説明

波長選択スイッチ

【課題】ノード上に入力される総てのチャンネルに対して追加/脱落機能の実行が可能であり、且つ、高い自由度を有する波長選択スイッチを提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る波長選択スイッチは、入力光信号を各々のチャンネルに対応する波長別に分割し、前記各々のチャンネルに対して前記入力光信号から分割された光信号又は追加ポートを介して入力された光信号を選択して出力する光逆多重化部と、電流供給又は電圧印加によって前記光逆多重化部から受信した各チャンネルごとの光信号を個別的に偏向する光偏向部と、前記光偏向部の偏向によって特定の出力ポートに前記各チャンネルごとの光信号を出力する光多重化部とにより構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長選択スイッチ(Wavelength Selective Switch:WSS)に係り、特に、物理的な変位なしに電気的に波長をスイッチングする波長選択スイッチに関する。
【0002】
本発明は、韓国情報通信部及び情報通信研究振興院がIT成長動力技術開発事業の一環として行った研究から導き出されたものである[課題管理番号:2007−S−011−01、課題名:ROADM用光スイッチ技術開発]。
【背景技術】
【0003】
今後本格的なFTTH(Fiber-to-the-home)普及に伴う光通信網加入者需要の増加によりメトロ網のトラフィックの急激な増加が予想される。これにより、メトロ網は、トラフィック増加を効率的に処理するために、既存の固定された網構造から脱して、大容量の多様なデータを柔軟に伝送できるように遠隔再設定が可能な(Reconfigurable)能動可変型に進化している。また、費用的な面において初期装備購入費用の節減は、ほぼ限界に至っており、効率的運用のためには、全体費用の80%を占める網運用費用の節減が要求されている。
【0004】
ROADM(Reconfigurable optical add-drop multiplexing)は、WDM(Wavelength division multiplexing)伝送網において多チャンネルの入力光信号の中からノード上で必要とする信号を選択的に抽出し、新しい信号を追加する機能を担う装置であって、遠隔制御を通じて網の維持費用を画期的に節減させることができる効果がある。ROADMは、特定のノードでのチャンネル追加(add)/脱落(drop)を遠隔で設定できるようにすることによって、WDMネットワークの柔軟性及び効率性を増加させ、チャンネル単位の供給(provisioning)、モニタリング(monitoring)及び管理(management)を可能にして、運用費用を大きく節減させることができる。
【0005】
ROADMは、大きく、放送選択(broadcast and select)方式と、スイッチ基盤方式とに区分することができる。これらのうちスイッチ基盤方式のROADMにおいて、フルマトリックス(full matrix)を利用する方式の場合、具現が難しく、体積が大きく、且つ、価格が高いという短所がある。また、2×2スイッチを使用する方式の場合には、使用波長個数に相当する送/受信器の対を具備するか、結合/分岐経路にさらにフルマトリックススイッチを追加しなければならない問題がある。
【0006】
一方、PLC(Planar Lightwave Circuit)技術の発展に伴って、多重化器(MUX、multiplexer)/逆多重化器(Demux、demultiplexer)、可変光減衰器(VOA、variable optical attenuato)及び光スイッチの結合で構成されるiPLC(integrated planar lightwave circuit)構造が開発された。iPLC構造は、多チャンネルの追加/脱落が可能であり、大量生産に適していて、低価化され得る長所があるが、限定された自由度に起因してリング形状ネットワークにのみ使用が制限される短所がある。
【0007】
スイッチ基盤方式のROADMの他の形態である波長選択スイッチ(Wavelength Selective Switch:WSS)は、主としてMEMS(Micro electromechanical system)又はLC(Liquid crystal)を利用して開発されており、2次元方式と3次元方式とに区分される。このような波長選択スイッチは、入力された多チャンネルの光源を任意の出力ポートに出力することができる高い自由度(degree of freedom)を有していて、メッシュ形状のネットワーク構成に使用可能である。
【0008】
