説明

洋式便器の固定構造

【課題】 洋式便器の装着及び脱着に係る作業を容易なものとすることができるとともに、衛生的なものとすることができる洋式便器の固定構造を提供する。
【解決手段】 洋式便器12は、和式便器11に被せられており、和式便器11の周辺で床面10には、手すり13が固定されており、手すり13には、固定装置14が取り付けられている。そして、固定装置14を洋式便器12の周縁部外面に当接させ、さらに該固定装置14で該洋式便器12を床面に押しつけて、該洋式便器12を床面10に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設の和式便器に被せることによって使用する洋式便器の固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、高齢者、身障者にとっての使いやすさを向上させるため、既設の和式便器に被せて使用する洋式便器が提供されるとともに、このような洋式便器を固定するための固定構造が提案されている。例えば、特許文献1に記載の据置台の固定構造においては、洋式便器である据置台の底部にゴム部材を設け、和式便器の両側内面でフランジ部に設けられた返し部に該ゴム部材を嵌着して、据置台を和式便器に固定している。特許文献2に記載の据置台の固定構造においては、洋式便器である据置台に引掛金具の一端を引っ掛けるとともに、該引掛金具の他端を和式便器の返し部に引っ掛け、さらにネジ部材で該引掛金具を和式便器に圧接させて、据置台を和式便器に固定している。特許文献3に記載の和式便器に被せる洋式便器の固定装置においては、洋式便器本体の後部に固定レバーを取り付け、和式便器の金隠し内面に該固定レバーを当接させることにより、該洋式便器本体を和式便器に固定している。
【特許文献1】実用新案登録第2535966号公報
【特許文献2】実開平5−43996号公報
【特許文献3】実用新案登録第2555629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、上記従来の固定構造においては、洋式便器を和式便器に固定する構成となっているため、特許文献1であればゴム部材の嵌着に力を要する、特許文献2及び3であれば和式便器内に手を入れて引掛金具の引っ掛け、あるいは固定レバーの調整を行う等、固定に係る作業が繁雑であるという問題が生じる。また、このような洋式便器は、汚れるものであるため、衛生を保つために適宜取り外して清掃を行うが、しかし特許文献1であればゴム部材の嵌着の解除に力を要する、特許文献2及び3であれば引掛金具、あるいは固定レバーの一部が脱落してしまうおそれがある等、取り外しに係る作業も繁雑であるという問題がある。さらに、和式便器に固定する構成としたため、所定の固定具が和式便器内に露出しており、該所定の固定具が排泄物などで汚れやすく、衛生面で劣るという問題がある。
【0004】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、洋式便器の装着及び脱着に係る作業を容易なものとすることができるとともに、衛生的なものとすることができる洋式便器の固定構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の洋式便器の固定構造の発明は、和式便器の使用形態を洋式のものとするために使用する洋式便器の固定構造であって、該洋式便器は、該和式便器に被せられており、該和式便器の周辺で床面には、手すりが固定されており、該手すりには、固定装置が取り付けられており、該固定装置を該洋式便器の周縁部外面に当接させ、さらに該固定装置で該洋式便器を床面に押しつけて、該洋式便器を床面に固定することを要旨とする。
上記構成によれば、洋式便器を手すりに固定する構成としたことにより、固定装置が外部に露出しており、該固定装置の操作が行いやすいため、洋式便器の装着及び脱着に係る作業が容易である。また、固定装置は、洋式便器の外面に当接されているため、排泄物などが付着しづらく、衛生的である。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の洋式便器の固定構造の発明において、該固定装置は、該手すりに設けられた取付部に回動可能に取り付けられた押圧部材と、該手すりの取付部を介して該押圧部材に螺着されたねじ部材とを備えており、該押圧部材の一端部を該洋式便器の周縁部に接触させたうえで、該押圧部材に対してねじ部材を締め付けて、該押圧部材で該洋式便器を押圧することを要旨とする。
上記構成によれば、ねじ部材の締め付け、あるいは緩めという簡易な操作で押圧部材による押圧力を調節することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、洋式便器の装着及び脱着に係る作業を容易なものとすることができるとともに、衛生的なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を具体化した一実施形態について説明する。
図1は、洋式便器の固定構造における全体の概略構成を示す斜視図であり、図2は、洋式便器を取り付ける状態を示す概略構成の斜視図である。本実施形態において、トイレの床面10上には、和式便器11が既設されており、洋式便器12は、該和式便器11に被せるようにして、該床面10上に設置されている。また、和式便器11の周辺で床面10上には、該和式便器11を取り囲むようにして手すり13が設置されており、洋式便器12の使用する際の使い勝手の向上が図られている。そして、該手すり13には、固定装置14が取り付けられており、洋式便器12は、該固定装置14によって床面10上に固定されている。
