説明

流体アクチュエータ並びにこれを用いた発熱装置及び分析装置

【課題】低電圧による駆動が可能で、狭い流体通路内で流体を一方向に流すことができる流体アクチュエータを提供する。
【解決手段】圧電体31と、前記圧電体31を内壁の一部に有し、内部を流体が移動可能な流体通路2と、前記圧電体31の前記流体通路2を臨む面に形成された櫛歯状電極から発生する弾性表面波によって、前記流体通路内の前記流体を駆動する弾性表面波発生部101とを備えた流体アクチュエータ。弾性表面波発生部101から発生する弾性表面波の両伝搬方向に沿って伸ばした直線が、前記流体通路の壁面又は前記流体通路の出入口にそれぞれぶつかる2点をC、Dとすると、前記弾性表面波発生部は101、前記C,Dの中心位置から、弾性表面波のいずれかの伝搬方向に沿ってずれた位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性表面波(SAW;Surface Acoustic Wave)を用いて流体に一定の流れや循環流を生じさせるための流体アクチュエータに関する。また、本発明は前記流体アクチュエータを用いた発熱装置及び分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロプロセッサー(MPU)の高速化が著しくなっている。現在、数GHz以上の動作周波数に達しており、更なる高速化の動向が続いている。MPUの高速化は、集積密度を上げることによって実現されるため、発熱密度が高くなることが避けられない。現在の最高速度のMPUにおいて、総発熱量が100W以上、発熱密度では400W/mm以上に達しており、更なる高速化により、発熱量も増大し続けている。
【0003】
MPUを冷却するために、MPUパッケージ上面にファンや水冷装置を取付けたものがある。しかし、MPUの発熱部はシリコン基板上に形成された回路部である。冷却はパッケージ等を介して行われるため、冷却効率が低いという問題がある。
そのため、MPUのシリコン基板に流体通路を形成し、流体通路に流体を循環させる構造が提案されている。発熱部である半導体基板の極近傍で冷却が可能となり、MPUの高速化に伴う発熱増大に対応できる。しかしながら、このMPU水冷システムは、ポンプとして電気浸透流ポンプを用いる。このため、MPUのシリコン基板に形成される細い流体通路においては流体通路抵抗が大きくなるため、400V程度と高い駆動電圧が必要であるという問題がある。
【0004】
また、マイクロ分析システム(μTAS)においても、分析サンプルを含む溶媒を流すために電気浸透流が用いられ、溶媒中のサンプル粒子を移動させるために電気泳動や誘電泳動などが用いられているが、溶液に電界を直接加えるため、電界を印加すると変質するようなサンプルには不向きであるという問題がある。
以上の条件を鑑みると、弾性表面波振動を用いて流体を駆動する流体アクチュエータが好適であることが分かる。特許文献1、非特許文献2、特許文献2に弾性表面波を用いた流体アクチュエータが開示されている。
【0005】
特許文献1に開示されているのは、流体通路の一部を構成する圧電素子に櫛型電極を設けた表面波発生手段を配置したマイクロポンプである。
非特許文献1に開示されているのは、圧電薄膜上にくし型電極を設け、くし型電極に交流電圧を印加することでラム波を励起し、基板上の流体を駆動するものである。
特許文献2に開示されているのは、弾性表面波の波長程度の厚さとする圧電体基板2枚を、リブを挟んで重ね合わせて、ノズルを形成するとともに、圧電体基板のノズルと反対側の面にそれぞれUDT(一方向性櫛型交差指状電極)を配置し、UDTに1つのパルス波形を、位相をずらして順次入力することで駆動することにより、圧電体のノズルを形成する壁面上に弾性表面波の裏面波を発生させ、この裏面波によってノズル壁面の凸状の歪変形はノズルの先端方向へ移動し、ノズル内の流体は、この凸状の歪変形に引きずられて運動し先端部方向に移動してノズル先端から液滴として吐出される、インクジェットヘッドである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平3−116782号公報
【特許文献2】特開2002−178507号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】R. M. Moroney et. al., 「Lamb波励起マイクロトランスポート」"Microtransport induced by ultrasonic Lamb waves", Appl. Phys. Lett., 59 (7),E−E774-776, 1991
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の流体アクチュエータにおいては、以下のような問題点があった。
特許文献1の弾性表面波を用いたマイクロポンプは、そこに用いられる電極が、一対の櫛型電極を噛み合わせて構成した、ピッチが一定の電極であるため、この電極から弾性表面波を発生させても、流体の流れる向きを一方向にするのは難しい。
非特許文献1のラム波を用いた流体アクチュエータは厚さ数μmの薄膜上にアクチュエータが形成されているため、強度が低く、高い圧力が発生できない。
【0009】
特許文献2の弾性表面波の基板裏面に到達する波(裏面波)を用いた流体アクチュエータは、基板表面の振幅の1/10程度と振幅が小さく、効率よく流体を駆動することができない。また、リブの高さすなわち流体通路の高さが、裏面波の振幅と同程度であることが望ましいとされているが、裏面波の振幅は、UDT電極に数10ボルト程度の電圧を加えただけでは1μm程度以下になり、このような高さのリブによってノズルを作製することは困難な技術である。
【0010】
本発明の目的は、比較的低電圧で高出力な駆動が可能であり、しかも、小型・軽量化が可能である流体アクチュエータを提供することにある。
また、本発明の目的は、流体アクチュエータと一緒に集積化することで外部のポンプが不要で、さらにはバッチプロセスで同時に作製が可能な発熱装置及び分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の流体アクチュエータは、圧電体と、前記圧電体を内壁の一部に有し内部を流体が移動可能な流体通路と、前記圧電体の前記流体通路を臨む面に形成された櫛歯状電極から発生する弾性表面波によって、前記流体通路内の前記流体を駆動する弾性表面波発生部とを備え、前記弾性表面波発生部は、弾性表面波が伝搬する一方の側に位置する前記流体通路内の前記流体に対して、他方の側に位置する前記流体通路内の前記流体に対するよりも、より強い駆動力を与えることによって、前記流体を一方向に移動させる流体アクチュエータである。
【0012】
この構成の流体アクチュエータによれば、弾性表面波発生部の櫛歯状電極に交流電圧を印加すると圧電体の表面に弾性表面波(SAW;Surface Acoustic Wave)が発生し、櫛歯状電極から流体通路内を両方向に向かって伝搬する。このとき両方向に伝搬する弾性表面波のうち、一方向に伝搬する弾性表面波のほうが、その方向に存在する流体に対して強い流体駆動力を与えるように構成されている。したがって、このように励振された弾性表面波により、流体通路内部の流体を一方向に流すことができる。
【0013】
本発明の一局面では、図1に具体的に示すように、弾性表面波発生部101から発生する弾性表面波の両伝搬方向に沿ってのばした直線が、流体通路2の壁面又は前記流体通路の出入口とそれぞれぶつかる点をC、Dとすると、前記弾性表面波発生部は、前記C,Dで挟まれる流体通路の中心位置から、前記弾性表面波のいずれかの伝搬方向にずれた位置に配置されている。
【0014】
このため、弾性表面波発生部101から左右均等に励起された弾性表面波のうち、一方向(例えばD方向)に伝搬した波は、流体に対して一方向に流れるような駆動力を発揮し、他方向(C方向)に伝搬した波は、流体に対して他方向に流れるような駆動力を発揮するが、平面視した場合、一方の流体に駆動力が伝達される部分の面積S2が、他方の流体に駆動力が伝達される部分の面積S1より大きいため、一方側の流体の駆動力のほうが勝り、全体として流体は図示したように一方向(D方向)に流れることになる。
【0015】
したがって、低い駆動電圧と簡単な電極の構造により、流体を一方向に流すことができる。
なお、「前記弾性表面波発生部は、前記C,Dの中心位置から、弾性表面波のいずれかの伝搬方向に沿ってずれた位置に配置されている」とは、図1に示すように、前記弾性表面波発生部101の一端Aから前記流体通路の壁面Cまでの距離dと、前記弾性表面波発生部の他端Bから前記流体通路の壁面Dまでの距離dとが、一方(例えば距離d)が大きく、他方(距離d)が小さい関係になっていることと同じである。
【0016】
前記小さい方の距離は、20mm以下であれば、一般的なマイクロ分析システム(μTAS)装置において、一方向に流れを生ぜしめるのに十分である。
前記弾性表面波発生部に近い方の前記流体通路の壁面は、前記弾性表面波の伝搬方向に対して略直交する平面であるならば、A点からC点に向かってきた弾性表面波は、C点において一部が反射し、B点からD点へ向かう弾性表面波と同じ向きに重畳して進行することとなり、流体の流れもB点からD点へ向かう向きに強く流れることになる。
【0017】
本発明の他の局面によれば、流体アクチュエータの前記弾性表面波発生部は、前記一方向に指向性を持った弾性表面波を発生させることを特徴とする。この構成によれば、弾性表面波発生部の櫛歯状電極に交流電圧を印加すると圧電体の表面に前記一方向に指向性を持った弾性表面波、言い換えれば、前記一方向に向かってより強く伝搬する弾性表面波が発生し、前記一方向に基体に沿って伝搬する。このように励振された弾性表面波により、流体通路内部の流体を前記一方向に流すことができる。