しかし、従来の波長選択スイッチは、チャンネルのスイッチングにおいて機械的変位が発生するので、信頼性を保証することが困難であり、3次元構造で構成される場合、製作費用が高いという短所がある。また、従来の波長選択スイッチは、限定された入出力ポートの数に起因してノード上で追加/脱落可能なチャンネル数が制限されるという短所がある。
【特許文献1】日本公開特許公報 特開平7―58392号公報
【特許文献2】大韓民国特許公開第2006−0067171号公報
【特許文献3】大韓民国特許公開第2006−0034175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ノード上に入力される総てのチャンネルに対して追加/脱落機能の実行が可能であり、且つ、高い自由度を有する波長選択スイッチを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、高い信頼性を有し、且つ、大量生産及び低価化が可能な2次元導波路基盤の波長選択スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る波長選択スイッチは、入力光信号を各々のチャンネルに対応する波長別に分割し、前記各々のチャンネルに対して前記入力光信号から分割された光信号又は追加ポートを介して入力された光信号を選択して出力する光逆多重化部と、電流供給又は電圧印加によって前記光逆多重化部から受信した各チャンネルごとの光信号を個別的に偏向する光偏向部と、前記光偏向部の偏向によって特定の出力ポートに前記各チャンネルごとの光信号を出力する光多重化部と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、光偏向器に電流を供給してチャンネルをスイッチングすることによって、従来の機械的な変位でチャンネルをスイッチングする波長選択スイッチに比べて、信頼性が高く、体積が小さく、且つ、スイッチング速度が速い波長選択スイッチを製作することができる。
【0013】
また、本発明は、多チャンネル追加/脱落機能を行うことができ、且つ、高い自由度を有する波長選択スイッチを提供することによって、効率的なメッシュネットワーク構成を可能にして、WDMネットワークの部品構成及び運営を単純化することができる。
【0014】
また、本発明は、2次元導波路基盤の波長選択スイッチを提供することによって、波長選択スイッチの大量生産及び低価化を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施の一形態に係る波長選択スイッチの構成を示す図である。
【0017】
図1を参照すると、本発明の実施の一形態に係る波長選択スイッチは、光逆多重化部110及び光多重化部120を含む。ここで、入力光信号は、M個のチャンネルを有し、波長選択スイッチは、N個の出力ポートを介して光信号を出力する。実施の一形態において、光逆多重化部110及び光多重化部120は、ハイブリッド構造で結合されることができる。
【0018】
光逆多重化部110は、入射された光源を各々のチャンネルに対応する波長λi(iはチャンネル)別に分離し、各チャンネルで現在チャンネルの光信号又は追加ポート114を介して入力された新しい波長の光信号を選択し、光多重化部120に各チャンネルごとに伝達し、脱落される光信号を脱落ポート115を介して出力する。
【0019】
実施の一形態において、光逆多重化部110は、波長分割部111、光スイッチ(Optical Switch)112及び可変光減衰器(Variable optical attenuator:VOA)113で構成される。波長分割部111は、入力ポート116を介して入力光信号を各々のチャンネルに対応する波長別に分離する。実施の一形態において、波長分割部111は、アレイ導波路回折格子(Arrayed Waveguide Grating:AWG)又は凹面回折格子(Concave Grating:CG)で構成されることができる。
【0020】
アレイ導波路回折格子(AWG)は、複数の波長を含む光信号に対して導波モードの位相を均一に変化させて、放射角変化又は角分散(angular dispersion)を通じて特定の位置に当該波長の光信号を到逹するようにする。これを線形分散(linear dispersion)という。
【0021】
一方、凹面回折格子(CG)は、周期的な格子構造で入射ビームを波長別に回折(diffraction)させ、同時に凹形態の構造によって入射されるビームの位相を変化させて、出力方向にフォーカシングすることによって、角分散及び線形分散を行う。
【0022】
