説明

波長選択スイッチ

【課題】光信号のチャンネルスペーシングが狭くなっても、装置の小型化が可能な波長選択スイッチを提供する。
【解決手段】波長多重された信号光の入力部と、入力部からの信号光を受光する、互いに反射面同士が向き合った、負の焦点距離を有する反射部材及び正の焦点距離を有する反射部材と、負の焦点距離を有する反射部材及び正の焦点距離を有する反射部材からの光を受光し、この光を波長分散させる分散素子と、分散素子にて波長分散された信号光を波長ごとに偏向可能な偏向素子アレイと、負の焦点距離を有する反射部材と偏向素子アレイの間に配置されたレンズと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長選択スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
波長選択スイッチは、ROADM(大容量ネットワークに用いられる、波長多重化された光信号を、光信号のまま分岐/挿入が行えるシステムや技術)におけるノードにおかれるデバイスであって、波長多重されている光信号の伝送経路の切換えを波長ごとに行うスイッチである。各ノードでは波長選択スイッチによって、波長多重された光信号から任意の波長の光信号を取り出すことや、波長多重された光信号に任意の波長の光を混ぜることが可能である。
【0003】
特許文献1においては、光ファイバから出射され、グレーティングで分散された光信号をMEMSミラーに集光する光学系に反射ミラーを用いた例が開示されている。この凹面反射ミラーは、回折格子で分散された光信号をMEMSミラーに集光するため正の焦点距離を有する。
【0004】
近年、光通信の大容量化が進み、より多くのデータを伝送できるように、光信号のチャンネルスペーシングは狭くなってきている。従来100GHzのスペーシングが一般的に用いられてきたが、最近は例えば50GHzのスペーシングが用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許7630599号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図8は、光信号のチャンネルスペーシングが100GHzの場合の周波数に対する信号出力の変化を示す模式図である。図9は、光信号のチャンネルスペーシングが50GHzの場合の周波数に対する信号出力の変化を示す模式図である。
チャンネルスペーシングが100GHz(図8)から50GHz(図9)へ狭くなった場合、一定の波長帯域の中でのチャンネル数が多くなるため、波長選択スイッチは以下の(1)〜(3)のいずれかの対応が必要になる。
(1)MEMSミラーの間隔を狭くする。
(2)波長分散のより大きな回折素子を用いる。すなわち、例えばグレーティングの溝間隔を狭くする。
(3)MEMSミラー上へ信号光を集光する光学系の焦点距離を長くする。
【0007】
しかしながら、上記(1)、(2)については、それぞれMEMSミラーまたはグレーティングの微細化に限界があるため、技術的に困難である。(3)については、光学系の焦点距離を長くすることで、装置全体が大型化してしまうという問題点がある。
特許文献1に記載の例では凹面反射ミラーを用いている。この凹面反射ミラーは、グレーティングで分散された光信号をMEMSミラーに集光するため正の焦点距離を有する。MEMSミラーの間隔を狭くしたり、より波長分散の大きな回折素子を使わずに、特許文献1の例のように凹面ミラーのみを集光に用いる光学系において、入力する光信号のチャンネルスペーシングを狭くすると、凹面ミラーの焦点距離が長くなり、光学系が大きくなり、装置全体として大型化してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、光信号のチャンネルスペーシングが狭くなっても、装置の小型化が可能な波長選択スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る波長選択スイッチは、波長多重された信号光の入力部と、入力部からの信号光を受光する、互いに反射面同士が向き合った、負の焦点距離を有する反射部材及び正の焦点距離を有する反射部材と、負の焦点距離を有する反射部材及び正の焦点距離を有する反射部材からの光を受光し、この光を波長分散させる分散素子と、分散素子にて波長分散された信号光を波長ごとに偏向可能な偏向素子アレイと、負の焦点距離を有する反射部材と偏向素子アレイの間に配置されたレンズと、を有することを特徴としている。
