説明

注入工法および注入装置

【課題】層ごとに地盤状況の異なる地盤に対し層ごとに、あるいは断面ごとに最適量の注入材を同時あるいは選択的に注入することができる注入工法および注入装置を提供する。
【解決手段】複数の注入地点にそれぞれ配置された複数の注入管1と、注入管1どうしを相互に接続する送液管5および6と、送液管5および6を介して各注入地点に注入材を送液すると共に、注入管1を介して各注入地点の地盤中に注入材を注入する複数の注入ポンプU1〜U8と、各注入地点に送液される注入材の流路を切り換える流路切換えバルブ9と、各注入地点に送液される注入材の流量および/または圧力を計測する流量・圧力計測装置8と、夫々を制御する集中管理装置10とを備え、各注入地点における注入材の流量および/または圧力、各注入地点における注入材の注入による地盤の変位を監視しつつ、複数の注入地点に同時にかつ連続的に注入材を注入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は注入工法および注入装置に関し、層ごとに地盤状況の異なる地盤に対して、層ごとに最適量の注入材を複数の注入地点に同時あるいは選択的に注入することができ、また、注入地点を地盤中の鉛直向および水平方向へと移動し三次元的に注入することができ、また、複数の注入地点に対する注入圧と注入量等を任意に制御することにより未改良部分の発生を防止することができ、さらに、注入に伴う地盤の隆起や変形等による地上構造物や地下構造物の不同沈下等を防止することができる。
【背景技術】
【0002】
一般に、地盤は層ごとに透水係数や間隙率が異なることから当然地盤状況も層ごとに異なる。従来、薬液注入工法による地盤改良は、図示しないが地盤中に注入管を単独あるいは間隔をあけて複数挿入し、注入管の深さを変えて注入ステージを上方に移動して層ごとに注入することにより地盤全体に注入材が行きわたるにしていた。
【0003】
ところで、注入工法による地盤改良で最も大きな課題は、透水係数の小さい微細砂層に注入材を確実に浸透させること、地盤性状の異なる複数の土層からなる地盤に注入材を均一に浸透させること、地盤改良領域内にできた地下水を貯溜した地下水ポケットによる未改良部分が、掘削に際して部分的な漏水をおこし、それが全体的な破壊をもたらすこと、そして無計画な注入によって地盤が隆起したり沈下したりして地上の既存建物や地中の地下構造物が被害を被ることであった。
【0004】
一般に、微細砂層の透水性は通常、k=10-3〜10-4cm/秒であり、このような土層に対して地盤の破壊を起こさないように注入材を注入するには、浸透理論上、注入管1本当り毎分1リットル〜10数リットル以下の低吐出量で低圧注入する必要がある。
【0005】
しかし、従来の注入工法では、各注入管に対してそれぞれ一セットの注入ポンプを接続し、しかも工期をできるだけ短くしたいという経済的な理由や注入ポンプの能力といった性能的な理由により、注入材の注入量を毎分10〜20リットル程度とせざるを得ないため、注入中に注入圧が高くなって地盤が破壊したり隆起したりすることがあり、このため地上に建設された既存の構造物や地中に埋設された地下構造物に不同沈下などの悪影響を及ぼすおそれがあった。
【0006】
また、微細な土層の浸透固結が不充分なために未改良部分が生じてしまうという課題もあった。
【0007】
さらに、地盤性状の異なる複数の土層からなる地盤に注入材を注入する際、土層の変化に対応して注入材の注入速度を変えたり、注入量をコントロールすることは実際上難しく、このため、ある層では注入材が多量に拡がり、またある層では僅かしか浸透されない等の注入のむらが起こり、隣接する固結体どうしの連続性が得られないという課題があった。
【0008】
このような問題を解決するために、当出願人は先に特許文献1、2および特許文献3にそれぞれ開示するような地盤注入工法を開発し、これについて出願もしている。
【0009】
特許文献1に記載された注入工法は、複数の注入管を地盤中に設置し、当該複数の注入管を介して地盤中に地盤改良材を注入するに当たり、一プラント中に多数の注入ポンプを備え、これら多数の注入ポンプを一台の駆動源で同時に作動させる多連装注入ポンプによって各注入管に改良材を圧送し地盤中に注入するものである。