【0018】
前記弾性表面波発生部は、前記一方向に指向性を持った弾性表面波を発生させるために、前記櫛歯状電極の隣接する電極指の間であって、これらの電極指間の中央から、いずれらの電極指の方向にオフセットさせた位置に、これらの電極指と平行に配置された浮き電極を備えることが望ましい。この構造であれば、浮き電極による弾性表面波の反射が非対称となるため、弾性表面波の伝播方向に指向性が現れる。前記櫛歯状電極に交流電圧を印加することにより、前記一方向に指向性を持たせた弾性表面波を発生させることができるため、流路内の液体を前記一方向に流すことができる。
【0019】
また、前記弾性表面波発生部は、前記櫛歯状電極の片側に隣接させて配置され、前記櫛歯状電極で発生して伝搬してきた弾性表面波を反対方向に反射させる反射器電極を備える構造を採用しても良い。この構造であれば、櫛歯状電極から左右に同じ強さで伝搬した弾性表面波のうち、一方に伝搬した弾性表面波は反射器電極によって反射して、他方に伝搬する弾性表面波に重畳して伝搬するため、全体として、前記一方向に弾性表面波を伝搬させることができ、流路内の液体を所定の方向に流すことが可能となる。
【0020】
また本発明のさらに他の局面に係る流体アクチュエータによれば、前記弾性表面波発生部は、それぞれ同一ピッチの電極指を噛み合わせて配置した少なくとも三種の櫛歯状電極を有し、前記少なくとも三種の櫛歯状電極に位相を順番に異ならせた交流電圧が印加されることにより、前記一方向に伝搬する弾性表面波を発生させることを特徴とする。この構成の流体アクチュエータによれば、弾性表面波発生部の少なくとも三種の櫛歯状電極に位相を順番に異ならせた交流電圧を印加すると圧電体の表面に前記一方向に指向性を持った弾性表面波が発生し、基体に沿って前記一方向に伝搬する。このように励振された弾性表面波により、流体通路内部の流体を前記一方向に流すことができる。また、前記弾性表面波発生部の、前記櫛歯状電極に印加する三相の交流電圧の位相の変化する順番をコントロールすることにより、流路内の液体を逆向きに流すこともできる。
【0021】
また本発明のさらに他の局面に係る流体アクチュエータによれば、前記弾性表面波発生部は、それぞれ同一ピッチの電極指を噛み合わせて配置した二種の櫛歯状電極と、前記櫛歯状電極の隣接する電極指の間に配置された接地電極とを有し、前記隣接する電極指は、1ピッチの半分よりも小さな間隔又は大きな間隔で配置され、前記隣接する電極指の間隔に対応する位相差を持った2つの交流電圧が、各櫛歯状電極に印加されることにより、前記一方向に伝搬する弾性表面波を発生させることを特徴とする。この構成の流体アクチュエータは、前記三種の櫛歯状電極の代わりに、二種の櫛歯状電極と接地電極とを備えているところが相違している。そして、前記隣接する電極指の間隔に対応する位相差を持った2つの交流電圧を、それぞれの櫛歯状電極に印加する。これにより、前記一方向に指向性を持たせた弾性表面波を発生させ、流路内の液体を前記一方向に流すことができる。また、前記弾性表面波発生部の、前記二種の櫛歯状電極に印加する交流電圧の位相の変化する方向を反対にすることにより、流路内の液体を逆向きに動かすこともできる。
【0022】
なお、前記隣接する電極指を1ピッチの半分の間隔で配置した場合、電極指の配列は対称となり、印加される交流電圧の位相差もちょうど180°(反転位相)となる。このため、空間的な方向性がなくなり、流路内の液体を前記一方向に流すことができなくなるので、隣接する電極指を1ピッチの半分よりも小さな間隔又は大きな間隔で配置することが必要である。
【0023】
また、本発明の好適な実施態様として、次のような構造があげられる。
前記流体通路の内壁の他の一部を構成する基体をさらに備え、前記圧電体は、前記基体の一部にはめ込まれている構造であれば、弾性表面波を発生する部分に圧電体を設置し、弾性表面波が伝搬する媒質は前記基体とすることができる。よって、圧電体を小さくすることができるので、流体アクチュエータ全体のコストを下げることができる。
【0024】
本発明の流体アクチュエータの前記櫛歯状電極は、電極指の一端が接続された共通電極を有し、前記共通電極は、前記流体通路の外側になるように配置されているならば、弾性表面波を直接発生させない共通電極が流路の外側にあり、弾性表面波を直接発生させる櫛歯状電極を流路全体に形成できるため、流体の駆動力を大きくすることができる利点がある。
【0025】
前記弾性表面波発生部は、前記流体通路に沿って2つ以上設けられ、いずれかの弾性表面波発生部が選択的に駆動される構成を採用すれば、2つの以上の弾性表面波発生部のどちらかを駆動することにより、流体の流れをいずれか方向にでも制御することができる。
特に前記弾性表面波発生部が2つ設けられ、それぞれが、前記C,Dで挟まれる流体通路の中心位置から、前記弾性表面波の両伝搬方向にずれた位置に配置され、いずれかの弾性表面波発生部が選択的に駆動される構成を採用すれば、2つの弾性表面波発生部のどちらかを駆動することにより、流体の流れをいずれか方向にでも制御することができる。
【0026】
また、流体アクチュエータの前記圧電基板には、前記櫛歯状電極を覆って前記流体との接触を防ぐ保護構造が設けられるとともに、前記保護構造と前記櫛歯状電極との間に空隙が形成されて成るものであれば、弾性表面波発生部の振動が流体によって妨げられることがないため、より大きな駆動力が得られる。また、弾性表面波の指向性が損なわれることも避けられる。
【0027】
前記保護構造は、前記空隙を囲繞する側壁部を備え、前記側壁部は、前記弾性表面波発生部からの弾性表面波が伝搬する前記前記一方向側の厚みが、この前記一方向と反対側の厚みと比べて薄くなっている構造であれば、側壁部が厚い部分の方が、薄い部分よりも弾性表面波の透過が困難であるために、弾性表面波は壁部の薄い方向に指向性を持つこととなり、流路内の液体を前記一方向に流れるようにすることが簡易にできる。
【0028】
また、流体アクチュエータの前記流体通路の内壁を超音波によって振動させる振動印加手段をさらに備える構成であれば、流体通路内の流体を流体通路壁面から離す効果があり、流体通路抵抗を低減させることができ、流体の流れをスムーズにすることができる。
前記流体通路は、流体が循環可能である場合には、この流体通路に熱交換器又は放熱器を設けることにより、装置の冷却又は加熱が可能となる。
【0029】
また本発明のさらに他の局面に係る流体アクチュエータは、圧電体と、前記圧電体を内壁の一部に有し、内部を流体が移動可能な流体通路と、前記圧電体の前記流体通路を臨む面に形成された櫛歯状電極から発生する弾性表面波によって、前記流体通路内の前記流体を駆動する弾性表面波発生部とを備え、前記弾性表面波発生部は、前記櫛歯状電極の隣接する電極指の間であって、これらの電極指間の中央から、いずれかの電極指の方向にオフセットされた位置に、これらの電極指と平行に配置された浮き電極を備えるものである。この構成の流体アクチュエータは、浮き電極による弾性表面波の反射が非対称となるため、弾性表面波の伝播方向に指向性が現れる。前記櫛歯状電極に交流電圧を印加することにより、前記一方向に指向性を持たせた弾性表面波を発生させることができるため、流路内の液体を前記一方向に流すことができる。
【0030】
本発明の発熱装置は、前記流体アクチュエータを冷却装置として利用する発熱装置であって、当該発熱装置を実装する基板を有し、前記流体通路は、当該発熱装置を実装する基板に設けられているものである。この構成であれば、前記流体通路は、前記発熱装置の近傍を通過する放熱路として利用することができ、当該発熱装置を実装する基板から発生する熱を流体に移動させて当該発熱装置を冷却することができ、高い冷却効率が期待できる。
【0031】
本発明の分析装置は、流体状のサンプルを供給するサンプル供給部と、前記サンプルを分析する分析部とを有し、前記流体通路は、前記サンプル供給部から前記分析部へ前記流体状のサンプルを輸送するように設けられていることを特徴とする。従来の分析装置においては電気泳動などの原理を用いてサンプルを輸送するので扱えるサンプルが電気泳動で動き、高電界を印加されても破壊しないものに限られていたが、本発明の分析装置においては、弾性表面波でサンプルを移動させるのでサンプルの種類を選ばないという利点がある。
【0032】
本発明における上述の、又はさらに他の利点、特徴及び効果は、添付図面を参照して次に述べる実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の流体を一方向に流す原理を説明するための模式的な平面図である。
【図2(a)】本発明の流体アクチュエータの実施形態の一例を模式的に示す断面図である。
【図2(b)】図2(a)の流体アクチュエータの透視平面図である。
【図3(a)】圧電体を基体の接合面全面に貼り付けた状態を示す流体アクチュエータの断面図である。
【図3(b)】基体そのものを圧電体で形成した流体アクチュエータの断面図である。
【図4(a)】弾性表面波発生部付近の流体アクチュエータの構造を模式的に示す、圧電基板の拡大平面図である。
【図4(b)】図4(a)の圧電基板の断面図である。
【図4(c)】図4(a)の圧電基板の断面図である。
【図5】流体アクチュエータの流体通路の他の形状を示す平面図である。
【図6】流体通路からはみ出して設置された櫛歯状電極を示す平面図である。
【図7】流体通路からはみ出して設置された櫛歯状電極を示す平面図である。
【図8(a)】流体通路における2つの弾性表面波発生部の配置例を模式的に示す平面図である。
【図8(b)】図8(a)の配置例を示す断面図である。
