説明

治療方法

本発明は、広く哺乳動物の炎症反応の調節方法、及びそれに役立つ作用物質に関する。より具体的には、本発明は、アクチビンの機能活性を調節し、それにより炎症誘発性メディエーター・カスケードを調節することによる哺乳動物の炎症反応の調節方法に関する。とりわけ、本発明の方法は、敗血症及び気道炎症を含む、異常な、望ましくない、又はそれ以外の不適当な炎症反応を特徴とする状態の治療、及び/又は予防に役立つ。本発明は、炎症反応におけるアクチビン介在性制御を調節することができる作用物質を同定、及び/又は設計する方法をさらに対象とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、広く哺乳動物の炎症反応の調節方法、及びそれに役立つ作用物質に関する。より具体的には、本発明は、アクチビンの機能活性を調節し、それにより炎症誘発性メディエーター・カスケードを調節することによる哺乳動物の炎症反応の調節方法に関する。とりわけ、本発明の方法は、敗血症及び気道炎症を含む、異常な、望ましくない、又はそれ以外の不適当な炎症反応を特徴とする状態の治療、及び/又は予防に役立つ。本発明は、炎症反応におけるアクチビン介在性制御を調節することができる作用物質を同定、及び/又は設計する方法をさらに対象とする。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
この明細書の作者によって参照された刊行物の書誌的詳細は、説明の最後にアルファベット順にまとめられている。
この明細書におけるあらゆる先行技術への言及は、その先行技術がオーストラリアにおける共通の一般知識の一部を形成することの承認、又はそのことの何らかの示唆として解釈されないか、あるいは解釈されるべきではない。
【0003】
哺乳動物は、ウイルス、細菌、真菌、及び寄生生物を含む多数の病原体、並びに非病原性侵襲、例えば腫瘍及び毒物、又はそれ以外の有害物から自分自身を守ることが必要とされる。それに応じて、そういった抗原に対する防御を備えることを可能にするエフェクター機構が進化した。これらの機構は、可溶性分子、及び/又は細胞によって仲介される。
【0004】
これらのエフェクター機構との関連において、炎症は、一連のサイトカインの放出によって制御される、病気又は損傷に対する応答における複雑な多面的な過程である(Alexander et al., 2001, J Endotoxin Res 7:167-202)。これらのサイトカインは、炎症誘発性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインの一般用語で分類され、放出と反対の作用をもつサイトカインの活性の間の重大なバランスは、それが顕在的になるか、又は少なくなるのを防ぐように炎症反応を制御する。
【0005】
炎症反応が抑制されずに続き、顕在的である場合、その結果として、宿主は関連した組織損傷を受け、そして重症の場合には、これが敗血性ショックとして現れ、そして多臓器不全が生じる可能性がある(Ulevitch et al., 1999, Curr Opin Immunol 11:19-22)。逆に、不十分な又は少ない炎症反応は、慢性疾患と宿主の損傷をもたらすコントロールされていない感染を意味する。炎症反応の制御は、全身レベルでも局所レベルでも重要である。
【0006】
詳細な炎症過程の発見は、炎症と免疫応答の間の緊密な関係を明らかにした。炎症には5つの基本的な指標が存在し、これらは発赤(rubor)、腫脹(tumour)、発熱(calor)、疼痛(dolor)及び機能喪失(functio laesa)である。これらの指標は、炎症部位内への血漿の浸出及び白血球の浸潤のために生じる。したがって、これらの指標と一致した、炎症反応の主な特徴は、以下の:
(i)血管拡張−感染領域への血流を増やす血管の拡張;
(ii)高い血管透過性−これが、拡散性成分が部位に入ることを可能にする;
(iii)細胞浸潤−これは、血管壁を通り抜けて損傷部位内への炎症細胞の指向性運動である;
(iv)多くの臓器の生合成、代謝及び異化特性の変化;並びに
(v)免疫系細胞、並びに血漿の複合酸素系の活性化、
である。
【0007】
これらの特徴が現れる程度は、一般に損傷の重さ、及び/又は感染の範囲に比例する。
炎症反応を、いくつかの相に大きく分類することができる。炎症反応の最も初期の巨視的事象は、皮膚の青白化(白色化)としてみることができる一時的な血管収縮、すなわち血管壁の平滑筋の収縮によって引き起こされた血管の狭窄である。これに続いて、以下のとおり、数分後、数時間後、及び数日後以降に生じるいくつかの相がある:
【0008】
(i)急性血管応答は、組織侵襲の数秒以内に起こり、そして数分間続く。血管拡張、並びに発赤(紅斑)及び組織内への流体の侵入(浮腫)を引き起こす増加した血流(充血)をもたらす血管内皮の変化のために増加した毛細血管の透過性を特徴とする。
【0009】
(ii)組織への十分な損傷があった場合、又は感染が生じた場合、急性細胞応答がそれから数時間にわたって起きる。この相の顕著な特徴は、組織における顆粒球、特に好中球の出現である。これらの細胞は、まず血管内の内皮細胞に付着し(縁取り)、そして周囲の組織を通過する(漏出)。血管が傷ついた場合、フィブリノゲンとフィブロネクチンが損傷部位に堆積し、血小板が凝集し、そして活性化されて血塊形成が起こる。
【0010】
(iii)損傷が十分に重ければ、慢性細胞応答が次の数日以内に引き続いて起こるかもしれない。炎症のこの相の特徴は、マクロファージとリンパ球から構成される単核球の浸潤の出現である。マクロファージは、微生物の死滅、細胞及び組織の残骸の除去に関与し、そしてまた、組織の再構築において重要な役割を担っているとも考えられる。
【0011】
(iv)次の数週間以内に、そこで正常組織構造が復元される消散が起こる。血餅がフィブリン溶解によって取り除かれる。その原型に組織を戻すことが不可能な場合、線維芽細胞、コラーゲン、及び新しい内皮細胞の充填によって瘢痕化が生じる。一般に、この時までにどんな感染症も克服されるであろうが、しかしながら、必ずしも上記の場合とは限らず、さらなる免疫応答、例えば肉芽腫形成をもたらすかもしれない。
【0012】
多くの場合、炎症は、急性血管応答及び急性細胞反応(前術の1及び2)の全ての事象を含む急性炎症に関して、慢性細胞応答、及び消散又は瘢痕化(3及び4)の間の事象を含む慢性炎症に関して考察される。
しかし、損傷したか、感染を受けたか、又は自己免疫応答に晒された組織における局所的な様式の炎症反応の発生に加えて、例えば敗血症の場合に、炎症反応が同様に全身的に生じることが理解される。
【0013】
したがって、炎症反応の広範囲の影響に照らして、それらが機能する複雑な機構を明らかにする必要性が持続して存在する。これらの機構を同定することによって、その結果、炎症反応を適切に調節する手段を開発する機会が与えられる。
当初は、インヒビン、アクチビン、及びホリスタチンは、脳下垂体細胞培養からの卵胞刺激ホルモン放出のそれらの調節に基づいて卵胞液から単離され、そして特徴づけられたポリペプチドの3つのファミリーである。卵胞刺激ホルモンの合成と分泌に対するそれらの効果に加えて、インヒビンとアクチビンには他の生物学的機能がある。対照的に、ホリスタチンがアクチビンへの結合タンパク質であることが発見されるまで、ホリスタチンの生理学的な重要性は不明確であった。
【0014】
2つのβサブユニットから成るアクチビン、βA、βB、βC、及び/又はβEは、形質転換増殖因子(TGF)-βスーパーファミリーのメンバーである[Vale et al., 1990, Handbook of Experimental Physiology, Vol. 95, Eds. Sporn & Roberts, Springer-Verlag, Berlin pp211-248]。アクチビンの多量体タンパク質形態は、ホモダイマー形態(アクチビンA-βAβA、アクチビンB-βBβB、アクチビンC-βCβC、及びアクチビンE-βEβE)、及びヘテロダイマー形態(例えばアクチビンAB-βAβB、アクチビンAC-βAβC、又はアクチビンAE-βAβE)を含む。アクチビンは、多機能タンパク質である。例えば、当初、卵胞刺激ホルモン放出の調節因子として同定されたが、アクチビンAは、大部分のサイトカインの特徴を示す機能活性の多面的な範囲を示すことが現在知られている。それらの関連タンパク質、(構造的に関連するが、異なるαサブユニット及びアクチビンβサブユニットのダイマーから成る)インヒビンのようにアクチビンは、アクチビンII型レセプターに結合することができる。しかし、アクチビンだけが、細胞内Smadシグナル伝達経路を誘発し、それによって転写レベルで細胞機能に影響を与える活性な複合体を形成するようにI型レセプターを補充することができる。これまで、アクチビンA、AB、及びBが、典型的なレセプター介在性作動薬活性を証明するために示されてきた。アクチビンBは、アクチビンAより低い生物学的活性しか示さないと報告された[Nakamura et al., Journal of Biological Chemistry, 267, 16385-16389, 1992]。これは、アクチビンAとBによって差別的に補充される特異的なI型レセプターの利用可能性のばらつきに関係する[Tsuchida et al., 2004 Molecular and Cellular Endocrinology 220, 50-65]。
【0015】
ホリスタチンはアクチビンの生物学的な制御因子として機能する。実際、それは、卵胞刺激ホルモンの分泌を抑制する能力によって当初同定され、アクチビン結合タンパク質としての特性によることがその後に示された。ホリスタチンは、高い親和性でアクチビンに結合する単量体タンパク質であり、その後に複合型アクチビンのリソソーム分解の原因となると考えられている。ホリスタチンは、いくつかの翻訳後変異体及びグリコシド化変異体を含む。しかし、主な2種類のアイソフォームは、主要な循環アイソフォームであると考えられる完全長ホリスタチン315、及びヘパリン硫酸プロテオグリカンに対して強い親和性をもち、そして主に細胞膜結合アイソフォームであるアイソフォーム288である(Phillips and de Kretser, 1998, Frontiers in Neuroendocrinology 19:287-322)。
【0016】
アクチビンは、多くの細胞型の成長及び分化に影響を及ぼし、脳下垂体からの卵胞刺激ホルモンの分泌を刺激し、及び成長ホルモン、プロラクチン、及びアドレノコルチコトロピン放出を阻害する[Billestrup et al., Molecular Endocrinology 1990 4:356-362; Kitaoka et al., Biochemical and Biophysical Research Communications 1988 157:48-54; Vale et al., Nature 1986, 321:776-779]。アクチビンAは、アクチビンBと共通した能力である脳下垂体からの卵胞刺激ホルモン(FSH)を刺激するその能力によって最初に特徴づけられた[Nakamura et al., 1992, supra; Van Dijk et al., 1995, Annals of the New York Academy of Science 762, 319-330]。しかし、現在アクチビンAは、最初に単離されたもののこの初めの機能に加えてさらに多くの特性を持っていることが知られている。アクチビンAとBの両方が、胎児の発達に関与し、それらのそれぞれのマウスのノックアウトによって明確な表現型の異常を示す[Vassalli et al., 1994, Genes and Development, 8:414-427]。アクチビンAのノックアウトは、新生マウスの致命的な表現型の欠陥を示すが[Vassalli et al., 1994, supra; Matzuk et al., 1995, Nature 374:354-356]、βA遺伝子のβBによる置換は、アクチビンAとBの活性の重複を示唆するこの表現型の部分的な救済を提供する[Brown et al., 2000, Nature Genetics, 25:453-457]。これらの観察とは対照的に、アクチビンBは、例えば胚子中胚葉誘導[Thomsen et al., 1990, Cell 63:485-493]、及び乳腺の発達[Robinson et al., 1997, Development 124:2701-2708]といった過程における特別な役割を持っているという証拠がある。特に関心があるのは、中和研究によって示されるように、アクチビンBがFSHの脳下垂体内調節に関連のアクチビンであると推定されることである[Corrigan et al., 1991, Endocrinology 128:1682-1684]。加えて、アクチビンAとBの発現パターンの明確な相違が、組織修復中に[Htibner et al., 1996, Developmental Biology 173:490-498]、そして肝臓線維化モデルと関連して[De Bleser et al., 1997, Hepatology, 26:905-912]明白である。そういった証拠が、アクチビンAとBが生物学的過程、及び病理的過程の範囲で異なる役割を担っていることを示唆する。
【0017】
ホリスタチンは、TGF-βスーパーファミリーのメンバーのいくつかに特異的に結合するが、アクチビンに対して群を抜いて最高の結合親和性をもつ。結果として、循環ホリスタチン315は、そのII型レセプターによりサイトカインの相互作用を妨げることによってアクチビン活性を中和し[de Winter et al., Molecular and Cellular Endocrinology 1996 116:105-114]、さらに、細胞表面結合ホリスタチン288がアクチビンのリソソーム分解を促進する[Hashimoto et at., Journal of Biological Chemistry 1997 272:13835-13842]。ホリスタチン及びアクチビンmRNAは、広い組織分布を示す[Meunier et al., PNAS 1988 85:247-251; Michel et al., Biochemical and Biophysical Research Communications 1990 173:401-407; Schneider et al., European Journal of Endocrinology 2000 142:537-544]。ホリスタチン及びアクチビンは、血清で検出可能であり[Demura et al., Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 1993 76:1080-1082; Demura et al., Biochemical and Biophysical Research Communications 1992 185:1148-1154; Gilfillan et al., Clinical Endocrinology 1994 41:453-461; Khoury et al., Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 1995 80:1361-1368; Knight et al., Journal of Endocrinology 1996 148:267-279; McFarlane et al., European Journal of Endocrinology 1996 134:481-489; Sakai et al., Biochemical and Biophysical Research Communications 1992 188:921-926; Sakamoto et al., European Journal of Endocrinology 1996 135:345-351; Tilbrook et al., Journal of Endocrinology 1996 149:55-63; Wakatsuki et al., Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism 1996 81:630-634]、そして血清中のそれらの濃度は年齢と共に高くなる[Wakatsuki et al 1996, supra; Loria et al., European Journal of Endocrinology 1998 139:487-492]。しかし、現在、血清中のホリスタチンとアクチビンの正確な源は知られていない。最新のデータは、ホリスタチンとアクチビンの組織特異的バランスが自己分泌/傍分泌様式で応答性細胞型の成長及び分化を管理することを示唆する[Michel et al., Acta Endocrinologica 1993 129:525-531; Phillips, Trends in Endocrinology and Metabolism 2001 12:94―96]。
【0018】
身体の生得的な免疫応答におけるアクチビンとホリスタチンの新しい役割が立証された。例えば、アクチビンとホリスタチンは、インビトロでの炎症化合物に対する応答において様々な細胞型から分泌される[Hubner et al., Experimental Cell Research 1996 228:106-113; Jones et al., Endocrinology 2000 141:1905-1908; Keelan et al., Placenta 2000 21:38-43; Michel et al., Endocrinology 1996 137:4925-4934; Phillips et al., Journal of Endocrinology 1998 156:77-82; Yu et al., Immunology 1996 88:368-374; Eramaa et al., Journal of Experimental Medicine 1992 176:1449-1452; Shao et al., Cytokine 1998 10:227-235; Mohan et al., European Journal of Endocrinology 2001 145:505-511]。しかも、炎症過程、例えば創傷治癒、炎症性腸疾患、及び慢性関節リウマチのいくつかの例において、高いアクチビン、及び/又はホリスタチン発現が指摘された[Hubner et al., Laboratory Investigation 1997 77:311-318; Hubner et al., 1996, supra; Yu et al., Clinical and Experimental Immunology 1998 112:126-132]。しかし、これらの非常に初期の、かつ、予備的発見なので、それらの正確な活性との関連、又はそれらが機能する炎症状態の範囲との関係のいずれにおいても、炎症と関連するアクチビンとホリスタチンの役割自体はさらに解明されていなかった。性質に関する極端な多様性及び起こりうる炎症反応の範囲、並びにサイトカイン、例えば様々な形態のアクチビンの非常に多面的な活性に照らして、1990年代の半ばから終わりまでの予備的発見がより実質的な見解に発展していないことは驚くべきことではない。特に、アクチビンA、アクチビンB、及びホリスタチンは、広い範囲の刺激に対する応答において多種多様な細胞型及び身体のほとんどの臓器よって発現される。したがって、炎症との関連でそれらの役割を推測することはできず、したがって全く分かっていない。
【0019】
本発明に至るまでの研究において、驚いたことに、アクチビンAが炎症反応を制御するサイトカイン・カスケードの非常に大事な構成要素として機能することが確定された。具体的に言うと、インビボにおいて、アクチビンAが炎症誘発性サイトカインの放出を開始し、そして実際、適当な刺激に続いて放出される炎症誘発性サイトカインのレベルを調節することができる。したがって、アクチビンAレベルが炎症反応の開始及び進行の間調節されることは以前に観察されていたが、本発明の出現まで、炎症との関連でこの分子の正確な役割の解明に全く進展がなかった。
【0020】
さらに驚いたことに、アクチビンBレベルがアクチビンAレベルよりもさらに劇的に炎症反応との関連で調節されることが確定された。アクチビンA及びBの明確な役割に関してこれまで知られていたものに照らして、これは特に驚異的である。さらに、アクチビンAの測定を対象にした免疫学的測定法が以前から使用できたのに対して、アクチビンBの分析は、この特別なアクチビン種用の特定の免疫学的測定法の不存在によって阻止された。循環アクチビンBレベルが妊娠中又は卵巣の機能によって変わることを示唆する非常に限定されたデータセットが利用可能である[Petraglia et al., 1993, Endocrine Journal 1:323-327; Woodruff et al., 1997, Journal of Endocrinology 152:167-174; Vihko et al., 1998, Human Reproduction 13:841-846; Vihko et al., 2003, Acta Obstetricia et Gynecologica Scandinavica, 80:570-574]。著者は、これがアクチビンAB、アクチビンB、又はインヒビンのレベルの変化と結び付けられるかどうか仮定していないが、Kobayashiら(2000年)[Biol. Pharm. Bull. 23(6):755-757]は、アクチビン-βB mRNAの増加が肝臓再生と線維化の進行に関係することを証明した。Rosendahら(2001年)[Am J Respir Cell Mol Biol 25:60-68]による研究は、肺においてアレルゲンで誘発する気道アレルギー誘発のマウス・モデルを調査し、そしてTGF-βスーパーファミリー及びTGF-β/アクチビン・レセプターの発現及び分布の付随した変化を調査することに的を絞った。このグループは、誘発された気道アレルゲンが対照レベルを上回るアクチビンβB mRNA発現の非常にわずかな上昇しか生じなかったことを報告した。組織学的試験は、成熟アクチビン・ダイマー・タンパク質の合成又は分布について(アクチビンAでもBでも)全く情報を提供せず、そしてアクチビン-βB mRNAレベルのわずかな増加がインヒビン・レベルの変化と実際に結び付けられなかったことを規定するいかなる証拠もなかった。したがって、実際にアクチビンBレベルがアクチビンAレベルと比較して炎症中に劇的に高められるという測定は、アクチビンA及びアクチビンB分子の両方の機能について利用可能だった非常に限定された情報に照らして非常に意外なことである。
【0021】
