説明

洗米機

【課題】白米を計量供給して洗米する炊飯前処理の際に、処理時間の増加を招くことなく、計量投入時の穀粒の損傷を最小限に抑えることができる洗米機を提供する。
【解決手段】洗米機は、給水部(3b)、排水部(3c)および撹拌部(3a)を備え、計量供給部(2a)により貯米庫(2)から送出した白米を洗米する洗米タンク(3)を設け、上記計量供給部(2a)により洗米タンク(3)に所定量の白米を供給する計量供給工程と、撹拌部(3a)により撹拌動作する洗米工程とを制御可能に構成され、上記計量供給工程は、上記洗米タンク(3)に給水して水を貯めた状態で計量白米の供給を開始するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯米庫と洗米タンクとを備えて所定量の白米を洗米して炊飯前処理する洗米機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のように、貯米庫と洗米タンクとを備えて炊飯前処理をする洗米機が知られている。この洗米機は、定量繰出弁による計量供給部を有する貯米庫と、この貯米庫から投入された白米を回転撹拌する給排水可能な洗米タンクとからなり、洗米開始の信号により、貯米庫の計量供給部から所要量の白米を下方の洗米タンクに計量供給し、次いで洗米タンクに給水し、所定時間の撹拌動作を行うことによって洗米し、このような一連の工程制御をすることにより、所要の計量精度を確保しつつ、全自動で炊飯の前処理をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−43414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
貯米庫から洗米タンクに米を落下供給すると、米がタンクに衝突するため少量の米がひび割れたり傷つく場合が生じる。
【0005】
本発明の目的は、上記課題を解決することを課題とする。また、洗米処理時間の短縮を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、給水部(3b)、排水部(3c)および撹拌部(3a)を備え、計量供給部(2a)により貯米庫(2)から送出した白米を洗米する洗米タンク(3)を設け、上記計量供給部(2a)により洗米タンク(3)に所定量の白米を供給する計量供給工程と、撹拌部(3a)により撹拌動作する洗米工程を行う洗米機において、洗米タンクに給水し、洗米タンクに水を貯めた状態で計量供給工程を開始することを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1の構成において、前記給水部(3b)に流量計を設け、給水工程により所定水量を洗米タンク(3)に給水し、この給水工程と計量供給工程の終了を条件に排水部(3c)により排水し、この排水開始から終了までの間について撹拌部(3a)による撹拌動作を行うことを特徴とする。
上記給水部の流量計による所定量の給水による白米の初期洗米により、給水流量確認と同時にとぎ汁抜きが終了する。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2のいずれかの構成において、前記給水部(3b)は洗米タンク(3)の下部に連通して構成したことを特徴とする。
上記給水部から洗米タンクの下部に給水することにより、貯留水の底部から静穏給水されて水跳ねが抑えられるとともに、タンク底の堆積白米が分散される。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項2の構成において、前記給水部(3b)による給水量は、計量供給部(2a)により供給される白米の総体積以上に規定することを特徴とする。
上記給水部による給水量を白米の総体積以上に規定することにより、供給される白米が着水する水没部分が給水過程で拡大されて米粒相互の衝突が抑えられる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明により、洗米タンク内に水を貯めた状態で計量供給工程を行うことで、供給米が水中投下されることにより穀粒落下時の衝撃が緩和され、落下衝撃によるひび割れ等の米粒の損傷が小さく抑えられる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1の効果に加え、上記給水部の流量計による所定量の給水による白米の初期洗米により、給水流量確認と同時にとぎ汁抜きができることから、流量計測のための特段の給排水を要することなく、給水を有効利用できるとともに、洗米時間全体の短縮につながる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2のいずれかの効果に加え、洗米タンクの下部に給水部を連通したことにより、給水時は、貯留水の底部から静穏給水されることから、計量供給部への水跳ねが最小限度に抑えられるので、計量精度が確保されて炊飯品質を向上することができる。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項2の効果に加え、上記給水部による給水を白米の総体積以上の量に規定することにより、供給される白米が着水する水没部分が給水過程で拡大されることから、米粒の衝突が抑えられるとともに、撹拌時に全穀粒が水没状態となってムラなく一様な初期洗米が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】洗米機の側面図