【0010】
また、特許文献2に記載された注入工法は、上述したように低圧浸透注入による多点同時注入ポンプの利点を生かしながら、各注入管の注入状況に応じてそれぞれの注入ポンプが独立して作動し、かつ全体として一括管理することにより、地盤性状、注入状況に応じてそれぞれの注入ポンプの注入速度、注入圧、注入の中止、再開、ゲル化時間などを任意に管理し得、しかも多数の注入ポンプの作動を同時に管理して注入状況の全体を把握管理することによって、複数の注入地点に注入材を同時に注入する方法で、前者の公知技術の欠点を改良したものである。
【0011】
そして、特許文献3に記載された地盤注入工法は、一注入地点に対して一本の注入管に主材注入材(A液)を送液するための送液管と反応材注入材(B液)を送液するための送液管の2系統の送液管を接続し、この2系統の送液管から供給されたA液とB液の両液を注入管内で混合し、所定のゲル化タイムでゲル化するように地盤中に注入する方法、あるいは一注入地点に対して2本の注入管を用い、一方から浸透型注入材や浸透性の悪い注入材を注入し、他方の注入管から浸透性の良い注入材を注入する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平12−45259号公報
【特許文献2】特開2003−232020号公報
【特許文献3】特開平9−291526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1に記載された注入方法では、地盤中に設けた複数の注入孔に対して、一台の駆動源で一台の注入ポンプを駆動して注入地点を順次切換えながら注入するか、多連装注入ポンプを構成する多数の注入ポンプを同時に駆動するため、それぞれの吐出口における地盤条件が異なり、そのため最適な注入条件が異なるにもかかわらず、1セットの注入ポンプのすべてが同一条件で駆動するため、それぞれの注入地点に最適の注入を行うことができないという課題があった。
【0014】
また、1台の注入ポンプに詰まる等のトラブルや故障が発生した場合、一セット全体が作動しなくなり、また注入ポンプの台数が多くなるに伴なってトラブルや故障などが頻繁に発生しやすくなり、作業性を低下させるという課題があった。
【0015】
一方、特許文献2に記載された注入工法では、複数ケ所の注入地点に注入材を同時注入しようとする場合、それぞれ独立して作動する注入ポンプを複数台必要とするため、その分だけトラブルが頻発することになるし、また大きさや重量が大きくなり、作業性が低下するという課題があった。
【0016】
また、複数の注入地点に注入材を同時注入する場合、地盤中の地下水が地盤改良領域内に閉じ込められ(地下水ポケット)、その領域への注入材の浸透が不可能になり、地盤改良が不十分になるという課題があった。
【0017】
また、多数の注入地点に注入材を注入することはできるものの、注入地点を多くするとその分注入ポンプも多数台必要とし、それだけトラブルが発生しやすくなり、またメンテナンスにも手間がかかりランニングコストも増大するという課題があった。
【0018】
また、いずれの注入工法も、地下水と注入材とを置き換えることを地盤改良の基本とするにもかかわらず、複数の注入地点に対して注入を同時に行なうと、注入材によって地下水を封じ込めてしまうという問題(地下水ポケット)があるため、特に特許文献2に示す注入工法の場合、注入材の浸透が不十分な部分、すなわち未改良部分が発生しやすいことから、地下水の移動に配慮して注入地点を選択しながら注入を行うと、使用されないポンプが生じて装置として無駄が生じるという問題があった。
【0019】
そして、特許文献3に記載された注入方法は、一本の注入管に当該注入管に接続された二本の送液管の一方から主材注入材(A液)を、他方の送液管から反応材注入材(B液)をそれぞれ送液し、注入管内においてA液とB液を合流し、所定のゲル化タイムでゲル化するように地盤中に注入する方法、あるいは一注入地点に対し、2本の注入管から二種類の注入材を注入する方法であり、複数の注入地点に同時注入する注入方法ではなく、注入地点ごとに切り換えながら注入する注入方法であることから、注入工程を大幅に短縮することができないという課題があった。