本発明の発見が、機能上活性なアクチビンA及びアクチビンBのレベルを制御し、それにより炎症誘発性サイトカインの放出を制御することによって炎症反応を調節することを対象にする方法論の開発を、ここで容易にした。したがって、望ましくない又は不適当な炎症反応を特徴とする状態の治療的処置又は予防的処置の方法、並びに炎症誘発性サイトカインの制御因子、例えばアクチビンAとアクチビンBの模倣薬、作用薬、又は拮抗薬のスクリーニング手段の両方をここで提供する。
【発明の開示】
【0022】
本発明の概要
この明細書と以下の請求項全体にわたって、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、単語「comprise」、並びに変形、例えば「comprises」及び「comprising」は、記載された1つの整数又は1つのステップ、あるいは複数の整数又は複数のステップの群の包含を意味すると理解されるが、その他の整数又はステップ、あるいは複数の整数又は複数のステップの群の排除を意味すると理解されるわけではない。
対象明細書は、本願明細書中で以下の参考文献一覧に示すプログラムPatentInバージョン3.1を使って準備したヌクレオチド配列情報を含む。各ヌクレオチド配列は、数字標識<210>、続く配列識別子(例えば、<210>1、<210>2など)によって配列一覧表中で同定される。各ヌクレオチド配列について長さ、配列の種類(DNAなど)、及び起源生物が、それぞれ数字標識欄<211>、<212>、及び<213>に提供される情報によって示される。
【0023】
明細書中で言及したヌクレオチド配列は、標識SEQ ID:、続く配列識別子(例えば、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2など)によって同定される。明細書中で言及した配列識別子は、その後に配列識別子(例えば、<400>1、<400>2など)が続く配列一覧表中の数字標識欄<400>で提供された情報と相関する。つまり、明細書中で詳述される配列番号(SEQ ID NO:)1は、配列一覧表中で<400>1と示される配列と相関する。
【0024】
本発明の1つの側面は、アクチビンの機能活性を調節するステップを含む哺乳動物の炎症反応の調節方法を対象とし、ここで、上記哺乳動物において機能上効果的なレベルへのアクチビン断片、その誘導体、突然変異体、又は変異体の上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして哺乳動物において機能上効果的でないレベルへのアクチビンの下方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
【0025】
本発明の他の側面は、アクチビンの機能活性を調節するステップを含む哺乳動物における炎症反応の調節方法を対象とし、ここで、アクチビンが、アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体であり、ここで、上記哺乳動物において機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして上記哺乳動物において機能上効果的でないレベルへの上記アクチビンの下方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
【0026】
さらに他の側面において、本発明は、アクチビンの機能活性を調節するステップを含む哺乳動物における局所性炎症反応の調節方法を対象とし、ここで、アクチビンが、アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体であり、ここで、上記哺乳動物において機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして上記哺乳動物において機能上効果的でないレベルへの上記アクチビンの下方制御が、局所性炎症誘発性メディエーター・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
【0027】
さらに他の側面において、本発明は、アクチビンの機能活性を調節するステップを含む哺乳動物における全身性炎症反応の調節方法を対象とし、ここで、アクチビンが、アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体であり、ここで、上記哺乳動物において機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして上記哺乳動物において機能上効果的でないレベルへの上記アクチビンの下方制御が、全身性炎症誘発性メディエーター・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
【0028】
その上さらに他の側面において、本発明は、アクチビンの機能活性を調節するステップを含む哺乳動物における炎症反応の調節方法を対象とし、ここで、アクチビンが、アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体であり、ここで、上記哺乳動物において機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして上記哺乳動物において機能上効果的でないレベルへの上記アクチビンの下方制御が、炎症誘発性サイトカイン・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
【0029】
その上さらに他の側面において、本発明は、アクチビンの機能活性を調節するステップを含む哺乳動物における局所性炎症反応の調節方法を対象とし、ここで、アクチビンが、アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体であり、ここで、上記哺乳動物において機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして上記哺乳動物において機能上効果的でないレベルへの上記アクチビンの下方制御が、局所性炎症誘発性サイトカイン・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
【0030】
さらなる他の側面において、本発明は、アクチビンの機能活性を調節するステップを含む哺乳動物における全身性炎症反応の調節方法を対象とし、ここで、アクチビンが、アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体であり、ここで、上記哺乳動物において機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして上記哺乳動物において機能上効果的でないレベルへの上記アクチビンの下方制御が、全身性炎症誘発性サイトカイン・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
【0031】
他のさらなる側面において、本発明は、哺乳動物における炎症反応を下方制御する方法であって、効果的な量の作用物質を一時的に、そして上記哺乳動物において機能上効果的でないレベルの(アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、又は変異体である)アクチビンを誘発するのに十分な条件下で上記哺乳動物に投与するステップを含む上記方法を対象とする。
【0032】
さらに他のさらなる側面において、哺乳動物の炎症反応を上方制御する方法であって、効果的な量の作用物質を一時的に、そして上記哺乳動物において機能上効果的なレベルの(アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体である)アクチビンを誘発するのに十分な条件下で上記哺乳動物に投与するステップを含む上記方法を提供する。
【0033】
本発明のさらに他のさらなる側面は、上記哺乳動物においてアクチビンのレベルを調節するステップを含む、哺乳動物における異常な、望ましくない、又はそれ以外に不適当な炎症反応を特徴とする状態、あるいは状態の発生素因の治療的、及び/又は予防的処置方法を意図し、ここで、アクチビン断片、その誘導体、突然変異体、又は変異体の機能上効果的なレベルへの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを上方制御し、そして機能上効果的でないレベルへのアクチビンの下方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
【0034】
本発明のその上さらに他のさらなる側面は、アクチビンのレベルを調節するステップを含む、哺乳動物における異常な、望ましくない、又はそれ以外に不適当な炎症反応を特徴とする状態、あるいは状態の発生素因の治療的、及び/又は予防的処置方法を意図し、ここで、アクチビンが、アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体であり、ここで、上記哺乳動物において機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして機能上効果的でないレベルへの上記アクチビンの下方制御が、炎症誘発性サイトカイン・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
【0035】
その上さらに他のさらなる側面において、(アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体である)アクチビンのレベルを下方制御するステップを含む、哺乳動物における望ましくない急性炎症反応を特徴とする状態、あるいは状態の発生素因の治療的、及び/又は予防的処置方法を提供し、ここで、機能上効果的でないレベルへの上記アクチビンの下方制御が、炎症誘発性サイトカイン・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
【0036】
他の側面において、(アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体である)アクチビンのレベルを調節するステップを含む、哺乳動物における不適当な炎症反応を特徴とする状態、あるいは状態の発生素因の治療的、及び/又は予防的処置方法を提供し、ここで、上記哺乳動物において機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの下方制御が、炎症誘発性サイトカイン・カスケードを上方制御する。
【0037】
本発明のさらに他の側面は、哺乳動物における異常な、望ましくない、又はそれ以外に不適当な炎症反応を特徴とする状態、あるいは状態の発生素因の治療的、及び/又は予防的処置のための薬剤の製造における、アクチビン、その断片、誘導体、突然変異体、又は変異体の機能上効果的なレベルを調節することができる作用物質の使用に関し、ここで、機能上効果的なレベルへのアクチビンの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを上方制御し、そして機能上効果的でないレベルへのアクチビンの下方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
【0038】
本発明のさらに他の側面は、哺乳動物における異常な、望ましくない、又はそれ以外に不適当な炎症反応を特徴とする状態、あるいは状態の発生素因の治療的、及び/又は予防的処置のための薬剤の製造における、(アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体である)アクチビンの機能上効果的なレベルを調節することができる作用物質の使用に関し、ここで、上記哺乳動物において機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして機能上効果的でないレベルへの上記アクチビンの下方制御が、炎症誘発性サイトカイン・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
さらに他のさらなる側面において、本発明は、医薬として許容される担体及び/又は希釈剤と一緒に上文に規定した調節物質を含む医薬組成物を意図する。
【0039】
本発明の詳細な説明
本発明は、一つには、炎症反応におけるアクチビンA及びBの役割が、炎症誘発性サイトカイン放出の調節因子であるこれらの分子と関連して発現するという驚くべき測定を基礎とする。特に、アクチビンAは、炎症誘発性サイトカイン・カスケードの始まり開始を惹起すると分かった。同じように、しかしさらにより驚いたことに、アクチビンAに対して顕著な機能弁別性を別な方法で示したにもかかわらず、βBサブユニットを含むアクチビン分子が炎症反応の非常に初期の段階を制御することもここで発見された。しかし、最も驚いたことに、今回この分子は、アクチビンAよりはるかに高いレベルの発現を示す。したがって、これらの発見は、炎症反応を調節するための手段、特に、不適当な炎症反応を特徴とする状態を治療的又は予防的に処置するための手段の合理的な設計をここで容易にした。さらに、その機能性を調節して、それによって炎症反応の開始又は進行を調節するための、特異的にアクチビンAと相互作用するか、又はアクチビンAを模倣する作用物質、あるいはβBサブユニットを含むアクチビン分子の同定及び/又は設計を容易にする。
【0040】
したがって、本発明の1つの側面は、アクチビン、その断片、誘導体、突然変異体、又は変異体の機能活性を調節するステップを含む、哺乳動物における炎症反応の調節法を対象とし、ここで、上記哺乳動物における機能上効果的なレベルへのアクチビンの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして上記哺乳動物における機能上効果的でないレベルへのアクチビンの下方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを阻害するか、又は遅らせる。
【0041】
より特に、本発明は、(アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体である)アクチビンの機能活性を調節するステップを含む哺乳動物における炎症反応の調節方法を対象とし、ここで、上記哺乳動物における機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして上記哺乳動物における機能上効果的でないレベルへの上記アクチビンの下方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
【0042】
本発明を1つの理論又は作用様式に制限することなく、炎症反応は、これだけに制限されることなく、組織損傷、感染、(例えば、病原体に対する、若しくは無害な物質に対する−アレルギーと一緒に生じる場合)免疫応答、又は疾患(例えば、腫瘍形成、若しくは自己免疫応答)を含めた種々の刺激の中のいずれか1つに応答するサイトカイン・カスケード放出によって発生するように誘発される一連の生理学的、及び/又は免疫学的事象を特徴とする複雑な応答である。
【0043】
炎症を特徴づける生理学的事象は、以下の:
(i)血管拡張、
(ii)高い血管透過性、
(iii)細胞浸潤、
(iv)罹患臓器の生合成、代謝、及び異化の変化、
(v)免疫系細胞の活性化、
を含む。
【0044】
「炎症反応」への言及は、炎症、具体的には、炎症反応を進めるサイトカイン・カスケードによって産生されるシグナルに対する応答に関連して生じるように誘発される生理学的、及び/又は免疫学的事象又は相の1以上への言及であると理解される。例えば、IL-1、TNFα、及びIL-6は、炎症誘発性メディエーターとしてのそれらの機能に関して十分に知られている。本発明との関連の中で炎症反応は、部分的な応答、例えば始まったばかりの応答への、又は応答のいずれか特定の相又は事象(例えば、先のポイント(i)〜(v)で詳述した相及び事象、又はこれだけに制限されることなく、補体成分を含めた−急性期タンパク質の産生、発熱、及び全身性免疫応答を含めた炎症に関連したいずれかの他の効果)への言及を本質的に含むこともまた理解される。さらに、いずれかの与えられた一連の特定の状況に依存して、炎症反応の終点が変わるかもしれないこともまた理解される。例えば、いくつかの状況において、急性血管応答しか起こらないかもしれない。「急性」炎症が起こる範囲について、これは急性血管応答と急性細胞応答の両方の事象を含むと一般に理解されている。一部の炎症反応が急性期で消散する一方で、他のものは慢性細胞応答になるまでに進行するかもしれない。
【0045】
本発明をいずれか1つの理論又は作用様式に制限することなしに、特定の状況において、好中球の浸潤と浮腫を特徴とする急性過程は、単核食細胞とリンパ球の優勢に移行する。これは、正常な治癒方法によってある程度まで起こるが、ある感染症(例えば結核)などの場合の外来物質の効果的でない除去がある時、あるいは異物(例えばアスベスト)の導入、又は結晶(例えば尿酸結晶)の沈着の後に、過剰になり、そして慢性化することが考えられる。多くの場合、慢性炎症は、最終的に肉芽腫になる多核巨細胞を形成する単核球の融合に関係する。また、慢性炎症は、遅延過敏症の状況下で見られる。対象炎症反応は、全身的であるか、又は局所的である。全身性炎症反応の例は、全身性炎症反応症候群の範囲内に収まるもの、例えば敗血性ショック、毒素ショック、又は敗血症を含む。
【0046】
局所炎症反応の例は、気道炎症(例えば、喘息、間質性肺炎、嚢胞性線維症、肺移植、閉塞性細気管支炎、気腫、閉塞性肺疾患、石綿肺症、閉塞性睡眠時無呼吸、低酸素症、又は肺高血圧症)、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、脳炎、重症急性呼吸窮迫症候群、炎症性腸疾患、膵臓炎、アテローム硬化症、髄膜炎、虫垂炎、血管形成、乾癬、神経保護、尿細管壊死、外傷性脳損傷、アレルギー応答、及び(例えば、手術、やけど、又は他の組織損傷の後の)創傷治癒と関連して生じるものを含む。しかし、例えば敗血性ショックの発症が重症やけど又は腹部創の合併症として起こる時に起こるように、一部の局所炎症反応が全身性のものになる可能性があることは理解される。他の例において、敗血症は、より局所的な細菌感染症から循環性感染症への移行に起因する可能性がある。
【0047】
したがって、1つの好ましい態様において、本発明は、(アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体である)アクチビンの機能活性を調節するステップを含む、哺乳動物における局所炎症反応の調節方法を対象とし、ここで、上記哺乳動物において機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、局所炎症誘発性メディエーター・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして上記哺乳動物における機能上効果的でないレベルへのアクチビンの下方制御が、局所炎症誘発性メディエーター・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
より好ましくは、前記局所炎症反応は急性である。
【0048】
他の好ましい態様において、本発明は、(アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体である)アクチビンの機能活性を調節するステップを含む、哺乳動物における全身性炎症反応の調節方法を対象とし、ここで、上記哺乳動物において機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、全身性炎症誘発性メディエーター・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして上記哺乳動物における機能上効果的でないレベルへのアクチビンの下方制御が、全身性炎症誘発性メディエーター・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
より好ましくは、前記全身性炎症反応は急性である。
【0049】
本発明のこれらの好ましい側面に基づいて、前記急性炎症反応は、好ましくは下方制御され、そして敗血性ショック、敗血症、気道炎症、虫垂炎、髄膜炎、毒素又はウイルスに対する肝臓の反応、血管形成、乾癬、神経保護、アテローム硬化症、尿細管壊死、脳炎、創傷治癒、又は外傷性損傷、例えば、けが、手術、及びやけどで生じるもの(例えば外傷性脳損傷)に関連して起こるか、あるいはそれらに関係があるそれ以外のものである。
【0050】
好ましくは、前記気道炎症は、喘息、間質性肺炎、嚢胞性線維症、肺移植、SARS、閉塞性細気管支炎、気腫、閉塞性肺疾患、石綿肺症、閉塞性睡眠時無呼吸、低酸素症、又は肺高血圧症と関連して起こる。
好ましくは、前記急性全身性炎症反応は、全身性炎症反応症候群に、そしてさらには特に、敗血症(sepsis, septicaemia)、毒素ショック、敗血性ショック、組織外傷、髄膜炎、又は虫垂炎と関連して起こる。
【0051】
他の好ましい態様において、前記炎症性疾患は慢性である。
さらにより好ましくは、前記慢性炎症反応は、多発性硬化症、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチ、喘息、乾癬、又は創傷治癒に関連して起こるか、又はそれらに関係するそれ以外のものである。
一部の状況及び病気、例えば炎症性腸疾患又は創傷治癒が、急性期にも慢性期にも関係し、そのため両方の前後関係で本願明細書中に詳述される可能性があることは理解される。
【0052】
「アクチビンA」への言及は、全ての形態のアクチビンAへの言及と理解される。アクチビンAは、2つのアクチビンβAサブユニットを含む二量体タンパク質である。また、アクチビンβA mRNAの選択的スプライシング、あるいはアクチビンβAの突然変異体又は多形性の形態から生じるあらゆるアイソフォームを含むダイマーへの言及を含むことも理解される。「アクチビンA」への言及がその全ての前駆物質、プロタンパク質、又は中間形態を含めたこれらの分子の全ての形態への言及を含むことが理解される。また、アクチビンAへの言及が、ダイマー、マルチマー、又は融合タンパク質として存在しているかどうかに関わらず全てのアクチビンAタンパク質に及ぶことも理解される。
【0053】
