説明

泥土脱水装置、及び泥土脱水方法

【課題】大がかりな設備を必要とすることなく効率よく脱水することができる脱水装置、及び脱水方法を提供すること。
【解決手段】本発明の脱水装置1は、側面の一部をくり抜いて形成された網部4を設けた円筒容器3、この円筒容器3の内側に設けられた不透水性シート5、円筒容器の上側及び下側に設けられた蓋体7a,7b、蓋体7a,7bに設けられて、円筒容器内部の円筒管9と連通するバルブ11付きの連通管13、円筒管側面に設けられた複数の孔部15、孔部15を塞ぐように設けられた透水性フィルタ17、円筒容器3の上面及び底面を封止するシールリング19,20などから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、浚渫泥土のような含水比の高い泥土を脱水するための泥土脱水装置、及び泥土脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浚渫泥土のような含水比の高い泥土を処分する場合、水分を取り除いて脱水ケーキを作成する方法が行われている。このような方法により脱水を行う場合、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、フィルタープレス機などを用いて脱水処理を行っていた。
【特許文献1】特開2004−188363号
【特許文献2】特開2004−49933号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなフィルタープレス機などを用いる脱水処理は、大がかりな設備が必要であった。このため、広い作業用地が必要である上に施工管理などに労力がかかって非効率的であった。
【0004】
そこで、本発明は、大がかりな設備を必要とすることなく効率よく泥土を脱水する方法及び、脱水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために請求項1に記載された脱水装置は、泥土の脱水を行うための脱水装置であって、側面に複数の孔が設けられた管状部材と、前記管状部材の両端部を塞ぐとともに前記管状部材の外周側へ延出するように設けられ、少なくとも一方が着脱可能又は開閉可能に取り付けられた端部部材と、前記管状部材の周囲に、前記複数の孔を塞ぐように設けられた透水性部材と、前記管状部材を囲んで前記管状部材との間に前記泥土を収容するための空間が形成されるよう設けられ、両端部が前記端部部材に密封状態で取り付けられた不透水性部材と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、このような脱水装置に泥土を封入して水底に沈設するだけで脱水を行うことができるので、大がかりな設備を必要とすることなく脱水を行うことができる。
【0007】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載の脱水装置であって、前記蓋体の少なくとも一方は、前記管状部材の内部と、前記脱水装置の外部とを連通する連通管と、この連通管に設けられたバルブと、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、円筒管内に蓄積した水や、空気を脱水装置外部に排出することができるので、円筒管内の圧力を下げることができ、脱水効率の低下を防止できる。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2に記載の脱水装置であって、前記管状部材内の圧力を検出する圧力検出部を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載された発明は、請求項1から3のいずれかに記載の泥土脱水装置を用いて脱水対象物を脱水する泥土脱水方法であって、前記不透水性シートと前記管状部材との間に脱水対象物を封入し、前記脱水装置を水底へ沈設することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載された発明は、請求項1から3のいずれかに記載の泥土脱水装置を用いて脱水対象物を脱水する泥土脱水方法であって、大気中で前記円筒管内を減圧する減圧ステップと、前記不透水性シートと前記円筒管との間に脱水対象物を封入して、前記脱水装置を水底へ沈設する脱水ステップと、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、脱水ステップを行う前に円筒管内の減圧を行って、円筒管内の圧力と、水圧との差が大きい状態で脱水装置を水底に沈設するので、脱水効率を上げることができる。
【0013】
