説明

油圧制御装置

【課題】 アクチュエータをオペレータの要求どおりに複合操作することができる油圧制御装置を提供する。
【解決手段】 油圧ポンプPを接続するポンプ通路4と、このポンプ通路4に吸入側を接続したアクチュエータたる油圧モータMと、この油圧モータMの排出側に接続した排出通路5と、この排出通路5に切換弁7a〜7cを介して接続した1または複数の他のアクチュエータ1〜3とを備え、上記油圧ポンプPからの吐出油によって上記油圧モータMを回転させるとともに、この油圧モータMから排出する排出油によって、他のアクチュエータ1〜3を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、茶摘機のように、油圧でモータやシリンダ等を作動させる油圧制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧で作動するモータやシリンダを複合操作する油圧制御装置として、例えば、茶摘機が知られている。
この茶摘機は、図2に示すように、一対の走行用クローラ101,102を所定の間隔で備えており、これら走行用クローラ101,102を油圧モータで回転させることにより走行する。
また、上記走行用クローラ101,102は、茶畝の幅以上の間隔を有しており、当該茶畝の上方に、茶葉を摘採するための刈刃装置Aが位置するようにしている。この刈刃装置Aは、当該茶摘機の直進走行方向に直交する方向に軸103を備えるとともに、この軸103の外周に複数の刈刃103aを設けている。そして、この刈刃装置Aは、軸103を往復動させたり、あるいは回転させたりすることにより、刈刃103aで茶葉を刈り取るとともに、刈り取った茶葉を送風機から送られる風によって収集している。
【0003】
また、上記刈刃装置Aは、軸103をシリンダで形成しており、軸方向に伸縮可能にしている。このように、軸103を伸縮することにより、刈刃103aによる刈り取り範囲を広くしたり狭くしたりしている。
さらに、上記刈刃装置Aには、刈刃103aの高さ位置を調整する昇降機構104が設けられている。
上記のように、この茶摘機においては、茶畝の幅や高さに合わせて、刈刃装置Aの幅や高さを調節可能にしているが、これら茶摘機に備えるアクチュエータの多くが油圧によって制御されている。
つまり、上記茶摘機には、走行用クローラ101,102を回転させるモータ、軸103を伸縮するシリンダ、刈刃103aを往復動させるシリンダあるいは刈刃103aを回転させるモータ、さらには刈刃装置Aの高さを調整する昇降機構104のシリンダ等、複数のアクチュエータが備えられているが、これらの全ては油圧によって作動するものである。
【0004】
そして、上記モータやシリンダには油圧ポンプが接続されており、油圧ポンプから吐出する圧油によって、モータが回転したり、あるいはシリンダが伸縮したりするが、こうした茶摘機における油圧制御装置(油圧回路)の一例を図3に簡略的に示す。
図3に示すように、油圧ポンプPにはポンプ通路105が接続されている。このポンプ通路105には、刈刃103aを回転させる刈刃用モータ106、軸103を伸縮するための幅調整用シリンダ107、刈刃装置Aの高さ位置を調整する昇降機構104における昇降用シリンダ108、その他の制御を行う油圧シリンダ109がパラレルに接続されている。
そして、ポンプ通路105と各アクチュエータとの連通過程に設けた切換弁110〜113を切り換えることにより、油圧ポンプからの吐出油を各アクチュエータに導くようにしている。
したがって、仮に茶畝の高さが徐々に高くなるような場合には、切換弁110を連通させて刈刃用モータ106を回転させた状態で、切換弁112を徐々に連通させればよい。このようにすれば、刈刃用モータ106と切換弁112とを同時制御することができるので、走行を停止することなく、茶葉を摘採することができる。
【特許文献1】特開2005−265065号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記茶摘機における従来の油圧制御装置によれば、各アクチュエータを油圧ポンプPに対してパラレルに接続している。そのため、複数のアクチュエータを同時制御する際に、それら両アクチュエータの負荷に差があると、アクチュエータを作動させることができなくなってしまうことがある。
