説明

汚染土壌及び汚染地下水の原位置浄化処理方法

【課題】好気性分解領域における溶存酸素量を効率的に増大させることができる。
【解決手段】揮発性有機化合物で汚染された汚染領域Rに揚水井戸1が配設されるとともに、揚水井戸1を間に一方の汚染領域R1側に第1注入井戸2が、他方の汚染領域R2側に第2注入井戸3が配設される。第1注入井戸2から供給し一方の汚染領域R1を流通させて揚水井戸1で汲み上げる地下水Wの第1循環S1によって、一方の汚染領域R1に、活性化した嫌気性微生物で揮発性有機化合物を分解させる嫌気性分解領域P1を形成する。第2注入井戸3から供給し他方の汚染領域R2を流通させて揚水井戸1で汲み上げる地下水Wの第2循環S2によって、他方の汚染領域R2に、活性化した好気性微生物で揮発性有機化合物を分解させる好気性分解領域P2を形成する。第2循環S2において地下水Wに微細気泡を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばテトラクロロエチレンやトリクロロエチレンなどの揮発性有機化合物で汚染された土壌及び地下水を微生物によって原位置で浄化処理する汚染土壌及び汚染地下水の原位置浄化処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、テトラクロロエチレンやトリクロロエチレンなどの揮発性有機化合物(揮発性有機塩素系化合物)で汚染された土壌や地下水を原位置で浄化処理する方法が提案され実施されている。
例えば、特許文献1には、効率的な微生物分解を実施するため、揮発性有機化合物で汚染された汚染領域に配設された揚水井戸の一方側に嫌気性分解領域、他方側に好気性分解領域を形成し、原位置微生物処理における地下水循環を2系統に分割する浄化処理方法が提案されている。
この方法では、嫌気性分解領域に配設された第1注入井戸に栄養剤を注入し、微生物を活性化させることによって嫌気性分解領域を嫌気的雰囲気に保持している。また、好気性分解領域に配設された第2注入井戸にエアレーション(曝気)を行うなどして酸素を強制的に溶存させた地下水を循環させることによって、好気性分解領域を好気的雰囲気に保持している。
そして、各注入井戸から注入された地下水は循環して揚水井戸に集水されるため、揚水井戸付近には、嫌気性雰囲気と好気性雰囲気とが共存する環境が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−200598号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の浄化処理方法では、第2注入井戸に循環される地下水にエアレーションを行うことで好気性分解領域の溶存酸素量を増大させているが、従来のエアレーションでは飽和溶存酸素量(例えば、20℃の場合、約9mg/L)以上の酸素を溶存させることは物理的に困難である。
好気性分解領域に多くの酸素を溶存させることによって好気性分解領域の好気性雰囲気が長時間保持され、確実な浄化処理を行うことができるため、好気性分解領域における溶存酸素量を飽和溶存酸素量よりも増大させることができる浄化処理方法が望まれている。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、好気性分解領域における溶存酸素量を効率的に増大させることができる汚染土壌及び汚染地下水の原位置浄化処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る汚染土壌及び汚染地下水の原位置浄化処理方法は、揮発性有機化合物で汚染された土壌及び地下水を微生物によって原位置で浄化処理する方法であって、前記揮発性有機化合物で汚染された汚染領域に揚水井戸が配設されるとともに、該揚水井戸を間に一方の汚染領域側に第1注入井戸が、他方の汚染領域側に第2注入井戸が配設され、前記第1注入井戸から供給し前記一方の汚染領域を流通させて前記揚水井戸で汲み上げる前記地下水の第1循環によって、前記一方の汚染領域に、活性化した嫌気性微生物で前記揮発性有機化合物を分解させる嫌気性分解領域を形成するとともに、前記第2注入井戸から供給し前記他方の汚染領域を流通させて前記揚水井戸で汲み上げる前記地下水の第2循環によって、前記他方の汚染領域に、活性化した好気性微生物で前記揮発性有機化合物を分解させる好気性分解領域を形成し、前記第2循環において、前記地下水に微細気泡を生成することを特徴とする。