【0010】
本発明の別の態様に係る波長選択スイッチは、波長多重された信号光の入力部と、入力部からの信号光を受光する、互いに反射面同士が向き合った、負の焦点距離を有する反射部材及び正の焦点距離を有する反射部材と、負の焦点距離を有する反射部材及び正の焦点距離を有する反射部材からの光を受光し、この光を波長分散させる分散素子と、分散素子にて波長分散された信号光を波長ごとに偏向可能な偏向素子アレイと、を有し、分散素子で分散される各信号光を含む面内において信号光が偏向素子アレイの各ミラーに直角に入射するように、偏向素子アレイの各ミラーが配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る波長選択スイッチは、光信号のスペーシングが狭くなっても、光学系が大型化せず、装置の小型化が可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる波長選択スイッチの構成例を示す図である。
【図2】第1実施形態のファイバアレイおよびレンズアレイの構成を示す図である。
【図3】第1実施形態のMEMSミラーアレイの構成を示す斜視図である。
【図4】第2実施形態にかかる波長選択スイッチの構成例を示す図である。
【図5】第2実施形態のMEMSミラーアレイの構成を示す、z方向から見た図である
【図6】第2実施形態のMEMSミラーアレイの構成を示す、x方向から見た図である
【図7】第3実施形態にかかる波長選択スイッチの構成例を示す図である。
【図8】光信号のチャンネルスペーシングが100GHzの場合の周波数に対する信号出力の変化を示す模式図である。
【図9】光信号のチャンネルスペーシングが50GHzの場合の周波数に対する信号出力の変化を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明のある態様に係る波長選択スイッチの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、特許請求の範囲に記載された本発明が限定されるものではない。すなわち、本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
また、各部材、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
本実施形態の波長選択スイッチの光学系では、光ファイバから発した光を凸面および凹面の2つのミラーで反射させて平行光にしてグレーティングに入射させ、グレーティングから出射した平行光を再び2つのミラーで反射させてMEMSミラーに集光している。集光光学系全体の焦点距離に比べて、全長を短くするために、グレーティング側を遠焦点側としたテレフォトタイプの構成となっている。すなわち、グレーティング側に正の焦点距離を有する凹面鏡、光ファイバ、MEMS側に負の焦点距離を有する凸面鏡を配置している。
【0014】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る波長選択スイッチの構成及び動作について説明する。図1は、第1実施形態に係る波長選択スイッチ100の構成例を示す図である。
波長選択スイッチ100は、いわゆる透過型の波長選択スイッチである。この波長選択スイッチ100は、複数の光ファイバからなるファイバアレイ101と、マイクロレンズアレイ102と、ウェッジプリズム裏面ミラー103と、凸面ミラー104と、凹面ミラー105と、グレーティング106と、ウェッジプリズム107と、フィールドレンズ108と、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)モジュールであるMEMSミラーアレイ109と、を備えている。
【0015】
図2は、ファイバアレイ101とマイクロレンズアレイ102の構成を示す斜視図である。ファイバアレイ101(入力部、出力部)を構成する各光ファイバと、マイクロレンズアレイ102を構成する各マイクロレンズと、はそれぞれ対になっており、これらの対がアレイ状に配置されている。ファイバアレイ101は光入出力ポートとして機能する。なお、ファイバアレイ101を構成する何れのファイバを入力部または出力部として利用するかは、ユーザが適宜設定することができる。例えば、ファイバアレイ101の一つの光ファイバのみを入力用ポートとして用いて、それ以外の光ファイバを出力用ポートに用いてもよいし、入力用のポートと、出力用のポートと、を複数ずつ設けても良い。必ずしも、全ての光ファイバを、入力ポートまたは出力ポートとして使用する必要はなく、入力ポートまたは出力ポートとして機能していない入出力ポートが存在してもよい。また、ファイバの本数は、図2に記載の本数(4本)に限定されるものではない。また、ファイバアレイ101に代えて、光導波路を用いてもよい。