「βBサブユニットを含むアクチビン分子」への言及は、単量体又は多量体の分子、好ましくは少なくとも1つのアクチビンβBサブユニットを含むダイマーへの言及として理解される。「アクチビンβB」への言及は、アクチビンβBの全ての形態への言及として理解される。また、「アクチビンβBサブユニット」は、互換的に「アクチビンβB」と呼ばれる。アクチビンβB mRNAの選択的スプライシング、又はアクチビンβBの突然変異体若しくは多形性の形態から生じる全てのアイソフォームへの言及を含むことが理解される。「アクチビンβB」への言及は、限定することを目的とするものではなく、そしてアクチビンβBサブユニット遺伝子によってコードされるあらゆるタンパク質、全てのサブユニット・ポリペプチド、例えば産生されうる前駆物質形態、及びモノマー、マルチマー、又は融合タンパク質として存在するかどうかにかかわらず全てのβBタンパク質を含めたアクチビンβBの全ての形態への言及を含めているものとして読み取られる。アクチビンβBの多量体タンパク質形態は、例えばホモダイマー・アクチビンB(βBB)、又はヘテロダイマー・アクチビンAB(βAB)、アクチビンBC(βBC)、アクチビンBD(βBD)、若しくはアクチビンBE(βBE)タンパク質を含む。好ましくは、前記アクチビン分子は、アクチビンBである。
【0054】
「調節」への言及は、対象炎症反応を上方制御すること又は下方制御することへの言及として理解される。そのため、炎症反応を「下方制御すること」への言及が、炎症反応の1つ以上の側面を妨げること、減少させること(例えば、減速させること)、又はそれ以外の方法で阻害することへの言及として理解される一方で、「上方制御すること」への言及が、逆の意味を持つことは理解される。本発明と関連して、炎症反応の調節は、炎症誘発性サイトカイン・カスケードの上方制御又は下方制御によって達成される。好ましい方法は、望ましくない炎症反応によって特徴づけられる状態、例えば気道炎症、敗血症(sepsis, septicaemia)、髄膜炎、慢性関節リウマチ、又は組織外傷と関連する炎症反応を下方制御することであるが、上記にかかわらず、本発明は炎症反応が起こることが望まれる状況において炎症反応を上方制御することにも及ぶ。例えば、これは、炎症反応がアジュバント様活性を提供することが求められる状況で起こる。これは、抗腫瘍治療と関連して特に有用であるかもしれない。さらに他の例において、宿主防衛機構の上方制御が望まれるかもしれない。
【0055】
本発明を1つの理論又は作用様式に限定することなく、炎症は、多数の可溶性メディエーターから成る、カスケード様式での相互作用を伴う複雑な生物学的過程である。要するに、サイトカイン、及び炎症反応を誘発するために作用する他の炎症メディエーターのカスケードを、以下のとおり図式的に描くことができる:
【0056】
【化1】

【0057】
したがって、「炎症誘発性メディエーター・カスケード」又は「炎症誘発性サイトカイン・カスケード」への言及は、炎症反応の発現及び進行を特徴づける可溶性分子の連続的相互作用への言及として理解される。特に、炎症メディエーター・カスケードの発現は、TNF-α、IL-1、及びIL-6の発現の連続的な上方制御を特徴とする。しかし、それにもかかわらず、炎症過程全体は、様々なサイトカイン(用語「サイトカイン」は、インターロイキン、ケモカイン、モノカイン、コロニー刺激因子、及び他のそういったタンパク質ホルモンへの言及を含むように広範に理解される)のレベルの連続的な変化を特徴とする。アクチビンのレベルが炎症反応を経験している哺乳動物で調節されるという以前の観察にもかかわらず、このような状況において、アクチビンの正確な役割は理解されていなかった。この目的のために、炎症誘発性サイトカインは、TNF-α、IL-1、及びIL-6によって構成されていると今でもまだ一般に考えられている。なおかつさらに、そしてどのような形でも本発明を限定することなく、TNF-αは、様々な炎症誘発性刺激に応答して分泌され、そして多種多様な効果を発揮する。低濃度で、それは、血管接着分子を上方制御し、好中球を活性化し、そしてインターロイキン1、6、及び追加のTNF-αを分泌するように単球を刺激する傍分泌及び自己分泌分子として働く。より高濃度で、TNF-αは血清に入り、そして内分泌ホルモンになる。ここで、それは、単核球からのさらなるサイトカイン放出を刺激し、凝血系を活性化し、そして骨髄幹細胞成熟を抑制する発熱物質として働く。さらに高い濃度で、TNF-αは、(おそらく酸化窒素[NO]合成の誘導を通じての)低血圧と、播種性血管内凝固症候群(DIC)の誘導を含めた多くの有害な効果を持つ。
【0058】
IL-1は、炎症誘発性刺激に応答して活性化された単核球によって同様に産生される。IL-1は、2つの形態:IL-1αとIL-1βを有する。IL-1αは、その33kDの分子として活性であり;IL-1βは、17kDの生物学的に活性なペプチドへとさらに切断される必要がある。高い用量のIL-1の内分泌効果は、発熱、DIC、及び代謝老廃物を引き起こすTNF-αに類似している。また、活性化された単球は、IL-1及びTNF-α刺激に応答してIL-6を産生する。そして、IL-6は炎症過程を広めるために肝細胞とB細胞に作用する。IL-6刺激下で、肝細胞は、高レベルの急性期反応物質、例えばフィブリノゲンを分泌する。また、IL-6はB細胞増殖因子としても働き、それによって抗体の形成及び放出を促進する。
【0059】
炎症反応を調節すること(特に応答の下方制御)に関して、サイトカイン・カスケードの調節が主な焦点であった。特定の炎症分子を遮断し、それによって理論的にそのカスケードを変更して場合によっては患者の利益となるように炎症誘発性サイトカイン・カスケードを変更するような試みがなされた。TNF-αとIL-1は、調節の対象とされた2つの前記分子である。抗TNF-α抗体及びIL-1レセプター拮抗薬を用いた治療法が試験された。しかし、今まで免疫療法のために1つの特定のサイトカイン又は炎症メディエーターを標的とすることが、治療のための有用な提案であることが一般に分かっていなかった。この件に関して、いずれかのサイトカイン又はメディエーターがカスケードのたった1つの構成要素であるので、1つの作用物質を中和することがカスケード全体を下方制御しそうにないと一般に見なされていた。当該発見がとても驚くべきことであるのはこれらの理由のためである。第一に、最も初期の段階から炎症誘発性メディエーター・カスケードがアクチビンA発現のレベルの調節に関与していることを確定した。特に、炎症刺激が生じた直後、かつ、TNF-α、IL-1、及びIL-6発現より前にアクチビンAレベルが上昇する。したがって、アクチビンAは炎症誘発性サイトカイン・カスケードの開始に関与していると思われる。なおかつさらに、実際に、アクチビンAの機能性を下方制御することで、炎症反応を下方制御する好ましい結果を達成できることが測定された。驚いたことに、炎症誘発性サイトカイン・カスケードの初期の間のアクチビンBの役割が同様に明らかにされた。しかし、さらにより驚いたことに、炎症反応のこの段階の間に観察されるアクチビンBのレベルが対応するアクチビンAレベルよりはるかに高いという測定があった。
【0060】
したがって、好ましい態様において、本発明は、(アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、又は変異体である)アクチビンの機能活性を調節するステップを含む、哺乳動物における炎症反応の調節方法を対象とし、ここで、上記哺乳動物における機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、炎症誘発性サイトカイン・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして上記哺乳動物において機能上効果的でないレベルへの上記アクチビンの下方制御が、炎症誘発性サイトカイン・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
好ましくは、前記アクチビンは、アクチビンA、及び/又はアクチビンBである。
【0061】
1つの態様において、本発明は、アクチビンA、及び/又はアクチビンB、その断片、誘導体、突然変異体、又は変異体の機能活性を調節するステップを含む、哺乳動物における局所炎症反応の調節方法を対象とし、ここで、上記哺乳動物における機能上効果的なレベルへのアクチビンの上方制御が、局所炎症誘発性サイトカイン・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして上記哺乳動物において機能上効果的でないレベルへのアクチビンA、及び/又はアクチビンBの下方制御が、局所炎症誘発性サイトカイン・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
好ましくは、前記局所炎症反応は急性である。
【0062】
他の好ましい態様において、本発明は、アクチビンA、及び/又はアクチビンB、その断片、誘導体、突然変異体、又は変異体の機能活性を調節するステップを含む、哺乳動物における全身性炎症反応の調節方法を対象とし、ここで、上記哺乳動物における機能上効果的なレベルへのアクチビンの上方制御が、炎症誘発性サイトカイン・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして上記哺乳動物において機能上効果的でないレベルへのアクチビンA、及び/又はアクチビンBの下方制御が、全身性炎症誘発性サイトカイン・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
好ましくは、前記全身性炎症反応は急性である。
【0063】
本発明のこれらの好ましい側面に従い、前記急性炎症反応は、好ましくは下方制御され、そして敗血性ショック、敗血症、気道炎症、虫垂炎、髄膜炎、毒素又はウイルスに対する肝臓の反応、血管形成、乾癬、神経保護、アテローム硬化症、尿細管壊死、脳炎、あるいは創傷治癒又は外傷性損傷、例えば、けが、手術、及びやけど(例えば、外傷性脳損傷)に関連して起こるか、又はそれらに関係があるそれ以外のものである。
好ましくは、前記気道炎症は、喘息、間質性肺炎、嚢胞性線維症、肺移植、閉塞性細気管支炎、気腫、閉塞性肺疾患、SARS、石綿肺症、閉塞性睡眠時無呼吸、低酸素症、又は肺高血圧症と関連して起こる。
好ましくは、前記急性全身性炎症反応は、全身性炎症反応症候群、そしてより特に敗血症(sepsis, septicaemia)、毒素ショック、敗血性ショック、組織外傷、髄膜炎、又は虫垂炎と関連して起こる。
他の好ましい態様において、前記炎症性疾患は慢性である。
【0064】
さらにより好ましくは、前記慢性炎症反応は、多発性硬化症、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチ、喘息、乾癬、又は創傷治癒に関連して起こるか、又はそれらに関係があるものである。
これらの好ましい態様に従って、前記炎症誘発性サイトカイン・カスケードは、TNF-α、IL-1、及び/又はIL-6の発現に対応する。
【0065】
炎症誘発性サイトカイン・カスケードを調節することに関して、これは、これらのサイトカインの実際のレベルを調節することによって、又はそれらの機能性を調節することによって達成されうると理解される。例えば、そして本発明を1つの理論又は作用様式に限定することなく、哺乳動物のLPS誘発(LPS challenge)より前のホリスタチン(この分子はアクチビン拮抗薬として機能する)の投与にもかかわらず、炎症の間に起こることが通常観察されるのと同じ濃度のアクチビンAピークの発現をもたらすことが示された。しかし、ホリスタチンのアクチビンAへの結合、そしてそれによるアクチビンAの機能性の遮断により、発現されるTNF-αの濃度は50%にまで下がる。興味深いことに、発現されたIL-6の濃度は、非常に初期の時点で6倍増加することが観察される。全体で、炎症誘発性サイトカインの特性のこれらの変化にかかわらず、観察される炎症反応の縮小をもたらす。これらの発見は、タンパク質の計測に基づき、その結果成熟アクチビンA二量体タンパク質の分泌、及び/又は放出を示す。したがって、ホリスタチン前処理は、この過程に影響すると思われない。しかし、アクチビンβA及び/又はβB mRNAを計測する場合には、実際に、ホリスタチン前処理が、両アクチビン・サブユニット遺伝子の合成機構を回復させる。アクチビンβAサブユニットに関して、mRNAの阻害はタンパク質放出に反映されない。同じ機構が、アクチビンβBと関連して当てはまることが仮定される。したがって、やはり本発明を何らかの形で限定することなしに、すなわち原則的に前もって蓄えられたタンパク質の迅速な放出が起こり、そしてこの放出機構とは別のホリスタチンによって制御された合成経路が起こる。しかし、最も重要なことは、炎症誘発後にアクチビンβA mRNAのわずかな増加、しかし同じ刺激によるアクチビンβB mRNAの大幅な増加が観察される思いがけない測定である。
【0066】
アクチビンの「機能上効果的なレベル」又は「機能上効果的でないレベル」に達することへの本願明細書中での言及は、上方制御か下方制御かにかかわらず、炎症反応の調節を達成することができるアクチビンのレベルに達することへの言及として理解される。この件に関して、日常的な手法を利用した、その上又はその下に炎症を調節するアクチビン発現の閾値の決定は、当業者の技能の範囲内にある。
【0067】
「効果的なレベル」への言及が、所望した応答に少なくとも部分的に達するのに必要なレベルを意味することは理解される。治療される細胞集団、及び/又は個体の健康及び体調、治療される細胞集団、及び/又は個体の分類群、所望する上方又は下方制御の程度、利用される組成物の処方、医療状況の評価、並びに他の関連した要素に依存して量が変化するかもしれない。したがって、このレベルは、個々の状況の間で変化するかもしれず、それによって日常的な試験を通して決定されうる広い範囲をとると思われる。
【0068】
アクチビン・レベルを調節することは、これだけに制限されることなく、以下のものを含めたいずれかの好適な手段によって達成される:
(i)より多い又はより少ないアクチビンが細胞環境中に存在するようにアクチビンの絶対レベルを調節すること。
(ii)アクチビンの機能上の有効性が高められるか又は下げられるようにアクチビン・タンパク質の機能活性を作動するか又はそれに拮抗すること。例えば、アクチビンの半減期を延ばすことは、アクチビンの絶対濃度の増加を実際には必要とせずにアクチビンの機能上効果的なレベルの増加を達成する。同じように、アクチビンの部分的な拮抗は減少のために働くが、必ずしも上記アクチビンの機能上の有効性をなくすわけではない。
したがって、これは、必ずしもアクチビンの絶対濃度の下方制御することなく、アクチビンの機能を下方制御する手段を提供するかもしれない。
【0069】
アクチビンの上方又は下方制御を達成することに関して、この目的を達成するための手段は、当業者に周知であり、そしてこれだけに制限されることなく、以下のものを含む:
(i)細胞内に、アクチビンをコードする核酸分子を、又はアクチビンを発現する上記細胞の能力を上方制御するための手段として核酸分子を導入すること。
(ii)細胞内に、遺伝子の転写及び/又は翻訳制御を調節するタンパク質分子、又は非タンパク質分子を導入することであって、ここで、この遺伝子が、アクチビン遺伝子又はその機能性部分であるか、あるいは直接的若しくは間接的にアクチビン遺伝子の発現を調節する何らかの他の遺伝子又は遺伝子領域(例えば、プロモーター領域)である。
(iii)細胞内にアクチビン発現産物を導入すること(これがアクチビン相同体の使用を含むことは理解される)。
(iv)アクチビン発現産物に対する拮抗薬として機能するタンパク質分子又は非タンパク質分子を導入すること。
(v)アクチビン発現産物の作動薬として機能するタンパク質分子又は非タンパク質分子を導入すること。
【0070】
先に記載のタンパク質分子は、あらゆる好適な源、例えば天然、組み換え、又は合成の源に由来し、そして例えば天然産物のスクリーニングを通じて同定された融合タンパク質又は分子を含む。非タンパク質分子への言及は、例えば核酸分子への言及であるかもしれず、あるいはそれは、天然の源、例えば天然産物のスクリーニングに由来する分子であるか、又は化学的に合成された分子であるかもしれない。本発明は、アクチビン発現産物の相似体、あるいは作動薬又は拮抗薬として作用することができる小分子を意図する。化学的な作動薬は、必ずしもアクチビン発現産物に由来するわけではないが、特定の立体配座の類似点を共有するかもしれない。あるいは、化学的な作動薬は、特定の生理化学的特性を満たすように設計されるかもしれない。拮抗薬は、正常な生物学的機能の実行からアクチビンを遮断、阻害、又はそれ以外の方法で妨げることができる化合物であるかもしれない。拮抗薬は、哺乳動物の細胞においてアクチビン遺伝子若しくはmRNAの転写又は翻訳を妨げるモノクローナル抗体及びアンチセンス核酸を含む。また、発現の調節は、抗原、RNA、リボソーム、DNAzymes、アプタマー、抗体、又は共抑制における使用に好適な分子を利用しても達成されうる。アクチビンの好適なアンチセンス・オリゴヌクレオチド配列(一本鎖DNA断片)は、作製されるか、又はアクチビンの発現を抑制するその能力によって同定されうる。特定のタンパク質に対するアンチセンス・オリゴヌクレオチドの製造は、例えばStein and Cohen, 1988 (Cancer Res 48:2659-68)及びvan der Krol et al., 1988 (Biotechniques 6:958- 976)に記載されている。
【0071】
抗体と関連して、本発明は、触媒抗体、又は上記抗体の誘導体、相同体、相似体、又は模倣体を含めたあらゆる好適な形態の抗体の使用を想定する。そういった抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであり、そして天然アクチビン又はそのサブユニットから選ばれるか、あるいはアクチビン・ダイマー又はそのモノマー(本願明細書中、「抗原」と呼ばれる)に対して産生されうる。後者の場合には、抗原は、第一に担体分子を伴う必要があるかもしれない。あるいは、抗体断片は、例えばFab断片又はFab’2断片が使用されるかもしれない。さらに、本発明は、組み換え及び合成の抗体、並びに抗体ハイブリッドに及ぶ。
【0072】
「合成抗体」は、抗体の断片とハイブリッドを含むと本願明細書中では考えられる。また、抗原を天然の抗体を選別するために使用することができる。
ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体の両方が、抗原、又はその誘導体、相同体、相似体、突然変異体、又は模倣体を用いた免疫処置によって入手することができ、そしてどちらのタイプも治療的に利用可能である。両タイプの血清を得る方法は、当該技術分野で周知である。ポリクローナル血清は、それほど好ましいものではないが、効果的な量の抗原又はその抗原性部分を用いた好適な実験動物の注射(上記動物から血清を集め、そしていずれかの既知の免疫吸着技術によって特定の血清を分離する)によって比較的に容易に調製される。この方法によって産生された抗体は利用可能であるにもかかわらず、産物の潜在的な異質性のためにそれらは一般に必ずしも好まれていない。
【0073】
大量にそれらを製造する能力と生成物の均質性のため、モノクローナル抗体の使用が特に好ましい。不死化細胞株と、免疫原性製剤に対して感作されたリンパ球との融合によって得られるモノクローナル抗体産生のためのハイブリドーマ細胞株の調製は、当業者に周知の技術によって行なわれることができる(例えば、Douillard and Hoffman, Basic Facts about Hybridomas, in Compendium of Immunology Vol II, ed. by Schwartz, 1981; Kohler and Milstein, Nature 256: 495-499, 1975; European Journal of Immunology 6: 511-519, 1976を参照のこと)。
【0074】
好ましくは、本発明の抗体は、抗原を特異的に結合する。「特異的な結合」は、特定の抗原に対する抗体の高い結合活性、及び/又は高い親和性の結合を意味する。この特定の抗原上のエピトープへの抗体の結合は、あらゆる他のエピトープ、特に着目の特定の抗原のように、同じサンプルに関係する分子で、又は同じサンプル中に存在しうるものへの同抗体の結合より強い。 着目のポリペプチドに特異的に結合する抗体は、弱いが、けれども検出可能なレベル(例えば、着目のポリペプチドに対して示される結合の10%以下)で他のポリペプチドを結合することができる。そういった弱い結合、又はバックグラウンド結合は、例えば、適当な対照の使用によって着目のポリペプチドへの特定の抗体の結合の中から容易に識別可能である。
【0075】
先のポイント(i)〜(v)で言及されたタンパク質分子及び非タンパク質分子は、本願明細書中でまとめて「調節物質」と呼ばれる。アクチビン活性を減少させるために探し求められる限りにおいて、上記調節物質は好ましくは以下のものである:
(i)ホリスタチン。これは、タンパク質として投与されるか、それともその過剰発現が、例えばTakabe et al. 2003によって記載されたアデノウイルス介在性システムによってインビボで誘発されるかもしれない。
(ii)インヒビンのαサブユニットの発現又は機能を上方制御する全ての作用物質。αサブユニットは、アクチビンのβサブユニットと二量体化して、インヒビンを形成することができ、それによってアクチビン・レベルを効果的に下方制御する。
(iii)インヒビン。この分子は、β-グリカンに結合し、そしてそのレセプターを介してアクチビンの作用を阻害することができる。例えば、Xu et al. (1995)によって記載された機構、又はSmad7拮抗薬の使用(Bernard et al. 2004)を参照のこと。
(iv)これがアクチビンの不活発なAC形態の形成をもたらすので、βCレベルを上方制御するあらゆる作用物質。
(v)アクチビン中和抗体。例えば、Poulaki et al. (2004)に記載のとおり。
(vi)天然アクチビンのそのレセプターへの結合を阻害するアクチビン突然変異体。例えば、Harrison et al. 2004に記載のとおり。
(vii)正常なアクチビンのシグナル伝達を妨げる突然変異アクチビン・レセプターによるトランスフェクション又は処理。例えば、Maeshima et al. (2004)に記載の系を参照のこと。
【0076】
この件に関して、「ホリスタチン」への言及は、一例として選択的スプライシングされたmRNA FS315とFS288から産生されると同定された3つのタンパク質コア及び6つの分子量形態を含めたあらゆる形態のホリスタチンへの言及を含むものとして読まれる。したがって、ホリスタチンmRNAの選択的スプライシング、又はホリスタチンの突然変異体若しくは多形性形態から生じるかもしれないあらゆるアイソフォームへの言及を含むことも同様に理解される。
【0077】
ホリスタチン遺伝子によってコードされたあらゆるタンパク質、あらゆるサブユニット・ポリペプチド、例えば産生されるであろう前駆体の形態、及びモノマー、マルチマー、又は融合タンパク質として存在しているかどうかにかかわらず、あらゆるホリスタチン・タンパク質に及ぶことがその上さらに理解される。類似した定義が「インヒビン」に当てはまる。
【0078】
