説明

法面保護工法

【課題】法面への施工や廃タイヤ同士の連結を容易にし、土壌の侵食や雑草の繁殖を防止することができ、しかも安全面やデザイン性に優れた法面保護工法を提供する。
【解決手段】径方向に分割した廃タイヤのカット片1を、空洞が内側になるように盛土等の傾斜法面10に被せて施工する法面保護工法である。前記カット片1は、好ましくは廃タイヤを径方向に2分割、3分割、4分割または5分割して形成されている。前記カット片1の空洞内側に地盤材2を充填することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌の侵食や雑草の繁殖を防止すると共に、安全面やデザイン性を向上させる法面保護工法に関し、プレイグランド斜面等において有用な法面保護工法である。
【背景技術】
【0002】
従来の盛土法面の保護法、例えば、降雨による土壌流出防止工法として、コンクリートを用いた保護工法や原型廃タイヤを用いた保護工法等が知られている。
【0003】
しかし、コンクリートを盛土法面の保護に用いた場合、冷たい外観を与えると共に、斜面を大人や子供が歩いて転倒した場合、衝撃が大きく骨折事故等に繋がるという問題があった。
【0004】
一方、原型廃タイヤを盛土法面の保護に用いた場合、安定した保護構造とするにはタイヤの空洞部に土等の充填材を隙間なく充填する必要があり、手間がかかるという問題があった。また、トラックバス用タイヤなどの大型のタイヤはハンドリング性や重量に難点があり、場合によっては極めて扱いにくいという問題があった。さらに、原型廃タイヤを水平に少しずつずらしながら積み重ねて法面を保護する場合はよいが、原型廃タイヤを垂直に立てて配置し、施工する場合にはタイヤ上部部分の充填材が落下するなど、作業性に欠けるという問題があった。
【0005】
さらにまた、廃タイヤを利用する法面保護方法として、特許文献1では、特殊な工具や重機械等も使用することなく、柔軟で堅牢かつ安定性の高いリサイクルタイヤ法面枠構造体が得られると報告されている。また、特許文献2では、同じく廃タイヤ利用法面保護方法として、安価に構築でき、かつ耐久性を有するとする法枠工及びその構築方法が提案されている。
【0006】
特許文献1に開示されているリサイクルタイヤ法面枠構造体は、複数本の半割リサイクルタイヤを、隣接するもの同士、留め金具互いに連結するとともに、そのホイール部内周縁をアンカー鉄筋で法面に固定し、全体的に一体として方面に固定するものである。また、特許文献2に開示されている法枠工及びその構築方法は、法面上に順次敷き詰められ配列されるとともに、互いに連結された複数本の廃タイヤからなる法枠と、該法枠の隣接している廃タイヤ間及びタイヤ内部に充填された中詰め材とで前記法面を被覆するようにした法枠工である。
【特許文献1】特開2001―152458号公報
【特許文献2】特開2000―160568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、廃タイヤを利用する法面保護方法としてこれまで知られている工法は、土壌の侵食や雑草の繁殖を十分に防止し、しかも作業性、安全性およびデザイン性をも十分に満足し得るものとは必ずしもいえなかった。
【0008】
例えば、特許文献1に開示された工法では、複数本の半割リサイクルタイヤを連結するための留め金具や、ホイール部内周縁を法面に固定するアンカー鉄筋等が必要になり、施工作業が多くなると共に、固定部材によるコスト高に繋がるという問題があった。また、特許文献2記載の工法においては、水平状に敷き詰められた廃タイヤの空洞部に土等の充填材を隙間なく充填する場合、多くの中詰め材が必要になると共に、手間がかかり、作業効率上問題があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、上記の課題を解決して、法面への施工や廃タイヤ同士の連結を容易にし、土壌の侵食や雑草の繁殖を防止することができ、しかも安全面やデザイン性に優れた法面保護工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の法面保護工法は、径方向に分割した廃タイヤのカット片を、空洞が内側になるように盛土等の傾斜法面に被せて施工することを特徴とするものである。
【0011】
本発明の方面保護工法においては、前記カット片が、廃タイヤを径方向に2分割、3分割、4分割または5分割して形成されていることが好ましい。また、前記カット片の空洞内側に地盤材を充填することが好ましく、さらに、前記カット片を最下段から順次上段に向け施工し、かつ上下に隣接する前記カット片同士を突き合わせて施工することが好ましい。さらにまた、前記カット片をアンカーボルトにて傾斜法面に好適に固定することができ、1本のアンカーボルトにてカット片を2個連結して固定してもよい。さらにまた、前記カット片間にシーリング材を打設してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の法面保護工法によれば、法面への施工や廃タイヤ同士の連結を容易にし、土壌の侵食や雑草の繁殖を防止することができ、しかも安全面やデザイン性に優れた法面保護工法を提供することができる。また、廃タイヤの有効利用により環境保全の面でも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1に示す法面保護工法では、径方向に分割した廃タイヤのカット片1を、空洞が内側になるように盛土等の傾斜法面10に被せて施工してある。この法面保護工法を実施するにあたり、先ず、廃タイヤを径方向に分割して扇型としたカット片1を得る。次に、保護が必要な傾斜法面10の表面を、タイヤ片を施工し易いように凹凸状態に調整する。しかる後、カット片1を空洞が内側になるように盛土等の傾斜法面10に被せ、これにより図示する保護法面を得ることができる。