【0020】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、層ごとに地盤状況の異なる地盤に対して、層ごとに最適量の注入材を複数の注入地点に同時あるいは選択的に注入することができ、また、注入地点を地盤中の鉛直向および水平方向へと移動し三次元的に注入することができ、また、複数の注入地点に対する注入圧や注入量等を任意に制御することにより未改良部分の発生を防止することができ、さらに、注入に伴う地盤の隆起や変形等による地上構造物や地下構造物の不同沈下等を防止することができる注入工法および注入装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は、主として注入材貯蔵タンクから各注入地点に注入材を注入ポンプによって送液し、各注入地点の地盤中に注入管を介して注入する際、注入材の流路を流路切換えバルブによって適宜切換え、かつ流量・圧力計測装置によって流量と注入圧を監視することにより複数の注入地点に必要量の注入材を同時または選択的に注入することができ、また地盤変位測定装置によって注入地点における注入材の注入に伴う地盤の隆起等を監視することにより注入による既存の構造物や地下構造物に与える悪影響を防止できるようにしたものである。
【0022】
また、複数の注入ポンプと流路切換えバルブを集中管理装置で一括して制御することで、注入工法による地盤改良を効率的に行えるようにしたもので、特に注入材の注入量、注入圧、および注入速度を管理しながら複数の注入地点に同時注入し、かつ少なくとも1ケ以上の注入ポンプにより複数の流路切換えバルブを介して複数の注入地点に連続注入することができる。
【0023】
なお、流路切換えバルブには電磁バルブや流体圧などによって機械的に作動するもの、さらには手動で作動するもの等を用いることができる。また、注入ポンプは、一方では独立してそれぞれの注入地点に注入材を最適に注入する機能を有し、他方では複数の注入地点に対する注入を全体として一括管理する一セットの注入装置を構成することにより同時注入かつ他の注入地点への同時連続注入を可能にしている。
【0024】
本発明において、各注入地点の間隔は、平面的には0.5m〜4.0m程度、すなわち、一注入地点における浸透性固結径が0.5m〜4.0m程度であり、また、縦断面的には0.3m〜4.0m程度で、場合によっては一層を固結層としてもよい。
【0025】
また、地盤状況が各層ごとに異なる地盤に対しては、各層ごとに最適量の注入材を同時にあるいは選択的に注入することができ、また注入ステージを鉛直方向および/または横方向に適宜移動して地盤中の鉛直向および横方向への立体的な注入をも可能で、さらに複数の注入管による複数の注入地点への注入を任意に制御することを可能にして、複数の注入管を通して複数の注入地点に同時に注入することもできるため、これにより微細土層への浸透注入の信頼性を向上させ、かつ急速施工によって工期の短縮化も可能になる。
【0026】
また、複数の注入地点に横方向あるいは縦方向に同時にあるいは選択的にかつ連続的に注入することにより平面的かつ立体的に注入材の地下水との置き換えの方向性を制御して、これによって同時注入するにもかかわらず、注入領域内に地下水の貯留による未改良部分の形成を防ぎ、確実な注入効果を期待できる。
【0027】
さらに、以上を一括集中管理装置によって制御することにより、少ない台数の注入ポンプを用いて多数の注入地点に注入材を効果的に注入できるようにし、かつ注入材によって地下水が閉じ込められることにより形成される未改良部分、いわゆる「地下水のポケット」の発生を防止して作業性のすぐれた注入効果が得られる。また、地中構造物に対する間隙水圧の上昇に伴なう変形や破壊にも対処することができる。
【0028】
なぜなら、地中構造物の周辺に注入地点を均等な間隔で配置し、複数の注入地点から注入材を同時注入することにより間隙水圧を均等に上昇させ、かつ流路切換えバルブを連続して切り換えて注入領域を地中構造物の外周部に移行させることによって間隙水圧を均等に低減させることができるため、地中構造物に間隙水圧が不均等に圧が加わることはないので、地中構造物に破壊や変位が生じにくい。
【0029】