【0016】
ファイバアレイ101の光ファイバのひとつ(以下、「第1の光ファイバ」という。)から、波長多重された信号光が、マイクロレンズアレイ102を経てウェッジプリズム裏面ミラー103に向けて出射される。この出射光は、凸面ミラー104、凹面ミラー105、グレーティング106、凹面ミラー105、凸面ミラー104、ウェッジプリズム107、フィールドレンズ108を順に経由して、MEMSミラーアレイ109(偏向素子アレイ)に入射する。ここで、ファイバアレイ101からウェッジプリズム裏面ミラー103へ出射し、MEMSミラーアレイ109に至るまでの経路を往路と呼ぶ。
【0017】
MEMSミラーアレイ109で反射された光は、上記の往路と逆向きの経路(復路)でファイバアレイ101に入射する。
図1では往路において光の進む方向を矢印で示している。復路では、図1の矢印とは逆の方向に光は進む。なお、図1において、グレーティング106からは、2つの矢印のみが明示されているが、実際には、ファイバアレイ101に入力される波長の数に応じて、2以上の方向に分散される。
【0018】
次に、波長選択スイッチ100内での信号光の光線としてのふるまいを説明する。
マイクロレンズアレイ102から出射した光は、集光されたのち発散光となり、ウェッジプリズム裏面ミラー103に入射する。ウェッジプリズム裏面ミラー103に入射した光は、反射されて凸面ミラー104に入射する。凸面ミラー104に入射した光は、反射されて発散光となり凹面ミラー105に入射する。凹面ミラー105に入射した光は、反射されておおよそ平行光となり、分散素子としてのグレーティング106に入射する。グレーティング106は、波長多重光を分散する。
【0019】
グレーティング106で波長分散された光は、波長ごとにある一定の傾きを有した平行光となり、再び凹面ミラー105に入射する。凹面ミラー105に入射した光は、反射されて収束光となり凸面ミラー104に入射する。凸面ミラー104に入射した光は、反射されて収束しながらウェッジプリズム107に入射する。ウェッジプリズム107に入射した光は向きを変えてフィールドレンズ108に入射する。フィールドレンズ108に入射した光はテレセントリックな光束となり、MEMSミラーアレイ109の各波長に対応したマイクロミラーM(図3)に集光される。ここで、ファイバアレイ101の光ファイバ端面とマイクロミラーMとは光学的に共役である。また、図3は、MEMSミラーアレイ109の構成を示す斜視図である。
【0020】
マイクロミラーMは、図3に示すように、それぞれのミラーがローカルのx軸(副軸)とy軸(主軸)の周りに回転可能で、主にy軸に関する回転により、入射した光を入射方向とは異なる方向へ反射する。ここで、光の進行方向を光軸方向(z方向)とし、MEMSミラーアレイ109の配列された方向をy方向とし、光軸方向およびy方向のそれぞれに直交する方向をx方向と呼ぶ。
なお、現実の波長選択スイッチの光路中に、図示しないミラー、プリズム等の偏向部材が光路を折り曲げるために配置されている場合には、x方向及びy方向との説明は、このような偏向部材が無いものとした仮想的な光学系を前提として用いられることとする。
【0021】
マイクロミラーMで反射された光は、フィールドレンズ108を経て、再びウェッジプリズム107に入射し、凸面ミラー104、凹面ミラー105でそれぞれ反射され、グレーティング106に入射する。グレーティング106により回折されたそれぞれの波長の光は、図1に示すyz平面内では往路と同一の光路となる。一方、グレーティング106によって分散された各波長の光は、対応するマイクロミラーMの傾き角に応じて、図1のyz平面に垂直な面内では、往路の光と異なる位置を通る。
【0022】
従って、復路の光は、各波長に対応したマイクロミラーMの傾き角に応じて、ファイバアレイ101の入力ポート以外の、異なるファイバに入射する。
このように、第1の光ファイバから出射した多波長成分の光は、波長ごとにMEMSミラーアレイ109のそれぞれのマイクロミラーMの傾き角に応じて選択的に他のファイバに入射する。
【0023】
次に、波長選択スイッチ100の各要素の働きについて、例を挙げて説明する。