【0007】
本発明では、第2循環において、揚水井戸から第2注入井戸に循環される地下水に微細気泡を生成している。微細気泡は、通常の気泡と比べて溶解量が多いため、地下水の溶存酸素量を増大させることができる。また、微細気泡は、通常の気泡と比べて水中での上昇速度が遅いため、地下水中に長時間存在することができる。そして、好気性分解領域の地下水には多くの酸素が長時間存在するため、好気性分解領域の好気性状態を長時間良好に維持することができる。
ここで、微細気泡とは、通常、マイクロバブル(粒径50μm〜1μm程度)やナノバブル(粒径1μm以下)と称される気泡を示し、通常の気泡とは、通常、ミリバブル(粒径数mm〜50μm程度)と称される気泡を示すこととする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第2循環において地下水に微細気泡を生成していることにより、地下水に飽和溶存酸素量よりも多くの酸素を溶存させることができるとともに、地下水中に酸素を長時間存在させることができ、好気性分解領域の好気性状態を長時間良好に維持することができるため、好気性分解領域において、短時間で確実な浄化が可能であるとともに、浄化効果を長時間維持することができる
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態による汚染土壌及び汚染地下水の原位置浄化処理方法に用いる浄化処理装置の一例を示す図である。
【図2】溶存酸素濃度を比較する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態による汚染土壌及び汚染地下水の原位置浄化処理方法について、図1および図2に基づいて説明する。本実施形態は、揮発性有機化合物で汚染された土壌及び地下水を、微生物によって原位置で浄化処理する汚染土壌及び汚染地下水の原位置浄化処理方法に関するものである。
【0011】
図1に示すように、本実施形態による汚染土壌及び汚染地下水の原位置浄化処理方法に用いる浄化処理装置(浄化処理設備)Aは、揮発性有機化合物で汚染された汚染領域Rに配置された揚水井戸1と、この揚水井戸1を間に一方の汚染領域R1側に配置された第1注入井戸2と、揚水井戸1を間に他方の汚染領域R2側に配置された第2注入井戸3とを備えて構成されている。また、揚水井戸1には、その下端側に周囲の地下水Wを内部に透過させるためのスリット部1aが設けられており、内部に挿入設置した揚水ポンプ1bの駆動によりスリット部1aを介して地下水Wを集水し地上に汲み上げるように構成されている。一方、第1注入井戸2と第2注入井戸3は、それぞれ、下端側にスリット部2a、3aが設けられており、揚水井戸1で汲み上げた地下水Wを第1注入井戸2と第2注入井戸3のそれぞれの内部に供給した際に、この地下水Wをスリット部2a、3aを通じて地中に返送できるように構成されている。なお、図1では、揚水井戸1と第1注入井戸2と第2注入井戸3とがそれぞれ1つずつ設けられているように図示しているが、揚水井戸1と第1注入井戸2と第2注入井戸3はそれぞれ、複数設けられていてもよい。
【0012】
さらに、本実施形態の浄化処理装置Aにおいては、揚水井戸1の揚水ポンプ1bに繋がる配管4が地上にて二股に分岐しており、一方の分岐管5が栄養剤添加槽6に、他方の分岐管7が微細気泡生成槽8にそれぞれ繋げられている。また、栄養剤添加槽6と第1注入井戸2、微細気泡生成槽8と第2注入井戸3が、それぞれ、配管9、10を介して繋げられている。
なお、栄養剤添加槽6は、一方の分岐管5から送られてきた地下水Wに、例えば窒素栄養源、炭素栄養源、有機酸、無機塩、ビタミンなどの栄養剤を添加するための槽である。
【0013】
また、微細気泡生成槽8は、他方の分岐管7から送られてきた地下水W内に微細気泡を生成する槽であり、微細気泡生成装置(不図示)を備えている。微細気泡生成装置の微細気泡を発生させる原理は、例えば、加圧溶解方式、旋回方式、スタティックミキサー方式などの公知の原理である。なお、この発生原理によって微細気泡の数や粒径分布などが異なる。このような微細気泡生成槽8で微細気泡を生成された微細気泡水は、酸素飽和水よりも多くの酸素を含有している。
【0014】