波長分割部111から分離された各々の光信号は、各チャンネルごとに光スイッチ112に入力される。光スイッチ112は、電気信号の印加によって現在チャンネルの光信号又は追加ポート114を介して入力された光信号のうち一つの光信号を選択して可変光減衰器113に出力し、残余の光信号は、脱落ポート115に出力する。
【0023】
可変光減衰器113は、電気信号の印加によって各チャンネルの光信号強度を調整し、光多重化部120に各チャンネルごとの光信号を伝達する。実施の一形態において、光逆多重化部110は、各チャンネルごとに光信号を観測するためのモニタ光検出器(Monitor photodetector)を含むことができる。
【0024】
光多重化部120は、光逆多重化部110から伝達された各チャンネルごとの光信号を複数の出力ポート122を介して出力する。実施の一形態において、光多重化部120は、光逆多重化部110の可逆構造なので、アレイ導波路回折格子(AWG)又は凹面回折格子(CG)で具現されることができる。
【0025】
ここで、光多重化部120は、各チャンネルごとの光信号を所望の出力ポート122に出力するために電流供給によって光信号を偏向する光偏向部121を含む。光偏向部121は、各チャンネルごとの光信号を個別的に所望の出力ポート122に入射されることができるように偏向する。
【0026】
従って、光多重化部120は、各チャンネルごとの光信号を任意の出力ポート122を介して他のチャンネルの光信号とともに出力することができ、これにより、本発明の波長選択スイッチは、任意の出力ポート122に出力される光信号のチャンネルを柔軟に組み合わせることができる。
【0027】
実質的な具現化において、光多重化部120がアレイ導波路回折格子(AWG)又は凹面回折格子(CG)で構成される場合、光偏向部121は、アレイ導波路回折格子(AWG)の自由伝搬領域(Free Propagation Region)又は凹面回折格子(CG)のスラブ(slab)光導波路内に集積された形態で具現化されることができる。
【0028】
光多重化部120がアレイ導波路回折格子(AWG)で構成される場合、アレイ導波路回折格子(AWG)の自由伝搬領域の一部分にエッチング又は再成長等を通じて導波路構造を部分的に変形し、偏向された信号の位相を追加的に補正するか、又は、自由伝搬領域の間に位置する導波路アレイに追加的に位相調節が可能な構造を挿入することによって、放射ビームの位相を調整することができる。
【0029】
一方、光多重化部120が凹面回折格子(CG)で構成される場合、スラブ導波路の一部分に部分的なエッチング又は格子のピッチ調節等を通じて偏向特性を一部変更させることができる。実施の一形態において、光偏向部121は、電流注入ではなく電圧印加を通じて導波路の屈折率を変化させて光を偏向させる構造で構成されることができる。
【0030】
図2は、本発明の実施の一形態に係る波長選択スイッチの光多重化部を凹面回折格子(CG)で具現化した実施例を示す図である。
【0031】
図2を参照すると、光偏向部211は、チャンネル数と同一の数の光偏向器211a、211b、211cを含む光偏向器アレイ(deflector array)形態で構成され、凹面回折格子(CG)212内に集積される。各々の光偏向器211a、211b、211cは、凹面回折格子(CG)212の入射面に位置し、独立的に供給される電流によって光逆多重化部220から伝達される各チャンネルごとの光信号を偏向する動作を行う。この時、光偏向器211a、211b、211cに供給される電流は、光偏向器211a、211b、211cの偏向パターン領域の屈折率を減少させ、これにより、偏向パターン領域と周辺領域との間の屈折率の差が変化することによって、光信号の偏向角度が調整される。
【0032】
凹面回折格子(CG)212は、光偏向器211a、211b、211cに電流が供給されない場合、各々の光偏向器211a、211b、211cを介して出射される各チャンネルごとの光信号が、光信号の波長λ’乃至λ’及び入射角α乃至αによって同一の回折角βに回折されるように設計される。従って、光偏向器211a、211b、211cに電流が供給されない場合、各チャンネルごとの光信号は、一つの出力導波路213を介して出力される。
【0033】
各々の光偏向器211a、211b、211cに電流が供給される場合には、各チャンネルごとの光信号は、供給される電流によって偏向され、各々異なる入射角で回折格子に入射される。これにより、回折格子に入射された光信号は、各々異なる回折角β乃至βに回折され、各々異なる出力導波路213に出力される。
【0034】