なお、注入材には軟弱地盤等の地盤を強化ないしは止水するための地盤固結用注入材、産業廃棄物等、公害物質の固化のための注入材、軟弱地盤に固結材そのものによる塊状固化物を造成してその周辺地盤を圧縮して強化するための可塑状ゲル注入材、公害物質からの有害物質の漏出を防止する止水層を形成するための固結材、公害物質の無公害化のための化学物質を含む注入薬材、あるいは重金属等を化学的に不活性化する重金属固定材などを利用することができ、本発明は、使用し得る注入材が溶液型注入材のみならず、懸濁型注入材も可能であり、これにより注入地点ごとのの地盤状況に応じた任意注入材を選択することができる。
【0030】
請求項1記載の注入工法は、複数の注入地点にそれぞれ配置された複数の注入管と、注入管どうしを相互に接続する送液管と、送液管を介して各注入地点に注入材を送液すると共に、注入管を介して各注入地点の地盤中に注入材を注入する複数の注入ポンプと、各注入地点に送液される注入材の流路を切り換える流路切換えバルブと、各注入地点に送液される注入材の流量および/または圧力を計測する流量・圧力計測装置と、注入ポンプ、流路切換えバルブ、流量・圧力計測装置を制御する集中管理装置を備え、注入ポンプ、流路切替えバルブ、流量・圧力計測装置を集中管理装置によって制御し、各注入地点における注入材の流量および/または圧力、各注入地点における注入材の注入による地盤の変位を監視しつつ、複数の注入地点に同時にかつ連続的に注入材を注入することを特徴とするものである。
【0031】
請求項2記載の注入工法は、請求項1記載の注入工法において、各注入地点における注入材の注入による地盤の変位を測定する地盤変位測定装置を備え、当該地盤変位計測装置によって計測された各注入地点における地盤変位に関するデータを集中管理装置に送信し、当該データに基づいて各注入地点における注入材の注入、中断、再開、継続、完了および注入材の流路切り換えを行うことを特徴とするものである。
【0032】
請求項3記載の注入工法は、請求項1または2記載の注入工法において、流量・圧力計測装置によって計測された各注入地点における注入材の流量および/または圧力に関するデータを集中管理装置に送信し、当該データに基づいて各注入地点における注入材の注入、中断、再開、継続、完了および注入材の流路切り換えを行うことを特徴とするものである。
【0033】
請求項4記載の注入工法は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の注入工法において、各注入地点を監視する監視装置を集中管理装置に接続し、当該監視装置に地盤変位計測装置によって計測された各注入地点における地盤変位に関するデータと、流量・圧力計測装置で計測された注入材の流量および/または圧力に関するデータを表示して、各注入地点における注入材の注入状況を一括監視することを特徴とするものである。
【0034】
請求項5記載の注入装置は、複数の注入地点に配置された複数の注入管と、注入管どうしを相互に接続する送液管と、送液管を介して各注入地点に注入材を送液すると共に、注入管を介して各注入地点の地盤中に注入材を注入する複数の注入ポンプと、各注入地点に送液される注入材の流路を切り換える流路切換えバルブと、各注入地点に送液される注入材の流量および/または圧力を計測する流量・圧力計測装置と、注入ポンプ、流路切換えバルブおよび流量・圧力計測装置を制御する集中管理装置を備えてなることを特徴とするものである。
【0035】
請求項6記載の注入装置は、請求項5記載の注入装置において、注入材の注入による地盤の変位を測定する地盤変位測定装置を備え、注入ポンプは、前記地盤変位測定装置によって測定され、集中管理装置から送信された地盤変位に関するデータ、注入材の流量および/または圧力に関するデータに基づいて制御され、各注入地点に送液される注入材の流量および/または圧力を調整するための変速機構を備えていることを特徴とするものである。
【0036】
本発明は、注入材貯蔵タンクから各注入地点に注入材を、送液管を介し注入ポンプによって送液し、各注入地点の地盤中に注入管を介して注入する際、注入材の流路を流路切換えバルブによって適宜切換え、かつ流量・圧力計測装置によって注入量を監視することにより複数の注入地点に同時または選択的に必要量の注入材を注入することができ、また地盤変位測定装置によって注入地点の注入材の注入に伴う地盤の隆起等を監視することにより注入材の注入による既存の構造物に与える悪影響を未然に防止することができる等の効果を有する。