【図9(a)】弾性表面波発生部から外部に電極を取出す構造例を模式的に示す拡大平面図である。
【図9(b)】図9(a)の構造例の断面図である。
【図10(a)】櫛歯状電極を覆う保護構造を模式的に示す正面断面図である。
【図10(b)】図10(a)の保護構造を示す側断面図である。
【図11(a)】圧電振動体を取り付けた本発明の流体アクチュエータ構造例を模式的に示す平面図である。
【図11(b)】図11(a)の構造を示す断面図である。
【図11(c)】図11(a)の構造を示す断面図である。
【図12(a)】本発明の他の実施形態に係る流体アクチュエータの一例を模式的に示す断面図である。
【図12(b)】図12(a)の流体アクチュエータの透視平面図を示す。
【図13(a)】弾性表面波発生部付近の流体アクチュエータの構造を模式的に示す拡大平面図である。
【図13(b)】図13(a)の流体アクチュエータの断面図を示す。
【図13(c)】図13(a)の流体アクチュエータの断面図を示す。
【図14】弾性表面波発生部付近の他の構造を示す拡大平面図である。
【図15】反射器電極を含む弾性表面波発生部の構造を示す拡大平面図である。
【図16】弾性表面波発生部付近のさらに他の構造を示す拡大平面図である。
【図17(a)】流体通路における2つの弾性表面波発生部の配置例を模式的に示す平面図である。
【図17(b)】図17(a)の配置例の断面図である。
【図18(a)】流体アクチュエータの櫛歯状電極を覆う保護構造を模式的に示す正面断面図である。
【図18(b)】図18(a)の保護構造を示す側断面図である。
【図19(a)】保護構造の側壁部の、弾性表面波伝搬方向側の厚みが、この方向と反対側の厚みと比べて薄くなっている例を示す平面断面図である。
【図19(b)】図19(b)の保護構造の側断面図である。
【図20(a)】本発明のさらに他の実施形態に係る流体アクチュエータの一例を模式的に示す断面図である。
【図20(b)】図20(a)の流体アクチュエータの透視平面図を示す。
【図21(a)】弾性表面波発生部付近の流体アクチュエータの構造を模式的に示す拡大平面図である。
【図21(b)】図21(a)のI−I断面図である。
【図21(c)】図21(a)のJ−J断面図である。
【図21(d)】図21(a)のH−H断面図を示す。
【図22】弾性表面波発生部付近のさらに他の構造を示す拡大平面図である。
【図23】櫛歯状電極に印加する二相電圧波形を示すグラフである。
【図24】櫛歯状電極の変形構造を示す拡大平面図である。
【図25(a)】弾性表面波発生部から外部に電極を取出す構造例を模式的に示す平面図である。
【図25(b)】図25(a)の断面図である。
【図26(a)】本発明の流体アクチュエータを備えた発熱装置の構造例を模式的に示す平面図である。
【図26(b)】図26(a)の断面図である。
【図27(a)】本発明の流体アクチュエータを備えた分析装置の構造例を模式的に示す平面図である。
【図27(b)】図27(a)の断面図である。
【図28(a)】図27(a)の拡大図であり、前記分析装置における横向きの流体通路を通してサンプル流体Sが流される状態を示す。
【図28(b)】図27(a)の拡大図であり、縦向きの流体通路2aを通してサンプル流体Sが流される状態を示す図である。
【図29(a)】本発明の流体アクチュエータを備えた発熱装置の構造例を模式的に示す平面図である。
【図29(b)】図29(a)の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に、本発明の流体アクチュエータ並びにそれを用いた発熱装置及び分析装置について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図2(a)、図2(b)は、本発明の流体アクチュエータの実施形態の一例を示す断面図及び透視平面図を示す。図2(a)は、図2(b)のE−E線断面図となる。
この流体アクチュエータにおいて、上下二枚の平板4,3が接合されている。平板4,3の接合されている面を「接合面」という。上側の平板4(以下「蓋体4」という)の接合面に、平面視したときにU字型となる断面矩形状の溝を作っている。このU字状の溝は、上下二枚の平板4,3を張り合わせたときに、内部を流体が移動可能な流体通路2となる空洞部を形成する。
【0035】
なお、流体通路2の断面形状は、図2(a)に示すような矩形状とは限らず、断面半円状、断面三角状などであってもよい。また流体通路2の平面形状も、図2(b)に示したU字状のものに限定されるものではなく、円弧状でも良く、直角に曲がった形状のものであってもよい。
さらに、下側の平板3(以下「基体3」という)の接合面の一部に、前記流体通路2を臨むような態勢で圧電体31をはめ込んでいる。この圧電体31は、流体通路2の内壁面の一部となる。
【0036】
圧電体31は、圧電セラミックスや圧電単結晶など圧電性を有する基板なら何を用いても良いが、圧電性が高い、チタン酸ジルコン酸鉛や、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウムなどの単結晶を用いることが好ましい。
なお、圧電体31を基体3の一部にはめ込むのではなく、図3(a)に示すように、圧電体31を基体3の接合面全面に貼り付けても良い。また、図3(b)に示すように、基体3そのものを圧電体31で形成してもよい。
【0037】
圧電体31を基体3の一部にはめ込む場合は、基体3を、その表面を弾性表面波が減衰せずに伝搬することができるような材質で形成することが望ましい。特に、基体3における弾性表面波の伝搬速度と、圧電体31における伝搬速度とがほぼ一致しているような弾性率の近い基体3の材質を選ぶことが、基体3と圧電体31との接合面における弾性表面波の反射を軽減するためには好ましい。このような基体3の材質として、例えば圧電体31と同質の材料やチタン酸ジルコン酸鉛などがあげられる。
【0038】
また、圧電体31を基体3の一部にはめ込む場合、弾性表面波の伝搬方向(x方向)における圧電体31と基体3との界面31aには、接着のための樹脂層などを介することなく、相互に直接接触するようにすることが望ましい。また、弾性表面波の伝搬方向以外の方向における圧電体31と基体3との界面には、圧電体31と基体3の界面での弾性表面波の反射による悪影響を低減させるため、樹脂などの表面波吸収構造を入れることが好ましい。
【0039】
また、図3(a)のように基体3全体に圧電体31を貼り付ける場合は、前述のような基体3の材質の考慮は不要である。図3(b)のように基体3そのものを圧電体31で構成することも可能である。これらの場合、より大きな駆動力を得るために、圧電体31を矩形状とし、流体の駆動方向(x方向)と圧電体31の長辺方向を一致させるようにするとよい。さらに、貼り付けられた圧電体31と基体3との界面での弾性表面波の反射による悪影響を低減させるため、圧電体31と基体3との界面に表面波吸収構造を入れることが好ましい。この表面波吸収構造としては一般的な樹脂層を用いることができる。
【0040】
圧電体31の流体通路2を臨む主面上には、一組の櫛歯状電極(IDT; Inter Digital Transducer電極ともいう)15a、15bが互いにかみ合わさって形成されている。この圧電体31上に櫛歯状電極15a、15bが形成された部分を、弾性表面波発生部101という。
そして、後述する図4(b)に示すように、圧電基板31上の櫛歯状電極15a、15bを絶縁膜8で覆っている。絶縁膜8で覆うことにより、電極のマイグレーション等による劣化や、流体の電界による変質を防止することができるため望ましい。
【0041】
この図2(b)の構造において、弾性表面波の伝搬方向、すなわち、x方向及び−x方向に向かって、前記圧電体31の表面を通って、前記弾性表面波発生部101の略中心部を通過する仮想線Mを引く。そして、前記流体通路2と前記弾性表面波発生部101とを、図2(b)のように、前記圧電体31に直交する方向(z方向)から平面視する。すると、前記仮想線Mは、前記弾性表面波発生部101の両端A、Bから延びて前記流体通路2の壁面とそれぞれC、Dで交わっている。
【0042】
本実施形態では、AC間の距離dと、BD間の距離dとは、同一でない関係、具体的には図2の場合、d<dの関係になっている。このような配置を採用する理由は、後述する。
図4(a)〜(c)は、弾性表面波発生部101付近を示す拡大模式図であり、図4(a)は圧電基板の平面図、図4(b),(c)は断面図を示す。
【0043】
圧電体31には、共通電極(バスバー電極)14a,14bが互いに平行に形成され、櫛歯状電極15a、15bが、それぞれのバスバー電極14a、14bから直角に、互いにかみ合うように形成されている。また、バスバー電極14aの外側には、ビア電極接続部16aが形成され、バスバー電極14bの外側には、ビア電極接続部16bが形成されている。
【0044】
ビア電極接続部16aは、圧電体31及び基体3を貫通するビア電極17aを介して、基体3の裏面に形成された外部電極18aに接続され、ビア電極接続部16bは、圧電体31及び基体3を貫通するビア電極17bを介して、基体3の裏面に形成された外部電極18bに接続されている。
外部電極18a、18bには、交流電源5から交流電圧が供給される。交流電圧は、櫛歯状電極15a、15bのそれぞれに印加される。その結果、弾性表面波発生部101から、流体通路2の壁面(基体3の接合面)に沿って、x方向及び−x方向に、図4(c)に示したようなx方向とz方向の変位成分を持つ弾性表面波の進行波が伝搬する。
【0045】
この弾性表面波進行波により、流体通路2の壁面に接する流体が弾性表面波の進行方向(x方向、−x方向)に駆動される(この原理については特許文献1,2、非特許文献1参照)。
