説明

洗浄部材、基板洗浄装置、基板処理装置

本発明は基板の洗浄面に洗浄部材を接触させると共に洗浄液を供給し両者の相対的運動により、該洗浄面を洗浄する基板洗浄装置の洗浄部材に係る。洗浄部材は、防水性のコア部を具備し、該コア部の表面を多孔質高分子素材で被覆した被覆層を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を洗浄するのに用いられる洗浄部材に関し、洗浄部材から排出される汚染物質を減らし、被洗浄基板の逆汚染を防止し、基板に対して高い洗浄力を安定して提供できる洗浄部材、該洗浄部材を備えた基板洗浄装置及び基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板の洗浄面に洗浄部材を接触させると共に、洗浄液を供給し、該基板と洗浄部材の相対的運動により、該基板の洗浄面の汚染物を除去する方法は、汚染物除去効果が大きく、操作も簡便な物理洗浄として一般的に行われてきた。ここで使用される洗浄部材には単一の吸水性高分子材料を筒型、円板型などに成型したものが多く用いられている。また、この高分子材料は気孔径が数μm〜300μm程度の多孔質である場合が多いので、成型時に粒子を含有し易い。事前に洗浄を十分に行えば含有粒子は減少するが、完全に除去することができるものではなく、洗浄部材の体積が増すほど、より含有粒子を取りきるのは困難である。
【0003】
高分子材は吸水性が高いため高分子材からなる洗浄部材で基板を洗浄すると、洗浄液とともに汚染物質が洗浄部材の内部に進入する。洗浄部材は汚染粒子を気孔内にトラップするが、外部に排出するので、逆汚染の原因ともなる。Cu等の金属膜を形成した基板を洗浄した場合は、数枚の洗浄で容易に目視観察できるほど洗浄部材がCuで汚染される。吸水性洗浄部材の特性上汚染しつつ洗っているのが実情である。
【特許文献1】特開平5−317783号公報
【特許文献2】特許第2875213号公報
【0004】
そのため特許文献1に開示すように、洗浄部材に洗浄液を噴射したり、超音波振動子を備え、超音波照射をした液槽内で洗浄部材を洗浄するなどセルフクリーニング法も提案されているが、内部まで汚染が浸透していることが多いため、常に十分な清浄度を保つのは困難であった。これらの問題に対し界面活性剤などの薬液やガス溶解水によるゼータ電位制御などで、流出した汚染物が再付着しにくくなるように対処してきた。しかし連続使用により汚染が除々に内部まで浸透していき、蓄積量が増していくのは避けられない。また、基板の膜種などにより使用洗浄液の制約もあるため、根本的な解決が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、洗浄部材から排出される汚染物質が少なく、被洗浄基板の逆汚染を防止し、基板に対して高い洗浄力を安定して維持できる洗浄部材、基板洗浄装置、基板処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1に記載の発明は、基板の洗浄面に洗浄部材を接触させると共に洗浄液を供給し両者の相対的運動により、該洗浄面を洗浄する基板洗浄装置の洗浄部材であって、防水性のコア部を具備し、該コア部の表面を多孔質高分子素材で被覆した被覆層を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の洗浄部材において、前記多孔質高分子素材は、PVA(ポリビニルアルコール)系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、その他の附加重合体、アクリルアミド系ポリマー、ポリオキシエチレン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、縮合系ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンアウルホン酸、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂のいずれかの高分子材で形成されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の洗浄部材において、前記多孔質高分子素材の被覆層の厚さは5μm以上15mm以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の洗浄部材において、前記コア部が、軟質プラスチックフォーム、フッ素ゴム、シリコンゴム、フォスファゼンゴム、ウレタン系ゴムを含む軟質ゴム及びエポキシ樹脂のいずれかの防水素材で構成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の洗浄部材において、前記多孔質高分子素材の被覆層の湿潤時の硬度が100以下であることを特徴とする。