【0037】
また、各注入地点の地盤中に注入管を介して注入される注入材を、当該注入材の流路を路切換えバルブによって切換えながら各注入地点に同時にまたは選択的に必要量を注入することが可能なため、地盤中に注入される注入材によって地下水が一定の方向に押しやられて排水されるように注入材の注入を行うことにより、いわゆる「地下水のポケット」の発生を防止して地盤全体を均一に地盤改良することができる等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の注入工法およびその装置を示す概念図である。
【図2】図1に図示する概念図のY軸方向の一部拡大断面図である。
【図3】図1に図示する概念図の注入地点の一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1〜図3は、本発明の注入工法およびその装置の一実施形態を示す概念図である。図において、符号1は注入材が注入される地盤の各注入地点(注入ポイント)に設置された注入管である。
【0040】
図示するように、各注入管1は、例えば地盤面上に複数の横軸X1,X2,X3,…と縦軸Y1,Y2,Y3,…を想定したときの横軸X1,X2,X3,…と縦軸Y1,Y2,Y3,…との各交点の地盤中に鉛直に挿入されている。
【0041】
注入管1には、例えば先端に注入材吐出口を供えた単管構造や二重管構造の注入管、一個乃至複数の吐出口を備えた外管とダブルパッカーやマルチパッカー(3ヶ以上のパッカー)を備えた内管とから構成された二重管構造の注入管、さらには軸方向の異なる位置に吐出口を有する複数の細管を束ねたもの、あるいは外管に当該外管の軸方向に複数の袋パッカーとこの袋パッカー間に位置して複数の吐出口を設けることにより構成され注入管等を用いることができ、注入管の構造は特に限定されない。
【0042】
例えば、単管構造の注入管を用い、浸透注入工法によって地盤改良を行うには、各注入地点の地盤中に注入管1を挿入し、地上から注入管1内にセメントミルク等の注入材を圧入する。そうすると、注入材は注入管1の吐出口から地盤中に吐出され、地盤中に浸透することにより一定範囲の地盤が均等に固結することにより地盤改良がなされる。
【0043】
また特に、注入材として可塑状ゲル注入材を地盤中に注入すると、注入材は注入管1の周囲で固結して柱状または塊状の固結体を形成すると共に、徐々に拡大して周囲の地盤を周囲に押し広げるように締め固めることにより地盤改良がなされる。
【0044】
さらに、地下水の排水方向を配慮して複数の注入地点に注入材を同時に注入することにより、注入材の固結体によって地下水が一定方向に押しやることができ、これにより注入材の注入と同時に地下水を一定方向に押しやって排水することができる。なお、隣接する各注入管1,1間の間隔は地盤の性状等に応じて0.5m〜4.0m程度の範囲で適宜設定されている。
【0045】
符号2は、各注入地点の地盤中に挿入された注入管1を徐々に引抜いて注入材の注入ステージを上方向に変える引上げ装置であり、例えばウィンチや巻上げ機などの機械的手段によって注入管1を強制的に引抜くような構成になっている。
【0046】
また、各注入地点の引上げ装置2は、後述する集中管理装置10のコントローラ10aによって制御され、各注入地点の地盤の性状に応じて最適な注入ステージに注入管1を引き上げてセットできるように構成されている。
【0047】
符号3は、各注入地点における注入材の注入による地盤の変位(主として隆起)を測定する地盤変位測定装置であり、後述する集中管理装置10のコントローラ10bによって制御されている。そして、地盤変位制御装置3は、各注入地点における注入材の注入に伴う地盤の変位量、主として隆起量をリアルタイムで測定し、そのデータを集中管理装置10に送信するようになっている。
【0048】
なお、地盤変位制御装置3は、必ずしも全ての注入地点に配置する必要はなく、地盤の性状や注入管の間隔などに応じて地盤全体の変位が把握できて、可能な限り正確に地盤の変位量を測定できる地点に配置されている。