【0009】
ここで、まず洋式便器12について説明し、次に手すり13について説明する。洋式便器12は、略椀状をなす便器本体15と、該便器本体15に回動可能に取り付けられたO字状をなす便座16及び浅皿状をなす便蓋17とからなる。そして、便器本体15の中央部分は、開口されており、前記和式便器11に被せられた際には、便器本体15の内部が和式便器11の内部と通じるようになっている。これら便器本体15、便座16及び便蓋17は、着座時における加重に耐えつつ、清掃時等における利便性向上のため軽量化を図るとともに、排泄物などが付着しづらいものとするという観点から、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)等といった合成樹脂によって形成されている。なお、便器本体15、便座16及び便蓋17のうち少なくとも何れか1つを、合成樹脂に限らず、陶器、金属などによって形成してもよい。
【0010】
手すり13は、和式便器11の両側部に配置される一対の肘置き部18と、洋式便器12を迂回するようにして両肘置き部18の間を連結する連結部19とからなる。また、肘置き部18は、棒状をなす固定脚18aと、該固定脚18a上に立設された肘置き台18bとからなり、ねじ等によって該固定脚18aが床面10に固定されている。該手すり13においては、洋式便器12へ着座した際、該肘置き台18bに肘を載せることにより、体を安定に保持することができるようになっている。さらに、洋式便器12へ着座する際、肘置き台18b、あるいは連結部19をつかむことにより、洋式便器12へ着座しやすくなっている。なお、使用者による使い勝手を向上させるため、肘置き台18bは、床面10からの高さを調整できるように構成されている。
【0011】
次いで、固定装置14について説明する。図3は、固定装置の概略構成を示す分解斜視図であり、図4(a),(b)は、固定装置で洋式便器を固定する状態を示す断面図である。
前記手すり13において、肘置き部18の固定脚18aには、固定装置14を取り付けるための取付部20が立設されている。該取付部20は、断面凹字状に形成されている。該取付部20において、洋式便器12における前後方向で対向する一対の側壁20aには、それぞれ一対ずつ合計二対の係合溝21が形成されている。これら係合溝21は、床面10側を下方として、斜め下方へ延びるとともに、側壁20aの端縁で開放されている。また、該取付部20において、洋式便器12における左右方向に位置する側壁20bには、挿通孔22が該側壁20bの長手方向、つまりは洋式便器12における上下方向へ延びる長孔状をなすように形成されている。
【0012】
固定装置14は、該取付部20に装着される押圧部材25と、該押圧部材25に螺着されたねじ部材26とを備えている。該押圧部材25は、取付部20に装着される基端部25aと、洋式便器12の便器本体15に係合される先端部25bとからなる。
洋式便器12における前後方向の面を側面として、該押圧部材25の基端部25aの両側面で基端上部には、係合突部27がそれぞれ突設されている。該押圧部材25を取付部20に装着する際、これら係合突部27は、取付部20の係合溝21に挿入され、係合されるようになっている。また、押圧部材25は、取付部20に装着された状態で、該係合突部27を中心として、洋式便器12の上下方向に回動可能となっている。さらに、該基端部25aの基端面で下部には、ねじ部材26を螺着するためのねじ孔28が形成されている。
【0013】
該押圧部材25の先端部25bにおいて、その一端部には、係合爪29が取り付けられている。該係合爪29は、断面L字状に形成されており、便器本体15の側部において、周縁角部に係合されるようになっている(図4(a),(b)参照)。また、該先端部25bは、押圧部材25の上面に設けられた調整ネジ30を緩めることにより、基端部25aに対してスライド移動自在に構成されており、取付部20から便器本体15までの距離に応じて押圧部材25を伸縮させて長さ調節することができるようになっている。なお、特に図示はしないが、係合爪29において、便器本体15と接触する部位には、ゴム、不織布などからなる軟質シートが貼り付けられており、便器本体15の傷付きを抑制している。
該ねじ部材26は、ハンドル26aと、該ハンドル26aの中心から延設されたボルト杵26bとからなる。そして、該ねじ部材26は、取付部20の挿通孔22にボルト杵26bを挿通したうえで、該ボルト杵26bを押圧部材25のねじ孔28に螺入することにより、取付部20を介して押圧部材25に螺着されている。
【0014】
次に、固定装置14による洋式便器12の固定方法について説明する。なお、手すり13は、床面10に既に固定されているものとする。
さて、洋式便器12を固定する場合には、図2に示したように、まず洋式便器12の便器本体15を和式便器11の上方から被せる。次いで、図4(a)に示したように、押圧部材25を便器本体15に係合させ、さらにハンドル26aを回してねじ部材26を締め付ける。すると、押圧部材25において、ねじ孔28は、係合突部27よりも下側(床面10側)に位置しているため、押圧部材25は、図4(b)に示したように、係合爪29を下側へ移動させるように回動する。そして、このように押圧部材25が回動した結果、便器本体15は、該押圧部材25によって床面10へと押圧されることとなり、床面10上に固定されることとなる。また、押圧部材25が回動するとき、係合突部27は、係合溝21の内奥側(斜め上側)へ適宜位置ずれすることにより、押圧部材25のがたつきを抑制し、該押圧部材25による押圧力を便器本体15に好適に加えるように構成されている。