なお、ここで硬度測定に用いた硬度計は、株式会社テクロック社製デュロメータGS−743Gである。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の洗浄部材において、前記多孔質高分子素材の被覆層の間又は該被覆層と前記コア部の間に防水性素材からなる防水層を形成したことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、基板の洗浄面に洗浄部材を接触させると共に洗浄液を供給し両者の相対的運動により、該洗浄面を洗浄する基板洗浄装置において、前記洗浄部材に請求項1乃至6のいずれか1項に記載の洗浄部材を用いたことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の基板洗浄装置において、前記洗浄部材の前記多孔質高分子素材の被覆層の有無をモニタするのに硬度計又は薄膜硬度計又はCCDを備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の基板洗浄装置において、前記洗浄部材の気孔分布、硬度が前記多孔質高分子素材の被覆層から前記コア部の状態に変化した場合、交換信号を出力する手段を設けたことを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、基板に所定の処理を施す基板処理部と、該基板処理部で所定の処理が終了した基板を洗浄する基板洗浄部を備えた基板処理装置において、前記基板先浄部に請求項7乃至9のいずれか1項に記載の基板洗浄装置を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1及び2に記載の発明によれば、洗浄部材を防水性のコア部の表面を多孔質高分子素材で被覆した被覆層を設けたので、基板と直接接触する部分は柔軟性の高い吸水性多孔質高分子素材の被覆層となり、優れた洗浄能力を保ちつつ、洗浄部材内部、即ちコア部杓への汚染物進入を遮断し、逆汚染を減少させることができる洗浄部材を提供できる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、多孔質高分子素材の被覆層の厚さは5μm以上15μm以下とするので、多孔質高分子素材の被覆層が薄く、汚染物の蓄積する部分の体積が小さくなり、逆汚染が減少する。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、コア部が、軟質プラスチックフォーム、フッ素ゴム、ンリコンゴム、フォスファゼンゴム、ウレタン系ゴムを含む軟質ゴム及びエポキシ樹脂のいずれかの防水素材で構成されているので、コア部分は防水性で且つ弾性を有するので、多孔質高分子素材の被覆層が薄くても洗浄部材全体としては柔軟性を及び汚染物除去能力を保ちつつ、洗浄部材内部、即ちコア部内への汚染物の進入を遮断するから、蓄積する汚染物の量が少なくなり逆汚染を減少させることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、多孔質高分子素材の被覆層の湿潤時の硬度を100以下(株式会杜テクロック杜製デュロメータGS−743Gの硬度計を使用)としたので、基板と直接接触する多孔質高分子素材からなる被覆層の柔軟性が維持され、基板へ損傷を与えることがない。ちなみに硬度が100を越えると基板に傷が付く恐れがある。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、多孔質高分子素材の被覆層の間又は被覆層とコア部の間に防水性素材からなる防水層を形成したので、防水性素材層から内側には汚染液や汚染物が進入(浸透)することなく、この防水層から外側の被覆層の厚さを薄くすることで、汚染液や汚染物質の蓄積量を少なくでき、逆汚染を減少させることができ、且つ被覆層全体の厚さを大きくすることで、洗浄部材全体が柔軟性を確保できる。また、コア部を構成する素材に防水性を考慮することがないので、専らコア部として優れた特性を有する材料を選定できるので材料選定幅が広くなる。
【0021】