【0014】
このカット片1は施工上、図4に示すように、廃タイヤAを径方向に2分割(a)、3分割(b)、4分割(c)または5分割(d)して形成することが好ましい。かかる分割は法面の傾斜角度により適宜分割数を選定すればよく、例えば、傾斜角度が45度程度のときは廃タイヤAを4分割に分割したものが特に好ましい。
【0015】
法面保護工法は、カット片1内に地盤材2を充填し、空洞が内側になるように傾斜法面10に被せて規則性を持たせながら施工していくことが好ましく、図1に示すように、カット片1を最下段から順次上段に向けて施工し、上下に隣接するカット1片同士を突き合わせることが好ましい。この際、サイズの揃った廃タイヤを使用することで、安全性のみならずデザイン性にも優れた法面の保護外観を得ることができる。
【0016】
また、法面保護の安全性を高めるために、カット片1をアンカーボルト3にて傾斜法面10に固定することが好ましい。アンカーボルト3をカット片1の表面部より打ち込み、傾斜法面10に一体的に固定する。この際、図2に示すように、アンカーボルト3の打設角度は、水平に対して45度程度が好適である。
【0017】
さらに、1本のアンカーボルト3にてカット片1を2個連結して固定してもよい。この場合、図3に示すように、下段のカット片1の最上端部上に、上段のカット片1の底部を載置した状態に重ね合わせ、重なる部分にアンカーボルト3を打設することで、2個のカット片1を一体的に固定することができる。図示するように、下段と上段の2個のカット片1をアンカーボルト3にて連結することで、傾斜法面10への強度を高めることができる。なお、カット片同士の突合せや連結方法は特に限定されるものではない。
【0018】
さらにまた、図示はしないが、隣接するカット片1の間にシーリング材4を打設してもよい。カット片1のカット面同士が接触する部分にシーリング材4を打設することで、水分の内部浸入を軽減するとともに、全体の強度をより一層高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明によれば、盛土等の法面の土壌を保護し、大雨等での流出や土壌の浸食防止を図ることができることから、丘状のプレイグランドに本発明を好適に適用することができ、この場合、子供が斜面で転んでもコンクリートに比べ安全である。また、かかる斜面の雑草繁殖防止や優れた耐候性等を得ることができる。さらに、役割を終えた廃タイヤのカット片は、再度土木用途に活用、或いは熱利用するなどの活用の余地がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の好適実施形態に係る法面保護工法による法面の全体図である。
【図2】カット片の好適固定状態を示す断面図である。
【図3】カット片の他の好適固定状態を示す断面図である。
【図4】廃タイヤの分割状態の正面図である。
【図5】本発明の好適実施形態に係る法面保護工法による法面の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 カット片
2 地盤材
3 アンカーボルト
4 シーリング材
10 傾斜法面
A 廃タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に分割した廃タイヤのカット片を、空洞が内側になるように盛土等の傾斜法面に被せて施工することを特徴とする法面保護工法。
【請求項2】
前記カット片が、廃タイヤを径方向に2分割、3分割、4分割または5分割して形成されている請求項1記載の法面保護工法。
【請求項3】
前記カット片の空洞内側に地盤材を充填する請求項1または2記載の法面保護工法。
【請求項4】
前記カット片を最下段から順次上段に向け施工し、かつ上下に隣接する前記カット片同士を突き合わせて施工する請求項1〜3のうちいずれか一項記載の法面保護工法。
【請求項5】
前記カット片をアンカーボルトにて傾斜法面に固定する請求項1〜4のうちいずれか一項記載の法面保護工法。
【請求項6】
1本のアンカーボルトにてカット片を2個連結して固定する請求項5項記載の法面保護工法。
【請求項7】
前記カット片間にシーリング材を打設する請求項1〜6のうちいずれか一項記載の法面保護工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−202351(P2008−202351A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41477(P2007−41477)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】