請求項6に記載された発明は、請求項1から3のいずれかに記載の泥土脱水装置を用いて脱水対象物を脱水する泥土脱水方法であって、前記不透水性シートと前記円筒管との間に脱水対象物を封入して、前記脱水装置を水底へ沈設する脱水ステップと、水中で前記円筒管内を減圧する水中減圧ステップと、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、脱水装置を水底に沈設した後も円筒管内の空気を排出する。これにより、円筒管内の圧力と水圧との圧力差によって脱水効率を上げることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大がかりな設備を必要とすることなく効率よく泥土を脱水することができる脱水装置、及び脱水方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の泥土脱水装置は、例えば、浚渫泥土のような含水比の高い泥土を図1及び図2に例示するような脱水装置1に封入して水底に沈設して用いる。このようにして、脱水装置1に封入した泥土21に水圧を加えることにより泥土21を脱水する。まず、図1、及び図2を参照して脱水装置1について説明する。なお、同じ部材については、同一の符号を付して説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態である脱水装置1の概略図である。同図に示すように、脱水装置1は、円筒容器3を設けて構成されている。この円筒容器3は、側面の一部がくり抜かれて網部が設けられており、内周面には不透水性シート5が設けられている。不透水性シート5としては特に制限はないが、例えば、ゴムシート、ビニールシートなどを用いることができる。
【0018】
図2は、脱水装置1の断面斜視図である。同図に示すように、円筒容器3の内部には、円筒容器3よりも小径の円筒管9が配設されている。円筒管9の側面には複数の孔部15が形成されている。また、円筒管9には、その外周面全体を覆うように透水性フィルタ17が設けられている。透水性フィルタ17としては、例えば、フィルタークロスなどの濾布を用いることができる。
【0019】
円筒容器3、及び円筒管9の両端開口部には、蓋体7a、7bが着脱可能に取り付けられている。各蓋体7a,7bの側面には、不透水性シート5の外側からシールリング20が設けられ、蓋体7a,7bが円筒容器3の端部にはめ込まれることにより、不透水性シート5の両端を密封状態で固定できるように構成されている。また、円筒管9の両端部には、シーリング19が設けられ、円筒管9の両端を密封できるように構成されている。また、上側の蓋体7aの表面には、後に詳細に説明するが、脱水装置1をクレーンなどで吊す際に、ワイヤーなどを通すためのフック部8が設けられている。一方、下側の蓋体7bには脚23が設けられている。なお、ここでいう蓋体7a,7bは、本発明の端部部材に相当する。
【0020】
また、各蓋体7a,7bはバルブ11付きの連通管13を設けており、バルブ11を開閉することにより円筒管9内部と脱水装置1外部とが連通するように構成されている。この連通管13は、上側または下側の蓋体7のどちらか一方のみに設けるようにしてもよい。なお、この円筒容器3の寸法は、例えば高さ約6m、直径約3mであり、円筒管3の直径は、例えば約2mである。
【0021】
また、図3は、脱水装置1の別の形態を示す図である。図1、図2の構成では、蓋体7を着脱可能に構成したが、図3に示すようにヒンジ25を用いて開閉可能に構成してもよい。
【0022】
このような脱水装置1において、泥土21は不透水性シート5と、透水性フィルタ17との間に配置される。そして、円筒容器3の上面及び底面は、蓋体7で密封可能なため、水底に沈設しても直接水と接触することがない。また、透水性フィルタ17は、図2に示すように、円筒管9側面の全体を覆うように設けてもよいが、孔部15部分のみを覆うように設けてもよい。
【0023】
また、本実施形態における脱水装置は、円筒容器3と、円筒管9とを設けた二重円筒管構造となっているが、不透水性シート5が密封状態で蓋体7a,7bに取り付けられるようになっていれば、円筒容器3を省略してもよい。
【0024】
次に本発明の脱水方法について説明する。本発明の脱水方法は、上述の脱水装置1に泥土21を封入し、水底に沈設することにより脱水を行う。泥土21の脱水は、例えば、図4に示すように、クレーン40などを用いて海中に沈設することにより行うことができる。脱水装置1は、例えば、水深約15mの場所に沈設する。もちろん、船などで脱水装置1を沖合まで輸送して、より深い場所に沈設してもよい。
【0025】
また、図5に示すように、脱水装置1の側面を下にして沈設してもよい。このように脱水装置1の側面を下にして沈設することにより、脱水装置1の高さによる水深差が小さくなるので、脱水装置1の底面を下にして沈設した場合よりも泥土21全体に均等な水圧が加わって、脱水処理をより効率的に行うことが可能となる。
【0026】
図6は、水底に沈設した脱水装置1の断面の様子を模式的に示した図である。同図に示すように、脱水装置1を水底に沈設すると、泥土21は水圧を受けてその内部に含まれていた水が搾り出される。この水は透水性フィルタ17を通って円筒管9内に排出されて、円筒管9内に蓄積される。
【0027】
なお、円筒管9内に水が蓄積されるにつれて、円筒管9内の圧力が上昇して水圧に近づいていくため、脱水効率が低下する。このような脱水効率の低下を防ぐために、図7に示すように、上側の蓋体7aに設けられた連通管13のバルブ11を開いて円筒管9内の空気を排出し、円筒管9内の圧力を下げるようにしてもよい。