請求項7に記載の発明によれば、基板洗浄装置の洗浄部材に請求項1乃至6のいずれか1項に記載の洗浄部材を用いるので、洗浄部材からの逆汚染が少なく、長期間洗浄能力を発揮できる基板洗浄装置を提供できる。
【0022】
請求項8に記載の発明によれば、洗浄部材の多孔質高分子素材の被覆層の有無をモニタするのに硬度計又は薄膜硬度計又はCCDを備えたので、常時洗浄部材の被覆層の状態を観測でき、被覆層の有無や破損状態等を観測することができ、洗浄部材の交換時期を速やかに予測できる基板洗浄装置を提供できる。
【0023】
請求項9に記載の発明によれば、洗浄部材の気孔分布及び/又は硬度が多孔質高分子素材の被覆層の気孔分布及び/又は硬度からコア部の気孔分布及び/又は硬度に変化した場合、交換信号を出力する手段を設けたので、洗浄部材の交換時期を正確に知ることができる基板洗浄装置を提供できる。
【0024】
請求項10に記載の発明によれば、基板処理装置の基板洗浄部に請求項7乃至9のいずれか1項に記載の基板洗浄装置を用いるので、基板処理部で所定の処理が終了した基板を常に高い清浄度で逆汚染がなく洗浄できる基板処理装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて説明する。図1及び図2は本発明に係る洗浄部材を使用する基板洗浄装置の実施例の概略構成を示す図であり、図1はペン型洗浄部材を使用する基板洗浄装置を、図2はロール型洗浄部材を使用する基板洗浄装置の構成を示す図である。
【0026】
図1の基板洗浄装置は、図示するように、基板Wの外周部を複数本(図では4本)の係合ピン11で保持し、該保持した基板Wを係合ピン11ごと回転させる基板保持回転機構10を備えている。この基板洗浄装置において、回転する基板Wに洗浄部材保持回転機構12で保持回転する円板状の洗浄部材13を当接させ、基板Wの表面に洗浄液供給ノズル14から洗浄液を供給しながら、基板Wと洗浄部材13の相対運動により、基板Wの上面を洗浄する。なお、洗浄部材保持回転機構12は揺動アーム15に回転自在に支持され、洗浄部材13は回転しながら、基板Wの上面を左右に揺動するようになっている。
【0027】
また、図2の基板洗浄装置は、複数本(図では6本)のスピンドル21を備え、該スピンドル21の上部の回転ローラ22で基板Wの外周部を挟持し、該基板Wを回転させる基板保持回転機構20を備えている。この基板洗浄装置において、回転する基板Wの上下面に円筒状の洗浄部材23を当接し、該洗浄部材23を洗浄部材回転駆動機構(図示せず)で回転させ、更に基板Wの上下面に洗浄液供給ノズル24(下面に洗浄液を供給する洗浄液供給ノズルの図示は省略)から洗浄液を供給しながら、基板Wと洗浄部材23の相対運動により、基板Wの上下面を洗浄するものである。
【0028】
図3乃至図5はそれぞれ上記円板状の洗浄部材(ペン型洗浄部材)13の構成例を示す図である。図3に示す洗浄部材13は円板状(又は円柱状)のコア部13aを具備し、該コア部13aの下端面に多孔質高分子素材からなる被覆層13bを一体的に設けた構成である。なお、図3(a)は外観図、図3(b)は断側面図である。図4に示す洗浄部材13は円板状(又は円柱状)のコア部13aを具備し、該コア部13aの下端面及び外周面に多孔質高分子素材からなる被覆層13bを一体的に設けた構成である。なお、図4(a)は外観図、図4(b)は断側面図である。図5に示す洗浄部材13は略半円球状のコア部13aを具備し、該コア部13aの外周面に多孔質高分子素材からなる被覆層13bを一体的に設けた構成である。なお、図5(a)は外観図、図5(b)は断側面図である。
【0029】
図6、図7は上記ロール型の洗浄部材23の構成例を示す図である。図6に示す洗浄部材23は円筒状のコア部23aを具備し、該コア部23aの外周面に多孔質高分子素材からなる被覆層23bを一体的に設けた構成である。図7に示す洗浄部材23は円筒状のコア部23aを具備し、該コア部23aの外周面に多孔質高分子素材からなる被覆層23b−1を設け、その外周面に防水性素材からなる防水層23cを設け、その外周面に多孔質高分子素材からなる被覆層23b−2を設けた構成である。即ち、図7に示す洗浄部材は、コア部23aの外周部に設けた多孔質高分子素材層からなる被覆層23b−1と被覆層23b−2の間に防水性素材からなる防水層23cを形成した構成である。防水層23c及び被覆層23b−1、23b−2は一体的に形成されても良い。なお、図6、図7において、27は貫通するシャフト(回転軸部材)が嵌挿入される貫通孔である。
【0030】