【0049】
符号4は、各注入地点の地盤中に注入される注入材を貯蔵する注入材貯蔵タンク、5と6は注入材貯蔵タンク4から各注入地点の注入管1に注入材を送液するための送液管であり、送液管5はX軸方向に沿って各注入地点の間に、送液管6はY軸方向に沿って各注入地点の間にそれぞれ配置され、結果として送液管5と送液管6はX軸方向とY軸方向に格子状に配置されている。
【0050】
符号U1〜U8は、注入材貯蔵タンク4から各注入地点に注入材を送液管5と送液管6を介して送液すると共に、各注入地点の地盤中に注入管1を介して注入材を注入する注入ポンプ、そして、符号7は各注入ポンプU1〜U8を駆動する動力源である。
【0051】
注入ポンプU1〜8Uは個々に動力源7を備え、後述する集中管理装置10のコントローラ10cによって制御され、各注入地点に必要量の注入材を送液し、かつ注入管1を介して各注入地点の地盤中に必要量の注入材を注入可能なように送液管6に接続されている。
【0052】
符号8は各送液管6にそれぞれ接続され、各注入地点における注入材の注入時における注入量と注入圧を計測するための流量・圧力計測装置である。流量・圧力計測装置8は後述する集中管理装置10のコントローラ10dによって制御され、各注入地点の地盤中に注入される注入材の注入量、注入圧および注入速度をリアルタイム測定できるように送液管6に接続されている。
【0053】
なお、注入ポンプU1〜U8と注入ポンプU1〜U8を駆動する動力源7と流量・圧力計測装置8はそれぞれ一台ずつ組み合わさって一系統(1セット)の注入装置を構成し、複数系統が配置され、かつ各系統が送液管5と6を介して注入材貯蔵タンク4と各注入地点の注入管1に接続されている。
【0054】
したがって、注入材の注入中に一部の注入ポンプにトラブルが発生して作動不可能になったとしても、他の注入系統から注入材を継続して送液できるようになっている。
【0055】
符号9は、送液管5と送液管6によって注入材貯蔵タンク4から各注入地点に送液される注入材の流路を、各注入地点において切り換える流路切換えバルブであり、当該流路切換えバルブ9は各注入地点の送液管5と送液管6との接続部に接続されている。
【0056】
そして、注入材貯蔵タンク4から各注入地点に送液された注入材は、流路切換えバルブ9によって流路を切り換えられ、例えば流路切換えバルブ9に接続された注入管1を通って地盤中に注入されるか、あるいは送液管5または6を介して他の注入地点に送液される。
【0057】
また、各注入地点の流路切換えバルブ9は、後述する集中管理装置のコントローラ10eによって制御され、各注入地点ごとあるいは複数の注入地点ごとに注入材の流路を自由に切り換えられるようになっている。
【0058】
符号10は、注入管引上げ装置2、地盤変位計測装置3、注入ポンプU1〜U8、その動力源7、流量・圧力測定装置8および流路切換えバルブ9をそれぞれ集中的に制御するための集中管理装置であって、各注入地点の引上げ装置2、地盤変位計測装置3、各注入ポンプU1〜U8とその動力源7をそれぞれ制御するためのコントローラ10a〜10eを備えて構成されている。
【0059】
以上のような構成において、たとえば、集中管理装置10のコントローラ10aがある注入地点の地盤変位計測装置3から送信されたその注入地点における注入材の注入材の注入に伴う地盤変位量に関するデータを得ると、コントローラ10aはその注入地点に所定の圧力範囲、注入速度の範囲で注入材を送液するように注入ポンプUと動力源をコントロール(回転変則機構によって回転数を変える等)する。
【0060】
そして、当該注入地点の変位量が一定量に達すると、コントローラ10aにその旨のデータが送信され、そうするとコントローラ10aはその注入地点の流路切換えバルブ9を作動させて次の注入地点の注入管に注入液を送液するようにコントローラ10aにデータを送信する。このような制御によって各注入地点、または複数の注入地点に必要量の注入材を注入材貯蔵タンク4から連続的にかつ同時に送液することができる。
【0061】