このとき、弾性表面波の伝搬速度をv、櫛歯状電極15a、15bの構造周期をpとすると、次式
v=f・p
を満たす周波数fの交流電圧を櫛歯状電極15a、15bに印加すれば、櫛歯状電極15a、15bの構造周期pと発生する弾性表面波の波長λが一致することになり、大きな振幅の弾性表面波振動が得られ、流体の駆動効率が高まるため望ましい。
【0046】
ところで、弾性表面波発生部101が流体通路2に対して対称な構造、すなわち、距離d=距離dとなる構造を持っていれば、櫛歯状電極15a,15bから、x方向と−x方向とに伝搬する弾性表面波は、概ね同じ強度で伝搬するため、弾性表面波発生部101を中心としてx方向、−x方向に、同じ流量の流体が流れようとする。したがって、全体として流体は移動しないことになる。
【0047】
そこで、本実施形態では、前述したように、距離dと距離dが同一でない関係、具体的には図2(b)に示すように、流体通路2の直線部の一端近くに弾性表面波発生部101を配置する。この配置により、d<dの関係が満たされるように設定している。
図2(b)では、弾性表面波発生部101より右側の流体通路2に存在する流体が、流体通路壁面の右向きの弾性表面波により駆動されるが、弾性表面波発生部101より左側の部分は流体通路2が屈曲しており、左向きの弾性表面波は流体通路2外に漏れて行き、左向きの流体駆動効率は低下する。従って右向きの流量の方が左向きの流量より優勢となり、全体として右向きに流体が駆動される。
【0048】
左向きの流量を十分に減衰させるには、前記距離dは、20mm以下であることが好ましい。
このようにして櫛歯状電極15a,15bから、右向き、左向きにアンバランスとなった弾性表面波を発生させ、全体として、流体通路2内の流体を一方向に流すことができる。
【0049】
なお、本発明の流体アクチュエータは、前記の形態に限定されるものではない。例えば、流体通路2の形状は、図2(b)に示したU字状のものに限定されるものではなく、図5に示したような直角に曲がった形状のものであってもよい。前記弾性表面波発生部101に近い方の前記流体通路2の壁面200は、前記弾性表面波の伝搬方向に対して略直交する平面であるので、A点からC点に向かってきた弾性表面波は、C点において一部が反射し、B点からD点へ向かう弾性表面波と同じ向きに重畳して進行することとなり、流体の流れもB点からD点へ向かう向きに、より強く流れることになる。
【0050】
また、図6に示すように、バスバー電極14a、14bが流体通路2の外側に形成されていても良い。これにより、弾性表面波を直接発生させない共通電極であるバスバー電極14a、14bが流体通路2の外側にあり、弾性表面波を直接発生させる櫛歯状電極15a、15bを流体通路2の全体に形成できるため、流体の駆動力を大きくすることができる利点がある。
【0051】
一方、図7に示すように、櫛歯状電極15a,15bがかみ合っている部分Kが流体通路2の外部にまで広がっている場合が考えられる。この場合、圧電基板31と蓋体4との接合部300は、櫛歯状電極15a,15bがかみ合っている部分Kの中に存在する。この場合、この接合部300によって弾性表面波の振動が阻害されるおそれがあり、弾性表面波の振動により、接合部300が損傷を受けたり外れたりするおそれがあるので、櫛歯状電極15a,15bのかみ合っている部分Kは流体通路2の中にあることが好ましい。
【0052】
なお、圧電基板の異方性により、弾性表面波が一方向に伝搬する角度が存在するので、そのような圧電基板を利用する場合、圧電基板の弾性表面波の伝播方向と、弾性表面波発生部101が配置されている流体通路2の方向とを一致させるように構成すると良い。
以上のように、この流体アクチュエータは、所望の向きに流体を流すことが可能であるが、分析装置などにおいては、流体の流れをスイッチングできることが求められる。
【0053】
その場合は、図8(a)、図8(b)に示すように、弾性表面波発生部を2個以上設ければよい。図8(a)、図8(b)の場合、流体通路2の直線部の左右両端に近い位置に1つずつ弾性表面波発生部101a,101bが設けられている。流体を右に駆動する場合は、スイッチSWにより左側の弾性表面波発生部101aのみ交流電圧を供給すればよく、流体を左に駆動する場合は、スイッチSWにより右側の弾性表面波発生部101bのみに交流電圧を供給すればよい。
【0054】
図9(a)、図9(b)は、弾性表面波発生部101から基体3の外部に電極を取出す構造の他の一例を模式的に示す図である。
図9(a)、図9(b)に示す流体アクチュエータでは、基体3の上に、櫛歯状電極15a,15bから基体3の側端面にまで延びる引き出し電極20a,20bが形成されている。
【0055】
この流体アクチュエータを製造するには、櫛歯状電極15a,15bを作製する工程において、基体3の上に、櫛歯状電極15a,15bから基体3の側端面にまで延びる引き出し電極20a,20bを同時に形成しておく。その後、基体3の側端面において、引き出し電極20a,20bにつながる側面電極18a,18bを形成する。そして、流体通路2を形成した蓋体4と基体3とを、例えばシリコンゴムの一種であるPDMS(poly dimethylsiloxane)を介して接合し、流体通路2を気密封止し、流体アクチュエータが完成する。
【0056】
この図9(a)、図9(b)の例では、図4(b)のように、基体3に圧電体31を貫通するビアホール(貫通孔)を設ける必要がない。貫通孔を設けるときに、圧電体31にクラックや割れが発生することがあるが、この図9の構造を採用すれば、貫通孔を設ける必要がないので、圧電体31のクラックや割れを防止することができる。
図10(a)、図10(b)は、本発明の流体アクチュエータの他の実施形態を表す図である。弾性表面波発生部101において、一組の櫛歯状電極15a,15bが流体通路2内の流体に直接触れないよう、保護構造51が設けられている。この保護構造51と櫛歯状電極15a,15bとの間に空隙52が形成されている。このため、弾性表面波発生部101に流体が触れることがなくなり、弾性表面波発生部101から発生する振動が流体によって妨げられることがなく、より大きな駆動力が得られる。
【0057】
このような構造は、櫛歯状電極15a,15bの上に、後に中空構造となる犠牲層として、例えばアモルファスシリコンでパターンを作製する。その上に保護構造として窒化珪素膜を作製する。窒化珪素膜の一部に穴を空け、犠牲層エッチング技術により内部のアモルファスシリコンを例えば弗化キセノンで除去し、最後に窒化珪素膜に空けた穴を塞ぐ。前記窒化珪素に代えて酸化珪素を用いてもよい。空隙52には、空気や窒素を充填する。
【0058】
なお、保護構造の材質としては、金属材料、有機材料、無機材料を問わない。前記の保護構造の製造方法は一例であり、前記の方法以外に有機材料、例えば耐用フォトレジストなどを用いて保護構造を作製しても良い。
図11(a)〜(c)は、本発明の流体アクチュエータのさらに他の実施形態を表す図である。
【0059】
本実施形態では、弾性表面波発生部101に加えて、流体通路2の内壁を超音波によって振動させることができるよう、振動印加手段の一例として圧電振動体61が流体通路2の外壁面に取り付けられている。図示しない電極と図示しない交流電源により、該圧電振動体61が振動するようになっている。
これにより、流体通路2壁面の内壁が超音波振動する。このことで、流体通路2内の流体が流体通路2の壁面に付着しにくくなり、流体通路2の通過抵抗を減少させることができる。
【0060】
図12(a)、図12(b)は、本発明の流体アクチュエータのさらに他の実施形態の一例を示す断面図及び透視平面図を示す。図12(a)は、図12(b)のF−F線断面図となる。
蓋体4,基体3の接合により、U字状の流体通路2が形成されること、基体3の接合面の一部に、流体通路2を臨むような態勢で圧電体31をはめ込んでいることは、図2(a)、図2(b)を用いて説明したのと同様である。なお、本実施形態の場合、流体通路2の平面形状は、U字状、円弧状でも良く、直角に曲がった形状のものでもよいが、これに加えて直線状でもよい。直線状でも良い理由は、後に述べるように、弾性表面波発生部102自体が、一方向に流体を駆動する能力を持っているからである。
【0061】
また、圧電体31を基体3の一部にはめ込むのではなく、圧電体31を基体3全体に貼り付けても良く、基体3そのものを圧電体31で形成してもよいことも、図3(a)、図3(b)を用いて説明したのと同様である。
図13(a)〜図13(c)は、本実施形態の流体アクチュエータに係る弾性表面波発生部102の一例について、その構造を模式的に示す拡大図である。図13(a)は圧電基板の平面図、図13(b),(c)は断面図を示す。
【0062】
図13(a)に示す例では、圧電体31上には、一組の櫛歯状電極15a,15bが互いにかみ合わさって形成され、さらに特徴的な構成として浮き電極15dが設けられている。この圧電体31上に櫛歯状電極15a,15b、浮き電極15dが形成された部分を、弾性表面波発生部102という。
そして、図13(b)に示すように、圧電基板31上の櫛歯状電極15a,15b、浮き電極15dを絶縁膜8で覆っている。絶縁膜8で覆う利点は図4(b)を用いて前述したとおりである。
【0063】
流体通路2の壁面の一部を構成する圧電体31には、共通電極(バスバー電極)14a,14bが互いに平行に形成され、櫛歯状電極15a,15bが、それぞれのバスバー電極14a、15bから直角に、互いにかみ合うように形成されている。隣接するバスバー電極14a、15bの間には、どこにも電気的に接続されていない浮き電極15dが形成されている。
【0064】