基板Wと洗浄部材13又は洗浄部材23との摩擦により、洗浄部材13又は23の表面の被覆層13b又は23bは削れていき洗浄効果が低下するため、被覆層13b又は23bの表層部が10μm程度磨耗すれば洗浄部材13又は23を交換する必要がある。直径300mmの円筒状洗浄部材23の場合は、表層10μmは該洗浄部材23の全体積の約0.2%である。洗浄部材13又は23の表面層以外の部分は汚染物剥離に直接寄与しない部分である。
【0031】
一方多孔質高分子素材からなる被覆層13b又は23bの体積が増すほど汚染物の保持可能力が増加する。柔軟性さえあれば、洗浄部材13又は洗浄部材23の全体が吸水性多孔質である必要は必ずしもない。よって、本発明に係る洗浄部材13又は23は上記のように、基板Wと直接接触する被覆層13b又は23bには柔軟性の高い吸水性の多孔質高分子素材を用い、コア部13a又は23aには防水性弾性素材を用いることで、洗浄部材全体の柔軟性及び汚染物除去能力を保ちつつ、洗浄部材13又は23の内部への汚染物進入を遮断して、逆汚染量を減少させるようにしている。被覆層13b又は23bが薄い方が、汚染物が蓄積する部分が少なくなるが、気孔を十分含むことで柔軟性を持たせ、押付け圧の幅を考慮して、表層部厚さは10μm〜15mmとする。
【0032】
コア部13a又は23aの素材としては、軟質プラスチックフォーム、フッ素ゴム、シリコンゴム、フォスファゼン(PH‘OSPHAZENE)ゴム、ウレタン系ゴムを含む軟質ゴム及びエポキシ樹脂、軟質プラスチックフォームのいずれかを用いる。これらの素材は防水性を有し且つ弾性を有するから、汚染物はコア部13a又は23aに進入することなく、且つ洗浄部材13又は23の全体の柔軟性は維持される。
【0033】
被覆層13b又は23bの素材としては、PVA(ポリビニルアルコール)系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、その他の附加重合体、アクリルアミド系ポリマー、ポリオキシエチレン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、縮合系ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンアウルホン酸、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂のいずれかの高分子材を用いる。これらの素材は、柔軟性・吸水性を有する素材であるから、基板Wに損傷を与えにくく、且つ高い汚染物の除去能力を有する。
【0034】
防水性を有し且つ弾性を有する上記素材で構成されたコア部13a又は23aの最表面に、上記素材からなる被覆層13b又は23bを熱溶着、接着剤による接着、圧着、熱圧着、スプレーコーティングのいずれかの方法を用いて設ける。
【0035】
図7に示すように、洗浄部材23を防水性を有する素材からなるコア部23aの外周面に柔軟性及び高い吸水性を有する多孔質高分子素材の被覆層23b−1で覆い、該被覆層23b−1の外周を防水性を有する素材からなる防水層23cで覆い、更に該防水層23cの外周面に多孔質高分子素材からなる被覆層23b−2で覆う構成を採用する洗浄部材23では、防水層23cによりコア部23aの外周面を覆う被覆層23b−1に汚染液や粒子が進入するのを阻止すると共に、コア部23a及び被覆層23b−1から基板Wに接触する被覆層23b−2への汚染物の流出を防止できる。基板に接触する部分(最表面部)や洗浄部材の取り付け部分(コア部を含めコア部を貫通するシャフト等の洗浄部材23を固定する固定具との接触部)が従来の洗浄部材と同じ材質の多孔材質でできているので、本発明の洗浄部材が従来の洗浄部材と、洗浄液とのなじみ易さ、機能及び動作の点で実質的に同じであるため、洗浄装置の使用者は、従来の洗浄部材を本発明の洗浄部材に特別の細工を施さずに容易に交換できる。固定具の汚染は防水層23cで遮断するため、基板Wには影響しない。
【0036】
なお、図7では、防水層23cをコア部23aの外周部に形成した多孔質高分子素材からなる被覆層23b−1と被覆層23b−2の間に設ける構成としているが、図8に示すようにコア部23aと多孔質高分子素材からなる被覆層23bの間に防水層23cを設けても、図7に示す洗浄部材23と略同じ作用効果が得られる。図7、図8に示すように、防水層23cを設けることにより、洗浄部材23の両端部に防水対策を施すことにより、コア部23aは必ずしも防水材で構成することなく、コア部23aの防水性を考慮することなく、コア部23aに適した性能の材料を使用すればよく、コア部23aに使用される材料の選定範囲が広くなる。