図2は、加圧溶解方式、旋回方式でそれぞれ製造した後にミリバブルを除去するために5分間以上放置して採取した2種類の微細気泡水1、微細気泡水2、酸素飽和水および脱気水の溶存酸素濃度(JISK0102)を測定した結果を示すものである。この測定時の温度条件は、約25℃であった。図2から分かるように、酸素飽和水の溶存酸素濃度は10.2mg/Lであるが、微細気泡水は2種類とも酸素飽和水と比べて1.2〜1.3倍の酸素を含有している。
【0015】
また、このような微細気泡水において、微細気泡は、通常の気泡(ミリバブル)と比べて上昇速度が遅いとともに、溶解量が多いという特徴がある。また、通常の気泡は水中を上昇して水面で破裂するのに対し、微細気泡のマイクロバブルは水中で縮小して最終的には圧壊して消滅し、ナノバブルは水中に長期間にわたって存在している。このため、微細気泡は、広い範囲に均一に供給されて、早期に好気性雰囲気を形成するとともに、この好気性雰囲気を長時間維持することができる。また、マイクロバブルの圧壊時にはラジカルが発生するため、このラジカルで汚染物質(揮発性有機化合物)を分解することができる。
【0016】
上記のように構成した浄化処理装置Aによって汚染土壌及び汚染地下水を浄化処理する際には、揚水井戸1内に挿入した揚水ポンプ1bを駆動し、揚水井戸1のスリット部1aを介して周囲の地下水Wを集水しつつ地上に汲み上げる。このように揚水井戸1から地下水Wを汲み上げると、一方の汚染領域R1には、第1注入井戸2側から揚水井戸1に向けて流れる地下水流T1が発生し、他方の汚染領域R2には、第2注入井戸3側から揚水井戸1に向けて流れる地下水流T2が発生する。
【0017】
また、本実施形態において、一方の汚染領域R1から集水した地下水Wと他方の汚染領域R2から集水した地下水Wとが、揚水井戸1内で混合されて地上に汲み上げられる。そして、地上に汲み上げた地下水Wのうち一部の地下水は、一方の分岐管5を介して栄養剤添加槽6に送られ、この栄養剤添加槽6で、栄養剤が添加される。このように栄養剤を添加した地下水Wは、配管9を通じて第1注入井戸2に供給され、この第1注入井戸2のスリット部2aから再度地中に返送される。返送された栄養剤を含む地下水Wは、一方の汚染領域R1を流通する地下水流T1によってこの一方の汚染領域R1を通過し、再度揚水井戸1に集水される。これにより、揚水井戸1を間に一方の汚染領域R1側には、揚水井戸1から栄養剤添加槽6に、栄養剤添加槽6から第1注入井戸2に、第1注入井戸2から一方の汚染領域R1を通じて再び揚水井戸1に循環する地下水Wの第1循環S1が形成される。
【0018】
そして、このように形成された地下水Wの第1循環S1によって、栄養剤を含む地下水Wが順次一方の汚染領域R1を通過するとともに、土着の微生物が活性化して土壌や地下水中の酸素が消費され、一方の汚染領域R1側には、土着の嫌気性微生物が活性化した嫌気性分解領域P1が形成される。
【0019】
一方、揚水井戸1で汲み上げられ、他方の分岐管7を介して微細気泡生成槽8に送られた地下水Wには、この微細気泡生成槽8で微細気泡が生成され、その溶存酸素量が増大される。そして、このように溶存酸素濃度が高くなった地下水Wは、配管10を介して第2注入井戸3に供給され、この第2注入井戸3のスリット部3aから再度地中に返送される。返送された溶存酸素濃度が高い地下水Wは、他方の汚染領域R2を流通する地下水流T2によってこの他方の汚染領域R2を通過し、再度揚水井戸1に集水される。これにより、揚水井戸1を間に他方の汚染領域R2側には、揚水井戸1から微細気泡生成槽8に、微細気泡生成槽8から第2注入井戸3に、第2注入井戸3から他方の汚染領域R2を通じて再び揚水井戸1に循環する地下水Wの第2循環S2が形成される。
【0020】
そして、このように形成された地下水Wの第2循環S2によって、溶存酸素濃度が高い地下水Wが順次他方の汚染領域R2を通過するとともに、土着の微生物が活性化し、この他方の汚染領域R2側には、土着の好気性微生物が活性化した好気性分解領域P2が形成される。
【0021】
例えばテトラクロロエチレン(揮発性有機化合物)で汚染された汚染領域Rに第1循環S1と第2循環S2を形成して地下水Wを循環させた場合には、第1循環S1で形成した嫌気性分解領域P1で、テトラクロロエチレンが活性化した嫌気性微生物による脱塩素反応でトリクロロエチレンひいてはシス−1,2−ジクロロエチレンに分解される。さらに、このようにトリクロロエチレンひいてはシス−1,2−ジクロロエチレンに分解された揮発性有機化合物が、第1循環S1によって地下水Wとともに揚水井戸1から汲み上げられる。ついで、このトリクロロエチレンひいてはシス−1,2−ジクロロエチレンを含む地下水Wが、第2循環S2に送られ、第2注入井戸3から好気性分解領域P2に流通する。これにより、嫌気性分解領域P1の嫌気性微生物でトリクロロエチレンひいてはシス−1,2−ジクロロエチレンまで分解された揮発性有機化合物は、好気性分解領域P2で活性化した好気性微生物による脱塩素反応で塩化ビニルを経て二酸化炭素に分解される。