この波長選択スイッチに入射する光信号の周波数帯はいわゆるCバンドであり、スペーシングは50GHzである。
ウェッジプリズム裏面ミラー103は、マイクロレンズアレイ102からの光を凸面ミラー104へ反射するとともに、像面の傾きを補正する働きを有している。
凸面ミラー104は、負の焦点距離を有する反射部材であって、球面形状、又は非球面形状(例えば軸はずしの回転双曲面)を有し、光を発散させる働きを有する。凸面ミラー104の焦点距離は−80mmである。
【0024】
凹面ミラー105は、正の焦点距離を有する反射部材であって、球面、又は非球面形状(例えば軸はずしの回転放物面)を有し、光を収束する働きを有する。凹面ミラー105の焦点距離は100mmである。
これら凸面ミラー104と凹面ミラー105との間隔は60mmである。凸面ミラー104と凹面ミラー105を組み合わせ、さらにフィールドレンズ108を含めると、全体の焦点距離は193.5mmとなる。
【0025】
また、凹面ミラー105からグレーティング106までの距離は60mmであり、凸面ミラー104からMEMSミラーアレイ109までの距離は80mmである。
このように全体の焦点距離に対して光学系の長さを短くすることができる。
【0026】
グレーティング106は、例えばガラス基板上にグレーティングが形成されている、反射型のグレーティングである。グレーティング106においては、1mmあたり1000本の溝が形成されている。
【0027】
ウェッジプリズム107は像面の傾きを補正する働きを有している。
フィールドレンズ108は、MEMSミラーアレイ109に入射する光束がテレセントリックとなるように、ウェッジプリズム107とMEMSミラーアレイ109の間に配置されている。ここで、フィールドレンズ108を配置しない場合には、グレーティング106が凸面ミラー104と凹面ミラー105との合成系の前側焦点より、凹面ミラー105の近くに位置しているため、グレーティング106で回折した各波長の光束はMEMSミラーアレイ109に対してテレセントリックとはならない。フィールドレンズ108は、MEMSミラーアレイ109に入射する光束をテレセントリック光に変換する働きを有している。フィールドレンズ108の焦点距離は150mmである。
【0028】
MEMSミラーアレイ109(光偏向部材)は、グレーティング106で帯状に分散された光の波長に対応して波長分散方向に並ぶように配置された、複数のマイクロミラーMのアレイを有する。また、MEMSミラーアレイ109には、マイクロミラーMの駆動に用いる図示しない駆動機構がついている。マイクロミラーMのそれぞれの間隔(ピッチ)は97μmである。
なお、図3において、MEMSミラーアレイ109として、8枚のマイクロミラーMのみが図示されているが、MEMSミラーアレイ109を構成するマイクロミラーMの数は、8つに限定されない。
また、MEMSミラーアレイ109に代えて、再帰反射器や、液晶素子や光学結晶、反射型の液晶表示パネルであるLOCS(Liquid crystal on silicon)を用いて構成することもできる。
また、各マイクロミラーMのミラー面の配置間隔や、形状や、面積は、同じでも異なっていても良い。
また、第1実施形態ではひとつの光入力ポートから複数の光出力ポートへの結合に関して説明したが、複数の光入力ポートからひとつの光出力ポートへの結合を行うことも可能である。
【0029】
第1実施形態に係る波長選択スイッチ100においては、グレーティング106とMEMSミラーアレイ109の間に、凹面ミラー105及び凸面ミラー104を配置することにより、MEMSミラーアレイ109上へ信号光を集光する光学系全体の焦点距離を長くしている。これにより、光信号のスペーシングが狭くなることに対応可能となる。
さらに、正の焦点距離を有する凹面ミラー105をグレーティング106側に配置し、負の焦点距離を有する凸面ミラー104をMEMSミラーアレイ109側に配置することにより、集光光学系全体の焦点距離に対して全長を短くすることができる。
このような構成により、光学系を大型化させることなく、狭いスペーシングに対応することができ、装置の小型化が可能となる。
【0030】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る波長選択スイッチの構成及び動作について説明する。図4は、第2実施形態にかかる波長選択スイッチ200の構成例を示す図である。