例えば、刈刃103aを回転させて茶葉を刈り取りながら、刈刃装置Aを上昇させる場合には、刈刃用モータ106を回転させるとともに、昇降用シリンダ108を伸長させる。
【0006】
このとき、刈刃103aが回転して刈り取りを行っている状態においては、刈刃用モータ106の負荷はあまり大きくない。一方、昇降用シリンダ108には、刈刃装置Aの荷重が作用しており、負荷が大きい。
このように、刈刃用モータ106の負荷が小さく、昇降用シリンダ108の負荷が大きい場合には、油圧ポンプPから吐出する圧油が、負荷の小さい刈刃用モータ106側に優先的に供給されてしまう。その結果、切換弁112を切り換えているにもかかわらず、昇降用シリンダ108を伸長させるだけの圧油を供給できず、刈刃装置Aを上昇させることができなくなってしまう。
【0007】
つまり、従来の油圧制御装置においては、アクチュエータを複合操作した場合に、各アクチュエータをオペレータの要求どおりに制御することができなくなってしまうという問題があった。
【0008】
この発明の目的は、アクチュエータをオペレータの要求どおりに複合操作することができる油圧制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、油圧ポンプを接続するポンプ通路と、このポンプ通路に吸入側を接続したアクチュエータたる油圧モータと、この油圧モータの排出側に接続した排出通路と、この排出通路に切換弁を介して接続した1または複数の他のアクチュエータとを備え、上記油圧ポンプからの吐出油によって上記油圧モータを回転させるとともに、この油圧モータから排出する排出油によって、他のアクチュエータを作動させる点に特徴を有する。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明を前提としつつ、排出通路をタンクに連通する戻り通路を設けるとともに、この戻り通路にはコントロールバルブを設け、このコントロールバルブは、上記切換弁を切り換えて他のアクチュエータを作動するとき、上記排出通路からタンクへの流れを遮断する点に特徴を有する。
第3の発明は、上記第1,2の発明を前提としつつ、ポンプ通路と排出通路とを連通するバイパス通路を設けるとともに、このバイパス通路には制御バルブを設け、この制御バルブは、切り換え位置に応じて上記バイパス通路を連通したり、あるいはポンプ通路から排出通路への流れを遮断したりする点に特徴を有する。
第4の発明は、上記第3の発明を前提としつつ、ポンプ通路には開閉機構を備えるとともに、この開閉機構は、上記制御バルブがバイパス通路を連通した状態にあるとき、上記ポンプ通路を遮断する点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、アクチュエータたる油圧モータと他のアクチュエータとを複合操作する際に、他のアクチュエータを上記油圧モータの排出油によって作動させるので、両アクチュエータの負荷に関わらず、複合操作するアクチュエータにオペレータの要求流量を供給することができる。
第2の発明によれば、アクチュエータたる油圧モータのみを作動する場合には、油圧モータからの排出油をタンクに排出し、上記油圧モータと他のアクチュエータとを複合操作する場合には、上記排出油を他のアクチュエータに導くことができる。したがって、アクチュエータたる油圧モータのみを作動させたり、あるいは上記油圧モータと他のアクチュエータとを複合操作したりすることができる。
【0012】
第3の発明によれば、制御バルブによってバイパス通路を連通させれば、油圧ポンプからの吐出油を直接、他のアクチュエータに供給することができる。したがって、制御バルブを切り換えることにより、アクチュエータたる油圧モータおよび他のアクチュエータのいずれか一方のみを制御したり、あるいはこれら双方を制御したりすることができる。