【0037】
図9は洗浄部材13又は23の一部を用いて汚染粒子の進入排出の状態を観念的に示す図である。図において、黒丸1は進入汚染粒子を、白丸2は初期残留汚染粒子を、3は気孔を示す。従来のように洗浄部材全体が吸水性及び柔軟性を有する多孔質高分子素材でなる場合は、図9(a)に示すように、吸水性及び柔軟性を有する多孔質高分子素材からなる洗浄部材13又は23内部に多くの汚染液や進入汚染粒子1が吸収され易く、初期残留汚染粒子2も内部から排出する恐れが多い。図3乃至図5に示すようにコア部13の外表面を多孔質高分子素材からなる被覆層13bで覆っている場合、図9(b)に示すように、被覆層23b(図では23bで示す)にのみ汚染液や進入汚染粒子1が取り込まれるため、進入汚染粒子1の量が少ない。また、初期残留汚染粒子2の量も少ないから、その排出も少ない。
【0038】
図6に示すように、防水性素材からなるコア部23aの外周面を吸水性及び柔軟性を有する多孔質高分子素材の被覆層23bで覆っている場合は、図9(b)に示すように、被覆層23bにのみ汚染液や進入汚染粒子1が取り込まれるため、進入汚染粒子1の量が少ない。また、初期残留汚染粒子2の量も少ないから、その排出も少ない。また、図7に示すように吸水性及び柔軟性を有する多孔質高分子素材からなる被覆層23b−1と23b−2の間に防水層23cが介在している場合は、図9(c)に示すように防水層23cの外周にある被覆層23b−2にのみ汚染液や進入汚染粒子1が取り込まれるため、進入汚染粒子1の量が少ない。また、初期残留汚染粒子2の量も少ないから、その排出も少ない。
【0039】
図10はロール型の洗浄部材の外周面に複数の突起部が形成された構成の洗浄部材の汚染状態を説明するための図で、図10(a)は外周面の突起部23d及びロール本体23eの洗浄部材23全体を吸水性及び柔軟性を有する多孔質高分子素材で構成した場合で、図10(b)は突起部23d及びロール本体23eは防水性を有する素材で構成し、突起部23dの外表面及びロール本体23eの外表面に吸水性及び柔軟性を有する多孔質高分子素材からなる被覆層26を形成している。上記実施例において、突起部はロール本体の外周に円周方向に隔てて配置されかつそれと一体的に形成されていても良い。また、各突起部はロール本体の長さに亘ってロール本体の軸線に沿って連続的に伸びた構造でも、複数に区切られた構造でもよい。
【0040】
上記のように構成した洗浄部材23を上面に洗浄液25を供給している基板Wの上に接触させ矢印aに示すように回転させた場合、図10(a)のように洗浄部材23全体を吸水性及び柔軟性を有する多孔質高分子素材で構成した場合、矢印Bに示すように汚染した洗浄液や汚染粒子が突起部23dを通ってロール本体23eに吸収され多くの汚染した洗浄液や汚染粒子が洗浄部材23内に蓄積される。従って、洗浄部材23内から排出される汚染液や汚染粒子の数量も多く、基板Wが逆汚染される確率が高くなる。これに対して、突起部23dの外表面及びロール本体23eの外表面にのみ吸水性及び柔軟性を有する多孔質高分子素材からなる被覆層26を形成した場合は、防水性を有する素材からなる突起部23d内やロール本体23e内には汚染した洗浄液や汚染粒子が進入することなく、薄い被覆層26のみに汚染した洗浄液や汚染粒子が蓄積されることになり、その量が極めて少なく、従って排出される汚染液や汚染粒子の数量も極めて少なく、基板Wが逆汚染される確率が低くなる。
【0041】
図3、図4、図5、図6、図7、図8、及び図10(b)に示すように構成された洗浄部材を基板Wの処理面に接触させると共に、処理液を供給し両者の相対的運動により、該処理面を処理するように基板処理装置を構成し、該基板処理装置に洗浄部材13又は23の多孔質高分子素材の被覆層に基板Wを接触させ摩擦することで汚染物を除去する機構を備えることにより、洗浄部材13又は23を常に汚染物が無いか或いは極めて少ない、清浄状態に維持することができる。
【0042】
また、図1に示す洗浄装置の洗浄部材13に図3乃至図5に示す構成の洗浄部材を用い、洗浄部材13の多孔質高分子素材の被覆層13bの有無をモニタするのに超微小硬度計又は薄膜硬度計又はCCDを備えることにより、洗浄部材13の被覆層13bの状態を知ることができ、適正な交換時期に洗浄部材13を交換することが可能となる。同様に、図2に示す洗浄装置の洗浄部材23に図6、図7、図8、及び図10(b)に示す構成の洗浄部材を用い、洗浄部材23の多孔質高分子素材の被覆層23b、26の有無をモニタするのに超微小硬度計又は薄膜硬度計又はCCDを備えることにより、洗浄部材23の被覆層23b、26の状態を知ることができ、適正な交換時期に洗浄部材23を交換することが可能となる。