上文に規定した調節物質のスクリーニングは、これだけに制限されることなく、アクチビン遺伝子、又はその機能的同等物若しくは誘導体を含む細胞と、作用物質とを接触させ、そしてアクチビン・タンパク質の産生、又は機能活性調節の調節、アクチビンをコードする核酸分子の発現の調節、あるいは下流のアクチビン細胞内標的の活性又は発現の調節についてスクリーニングすることを含めたいくつかの好適な方法のうちのいずれか1つによって達成されることができる。そういった調節の検出は、例えばウェスタンブロッティング、電気泳動移動度シフト・アッセイ、及び/又はアクチビン活性のレポーター、例えばルシフェラーゼ、CAT等の解読といった技術を利用して達成されることができる。
【0079】
アクチビン遺伝子、又はその機能的同等物若しくは誘導体は、試験の対象である細胞内で自然に生じているか、又は試験目的のために宿主細胞内にトランスフェクトされたことは理解される。さらに、天然の又はトランスフェクトされた遺伝子が、恒常的に発現される−それによって、とりわけ、核酸又は発現産物レベルのいずれかでアクチビン活性を下方制御する作用物質をスクリーニングするための有用なモデルを提供するか、あるいは遺伝子が活性化を必要とする−それによって、とりわけ、アクチビン発現を上方制御する作用物質のスクリーニングのための有用なモデルを提供する。
【0080】
さらに、アクチビン核酸分子が細胞内にトランスフェクトされる限り、その分子は全アクチビン遺伝子を含むかもしれず、又はそれは遺伝子の一部、例えばアクチビン産物の発現を制御する部分を単に含むかもしれない。例えば、アクチビン・プロモーター領域が、試験対象である細胞内にトランスフェクトされうる。この件に関して、プロモーターだけが利用される場合、プロモーターの活性の調節の検出は、例えばレポーター遺伝子をプロモーターに連結することによって達成されることができる。
【0081】
例えば、プロモーターをルシフェラーゼ又はCATレポーターに連結して、遺伝子の発現調節を、それぞれ蛍光強度又はCATレポーター活性の調節によって検出することができる。他の例において、検出の対象は、アクチビン自体よりむしろ下流のアクチビン制御標的であるかもしれない。さらに他の例は、最小レポーターに連結されたアクチビン結合部位を含む。アクチビン活性の調節を、炎症誘発性サイトカイン放出の調節のスクリーニングによって検出することができる。
【0082】
これは、アクチビン発現の調節自体が検出の対象ではない間接的なシステムの例である。むしろ、アクチビンが制御する下流の活性の調節を監視する。
【0083】
これらの方法は、推定上の調節物質、例えば合成、組み合わせ、化学的、及び天然のライブラリを含めたタンパク質又は非タンパク質の高速大量処理スクリーニングを実施するための機構を提供する。また、これらの方法は、アクチビン核酸分子若しくは発現産物それ自体のいずれかを結合するか、又はその後アクチビン発現又は発現産物活性を調節するところの上流分子の発現を調節する作用物質の検出も容易にする。
したがって、これらの方法は、直接的に又は間接的にアクチビン発現、及び/又は活性を調節する作用物質を検出する機構を提供する。
【0084】
本発明の方法に従って利用される作用物質は、いずれかの好適な形態をとるかもしれない。例えば、タンパク質作用物質は、様々な程度までグリコシル化又は非グリコシル化、リン酸化又は脱リン酸化されるかもしれず、及び/又は上記タンパク質に使われるか、連結されるか、結合されるか、又はそれ以外に関係している一連の他の分子、例えばアミノ酸、脂質、炭水化物若しくは他のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質を含むかもしれない。同じように、対象の非タンパク質分子もいずれかの好適な形態をとるかもしれない。本願明細書中に記載のタンパク質作用物質及び非タンパク質作用物質のいずれも、他のいずれかのタンパク質分子又は非タンパク質分子に連結されるか、結合されるか、あるいはそれ以外に関係しているかもしれない。例えば、本発明の1つの態様において、前記作用物質は、それが局所的な部位を狙うことを可能にする分子に関係する。
【0085】
対象のタンパク質分子又は非タンパク質分子は、アクチビンの発現、又はアクチビン発現産物の活性を調節するために直接的に又は間接的に働く。それが、それぞれ発現又は活性を調節するためにアクチビン核酸分子又は発現産物と関係する場合、前記分子は直接的に働く。それが、他の分子が直接的に又は間接的にアクチビン核酸分子又は発現産物の発現又は活性それぞれを調節する、アクチビン核酸分子又は発現産物以外の分子に関係する場合、前記分子は間接的に働く。したがって、本発明の方法は、カスケードの制御段階の誘導によるアクチビン核酸分子発現又は発現産物活性の調節を包含する。
【0086】
用語「発現」は、核酸分子の転写及び翻訳を表す。「発現産物」への言及は、核酸分子の転写及び翻訳から産生された産物への言及である。「調節」への言及は、上方制御又は下方制御への言及として理解される。
本願明細書中に記載の分子(例えば、アクチビンA、アクチビンB、ホリスタチン、又は他のタンパク質作用物質若しくは非タンパク質作用物質)の「誘導体」は、天然の源又は非天然の源のいずれかからの断片、部分(parts, portions)、又は変異体を含む。非天然の源は、例えば組み換えの源又は合成の源を含む。「組み換えの源」は、対象分子が収集される細胞の源が遺伝子操作されていること意味する。これは、例えばその特定の細胞の源によって産生の速度及び量を増加させるか、又はそれ以外で高めるために存在するであろう。例えば、部分又は断片は分子の活性領域を含む。誘導体は、アミノ酸の挿入、欠失、又は置換に由来する。アミノ酸挿入誘導体は、アミノ、及び/又はカルボキシル基末端の融合物、並びに単独又は複数のアミノ酸の配列内挿入物を含む。挿入アミノ酸配列変異体は、ランダムな挿入が可能でもあるが、得られた産物の好適なスクリーニングを用いて1つ以上のアミノ酸残基がタンパク質の所定の部位に導入されたものである。欠失変異体は、配列からの1つ以上のアミノ酸の除去を特徴とする。置換アミノ酸変異体は、配列内の少なくとも1つの残基が取り除かれ、そしてその場所に異なる残基が挿入されたものである。アミノ酸配列への付加は、先に詳述のとおり、他のペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質との融合を含む。
【0087】
また、誘導体は、特別なエピトープを有するか、あるいはペプチド、ポリペプチド、又は他のタンパク質分子若しくは非タンパク質分子と融合したタンパク質全体の中の一部を有する断片を含む。例えば、特定の部位へのその局在を容易にするために、ホリスタチン又はその誘導体を分子と融合させる。本願明細書中で意図された分子の相似体は、これだけに制限されることなく、側鎖の修飾、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質合成中の非天然アミノ酸、及び/又はその誘導体の取り込み、並びに架橋剤及びタンパク質分子又はその相似体の立体配座を制約する他の方法の使用を含む。
【0088】
本発明の方法に従って利用されうる核酸配列の誘導体は、同じように単独又は複数のヌクレオチドの置換、欠失、及び/又は他の核酸分子との融合を含む付加に由来する。本発明で利用される核酸分子の誘導体は、オリゴヌクレオチド、PCRプライマー、アンチセンス分子、共抑制における使用に好適な分子、及び核酸分子の融合物を含む。また、核酸配列の誘導体は、縮重変異体を含む。
【0089】
アクチビン若しくはホリスタチンの「変異体」又は「突然変異体」が、変異体若しくは突然変異体であるアクチビン又はホリスタチンの形態の少なくともいくつかの機能活性を示す分子を意味することは理解される。変異又は突然変異は、あらゆる形態をとり、かつ、天然又は非天然であるかもしれない。
【0090】
「相同体」は、分子が本発明の方法に従って処理されているもの以外の種に由来することを意味する。例えば、これは、例えば処理されているもの以外の種が、例えば処理を受けた対象によって天然に生じるアクチビン又はホリスタチンに類似し、かつ、好適な機能特性を示すアクチビン又はホリスタチンの形態を生じることが測定された場合に起こるかもしれない。
【0091】
化学的及び機能的同等物は、対象分子の機能活性の1つ以上を示す分子として理解され、機能的同等物は、あらゆる源、例えば化学的に合成されたものに由来するか、又はスクリーニング過程、例えば天然産物のスクリーニングによって同定される。例えば、化学的又は機能的同等物は、周知の方法、例えば組み合わせ化学、組み換えライブラリの高速大量処理スクリーニング、又は以下の天然産物のスクリーニングを利用して設計される、及び/又は同定されることができる。また、そういった方法の利用について拮抗物質をスクリーニングすることもできる。
【0092】
例えば、小さい有機分子を含むライブラリが、スクリーニングされ、ここで、多数の特定の親基置換を有する有機分子が使われる。一般的な合成スキームは、公表されている方法(例えば、Bunin BA, et al. (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91:4708-4712; DeWitt SH, et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6909-6913)に従う。要するに、各々の連続する合成ステップにおいて、多数の異なる選ばれた置換基の1つが、例えばライブラリの製造に利用される異なる置換基から成る全てのあり得る順列を生じるような試験管サブセットの選定によるずらりと並んだ各々の選ばれたサブセットの試験管中に加えられる。1つの好適な順列ストラテジーは、米国特許第5,763,263号に概説されている。
【0093】
現在、生物学的に活性な化合物を探索するためにランダムな有機分子の組み合わせライブラリを使用することに対する広範囲にわたる関心が存在する(例えば米国特許第5,763,263号を参照のこと)。このタイプのライブラリのスクリーニングによって発見されたリガンドは、天然リガンドを模倣するか又は遮断するか、あるいは生物学的標的の天然リガンドを妨げるのに有用であるかもしれない。現在の状況で、例えば、それらは、例えばより強力な薬学的効果といった特性を示すアクチビン相似体を開発するための出発点として使われうる。本発明によるアクチビン又はその機能部分が、様々な固相又は溶液相の合成方法(例えば、米国特許第5,763,263号及びそこに引用された参考文献を参照のこと)によって形成された組み合わせライブラリで使用されうる。例えば米国特許第5,753,187号で開示されているものといった技術の使用によって、何百万もの新しい化学物質、及び/又は生物学的化合物が、数週間足らずで日常的にスクリーニングされうる。多数の同定された化合物のうち、適当な生物学的活性を示したものだけがさらに分析される。
【0094】
高速大量処理ライブラリ・スクリーニング法に関して、選ばれた生物学的作用物質、例えば生体分子、高分子複合体、又は細胞と特異的に相互作用することができるオリゴマー分子又は小分子のライブラリ化合物が、周知の方法、例えば先に記載のものの範囲から当業者によって容易に選ばれる組み合わせライブラリ・デバイスを利用してスクリーニングされる。そういった方法で、ライブラリの各々のメンバーが選ばれた作用物質と特異的に相互作用するその能力についてスクリーニングされる。前記方法の実施において、生物学的作用物質を、化合物を含む試験管中に取り出し、そして各試験管内で個々のライブラリ化合物と相互作用させる。前記相互作用は、所望の相互作用の存在を監視するために使用することができる検出可能なシグナルを生じるように設計される。好ましくは、生物学的作用物質は水性溶液中に存在し、所望の相互作用に依存してさらなる条件が適用される。検出は、例えば物質の検出のためのいずれか周知の機能ベースの方法又は非機能ベースの方法によって実施される。
【0095】
アクチビンの活性を模倣する分子のスクリーニングに加えて、当業者は、細胞増殖の調節に関係してアクチビンの機能活性を上方又は下方制御するためにアクチビンに対して作動的に又は拮抗的に機能する分子を同定し、そして利用するかもしれない。そういった分子の使用は以下により詳しく記載される。対象分子がタンパク質分子である限り、それは、例えば融合タンパク質を含めた、又は例えば先に記載のスクリーニング法に付随する天然又は組み換えの源に由来する。非タンパク質分子は、例えば同様に先に特定された方法論に従って同定、又は製造された化学的な、あるいは合成の分子であるかもしれない。したがって、本発明は、作動薬又は拮抗薬として作用することができるアクチビンの化学的相似体の使用を意図する。化学的作動薬は、必ずしもアクチビンに由来するわけではないが、特定の立体配座の類似点を共有する。あるいは、化学的作動薬は、アクチビンの特定の生理化学的特性を模倣するように特に設計されるかもしれない。拮抗薬は、アクチビンの正常な生物学的機能の実施を遮断するか、阻害するか、又はそれ以外で妨げることができるあらゆる化合物である。拮抗薬は、アクチビン又はアクチビンの部分に特異的なモノクローナル抗体を含む。好ましくは、前記拮抗薬はホリスタチンである。
【0096】
本願明細書中で意図されるアクチビンの相似体又はアクチビンの作動的な若しくは拮抗的な作用物質の相似体は、これだけに制限されることなく、側鎖の修飾、ペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質合成中の非天然のアミノ酸、及び/又は誘導体の組み込み、並びに架橋剤及び相似体の立体配座を制約する他の方法の使用を含む。そういった修飾をすることができる特定の形態は、対象分子がタンパク質か非タンパク質かどうかに依存する。特別な修飾の性質、及び/又は妥当性は、当業者によって日常的に測定されることができる。
【0097】
例えば、本発明によって意図されている側鎖修飾の例は、例えばアルデヒドとの反応に続くNaBH4での還元による還元的アルキル化;メチルアセトイミダートを用いたアミジン化;無水酢酸を用いたアシル化;シアン酸塩を用いたアミノ基のカルバモイル化;2,4,6-トリニトロベンゼン・スルホン酸(TNBS)を用いたアミノ基のトリニトロベンジル化;コハク酸無水物とテトラヒドロフタル酸無水物を用いたアミノ基のアシル化;及びピリドキサル-5-ホスフェートに続きNaBH4での還元を用いたリジンのピリドキシル化によるアミノ基の修飾を含む。
【0098】
アルギニン残基のグアニジン基は、例えば2,3-ブタンジオン、フェニルグリコキサール、及びグリオキサールといった試薬を用いた複素環式縮合生成物の形成によって修飾されうる。
【0099】
カルボキシル基は、例えばO-アシルイソ尿素の形成に続く、例えば対応するアミドへの、その後の誘導体化によるカルボジイミド活性化によって修飾されうる。
【0100】
スルフィドリル基は、例えばヨード酢酸又はヨードアセトアミドを用いたカルボキシメチル化;システイン酸に対する過ギ酸酸化;他のチオール化合物を用いた混合ジスルフィドの形成;マレイミド、無水マレイン酸、又は他の置換されたマレイミドとの反応;4-クロロ水銀安息香酸、4-クロロ水銀フェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2-クロロ水銀-4-ニトロフェノール及び他の水銀を使った水銀誘導体の形成;アルカリ性のpHにおけるシアン酸塩を用いたカルバモイル化、といった方法によって修飾されうる。
【0101】
トリプトファン残基は、例えばN-ブロモスクシンイミドを用いた酸化、あるいは2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジル・ブロマイド又はスルフェニル・ハライドを用いたインドール環のアルキル化によって修飾されうる。他の手の上のチロシン残基は、テトラニトロメタンを用いたニトロ化によって変えられて、3-ニトロチロシン誘導体を形成する。
【0102】
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体を用いたアルキル化、又はジエチルピロカーボネートを用いたN-カルボエトキシル化によって達成されうる。
【0103】
タンパク質合成中の非天然アミノ酸及び誘導体の組み込みの例は、これだけに制限されることなく、ノルロイシン、4-アミノ酪酸、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニン、及び/又はアミノ酸のD型異性体の使用を含む。本願明細書中で意図される非天然アミノ酸の一覧を表1に表す。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【0107】
例えば、ホモ二官能性架橋剤、例えばn=1〜n=6の(CH2nスペーサ基を有する二官能性イミド・エステル、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシサクシンイミド・エステル、並びにアミノ反応性部分、例えばN-ヒドロキシサクシンイミド及びその他の特異的な反応性部分を通常含むヘテロ二官能性試薬を使って3D構造を安定させるために架橋剤を使用することができる。
【0108】
前記アクチビン機能レベルの調節は、上記アクチビン、上記アクチビンをコードする核酸分子、あるいは上記アクチビン活性又は上記アクチビン遺伝子発現の調節に影響する作用物質(本願明細書中ではまとめて「調節物質」と呼ばれる)の投与によって達成されうる。好ましくは、対象方法は、哺乳動物における炎症反応の下方制御に利用される。
【0109】
したがって、特に好ましい態様において、本発明は、哺乳動物における炎症反応を下方制御する方法を対象とし、ここで、上記方法が、上記哺乳動物において効果的な量の作用物質を一時的に、そして機能上効果的でないレベルの(アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、又は変異体である)アクチビンを誘発するのに十分な条件下で上記哺乳動物に投与するステップを含む。
【0110】
好ましくは、前記アクチビンはアクチビンA、及び/又はアクチビンBである。
好ましくは、前記炎症反応は、炎症誘発性サイトカイン・カスケードの調節によって調節される。さらにより好ましくは、前記炎症誘発性サイトカイン・カスケードは、TNF-α、IL-1、及び/又はIL-6の発現を特徴とする。
【0111】
さらにより好ましくは、前記作用物質は、ホリスタチン、又はその機能断片、誘導体、相同体、若しくは模倣体、インヒビンのαサブユニットのレベルを上方制御する作用物質、インヒビン、βCのレベルを上方制御する作用物質、アクチビン中和抗体、あるいはアクチビン突然変異体である。
より好ましくは、前記炎症反応は、急性局所炎症反応又は急性全身性炎症反応である。
【0112】
本発明のこれらの好ましい態様に従って、前記急性炎症反応は、敗血性ショック、敗血症、気道炎症、虫垂炎、髄膜炎、毒素若しくはウイルスに対する肝臓の反応、血管形成、乾癬、神経保護、アテローム硬化症、尿細管壊死、脳炎、又は創傷治癒若しくは外傷性損傷、例えば、けが、手術、及びやけど(例えば、外傷性脳損傷)と関連して起こるか、又はそれに関係したそれ以外のものである。
【0113】
好ましくは、前記気道炎症は、喘息、間質性肺炎、嚢胞性線維症、肺移植、閉塞性細気管支炎、気腫、閉塞性肺疾患、石綿肺症、SARS、閉塞性睡眠時無呼吸、低酸素症、又は肺高血圧症と関連して起こる。
【0114】
好ましくは、前記急性全身性炎症反応は、全身性炎症反応症候群、そしてより特に敗血症(sepsis, septicaemia)、毒素ショック、敗血性ショック、組織外傷、髄膜炎、又は虫垂炎と関連して起こる。
他の好ましい態様において、前記炎症性疾患は慢性である。
さらにより好ましくは、前記慢性炎症反応は、多発性硬化症、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチ、喘息、乾癬、又は創傷治癒と関連して起こるか、又はそれらに関係するそれ以外のものである。
【0115】
他の好ましい態様において、哺乳動物における炎症反応を上方制御する方法を提供し、ここで、上記方法は、上記哺乳動物において効果的な量の作用物質を一時的に、そして機能上効果的なレベルの(アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体である)アクチビンを誘発するのに十分な条件下で上記哺乳動物に投与するステップを含む。
好ましくは、前記アクチビンはアクチビンA、及び/又はアクチビンBである。
好ましくは、前記作用物質は、アクチビンA又はアクチビンB発現産物である。
【0116】
本願明細書において、用語「哺乳動物」は、ヒト、霊長類の動物、家畜動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ロバ)、実験室試験動物(例えば、マウス、ラット、モルモット)、コンパニオン・アニマル(例えば、イヌ、ネコ)、及び捕獲野生動物(例えば、カンガルー、シカ、キツネ)を含む。好ましくは、前記哺乳動物は、ヒト又は実験室試験動物である。よりさらに好ましくは、前記哺乳動物はヒトである。
【0117】
「誘発」への言及は、それが機能上効果的なレベルであるか機能上効果的でないレベルであるかどうかに関わらず、所望のアクチビン・レベルを達成することへの言及として理解される。前記誘発は、上文に記載のとおりアクチビン発現の上方制御又は下方制御によって達成される可能性が最も高いが、それでもこのようにして、誘発を達成するあらゆる他の好適な手段が本発明の方法に組み込まれる。
【0118】
上文に詳述のとおり、本発明のさらなる側面は、疾患状態又は他の望ましくない状態の治療及び/又は予防に関係する本発明の使用に関する。
そのため、本発明は、哺乳動物における異常な、望ましくない、又はそれ以外の不適当な炎症反応を特徴とする状態、あるいは状態の発生素因の治療的、及び/又は予防的方法を意図するものであり、上記方法は、上記哺乳動物におけるアクチビン断片、その誘導体、突然変異体、又は変異体のレベルを調節するステップを含み、ここで、機能上効果的なレベルへのアクチビンを上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを上方制御し、そして機能上効果的でないレベルへのアクチビンの下方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
【0119】
より特に、そのため本発明は、上記哺乳動物における(アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体である)アクチビンのレベルを調節するステップを含む、哺乳動物における異常な、望ましくない、又はそれ以外の不適当な炎症反応を特徴とする状態又は状態の発生素因の治療的、及び/又は予防的処置方法を意図し、ここで、機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、炎症誘発性サイトカイン・カスケードを上方制御し、そして機能上効果的でないレベルへの上記アクチビンの下方制御が炎症誘発性サイトカイン・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