第4の発明によれば、制御バルブがバイパス通路を連通した状態にあるとき、開閉機構によってポンプ通路が遮断されるので、例えば、他のアクチュエータの負荷が大きい場合であっても、油圧ポンプからの吐出油が油圧モータ側に流れ込んでしまうことがない。したがって、アクチュエータたる油圧モータを確実に停止させるとともに、他のアクチュエータのみを作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1を用いて、この発明の油圧制御装置について説明する。なお、この実施形態においては、当該油圧制御装置を茶摘機に採用する場合について説明する。そして、この茶摘機は上記従来例と回路構成のみ異なり、その他の構造等は上記従来例の茶摘機と同様である。したがって、説明の都合上、茶摘機の構造については、図2を用いて説明することとする。
図1に示す回路図からも明らかなように、この油圧制御装置は、油圧モータMと、シリンダ1〜3とを備えている。なお、上記油圧モータMがこの発明におけるアクチュエータであり、上記シリンダ1〜3がこの発明における他のアクチュエータである。ただし、他のアクチュエータは、シリンダに限らず油圧モータで構成してもよいし、また、1つのみでも、あるいはいずれか複数設けても構わない。これに対して、この発明におけるアクチュエータは、必ず油圧モータで構成しなければならない。
【0014】
そして、この茶摘機においては、上記従来例と同様、刈刃装置Aを備えている(図2参照)。この刈刃装置Aは、複数の刈刃103aを外周に設けた軸103を備えており、この軸103を回転させることにより茶葉を刈り取るが、この軸103を回転させるのが上記油圧モータMである。
一方、上記軸103は、シリンダによって構成されており、その軸方向に伸縮可能であるが、この軸103を伸縮させるシリンダが、図1に示すシリンダ1である。
また、上記刈刃装置Aは、シリンダからなる昇降機構104を備えるとともに、このシリンダを伸縮させることによって、その高さ位置を調整することができる。そして、この昇降機構104を構成するのが、図1に示すシリンダ2である。
このように、上記刈刃装置Aは、シリンダ1,2を制御することにより、その刈り取り範囲(幅)と高さを調整し、茶畝の幅や高さに対応するようにしている。なお、ここでは具体的な説明は省略するが、図1のシリンダ3も、上記シリンダ1,2と同様、伸縮動作により所定の役割を担うものである。
【0015】
次に、アクチュエータたる油圧モータMと、他のアクチュエータたるシリンダ1〜3との回路関係について説明する。
図1に示すように、油圧ポンプPにはポンプ通路4を接続するとともに、このポンプ通路4には、上記油圧モータMの吸入側を接続している。また、油圧モータMの排出側には、排出通路5を接続している。したがって、油圧ポンプPからの吐出油によって油圧モータMが回転するとともに、この油圧モータMを回転させた作動油が、排出油として排出通路5に排出される。
そして、上記排出通路5には、パラレル通路6a〜6cをパラレルに接続するとともに、これら各パラレル通路6a〜6cには、切換弁7a〜7cを接続している。
また、上記切換弁7a〜7cには、タンクに連通するタンク通路8a〜8cをそれぞれ接続するとともに、一対のアクチュエータ通路9a〜9cおよびアクチュエータ通路10a〜10cを接続している。
【0016】
そして、上記シリンダ1〜3内には、ロッド1b〜3bを固定したピストン1a〜3aを摺動可能に組み込むとともに、このピストン1a〜3aによって一対の室を区画形成している。また、ピストン1a〜3aによって区画形成された室の一方に、上記アクチュエータ通路9a〜9cをそれぞれ接続するとともに、いずれか他方の室に、上記アクチュエータ通路10a〜10cをそれぞれ接続している。
上記のように、各シリンダ1〜3は、切換弁7a〜7cを介して排出通路5に接続されており、各切換弁7a〜7cが図示の中立位置にあるとき、排出通路5からシリンダ1〜3を遮断するとともに、シリンダ1〜3をタンク通路8a〜8cを介してタンクに連通する。
【0017】
一方、各切換弁7a〜7cを図中上側のa位置あるいは図中下側のb位置に切り換えると、排出通路5がシリンダ1〜3のいずれか一方の室に連通するとともに、いずれか他方の室がタンク通路8に連通する。したがって、切換弁7a〜7cをa,bいずれかの位置に切り換えれば、排出通路5内の油がシリンダ1〜3に導かれて、ロッド1b〜3bを伸縮させることができる。