【0022】
ここで、本実施形態において、揚水井戸1で汲み上げた地下水Wは、嫌気性分解領域P1を通過した第1循環S1の地下水Wと、好気性分解領域P2を通過した第2循環S2の地下水Wとが揚水井戸1内で混合される。そして、地上に汲み上げるとともに、一方の分岐管5と他方の分岐管7によって第1循環S1と第2循環S2とに振り分けられる。このため、嫌気性分解領域P1を通過してトリクロロエチレンひいてはシス−1,2−ジクロロエチレンまで分解された揮発性有機化合物の一部は、再度第1循環S1によって嫌気性分解領域P1を通過するように循環されることになる。しかしながら、継続的に揚水井戸1で地下水Wを汲み上げ第1循環S1と第2循環S2に振り分けて循環することで、汚染領域Rのテトラクロロエチレンの全てが嫌気性分解領域P1と好気性分解領域P2を通過し、徐々に二酸化炭素まで分解されて無害化される。これにより、汚染領域R全体のテトラクロロエチレンで汚染された汚染土壌及び汚染地下水が確実に浄化処理される。また、このとき、順次揚水井戸1で汲み上げた地下水Wの揮発性有機化合物濃度を測定することで、汚染土壌及び汚染地下水の浄化処理の程度を確認することができる。
【0023】
したがって、本実施形態の汚染土壌及び汚染地下水の原位置浄化処理方法においては、地下水Wの第1循環S1によって一方の汚染領域R1側に嫌気性分解領域P1が形成される。これにより、この領域P1で活性化した嫌気性微生物によって揮発性有機化合物を分解することができる。また、地下水Wの第2循環S2によって他方の汚染領域R2側に好気性分解領域P2が形成される。これにより、嫌気性分解領域P1で無害化されるまで分解しきれていない揮発性有機化合物がこの好気性分解領域P2に地下水Wとともに流通することで、確実に揮発性有機化合物を好気性微生物によって無害化されるまで分解することができる。
【0024】
そして、第2注入井戸3に循環される地下水Wに微細気泡生成槽8を用いて微細気泡を生成していることにより、地下水W内に飽和溶存酸素量よりも多くの酸素を溶存させることができる。したがって、地下水W中に酸素を長時間存在させることができ、好気性分解領域P2の好気性状態を長時間良好に維持することができるため、好気性分解領域P2における浄化処理を効率的に行うことができる。
【0025】
以上、本発明による汚染土壌及び汚染地下水の原位置浄化処理方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、第1注入井戸2から栄養剤を添加した地下水Wを地中に返送することで、土着の嫌気性微生物を活性化させた嫌気性分解領域P1を形成し、また、第2注入井戸3から溶存酸素濃度を上昇させた地下水Wを地中に返送することで、土着の好気性微生物を活性化させた好気性分解領域P2を形成するものとしたが、第1注入井戸2に供給する地下水Wに嫌気性微生物を添加したり、第2注入井戸3に供給する地下水Wに好気性微生物を添加して、これら地下水Wが一方の汚染領域R1と他方の汚染領域R2にそれぞれ流通することで、嫌気性分解領域P1に嫌気性微生物を、好気性分解領域P2に好気性微生物を供給するようにしてもよい。
【0026】
また、本実施形態では、揚水井戸1で汲み上げた地下水Wに対し栄養剤の添加のみを施して第1注入井戸2から返送するものとしたが、例えば汲み上げた地下水Wを脱気装置などに送り、溶存酸素濃度を低下させた地下水Wを第1注入井戸2から返送するようにしてもよい。これにより、確実に第1循環S1によって嫌気性分解領域P1を形成することができるとともに、確実に嫌気性微生物を活性化させて揮発性有機化合物を分解させることができる。
【0027】