【図2】洗米機の要部拡大断面図
【図3】洗米処理のフローチャート
【図4】水加減工程のフローチャート
【図5】投下弁開閉機構の動作説明図
【図6】投下弁開閉機構の別の構成例
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
本発明の洗米機1は、図1の側面図に示すように、計量供給部2aを下部開口に設けた貯米庫2および洗米用の撹拌部3aである縦軸芯に回転する棒状の撹拌体を内設した洗米タンク3を上下に構成し、この洗米タンク3に給水部3bと排水部3cとを設ける。
洗米機1の洗米タンク3の下方には、炊飯釜4、バーナ5を引出式の架台6に搭載する。
【0016】
上記洗米機1は、図2の要部拡大断面図に示すように、ロータリ式の定量繰出弁等によって構成した計量供給部2aを介して貯米庫2から所要量の白米を計量しながら洗米タンク3内に投下する。洗米タンク3の下端部に設けた給排水用のジャケット11に開口した投下口11aを投下弁11bが上下動することで開閉し、その支持軸11cの上端部に投下弁11b及び支持軸11cを上下動させる開閉機構12を連結する。支持軸11cを中心に撹拌部3aの中空軸17を洗米タンク3の天井板18に軸支し、この撹拌部3aを駆動部14により回転させて洗米を行う。洗米終了した白米は投下弁11bを開けて炊飯釜4に投下する。
ジャケット11には、給水管15aと給気管15bとを接続して給水部3bを構成するとともに、排水弁16aを介して排水管16bを接続して排水部3cを構成する。
【0017】
また、洗米機1の洗米制御については、図3のフローチャートに示すように、運転スイッチの起動信号により洗米炊飯作業開始の第1の処理ステップ(以下において、「S1」の如く略記する。)が開始すると、給水部3bにより洗米タンク3への給水を開始(S2)する。給水部3bには流量センサを設けて給水速度を把握し、所定水量の給水によって給水工程を終了(S3)する。いわゆるどの程度の水量が流れているのかをチェックする流量チェック工程が終了する。
給水工程終了後、洗米機1内に水を貯めた状態で、計量供給部2aを駆動して貯米庫2から所要量の白米の計量供給(計量供給工程)を開始(S4)する。
【0018】
計量供給部2aによる所要量の給米によって計量供給工程を終了(S5)し、両工程の終了後に撹拌部3aの撹拌動作による前洗米工程(S6)を所定時間について行い、続いて撹拌部3aを動作しながら、あるいは停止した状態で排水部3cによって排水工程で水抜き(S7)を行うことにより、とぎ汁が排水され、比較的短時間の前洗米工程を終了する。
【0019】
次いで、所定時間について給水部3bから給水管15aと給気管15bによる気泡給水を行いつつ、撹拌部3aを回転させる洗米工程(S8)を行う。次に、間欠的に水を供給しては排水するざる上げ浸漬工程(S9)に移行するか、この工程を省略し、炊飯釜4に米と共に投下する水を供給する水加減工程(S10)に移行する。炊飯釜4に米と水を投下する米・水投下工程(S11)までの一連の炊飯準備の工程を経た上で、炊飯釜4による炊飯工程(S12)に移行する。
【0020】
上述の一連の炊飯準備の各工程については、運転開始時に流量チェックするとともに、そのまま洗米タンク3内に貯水し、その後に貯米庫2の計量供給部2aが白米を計量して洗米タンク3の貯水に落下させるように工程制御することにより、特に冬場の過乾燥状態にある白米について、最初に計量落下される白米が洗米タンク3の底面に衝突することにより受ける衝撃が緩和されて割れ米や傷米の発生を防止して米の品質の安定化を図ることができる。
【0021】
また、給水部3bにより洗米タンク3の下部から給水して貯水し、所要量の白米の計量終了後に所定時間について撹拌部3aを回転させ、排水する前洗米工程を行うことで、運転開始から洗米工程終了までの総所要時間を短縮することができる。
また、ジャケット11からの下給水で洗米することにより、貯留水面が次第に上昇することから、計量供給部2aへの水はねが最小限度に抑えられるので、洗米タンク3の天井部への水滴の飛散や米粒の付着を防止できる。
また、前洗米工程で使用された水(とぎ汁)が計量終了後に速やかに排出されるので、白米の糠臭の付着を防止できる。さらに、計量された白米が洗米タンク3に投下される時に、水中に投下されるので、白米が特定の位置に集中することがなく、洗米タンク3内に分散されて均一な洗米が可能となる。
【0022】
また、運転開始直後の洗米のための給水の際に、流量センサによる給水速度の計測を合わせて行い、当該流量チェックのための水を前洗米工程に用いることで、水の有効利用ができ、節水化を図ることができる。
【0023】
給水工程(流量チェック工程)で供給される洗米タンク3への給水量については、計量供給する白米の容積と略同一若しくは以上とすることにより、給水によって白米が完全に水没するので、水量不足によって部分的な水没にとどまる場合の洗米むらを回避して、均一な洗米が可能となる。
【0024】
別実施例として、まず給水工程を開始し、給水工程中に洗米タンク3への白米の計量供給を同時並行で行うことで、順次供給より短い時間で洗米タンク内に白米と水が収容されて洗米の準備が完了する構成としても良い。
【0025】
次に、水加減工程について説明すると、図4のフローチャートに示すように、水加減工程の開始により、排水バルブ閉(S11a)および下給水電磁弁開(S11b)による給水部3bからの給水の際に、流量センサがパルスカウントを開始(S12)し、規定の50%に達した時点で撹拌部3aを回転させ(S13)、次いで80%に達したら撹拌部3aを停止(S14)し、規定パルスまでカウントしたら下給水電磁弁オフ(S15)によって給水を停止し、投下工程に移行する制御を構成する。
