説明

汎用コンバインの刈取装置

【課題】本発明は、汎用型コンバインにおいて、刈り取った作物の一部がリール式掻き込み装置の支持アームに絡み付くのを防いで、収穫作業を長く継続出来るようにすることを課題とする。
【解決手段】植立作物を水平に刈る横刈刃装置(16)と、該横刈刃装置(16)の上方位置で植立作物を掻き込む掻込みリール(18)と、前記横刈刃装置(16)の後側で左右の支持枠(15)の間に軸架されて刈取作物を搬送する掻込みオーガ(20)を刈取前処理装置(13)に備え、前記横刈刃装置(16)の刈取作用域における横側端部位置に、植立作物を垂直方向に分断する縦刈刃装置(5)を設けた汎用コンバインの刈取装置において、前記掻込みリール(18)を支持するリール支持アーム(19)から前記支持枠(15)の内側にわたる板状の遮蔽体(36)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菜種などのように条列をなさずに植付けられ絡み付きの強い作物を能率よく円滑に収穫できる汎用コンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
汎用コンバインの刈取装置として、水平方向に植立作物を刈る横刈刃装置と、この横刈刃装置の上方位置で掻き込み用のラグを回動させて植立作物を掻き込むリール式掻き込み装置を備え、前記横刈刃装置の刈取作用域における横側端部位置に、垂直方向に植立作物を分断する縦刈刃装置を設けたものが、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−104329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の特開2010−104329号公報に記載の汎用コンバインは、リール式掻き込み装置で作物を掻き込みながら横刈刃装置で作物を水平に刈り、縦刈刃装置で植立した作物を縦に既刈側と未刈側に分断するが、分断した既刈側の作物がリール式掻き込み装置の支持アームに絡み付き堆積して長く刈取作業を継続出来ない。
【0005】
そこで、本発明は、汎用コンバインにおいて、刈り取った作物の一部がリール式掻き込み装置の支持アームに絡み付くのを防いで、収穫作業を長く継続出来るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、植立作物を水平に刈る横刈刃装置(16)と、該横刈刃装置(16)の上方位置で植立作物を掻き込む掻込みリール(18)と、前記横刈刃装置(16)の後側で左右の支持枠(15)の間に軸架されて刈取作物を搬送する掻込みオーガ(20)を刈取前処理装置(13)に備え、前記横刈刃装置(16)の刈取作用域における横側端部位置に、植立作物を垂直方向に分断する縦刈刃装置(5)を設けた汎用コンバインの刈取装置において、前記掻込みリール(18)を支持するリール支持アーム(19)から前記支持枠(15)の内側にわたる板状の遮蔽体(36)を設けたことを特徴とする汎用コンバインの刈取装置とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記遮蔽体(36)を可撓性のシートとした請求項1に記載の汎用コンバインの刈取装置とする。
請求項3に記載の発明は、前記縦刈刃装置(5)を、支持枠(15)の内側に立設する固定刃(1)とこの固定刃(1)の外側に臨んで上下に往復摺動する可動縦刈刃(2)で構成した請求項1または請求項2に記載の汎用コンバインの刈取装置とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、前記横刈刃装置(16)を構成する可動主刈刃(4)と前記可動縦刈刃(2)を刈刃駆動ケース(7)から分岐して駆動する構成とした請求項1または請求項2または請求項3に記載の汎用コンバインの刈取装置とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、前記掻込みオーガ(20)を左右の支持枠(15)間に軸架するオーガ主軸(46)から、前記刈刃駆動ケース(7)へ駆動力を入力する構成としたことを特徴とする請求項4に記載の汎用コンバインの刈取装置とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、リール支持アーム19と支持枠(15)の間に形成される開放部が遮蔽体(36)で塞がれて、縦刈刃装置(5)で分断した作物がリール支持アーム(19)に絡み付くのを防止することができ、刈取前処理装置(13)側方から、この刈取前処理装置(13)に進入することを防止することができる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明による効果に加え、遮蔽体(36)と支持枠(15)の間に隙間が生じにくく、横刈刃装置(16)によって刈り取られた作物が刈取前処理装置(13)の外部へ飛散することを防止できる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、上記請求項1または請求項2記載の発明による効果に加え、可動縦刈刃(2)を固定刃(1)の外側に臨ませることで、上下に往復摺動する可動縦刈刃(2)で、コンバインの機体外側方である未刈地側から横刈刃装置(16)の刈取対象穀稈に絡み付く穀稈を効率的に切断することができ、縦刈刃装置(5)の駆動負荷を軽減できる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、上記請求項1または請求項2または請求項3記載の発明による効果に加え、縦刈刃装置(5)及び横刈刃装置(16)の駆動機構を簡素化して、故障の発生を抑制できる。