また、バスバー電極14aの外側には、ビア電極接続部16aが形成され、バスバー電極14bの外側には、ビア電極接続部16bが形成されている。
ビア電極接続部16aは、圧電体31及び基体3を貫通するビア電極17aを介して、基体3の裏面に形成された外部電極18aに接続され、ビア電極接続部16bは、圧電体31及び基体3を貫通するビア電極17bを介して、基体3の裏面に形成された外部電極18bに接続されている。
【0065】
前記浮き電極15dは、図13(a)に示すように、隣接する櫛歯状電極15aの中心線xと、櫛歯状電極15bの中心線x2との中心を通る線(x1+x2)/2からいずれか所定の方向にx0だけずれた位置に、浮き電極15dの中心線が位置するように配置されている。このx0を「オフセット」という。ここで、x,xは、ある基準点からの距離と仮定している。
【0066】
外部電極18a、18bには、交流電源5から交流電圧が供給される。交流電圧は、櫛歯状電極15a,15bのそれぞれに印加され、弾性表面波発生部102から、流体通路2の壁面(基体3の接合面)に沿って、x方向又は−x方向に、図13(c)に示したx方向とz方向の変位成分を持つ弾性表面波の進行波が伝搬する。
この弾性表面波進行波により、流体通路2の壁面に接する流体が弾性表面波の進行方向に駆動される。
【0067】
ところで、弾性表面波発生部102が、流体通路2に対して対称な構造、すなわち、浮き電極15dのオフセットx0=0となる構造を持っていれば、櫛歯状電極15a,15bから、x方向と−x方向とに伝搬する弾性表面波は、概ね同じ強度で伝搬するため、弾性表面波発生部102を中心としてx方向、−x方向に、同じ流量の流体が流れようとする。したがって、全体として流体は移動しないことになる。
【0068】
ところが、本実施形態では、前述したように、浮き電極15dを、隣接する櫛歯状電極15a,15bの中心線x1,x2の中心線(x1+x2)/2からいずれか所定の方向にx0だけずれた位置に配置している。ここで、浮き電極15dの櫛歯状電極15a,15bの中心からのオフセットx0の符号(正か負か)によって、弾性表面波が強く伝搬する向きがx方向か−x方向のいずれかになる。この理由は、浮き電極が空間的に非対称な位置に配置されているため、浮き電極による弾性表面波の反射も非対称となり、弾性表面波の伝播方向がx方向か−x方向のいずれかに偏るからである。
【0069】
このようにして櫛歯状電極15a,15bから、所定方向の弾性表面波を発生させ、全体として、流体通路2内の流体を一方向に流すことができる。
なお、図13には浮き電極として、どこにも電気的に接続されていない開放型浮き電極を示したが、開放型浮き電極に代えて、隣り合った浮き電極を接続した短絡型浮き電極を用いてもよい。あるいは、開放型浮き電極と短絡型浮き電極の両方を有するような構造としてもよい。
【0070】
図14は、開放型浮き電極15dと短絡型浮き電極15eの両方を含む浮き電極の構造を示す拡大図である。圧電体31上には、一組の櫛歯状電極15a,15bが互いにかみ合わさって形成され、開放型浮き電極15dと、さらに短絡型浮き電極15eとが設けられている。
開放型浮き電極15dは、前述したのと同様、隣接する櫛歯状電極15a,15bの中心線x1,x2の中心線(x1+x2)/2からいずれか所定の方向(この場合は+x方向)にずれた位置に配置されている。つまり正のオフセットを有する。
【0071】
短絡型浮き電極15eは、隣接する櫛歯状電極15a,15bの中心線x1,x2の中心線(x1+x2)/2から逆の方向(この場合は−x方向)にずれた位置に配置されている。つまりオフセットの符号は負である。
したがって、櫛歯状電極15a,15bの間に、短絡型浮き電極15e、開放型浮き電極15dが割り込む形となる。そして、短絡型浮き電極15e同士は、櫛歯状電極15bをまたがって補助電極15fにより接続されている。このように、櫛歯状電極15a,短絡型浮き電極15e,開放型浮き電極15d,櫛歯状電極15b,短絡型浮き電極15e,開放型浮き電極15dの順にほぼ等間隔となるような間隔で各電極が配置されている。すなわち櫛歯状電極15a,15bの構造周期pに対して、p/6となるような間隔で各電極が配置されている。
【0072】
この電極構造の特徴は、開放型浮き電極15dによる弾性表面波の反射と、短絡型浮き電極15eによる弾性表面波の反射を組み合わせているので、それぞれを単独で用いた場合より、流体を一方向に流す力が強くなることにある。
例えば、短絡型浮き電極15eと開放型浮き電極15dを同じ位置にそれぞれ単独で形成した場合、それぞれの浮き電極の反射挙動の違いから、弾性表面波の流れる方向はちょうど逆になる。弾性表面波の流れる方向を一致させるには、図14に示すように櫛歯状電極15aに近い位置に短絡型浮き電極15eを形成し、開放型浮き電極15dは櫛歯状電極15bに近づけて配置することが望ましい。つまり、オフセットの符号を、一方を正に、他方を負にする。これにより、開放型浮き電極15dによる弾性表面波の反射と、短絡型浮き電極15eによる弾性表面波の反射を同期させて、つよい流体駆動力を得ることができる。
【0073】
図15は、本発明の流体アクチュエータに係る弾性表面波発生部102の他の例を示す拡大平面図である。このように、浮き電極を用いないで、反射器電極を用いて所定方向の弾性表面波を発生させることもできる。
すなわち、図15に示すように、流体通路2に沿って、櫛歯状電極15a,15b(総称して櫛歯状電極15という)に隣接して、前記櫛歯状電極15で発生して伝搬してきた弾性表面波を反対方向に反射させる反射器電極21を配置している。
【0074】
櫛歯状電極15aは、電極指を有する櫛歯状電極の互いの電極指を噛み合わせて配置されているが、この図15の構造では、櫛歯状電極15には、浮き電極は具備されていない。
しかし、反射器電極21が設けられているので、櫛歯状電極に交流電圧を印加して弾性表面波を発生させると、この反射器電極21が、前記櫛歯状電極15で発生し反射器電極21に向かう方向(図15の左側方向)に伝搬してきた弾性表面波を反対方向(図15の右側方向)に反射させる。これにより、弾性表面波の伝搬方向を一方向にそろえることができ、全体として、流体通路2内の流体を一方向に流すことができる。なお、反射器電極21として、グレーティング型のものを用いて説明したが、これに限るものではなく、櫛歯型のものを用いてもかまわない。
【0075】
なお、本実施形態の流体アクチュエータは、上述した構造に限定されるものではない。例えば、図16に示すように、バスバー電極14a,14bが流体通路2の外側に形成されていても良い。これにより、弾性表面波を直接発生させない共通電極であるバスバー電極14a,14bが流体通路2の外側にあり、弾性表面波を直接発生させる櫛歯状電極15a,15bを流体通路2の全体に形成できるため、流体の駆動力を大きくすることができる利点がある。
【0076】
なお、櫛歯状電極15a,15bのかみ合っている部分は流体通路2の内にあることが好ましいのは、図7を用いて説明したとおりである。
また、圧電基板の弾性表面波の伝播方向と、弾性表面波発生部102が配置されている流体通路2の方向とを一致させるように構成すると良いことも前述したとおりである。
以上のように、この流体アクチュエータは、所望の向きに流体を流すことが可能であるが、分析装置などにおいては、流体の流れをスイッチングできることが求められる。
【0077】
その場合は、図17(a),(b)に示すように、弾性表面波発生部を2個設ければよい。図17(a),(b)の場合、流体通路2に1つずつ弾性表面波発生部102a,102bが設けられている。弾性表面波発生部102a,102bは、それぞれ浮き電極又は反射器電極を備えている。それぞれ浮き電極又は反射器電極の配置の違いにより、弾性表面波発生部102aから発生する弾性表面波の伝搬方向と、弾性表面波発生部102bから発生する弾性表面波の伝搬方向とは、互いに反対になるように設定されている。
【0078】
例えば、弾性表面波発生部102aから発生する弾性表面波の伝搬方向が図17の右方向、弾性表面波発生部102bから発生する弾性表面波の伝搬方向が図17の左方向であるとすると、流体を右に駆動する場合は、スイッチSWにより左側の弾性表面波発生部102aのみ交流電圧を供給すればよく、流体を左に駆動する場合は、スイッチSWにより右側の弾性表面波発生部102bのみに交流電圧を供給すればよい。
【0079】
また、基体3の外部に電極を取出す構造としては、図9(a)、図9(b)において説明した弾性表面波発生部101をこの実施形態の弾性表面波発生部102に置き換えた構造を採用してもよく、全く同様の効果が得られる。
図18(a),(b)は、本発明の流体アクチュエータの他の実施形態を表す図である。弾性表面波発生部102において、一組の櫛歯状電極15a,15bが流体通路2内の流体に直接触れないよう、保護構造51が設けられており、保護構造と櫛歯状電極15a,15bとの間に空隙52が形成されている。このため、弾性表面波発生部の振動が流体によって妨げられることがなく、より大きな駆動力が得られる。
【0080】
図19(a),(b)は、保護構造51の側壁部の、弾性表面波伝搬方向側の厚みが、この方向と反対側の厚みと比べて薄くなっている例を示す図である。
この図19(a),(b)では、保護構造51の側壁部は、弾性表面波伝搬方向側の厚みS1が、この方向と反対側の厚みS2と比べて薄くなるようになっている。この構造を採用することにより、保護構造51が矢印Uで示す弾性表面波の伝播に対して与える影響を小さくすることができる。
【0081】
以上の保護構造51の作り方は、前に図10(a),(b)を用いて説明したのと同様であるから説明を省略する。
