説明

油汚染土壌浄化に使用する微生物活性化剤

【課題】、バイオスティミュレーションに基づいて、十分に短い時間で油汚染土壌を浄化するのに有用な微生物活性化剤を提供すること。
【解決手段】本発明に係る微生物活性化剤は、油で汚染された土壌の浄化処理に使用されるものであって、窒素源と、リン源と、下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む界面活性剤とを含有することを特徴とする。


[式中、Rはアルキル基を示し、nは7〜11の数を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油汚染土壌浄化に使用する微生物活性化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
有機物質で汚染された土壌を浄化する技術として、バイオレメディエーション(微生物の有機物質分解能を活用する土壌浄化技術)の一種であるバイオスティミュレーションが知られている。バイオスティミュレーションとは、土壌中に常在し、有機物質分解能を有する微生物を当該土壌中で増殖させ、又は、当該微生物の有機物質分解能を増強して、汚染土壌を浄化する技術である。バイオスティミュレーションでは、微生物の活性化(微生物の増殖、又はその有機物質分解能の増強)のために、微生物の栄養源を含有する微生物活性化剤が汚染土壌に供給される。
【0003】
このようなバイオスティミュレーションは、生態系への影響が軽微であること、原位置で簡便に実施可能であること、広範囲の土壌に対して適用可能であること、等の利点を有することから、油で汚染された土壌を浄化する技術としても注目され、その開発が進められている。油汚染土壌の浄化を目的としたバイオスティミュレーションとしては、従来、例えば、油汚染土壌に栄養源(窒素源、リン源等)を供給して、当該土壌内の油分解微生物を活性化することにより、当該土壌を浄化するものが知られていた(例えば、下記特許文献1〜4参照)。
【特許文献1】特開2001−212552号公報
【特許文献2】特開2003−53324号公報
【特許文献3】特表平9−511437号公報
【特許文献4】特表平6−508553号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のバイオスティミュレーションは、油、特に重質油で汚染された土壌の浄化に長時間を要し、必ずしも実用に適していないという問題を有していた。バイオスティミュレーションが上述のような利点を有することから、バイオスティミュレーションに基づいて、十分に短い時間で油汚染土壌を浄化する技術は強く求められていると考えられる。
【0005】
そこで、本発明は、バイオスティミュレーションに基づいて、十分に短い時間で油汚染土壌を浄化するのに有用な微生物活性化剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するべく鋭意研究したところ、バイオスティミュレーションに基づいて油汚染土壌を浄化する際に、窒素源と、リン源と、所定の成分を含有する界面活性剤と、を併用することにより、土壌中の油分が短時間で顕著に減少することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明に係る微生物活性化剤は、油で汚染された土壌の浄化処理に使用されるものであって、窒素源と、リン源と、下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む界面活性剤とを含有することを特徴とする。なお、式(1)中、Rはアルキル基を示し、nは7〜11の数を示す。
【化1】

【0008】
上記微生物活性化剤によれば、土壌に含まれる有機物質分解能を有する微生物が活性化され、油汚染土壌が十分に短い時間で効率的に浄化される。ここで、「土壌に含まれる有機物質分解能を有する微生物を活性化」するとは、有機物質分解能を有する微生物を当該土壌中で増殖させ、又は、当該微生物の有機物質分解能を増強することを意味する。
【0009】
本発明の微生物活性化剤を用いることによって、油汚染土壌が十分に短い時間で効率的に浄化される理由としては、例えば、次のようなことが考えられる。
【0010】
すなわち、上記微生物活性化剤は、微生物の栄養源(窒素源及びリン源)及び成分としてポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む界面活性剤を含有する。この界面活性剤の作用によって油汚染土壌に付着した油の剥離及び溶解が加速されると共に栄養源の土壌中への分散及び浸透が促進される。そうすると、土壌中に生息する微生物が栄養源を効率的に取り込んで活性化し、微生物によって汚染原因の油分の分解処理が促進されるため、油汚染土壌が短時間で浄化される。
【0011】
本発明においては、界面活性剤が、上記一般式(1)で表され且つ一般式(1)中のRが分岐アルキル基であるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含むことが好ましい。分岐アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルが配合されている場合、直鎖アルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルエーテルのみが配合されている場合と比較して微生物による油汚染土壌の浄化処理が一層促進される。この主因について発明者らは、分岐アルキル基は直鎖アルキル基と比較し、微生物分解を受けにくいためと考えている。なお、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル基の炭素数は12〜16であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る微生物活性剤においては、窒素源中の窒素及びリン源中のリンの質量の合計100質量部に対して、界面活性剤の含有量が1〜10000質量部であることが好ましい。界面活性剤の含有量を上記範囲内とすると、窒素源及びリン源が汚染土壌中に特に効率的に分散し、微生物が窒素及びリンを十分に取り込むことができるようになるため、油汚染土壌の浄化処理がより一層促進される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バイオスティミュレーションに基づいて、十分に短い時間で油汚染土壌を浄化するのに有用な微生物活性化剤が提供される。すなわち、本発明の微生物活性化剤によれば、生態系にほとんど悪影響を及ぼすことなく、十分に短い時間で、広範囲の油汚染土壌を浄化することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、場合により図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、図面中、同一又は同等の要素には同一の符号を付するものとする。
【0015】
(微生物活性化剤)
本実施形態に係る微生物活性化剤は、油で汚染された土壌の浄化処理に使用されるものであって、窒素源と、リン源と、下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む界面活性剤とを含有する。式(1)中、Rはアルキル基を示し、nは7〜11の数を示す。
【化2】