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、上記請求項4記載の発明による効果に加え、刈刃駆動ケース(7)の近傍に位置するオーガ主軸(46)からこの刈刃駆動ケース(7)に伝動することで、縦刈刃装置(5)及び横刈刃装置(16)への駆動力の伝達ロスを低減し、縦刈刃装置(5)及び横刈刃装置(16)を確実に駆動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】汎用コンバインの全体側面図である。
【図2】刈取前処理装置の側面図である。
【図3】横刈刃装置と縦刈刃装置の駆動部の斜視図である。
【図4】横刈刃装置の拡大側断面図である。
【図5】横刈刃装置と縦刈刃装置の駆動力伝動線図である。
【図6】横刈刃装置と縦刈刃装置の別実施例駆動力伝動線図である。
【図7】横刈刃装置と縦刈刃装置の別実施例駆動力伝動線図である。
【図8】汎用コンバインの全体正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に示す実施例を参照しながら説明する。
汎用コンバインは、図1に示すように、左右に一対のクロ−ラ11,11を装備した車体12上に穀稈供給口を前側にして脱穀装置80を搭載し、その前方に刈取前処理装置13を設けて、一連の刈取脱穀作業ができる構成としている。そして、脱穀装置80は、刈り取った穀稈の全部を扱室に投入する全稈投入式の構成であって、上側に扱室を、下側に選別室をそれぞれ配置した汎用コンバイン用脱穀装置に構成されている。
【0017】
刈取前処理装置13は、図面に示すように、取付けのベースとなるテーブル14を低位置に横向きに配置し、その左右両端に、上方に立ち上がった支持枠15,15を設け、該支持枠15,15と前記テーブル14とに横刈刃装置16と掻込みリール18を取り付けて支持した構成となっている。
【0018】
横刈刃装置16は、前記支持枠15,15の前部両側から前方に向けて延長して設けた分草杆17,17の間において、前記テーブル14の前縁に沿わせて設けた構成としている。そして、掻込みリール18は、前記左右両側の支持枠15,15の後部上側に、基部を上下自在に枢着して取付けたリール支持アーム19,19を油圧シリンダ10によって昇降自由に支持し、このリール支持アーム19,19を前方側に延長して先端部分に軸架して設けた構成としている。
【0019】
図2及び図8に示すように、左側のリール支持アーム19の下部又はリール支持アーム19の内側から前記左側の支持枠15内側にかけてゴム板や帆布或いは塩化ビニールシート等の可撓性板状体で構成した遮蔽体36を吊り下げている。この遮蔽体36によって、後述する縦刈刃装置5で既刈側に縦分断された作物が未刈側に飛び出すのを防ぎ、また、刈取った作物がリール支持アーム19に絡み付くのを防ぎ、異物が掻込みリール18側に侵入するのを防いでいる。
【0020】
掻込みオーガ20は、前記横刈刃装置16の刈幅と同等の長さに形成して横向きに設け、その両端を左右の支持枠15,15に横軸で軸受支持し、フィーダーケースの取り込み口に向けて搬送作用するラセンと左右適宜間隔で設ける掻込フィンガを有し、掻込フィンガが横刈刃装置16の先端よりも前に突き出して穀稈を引き込み、回転に伴って刈取穀稈をラセンと掻込フィンガで掻き込みながら機体の右側に集める構成としている。
【0021】
掻込みオーガ20によって穀稈を集める位置に穀稈を脱穀装置80へ搬送するフィーダー21を設けて、このフィーダー21の搬送始端部を掻込みオーガ20の背後に臨ませて、搬送終端部を前記脱穀装置80の穀稈供給口に連通させて設け、前記掻込みオーガ20が集めた刈取穀稈を脱穀装置80の供給口まで搬送して供給する構成としている。
【0022】
左側支持枠15の外側に縦刈刃装置5を立ち上げて左側支持枠15から延ばす縦刈刃支持アーム6で支持している。この縦刈刃装置5は横刈刃装置16よりも前側で分草杆17の真後或いは若干内側上方に立設し、絡み合って植立する作物を縦に分断して掻込みリール18による取り込みを行い易くすると共に、クロ−ラ11によって未刈作物を踏み付けることが無い。
【0023】
図3と図4に示す如く、横刈刃装置16は、フィンガ3と可動主刈刃4で構成し、刈刃駆動ケース7の出力軸26に固着のL型駆動アーム8の主駆動側アーム8aと可動主刈刃4を連結して往復揺動する。
【0024】
また、縦刈刃装置5は、前後に位置調整可能で、固定刃1と可動縦刈刃2で構成し、前記刈刃駆動ケース7の出力軸26に固着のL型駆動アーム8の縦駆動側アーム8bと調整ロッド23と縦駆動アーム9とリンク22で可動縦刈刃2に連結して可動縦刈刃2を往復揺動する。可動縦刈刃2が固定刃1より機体外側に位置し、可動縦刈刃2の刃先は固定刃1の刃先よりも前側にして固定刃1に作物が絡まないようにしている。