なお、本実施形態の流体アクチュエータの流体通路2の内壁を超音波によって振動させることとすれば、流体通路2内の流体が流体通路2の壁面に付着しにくくなり、流体通路2の通過抵抗を減少させることができる。このことは、前に図11(a)〜(c)を用いて説明したとおりである。
【0082】
図20(a),(b)は、本発明の流体アクチュエータのさらに他の実施形態の一例を示す断面図及び透視平面図である。なお、図20(a)は図20(b)のG−G線における断面図である。
蓋体4,基体3の接合により、U字状の流体通路2が形成されること、基体3の接合面の一部に、流体通路2を臨むような態勢で圧電体31をはめ込んでいることは、図2(a)、図2(b)を用いて説明したのと同様である。
【0083】
なお、圧電体31を基体3の一部にはめ込むのではなく、圧電体31を基体3全体に貼り付けても良く、基体3そのものを圧電体31で形成してもよいことも、図3(a)、図3(b)を用いて説明したのと同様である。
図21(a)〜(d)は、本実施形態の流体アクチュエータに係る弾性表面波発生部103の一例について、その構造を模式的に示す拡大図であり、図21(a)は圧電基板の平面図、図21(b)はI−I断面図、図21(c)はJ−J断面図、図21(d)はH−H断面図を示す。
【0084】
流体通路2の壁面の一部を構成する圧電体31上には、図21(a)に示すように、三種の櫛歯状電極15a,15b,15cが互いにかみ合わさって形成されている。この圧電体31上に櫛歯状電極15a,15b,15cが形成された部分を、弾性表面波発生部103という。
櫛歯状電極15aは、ピッチpで配置されている。櫛歯状電極15bも同一ピッチpで配置されている。櫛歯状電極15cも同一ピッチpで配置されている。櫛歯状電極15aと15bとの間隔、櫛歯状電極15bと15cとの間隔、櫛歯状電極15cと15aとの間隔は、それぞれ同じである。これらの間隔をxで表すようにすれば、x=p/3の関係がある。したがって、1ピッチpの位相を360°で表すことにすると、櫛歯状電極15a,15b,15cは、それぞれ位相が120°ずれて配置されていることになる。
【0085】
なお、電極指同士のずれxは、厳密に120°である必要ではない。電極指同士のずれxと120°との差が所定の範囲に収まっていればよい。または電極指同士のずれxと120°との比が所定の範囲に収まっていればよい。前記「所定の範囲」は、流体が所定方向に流れるかどうかを目安に、実験的に決定すればよい。
8は、圧電基板31上の櫛歯状電極15a,15b,15cを覆う絶縁膜を示す。
【0086】
圧電体31上の、流体通路2の一方の壁に近い位置には、共通電極(バスバー電極)14a,14bが互いに平行に形成され、櫛歯状電極15a,15bが、それぞれのバスバー電極14a,14bから直角に延びて形成されている。バスバー電極14a,櫛歯状電極15bの間には、相互に短絡しないように、絶縁層19を介在させている。また圧電体31上の、流体通路2の他方の壁に近い位置には、バスバー電極14cが形成され、櫛歯状電極15cが、バスバー電極14cから直角に延びて形成されている。
【0087】
また、バスバー電極14aの外側にはビア電極接続部16aが形成され、バスバー電極14bの外側にはビア電極接続部16bが形成され、バスバー電極14cの外側にはビア電極接続部16cが形成されている。
ビア電極接続部16aは、図21(b)に示すように、圧電体31及び基体3を貫通するビア電極17aを介して、基体3の裏面に形成された外部電極18aに接続されている。ビア電極接続部16bは、圧電体31及び基体3を貫通するビア電極17bを介して、基体3の裏面に形成された外部電極18bに接続されている。ビア電極接続部16cは、圧電体31及び基体3を貫通するビア電極17cを介して、基体3の裏面に形成された外部電極18cに接続されている。
【0088】
外部電極18a,18b,18cには、交流電源5から位相が順番に異なる交流電圧が供給される。これにより、櫛歯状電極15a,15b,15cのそれぞれに位相が順番に異なる交流電圧が印加される。
数式で表現すると、交流電圧の電圧振幅をV(ボルト)、周波数をf(1/秒)、時間をt(秒)として、櫛歯状電極15aにVsin(2πft)、櫛歯状電極15bにVsin(2πft―2π/3)、櫛歯状電極15cにVsin(2πft―4π/3)の交流電圧を印加する。これにより、弾性表面波発生部103から流体通路2の壁面(基体3の接合面)に沿って、x方向とz方向の変位成分を持つ弾性表面波の進行波がx方向に伝搬する。
【0089】
なお、外部電極18a,18b,18cに印加する交流電圧の位相差も、厳密に120°である必要ではない。交流電圧の位相差と120°との差が所定の範囲に収まっていればよい。または交流電圧の位相差と120°との比が所定の範囲に収まっていればよい。前記「所定の範囲」は、流体が所定方向に流れるかどうかを目安に、実験的に決定すればよい。
【0090】
この弾性表面波進行波により、流体通路2の壁面に接する流体が弾性表面波の進行方向に駆動される。
このとき、弾性表面波の伝搬速度をvとすると、櫛歯状電極15a,15b,15cの構造周期pと発生する弾性表面波の波長λとが一致するように、次式
v=f・p
を満たす周波数fの交流電圧を櫛歯状電極15a,15b,15cに印加すれば、大きな振幅の弾性表面波振動が得られ、流体の駆動効率が高まるため望ましい。
【0091】
ところで、前述した例では、櫛歯状電極15aにVsin(2πft)、櫛歯状電極15bにVsin(2πft―2π/3)、櫛歯状電極15cにVsin(2πft―4π/3)の交流電圧を印加することにより、x方向に伝搬する弾性表面波を発生させていた。この位相の変化する順番を入れ替えて、櫛歯状電極15bにVsin(2πft+2π/3)、櫛歯状電極15cにVsin(2πft+4π/3)の交流電圧を印加すれば、−x方向に伝搬する弾性表面波を発生させることができる。
【0092】
このようにして弾性表面波発生部103から、所定方向の弾性表面波を発生させ、全体として、流体通路2内の流体を一方向に流すことができる。
次に、本発明の他の実施形態を説明する。前記図21では弾性表面波発生部103に三種類の櫛歯状電極15a,15b,15cを設置して、三相の交流電圧を印加していたが、二種類の櫛歯状電極15a,15bと接地電極を用い、それぞれ位相のずれた単相交流電圧を印加すれば、所定方向に伝搬する弾性表面波を発生させることができる。
【0093】
図22は、電極指を噛み合わせて配置された二種の櫛歯状電極と、隣接する電極指の間に配置された接地電極とを具備する弾性表面波発生部103を示す拡大図である。
圧電体31上には、一組の櫛歯状電極15a,15bが形成され、さらに櫛歯状電極15a,15bの間に、櫛歯状電極15a,15bと平行に接地電極13が形成されている。したがって、櫛歯状電極15a,15bの間に、接地電極13が割り込む形となる。
【0094】
この構造では、櫛歯状電極15aはピッチpで配置され、櫛歯状電極15bも同一ピッチpで配置されている。櫛歯状電極15aと15bとの間隔をxで表すと、x=p/4の関係がある。すなわち、互いに噛み合わせられた一組の櫛歯状電極15a,15bの電極指の中心が90°ずれて配置されている。
図23は、櫛歯状電極15a,15bに印加する電圧Va,Vbの波形を示している。電圧Va,Vbの位相は、前記櫛歯状電極15aと15bとのずれに合わせて90°ずれている。
【0095】
数式で表現すると、交流電圧の電圧振幅をV(ボルト)、周波数をf(1/秒)、時間をt(秒)として、櫛歯状電極15aにVsin(2πft)、櫛歯状電極15bにVsin(2πft―π/2)の交流電圧を印加する。これにより、弾性表面波発生部103から流体通路2の壁面(基体3の接合面)に沿って、x方向とz方向の変位成分を持つ弾性表面波の進行波がx方向に伝搬する。
【0096】
なお、この位相の変化する順番を入れ替えて、櫛歯状電極15aにVsin(2πft)、櫛歯状電極15bにVsin(2πft+π/2)の交流電圧を印加すれば、−x方向に伝搬する弾性表面波を発生させることができる。
このように櫛歯状電極15a,15bの空間的な配置のずれと、印加する電圧Va,Vbの位相のずれとを対応させている。このため、櫛歯状電極15a,15bに交流電圧Va,Vbを印加することにより、弾性表面波発生部103から流体通路2の壁面に沿って、弾性表面波を所定方向に伝搬させることができる。
【0097】
なお、印加する交流電圧の位相のずれと、電極指の中心のずれとは、一致していることが望ましいが、厳密に一致していることは必要ではなく、その差またはその比が所定の範囲に収まっていればよい。「所定の範囲」は、流体が所定方向に流れるかどうかを目安に、実験的に決定すればよい。
また、互いに噛み合わせられた電極指の中心の位置的なずれは、90°に限るものではなく、120°やその他の位相差でもかまわない(ただし空間的に対象な配置を避けるため180°を除く)。
【0098】
なお、本発明の流体アクチュエータは、上述した構造に限定されるものではない。例えば、図24に示すように、バスバー電極14a,14b,14cが流体通路2の外側に形成されていても良い。これにより、弾性表面波を直接発生させない共通電極であるバスバー電極14a,14bが流体通路2の外側にあり、弾性表面波を直接発生させる櫛歯状電極15a,15bを流体通路2の全体に形成できるため、流体の駆動力を大きくすることができる利点がある。
【0099】
櫛歯状電極15a,15b,15cのかみ合っている部分は流体通路2の内にあることが好ましい。これは、仮に櫛歯状電極15a,15b,15cがかみ合っている部分に圧電基板31と蓋体4との接合部が存在する場合は、この接合部によって弾性表面波の振動が阻害されるとともに、弾性表面波の振動により、接合部が損傷を受けたり外れたりするおそれがあるためである。このことは、すでに図7を用いて説明したとおりである。