【0016】
窒素源は、土壌中の微生物により資化されるものであればよいが、アンモニア態窒素(塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等)及び硝酸態窒素(硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等)が好ましい。
【0017】
また、リン源は、土壌中の微生物により資化されるものであればよく、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム12水和物、メタリン酸カリウム、ピロリン酸カリウム、トリリン酸カリウム等が挙げられる。
【0018】
窒素源及びリン源の供給量は特に制限されないが、リン源中のリンに対する窒素源中の窒素の質量比(N/P)が1〜100であるのが好ましく、1〜20であるのがより好ましい。
【0019】
界面活性剤は、上記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する。このポリオキシエチレンアルキルエーテルのエチレンオキサイドの付加モル数nは7〜11であるが、8〜10であることがより好ましい。付加モル数nが7未満又は11を越えると上記範囲内の場合と比較し、微生物の活性化が不十分になる傾向がある。
【0020】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル基は、油汚染土壌の浄化処理を一層促進する観点から、直鎖アルキル基よりも分岐アルキル基であることが好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルのアルキル基が疎水基をなすためには、アルキル基の炭素数は12〜16であることが好ましく、12〜14であることがより好ましい。
【0021】
本実施形態で使用するポリオキシエチレンアルキルエーテルは、従来公知の方法によって調製すればよく、例えば、アルカリ触媒の存在下、高級アルコールに酸化エチレンを付加重合することによって調製される。
【0022】
本実施形態に係る微生物活性剤においては、窒素源中の窒素の質量及びリン源中のリンの質量100質量部に対して、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量が1〜10000量部であることが好ましく、5〜5000質量部であることがより好ましい。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量が1質量部未満であると、上記範囲内の場合と比較して、微生物の活性化が不十分になる傾向があり、他方、当該含有量が10000質量部を超えると、上記範囲内の場合と比較して、微生物中における他の栄養源の作用が阻害され、微生物の活性化が不十分になる傾向がある。
【0023】
本実施形態に係る微生物活性剤は、窒素源、リン源及びポリオキシエチレンアルキルエーテル以外の成分を更に含有してもよく、かかる成分としては、ビタミン類、金属類などが挙げられる。ビタミン類及び金属類を更に含有する微生物活性剤を使用することにより、有機物質分解能を有する微生物の成長が更に促進される。
【0024】
ビタミン類としては、例えば、ビタミンB(チアミン)、ビタミンB(リボフラビン)、ビタミンB(ピリドキシン)、葉酸、ビオチン、p−アミノ安息香酸、パントテン酸、イノシトール、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ビタミンB12、リポ酸、ビタミンC及びそれらの塩(ピリドキシン塩酸塩、チアミン塩酸塩等)が挙げられる。ビタミン類は、一種のみを単独で供給しても、また、二種以上を供給してもよい。
【0025】
また、ビタミン類の含有量は、窒素源中の窒素及びリン源中のリンの質量の合計100質量部とすると、0.00001〜0.1質量部であるのが好ましい。ビタミン類の含有量が0.00001質量部未満であると、上記範囲内の場合と比較して、微生物によって取り込まれるビタミン類が不足し、微生物の活性化が不十分になる傾向がある。他方、ビタミン類の含有量が0.1質量部を超えると、上記範囲内の場合と比較して、微生物中における他の栄養源の作用が阻害され、微生物の活性化が不十分になる傾向がある。
【0026】
金属類としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、コバルト、亜鉛、ホウ素、モリブデン、マンガン、それらの塩(硫酸マグネシウム、硫酸鉄(II)等)及びそれらの水和物(硫酸マグネシウム7水和物、硫酸鉄(II)7水和物等)が挙げられる。金属類は、一種のみを単独で供給しても、また、二種以上を供給してもよい。
【0027】
また、金属類の含有量は、窒素源中の窒素及びリン源中のリンの質量の合計100質量部とすると、0.01〜100質量部であるのが好ましい。金属類の含有量が0.01質量部未満であると、上記範囲内の場合と比較して、微生物によって取り込まれる金属類が不足し、微生物の活性化が不十分になる傾向がある。他方、金属類の含有量が100質量部を超えると、上記範囲内の場合と比較して、微生物中における他の栄養源の作用が阻害され、微生物の活性化が不十分になる傾向がある。