また、たとえば、コントローラ10dがある注入地点の流量・圧力測定装置8から送信されたその注入地点における注入材の流量および/または圧力に関するデータを得ると、コントローラ10dはその注入地点に所定の圧力範囲、注入速度の範囲で注入材を送液するように注入ポンプUと動力源をコントロール(回転変則機構によって回転数を変える等)する。
【0062】
そして、当該注入地点の注入材の注入量が所定量に達すると、コントローラ10dにその旨のデータが送信され、そうするとコントローラ10dはその注入地点の流路切換えバルブ9を作動させて次の注入地点の注入管に注入液を送液するようにコントローラ10dにデータを送信する。このような制御によって各注入地点、または複数の注入地点に必要量の注入材を注入材貯蔵タンク4から連続的にかつ同時に送液することができる。
【0063】
符号11は注入材の注入地点、各注入地点における注入材の注入状況さらには各注入地点への注入材の送液状況などを監視するための監視盤であって、集中管理装置10に接続されている。当該監視盤11には実際の各注入地点と各注入地点間の送液管5と送液管6の配置形態などが液晶表示方式などによって表示されている。
【0064】
そして、この監視盤11を通して注入材の注入地点、各注入地点における注入材の注入状況、さらには各注入地点までの注入材の流路などが人目で確認できるようになっている。さらに、監視盤11を目視しながら注入地点、注入地点までの注入材の流路などを自由に設定し、また変更できるようになっている。
【0065】
このような構成において、注入材貯蔵タンク4から送液管5および6を介して各注入地点に送液された注入材は、各注入地点ごとに注入管1を介し、コントローラによって制御された注入ポンプU1〜U8によって各注入地点の地盤中に注入される。
【0066】
またその際、コントローラ10dによって制御された流量・圧力計測装置8によって最適な注入量および/または注入圧が注入地点ごとに設定され、各注入地点の地盤性状に応じて最適量の注入材が注入される。
【0067】
さらに、各注入地点の流路切換えバルブ9がコントローラ10eによって制御され、注入管1ごとにあるいは複数の注入管1ごとに作動することにより、注入材が注入地点ごとに、あるいは複数の注入地点ごとに注入管1を介して地盤中に注入される。
【0068】
また、流量・圧力測定装置8によって注入地点ごとの注入材の注入量、注入圧および注入速度が計測され、そのデータはコントローラにリアルタイムで送信される。
【0069】
なお、図1に図示する装置においては、8台の注入ポンプU1〜U8が配置され、それぞれが個々に動力源7を備え、かつそれぞれが送液管5と送液管6を介して注入材貯蔵タンク4と各注入地点の注入管1に接続されている。
【0070】
また注入管1は、Y1〜Y8軸の各軸に沿ってそれぞれ配置された各送液管6に流路切換えバルブ9を介して8本接続されている。したがって、8台の注入ポンプU1〜U8により計8×8=64本の注入管1によって注入材の同時・連続注入が集中管理装置10による一括管理の下に可能になるため、装置の軽量化と作業性の飛躍的向上が可能になる。
【0071】
また、各注入地点の流路切換えバルブ9を連続的に作動することにより各Y軸上の任意の注入管1への選択的かつ連続的送液が可能になり、これにより地下水を所定の方向に押しやり排水しながら、注入材を注入して土粒子間の地下水を注入材と置き換えることができる。
【0072】
さらに、複数の各X軸方向の送液管5と各Y軸方向の送液管6を平面格子状に配置すると共に、送液管5と送液管6の各交点に注入管1を配置することにより、注入管1の選択が可能になり、地盤に対応した、あるいは地中構造物の存在にも考慮した地下水の周辺への排水も可能になり、緻密な地盤改良を行なうことができる。
【0073】
また、上記による送液管の回路を注入装置を構成する一部分として各注入管1から注入ポンプU1〜U8に至るまでの任意の位置に送液回路盤として設けて回路盤の交点から各注入管へ送液管を繋ぐことによってコンパクトな注入装置を構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は、層ごとに地盤状況の異なる地盤に対し層ごとに最適量の注入材を同時あるいは選択的な注入することができ、また注入地点を地盤中の鉛直向および水平方向へと移動することにより三次元的に注入材を注入することができ、さらに注入に伴う地盤の隆起や変形等による地上構造物や地下構造物に対する悪影響を回避することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 注入管