好ましくは、前記アクチビンはアクチビンA、及び/又はアクチビンBである。
好ましくは、前記炎症誘発性サイトカイン・カスケードは、TNF-α、IL-1、及び/又はIL-6の発現を特徴とする。
【0120】
「異常な、望ましくない、又はそれ以外の不適当な」炎症反応への言及は、過剰な応答、不十分な応答、あるいはそれが望ましくない又は不適当であるといった点において不適当である生理学的に正常な応答への言及として理解される。異常な又はそれ以外の望ましくない炎症反応の例は、敗血性ショック、敗血症、気道炎症、虫垂炎、髄膜炎、毒素若しくはウイルスに対する肝臓の応答、血管形成、乾癬、神経保護、アテローム硬化症、尿細管壊死、あるいは創傷治癒又は外傷性損傷、例えば手術及びやけどに伴って起こるものと関連して起こるものを含む。この件に関して、しかし実際に、気道炎症のいくつかの形態は、望ましくない正常な生理学的な応答、例えばアレルギー又は喘息と関連して起こるものを反映する。不十分な応答の例は、いずれかの重要な炎症反応が免疫化管理の一部として起こらないことを含む。
【0121】
したがって、対象の炎症反応は、好ましくは、局所型又は全身型のいずれかの望ましくない急性炎症反応である。
そのため、好ましくは、哺乳動物における望ましくない急性炎症反応を特徴とする状態又は状態の発生素因を治療的、及び/又は予防的に処置する方法であって、上記哺乳動物における(アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、又は変異体である)アクチビンのレベルを下方制御するステップを含む上記方法を提供し、ここで、機能上効果的でないレベルへのアクチビンの下方制御が、炎症誘発性サイトカイン・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
好ましくは、前記アクチビンはアクチビンA、及び/又はアクチビンBである。
【0122】
本発明のこの好ましい態様に従って、前記状態は、敗血性ショック、敗血症、気道炎症、虫垂炎、髄膜炎、脳炎、毒素若しくはウイルスに対する肝臓の応答、血管形成、乾癬、神経保護、アテローム硬化症、尿細管壊死、又は創傷治癒若しくは外傷性損傷、例えば、けが、手術、及びやけど(例えば、外傷性脳損傷)である。
好ましくは、前記気道炎症は、喘息、間質性肺炎、嚢胞性線維症、肺移植、閉塞性細気管支炎、気腫、閉塞性肺疾患、SARS、石綿肺症、閉塞性睡眠時無呼吸、低酸素症、又は肺高血圧症と関連して起こる。
より好ましくは、前記状態は、全身性炎症反応症候群であり、そしてより特に敗血症(sepsis, septicaemia)、毒素ショック、敗血性ショック、組織外傷、髄膜炎、又は虫垂炎である。
【0123】
他の好ましい態様において、前記炎症性疾患は慢性である。
その上さらに好ましくは、前記慢性炎症反応は、多発性硬化症、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチ、喘息、乾癬、又は創傷治癒に関連して起こるか、あるいはそれらに関係するそれ以外のものである。
【0124】
他の好ましい態様において、哺乳動物における不十分な炎症反応を特徴とする状態、又は状態の発生素因を治療的、及び/又は予防的に処置する方法であって、上記哺乳動物における(アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体である)アクチビンのレベルを調節するステップを含む上記方法を提供し、ここで、機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、炎症誘発性サイトカイン・カスケードを上方制御する。
好ましくは、前記アクチビンはアクチビンA、及び/又はアクチビンBである。
【0125】
本発明のこれらの治療的及び予防的側面は、好ましくは、上文に規定のとおり効果的な量の調節物質を一時的に、そして炎症誘発性サイトカイン・カスケードを適切に調節するのに十分な条件下で投与することによって達成される。
【0126】
「効果的な量」は、少なくとも部分的に所望の応答を達成するか、あるいは治療される特定の状態の発現又は進行の発現を遅らせるか、進行を阻害するか、又は完全に停止させるのに必要な量を意味する。その量は、治療される個体の健康及び体調、治療される個体の分類学的なグループ、所望の防護の程度、組成物の処方、医療状況の評価、及び他の関連した要素に依存して変化する。その量が、日常的な試験を通して決定されることができる比較的に広い範囲をとることが予想される。
好ましくは、当業者が炎症反応を下方制御しようとしている限りにおいて、前記作用物質は、ホリスタチン、又はその機能断片、誘導体、相同体、若しくは模倣体、インヒビンのαサブユニットのレベルを上方制御する作用物質、インヒビン、βCのレベルを上方制御する作用物質、アクチビン中和抗体、あるいはアクチビン突然変異体である。
【0127】
本願明細書中、「治療」及び「予防」への言及は、その最も広い前後関係で考慮される。用語「治療」は、必ずしも対象が完全な回復まで治療されることを示唆するわけではない。同じように、「予防」は、必ずしも対象が最終的に疾患状態にならないことを意味するわけではない。したがって、治療及び予防は、特定の状態の徴候の改善、あるいは特定の状態が進行する危険性を防ぐか又はそれ以外で低下させることを含む。用語「予防法」は、特定の状態の重症度又は発現を低下させることとみなされる。また、「治療」は、存在している状態の重症度を軽減する。
本発明は、治療法の組み合わせ、例えば所望の治療若しくは予防成果を促す他のタンパク質分子又は非タンパク質分子を伴う調節物質の投与をさらに意図する。例えば、当業者は、本発明の方法を放射線療法又は化学療法と組み合わせるかもしれない。
【0128】
医薬組成物の形態での[本願明細書中でまとめて「調節物質」と呼ばれる]上文に記載の本発明の分子の投与は、いずれかの好都合な手段によって実施される。特定の場合に依存する量で投与される時、医薬組成物の調節物質は治療活性を示すように意図される。変更は、例えば、ヒト又は動物、及び選ばれた調節物質に依存する。広範囲の用量が適用できる。例えば、患者を思えば、1日あたり体重1キログラムにつき約0.1μg〜約1mgの調節物質が投与されうる。投薬計画は、最適な治療反応を提供するために調整されうる。例えば、いくつかに分けられた用量が、日ごと、週ごと、月ごと、又は他の好適な時間間隔で投与されるか、あるいは用量は、状況の要件によって示されるとおり比例的に減らされる。
【0129】
調節物質は、好都合な様式で、例えば経口、(水溶性の場合には)静脈内、吸引、経皮、腹腔内、筋肉内、皮下、皮内、又は坐剤経路によって、あるいは(例えば、持続放出分子を使った)移植によって投与されうる。調節物質は、医薬として許容される無毒の塩の形態、例えば酸付加塩、又は例えば(当該出願の目的のための塩とみなされる)亜鉛、鉄等を伴う金属複合体で投与されうる。そういった酸付加塩の実例となるものは、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩、マレイン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、コハク酸塩、リンゴ酸塩、アスコルビン酸塩、酒石酸塩等である。有効成分が錠剤の形態で投与されるべきである場合、その錠剤は、結合剤、例えばトラガント、トウモロコシ・デンプン、又はゼラチン;崩壊剤、例えばアルギン酸;及び滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウムを含むかもしれない。
【0130】
投与経路は、これだけに制限されることなく、呼吸器投与、経皮投与、気管内投与、鼻咽頭投与、静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与、頭蓋内投与、皮内投与、筋肉内投与、眼内投与、くも膜下腔投与、脳内投与、鼻腔内投与、注入、経口投与、経直腸投与、点滴によって、パッチ、及び移植組織を含む。好ましくは、前記投与手段は、気道炎症の治療に関する吸入、及び他の状態のための静脈内投与、筋肉内投与、又は経皮投与である。
【0131】
これらの方法により、本発明に従って規定された作用物質は、1つ以上の他の化合物又は分子と同時投与されるかもしれない。「同時投与される」は、同じ又は異なる経路を経由して、同じ製剤又は2つの異なる製剤の同時の投与か、あるいは同じ又は異なる経路による連続的な投与を意味する。例えば、対象の作用物質は、その効果を高めるために作動的な作用物質と一緒に投与されうる。「連続的な」投与は、2種類の分子の投与間の数秒、数分、数時間、又は数日の時差を意味する。これらの分子はあらゆる順序でも投与されうる。
【0132】
本発明にしたがって、好ましい方法は望ましくない急性炎症反応の治療的処置をすることであるが、ある状況において、当業者は慢性炎症状態を治療しようとするかもしれない。慢性炎症反応の下方制御を達成することは、すでに生じた全ての組織再構築(瘢痕形成)を覆すことはなさそうなことが認識されている。しかし、そういった方法は、これ以上の組織損傷の発生を防ぐこともあり得る。本発明の予防的な適用に関して、当業者が予防的な治療計画を設定することを望むところの多くの状況が存在する。例えば、当業者は、自己免疫状態を患う素因のある患者、組織外傷、例えばひどいやけどを負った患者、臓器移植を受けた患者、嚢胞性線維症患者、喘息/アレルギー患者、あるいは呼吸障害、例えば睡眠時無呼吸の傾向がある人のそういった治療法を設定するかもしれない。
【0133】
本発明の他の側面は、哺乳動物における異常な、望ましくない、又はそれ以外に不適当な炎症反応を特徴とする状態、あるいはその状態の発生素因の治療的、及び/又は予防的処置のための薬剤の製造における、アクチビン断片、その誘導体、突然変異体、又は変異体の機能上効果的なレベルを調節することができる作用物質の使用に関し、ここで、機能上効果的なレベルへのアクチビンの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを上方制御し、そして機能上効果的でないレベルへのアクチビンの下方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
より特に、本発明は、哺乳動物における異常な、望ましくない、又はそれ以外に不適当な炎症反応を特徴とする状態、あるいはその状態の発生素因の治療的、及び/又は予防的処置のための薬剤の製造における、(アクチビンAであるか、又はβBサブユニットを含むアクチビン分子、その断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体である)アクチビンの機能上効果的なレベルを調節することができる作用物質の使用に関し、ここで、機能上効果的なレベルへの上記アクチビンの上方制御が、炎症誘発性サイトカイン・カスケードを上方制御し、そして機能上効果的でないレベルへの上記アクチビンの下方制御が、炎症誘発性サイトカイン・カスケードを阻害するか又は遅らせる。
好ましくは、前記炎症反応は、急性又は全身性型のいずれかの急性炎症反応である。
【0134】
本発明のこれらの好ましい側面に従って、前記急性炎症反応は、好ましくは下方制御され、前記状態は、敗血性ショック、敗血症、気道炎症、虫垂炎、髄膜炎、毒素若しくはウイルスに対する肝臓の反応、血管形成、乾癬、神経保護、アテローム硬化症、尿細管壊死、創傷治癒、又は例えば、けが、手術、及びやけどによって起こるものといった外傷性損傷であり、そして前記炎症反応が下方制御される。
好ましくは、前記気道炎症は、喘息、間質性肺炎、嚢胞性線維症、肺移植、閉塞性細気管支炎、気腫、閉塞性肺疾患、SARS、石綿肺症、閉塞性睡眠時無呼吸、低酸素症、又は肺高血圧症と関連して起こる。
好ましくは、前記急性全身性炎症反応は、全身性炎症反応症候群、より特に、敗血症(sepsis, septicaemia)、毒素ショック、敗血性ショック、組織外傷、髄膜炎、又は虫垂炎と関連して起こる。
【0135】
他の好ましい態様において、前記炎症性疾患は慢性である。
さらにより好ましくは、前記慢性炎症反応は、多発性硬化症、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチ、喘息、乾癬、又は創傷治癒に関連して起こるか、あるいはそれらに関係するそれ以外のものである。
【0136】
さらに他のさらなる側面において、本発明は、1つ以上の医薬として許容される担体、及び/又は希釈剤と一緒に上文に規定される調節物質を含む医薬組成物を意図する。前記作用物質は、有効成分と呼ばれる。
【0137】
注射用途のための好適な医薬形態は、(水溶性の場合には)無菌水溶液又は分散液、及び無菌注射用溶液又は分散液の即時調製のための無菌散剤を含むか、あるいはクリームの形態、又は局所適用に好適な他の形態であるかもしれない。それは、製造及び保存条件下で安定していなくてはならず、そして微生物、例えば細菌及び真菌の夾雑作用に対して維持されなければならない。担体は、例えば水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液状ポリエチレングリコール等)、その好適な混合物、及び植物油を含めた溶剤又は分散媒質であるかもしれない。適当な流動性を、例えばレシチンといったコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤(superfactants)の使用によって維持することができる。微生物の作用の予防を、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等によって実現することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖又は塩化ナトリウムを含むことが好ましい。注射用組成物の長期吸収を、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンといった吸収を遅らせる作用物質の組成物での使用によって実現することができる。
【0138】
無菌注射用溶液は、必要量の活性な化合物を、要求に応じ、ろ過滅菌後に先に列挙された他の様々な成分と一緒に適当な溶剤中に加えることによって調製される。一般的に、分散液は、様々な滅菌された有効成分を、塩基性分散媒質と、先に列挙されたものの中から必要とされる他の成分を含む無菌媒体中に加えることによって調製される。無菌注射用溶液の調製のための無菌散剤の場合、好ましい調製方法は、有効成分に加えてあらゆる追加の所望の成分の散剤を、あらかじめ無菌ろ過したその溶液から生じる真空乾燥及び凍結乾燥技術である。
【0139】
有効成分が適当に保護される時、それらは、例えば不活性な希釈剤と一緒に若しくは同化可能な食用の担体と一緒に経口投与されるか、又はそれはシェルの硬い又は軟らかいゼラチン・カプセル内に封入されるか、又はそれは錠剤に圧縮されるか、又は食事の食品と一緒に直接組み込まれる。経口での治療としての投与のために、活性な化合物は、賦形剤と一緒に組み込まれ、そして摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ剤、ウエハース等の形態で使用される。そういった組成物及び製剤は、少なくとも1重量%の活性な化合物を含まなくてはならない。組成物及び製剤のパーセンテージは、もちろん変化に富み、そして都合よく単位の重量の約5〜約80%の間にあるかもしれない。好適な投薬量が得られるようなそういった治療的に有用な組成物中の活性な化合物の量である。本発明による好ましい組成物又は製剤は、経口投薬量単位形態が約0.1μg〜2000mgの活性な化合物を含むように調製される。
【0140】
また、作用物質は、微粒子型又は可溶性型のいずれかの形態の気道を介した投与のために調製されるかもしれない。例えば作用物質は、経口吸入器又はネブライザによって投与されうる。
【0141】
また、錠剤、トローチ、丸剤、カプセル等は、以後に列挙した成分:結合剤、例えばゴム、アラビアゴム、トウモロコシ・デンプン、又はゼラチン;賦形剤、例えば第二リン酸カルシウム;崩壊剤、例えばトウモロコシ・デンプン、ジャガイモ・デンプン、アルギン酸等;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム;及び甘味剤、例えばショ糖、ラクトース、又はサッカリンが加えられるか、又は着香料、例えばペパーミント、ウィンターグリーン油、又はサクランボ香味料を含むかもしれない。投薬量単位形態がカプセルの時、それは前述の種類の材料に加えて液状担体を含むかもしれない。様々な他の材料は、コーティングとして、又はそれ以外で投薬量単位の物理的形態を修飾するために存在する。例えば、錠剤、丸剤、又はカプセルは、セラック、砂糖、又はその両方でコートされうる。シロップ剤又はエリキシル剤は、活性な化合物、甘味剤としてショ糖、防腐剤としてメチル及びプロピルパラベン、染料及び着香料としてチェリー又はオレンジ香料を含むかもしれない。もちろん、全ての投薬量単位形態を調製するのに使用されるあらゆる材料も、医薬として純粋であり、そして利用された量で実質的に無毒でなくてはならない。さらに、活性な化合物が、徐放性調合剤及び製剤内に組み込まれうる。
【0142】
また、医薬組成物は、標的細胞にトランスフェクトすることができる遺伝子的分子、例えば(上文に規定されるアクチビンA又は調節物質をコードする核酸分子を運搬する)ベクターを含むかもしれない。前記ベクターは、例えばウイルス・ベクターであるかもしれない。
本発明は、以下の限定されない実施例によって規定される。
【実施例】
【0143】
実施例1
材料と方法
動物及び全般的な実験上の詳細
全ての実験を、NHMRCオーストラリアの科学的目的のための動物の世話に関する実施規約(1997年)に従って実施し、そしてMonash大学動物倫理委員会によって承認された。
【0144】
126匹の雄C57BI/6マウス(4〜8週)を、2つの群に無作為に配分した;第1群が、8匹の動物の9つの小群(合計n=72)から成っているのに対し、第2群は、6匹の動物の9つの小群から成っていた(n=54)。全ての動物を、実験全体を通して、食物と水が摂取可能な標準的な動物飼育状態に保った。リポ多糖(LPS)(E.コリ(E.coli)血清型0127:B8、Sigma, St. Louis, MO, USA)を、先に記載のとおりフェノール−水抽出法を使って精製し(Manthey et al. 1994, J Immunol 153:2653-63)、そして1匹のマウスにつき、100μlの等張の非発熱性食塩水中に100μgの腹腔内ボーラス注射として投与した。組み換えヒト・ホリスタチン-288(rhホリスタチン-288;Biotech, Australia)を、LPSの30分前に、100μlの等張の非発熱性食塩水中に1μgの腹腔内注射として投与した。第1群がLPSとrhホリスタチン-288の注射を受けたのに対して、第2群はLPSだけの注射を受けた。その後、マウスを吸引形態のイソフルラン(Abbott Australasia LTD, Kurnell, Australia)で麻酔し、そして30分、1、2、3、5、8、12、及び24時間での採血のために屠殺し、そして1つの群を基準レベルに関する対照となるように注射なしで屠殺した。血液を、50μlのエチレンジアミン四酢酸(EDTA、BDH Laboratory Supplies, Poole, UK)を含む1.5mlの遠沈管内に採集し、250gにて室温で遠心分離した状態で血漿の除去し、そしてアクチビンA、ホリスタチン、TNFα、IL-6、及びIL-1βのアッセイまで−20℃で保存した。
【0145】
アッセイ
標準としてヒト組み換えアクチビンAを使って、先に記載のとおりアクチビンAをELISAによって計測した(Knight et al., J Endocrinol 148:267-79)。このELISAは、遊離、及びホリスタチンに結合したアクチビンの両方を計測し、アクチビンの他のアイソフォームと有意に交差反応することがない(Knight et al.、上記)。平均感度は0.01ng/mlであり、そして平均アッセイ内及びアッセイ間変動係数(CVs)は、それぞれ3.9%と5.1%だった。
【0146】
血清ホリスタチン濃度を、先に記載のとおり、放射免疫測定法で計測した(O'Connor et al., Hum Reprod. 14:827-832)。利用した標準及びトレーサーは、rhホリスタチン-288だった。アクチビンAのELISAと同様に、このRIAは、ホリスタチンの遊離形態及び結合形態の両方を計測する。平均アッセイ感度は2.7ng/mlだった。ED50は13.3ng/mlであり、そしてアッセイ内及びアッセイ間のCVsは、それぞれ6.4%と10.2%だった。
【0147】
マウス・サイトカイン、TNFα、IL-6、及びIL-1βを、ELISA(R&D Systems, Minneapolis, MN, USA)によって計測した。これらのアッセイは、標準としてのマウス組み換えタンパク質、及び検出のためのモノクローナル抗体を使う。TNFα分析の感度は0.5ng/mlであり、そしてアッセイ内及びアッセイ間のCVsは10%未満だった。IL-6アッセイの感度は0.2ng/mlであり、そしてアッセイ内及びアッセイ間のCVsはそれぞれ10%未満と12%だった。IL-1βの感度はng/mlであり、そしてアッセイ内及びアッセイ間のCVsはそれぞれ10%未満と11%未満だった。
【0148】
データ分析
異なる処置群内の時点間の相違を比較するために使用した対応のあるt-検定を用いた一元配置ANOVAを使って全てのデータを分析した。
【0149】
結果
腹腔内LPS誘発後のマウスにおけるアクチビンAの役割
再抽出LPSの注射後に、アクチビンAの力強い放出(robust release)をマウスで観察した。アクチビンAは、LPS投与後30分以内に増加し、そして1時間でピークに達し3〜8時間で基準レベルに戻り、続いて12時間にそれに続く増加があり、その後24時間で再び基準レベルに戻った(図1A)。LPS投与に続いて、ホリスタチンが循環内に放出されたが、3時間で増加し、24時間まで高められたままであり、アクチビンAに比べて遅れていた(図1B)。循環内へのTNFαの放出は、LPS投与後0.5時間で増加し(p<0.01)、1時間でピークに達して、そして5〜8時間で基準レベルに戻る典型的な単相性ピークをたどることが観察された(図1C)。血清IL-6は、1〜2時間で増加し、2時間でピークに達して(p<0.01)、そして5〜8時間まで高められたままであり(p<0.01)、TNFαの上昇に続いて高められた(図1D)。循環内のIL-1βのレベルは、TNFα及びIL-6(30〜-50倍)よりも有意に低く、IL-1βは注射後1時間で増加し、そして5時間でピークに達し(p<0.01)、その後8時間で基準レベルに戻る(図1E)。