【0028】
また、本実施形態に係る微生物活性剤は、粉末状や顆粒状などの固体状であってもよく、あるいは、上記各成分が水などの溶媒中に溶解又は分散した液状であってもよい。
【0029】
(土壌浄化方法)
本実施形態に係る土壌浄化方法は、油で汚染された土壌に含まれる有機物質分解能を有する微生物を活性化することによって当該土壌を原位置で浄化する方法であって、上述の微生物活性化剤を当該土壌に供給する工程を備える。ここでいう「原位置で浄化する方法」とは、地中の汚染土壌を掘り起こさずにその場所で浄化する方法を意味する。
【0030】
以下、図1を参照しながら、本実施形態に係る土壌浄化方法について説明する。図1は、油汚染土壌を原位置で浄化するための土壌浄化装置の一例を示す概略構成図である。図1に示す土壌浄化装置1は、土壌G内の油汚染領域4の周囲に設けられ、地表から飽和層(帯水層)3内まで延在する複数の注入井戸6(図1には、2本のみが示されている。)と、油汚染領域4のほぼ中央に設けられ、地表から飽和層3内まで延在する揚水井戸7と、微生物活性化剤が配合された水が収容され、管T1を介して注入井戸6に連結された供給槽5と、管T2を介して揚水井戸7に連結された分離槽9と、管T2の途中に設けられた揚水ポンプ8と、管T3を介して分離槽9に連結された曝気槽10と、管T5を介して曝気槽10に連結された吸着塔11と、を備える。そして、供給槽5は、管T7を介して曝気槽10に連結され、曝気槽10は、管T1の途中に接続された管T8と、管T1と、を介して注入井戸6に連結されている。また、分離槽9には管T4が接続され、吸着塔11には管T6が接続されている。
【0031】
土壌G内では、上方に不飽和層2が形成され、下方に飽和層3が形成され、地下水面Lが不飽和層2と飽和層3との境界をなしている。そして、地下水面Lの上下方向の変動に伴って生じた油汚染領域4が地下水面Lの近傍、すなわち、不飽和層2の下部及び飽和層3の上部に形成されている。なお、土壌汚染の原因となる油は、鉱油(ガソリン、灯油、軽油等)、合成油、動植物油等のいずれであってもよい。
【0032】
土壌浄化装置1を用いた土壌浄化は、例えば、次のように行われる。
【0033】
先ず、供給槽5から、微生物活性化剤が配合された水を管T1及び注入井戸6を通じて飽和層3に注入する(供給工程)。供給工程により、土壌Gに含まれる有機物質分解能を有する微生物が活性化され、油汚染領域4が浄化される。
【0034】
次に、地下水を、揚水ポンプ8を用いて、揚水井戸7及び管T2を通じて分離槽9に汲み上げる(揚水工程)。揚水工程により、油を含有する地下水の一部が土壌から取り除かれ、その分だけ土壌が浄化される。また、飽和層3内において、注入井戸6から揚水井戸7に向かう地下水の流れFが生じて、微生物活性化剤が油汚染領域4に効率的に供給され、油汚染領域4における微生物の活性化、及び油汚染領域4の浄化が促進される。
【0035】
次に、分離槽9において、汲み上げられた地下水から、地下水中の油を分離除去する(分離工程)。更に、地下水を、管T3を通じて曝気槽10に移送し、曝気槽10で地下水を曝気する(曝気工程)。分離工程及び曝気工程により、地下水が浄化され、地下水の再利用が可能になる。分離工程で分離除去された油は、管T4を通じて分離槽9から排出される。
【0036】
最後に、曝気処理の際に発生したガスを、管T5を通じて曝気槽10から吸着塔11に移送し、吸着塔11でガス中の油分を吸着除去する(吸着工程)。そして、ガスは、管T6を通じて吸着塔11から大気中に排出される。吸着工程により、曝気処理の際に発生したガスが、大気を汚染することなく、大気中に排出される。
【0037】
なお、土壌浄化物質及び空気は、管T7を通じて供給槽5から曝気槽10に移送し、曝気処理が行われた地下水と共に、管T8、管T1及び注入井戸6を通じて飽和層3に注入することもできる。また、揚水工程、分離工程、曝気工程及び吸着工程は、実施するのが好ましいが、実施しなくてもよい。
【0038】
本実施形態に係る土壌浄化方法においては、微生物活性化剤が配合された水を地中の油汚染領域に供給するため、微生物活性化剤が土壌内のより広範な領域に、より均一に行き渡り、より広範囲の土壌中の微生物が活性化される。その結果、十分に短い時間で油汚染土壌を浄化することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る土壌浄化方法は、土壌浄化を油汚染土壌の原位置で行うものであるため、地中の汚染土壌を掘り起こして浄化する場合と比較し、汚染領域が地下深い位置であっても土壌浄化をより簡便且つより低コストで行うことができる
【0040】