【0043】
また、上記のように構成された基板処理装置又は基板洗浄装置において、洗浄部材13,23の気孔分布、硬度が多孔質高分子素材の被覆層からコア部に変化した場合、交換信号を出すようにすれば、洗浄部材の適正交換時期を知ることができる。
【0044】
図11は図4に示す構成の洗浄部材を洗浄しながら、洗浄部材13の被覆層13bの状態をモニタする洗浄部材洗浄機構の構成例を示す図である。本洗浄部材洗浄機構は図1に示す基板洗浄装置の基板Wの外側所定位置(待機位置)に配置されている。洗浄部材洗浄機構30は、洗浄槽31を備え、該洗浄槽31内底部に観察壁32が配置されている。該観察壁32は透明な材料(例えば、水晶等)で構成され、その中央部にCCD33が配置され、該CCD33の出力信号は画像処理装置34に取り込まれ画像処理され、画像処理信号は制御装置35に出力されるようになっている。
【0045】
また、洗浄槽31内には洗浄液Q中のパーティクル数及び/又は洗浄液Qの成分濃度等を測定する液性状センサ36が配置され、該液性状センサ36の出力信号も制御装置35に出力されるようになっている。制御装置35は画像処理装置34からの画像処理信号及び液性状センサ36の出力信号から例えば洗浄液交換信号S1や洗浄部材交換信号S2を作成し、制御盤(図示せず)に出力するようになっている。
【0046】
洗浄槽31内には洗浄液供給管37より洗浄液Qが供給されており、該供給液Q中に図1の揺動アーム15に回転自在に支持され、洗浄部材保持回転機構12に保持された洗浄部材13が上方から浸漬され、観察壁32上面に所定の圧力で押圧され、矢印A方向に回転することにより、洗浄部材13は洗浄される。この洗浄において、被覆層13bは薄いから吸込まれたパーティクルが効果的に排出される。この洗浄部材13の洗浄中に超音波発振器38から超音波が発振され、洗浄液Qが励起され、洗浄作用を促進させる。洗浄液Q内のパーティクル数や洗浄液Qの成分濃度等は液性状センサ36で観測され、洗浄液Qが交換状態になったら、排液弁39を開放し、洗浄槽31内の洗浄液を排出すると共に、排液後洗浄液供給管37から新たな洗浄液Qを供給する。
【0047】
CCD33は透明な観察壁32を通して洗浄部材13の被覆層13bの状態を観測し、その出力信号は上記のように画像処理装置34に出力され、該画像処理装置34で画像処理された画像処理信号は制御装置35に取り込まれる。制御装置35は画像処理信号から洗浄部材13の多孔質高分子素材からなる被覆層13bの状態を知ることができ、適正な交換時期に洗浄部材交換信号S2を制御盤に出力する。これにより、適正な時期に洗浄部材13の交換をすることができる。例えば被覆層13bが極めて薄くなったり、コア部13aの一部が露出した場合に直ちに洗浄部材13の交換信号S2を出力する。なお、図示は省略するが、図3及び図5に示す洗浄部材も、図11に示す構成の洗浄部材洗浄機構を用いての洗浄部材13の洗浄及び被覆層13bの状態をモニタすることができる。
【0048】
図12は図6に示す構成の洗浄部材23を洗浄しながら、洗浄部材23の被覆層23bの状態をモニタする洗浄部材洗浄機構の構成例を示す図である。本洗浄部材洗浄機構は図2に示す基板洗浄装置の基板Wの外側所定位置(待機位置)に配置されている。洗浄部材洗浄機構40は、洗浄槽41を備え、該洗浄槽41内底部に観察壁42が配置されている。該観察壁42は透明な材料(例えば、水晶等)で構成され、その中央部にCCD43が配置され、該CCD43の出力信号は画像処理装置44に取り込まれ画像処理され、画像処理信号は制御装置45に出力されるようになっている。
【0049】
また、洗浄槽41内には洗浄液Q中のパーティクル数及び/又は洗浄液Qの成分濃度等を測定する液性状センサ46が配置され、該液性状センサ46の出力信号も制御装置45に出力されるようになっている。制御装置45は画像処理装置44からの画像処理信号及び液性状センサ46の出力信号から例えば洗浄液交換信号S1や洗浄部材交換信号S2を作成し、洗浄液供給バルブ50や洗浄部材交換信号発生部52に出力するようになっている。
【0050】