【0100】
また、圧電基板の弾性表面波の伝播方向と、弾性表面波発生部103が配置されている流体通路2の方向とを一致させるように構成すると良いことも前述したとおりである。
図25(a),(b)は、弾性表面波発生部103から基体3の外部に電極を取出す構造の他の一例を模式的に示す図である。
図25(a),(b)に示す流体アクチュエータでは、基体3の上に、櫛歯状電極15a,15b,15cから基体3の側端面にまで延びる引き出し電極20a,20b,20cが形成されている。
【0101】
この流体アクチュエータを製造するには、櫛歯状電極15a,15b,15cを作製する工程において、基体3の上に、櫛歯状電極15a,15b,15cから基体3の側端面にまで延びる引き出し電極20a,20b,20cを同時に形成しておく。その後、基体3の側端面において、引き出し電極20a,20b,20cにつながる側面電極18a,18b,18cを形成する。そして、流体通路2を形成した蓋体4と基体3とを、例えばシリコンゴムの一種であるPDMS(poly dimethylsiloxane)を介して接合し、流体通路2を気密封止し、流体アクチュエータが完成する。
【0102】
この図25(a),(b)の例では、図21(b)のように基体3に圧電体31を貫通するビアホール(貫通孔)を設ける必要がない。貫通孔を設けるときに、圧電体31にクラックや割れが発生することがあるが、この図25の構造を採用すれば、貫通孔を設ける必要がないので、圧電体31のクラックや割れを防止することができる。
また、図9、図18を用いて説明したように、本発明の流体アクチュエータにおいても、弾性表面波発生部103に対して、櫛歯状電極15a,15b,15cが流体通路2内の流体に直接触れないよう、櫛歯状電極との間に空隙を介して保護構造を設けるようにするとよい。これにより、弾性表面波発生部の振動が流体によって妨げられることがなく、より大きな駆動力が得られる。また、図19で説明したように、保護構造の側壁部の、弾性表面波伝搬方向側の厚みが、この方向と反対側の厚みと比べて薄くなるようにするとよい。保護構造が弾性表面波の伝播に対して与える影響を小さくすることができるからである。
【0103】
なお、本実施形態の流体アクチュエータの流体通路2の内壁を超音波によって振動させることとすれば、流体通路2内の流体が流体通路2の壁面に付着しにくくなり、流体通路2の通過抵抗を減少させることができる。このことは、前に図11(a)〜(c)を用いて説明したとおりである。
<応用例>
図26(a)、図26(b)は、集積回路、外部記憶装置、発光素子、冷陰極管などの発熱する装置(以下まとめて、「発熱装置」という)に、本発明の流体アクチュエータを適用した例を示す平面図と、Q−Q線断面図である。
【0104】
図26(a)、図26(b)では、流体アクチュエータの蓋体4として、半導体基板の一部を用いている。半導体基板には例えば、シリコンの間に絶縁層としてSiOが挟まれたSOI(Silicon on Insulator)基板を用いている。
半導体基板のうち、下側のシリコン層23には半導体回路32が形成されている。絶縁層24を挟んだ上側のシリコン層25には、前述したように、アルミ膜をマスクとしてICP−RIEによりエッチングを行い、ミアンダ状の流体通路2を形成している。そして、半導体基板の流体通路2を形成した側を、弾性表面波発生部101a,101bが実装された基体3と接合させている。
【0105】
流体通路2の両端口26,27には、配管を通して、流体を貯める容器6が接続されている。容器6の中の流体が、前記配管及び流体通路2を循環して容器6に戻ってくる。この循環の途中で、放熱フィンなどの熱交換器28が設けられていて、この熱交換器28により、半導体回路で発生した熱を外部に逃がすことができる。
冷却用の流体としては、純水72%/プロピレングリコール24%/金属の防腐剤など4%を混合したものや、純水75%/エチレングリコール25%を混合したものや、軽改質油などを用いることができる。
【0106】
基体3の流体通路2の2つの位置には、それぞれ本発明に係る態様の弾性表面波発生部101a,101bが配置されている。なお、弾性表面波発生部の数は、2つに限られるものではなく、1つでもよく、3つ以上でもよい。
この図26(a)、図26(b)の構造において、弾性表面波発生部101aに注目する。弾性表面波の伝搬方向、すなわち、x方向及び−x方向に向かって、弾性表面波発生部101の略中心部を通過する仮想線M1を引き、前記弾性表面波発生部101の一端Aから延びて前記流体通路2の壁面との交点をCとし、前記弾性表面波発生部101の他端Bから延びて流体通路2の一端口26との交点をDとする。
【0107】
この構造において、AC間の距離dと、BD間の距離dとは、d<dの関係が満たされている。したがって、弾性表面波発生部101aは流体通路2と協動して、この弾性表面波発生部101aの両側に位置する流体に与える駆動力を左右でアンバランスとさせることができ、全体として、流体通路2内の流体を一方向に流すことができる。
また、弾性表面波発生部101bにおいても、弾性表面波発生部101aと同様の配置により、流体通路2内の流体を一方向に流すことができる。このように弾性表面波発生部101aと弾性表面波発生部101bとの両方を使って流体を流すことができるので、流体を駆動する力を増大させることができる。
【0108】
図27(a),(b)は、本発明の流体アクチュエータを利用した分析装置の実施形態を示す平面図とR−R断面図である。
図27(a)は、本発明の分析装置40の蓋体4を示す平面図であり、蓋体4には、略十字の溝が形成されている。この蓋体4を、基体3に接合させることで、横向きの流体通路2aと、縦向きの流体通路2bが形成される。
【0109】
蓋体4を基体3に接合させた状態で、横向きの流体通路2aの両端は、基体3に設けられた流体通路2c,2dと連通し、縦向きの流体通路2bの両端は、基体3に設けられた流体通路2e,2fと連通している。
基体3上の流体通路2a,2bに対応する位置には、それぞれ弾性表面波発生部101c,1dが配置されている。弾性表面波発生部101c,1dは、スイッチ(図示しないが図8と同等のもの)により、いずれか1つが駆動されるようになっている。43は、サンプル流体を測定する測定部である。測定部の測定原理は限定されないが、例えば吸光度スペクトルを測定することにより、サンプル流体の分析を行う。
【0110】
流体通路2c,2a,2dにはサンプル流体Sが流され、流体通路2e,2b,2fには、サンプル流体Sを測定部43の測定ポイントまで運ぶためのキャリア流体が流されるようになっている。
サンプル流体Sとしては、血液や、細胞やDNAを含有したサンプル溶液や、緩衝液などを用いることができる。
【0111】
弾性表面波発生部101cを駆動しているときには、図28(a)に示すように、流体通路2c,2a,2dを通してサンプル流体Sが流される。
この状態でスイッチを切り替えて、弾性表面波発生部101dを駆動すると、図28(b)に示すように、流体通路2e,2b,2fを通してキャリア流体が流される。このとき、キャリア流体は、十字の連結部に存在するサンプル流体Sを、流体通路2bを通して搬送して測定部43の測定ポイントまで運ぶことができる。したがって、測定部43によってサンプル流体を測定することができる。
【0112】
このように、サンプル流体Sの任意の部分を切り取って測定に供することができるので、サンプル流体Sの特性の時間変化などを測定することができる。
図29(a),(b)は、発熱装置に、本発明の流体アクチュエータを適用した他の例を示す平面図と、T−T線断面図である。
図29(a),(b)の構造と、図26(a)、図26(b)の構造とはほぼ同じであるが、相違点は、図26(a),(b)の構造では、AC間の距離dと、BD間の距離dとが、d<dの関係が満たされていて、弾性表面波発生部101aから、右向き、左向きにアンバランスとなった弾性表面波を発生させているのに対して、図29(a),(b)の構造では、それぞれ弾性表面波発生部102a,102bが、それぞれ固有の弾性表面波の伝搬方向を持っていることである。つまり、弾性表面波発生部102a,102bの設置位置は、測定に邪魔にならない限り、流体通路2の中の任意の位置でよい。
【0113】
伝搬方向は、それぞれ弾性表面波発生部102a,102bについて例えば、−x方向に設定されている。したがって、弾性表面波発生部102a,102bから、左向きの弾性表面波を発生させ、全体として、流体通路2内の流体を一方向に流すことができる。
図29(a),(b)の例では、弾性表面波発生部102a,102bを用いているが、弾性表面波発生部102a,102bに代えて弾性表面波発生部103a,103bを用いることもできる。
【0114】
また、本実施形態の流体アクチュエータを、図27(a),(b)に示した分析装置に利用することもできる。
この場合、弾性表面波発生部を101c,101dに代えて、固有の伝搬方向を持つ弾性表面波発生部102c,102dあるいは103c,103dを使用する。弾性表面波発生部を102c,102dあるいは103c,103dは、固有の伝搬方向を持っているので、その設置場所は、流体通路2の中であれば、測定に邪魔にならない限り任意の位置でよいという利点がある。
<実施例>
次に、本発明の流体アクチュエータについて、特に断りない限り、図2(a)〜図2(b)、図4(a)〜図4(c)に示した構造を例にとって、その製造方法を説明する。
【0115】