【0150】
アクチビンAの放出ピークは、rhホリスタチン-288の投与に影響されなかった。LPS投与後の循環内へのアクチビンA放出は、さらに迅速、かつ、力強く、1時間でピークに達して、そして5時間以内に基準レベルに戻った(図2A)。興味深いことには、rhホリスタチン-288を注射したマウスにおいてLPS投与後5〜8時間(p<0.03)のピーク期間全般にわたって、循環マウス・ホリスタチン-288濃度が有意に抑制された(図2B)。その上、TNFα放出は、LPS注射前のrhホリスタチン-288投与により、有意に抑制されたが(50%の抑制)(p<0.01)、放出の特性は顕著に変わることはなかった(図2C)。逆に、IL-6放出は、絶対的な量及び時間の両方で変化した。興味深いことには、IL-6のピーク濃度は、LPS前にrhホリスタチン-288投与したマウスにおいて、約2倍まで有意に上昇した(p<0.01)(図2D)。さらに、IL-6の増加は、rhホリスタチン-288の存在においてより早く生じ、LPSだけを与えたマウスにおける2時間と比べて1時間でピークに達した。IL-1βの放出は、LPSだけを与えたマウスと比べた時に、rhホリスタチン-288の存在下でそれほど歴然としていなかった(図2E)。その上、rhホリスタチン-288存在下で血清濃度の上昇がより早く起こるように特性が同様にシフトし、LPSだけを与えたマウスにおける5時間と比べて2時間でピークに達した(p<0.01)。しかし、いずれの時点においてもIL-1β濃度に有意な違いがなかったことに留意すべきである。
【0151】
実施例2
実験的なアレルギー性喘息のマウス・モデルにおけるアクチビン及びホリスタチン
我々のオボアルブミン(OVA)感作及び誘発アレルギー性喘息モデルからの試験的データは、肺の炎症反応の発生中のアクチビン発現の主な変化に注目する。
アクチビンとホリスタチンの区画化が、アレルギー性喘息マウス・モデルで観察され、そして喘息及び嚢胞性線維症患者からの肺組織内の様々な細胞部位におけるアクチビン発現が観察された(図3)。アクチビン分泌の動態をマッピングし、BALFにおけるピーク濃度(図4A)がピーク炎症と好酸球増加(図4B)、及びIL-4産生(図4C)と一致することが分かった。
【0152】
肺におけるアクチビン発現の免疫組織化学分析は、アクチビンが対照(生理食塩液)マウスからの気道上皮において発現されることを示す(図5A)。しかし、4回目のOVA誘発後(8日目)、気道は上皮細胞肥大とアクチビン発現の著しい喪失を伴う重大な変化を経験する(図5B)。これらの変化は、17日目(最後の誘発の10日後)まで続くが、アクチビン発現は、隣接する気道間、そして同じ気道内でさえ一定しなくなる(図5C)。まとめると、これらの発見は、あらかじめ蓄えられていたアクチビンが炎症反応中に周囲の組織内に放出されることを示す。正常な気道形態への一般的な傾向、及び後の時点でのアクチビン発現が、この再構築過程が可逆的であることを示唆する。最後に、予備的な免疫組織化学分析が、アクチビンに関して見られたパターンと非常に類似した、OVA誘発後の気管支上皮におけるホリスタチン発現の喪失を明らかにする。
【0153】
実施例3
肺のアクチビン及びホリスタチン発現の特徴づけ
マウスにおけるアクチビン及びホリスタチンmRNAの発現と、アクチビン・レセプターの区画化
【0154】
アレルゲンとしてOVAを用いた感作及び誘発プロトコールを使って、我々は炎症反応規模と、気管支上皮とBALFとを対比して発見されたアクチビン及びホリスタチン発現の差異的な制御との相関関係を発見した。アクチビン・タンパク質を気管支上皮細胞において劇的に減少させることの発見は、アクチビン及びホリスタチン発現が免疫処置プロトコール中、及びそれに続いて複数の時点で評価するべきであることを命じる。マウスを、0及び12日目にOVA(水酸化アルミニウム中に50μg)を用いて感作し、24、26、28、及び30日目にOVA(25μg)の気管内挿管によって誘発した(Hardy et al., 2003, Am J Respir Crit Care Med 167:1393-1399)。対照マウスには、OVAの代わりに生理食塩液が与えられる。4回の各々のアレルゲン誘発後に、並びに最終OVA誘発後2、4、7、10、及び20日目に、マウスを屠殺する(1群につきn=6)。免疫組織化学法をホルマリンによって固定した肺で実施する。アクチビンとホリスタチンを、マウスと交差反応する特異的な抗体(E4、ヒト・アクチビンβAサブユニットに対して産生されている;2E6、ヒト組み換えホリスタチンに対して産生されている);対照の役割を担うアイソタイプの対応抗体を用いて検出する。一次抗体を、適当な抗マウス・ホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ抗体を用いて検出する。BALF及び血清中のアクチビンAの計測は、ヒト組み換えアクチビンA標準を使った確立された酵素結合ELISAプロトコールに従う(Knight et al., 1996、上記)。BALF及び血清中のホリスタチン濃度を、不連続(discontinuous)放射免疫アッセイを使って計測する(O'Connor et al., 1999、上記)。肺組織内のアクチビン及びホリスタチンmRNAの定量のために確立されたリアルタイムRT-PCRプロトコールを使用する。また、どの細胞がアクチビンに対して応答性であるかを判断するためのI型及びII型アクチビン・レセプターの発現を評価するために免疫組織化学(Santa Cruz Biotechnology)が使用される。タンパク質局在のシフトに付随したmRNAの区画化のあらゆる変化を計測するためのアクチビン・レセプターmRNAの局在を測定するために、より少ない時点数で、非放射性in situハイブリダイゼーションを実施する。上皮及び気管支粘膜下層のアクチビン及びホリスタチンの染色度を、0=ない、1=弱い、2=中程度、3=高強度の等級により二重盲検法を使って採点する。各マウスからの内径150〜200μmの10本の細気管支を、個々のマウスに関する採点に至るまでに分析する。
【0155】
ヒト気道疾患におけるアクチビン及びホリスタチンの発現
正常、喘息、及び嚢胞性線維症の肺組織、並びにBAL(先の方法を参照のこと)におけるアクチビン及びホリスタチン発現の詳細な免疫化学的分析を実施する。メルボルンのアルフレッド病院の心肺移植部門の協力で移植時に切除した保存された及び予定される肺組織サンプル(重症嚢胞性線維症n=20)から組織標本を得る。喘息組織は、保存された切除肺組織、及び併発性の診断理由のために気管支鏡検査を経験した喘息患者からの予定される気管支内バイオプシー組織から入手可能である(n=10)。知られている気道疾患履歴のない非喫煙者からの年齢対応対照気道を、解剖病理学部によって提供される新鮮な死後検体から採取する(n=20)。組織を、肺切除時に近位気道(右肺下葉気管支)から採取する。検体を、以下の:(1)以後のグリコール・メタクリレート(GMA)内への包埋のために−20℃でプロテアーゼ・インヒビターを含む冷アセトン、及び(2)続くパラフィン包埋のためにエタノール及びホルマリンの各々で固定する。
【0156】
実施例4
アクチビン及びホリスタチンの発現と肺炎症の間の関係の規定
アクチビン及びホリスタチンと炎症反応の規模の間の関係を特徴づけるために、アレルギー性炎症反応の主要な側面を計測する。マウス(1群につきn=6)を、感作し、(目的1で概説したとおり)OVAで誘発し、そして4回の各々のアレルゲン誘発後に、並びに最後のOVA誘発後2、4、7、10、及び20日目に屠殺する。全血から血清を採取し、サンドイッチELISAによってOVA特異的IgE及びIgG1の存在を試験する。肺組織をホルマリン中で固定した後でパラフィン包埋し;炎症の顕微鏡評価のために、及び粘液産生細胞頻度の測定のために、切片をヘマトキシリンとエオジン、及び過ヨウ素酸−シッフで染色する。BAL及び縦隔リンパ腺単個細胞懸濁液をカウントする。BAL細胞のサイトスポット(cytospots)をギムザ染色し、1匹のマウスにつき200個以上の細胞において示差的なカウントを実施し;細胞を形態学的基準によって同定する。OVAで刺激された縦隔リンパ節におけるIL-4、IL-5、IL-13、及びIFN-γを産生する細胞頻度をELISPOT(BD Biosciences and R&D Systems)によって測定する。ELISPOTプレートを、AID ELISPOTリーダーで読み取る。BALFを、細胞カウントを実施した後に採取し、そしてサンドイッチELISAによる前述のサイトカインの引き続いた分析のために−70℃で保存する。加えて、対照、喘息、及び嚢胞性線維症患者からのホルマリン固定肺組織を、マスト細胞(AA1、Dako)、好酸球(好酸球主要塩基性タンパク質、好酸球ペルオキシダーゼ、BD Biosciences)、T細胞(CD、Dako)、及びマクロファージ(CD68、PGM1、Dako)の検出のために免疫組織化学的に染色する。ストレプトアビジン・ビオチン−ペルオキシダーゼ、及び基質としてAEC(Sigma-Aldrich)を用いた3層増幅システム(3-layer amplification system)を使って細胞をカウントする。基底膜下150μmの深さまで画像分析機器(Image-Pro Plus, MediaCybernetics)を使ってカウントを実施し、そして1mm2あたりの細胞として表す。主要なTh2サイトカインの発現を、患者と対照(BD Biosciences)からのBALFにおいて計測する。
【0157】
実施例5
アクチビン及びホリスタチンの発現と気道再構築の相関
正常なヒト(n=20)、喘息患者(n=10)、及び嚢胞性線維症患者(n=20)のヒト肺からの保存された及び予定されるサンプルの再構築事象を分析する。以下の:(i)上皮下基底膜の肥厚化、(ii)線維芽細胞の増殖、(iii)筋線維芽細胞の過形成、(iv)気道平滑筋肥大/過形成、及び(v)血管形成を含む再構築応答の主要な指標の計測のために形態学的画像解析及び免疫組織化学が使用される。上皮下基底膜の厚さ及び血管形成を、十分に確立したプロトコールを使って計測する(Li et al., 1997, Am J Respir Crit Care Med 156:229-233; Wilson et al., 1997, Clin Exp Allergy 27:363-371; Orsida et al., 1999, Thorax 54:289-295)。気道平滑筋の肥大及び過形成を、μm(核と交わる直径)で平滑筋細胞の直径を、及び気管支粘膜下層内の平滑筋のパーセンテージを計測することにより、ヘマトキシリン&エオジン染色した切片上で評価する(Image-Pro Plus)(Benayoun et al., 2003, Am J Respir Crit Care Med 167:1360-1368)。加えて、気道平滑筋の肥大を、0〜3の等級(目的1を参照のこと)によってα-平滑筋肉アクチン及びミオシン軽鎖キナーゼの発現(Sigma-Aldrich)の強度を採点することによって免疫組織化学的に評価する(Benayoun et al, 2003、上記)。線維芽細胞の増殖を、増殖細胞核内抗原に対して特異的な抗体(PCNA、Dako)を使ってホルマリン固定切片上で免疫組織化学的に評価する。線維芽細胞を、形態学的な基準及びプロリル-4-ヒドロキシラーゼ(Dako)に対する染色を使って同定する。基底膜下のPCNA陽性線維芽細胞の数をカウントし、基底膜の長さに対して標準化し、そして定量化可能なバイオプシー領域1mm2あたりで表す(Image-Pro Plus)。全ての標識が各患者のための少なくとも2つの連続切片で計測する。
【0158】
実施例6
ホリスタチン処置がマウス・モデルにおいて肺炎症を防ぎ、そして消散を促進するかどうかの調査
アクチビンの発現及び放出のホリスタチン調節−急性喘息モデル・マウス
アクチビン機能は、相当数の結合タンパク質によって制御され、最もよく研究されているものは高親和性結合タンパク質、ホリスタチンとのその相互作用である。ヒト組み換えホリスタチンへの結合が、アクチビン・レセプターとの相互作用を効果的に妨げ、それによりアクチビンAの生物学的な作用を中和する(Phillips, 2000, Bioessays 22:689-696)。マウス喘息モデルを使って、肺、BAL、及び血清におけるアクチビンの発現及び放出を調節するホリスタチンの能力を、異なるホリスタチン用量及び投与経路を比較して評価した。LPS注射の0.5時間前の1匹の成体マウスにつき1μgのホリスタチンの腹腔内注射が、4時間後に見られたホリスタチンの上昇を妨げて、そして炎症誘発性サイトカイン(TNF-α及びIL-1β)の放出を抑制するが、一方で、アクチビン放出は損なわれない。このように、ホリスタチン処置は、アクチビンによって誘発される効果を妨げるが、その放出は妨げない。第一に、マウス(1つの群につきn=6)に、4回の各々のOVA誘発の0.5時間前に1匹のマウスにつき1μgのホリスタチンを腹腔内経路で与える。さまざまな投与の用量及びタイミングで試験して、この経路のホリスタチン・デリバリーを鼻腔内投与及び気管内投与と比較する。対照マウスには生理食塩液を与える。アクチビンA及びホリスタチンの発現を、BALFのELISA、そして4回の各々のOVA誘発、並びに最後のOVA誘発後2、4、7、10、及び20日目に続く肺(目的1を参照のこと)におけるRT-PCR及び免疫組織化学によって監視する。後者の時点は、アクチビンAの発現が未処理OVAマウスにおける誘発前レベルにもどるかどうかを明らかにし、そしてホリスタチンによって誘発されたアクチビンの遮断の継続時間に関する目安を与える。
【0159】
第二に、ホリスタチンによるアクチビンAの中和がアレルギー性肺炎症の重さ及び継続時間を減少させるかどうかを判断する場合の測定。特異的IgE及びIgG1、好酸球増加、粘液分泌過多、及びサイトカイン産生を含めた主要な「アレルギー」パラメーターを計測することによって肺炎症を軽減するホリスタチンの能力を調査する。マウスを4回の各々のOVA誘発、並びに最後のOVA誘発後2、4、7、10、及び20日目の後に屠殺する。血液、BAL、肺、及び縦隔リンパ腺を、炎症細胞、OVA特異的IgE及びIgG1、好酸球増加、粘液産生、並びにIL-4、IL-5、IL-13、及びIFN-γのELISPOT分析(目的1のとおりの方法)の調査のために採取する。また、TGF-βは免疫制御及び組織の再構築にも係わっているので、BALF中のTGF-β濃度を計測し(R&D Systems)、及び組織切片内のTGF-β発現を免疫組織化学法(Santa Cruz Biotechnology)によって計測して、その産生がアクチビン/ホリスタチンによって調節されるかどうかを判断する(Lee et al, 2001, JExp Med 194:809-821)。これらのデータは、アレルギー性肺炎症を改善するアクチビン中和の能力に関する情報を提供する。
【0160】
アクチビンの発現及び放出のホリスタチン調節−慢性喘息モデル・マウス
持続性気道炎症及び慢性再構築を誘発するために、最長6週間まで非免疫寛容原性の時間間隔での反復抗原投薬を、慢性喘息モデル・マウス(月曜日と木曜日の2回の誘発/週)において実施する。(Coyle et al., 1996, J Immunol 156:2680-2685)。マウスを、先に最適化された用量及び経路にしたがってホリスタチンで処理する。このマウス・モデルにおける再構築に対するホリスタチン処置の効果を、以下の:(i)上皮下基底膜の肥厚化、(ii)血管形成、(iii)平滑筋の肥大、及び(iv)粘液細胞誘導を計測することによって評価する(Lee et al., 2001, supra; Kumar et al., 2002, din Exp Allergy 32:1104-1111)。上皮下基底膜の厚さ、血管形成、及び平滑筋肥大を評価する。粘液分泌杯細胞の化生、及び/又は過形成を評価する。これらのデータは、気道再構築反応を阻害するホリスタチンの能力に関する情報を提供する。
【0161】
統計分析
各データセットの分布を、分析前に正規性について検定する。多重比較のためのボンフェローニの補正を伴う一元配置ANOVAを使って、正規分布したデータを分析する。群間の個々の比較を、両側スチューデントt-検定を使って行なう。アクチビン/ホリスタチンの発現と、炎症又は再構築指標のいずれかとの間の関係を、ピアソン相関を使って分析する。
正規分布していないデータを、ノンパラメトリック・クラスカル−ウォリス検定の後にダンの多重比較の事後検定を使って分析する。群間の個々の比較を、ノンパラメトリック・データに関して両側マン-ホイットニーU-検定を使って行なう。アクチビン/ホリスタチンの発現と、炎症又は再構築指標の間の関係を、スピアマンの順位相関を使って検討する。0.05以下のP値を有意であるとみなす。
【0162】
実施例7
局所および全身性炎症中のアクチビンβBの重大な変化
材料と方法
実験計画法
全身性LPSモデルのために、雄C57/BLマウスに、100μgのフェノール精製LPSを腹腔内(ip)注射した(Sigma:E.コリ(0127:B8))。PBSを注射した対照マウスを、0時間目で屠殺し、そして残った動物を0.5、1、3、5、8、12、及び24時間に、並びにLPS注射後に屠殺した(6匹/時点)。独立した実験において、アクチビンの効果を、アクチビン結合タンパク質であるホリスタチンを用いたマウスの前処理によって中和した。上記ホリスタチンは、結合し、そしてアクチビン形態の効果を除去することができる[Nakamura et al., 1990, Science 247:836-838]。この実験で、マウスを、LPS注射の30分前にヒト組み換えホリスタチン-288(1μg)を用いて腹腔内経路で前処理した。マウスを、ホリスタチン注射の30分後に(0時間目)、そしてLPSに関しては同時に屠殺した。屠殺の時点で、発現レベルについて実験する組織を氷冷Trizol(Invitrogen Life Technologies)中に入れ、そして後のRNA抽出のために−80℃で保存した。また、組織を、後の固定及び免疫組織化学的研究のため、70%エタノールに移す前にホルマリンの中に入れた。
【0163】
急性肝炎モデルのために、雄C57/BL6マウスに、750μl/kg BWのCCl4(Sigma)を腹腔内経路で注射した。PBSを注射した対照マウスを0時間目で屠殺し、そしてCCl4注射後1、2、4、8、12、24、36、48、及び72時間に残りの動物を屠殺した。RNA抽出及び免疫組織化学的研究のために、先に記載のとおり、組織を採取した。
RNA抽出を、先に記載した各々の時点からの3〜5個の組織サンプルで実施した。製造業者の提言に従ってTrizolを使って、RNAを抽出した。各サンプルについて、約10μgのRNAを、製造業者のプロトコールに従ってDNAseI(Ambion Inc.)で処理した。各サンプルのRNA濃度を決定し、SuperscriptIII逆転写酵素キット(Invitrogen Life technologies)を使い、そして製造業者によって提供されたプロトコールを使って1μgを逆転写してcDNAを得た。発現レベルのリアルタイム分析を、以下の遺伝子:GAPDH、アクチビンβAサブユニット、及びアクチビンβBサブユニットについて行なった。また、インヒビンα-サブユニットmRNA発現を、標準的なサーモサイクラー法を使って実験したが、定量分析を可能にするには発現レベルが一貫して低すぎた(データ未掲載)。
遺伝子のリアルタイム定量のために利用した特異的プライマーは以下のとおりだった(5'-から3'):
【0164】
【化2】

【0165】
プライマーを、Rocheライト・サイクル・リアルタイムPCRシステムでの使用のために特別に設計した。PCR産物を分離し、配列決定し、そしてそれらが所望の遺伝子産物を表したことを確認するためにBLAST分析を使用した。最大感度に最適化した条件でRoche SYBRグリーン・マスターミックス(Light cycler Fast start DNA Master SYBR green、Roche Diagnostics GmbH)を使って、リアルタイム分析を実施した。全てのプライマーのアニーリング温度は60℃であった。分析全体をとおして使用した標準及びQCsを、着目の遺伝子の発現レベルが高かった実験サンプル由来の貯留したcDNAから調製した。標準cDNAの段階希釈は、300倍の発現範囲をカバーした。実験用のcDNAサンプルを、検量線の範囲内に希釈し、全てのcDNAを等分して、そして−20℃で保存した。各サンプルを、独立した分析の実施で少なくとも2回、着目の3つ全ての遺伝子産物について分析した。全ての遺伝子産物に関するアッセイ間のQC再現性は、22%未満のCVを得た。
【0166】
免疫組織化学
パラフィン切片を、脱ろうして、そしてスライドを0.01Mのクエン酸塩緩衝、pH 6.0中に浸し、電子レンジで加熱し(βA又はβBについてそれぞれ強で2.5分間又は5分間、その後両方について弱で5分間)、〜20分間で4℃に冷却し、そして5分間水中で洗浄することによって抗原を回復した。内在性ペルオキシダーゼを、10分間の3%のH2O2で遮断し、そしてスライドをアクチビンβAのために1時間ブロックするか(10%の正常なウサギ血清+CASブロック、Zymed Laboratories Inc., CA, # 00-8120)、又はアクチビンβBのためにTris緩衝化生理食塩液(TBS)中20%の正常なヤギ血清/0.1%のTween20で1時間ブロックした。前記ブロッキング溶液を取り除き、そして切片を、アクチビンβAサブユニット(E4、1%のウシ血清アルブミン(BSA)/TBS中に10μg/ml、Oxford Brookes University)、又はアクチビンβBサブユニット(ブロッキング溶液中に希釈して2μg/ml、Jones et al., 2000)に特異的な抗体と一緒に4℃で一晩インキュベートした。洗浄後に、アクチビンβAスライドを、1:500に希釈したウサギ抗マウスIgG2b-HRP(Zymed, # 61-0320)中で2時間インキュベートし、そしてTris緩衝化NaCl(TBS)0.05% Tween-20、pH7.5中で2度洗浄し、その後MilliQ H2O中で洗浄した。反応産物を、3,3-ジアミノベンジジン・テトラヒドロクロライド(DAB)基質キット(Zymed, #00-2014)で現像し、そして切片をヘマトキシリンで15秒間対比染色した。全ての洗浄ステップは、TBS/0.05% Tween-20中で行なった。アクチビンβBスライドについて、切片を洗浄し、そしてDako Envision HRP(ウサギ、#K4003)と一緒に室温で1時間インキュベートした。前記切片を、TBS/Tween中で再び洗浄し、そして反応産物を、DABで現像し、続いてアクチビンβAに関しては対比染色した。陰性対照切片を、アクチビンβA特異的抗体の代わりに精製マウス骨髄腫IgG2Bタンパク質(Zymed、#02-6300)と、又はアクチビンβB特異的抗体の代わりに非免疫化ウサギIgG(Dako、#X0903)と一緒にインキュベートした。