2 注入管引上げ装置
3 地盤変位測定装置
4 注入材貯蔵タンク
5 送液管
6 送液管
7 注入ポンプの動力源
8 流量・圧力計測装置
9 流路切換えバルブ
10 集中管理装置
11 監視盤
U1〜U8 注入ポンプ
10a〜10e コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の注入地点にそれぞれ配置された複数の注入管と、注入管どうしを相互に接続する送液管と、送液管を介して各注入地点に注入材を送液すると共に、注入管を介して各注入地点の地盤中に注入材を注入する複数の注入ポンプと、各注入地点に送液される注入材の流路を切り換える流路切換えバルブと、各注入地点に送液される注入材の流量および/または圧力を計測する流量・圧力計測装置と、注入ポンプ、流路切換えバルブ、流量・圧力計測装置を制御する集中管理装置を備え、注入ポンプ、流路切替えバルブ、流量・圧力計測装置を集中管理装置によって制御し、各注入地点における注入材の流量および/または圧力、各注入地点における注入材の注入による地盤の変位を監視しつつ、複数の注入地点に同時にかつ連続的に注入材を注入することを特徴とする注入工法。
【請求項2】
各注入地点における注入材の注入による地盤の変位を測定する地盤変位測定装置を備え、当該地盤変位計測装置によって計測された各注入地点における地盤変位に関するデータを集中管理装置に送信し、当該データに基づいて各注入地点における注入材の注入、中断、再開、継続、完了および注入材の流路切り換えを行うことを特徴とする請求項1記載の注入工法。
【請求項3】
流量・圧力計測装置によって計測された各注入地点における注入材の流量および/または圧力に関するデータを集中管理装置に送信し、当該データに基づいて各注入地点における注入材の注入、中断、再開、継続、完了および注入材の流路切り換えを行うことを特徴とする請求項1または2に記載の注入工法。
【請求項4】
各注入地点を監視する監視装置を集中管理装置に接続し、当該監視装置に地盤変位計測装置によって計測された各注入地点における地盤変位に関するデータと、流量・圧力計測装置で計測された注入材の流量および/または圧力に関するデータを表示して、各注入地点における注入材の注入状況を一括監視することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の注入工法。
【請求項5】
複数の注入地点に配置された複数の注入管と、注入管どうしを相互に接続する送液管と、送液管を介して各注入地点に注入材を送液すると共に、注入管を介して各注入地点の地盤中に注入材を注入する複数の注入ポンプと、各注入地点に送液される注入材の流路を切り換える流路切換えバルブと、各注入地点に送液される注入材の流量および/または圧力を計測する流量・圧力計測装置と、注入ポンプ、流路切換えバルブおよび流量・圧力計測装置を制御する集中管理装置を備えてなることを特徴とする注入装置。
【請求項6】
注入材の注入による地盤の変位を測定する地盤変位測定装置を備え、注入ポンプは、前記地盤変位測定装置によって測定され、集中管理装置から送信された地盤変位に関するデータ、注入材の流量および/または圧力に関するデータに基づいて制御され、各注入地点に送液される注入材の流量および/または圧力を調整するための変速機構を備えていることを特徴とする請求項5記載の注入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−270446(P2010−270446A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120823(P2009−120823)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000162652)強化土エンジニヤリング株式会社 (116)
【Fターム(参考)】