なお、この実施形態における各切換弁7a〜7cは、両端にスプリングを設けるとともに、一端側にはソレノイドを設けている。そして、上記各切換弁7a〜7cは、通常時においては、スプリングのバネ力により中立位置を保つ一方、ソレノイドに電流を励磁することにより、a,b位置のいずれかに切り換わるようにしている。そして、ソレノイドに電流を励磁して各切換弁7a〜7cを切り換え制御するのが、図示しないコントローラであるが、このコントローラの制御については後で詳細に説明する。
【0018】
そして、上記排出通路5には、当該排出通路5をタンクに連通する戻り通路11を接続するとともに、この戻り通路11にはコントロールバルブ12を設けている。このコントロールバルブ12は、一端に設けたスプリングのバネ力により、通常、図中下側のb位置に保たれるとともに、戻り通路11を連通させて排出通路5をタンクに連通させている。
一方、上記コントロールバルブ12にはソレノイドを設けており、このソレノイドに電流を励磁することにより、図中上側のa位置に切り換わる。そして、このa位置において、排出通路5からタンクへの流通を遮断するようにしている。
なお、上記コントロールバルブ12は、コントローラが上記切換弁7a〜7cを切り換え制御した場合のみ、a位置に切り換わるようにしている。つまり、コントローラは、他のアクチュエータのいずれかを作動させる信号が入力したとき、ソレノイドに電流を励磁して、切換弁7a〜7cとともにコントロールバルブ12を切り換えるようにしている。
また、上記戻り通路11にはリリーフ弁Rが設けられており、排出通路5内の圧力を所定圧以内に保つようにしている。
【0019】
さらに、上記ポンプ通路4および排出通路5には、両通路4,5を連通するバイパス通路13を接続し、油圧モータMを迂回しながら、両通路4,5が直接連通するようにしている。
ただし、このバイパス通路13には、制御バルブ14を設けている。この制御バルブ14は、一端に設けたスプリングのバネ力により、通常、図中下側のb位置に保たれ、ポンプ通路4と排出通路5とを連通させている。一方、上記制御バルブ14にはソレノイドを設けており、このソレノイドに電流を励磁することにより、図中上側のa位置に切り換わる。そして、このa位置において、ポンプ通路4側から排出通路5側への流通を遮断するようにしている。
なお、この制御バルブ14の切り換え制御も、上記と同様、コントローラによって行っているが、その詳細は後述する。
【0020】
また、上記ポンプ通路4であって、バイパス通路13との接続点よりも下流側には、この発明の開閉機構を構成するチェックバルブ15を設けている。このチェックバルブ15は、当該チェックバルブ15の上流側の圧力が、スプリングのバネ力によって設定されたイニシャルセット荷重よりも高くなったとき、油圧ポンプPから油圧モータMへの流通を許容するものである。
ただし、上記開閉機構の構成はチェックバルブ15に限らない。例えば、圧力センサによりポンプ通路4内の圧力を検出するとともに、この圧力センサからの信号に基づいてバルブを切り換えるようにしても構わない。また、コントローラからの信号に基づいて、ポンプ通路4を連通したり遮断したりしてもよい。いずれにしても、開閉機構は、所定の条件に基づいて、ポンプ通路4を連通あるいは遮断するものであればよい。
なお、図中符号16a〜16cは、一方のアクチュエータ通路9a〜9cに設けられたチェック弁であり、他方のアクチュエータ通路10a〜10cの圧力によって開弁する。また、図中符号17a〜17cは、他方のアクチュエータ通路10a〜10cに設けられたチェック弁であり、一方のアクチュエータ通路9a〜9cの圧力によって開弁する。
【0021】
次に、この実施形態における油圧制御装置の作用について説明する。
油圧ポンプPを作動させたアイドリング状態では、切換弁7a〜7c、コントロールバルブ12、制御バルブ14は、図1の状態に保たれている。この状態においては、油圧ポンプPからの吐出油の全量が、戻り通路11を介してタンクに戻される。
そして、この状態から軸103を回転させて刈刃103aによる刈り取りを行う場合には、オペレータから入力された信号に基づいて、コントローラが制御バルブ14をa位置に切り換える。制御バルブ14がa位置に切り換わると、バイパス通路13においてポンプ通路4から排出通路5への流れが遮断される。そして、ポンプ通路4内の圧力が、チェックバルブ15のイニシャルセット荷重以上に上昇すると、油圧ポンプPからの吐出油がチェックバルブ15を開弁し、油圧モータMに導かれる。