【0167】
データ分析
各サンプルについて、アクチビンβA及びβB mRNA発現レベルを、そのサンプルのGAPDH発現レベルと相対的に表した。したがって、全部の0時間目のデータを1に標準化し、そして引き続く時点のデータを、その時点と相対的に表した。全てのデータを、平均±SEM値と表した。値は、通常は1つの時点につき評価した3つの組織サンプルに由来するが、しかし、対照で、及び初期のいくつかの時点でより多くのサンプルを評価した。
【0168】
結果
LPSを用いた誘発後の急性全身性炎症モデル・マウスにおいて、アクチビンβA及びβBサブユニットの肝臓mRNAレベルを調査した。アクチビンβAサブユニットmRNAは、LPSの1時間後に発現レベルのわずかな増加(対照レベルの2倍未満)を示したが、しかし1〜3時間の発現レベルは著しく減少し、そして3〜8時間の(対照レベルの25%未満への)はっきりした抑制が明白だった(図6上のパネル)。12時間まで、発現は対照レベルに近づいていて、そして24時間までに処置前レベルに戻っていた。アクチビン結合タンパク質及び拮抗薬、ホリスタチンでの処置は、アクチビンβAサブユニットmRNAレベルの迅速な抑制をもたらした。
対照的に、肝臓βBサブユニットmRNAレベルは、アクチビンβAサブユニットとは完全に異なる特性を示し、その時点で発現が平均して対照レベルの35倍を越える5時間での最大発現レベルに達するまでLPS直後に上昇した(図6、下のパネル)。5〜12時間に、この発現は徐々に減少したが、しかし、12時間で、発現はまだ高められたままであった(平均して、対照レベルの7倍)。LPS処置後24時間で、アクチビンβB mRNAレベルは、対照レベルを〜5倍上回たままであった。アクチビンβAサブユニット発現に関しては、βBサブユニット発現に対するLPS関連効果のはっきりした抑制を伴って、アクチビンβBサブユニット発現パターンはホリスタチン前処理によって変えられた。
【0169】
CCl4を用いた誘発後の急性肝炎モデルにおいて、アクチビンβAサブユニット発現は、1及び2時間で、平均発現レベルが対照レベルの40〜50%しかないように、CCl4処置に続いてわずかに減少した(図7、上のパネル)。対照的に、注射後4時間までに、平均βA mRNAは、中程度に(80%)高められ、そして、36時間までに処置前レベル付近まで減少した。アクチビンβAサブユニットとは対照的に、アクチビンβBは、対照レベルを13.5倍上回る増加を伴ったCCl4注射後24及び36時間の発現における最も大きな変化を示した(図7、下のパネル)。
両炎症モデルにおいて、インヒビンα-サブユニットの発現を調査したが、しかし、定量分析を可能にするには発現レベルが一貫して低すぎた。したがって、アクチビンβBサブユニットmRNAの重大な変化は、高いインヒビン・ダイマー(α-βBダイマー又はインヒビンB)の形成をもたらすことはありそうにないが、二量体化してアクチビンB(βBBのダイマー)を形成することはあり得る。アクチビンβA mRNAのほんのわずかな変化を考えると、高いβB mRNA発現がヘテロダイマー・アクチビンAB(βAB)の顕著な形成をもたらすことは比較的に起こりそうにない。
【0170】
アクチビンβA及びβBサブユニットに特異的な抗体を使用して、急性全身性モデルのLPS誘発、及びCCl4を使った急性肝炎モデルの両方で肝臓の免疫学的局在性を調査した。正常な肝臓におけるアクチビンβAサブユニットの局在は、肝細胞内であって、より特に大部分は中心静脈周囲のものであった(図8)。LPS誘発に続いて、局在は、LPSの約5時間後に縮小するように見え、そして12時間までに処置前の分布に戻った。しかし、アクチビンβBサブユニットについて、局在は、肝臓の門脈管領域を囲む肝細胞において最も明白であり、それで中心静脈の周囲でより少なかった(図9)。しかし、局在は、LPS後5時間で減少したように見え、そして12時間までに処置前のパターンに戻った。また、肝臓の末梢領域において肝細胞局在の喪失があるようにも見えた(図9)。急性肝炎のCCl4モデルにおいて、サブユニットは、βA及びβBサブユニットについて、それぞれ中心静脈及び門脈管を囲む肝細胞に局所した(図10a及び10b)。しかし、CCl4処置の36時間後に、アポトーシス/ネクローシスになる運命にある肝細胞内にアクチビンβAサブユニットの局在があるように見え(図10c)、一方で、これらの領域においてアクチビンβBサブユニットの局在はなかったか、又はわずかであった(図10d)。
【0171】
実施例8
重症外傷性脳損傷の患者においてアクチビン及びホリスタチンが上昇する
背景
外傷性脳損傷(TBI)は、若年成人の発病及び死亡の主な原因の1つである(Van Baalen et al., 2003, Disability and Rehabilitation 25 9-18)。様々なサイトカインの放出、脳グリア細胞の活性化、並びに様々な細胞及び組織の損傷応答を含む様々な免疫学的経路の活性化がTBIに続いて起こる。外傷後の炎症反応から生じる相当数の炎症応答性サイトカインがTBI患者の血清及び脳脊髄液(CSF)内で検出された。アクチビンAとその結合タンパク質、ホリスタチンの計測は、この設定で測定されてこなかったため、それがこの研究の目的だった。これらの結果は、両方のタンパク質、特にアクチビンが反応性であり、そしてTBI患者のCSF内で上昇したことを示す。結果として、これらの発見は、TBIによって引き起こされた炎症反応のこの成分を中心にしてベースとした新規診断的及び治療的機会に関する新しい領域を提供する。
【0172】
材料と方法
患者を、主に自動車事故によるTBI後にメルボルンのアルフレッド病院に収容できた。より多くの研究の中のこのサブセットにおいて評価された6人の患者の全てが男性であり、16〜50歳の年齢の範囲に及んだ。彼らは、アルフレッド救急部への受け入れ許可を採用する3〜7のグラスゴー昏睡尺度(GCS)を有した。大部分の場合で、親族によって署名された倫理的な承諾を受けて、この患者たちからの対を成す血清とCSFサンプルを得た。サンプルを、TBIに関連して毎日採集した。サンプルを、170gで10分間遠心分離し、等分し、そして分析まで冷凍しておいた。
【0173】
先に記載のとおり酵素結合免疫測定法(ELISA)(Knight et al., 1996、上記)を使って血清アクチビンA濃度が測定した。前記アッセイは、「総」アクチビンA、すなわち遊離の成分及び結合した成分の両方を計測する。アッセイ標準は、ヒト組み換えアクチビンA(National Hormone and Pituitary Program (NHPP), Torrance, CA, USA)だった。平均アッセイ感度は、0.01ng/mlであり、そしてアッセイ内及びアッセイ間変動係数の平均(CVs)は共に9%未満だった。
血清中のホリスタチン濃度を、同様に遊離形態及び結合形態の両方を計測する、先に記載のとおりヒト・ホリスタチンに対して確認した放射免疫測定法で計測した(O'Connor et al., 1999、上記)。利用した標準は、ヒト組み換えホリスタチン288であり、アッセイ感度は、2.0ng/mlであり、そしてアッセイ内及びアッセイ間変動係数は共に4.9%未満であった。
【0174】
CSFサンプルについて、アクチビン及びホリスタチン・アッセイは、先に記載のとおりであった。しかし、使用した標準希釈剤は、サンプルのタンパク質濃度と合わせるためにPBS中に0.05%BSAだった。PBS中にBSAの20%溶液(25μL)を、CSFサンプルを加える前にアクチビンA ELISAのウェルに加えた、なぜならこれがアッセイの再現性を高めることを発見したからである。
【0175】
結果
この一組のTBI患者の分析は、アクチビンの濃度がTBI後に高められたことを示した(図11)。これは、特にCSF中のアクチビンAに関する場合であった。CSF中のアクチビンの経時的なパターン及びレベルは、各々の患者でわずかにしか変化しないが、しかし一般的に、レベルはTBI事件の1〜2日後に個々の患者における最高値になった。ホリスタチンについて、患者の一部において、血清又はCSFレベルにわずかな増加があったが、CSFアクチビンに関して見られる程度ではなかった。CSFアクチビン濃度がTBI後に上昇を示したので、これが中枢神経系(CNS)内、特に脳内の炎症経路の活性化を反映していると思われ、そして外傷及び炎症がこの臓器におおむね限定され、及び全身性炎症反応の一部分ではないことを示唆する。
【0176】
実施例9
リポ多糖で誘発されたサイトカイン放出におけるアクチビン及びホリスタチンの役割
背景
アクチビンAは、マウスにおけるリポ多糖(LPS)投与に対する応答で放出される。この放出は、その後のサイトカイン・カスケードで早い時期に生じて、そして主要な炎症誘発性サイトカイン、腫瘍壊死因子-α(TNFα)及びインターロイキン-6(IL-6)の放出に先行するように見える。LPS注射より前にアクチビン拮抗薬、ホリスタチンを投与した時、これらのサイトカインの放出を変化させた。これは、炎症反応の一環としてのこれらのサイトカインの放出の調節にアクチビンが関与していること、及び炎症性疾患中のサイトカイン放出を修正する治療用アジュバントとしてホリスタチンを使用することができることを示した。
【0177】
方法
以下の実験のために利用した方法は、LPS誘発炎症反応のサイトカイン放出の調節においてアクチビンの活性に対する用量依存効果を同定するために2つの異なる用量のホリスタチンを使用したことを除いて、実施例1で記載したものと同じである。1μgのホリスタチンを使った実施例1の実験を受けて使用された2つの用量は、2μgと0.5μgだった。
【0178】
結果
アクチビン及びホリスタチン放出特性は、LPS刺激前のホリスタチンの0.5μg、1μg、又は2μgの用量の間でも有意に変化しない。TNF放出の抑制レベルは、LPS投与前の以下の別個の3つのホリスタチン用量(0.5、1、及び2μg)で同じである。IL-6の放出は、LPSだけを投与したマウスで観察された増加と比べてLPSの前に1μgのホリスタチンを投与したマウスにおいて約250%増加する。しかし、IL-6放出は、LPSの前に0.5μgのホリスタチンを投与したマウスにおいて50%までしか増加しない。LPSの前に2μgのホリスタチンを投与したマウスにおけるIL-6の放出は、LPSだけを注射したマウスで観察されたものと同じである。
【0179】
結論
TNFαの放出は、以下のホリスタチンの0.5、1、及び2μg用量の投与において類似していた(図12、13、並びに2A及び2B)。
LPSだけを投与したマウスにおけるIL-6の放出(約20000pg/ml)と比べて、LPSの前に1μgのホリスタチンを投与したマウスにおけるIL-6放出は増加した(約50000pg/ml)。ホリスタチン用量が2μgへと2倍になった時、IL-6の放出は増えなかった。むしろ、それは、もとのLPSだけを投与したマウスにおいて観察されたレベルへと実質的に減少した(約20000pg/ml)。しかし、LPS投与の前に0.5μgのホリスタチンを投与したマウスにおいて、IL-6放出は、LPSを投与したマウスにおいて観察されたレベルを上回るレベルに増加したが(約30000pg/ml)、しかし、LPSの前に1μgのホリスタチンを投与したマウスにおいて観察されたのと同一程度までは増加しなかった。これは、2μg用量より高いとLPSだけを与えたマウスで見られたレベルへの抑制に至る最高1μg/マウス用量までの用量依存様式での、アクチビンによるサイトカイン放出の調節に対するホリスタチンの効果を証明する。サイトカイン応答の調節に使用されるホリスタチン用量は、あらゆる治療的適用の重大な意味を持つ要素である。
【0180】
TNFα放出を調節するアクチビンの能力を遮断するために必要とされるホリスタチン用量はIL-6放出を調節するのに必要とされるほど高くないと思われる。これはTNFαがIL-6より早く放出されるTNFαとIL-6の異なる経時的放出パターンと関係があり、そのため、もしかすると炎症反応の初期刺激因子、例えばアクチビンの存在に感受性がより高いかもしれない。
【0181】
実施例10
アクチビン及びホリスタチンが、やけどの治癒過程中に発現される
背景
やけどは、やけどに冒された身体の表面積、並びにやけどの深度、すなわち一部又は全層に依存したそれらの重症度によって重傷を表す。軽度のやけどは、局所炎症反応とそれに続く治癒過程を伴う局所損傷を生じる。後者は、そのやけど以前の状態に皮膚を戻すことができるか、又はコラーゲンの沈着を伴う線維化過程による瘢痕をもたらすかもしれない。
【0182】
より深刻なやけどにおいて、体液の濾出、その上、熱傷による組織の死滅を伴った重大な炎症反応が起こる。ショックと死をもたらす体液平衡の重大な変化がある可能性がある。大きなやけどでの治癒過程の間、移植目的には不十分な皮膚しかなく開口表面を感染と炎症を起こしやすいままにしている。多くの場合、炎症は、コラーゲンの沈着と重症な瘢痕化につながる線維化過程をもたらす。
当該実施例は、やけどの患者の循環内のアクチビンAとホリスタチンのレベルを分析する。同様に、研究されるものは、治癒の異なる段階でやけどの患者から得られたバイオプシー中のアクチビンA及びホリスタチンの局所発現である。
【0183】
材料と方法
アクチビンAとホリスタチンのレベルを、熱傷後の異なる段階にある4人のやけど患者からの血清サンプルで計測した。加えて、アルフレッド病院やけど治療室にて彼らの日常的な対応の一部としてやけど患者(n=3)の損傷領域から得られた組織サンプルを、ヘマトキシリンとエオジンによって染色した切片を使った光学顕微鏡観察によって、並びにアクチビンAとホリスタチンの発現を測定するための免疫細胞化学によって調査した。
【0184】
血清アクチビンA濃度を、酵素結合免疫測定法(ELISA)(Knight et al., 1996、上記)を使って先に記載のとおり測定した。前記アッセイは、「総」アクチビンA、すなわち遊離成分及び結合成分の両方を計測する。アッセイ標準は、Biotech Australia製のヒト組み換えアクチビンAだった(Robertson et al., 1992)。平均アッセイ感度は0.01ng/mlであり、そしてアッセイ内及びアッセイ間の変動係数の平均(CV’s)は、共に9%未満だった。
【0185】
血清ホリスタチン濃度を、先に記載のとおり、遊離形態及び結合形態の両方を同様に計測する、ヒト・ホリスタチンについて確認された放射免疫測定法を用いて計測した(O'Connor et al., 1999、上記)。利用した標準及びトレーサーとして使用したものは、ヒト組み換えホリスタチン288(National Hormone and Pituitary Program (NHPP), Torrance, CA, USA)であり、アッセイ感度は2.0ng/mlであり、そしてアッセイ内及びアッセイ間の変動係数は、共に4.9%未満だった。
【0186】
アクチビンとホリスタチンに関する組織切片の免疫局在性について、パラフィン切片を、脱ろうして、そしてスライドを0.01Mのクエン酸塩緩衝、pH 6.0中に浸し、電子レンジで加熱し(強で2.5分間、弱で5分間)、〜20分間で4℃に冷却し、そして5分間水中で洗浄することによって抗原を回復した。内在性ペルオキシダーゼを3%のH2O2で遮断し、そしてスライドを1時間ブロックした(CASブロック、Zymed Laboratories Inc., CA, # 00-8120)。切片を、10μg/mlのアクチビンβA-(E4、IgG2b)、又はホリスタチン特異的(2E6)抗体(IgM)中、4℃で一晩インキュベートした。洗浄後に、スライドを、1:500に希釈した抗マウスIgG2b-HRP(Zymed, # 61-0320)、又はIgM-HRP(Zymed, #61-6820)中で2時間インキュベートし、そしてTris緩衝化NaCl(TBS)0.05% Tween-20、pH7.5中で2度洗浄し、その後MilliQ H2O中で洗浄した。反応産物を、3,3-ジアミノベンジジン・テトラヒドロクロライド基質キット(Zymed, #00-2014)で現像し、そして切片をヘマトキシリンで15秒間対比染色した。全ての洗浄ステップは、TBS/0.05% Tween-20中で行なった。抗体を1%BSA/TBS中で希釈した。
【0187】
結果
4人の患者において(図15、パネルA〜D)、アクチビンA及びホリスタチンのレベルは、図Bにおいて見られるようなピークを示す変化をし、そして非常に高いレベルが患者の1人(パネルD)で見られた。後者の患者において、そのレベルは、見込まれるレベルを超えて、そして敗血症患者で見られるレベルに達する非常に顕著な上昇をした(Michel et al., 2003, European Journal of Endocrinology 148: 559-564)。これらの予備調査から、血清のアクチビンAとホリスタチンのレベルは、やけどによる損傷の経過の間で顕著に変化し、そして一部の患者において、そのレベルは、敗血症患者に見られるレベルに達すると結論づけられる。これらの研究は、やけどに関連した炎症反応が、LPS誘発を加えたマウスにおけるこれらのレベルの変化の既知の実施例と同じような、順にホリスタチンを刺激するアクチビンAレベルの増加を起こすという概念と一致している。
損傷後の異なる時点でのやけど領域から得られた組織サンプル内のアクチビンAとホリスタチンの発現部位は、種々の細胞型がこれらのタンパク質を産生できることを証明する。
【0188】
アクチビンAの発現をβAサブユニットの局在として検出し、皮膚の表皮において、アクチビンAは、基底の基底層(S.GE)内にパッチ状の様式で、限定的に有棘層(S.Sp)内に、そして存在すればより濃密に透明層(SL)直下の顆粒層(S.GR)内に局在した(図16及び17)。ホリスタチンは、基底層で緩やかに、有棘層でより大きな範囲で発現されるが、しかし顆粒層では明らかに減少した程度でしか発現されなかった。透明層が厚くなった角質化皮膚中に存在する場合、ホリスタチンは、この部位の細胞に局在した(図16及び17)。メモ切片は、細胞同定の助けとなるようにヘマトキシリン&エオジン(H&E)で染色した。
【0189】
真皮において、アクチビンAは、毛細血管及び小血管(V)の内皮細胞、マクロファージ、及び単球内に、そして存在すれば多形核白血球内に見られる(図18〜20)。線維芽細胞(F)はアクチビンAを包含する。ホリスタチンは、内皮細胞内に存在し、かつ、少量でマクロファージ(M)及び線維芽細胞内に存在する(図18〜20)。治癒不良、炎症、及びコラーゲンの凝集を特徴とする線維化(C)の患者からのバイオプシーにおいて、線維芽細胞、マクロファージ及び単球、並びに白血球(INF)におけるアクチビンAの上方制御があった(図18〜20)。いくつかの領域において、マクロファージ、単球、白血球、及び変性細胞(D)の堆積があり、そして各々がアクチビンAの顕著な局在を示す一方で、ホリスタチンの局在はパッチ状であり、かつ、より低い強度の局在であった(図18〜20)。これらの部位の血管増生の増加は、内皮細胞におけるアクチビンAの明確な、そして高い局在を示す(V)(図18の矢印を参照のこと)(図18〜20)。
【0190】
他の者がブレオマイシン処置後の肺組織におけるアクチビンAの上方制御と、結果的に生じる肺線維化との相関関係を見つけたことを考えると(Matsuse et al., 1995, American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology 13 17-24)、線維芽細胞におけるアクチビンAの高い局在は、皮膚に対する熱傷の後に生じた真皮の線維化に関与する可能性が高い。また、類似した相関関係は、アクチビンAの上方調節と、ヒトにおける肺の線維化との間でも見つかっており(Matsuse et al., 1996, American Journal of Pathology 148 707-713)、そしてOhgaら(Ohga et al., 1996, Biochemical and Biophysical Research Communications 228 391-396)は、アクチビンAが肺線維芽細胞の増殖を促進し、そしてコラーゲンを産生する筋線維芽細胞へのそれらの分化を促進することを示した。
【0191】
ホリスタチンがアクチビンAの作用を中和して、肝線維症の進行を弱めることができると考えると、やけどによって引き起こされた炎症反応によって誘発された線維化の進行を阻止するためにそれを使用することができる。やけどの後に一部の患者で見られたアクチビンAとホリスタチンの上昇は、マウスにおいてLPSによって誘発された変化に似たこの炎症過程におけるアクチビンAの関与を示している。マウスにおけるLPS誘発の前に与えられたホリスタチンがサイトカインのパターンを変えることができることを示した先の実施例は、アクチビンの生物学的作用を遮断することでサイトカイン・カスケードを変えることができるという証拠を提供する。これらのデータは、熱傷によって誘発されたアクチビンAの生物学的作用をホリスタチンによって遮断することが、組織損傷の結果であるアクチビンAの作用を遮断するであろうことをさらに示す。
【0192】
当業者は、本願明細書中に記載の本発明が具体的に記載したもの以外の変更及び修飾の余地があることを認識する。当然のことながら、本発明はそういった変更及び修飾の全てを含む。また、本発明は、個別に若しくは集合的に本願明細書中に言及されるか又は示されている全てのステップ、特性、組成物、及び化合物、並びにいずれか2つ以上の上記ステップ又は特性のいずれかの及び全ての組み合わせを含む。
【0193】
【化3】

【0194】
【化4】

【0195】
【化5】

【0196】
【化6】

【0197】
【化7】

【0198】
【化8】

【0199】
【化9】

【0200】
【化10】

【0201】
【化11】

【0202】
【化12】

【図面の簡単な説明】
【0203】
【図1A】マウスにおけるリポ多糖(LPS)の形式での炎症誘発後に起こるアクチビンA放出のグラフ表示である。
【図1B】LPSに応答したホリスタチン放出のグラフ表示である。
【図1C】LPSに応答したTNFα放出のグラフ表示である。
【図1D】LPSに応答したIL-6放出のグラフ表示である。
【図1E】LPSに応答したIL-1β放出のグラフ表示である。
【図2A】LPSの30分前に組み換えヒト・ホリスタチン-288(rhホリスタチン-288)の注射を受けたマウスのLPS注射後に起こるアクチビンA放出のグラフ表示である。
【図2B】LPSの30分前のrhホリスタチン-288投与後に起こるマウスのホリスタチン放出のグラフ表示である。
【図2C】LPSの30分前のrhホリスタチン-288投与後に起こるマウスで放出したTNFαレベルのグラフ表示である。
【図2D】後にLPSの注射が続くrhホリスタチン-288注射後に起こる放出したインターロイキン-6レベルのグラフ表示である。