第2実施形態の波長選択スイッチ200は、いわゆる透過型の波長選択スイッチである。この波長選択スイッチ200は、複数の光ファイバからなるファイバアレイ101と、マイクロレンズアレイ102と、ウェッジプリズム裏面ミラー203と、凸面ミラー204と、凹面ミラー205と、グレーティング206と、ウェッジプリズム207と、MEMSモジュールであるMEMSミラーアレイ209と、を備えている。
なお、ファイバアレイ101とマイクロレンズアレイ102は、第1実施形態の波長選択スイッチと同様であるため、同じ参照符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0031】
ファイバアレイ101の第1の光ファイバから、波長多重された信号光が、マイクロレンズアレイ102を経てウェッジプリズム裏面ミラー203に向けて出射される。この出射光は、凸面ミラー204、凹面ミラー205、グレーティング206、凹面ミラー205、凸面ミラー204、ウェッジプリズム207を順に経由してMEMSミラーアレイ209に入射する。ここで、ファイバアレイ101からウェッジプリズム裏面ミラー203へ出射し、MEMSミラーアレイ209に至るまでの経路を往路と呼ぶ。
【0032】
MEMSミラーアレイ209で反射された光は、上記の往路と逆向きの経路(復路)でファイバアレイ101に入射する。
図4では往路において光の進む方向を矢印で示している。復路では、図4の矢印とは逆の方向に光は進む。なお、図4において、グレーティング206からは、2つの矢印のみが明示されているが、実際には、ファイバアレイ101に入力される波長の数に応じて、2以上の方向に分散される。
【0033】
次に、波長選択スイッチ200内での信号光の光線としてのふるまいを説明する。
マイクロレンズアレイ102から出射した光は、集光されたのち発散光となり、ウェッジプリズム裏面ミラー203に入射する。ウェッジプリズム裏面ミラー203に入射した光は、反射されて凸面ミラー204に入射する。凸面ミラー204に入射した光は、反射されて発散光となり凹面ミラー205に入射する。凹面ミラー205に入射した光は、反射されておおよそ平行光となり、分散素子としてのグレーティング206に入射する。グレーティング206は、波長多重光を分散する。
【0034】
グレーティング206で波長分散された光は、波長ごとにある一定の傾きを有した平行光となり、再び凹面ミラー205に入射する。凹面ミラー205に入射した光は、反射されて収束光となり凸面ミラー204に入射する。凸面ミラー204に入射した光は、反射されて収束しながら、ウェッジプリズム207に入射する。ウェッジプリズム207に入射した光は向きを変えて出射し、MEMSミラーアレイ209の各波長に対応したマイクロミラーM(図5、図6)に集光される。ここで、ファイバアレイ101の光ファイバ端面とマイクロミラーMとは光学的に共役である。
【0035】
また、第2実施形態の波長選択スイッチ200は、第1実施形態の波長選択スイッチ100とは異なり、ウェッジプリズム207とMEMSミラーアレイ209の間にフィールドレンズが配置されていないため、マイクロミラーMに入射する光束はテレセントリックではない。波長選択スイッチ200においては、入射瞳がウェッジプリズム207側にある。
【0036】
図5は、MEMSミラーアレイ209の構成を示す、z方向から見た図である。図6は、MEMSミラーアレイ209の構成を示す、x方向から見た図である。ただし、ミラーアレイ209を構成するマイクロミラーMの数は、図6に記載の数に限定されない。
マイクロミラーMは、第1実施形態のMEMSミラーアレイ109のマイクロミラーMと同様に、それぞれのミラーがローカルのx軸(副軸)とy軸(主軸)の周りに回転可能で、主にy軸に関する回転により、入射した光を入射方向とは異なる方向へ反射する。
【0037】
波長選択スイッチ200では、マイクロミラーMに入射する光はテレセントリックではないため、マイクロミラーMすべてがy軸(主軸)に関して平行であると、復路の光は光学系の有効径からはずれてしまい、光ファイバアレイ101に到達することができない。このため、復路の光が各光学部材の有効径内を通り、ファイバに入射可能なように、それぞれのマイクロミラーMは、図6に示すようにx軸(副軸)に関して傾きを有している。この傾きは、中心部のマイクロミラーに比べて、周辺部のマイクロミラーのほうが、大きい。さらに、各マイクロミラーMは、グレーティング206によって分散された各信号光を含むyz平面において、入射光が直角に入射するように配置されている。ただし、波長選択スイッチに求められる精度に応じて、入射光が略直角に入射するように配置されていてもよい。ここで、図6においては、光線を破線で表している。
