増加して緻密な組織が得られなくなるために好ましくない。
【0022】
更に、上記カーボンブラック原料(A)とカーボンブラック原料(B)の質量比(A/B)は、0.5〜50、好ましくは1〜20、更に好ましくは1〜10の範囲内でなければならない。ここで、上記質量比(A/B)が0.5未満では、最も平均一次粒子径の小さいカーボンブラック原料(B)の配合量が多くなり過ぎ、施工水分量が著しく多くなるために好ましくない。また、上記質量比(A/B)が50を超えると、最も平均一次粒子径の小さいカーボンブラック原料(B)の配合量が少なくなり過ぎ、施工水分量の低減効果が不充分になると共に、充分な焼結抑制効果が得られないために好ましくない。
【0023】
本発明の水系炭素含有不定形耐火物において、DBP吸収量が80ml/100g未満であり、平均一次粒子径の異なる2種または3種以上のカーボンブラック原料の合計量は、3〜25質量%、好ましくは4〜20質量%、更に好ましくは5〜15質量%の範囲内である。カーボンブラック原料の合計量が3質量%未満であれば、カーボンブラック原料の添加による耐スラグ溶損性や耐スポーリング性、耐焼結性の向上効果を充分に得られないために好ましくなく、また、カーボンブラック原料の合計量が25質量%を超えると、カーボンブラック原料の比重が一般的な他の耐火物原料よりも小さいことに起因して、施工時に原料が分離し易くなり、均一な施工体が得難くなるために好ましくない。
【0024】
本発明の水系炭素含有不定形耐火物において、カーボンブラック原料以外の耐火原料は、特に限定されるものではなく、水系炭素含有不定形耐火物の用途に応じて適宜選択することができ、例えばアルミナ、スピネル、マグネシア、シリカ、カルシア、炭化珪素、カーボンブラック原料以外の炭素質原料、窒化珪素、炭化硼素、ムライト、ジルコン、ジルコニア、金属シリコン、金属アルミニウムなどを使用することができる。
【0025】
更に、本発明の水系炭素含有不定形耐火物には、アルミナセメント、粘土等の常温硬化性結合剤や珪酸ソーダ等の熱硬化性結合剤を配合する。これら結合剤の配合量は、0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%の範囲内である。ここで、結合剤の配合量が0.1質量%未満であると、強度発現が不十分であるために好ましくなく、また、結合剤の配合量が20質量%を超えると、耐食性が低下するために好ましくない。
【0026】
また、本発明の水系炭素含有不定形耐火物には、必要に応じて通常の流し込み材に用いられる分散剤を使用することもできる。分散剤としては、例えばアルカリ金属リン酸塩、アルカリ金属カルボン酸塩、アルカリ金属フミン酸塩、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物塩、ポリカルボン酸ナトリウム等や、これらと同様の効果が得られる物質の1種または2種以上を使用することができる。分散剤の配合割合は、耐火原料と結合剤の合計量100質量%に対して外掛で0.005〜2質量%、好ましくは0.05〜0.5質量%の範囲内である。ここで、分散剤の配合割合が0.005質量%未満では、その添加効果がないために好ましくなく、また、2質量%を超えると、耐食性が低下するために好ましくない。
【0027】
なお、本発明の水系炭素含有不定形耐火物は、流し込み施工のみならず、圧送ポンプを使用した湿式吹付け施工等にも適用することができる。
【実施例】
【0028】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明の水系炭素含有不定形耐火物を更に説明する。 以下の表1に示す配合割合で原料を配合し、更に、表1に示す添加水分量の水を添加して混練することにより本発明品及び比較品の不定形耐火物を調製した。得られた不定形耐火物について、乾燥後見掛け気孔率、耐スラグ性並びに耐焼結性を測定し、得られた結果を表1に併記する。
【0029】
【表1】

【0030】
なお、カーボンブラック1のDBP吸収量は、40ml/100gである。カーボンブラック2のDBP吸収量は、26ml/100gである。カーボンブラック3のDBP吸収量は、44ml/100gである。カーボンブラック4のDBP吸収量は、53ml/100gである。カーボンブラック5のDBP吸収量は、112ml/100gである。カーボンブラック6のDBP吸収量は、84ml/100gである。
【0031】
乾燥後見掛け気孔率の測定方法:
流し込み成形した供試体(40mm×40mm×160mm)を105℃で24時間乾燥した後、見掛け気孔率(%)を測定した。
耐焼結性の測定方法:
流し込み成形した供試体(40mm×40mm×160mm)を105℃で24時間乾燥した後、コークスブリーズ中において、1500℃で3時間加熱したものと、1500℃で24時間加熱したものについて、冷却後曲げ強さを測定した。そして、1500℃で3時間加熱したものの曲げ強さを100として1500℃で24時間加熱したものの曲げ強さを指数表示した。数値が小さい程、焼結しにくい、即ち、耐焼結性に優れていることを意味する。
耐スラグ性の測定方法:
侵食剤として高炉スラグを使用し、温度1550℃で、5時間にわたり回転ドラム侵食試験を行い、溶損深さを測定し、比較品1の溶損深さを100として指数表示したものであり、数値が小さい程耐食性に優れていることを示す。
【0032】
表1によれば、カーボンブラック原料の添加量が多くなると、添加水分量が多くなる傾向ではあるが、同じカーボンブラック原料添加量で比較すると、本発明品は比較品よりも添加水分量が少なくても良好な施工性を得られることが判る。このことは、本発明品において、特定のカーボンブラック原料を使用することによって、流動性が向上し、施工水分量を低減させることができ、それによって緻密な組織が得られることを示すものである。 本発明品はいずれも耐スラグ溶損性に優れているのみならず、耐焼結性にも優れており、両特性を高いレベルで満足している。
これに対して、比較的大きい平均一次粒子径を有するカーボンブラック原料のみを使用した比較品1〜3は、本発明品と比べていずれも耐焼結性に劣ることが判る。また、耐スラグ溶損性も必ずしも良好とは言えない。また、比較的小さい平均一次粒子径を有するカーボンブラック原料のみを使用した比較品4並びにA/B質量比が本発明の範囲外である比較品5では、耐焼結性は優れているものの、施工水分量が多くなることに起因して気孔率が高く、耐スラグ溶損性に大きく劣ることが判る。即ち、いずれの比較品においても、耐スラグ溶損性及び耐焼結性を高いレベルで両立することはできない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の水系炭素含有不定形耐火物は、流し込み施工、湿式吹付け施工等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐火原料、カーボンブラック原料及び結合剤を必須の構成成分とする水系炭素含有不定形耐火物において、DBP吸収量が80ml/100g未満であり、平均一次粒子径の異なる2種または3種以上のカーボンブラック原料を併用し、最も平均一次粒子径の大きいカーボンブラック原料(A)の平均一次粒子径(a)と最も平均一次粒子径が小さいカーボンブラック原料(B)の平均一次粒子径(b)の比率(a/b)が2以上であり、カーボンブラック原料(A)とカーボンブラック原料(B)の質量比(A/B)を0.5〜50とし、且つカーボンブラック原料の合計量が3〜25質量%の範囲内にあることを特徴とする水系炭素含有不定形耐火物。

【公開番号】特開2006−188391(P2006−188391A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−1506(P2005−1506)
【出願日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(000001971)品川白煉瓦株式会社 (112)
【Fターム(参考)】