洗浄槽41内には洗浄液供給バルブ50を開放することにより洗浄液供給管51より洗浄液Qが供給されるようになっており、図示しない排液バルブを開放することにより、洗浄液Qを排液できるようになっている。また、洗浄槽41内には観察壁42上面にある洗浄部材23を矢印A、A方向に移動させることにより、洗浄部材23を所定の圧力で挟持又は解放する洗浄治具48、48が配置されている。該洗浄治具48、48は洗浄治具駆動装置47で矢印A、A方向に移動されるようになっている。観察壁42上面に所定の圧力で押圧され、且つ洗浄治具48、48で挟持された洗浄部材23を矢印B方向に回転することにより、洗浄部材23は洗浄される。この洗浄において、被覆層23bは薄いから吸込まれたパーティクルは効率よく吐き出される。この洗浄部材23の洗浄中に超音波発振器49から超音波が発振され、洗浄液Qが励起され、洗浄作用を促進させる。洗浄液Q内のパーティクル数や洗浄液Qの成分濃度等は液性状センサ46で観測され、洗浄液Qが交換状態になったら、図示しない排液弁を開放し、洗浄槽41内の洗浄液Qを排出すると共に、排液後洗浄液供給バルブ50を開放し、洗浄液供給管51から新たな洗浄液Qを供給する。
【0051】
CCD43は透明な観察壁42を通して洗浄部材23の被覆層23bの状態を観測し、その出力信号は上記のように画像処理装置44に出力され、該画像処理装置44で画像処理された画像処理信号は制御装置45に取り込まれる。制御装置45は画像処理信号から洗浄部材23の多孔質高分子素材からなる被覆層23bの状態を知ることがでる。例えば、洗浄部材23の表面の被覆層23bが極めて薄くなったり、コア部23aの一部が露出したら直ちに洗浄部材交換信号S2を洗浄部材交換信号発生部52に出力する。なお、図示は省略するが、図7及び図10(b)に示す洗浄部材も、図12に示す構成の洗浄部材洗浄機構を用いての洗浄部材23の洗浄及び被覆層23bの状態をモニタすることができる。
【0052】
図13は本発明に係る基板処理装置(めっき装置)の平面構成例を示す図である。本基板処理装置は、例えばスミフボックス等の内部に多数の半導体ウエハ等の基板を収納した搬送ボックス60を着脱自在にした矩形状の装置フレーム61を備えている。この装置フレーム61の内部には、中央部に位置して、第1基板搬送ロボット62、仮置台63、及び第2基板搬送ロボット64が直列に配置されている。
【0053】
そして両側に位置して、一対の基板洗浄・乾燥ユニット65、基板洗浄ユニット66、めっき前処理ユニット67、めっき前処理及びめっきユニット68が配置されている。更に、搬送ボックス60と反対側に位置して、めっき前処理ユニット67にめっき前処理液を供給するめっき前処理液供給部69と、めっき前処理及びめっきユニット68にめっき液を供給するめっき液供給部70が配置されている。基板洗浄ユニット66には図1又は図2に示す構成の基板洗浄装置を用いている。
【0054】
第1搬送ロボット62により搬送ボックス60から1枚の基板Wを取り出して仮置台63のドライ用基板保持部に搬送し載置する。該ドライ用基板保持部(図示せず)で保持する基板Wを第2基板搬送ロボット64でめっき前処理ユニット67に搬送し、該めっき前処理ユニット67でめっき前処理を行う。めっき前処理の終了した基板Wを第2基板搬送ロボット64でめっき前処理及びめっきユニット68に搬送し、ここでめっき前処理及びめっき処理を行い、めっき処理の終了した基板Wを第2基板搬送ロボット64で図1又は図2に示す構成を有する基板洗浄ユニット66に搬送する。
【0055】
基板洗浄ユニット66では、基板Wの上下面を洗浄し、基板Wの表面に付着したパーティクルや不要物を除去する。該パーティクルや不要物が除去された基板Wを第2基板搬送ロボット64で仮置台63のウエット用基板保持部(図示せず)に搬送し載置する。
【0056】
第1基板搬送ロボット62は、仮置台63のウエット用基板保持部から基板Wを取り出し、基板洗浄・乾燥ユニット65に搬送し、ここで、基板Wの表面の化学洗浄及び純水洗争を行って、スピン乾燥させる。このスピン乾燥後の基板Wを第1基板搬送ロボット62で搬送ボックス60内に戻す。これにより基板Wの処理は終了する。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る洗浄部材を用いる基板洗浄装置の概略構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る洗浄部材を用いる基板洗浄装置の概略構成例を示す図である。
【図3】本発明に係るペン型の洗浄部材の一実施例の構成例を示す図である。