【0025】
刈刃駆動ケース7は、入力軸27に固着の入力プーリ24にベルト25で回転駆動力を入力し、内部で正逆回転に変換して出力軸26に出力する。
図5は、刈取前処理装置13の駆動力伝動線図で、エンジンの出力軸から変速された回転駆動力がエレベータ駆動軸28の一端に固着の駆動プーリ29に入力し、フィーダー21のエレベータチェン30を駆動する。そして、エレベータ駆動軸28の他端に固着のスプロケット38から中継軸32に固着のスプロケット39にチェン31で回転駆動力を伝動する。
【0026】
中継軸32の中継プーリ40から掻込みオーガ20のオーガプーリ41にオーガ駆動ベルト33で回転駆動力を伝動し、掻込みリール18にチェン34,35で回転駆動力を伝動し、出力プーリ37から前記刈刃駆動ケース7の入力軸27に固着の入力プーリ24にベルト25で回転駆動力を伝動する。
【0027】
図6は、可動縦刈刃2と可動主刈刃4の駆動別実施例で、掻込みオーガ20を駆動するオーガスプロケット41を固着したオーガ主軸46に固着のオーガプーリ45から可動縦刈刃2の縦駆動ケース48の入力軸に固着の縦駆動プーリ47に動力伝動し、縦駆動ケース48内で可動縦刈刃2を往復運動するようにして可動縦刈刃2を駆動するようにしている。縦駆動プーリ47は、テンションクラッチの入・切で伝動の断続を行えるようにすることも出来る。
【0028】
縦駆動プーリ47の駆動は、エレベータ駆動軸28に固着のエレベータプーリ(図示省略)から行うようにすることも出来る。
可動主刈刃4の横駆動ケース50の横入力軸49に固着の入力プーリ24に中継軸32の出力プーリ37から動力伝動し、横駆動ケース50内で可動主刈刃4を往復運動するようにして可動主刈刃4を駆動するようにしている。
【0029】
オーガプーリ45或いはエレベータプーリの回転は、出力プーリ37の回転よりも低速で、可動縦刈刃2が可動主刈刃4よりも低速で駆動される。
さらに、別実施例として示す図7において、刈刃駆動ケース7の入力軸27に入力プーリ24に並設する縦刈刃駆動プーリ42から縦駆動ケース48の縦駆動プーリ47にベルト伝動し、テンションクラッチ51の入・切で伝動の断続を行えるようにする。
【0030】
縦駆動プーリ47は大径として可動縦刈刃2が可動主刈刃4よりも低速で駆動されるようにする。縦駆動プーリ47にはバランスウエイトを設けて、クランク運動による振動を抑えている。
【0031】
なお、縦駆動プーリ47は、掻込みリール18のリール主軸44に固着したリールプーリ(図示省略)からベルトでテンションクラッチの入・切で伝動の断続を行えるようにすることも出来る。
【符号の説明】
【0032】
1 固定刃
2 可動縦刈刃
4 可動主刈刃
5 縦刈刃装置
7 刈刃駆動ケース
13 刈取前処理装置
15 支持枠
16 横刈刃装置
18 掻込みリール
19 リール支持アーム
20 掻込みオーガ
26 出力軸
27 入力軸
36 遮蔽体
46 オーガ主軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植立作物を水平に刈る横刈刃装置(16)と、該横刈刃装置(16)の上方位置で植立作物を掻き込む掻込みリール(18)と、前記横刈刃装置(16)の後側で左右の支持枠(15)の間に軸架されて刈取作物を搬送する掻込みオーガ(20)を刈取前処理装置(13)に備え、前記横刈刃装置(16)の刈取作用域における横側端部位置に、植立作物を垂直方向に分断する縦刈刃装置(5)を設けた汎用コンバインの刈取装置において、前記掻込みリール(18)を支持するリール支持アーム(19)から前記支持枠(15)の内側にわたる板状の遮蔽体(36)を設けたことを特徴とする汎用コンバインの刈取装置。
【請求項2】
前記遮蔽体(36)を可撓性のシートとした請求項1に記載の汎用コンバインの刈取装置。
【請求項3】
前記縦刈刃装置(5)を、支持枠(15)の内側に立設する固定刃(1)とこの固定刃(1)の外側に臨んで上下に往復摺動する可動縦刈刃(2)で構成した請求項1または請求項2に記載の汎用コンバインの刈取装置。
【請求項4】
前記横刈刃装置(16)を構成する可動主刈刃(4)と前記可動縦刈刃(2)を刈刃駆動ケース(7)から分岐して駆動する構成とした請求項1または請求項2または請求項3に記載の汎用コンバインの刈取装置。
【請求項5】
前記掻込みオーガ(20)を左右の支持枠(15)間に軸架するオーガ主軸(46)から、前記刈刃駆動ケース(7)へ駆動力を入力する構成としたことを特徴とする請求項4に記載の汎用コンバインの刈取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−9654(P2013−9654A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−145977(P2011−145977)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】