【0022】
このように、制御バルブ14がa位置に切り換われば、油圧ポンプPからの吐出油によって油圧モータMが回転するが、油圧モータMを回転させた油は、排出側から排出通路5に排出される。そして、排出通路5に排出された油は、戻り通路11からコントロールバルブ12を介してタンクに戻されることとなる。
したがって、コントローラが制御バルブ14をa位置に切り換えることにより、油圧モータMのみを回転させて、茶葉の刈り取りを行うことができる。
【0023】
また、上記のように刈り取りを行っている状態、すなわち、油圧モータMを回転させている状態において、刈刃装置Aの高さや刈り取り範囲を調整する場合には、シリンダ1,2を伸縮する。
例えば、茶畝が徐々に高くなる場合には、茶葉の刈り取り走行に伴って、刈刃装置Aを高くしなければならないが、この場合には、オペレータから入力された信号に基づいて、コントローラが切換弁7bをa位置に、コントロールバルブ12をa位置に切り換える。
このとき、制御バルブ14はa位置に保たれているので、油圧ポンプPからの吐出油の全量が油圧モータMに導かれ、上記と同様に、油圧モータMは回転する。
【0024】
そして、油圧モータMを回転させた油は排出通路5に導かれるが、このとき、コントロールバルブ12はa位置に切り換わっているため、排出通路5からタンクへの流れは遮断されている。したがって、排出通路5内の油は、切換弁7b→アクチュエータ通路9bを介してシリンダ2の一方の室に導かれる。また、シリンダ2の他方の室の油は、アクチュエータ通路10b→切換弁7b→タンク通路8bを介してタンクに戻されるので、シリンダ2のロッド2bが伸長することとなる。
このように、制御バルブ14をa位置に、コントロールバルブ12をa位置に切り換えた状態で、切換弁7a〜7cを切り換えれば、アクチュエータたる油圧モータMを回転させるとともに、当該油圧モータMからの排出油によって、他のアクチュエータ(シリンダ1〜3)を作動させることができる。
【0025】
一方、油圧モータMを回転させずに停止させた状態で、他のアクチュエータのみを作動させる場合には、オペレータから入力された信号に基づいて、コントローラが次のような制御を行う。
例えば、油圧モータMを停止させた状態で、刈刃装置Aを下降させる場合には、コントローラは、制御バルブ14をb位置に、コントロールバルブ12をa位置に、切換弁7bをb位置に切り換える。
制御バルブ14がb位置に切り換わると、バイパス通路13を介してポンプ通路4と排出通路5とが連通するため、油圧ポンプPからの吐出油は、油圧モータMを経由せずに、ポンプ通路4から排出通路5に直接導かれる。
なお、バイパス通路14が連通した状態では、ポンプ通路4と排出通路5の差圧が、チェックバルブ15のイニシャルセット荷重以下におさまるようにしている。言い換えれば、チェックバルブ15のイニシャルセット荷重を、ポンプ通路4と排出通路5の差圧よりも高くなるようにしている。そのため、制御バルブ14がb位置にあるとき、チェックバルブ15が閉弁状態を維持する。したがって、油圧ポンプPからの吐出油が油圧モータM側に導かれることはなく、油圧モータMは停止状態を維持することとなる。
【0026】
そして、コントロールバルブ12がa位置に切り換わっているため、排出通路5からタンクへの流れが遮断されている。そのため、ポンプ通路4から直接排出通路5に導かれた油は、パラレル通路6b→切換弁7b→アクチュエータ通路10bを介してシリンダ2の一方の室に導かれる。このとき、アクチュエータ通路9bは、切換弁7b→タンク通路8bを介してタンクに連通するので、シリンダ2の他方の室内の油がタンクに戻されて、ロッド2bを収縮させることができる。
このように、制御バルブ14をb位置に、コントロールバルブ12をa位置に切り換えた状態で、切換弁7a〜7cを切り換えれば、アクチュエータたる油圧モータMを停止させたまま、他のアクチュエータ(シリンダ1〜3)のみを作動させることができる。
【0027】