【図4】本発明に係るペン型の洗浄部材の他の実施例の構成例を示す図である。
【図5】本発明に係るペン型の洗浄部材の更に別の実施例の構成例を示す図である。
【図6】本発明に係るロール型の洗浄部材の他の実施例の構成例を示す図である。
【図7】本発明に係るロール型の洗浄部材の構成例を示す図である。
【図8】本発明に係るロール型の洗浄部材の構成例を示す図である。
【図9】従来の洗浄部材と本発明に係る洗浄部材の汚染及び汚染排出状態を説明するための図である。
【図10】従来の洗浄部材と本発明に係る洗浄部材の汚染及び汚染排出状態を説明するための図である。
【図11】本発明に係る基板洗浄装置の洗浄部材洗浄機構の構成例を示す図である。
【図12】本発明に係る基板洗浄装置の洗浄部材洗浄機構の構成例を示す図である。
【図13】本発明に係る基板処理装置の構成例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の洗浄面に洗浄部材を接触させると共に洗浄液を供給し両者の相対的運動により、該洗浄面を洗浄する基板洗浄装置の洗浄部材であって、
防水性のコア部を具備し、該コア部の表面を多孔質高分子素材で被覆した被覆層を設けたことを特徴とする洗浄部材。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄部材において、
前記多孔質高分子素材は、PVA(ポリビニルアルコール)系ポリマー、アクリル酸系ポリマー、その他の附加重合体、アクリルアミド系ポリマー、ポリオキシエチレン系ポリマー、ポリエーテル系ポリマー、縮合系ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリスチレンアウルホン酸、ウレタン樹脂、ポリウレタン樹脂のいずれかの高分子材で形成されることを特徴とする洗浄部材。
【請求項3】
請求項1に記載の洗浄部材において、
前記多孔質高分子素材の被覆層の厚さは5μm以上15mm以下であることを特徴とする洗浄部材。
【請求項4】
請求項1に記載の洗浄部材において、
前記コア部が、軟質プラスチックフォーム、フッ素ゴム、シリコンゴム、フォスファゼンゴム、ウレタン系ゴムを含む軟質ゴム及びエポキシ樹脂のいずれかの防水素材で構成されていることを特徴とする洗浄部材。
【請求項5】
請求項1に記載の洗浄部材において、
前記多孔質高分子素材の被覆層の湿潤時の硬度が100以下であることを特徴とする洗浄部材。
【請求項6】
請求項1に記載の洗浄部材において、
前記多孔質高分子素材の被覆層との間又は該被覆層と前記コア部の間に防水性素材からなる防水層を形成したことを特徴とする洗浄部材。
【請求項7】
基板の洗浄面に洗浄部材を接触させると共に洗浄液を供給し両者の相対的運動により、該洗浄面を洗浄する基板洗浄装置において、
前記洗浄部材に請求項1乃至6のいずれか1項に記載の洗浄部材を用いたことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項8】
請求項7に記載の基板洗浄装置において、
前記洗浄部材の前記多孔質高分子素材の被覆層の有無をモニタするのに硬度計又は薄膜硬度計又はCCDを備えたことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項9】
請求項8に記載の基板洗浄装置において、
前記洗浄部材の気孔分布、硬度が前記多孔質高分子素材の被覆層から前記コア部の状態に変化した場合、交換信号を出力する手段を設けたことを特徴とする基板洗浄装置。
【請求項10】
基板に所定の処理を施す基板処理部と、該基板処理部で所定の処理が終了した基板を洗浄する基板洗浄部を備えた基板処理装置において、
前記基板洗浄部に請求項7乃至9のいずれか1項に記載の基板洗浄装置を用いることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2008−541413(P2008−541413A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−552451(P2007−552451)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際出願番号】PCT/JP2006/318212
【国際公開番号】WO2007/032414
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】