【図2E】後にLPSが続くホリスタチン注射後に起こる放出したIL-1βレベルのグラフ表示である。
【図3】アクチビンAの(A)気管支上皮と炎症性浸潤における発現、(B)粘膜下平滑筋と血管構造(矢印)上の散在性の発現、及び(C)気管支上皮と別個の炎症細胞(矢印)上の発現の画像である。A及びB、喘息;C、嚢胞性線維症。免疫ペルオキシダーゼ、原本の倍率400倍。
【図4】我々のOVAマウス・モデルにおけるアクチビンA発現と肺炎症の動態のグラフ表示である。(A)ELISAによって計測したBALFにおけるアクチビン濃度、(B)BALにおける好酸球の絶対数、及び(C)ELISPOTによって計測したIL-4産生縦隔リンパ腺細胞の頻度。平均±SEM、n=1時点につき1群あたり5匹のマウス。
【図5】塩対照(A)、及び4回の誘発(challenges)後のOVA感作マウス(B)、並びに4回目の誘発の10日後(C)のアクチビンA発現の画像である。矢印は、肥大した気管支上皮におけるアクチビンA発現の喪失(B)、及び17日目の斑点状の発現(C)を示す。
【図6】LPSの単回腹腔内注射で誘発したマウス肝臓におけるアクチビンβA(上のパネル)とβB(下のパネル)サブユニットの定量的mRNAレベルのグラフ表示である。マウスは、LPS単独で処理したか(ホリスタチン前処理なし、黒丸)、又はLPSの30分前に1μgのヒト組み換えホリスタチン288(ホリスタチン前処理、白丸)で処理したかのいずれかであった。データは、ハウスキーピング遺伝子、GADPHの発現と比較して表した発現レベルを用いてLPSと比較して評価した各時点の平均±SEMとして表した。全ての0時データが値1に標準化され、その後の時点でのデータをその時点と比較して表した。
【図7】CCl4の単回腹腔内注射で誘発したマウス肝臓におけるアクチビンβA(上のパネル)とβB(下のパネル)サブユニットの定量的mRNAレベルのグラフ表示である。データは、ハウスキーピング遺伝子、GADPHの発現と比較して表した発現レベルを用いてLPSと比較して評価した各時点の平均±SEMとして表した。全ての0時データが値1に標準化され、その後の時点でのデータをその時点と比較して表した。
【図8】LPS処置後の様々な時点でのマウス肝臓におけるアクチビンβAサブユニットの免疫学的局在決定の画像である。アクチビンβAサブユニットは、未処理動物(t=0時間)において肝細胞に局在したが、主に中心肝静脈の周辺であった。免疫学的局在決定は、LPS誘発5時間後で減少したように見えたが、12時間までに処置前の局在パターンに戻った(×50)。
【図9】LPS処置後の様々な時点でのマウス肝臓におけるアクチビンβBサブユニットの免疫学的局在決定の画像である。アクチビンβBサブユニットは、未処理動物(t=0時間)において肝細胞に局在し、中心静脈ではなく門脈管を囲んだ領域であった。免疫学的局在決定は、LPS誘発5時間後で減少したように見えたが、12時間までに処置前の局在パターンに戻った。末梢肝細胞(星印)における局在性の喪失にも留意のこと(×50)。
【図10】CCl4誘発後0又は36時間でのマウス肝臓におけるアクチビンβAサブユニット(パネルaとb)、及びアクチビンβBサブユニット(パネルcとd)の免疫学的局在決定の画像である。LPS処置と同様に、アクチビンβBサブユニットは中心静脈ではなく門脈管を囲む領域に局在した一方で、アクチビンβAサブユニットは中心静脈を囲む肝細胞に主に局在した。肝細胞アポトーシス/ネクローシスの領域における36時間の時点でのアクチビンβAサブユニットの局在の一方で、アクチビンβBサブユニットの局在がこれらの領域(星印)にはないことも留意のこと(×50)。
【図11−1】外傷の発生後の様々な日数で得られた頭部外傷患者(パネルA〜E)のアクチビンA及びホリスタチンの血清及び脳脊髄液(CSF)濃度のグラフ表示である。
【図11−2】外傷の発生後の様々な日数で得られた頭部外傷患者(パネルA〜E)のアクチビンA及びホリスタチンの血清及び脳脊髄液(CSF)濃度のグラフ表示である。
【図11−3】外傷の発生後の様々な日数で得られた頭部外傷患者(パネルA〜E)のアクチビンA及びホリスタチンの血清及び脳脊髄液(CSF)濃度のグラフ表示である。
【図12】LPSの前に0.5μgのホリスタチンを投与したマウスにおけるサイトカイン放出のグラフ表示である。
【図13】LPSの前に2μgのホリスタチンを投与したマウスにおけるサイトカイン放出のグラフ表示である。
【図14】LPSの前に0〜2μgのホリスタチンを投与したマウスにおけるIL-6放出のグラフ表示である。
【図15−1】中程度のやけどの4人の患者(パネルA〜D)の血漿アクチビンA及びホリスタチン濃度のグラフ表示である。サンプリングの日はサンプルを採取した1日目に関係しており、やけどの日と必ずしも関係があるわけではなかった。
【図15−2】中程度のやけどの4人の患者(パネルA〜D)の血漿アクチビンA及びホリスタチン濃度のグラフ表示である。サンプリングの日はサンプルを採取した1日目に関係しており、やけどの日と必ずしも関係があるわけではなかった。
【図16】アクチビンA(βA)の免疫細胞化学から成る免疫細胞化学を示す皮膚の画像であり、そしてホリスタチン(FS)が茶色で示される。H&Eは、ヘマトキシリンとエオジン(H&E)によって染色した切片を表す。SL=透明層;SGR=顆粒層;SSp=有棘層;SGE=基底層;INF=炎症細胞。
【図17】矢印で印を付けた線維芽細胞、マクロファージ、及び血管を用いて著しい真皮線維化を示したやけどの裸領域及び上皮化を示した切片の画像である。茶色の生成物はアクチビン又はホリスタチン陽性を意味する。
【図18】上皮を欠き、アクチビンAの局在を示す小さい血管を示した矢印を用いて著しい線維化を示した領域、並びに炎症細胞(INF)の領域からのバイオプシーの画像である。ホリスタチンが著しく低い染色強度しか示さないことに留意のこと。
【図19】コラーゲンの領域(C)と思われる不定形、アクチビンAを示す線維芽細胞(F)、及び著しく低いホリスタチン強度を用いて真皮領域の線維化を示すより高い倍率からの画像である。また、血管が局在を示す(V)。
【図20】瀕死の細胞(D)及び炎症細胞の堆積を示すH&E染色切片の画像である。他の領域は、線維芽細胞(F)と炎症細胞(INF)へのアクチビンA及びホリスタチンの局在を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクチビンの機能活性を調節するステップを含む哺乳動物の炎症反応の調節方法であって、ここで、上記哺乳動物における機能上効果的なレベルへのアクチビン、又はその断片、誘導体、突然変異体、又は変異体の上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを誘発するか、維持するか、又は上方制御し、そして上記哺乳動物における機能上効果的でないレベルへのアクチビンの下方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを阻害するか又は遅らせる前記方法。
【請求項2】
哺乳動物の異常な、望ましくない、又はそれ以外の不適当な炎症反応を特徴とする状態、あるいは状態の発生素因を治療的、及び/又は予防的に処置する、上記哺乳動物におけるアクチビン、又はその断片、誘導体、突然変異体、又は変異体のレベルを調節するステップを含む方法であって、ここで、機能上効果的なレベルへのアクチビンの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを上方制御し、そして機能上効果的でないレベルへのアクチビンの下方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを阻害するか又は遅らせる前記方法。
【請求項3】
前記アクチビンが、アクチビンAであるか、あるいはβBサブユニットを含むアクチビン分子、又はその断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記βBサブユニットを含む分子がアクチビンBである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記炎症反応が局所炎症反応である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記局所炎症反応が、気道炎症、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、膵臓炎、アテローム硬化症、髄膜炎、虫垂炎、血管形成、乾癬、神経保護、尿細管壊死、アレルギー応答、慢性関節リウマチ、脳炎、多発性硬化症、外傷性脳損傷、及び創傷治癒と関連して起こる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記気道炎症が、喘息、間質性肺炎、嚢胞性線維症、肺移植、閉塞性細気管支炎、気腫、閉塞性肺疾患、重症急性呼吸器症候群、石綿肺症、閉塞性睡眠時無呼吸、低酸素症、又は肺高血圧症である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記創傷治癒が、手術又はやけどに関係する、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記炎症反応が全身性炎症反応である、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項10】
前記炎症反応が急性である、請求項5〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記急性炎症反応が、敗血性ショック、敗血症、気道炎症、虫垂炎、髄膜炎、毒素又はウイルスに対する肝臓の反応、血管形成、乾癬、神経保護、アテローム硬化症、尿細管壊死、創傷治癒、又は外傷性損傷に関係する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記気道炎症が、喘息、間質性肺炎、嚢胞性線維症、肺移植、閉塞性細気管支炎、気腫、閉塞性肺疾患、重症急性呼吸器症候群、石綿肺症、閉塞性睡眠時無呼吸、低酸素症、又は肺高血圧症と関連して起こる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記急性全身性炎症反応が、全身性炎症反応症候群と関連して起こる、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記全身性炎症反応症候群が、敗血症(sepsis, septicaemia)、毒素ショック、敗血性ショック、組織外傷、髄膜炎、又は虫垂炎である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記炎症反応が慢性応答である、請求項3又は5に記載の方法。
【請求項16】
前記慢性炎症反応が、多発性硬化症、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチ、喘息、乾癬、又は創傷治癒である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記炎症反応が望ましくない応答であり、かつ、前記炎症反応の調節が炎症反応の下方制御である、請求項5〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記炎症反応の下方制御が、炎症誘発性サイトカイン・カスケードを下方制御することによって達成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記炎症誘発性サイトカイン・カスケードが、TNFα、IL-1、及び/又はIL-6の発現に相当する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記調節がアクチビン機能活性の上方制御であり、そして上記上方制御が、アクチビンをコードする核酸分子、又はその機能的同等物、誘導体、若しくは相同体、あるいはアクチビン発現産物、又はその機能断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体を前記哺乳動物内に導入することによって達成される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記調節が、アクチビン遺伝子の転写、及び/又は翻訳制御を調節するタンパク質分子又は非タンパク質分子を前記哺乳動物内に導入することによって達成される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記調節がアクチビン機能活性の上方制御であり、そして上記上方制御が、アクチビン発現産物の作動薬として機能するタンパク質分子又は非タンパク質分子を前記哺乳動物内に導入することによって達成される、請求項1〜16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記調節がアクチビン機能活性の下方制御であって、そして上記下方制御が、アクチビン発現産物の拮抗薬として機能するタンパク質分子又は非タンパク質分子を前記哺乳動物内に導入することによって達成される、請求項1〜19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記アクチビンが、アクチビンAであるか、あるいはβBサブユニットを含むアクチビン分子、又はその断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体である、請求項20〜23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記βBサブユニットを含む分子がアクチビンBである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記拮抗薬が、ホリスタチン、又はその機能断片、誘導体、相同体、若しくは模倣体であるか、インヒビンのαサブユニットのレベルを上方制御する作用物質、インヒビン、βCのレベルを上方制御する作用物質、アクチビン中和抗体、あるいはアクチビンの突然変異体である、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記拮抗薬が抗アクチビン抗体である、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体がアクチビンのβAサブユニットに向けられる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体がアクチビンのβBサブユニットに向けられる、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1〜29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
哺乳動物の異常な、望ましくない、又はそれ以外の不適当な炎症反応を特徴とする状態、あるいは状態の発生素因の治療的、及び/又は予防的処置のための薬剤の製造における、アクチビンの機能上効果的なレベルを調節することができる作用物質の使用であって、ここで、機能上効果的なレベルへのアクチビンの上方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを上方制御し、そして機能上効果的でないレベルへのアクチビンの下方制御が、炎症誘発性メディエーター・カスケードを阻害するか又は遅らせる前記使用。
【請求項32】
前記アクチビンが、アクチビンAであるか、あるいはβBサブユニットを含むアクチビン分子、又はその断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体である、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
前記βBサブユニットを含む分子がアクチビンBである、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
前記炎症反応が局所炎症反応である、請求項32又は33に記載の使用。
【請求項35】
前記局所炎症反応が、気道炎症、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、膵臓炎、アテローム硬化症、髄膜炎、虫垂炎、血管形成、乾癬、神経保護、尿細管壊死、アレルギー応答、脳炎、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、外傷性脳損傷、及び創傷治癒と関連して起こる、請求項34に記載の使用。
【請求項36】
前記気道炎症が、喘息、間質性肺炎、嚢胞性線維症、肺移植、閉塞性細気管支炎、気腫、閉塞性肺疾患、重症急性呼吸器症候群、石綿肺症、閉塞性睡眠時無呼吸、低酸素症、又は肺高血圧症である、請求項35に記載の使用。
【請求項37】
前記創傷治癒が、手術又はやけどに関係する、請求項35に記載の使用。
【請求項38】
前記炎症反応が全身性炎症反応である、請求項32又は33に記載の使用。
【請求項39】
前記炎症反応が急性である、請求項34〜38のいずれか1項に記載の使用。
【請求項40】
前記急性炎症反応が、敗血性ショック、敗血症、気道炎症、虫垂炎、髄膜炎、毒素又はウイルスに対する肝臓の反応、血管形成、乾癬、神経保護、アテローム硬化症、尿細管壊死、創傷治癒、又は外傷性損傷に関係する、請求項39に記載の使用。
【請求項41】
前記気道炎症が、喘息、間質性肺炎、嚢胞性線維症、肺移植、重症急性呼吸器症候群、閉塞性細気管支炎、気腫、閉塞性肺疾患、石綿肺症、閉塞性睡眠時無呼吸、低酸素症、又は肺高血圧症と関連して起こる、請求項40に記載の使用。
【請求項42】
前記急性全身性炎症反応が、全身性炎症反応症候群と関連して起こる、請求項39に記載の使用。
【請求項43】
前記全身性炎症反応症候群が、敗血症(sepsis, septicaemia)、毒素ショック、敗血性ショック、組織外傷、髄膜炎、又は虫垂炎である、請求項42に記載の使用。
【請求項44】
前記炎症反応が慢性応答である、請求項32又は33に記載の使用。
【請求項45】
前記慢性炎症反応が、多発性硬化症、炎症性腸疾患、慢性関節リウマチ、喘息、乾癬、又は創傷治癒である、請求項44に記載の使用。
【請求項46】
前記炎症反応が望ましくない応答であり、かつ、前記炎症反応の調節が炎症反応の下方制御である、請求項34〜43のいずれか1項に記載の使用。
【請求項47】
前記炎症反応の下方制御が、炎症誘発性サイトカイン・カスケードを下方制御することによって達成される、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
前記炎症誘発性サイトカイン・カスケードが、TNFα、IL-1、及び/又はIL-6の発現に相当する、請求項47に記載の使用。
【請求項49】
前記調節がアクチビン機能活性の上方制御であり、そして上記上方制御が、アクチビンをコードする核酸分子、又はその機能的同等物、誘導体、若しくは相同体、あるいはアクチビン発現産物、又はその機能断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体を前記哺乳動物内に導入することによって達成される、請求項31〜43のいずれか1項に記載の使用。
【請求項50】
前記調節が、アクチビン遺伝子の転写、及び/又は翻訳制御を調節するタンパク質分子又は非タンパク質分子を前記哺乳動物内に導入することによって達成される、請求項31〜43のいずれか1項に記載の使用。
【請求項51】
前記調節がアクチビン機能活性の上方制御であり、そして上記上方制御が、アクチビン発現産物の作動薬として機能するタンパク質分子又は非タンパク質分子を前記哺乳動物内に導入することによって達成される、請求項31〜43のいずれか1項に記載の使用。
【請求項52】
前記調節がアクチビン機能活性の下方制御であって、そして上記下方制御が、アクチビン発現産物の拮抗薬として機能するタンパク質分子又は非タンパク質分子を前記哺乳動物内に導入することによって達成される、請求項31〜43のいずれか1項に記載の使用。
【請求項53】
前記アクチビンが、アクチビンAであるか、あるいはβBサブユニットを含むアクチビン分子、又はその断片、誘導体、突然変異体、若しくは変異体である、請求項49〜52のいずれか1項に記載の使用。
【請求項54】
前記βBサブユニットを含む分子がアクチビンBである、請求項53に記載の使用。
【請求項55】
前記拮抗薬が、ホリスタチン、又はその機能断片、誘導体、相同体、若しくは模倣体であるか、インヒビンのαサブユニットのレベルを上方制御する作用物質、インヒビン、βCのレベルを上方制御する作用物質、アクチビン中和抗体、あるいはアクチビンの突然変異体である、請求項52に記載の使用。
【請求項56】
前記拮抗薬が抗アクチビン抗体である、請求項52に記載の使用。
【請求項57】
前記抗体がアクチビンのβAサブユニットに向けられる、請求項56に記載の使用。
【請求項58】
前記抗体がアクチビンのβBサブユニットに向けられる、請求項56に記載の使用。
【請求項59】
前記哺乳動物がヒトである、請求項31〜43のいずれか1項に記載の使用。
【請求項60】
請求項1〜30のいずれか1項に記載の方法に使用する時、請求項1〜59のいずれか1項に規定される調節物質、並びに1つ以上の医薬として許容される担体、及び/又は希釈剤を含む医薬組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図1E】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11−1】
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【図11−2】
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【図11−3】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15−1】
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【図15−2】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公表番号】特表2007−507429(P2007−507429A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529460(P2006−529460)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001359
【国際公開番号】WO2005/032578
【国際公開日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(304044531)モナシュ ユニバーシティー (9)
【Fターム(参考)】