なお、上記実施形態においては、開閉機構としてチェックバルブ15を設けたが、例えば、切り換え位置に応じてポンプ通路4を連通あるいは遮断する切換弁を設けるとともに、コントローラが、制御バルブ14をb位置に切り換えると同時に当該切換弁を切り換えて、ポンプ通路4を遮断するようにしても構わない。このようにしても、上記実施形態と同じ効果を得ることができる。
ただし、この発明の油圧制御装置においては、開閉機構は必須の構成要件ではない。例えば、他のアクチュエータ(シリンダ1〜3)の負荷が小さく、アクチュエータたる油圧モータMの作動時の負荷が常に大きくなるような場合には、開閉機構を設けなくてもよい。なぜなら、この場合には、制御バルブ14を連通させることにより、油圧ポンプPからの吐出油が負荷の小さいシリンダ1〜3側に導かれるからである。そして、この場合には、リリーフ弁Rの設定圧が、他のアクチュエータの最大負荷圧<リリーフ弁Rの設定圧<油圧モータMの作動負荷圧、という関係にすれば、油圧モータMを確実に停止状態に維持することができる。
【0028】
また、上記実施形態においては、コントロールバルブ12および制御バルブ14がa位置にあるとき、一方側から他方側への流れを遮断し、他方側から一方側への流れを許容する構成にしたが、a位置において、双方の流れを完全に遮断するようにしても構わない。
いずれにしても、制御バルブ14は、a位置においてポンプ通路4側から排出通路5側への流れを遮断し、コントロールバルブ12は、a位置において排出通路5側からタンクへの流れを遮断する構成であればよい。
そして、上記実施形態においては、この発明の油圧制御装置を茶摘機に適用した場合について説明したが、当該油圧制御装置は茶摘機に限らず、複数のアクチュエータを複合操作するさまざまな産業機械に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】一実施形態に係る油圧制御装置の回路図である。
【図2】茶摘機の構成を簡略的に示す図である。
【図3】従来の油圧制御装置の回路図である。
【符号の説明】
【0030】
1〜3 他のアクチュエータを構成するシリンダ
4 ポンプ通路
5 排出通路
7a〜7c 切換弁
11 戻り通路
12 コントロールバルブ
13 バイパス通路
14 制御バルブ
15 開閉機構を構成するチェックバルブ
M 油圧モータ
P 油圧ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ポンプを接続するポンプ通路と、このポンプ通路に吸入側を接続したアクチュエータたる油圧モータと、この油圧モータの排出側に接続した排出通路と、この排出通路に切換弁を介して接続した1または複数の他のアクチュエータとを備え、上記油圧ポンプからの吐出油によって上記油圧モータを回転させるとともに、この油圧モータから排出する排出油によって、他のアクチュエータを作動させる構成にした油圧制御装置。
【請求項2】
上記排出通路をタンクに連通する戻り通路を設けるとともに、この戻り通路にはコントロールバルブを設け、このコントロールバルブは、上記切換弁を切り換えて他のアクチュエータを作動するとき、上記排出通路からタンクへの流れを遮断する構成にした上記請求項1記載の油圧制御装置。
【請求項3】
上記ポンプ通路と排出通路とを連通するバイパス通路を設けるとともに、このバイパス通路には制御バルブを設け、この制御バルブは、切り換え位置に応じて上記バイパス通路を連通したり、あるいはポンプ通路から排出通路への流れを遮断したりする構成にした上記請求項1または2記載の油圧制御装置。
【請求項4】
上記ポンプ通路には開閉機構を備えるとともに、この開閉機構は、上記制御バルブがバイパス通路を連通した状態にあるとき、上記ポンプ通路を遮断する構成にした上記請求項3記載の油圧制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−14103(P2009−14103A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176426(P2007−176426)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(592057983)KYBエンジニアリングアンドサービス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】