以上、本発明に係る実施形態について詳細に説明したが、次のような形態であってもよい。例えば、上記実施形態においては、微生物活性化剤が配合された水を地中に供給する場合を例示したが、微生物活性化剤と共に空気又は酸素を地中に供給してもよい。このことによって好気性の微生物が酸素を取り込んで活性化することが期待できる。なお、空気又は酸素は、気体状態で供給しても、水に溶解した状態で供給してもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、本発明に係る微生物活性化剤を原位置での浄化処理に使用する場合を例示したが、原位置での浄化処理以外に微生物活性化剤を使用してもよい。例えば、汚染土壌に水を加えてスラリー化した後、これを微生物活性化剤と共に反応槽で浄化処理してもよく、汚染土壌を掘削して地上に積み上げ、これに微生物活性化剤を添加して浄化処理してもよい。
【実施例】
【0042】
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
<被処理土壌の調製>
地下から採取した土壌15gに軽油1.000gを配合することによって被処理土壌(油汚染土壌)を調製した。なお、地下から採取した土壌は、有機物質分解能を有する微生物を含んだものである。
【0044】
<微生物活性化剤の調製>
他方、水100mLに対し、窒素源及びリン源として表1に示す量の塩化アンモニウム(NHCl)、リン酸水素二ナトリウム12水和物(NaHPO・12HO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)を配合すると共にポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる界面活性剤A(商品名:SC−90、ライオン株式会社製)を、0.02g配合して微生物活性化剤を得た。表2に界面活性剤Aの特性を示す。本実施例に係る微生物活性化剤においては、窒素源中の窒素及びリン源中のリンの質量の合計100質量部に対して、界面活性剤Aの含有量は約6.7質量部であった。
【0045】
<被処理土壌の浄化処理>
上記のようにして調製した液状の微生物活性化剤(100mL)と被処理土壌(16g)とを容量500mLの三角フラスコに入れた。そして、このフラスコ内の混合物を、20℃の下、7日間、回転培養器を用いて、175rpmで連続的に撹拌することによって被処理土壌の浄化処理を行った。
【0046】
<TPH減少率測定>
浄化処理後の土壌に残存する全石油系炭化水素濃度(TPH)を以下のようにして測定した。すなわち、浄化処理後の土壌に含まれる炭化水素を、室温下、20分間、二硫化炭素で抽出し、赤外吸収法でTPHを測定した。そして、浄化処理前に同様にして測定した被処理土壌のTPHに対するTPH減少率を求めた。
【0047】
(実施例2)
水100mLに対し、窒素源及びリン源と共に配合する界面活性剤Aの量を、0.05gとしたことの他は、実施例1と同様にして被処理土壌及び微生物活性化剤の調製、被処理土壌の浄化処理並びにTPH減少率測定を行った。本実施例に係る微生物活性化剤においては、窒素源中の窒素及びリン源中のリンの質量の合計100質量部に対して、界面活性剤Aの含有量は約16.7質量部であった。
【0048】
(比較例1)
水100mLに対し、窒素源及びリン源のみを配合し、界面活性剤Aを配合しなかったことの他は、実施例1と同様にして被処理土壌及び微生物活性化剤の調製、被処理土壌の浄化処理並びにTPH減少率測定を行った。本比較例に係る微生物活性化剤においては、窒素源中の窒素及びリン源中のリンの質量の合計100質量部に対して、界面活性剤Aの含有量は0質量部である。
【0049】
(比較例2)
水100mLに対し、窒素源及びリン源と共に配合する界面活性剤Aの代わりに界面活性剤B(ドデシル硫酸ナトリウム:CH(CH11OSONa)を0.02g配合したことの他は、実施例1と同様にして被処理土壌及び微生物活性化剤の調製、被処理土壌の浄化処理並びにTPH減少率測定を行った。本比較例に係る微生物活性化剤においては、窒素源中の窒素及びリン源中のリンの質量の合計100質量部に対して、界面活性剤Bの含有量は約6.7質量部であった。
【0050】
(比較例3)
水100mLに対し、窒素源及びリン源と共に配合する界面活性剤Aの代わりに界面活性剤C(塩化ベンザルコニウム:CH(CH13N(Cl)(CHCH)を0.02g配合したことの他は、実施例1と同様にして被処理土壌及び微生物活性化剤の調製、被処理土壌の浄化処理並びにTPH減少率測定を行った。本比較例に係る微生物活性化剤においては、窒素源中の窒素及びリン源中のリンの質量の合計100質量部に対して、界面活性剤Cの含有量は約6.7質量部であった。
【0051】
(比較例4)
水100mLに対し、窒素源及びリン源と共に配合する界面活性剤Aの代わりにポリオキシエチレンアルキルエーテルからなる界面活性剤D(商品名:CC−50、ライオン株式会社製)を0.02g配合したことの他は、実施例1と同様にして被処理土壌及び微生物活性化剤の調製、被処理土壌の浄化処理並びにTPH減少率測定を行った。表2に界面活性剤Dの特性を示す。本比較例に係る微生物活性化剤においては、窒素源中の窒素及びリン源中のリンの質量の合計100質量部に対して、界面活性剤Eの含有量は約6.7質量部であった。
【0052】
実施例1、実施例2及び比較例1の結果を表3に示す。
【表1】