【0038】
マイクロミラーMで反射された光は、再びウェッジプリズム207に入射し、凸面ミラー204、凹面ミラー205でそれぞれ反射され、グレーティング206に入射する。グレーティング206により回折されたそれぞれの波長の光は、図4に示すyz平面内では往路と同一の光路となる。一方、グレーティング206によって回折された各波長の光は、対応するマイクロミラーMの傾き角に応じて、図4のyz平面に垂直な面内では、往路の光と異なる位置を通る。
【0039】
復路の光は、各波長に対応したマイクロミラーMの傾き角に応じて、ファイバアレイ101の入力ポート以外の、異なるファイバに入射する。
このように、第1の光ファイバから出射した多波長成分の光は、波長ごとにMEMSミラーアレイ209のそれぞれのマイクロミラーMの傾き角に応じて選択的に他のファイバに入射する。
【0040】
次に、波長選択スイッチ200の各要素の働きについて、例を挙げて説明する。
この波長選択スイッチに入射する光信号の周波数帯はいわゆるCバンドであり、スペーシングは50GHzである。
ウェッジプリズム裏面ミラー203は、マイクロレンズアレイ102からの光を凸面ミラー204へ反射するとともに、像面の傾きを補正する働きを有している。
凸面ミラー204は、負の焦点距離を有する反射部材であって、球面形状、又は非球面形状(例えば軸はずしの回転双曲面)を有し、光を発散させる働きを有する。凸面ミラー204の焦点距離は−80mmである。
【0041】
凹面ミラー205は、正の焦点距離を有する反射部材であって、球面、又は非球面形状(例えば軸はずしの回転放物面)を有し、光を収束する働きを有する。凹面ミラー205の焦点距離は100mmである。これら凸面ミラー204と凹面ミラー205との間隔は60mmである。凸面ミラー204と凹面ミラー205を組み合わると、全体の焦点距離は200mmとなる。
【0042】
また、凹面ミラー205からグレーティング206までの距離は60mmであり、凸面ミラー204からMEMSミラーアレイ209までの距離は80mmである。
このように全体の焦点距離に対して光学系の長さを短くすることができる。
【0043】
グレーティング206は、例えばガラス基板上にグレーティングが形成されている、反射型のグレーティングである。グレーティング206においては、1mmあたり1000本の溝が形成されている。
【0044】
ウェッジプリズム207は像面の傾きを補正する働きを有している。
MEMSミラーアレイ209(光偏向部材)は、グレーティング206で帯状に分散された光の波長に対応して波長分散方向に並ぶように配置された、複数のマイクロミラーMのアレイを有する。また、MEMSミラーアレイ209には、マイクロミラーMの駆動に用いる図示しない駆動機構がついている。マイクロミラーMのそれぞれの間隔(ピッチ)は100μmである。
なお、第2実施形態ではひとつの光入力ポートから複数の光出力ポートへの結合に関して説明したが、複数の光入力ポートからひとつの光出力ポートへの結合を行うことも可能である。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【0045】
(第3実施形態)
本発明の第3実施形態に係る波長選択スイッチの構成及び動作について説明する。図7は、第3実施形態にかかる波長選択スイッチ300の構成例を示す図である。
【0046】
第3実施形態の波長選択スイッチ300においては、第1実施形態の凹面ミラー105に代えて凹面裏面ミラー305を用いた点を除いて第1実施形態と同様の構成である。図7では、第1実施形態と同じ部材については同じ参照符号を用いている。
【0047】
凹面裏面ミラー305はメニスカス形状をした部材であり、光の入射面と反射面を有している。全体としての焦点距離は例えば−80mmである。入射面及び反射面の形状は、それぞれ球面、又は非球面(例えば軸はずしの回転放物面)である。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
なお、第2実施形態の凹面ミラー205に代えて凹面裏面ミラー305を用いてもよい。
【0048】
第3実施形態では、第1実施形態の凹面ミラー105に代えて凹面裏面ミラー305を用いたが、裏面ミラーとして、第1実施形態の凸面ミラー104に代えて凸面裏面ミラーを用いることもできる。また、第1実施形態の凸面ミラー104に代えて凸面裏面ミラーを用いると同時に、第1実施形態の凹面ミラー105に代えて凹面裏面ミラー305を用いてもよい。