【0015】
一方、洋式便器12の脱着方法は、上記固定方法とは逆にハンドル26aを回してねじ部材26を緩めればよい。つまり、ねじ部材26を緩めることにより、押圧部材25は回動可能となる。従って、ねじ部材26を適宜緩めたうえで、便器本体15を上方へ引き上げれば、押圧部材25が上方へ回動し、該押圧部材25と便器本体15との係合が解除される。また、便器本体15は、既設の和式便器11に対して何ら固定されていないため(図4(a),(b)を参照)、ハンドル26aを緩めるのみで便器本体15を上方へ引き上げ可能となり、洋式便器12を簡易に脱着することができる。
【0016】
上記のように、本実施形態の固定装置14は、手すり13に取り付けられているため、洋式便器12の外部に露出している。従って、ハンドル26aを回しやすく、洋式便器12の固定及び脱着に係る作業を容易に行うことができる。また、固定装置14において、押圧部材25の係合爪29は、便器本体15の外面に当接されているため、排泄物などが付着しづらく、衛生的である。特に、洋式便器12の固定時及び脱着時に手で触れることとなるハンドル26aは、洋式便器12の外部であり、さらに便器本体15から離間した位置に配置されているため、衛生的であり、作業を行いやすい。
【0017】
なお、上記取付部20においては、使用する便器本体15の床面10からの高さに応じて、二対の係合溝21のうち何れか一方を選択し、押圧部材25を係合する。また、図4(a)中に「H」として示す便器本体15の床面10からの高さに対し、図4(a)中に「L」として示す床面10から係合溝21の上縁までの長さは、L≦Hの関係を満たすことが好ましい。このようにL≦Hの関係を満たす場合、押圧部材25が便器本体15へ向かって回動しやすくなるため、より強い押圧力を加えることができる。また、押圧部材25において、基端部25aの基端面を便器本体15側へ傾斜する斜面状としてもよい。基端部25aの基端面をこのような斜面状とした場合も、押圧部材25が便器本体15へ向かって回動しやすくなるため、より強い押圧力を加えることができる。また、押圧部材25において、係合爪29を便器本体15の上面に当接させることに限らず、例えば便器本体15の側面にスリットを設け、該スリットに係合爪29を差し込む構成としてもよい。
【0018】
また、固定装置14は、上記実施形態のように便器本体15を両側部の2箇所で固定することに限らず、例えば一側部の1箇所で固定したり、あるいは便器本体15の後部も合わせて3箇所で固定したり等してもよい。また、固定装置は、上記実施形態の構成に限らず、手すり13に取り付けられ、さらに便器本体15を床面10に押圧して固定可能ならば、何れの構成としてもよい。例えば、バネ性を有する金属プレートで固定装置を構成するとともに、該金属プレートを固定脚18aに回動可能に取り付け、該金属プレートを撓ませつつ、便器本体15の上面に当接させることにより、便器本体15を固定してもよい。あるいは、固定脚18aに固定装置14を取り付けることに限らず、連結部19に固定装置14を取り付けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】洋式便器の固定構造における全体の概略構成を示す斜視図。
【図2】洋式便器を取り付ける状態を示す概略構成の斜視図。
【図3】固定装置の概略構成を示す分解斜視図。
【図4】(a)は固定装置で洋式便器を固定する状態を示す断面図、(b)は固定装置で洋式便器を固定した状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0020】
10…床面、11…和式便器、12…洋式便器、13…手すり、14…固定装置、20…取付部、25…押圧部材、26…ねじ部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
和式便器の使用形態を洋式のものとするために使用する洋式便器の固定構造であって、
該洋式便器は、該和式便器に被せられており、該和式便器の周辺で床面には、手すりが固定されており、該手すりには、固定装置が取り付けられており、
該固定装置を該洋式便器の周縁部外面に当接させ、さらに該固定装置で該洋式便器を床面に押しつけて、該洋式便器を床面に固定することを特徴とする洋式便器の固定構造。
【請求項2】
該固定装置は、該手すりに設けられた取付部に回動可能に取り付けられた押圧部材と、該手すりの取付部を介して該押圧部材に螺着されたねじ部材とを備えており、
該押圧部材の一端部を該洋式便器の周縁部に接触させたうえで、該押圧部材に対してねじ部材を締め付けて、該押圧部材で該洋式便器を押圧する請求項1に記載の洋式便器の固定構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2007−209586(P2007−209586A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33508(P2006−33508)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(501081063)株式会社徳山工業社 (7)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】