【表2】


【表3】

【0053】
表3に示されるように、実施例1及び2で得られたTPH減少率は、比較例1〜4で得られたTPH減少率と比較して、顕著に高い値である。また、実施例2で得られたTPH減少率は、実施例1で得られたTPH減少率と比較しても、顕著に高い値である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の微生物活性化剤は、油汚染土壌の浄化に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】油汚染土壌の浄化処理に使用する土壌浄化装置の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0056】
1…土壌浄化装置、2…不飽和層、3…飽和層、4…油汚染領域、5…供給槽、6…注入井戸、7…揚水井戸、8…揚水ポンプ、9…分離槽、10…曝気槽、11…吸着塔、T1〜T8…管、G…土壌、L…地下水面、F…地下水の流れ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油で汚染された土壌の浄化処理に使用される微生物活性化剤であって、
窒素源と、リン源と、下記一般式(1)で表されるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む界面活性剤とを含有する微生物活性化剤。
【化1】


[式中、Rはアルキル基を示し、nは7〜11の数を示す。]
【請求項2】
前記界面活性剤が、前記一般式(1)で表され且つ一般式(1)中のRが分岐アルキル基であるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、請求項1に記載の微生物活性化剤。
【請求項3】
前記窒素源中の窒素及び前記リン源中のリンの質量の合計100質量部に対して、前記ポリオキシエチレンアルキルエーテルの含有量が1〜10000質量部である、請求項1又は2に記載の微生物活性剤。
【請求項4】
前記界面活性剤が、前記一般式(1)で表され且つ一般式(1)中のRが炭素数12〜16のアルキル基であるポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の微生物活性化剤。

【図1】
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【公開番号】特開2009−112949(P2009−112949A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288995(P2007−288995)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】