【0049】
また、第2実施形態の凸面ミラー204に代えて凸面裏面ミラーを用いてもよい。
また、第2実施形態の凸面ミラー204に代えて凸面裏面ミラーを用いると同時に、第2実施形態の凹面ミラー105に代えて凹面裏面ミラー305を用いてもよい。
また、グレーティング106、206に代えて、透過型の分散素子(リットマン−メトカルフ構成も含む)や、イマージョングレーティング等を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明に係る波長選択スイッチは、光信号のチャンネルスペーシングが狭くなっても装置を小型化できる効果がある。
【符号の説明】
【0051】
100 波長選択スイッチ
101 ファイバアレイ
102 マイクロレンズアレイ
103 ウェッジプリズム裏面ミラー
104 凸面ミラー
105 凹面ミラー
106 グレーティング
107 ウェッジプリズム
108 フィールドレンズ
109 MEMSミラーアレイ
200 波長選択スイッチ
203 ウェッジプリズム裏面ミラー
204 凸面ミラー
205 凹面ミラー
206 グレーティング
207 ウェッジプリズム
209 MEMSミラーアレイ
300 波長選択スイッチ
305 凹面裏面ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長多重された信号光の入力部と、
前記入力部からの前記信号光を受光する、互いに反射面同士が向き合った、負の焦点距離を有する反射部材及び正の焦点距離を有する反射部材と、
前記負の焦点距離を有する反射部材及び前記正の焦点距離を有する反射部材からの光を受光し、この光を波長分散させる分散素子と、
前記分散素子にて波長分散された信号光を波長ごとに偏向可能な偏向素子アレイと、
前記負の焦点距離を有する反射部材と前記偏向素子アレイの間に配置されたレンズと、
を有することを特徴とする波長選択スイッチ。
【請求項2】
前記正の焦点距離を有する反射部材が凹面ミラーであることを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項3】
前記負の焦点距離を有する反射部材が凸面ミラーであることを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項4】
前記正の焦点距離を有する反射部材が凹面裏面ミラーであることを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項5】
前記負の焦点距離を有する反射部材が凸面裏面ミラーであることを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項6】
波長多重された信号光の入力部と、
前記入力部からの前記信号光を受光する、互いに反射面同士が向き合った、負の焦点距離を有する反射部材及び正の焦点距離を有する反射部材と、
前記負の焦点距離を有する反射部材及び前記正の焦点距離を有する反射部材からの光を受光し、この光を波長分散させる分散素子と、
前記分散素子にて波長分散された信号光を波長ごとに偏向可能な偏向素子アレイと、
を有し、
前記分散素子で分散される各信号光を含む面内において前記信号光が前記偏向素子アレイの各ミラーに直角に入射するように、前記偏向素子アレイの各ミラーが配置されていることを特徴とする波長選択スイッチ。
【請求項7】
前記正の焦点距離を有する反射部材が凹面ミラーであることを特徴とする請求項6に記載の波長選択スイッチ。
【請求項8】
前記負の焦点距離を有する反射部材が凸面ミラーであることを特徴とする請求項6に記載の波長選択スイッチ。
【請求項9】
前記正の焦点距離を有する反射部材が凹面裏面ミラーであることを特徴とする請求項6に記載の波長選択スイッチ。
【請求項10】
前記負の焦点距離を有する反射部材が凹面裏面ミラーであることを特徴とする請求項6に記載の波長選択スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−173720(P2012−173720A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38794(P2011−38794)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】