このように、水加減工程において限定的に撹拌動作を行うことにより、投下までの時間を延ばすことなく残米を防止することができる。
【0026】
(開閉機構)
次に、投下弁11bの開閉機構12について説明すると、図5の動作説明図に示すように、洗米タンク3の天井板18には撹拌部3aの中空軸17の軸支部17aを設けて中空軸17内に上下方向にスライド動作可能に支持軸11cを配置し、この支持軸11cをジャケット11の投下口11aに貫通配置してその下端に投下口11aを開閉する投下弁11bを取付ける。一方、支持軸11cの上端には吊上アーム22を連結してこの吊上アーム22を傾動可能に軸支する支軸22aを設け、この支軸22aによりその内外側位置で逆方向にシーソー動作可能に作用レバー24を軸支する。
【0027】
作用レバー24は、その内側部に圧縮ばね等による弾性部材25を設け、この弾性部材25を介して吊上アーム22と連結し、外側部には所定の角度範囲に限ってカム作用を有する開閉カム26を駆動軸26aによって回動制御可能に設けることにより、作用レバー24が開閉カム26のカムストロークを受けて傾動すると、弾性部材25と吊上アーム22を介して投下弁11bが上昇し、この投下弁11bがその昇降ストロークSの上端位置である投下口11aのバルブシートに当接すると、弾性部材25の弾発力によって投下弁11bが密接封鎖される。
【0028】
また、作用レバー24の外側部には、ゴム材等による緩衝部材27と、この緩衝部材27の上昇限度位置となる上限部材27aとを設け、この上限部材27aはボルト等によって上昇限度位置を調節可能に構成することにより、開閉カム26がカム作用外の角度まで回動された際に、弾性部材25の弾発力と支持軸11c等の重力が作用する吊上アーム22のモーメントが弾性部材25を介して作用レバー24に作用し、緩衝部材27が上限部材27aに達する角度位置に傾動することによって投下弁11bが昇降ストロークSの下端位置に保持される。したがって、ボルト等によって上昇限度位置を調節可能な上限部材27aにより、投下弁11bの昇降ストロークSの下端位置を容易に調節することができる。
【0029】
また、作用レバー24の内側部には、弾性部材25の弾発力を受けるとともに、その逆方向の緩衝力を作用するゴム材等による緩衝部材28を吊上アーム22に設けることにより、開閉カム26がカム作用外の角度まで回動された際に、重力等が作用する吊上アーム22のモーメントによって緩衝部材27が上限部材27aに作用するとともに吊上アーム22が弾性支持状態となることから、緩衝部材27の反力により投下弁11bが支持軸11cを介して上下方向に振動動作することにより、投下弁11bや支持軸11cに付着していた米粒を振り落とすことができる。
【0030】
次に、開閉機構の別の構成例について説明すると、図6の要部構成図に示すように、シーソー動作型の作用レバー24の内側部を投下弁11bの支持軸11cと連結するとともに、この支持軸11cを下降動作させる引張ばね31を洗米タンク3の天井板18に連結することにより、投下弁11bを勢いよく下降動作させ、その下限位置における衝撃によって洗米タンク3から米粒を振り落として残米を無くすことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 洗米機
2a 計量供給部
2 貯米庫
3 洗米タンク
3a 撹拌部
3b 給水部
3c 排水部
11 ジャケット
11a 投下口
11b 投下弁
11c 支持軸
12 開閉機構
14 駆動部
15a 給水管
15b 給気管
17 中空軸
S 昇降ストローク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水部(3b)、排水部(3c)および撹拌部(3a)を備え、計量供給部(2a)により貯米庫(2)から送出した白米を洗米する洗米タンク(3)を設け、上記計量供給部(2a)により洗米タンク(3)に所定量の白米を供給する計量供給工程と、撹拌部(3a)により撹拌動作する洗米工程を行う洗米機において、
洗米タンク(3)に給水し、洗米タンク(3)に水を貯めた状態で計量供給工程を開始することを特徴とする洗米機。
【請求項2】
前記給水部(3b)に流量計を設け、給水工程により所定水量を洗米タンク(3)に給水し、この給水工程と計量供給工程の終了を条件に排水部(3c)により排水し、この排水開始から終了までの間について撹拌部(3a)による撹拌動作を行うことを特徴とする請求項1記載の洗米機。
【請求項3】
前記給水部(3b)は、洗米タンク(3)の下部に連通して構成したことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の洗米機。
【請求項4】
前記給水部(3b)による給水量は、計量供給部(2a)により供給される白米の総体積以上に規定することを特徴とする請求項2記載の洗米機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−22523(P2013−22523A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160141(P2011−160141)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】