さらに、本実施形態では、嫌気性分解領域P1と好気性分解領域P2をそれぞれ通過した地下水Wを揚水井戸1で混合しつつ汲み上げるものとしたが、嫌気性分解領域P1を通過した地下水Wと、好気性分解領域P2を通過した地下水Wとをそれぞれ区分しながら地上に汲み上げてもよい。この場合には、嫌気性分解領域P1を通過した地下水Wを全て微細気泡生成槽8に送り、好気性分解領域P2を通過した地下水Wを全て栄養剤添加槽6に送ることが可能になる。すなわち、第1循環S1と第2循環S2とを繋げた1系統の循環で地下水Wを循環させることができる。そして、このようにした場合には、嫌気性分解領域P1でトリクロロエチレンひいてはシス−1,2−ジクロロエチレンまで分解した揮発性有機化合物を全て、次工程の好気性分解領域P2に送ることができるため、本実施形態よりもさらに効率的に浄化処理を行なうことが可能になる。
【0028】
また、本実施形態では、第2循環S2の微細気泡生成槽8が地下水Wに微細気泡を生成するためにのみ用いられるように説明を行なったが、微細気泡生成槽8では地下水Wに微細気泡を生成するとともに、この地下水Wに含まれた少なくとも揮発性有機化合物の一部が微細気泡生成槽8内の気相中に揮発、拡散している。このため、例えば微細気泡生成槽8の気相に活性炭などの吸着剤を収容した吸着槽を接続して浄化処理装置Aを構成し、微細気泡を生成するとともに微細気泡生成槽8の気相を吸着槽に送ることで、気相中に揮発した揮発性有機化合物を吸着剤で捕集するようにしてもよい。この場合には、地中の微生物で揮発性有機化合物を分解し汚染土壌及び汚染地下水を浄化処理することができると同時に、地上においても汲み上げた地下水Wから揮発性有機化合物を除去することができるため、さらに効率的に浄化処理を行なうことが可能になる。
【0029】
さらに、本実施形態では、土壌及び地下水を汚染している揮発性有機化合物がテトラクロロエチレン(トリクロロエチレン、シス−1,2−ジクロロエチレンを含む)であるものとして説明を行なったが、例えば、1,1,1−トリクロロエタン、ジクロロメタン、四塩化炭素、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,3−ジクロロプロペン、ベンゼンなど他の揮発性有機化合物に対しても、本発明の汚染土壌及び汚染地下水の原位置浄化処理方法を適用することにより、本実施形態と同様に浄化処理することが可能である。また、例えばこれら揮発性有機化合物とともに、水銀、セレン、六価クロム、カドミウム、鉛、砒素などの重金属類が共存する複合汚染が生じている場合には、揚水井戸1で汲み上げた地下水Wに対し、不溶化処理などを施し、重金属類などの他の汚染物質を除去した地下水Wを各注入井戸2、3から地中に返送することで、他の汚染物質を除去しつつ揮発性有機化合物を分解処理することが可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 揚水井戸
1b 揚水ポンプ
2 第1注入井戸
3 第2注入井戸
6 栄養剤添加槽
8 微細気泡生成槽
A 浄化処理装置(浄化処理設備)
P1 嫌気性分解領域
P2 好気性分解領域
R 汚染領域
R1 一方の汚染領域
R2 他方の汚染領域
S1 第1循環
S2 第2循環
T1 地下水流
T2 地下水流
W 地下水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性有機化合物で汚染された土壌及び地下水を微生物によって原位置で浄化処理する方法であって、
前記揮発性有機化合物で汚染された汚染領域に揚水井戸が配設されるとともに、該揚水井戸を間に一方の汚染領域側に第1注入井戸が、他方の汚染領域側に第2注入井戸が配設され、
前記第1注入井戸から供給し前記一方の汚染領域を流通させて前記揚水井戸で汲み上げる前記地下水の第1循環によって、前記一方の汚染領域に、活性化した嫌気性微生物で前記揮発性有機化合物を分解させる嫌気性分解領域を形成するとともに、
前記第2注入井戸から供給し前記他方の汚染領域を流通させて前記揚水井戸で汲み上げる前記地下水の第2循環によって、前記他方の汚染領域に、活性化した好気性微生物で前記揮発性有機化合物を分解させる好気性分解領域を形成し、
前記第2循環において、前記地下水に微細気泡を生成することを特徴とする汚染土壌及び汚染地下水の原位置浄化処理方法。



【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−35181(P2012−35181A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176581(P2010−176581)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【Fターム(参考)】