【0028】
このように、脱水効率の低下を防ぐために円筒管9内の空気を抜いて円筒管9内を減圧する作業は、上述のように脱水装置1を水底に沈設した後に行ってもよいが、この減圧作業は、脱水装置1沈設前に行ってもよい。また、減圧して沈設した後も円筒管9内から空気を抜き続けてもよい。
【0029】
なお、円筒管9内の空気を抜く代わりに、下側の蓋体7bに設けられた連通管13に設けられたバルブ11を開いて円筒管9内に蓄積した水を脱水装置1の外部へ排出することにより脱水性能の低下を防止するようにしてもよい。
【0030】
また、円筒管9内の気圧を測定するための圧力センサ(図示せず)を設けて、脱水処理中の円筒管9内の気圧を測定してもよい。このように、円筒管9内の気圧を測定することによって、脱水効率の低下の度合いを判断し、気圧が一定値に達したら上側のバルブ11を開くなどの対応をとることができる。或いは、円筒管9内の水の溜まる底部に圧力センサを設けて水圧を測定すれば、円筒管9内に蓄積した水の水位を推定することができる。この水位の時間変化を観察すれば、水位が一定になった時点で脱水が終了したと判断することができる。
【0031】
以上のような方法により、大がかりな設備を必要とすることなく泥土を効率よく脱水することができる。なお、脱水後の泥土(脱水ケーキ)は、例えば図8に示すように、下側の蓋体7bを取り外した脱水装置1を、クレーン40で吊り下げることにより脱水装置1の外に排出することができる。
【0032】
なお、上述した実施形態において脱水装置1は円筒状の容器を用いているが、容器の形状に特に制限はない。また、脱水装置1の上端及び下端の両方に蓋体7を設けたが、一端部は円筒管9に固定されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】脱水装置の全体構成の一例を示す図である。
【図2】脱水装置の断面斜視図である。
【図3】脱水装置の別の形態を示す図である。
【図4】脱水方法の一実施形態を示す図である。
【図5】脱水装置の側面を下にして沈設した様子を示す図である。
【図6】水圧を加えた脱水装置の断面を模式的に示す図である。
【図7】脱水方法の他の実施形態を示す図である。
【図8】脱水ケーキの取り出し方の一例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0034】
1 脱水装置
3 円筒容器
4 網部
5 不透水性シート
7a,7b 蓋体
8 フック部
9 円筒管
11 バルブ
13 連通管
15 孔部
17 透水性フィルタ
19,20 シールリング
21 泥土
23 脚
25 ヒンジ
40 クレーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
泥土の脱水を行うための脱水装置であって、
側面に複数の孔が設けられた管状部材と、
前記管状部材の両端部を塞ぐとともに前記管状部材の外周側へ延出するように設けられ、少なくとも一方が着脱可能又は開閉可能に取り付けられた端部部材と、
前記管状部材の周囲に、前記複数の孔を塞ぐように備えられた透水性部材と、
前記管状部材を囲んで前記管状部材との間に前記泥土を収容するための空間が形成されるよう設けられ、両端部が前記端部部材に密封状態で取り付けられた不透水性部材と、
を備えることを特徴とする脱水装置。
【請求項2】
請求項1に記載の脱水装置であって、前記蓋体の少なくとも一方は、前記管状部材の内部と、前記脱水装置の外部とを連通する連通管と、この連通管に設けられたバルブと、を備えることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の脱水装置であって、前記管状部材の内部の圧力を検出する圧力検出部を備えることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の泥土脱水装置を用いて脱水対象物を脱水する方法であって、
前記不透水性シートと前記管状部材との間に脱水対象物を封入し、前記脱水装置を水底へ沈設することを特徴とする泥土脱水方法。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の泥土脱水装置を用いて脱水対象物を脱水する方法であって、
大気中で前記管状部材内を減圧する減圧ステップと、
前記不透水性シートと前記管状部材との間に脱水対象物を封入して、前記脱水装置を水底へ沈設する脱水ステップと、
を備えることを特徴とする泥土脱水方法。
【請求項6】
請求項1から3のいずれかに記載の泥土脱水装置を用いて脱水対象物を脱水する方法であって、
前記不透水性シートと前記管状部材との間に脱水対象物を封入して、前記脱水装置を水底へ沈設する脱水ステップと、
水中で前記管状部材内を減圧する水中減圧ステップと、を備えることを特徴とする泥土脱水方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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