前述のような構造の凹面回折格子(CG)において出力導波路のチャンネル数を増加させるためには、光偏向器が同一の供給電流に対して屈折率変化が大きい構造を有するか、又は、同一の屈折率変化に対してビーム偏向が大きく発生するパターン構造で設計されることが好ましい。
【0035】
以上において説明した本発明は、本発明が属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で、様々な置換、変形及び変更が可能であるので、上述した実施の形態及び添付された図面に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の一形態に係る波長選択スイッチの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の一形態に係る波長選択スイッチの光多重化部を凹面回折格子(CG)で具現した実施例を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
110 光逆多重化部
111 波長分割部
112 光スイッチ
113 可変光減衰器
114 追加ポート
115 脱落ポート
116 入力ポート
120 光多重化部
121 光偏向部
122 出力ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力光信号を各々のチャンネルに対応する波長別に分割し、前記各々のチャンネルに対して前記入力光信号から分割された光信号又は追加ポートを介して入力された光信号を選択して出力する光逆多重化部と、
電流供給又は電圧印加によって前記光逆多重化部から受信した各チャンネルごとの光信号を個別的に偏向する光偏向部と、
前記光偏向部の偏向によって特定の出力ポートに前記各チャンネルごとの光信号を出力する光多重化部と、
を含むことを特徴とする波長選択スイッチ。
【請求項2】
前記光多重化部は、アレイ導波路回折格子又は凹面回折格子により構成され、
前記光偏向部は、前記アレイ導波路回折格子又は前記凹面回折格子内に集積されることを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項3】
前記光偏向部は、前記アレイ導波路回折格子の自由伝搬領域又は前記凹面回折格子のスラブ光導波路に集積されることを特徴とする請求項2に記載の波長選択スイッチ。
【請求項4】
前記光偏向部は、前記チャンネルの数と同一の数の光偏向器を含む光偏向器アレイにより構成されることを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項5】
前記光偏向器アレイに含まれる各々の光偏向器は、一つのチャンネルの光信号を独立的に偏向することを特徴とする請求項4に記載の波長選択スイッチ。
【請求項6】
前記光逆多重化部は、
前記入力光信号を前記各々のチャンネルに対応する波長別に分割する波長分割部と、
前記入力光信号から分割された光信号又は前記追加ポートを介して入力された光信号を選択して出力する光スイッチと、
前記光スイッチが出力する光信号の強度を調整し、前記光多重化部に伝達する可変光減衰器と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項7】
前記波長分割部は、アレイ導波路回折格子又は凹面回折格子により構成されることを特徴とする請求項6に記載の波長選択スイッチ。
【請求項8】
前記光スイッチは、前記波長別に分割された光信号又は前記追加ポートを介して入力された光信号のうち選択されない光信号を脱落ポートに出力することを特徴とする請求項6に記載の波長選択スイッチ。
【請求項9】
前記光逆多重化部は、前記各々のチャンネルの光信号を観測するモニタ光検出器をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の波長選択スイッチ。
【請求項10】
前記光逆多重化部及び前記光多重化部は、ハイブリッド構造で結合されることを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−145869(P2009−145869A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221991(P2008−221991)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(596180076)韓國電子通信研究院 (733)
【氏名又は名称原語表記】Electronics and Telecommunications Research Institute
【住所又は居所原語表記】161 Kajong−dong, Yusong−gu, Taejon korea
【Fターム(参考)】