基体3には、基体3の全体が圧電基板31になったものを用いる(図3(b)参照)。圧電基板31としては、圧電セラミックスや圧電単結晶など圧電性を有する基板ならどれを用いても良いが、圧電性が高い、チタン酸ジルコン酸鉛や、ニオブ酸リチウム、ニオブ酸カリウムの単結晶を用いれば、駆動電圧を下げることができて望ましい。例えば、128度Y回転X方向伝搬ニオブ酸リチウム(LiNbO)単結晶を用いることができる。
【0116】
その圧電基板31上に、例えばスピンコート法でフォトレジスト(以後レジストと省略)を塗布する。次に、フォトマスクを使用してフォトリソグラフィを行い、櫛歯状電極15a,15b、バスバー電極14a,14b、ビア電極接続部16a,16bを形成する部分が開口したレジストパターンを形成する。
なお、図13(a)のように浮き電極を設ける場合、浮き電極15dのパターンも形成する。図21(a)のように3相で駆動する場合、櫛歯状電極15c、バスバー電極14c、ビア電極接続部16cのパターンも形成する。
【0117】
更に、圧電基板31の全面に電極材料を抵抗加熱式真空蒸着法により堆積させ、リフトオフ法により、前記電極以外の部分の電極材料を除去する。ここで、電極材料として、厚さ約500Åのクロムの上に厚さ約5000Åの金を堆積したものを用いるが、アルミニウム、ニッケル、銀、銅、チタン、白金、パラジウム、その他の導電性材料を用いてもかまわない。
【0118】
また、電極材料を堆積させる方法は、抵抗加熱式真空蒸着法以外に、電子ビーム蒸着法やスパッタ法などを用いてもよい。また、前述したリフトオフ工程のかわりに、基体3に電極材料を堆積した後にレジストを塗布し、フォトリソグラフィにより電極部分以外が開口したレジストパターンを形成し、電極材料をエッチングすることにより、電極を作製しても良い。
【0119】
図4(a)に示した櫛歯状電極15a,15bの形状は、電極幅20μm、構造周期pが80μm、電極対数が40で、弾性表面波発生部101の長さLは3.2mm、櫛歯状電極15a,15bの交差部の長さKが2mmである。また、バスバー電極14a,14bの幅は300μm、ビア電極接続部16a,16bが500μm×500μmである。
図13(a)に示した櫛歯状電極15a,15bの場合、その形状は、電極幅10μm、構造周期pが80μm、電極対数が40で、弾性表面波発生部102の長さLは3.2mm、櫛歯状電極15a,15bの交差部の長さKが2mmである。浮き電極15dの形状は、電極幅10μm、長さが2mmである。浮き電極15dのオフセットxは例えば20μmである。また、バスバー電極14a,14bの幅は300μm、ビア電極接続部16a,16bが500μm×500μmである。
【0120】
図21(a)に示した櫛歯状電極15a,15b,15cの場合、その形状は、電極幅10μm、構造周期pが80μm、電極対数が40で、弾性表面波発生部103の長さLは3.2mm、櫛歯状電極15a,15b,15cの交差部の長さKが2mmである。また、バスバー電極14a,14b,14cの幅は300μm、ビア電極接続部16a,16b,16cの大きさが500μm×500μmである。
【0121】
次に基体3に直径100μmの貫通孔を例えばサンドブラストで開け、貫通孔の中に例えばメッキによって電極材料を埋める。貫通孔はフェムト秒レーザーを用いて形成しても良い。電極材料はニッケルや銅、その他の導電性材料を用いる。また、基体3の裏面に外部電極18a,18bを、前記櫛歯状電極15a,15bと同様の作製工程又は、スクリーン印刷法などで作製する。
【0122】
次に、弾性表面波発生部101の電極の上に絶縁膜8として、例えば、TEOS(テトラメトキシゲルマニウム)を用いたCVD(化学的気相堆積)法にて、SiO膜を形成する。
蓋体4としては、例えばシリコン基板を用いる。シリコン基板上に蒸着法やスパッタ法によりアルミニウム膜を厚さ1μm堆積させ、流体通路2に対応する部分が開口部となるように、フォトリソグラフィによりレジストパターンを作製する。
【0123】
次に、アルミニウムエッチング液(例:佐々木化学SEA−G)により、アルミニウム膜の流体通路2に対応する部分を開口させ、このアルミニウム膜をマスクとして、ICP−RIE(誘導結合プラズマ反応性イオンエッチング)装置にてSFガスによるエッチングとCによる保護膜作製を繰り返すことによる、異方性エッチングを行い、幅4mm、深さ500μmの流体通路2を形成する。なお、マスクとして用いたアルミニウム膜は酸処理などにより除去する。
【0124】
なお、蓋体4は、シリコン以外に、石英、プラスチック、ゴム、金属、セラミックス、その他どのような材料を用いても良い。例えば前記PDMSを用いてもよい。流体通路2も、KOHなどによるウェットエッチングで形成してもよく、鋳型、機械加工、モールディング等で作製しても良い。流体通路2の断面形状も図2のような矩形状とは限らず、断面半円状、断面三角状などであってもよい。
【0125】
最後に、基体3と蓋体4とを、例えばPDMSにより接合して、流体アクチュエータが完成する。
【符号の説明】
【0126】
101,102,103 弾性表面波発生部
2 流体通路
3 基体
4 蓋体
5 電源
6 容器
8 絶縁膜
13 接地電極
14a,14b,14c バスバー電極
15a,15b,15c 櫛歯状電極
15d,15e 浮き電極
16a,16b,16c ビア電極接続部
17a,17b,17c ビア電極
18a,18b,18c 外部電極
20a,20b,20c 引き出し電極
21 反射器電極
32 発熱部
40 分析装置
43 分析部
51 保護構造
52 空洞部
61 圧電振動体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体と、
前記圧電体を内壁の一部に有し、内部を流体が移動可能な流体通路と、
前記圧電体の前記流体通路を臨む面に形成された櫛歯状電極から発生する弾性表面波によって、前記流体通路内の前記流体を駆動する弾性表面波発生部とを備え、
前記弾性表面波発生部は、弾性表面波が伝搬する一方の側に位置する前記流体通路内の前記流体に対して、他方の側に位置する前記流体通路内の前記流体に対するよりも、より強い駆動力を与えることによって、前記流体を一方向に移動させるものである流体アクチュエータ。
【請求項2】
前記弾性表面波発生部から発生する弾性表面波の両伝搬方向に沿って伸ばした直線が、前記流体通路の壁面又は前記流体通路の出入口にそれぞれぶつかる2点をC、Dとすると、
前記弾性表面波発生部は、前記C,Dの中心位置から、弾性表面波のいずれかの伝搬方向に沿ってずれた位置に配置されている請求項1記載の流体アクチュエータ。
【請求項3】
前記弾性表面波発生部の一端Aから前記流体通路の壁面Cまでの距離dと、前記弾性表面波発生部の他端Bから前記流体通路の壁面Dまでの距離dとが、一方が大きく、他方が小さい関係になっている請求項2記載の流体アクチュエータ。
【請求項4】
前記小さい方の距離は、20mm以下である請求項3記載の流体アクチュエータ。
【請求項5】
前記弾性表面波発生部に近い方の前記流体通路の壁面は、前記弾性表面波の伝搬方向に対して略直交する平面である請求項2記載の流体アクチュエータ。
【請求項6】
前記弾性表面波発生部は、前記一方向に指向性を持った弾性表面波を発生させる請求項1記載の流体アクチュエータ。
【請求項7】
前記弾性表面波発生部は、前記櫛歯状電極の隣接する電極指の間であって、これらの電極指間の中央から、いずれかの電極指の方向にオフセットされた位置に、これらの電極指と平行に配置された浮き電極を備える、請求項6記載の流体アクチュエータ。
【請求項8】
前記弾性表面波発生部は、前記櫛歯状電極の片側に隣接させて配置され、前記櫛歯状電極で発生して伝搬してきた弾性表面波を反対方向に反射させる反射器電極を備える、請求項6記載の流体アクチュエータ。
【請求項9】
前記弾性表面波発生部は、それぞれ同一ピッチの電極指を噛み合わせて配置した少なくとも三種の櫛歯状電極を有し、前記少なくとも三種の櫛歯状電極に位相を順番に異ならせた交流電圧が印加されることにより、前記一方向に指向性を持った弾性表面波を発生させる、請求項6記載の流体アクチュエータ。
【請求項10】
前記弾性表面波発生部は、それぞれ同一ピッチの電極指を噛み合わせて配置した二種の櫛歯状電極と、前記櫛歯状電極の隣接する電極指の間に配置された接地電極とを有し、
前記隣接する電極指は、1ピッチの半分よりも小さな間隔又は大きな間隔で配置され、
前記隣接する電極指の間隔に対応する位相差を持った2つの交流電圧が、各櫛歯状電極に印加されることにより、前記一方向に指向性を持った弾性表面波を発生させる、請求項6記載の流体アクチュエータ。
【請求項11】
前記流体通路の内壁の他の一部を構成する基体をさらに備え、
前記圧電体は、前記基体の一部にはめ込まれている請求項1記載の流体アクチュエータ。
【請求項12】
前記櫛歯状電極を形成する電極指の一端が接続される共通電極は、前記流体通路の外側に配置されている請求項1記載の流体アクチュエータ。
【請求項13】
前記弾性表面波発生部は、前記流体通路に沿って2つ以上設けられ、いずれかの弾性表面波発生部が選択的に駆動される請求項1記載の流体アクチュエータ。
【請求項14】
前記弾性表面波発生部は2つ設けられ、
前記2つの弾性表面波発生部は、前記C,Dで挟まれる流体通路の中心位置から、それぞれ弾性表面波の両伝搬方向に沿ってずれた位置に配置され、
いずれかの弾性表面波発生部が選択的に駆動される請求項2記載の流体アクチュエータ。
【請求項15】
前記圧電体には、前記櫛歯状電極を覆って前記流体との接触を防ぐ保護構造が設けられ、前記保護構造と前記櫛歯状電極との間に空隙が形成されて成る請求項1記載の流体アクチュエータ。
【請求項16】
前記保護構造は、前記空隙を囲繞する側壁部を備え、
前記側壁部は、前記弾性表面波発生部からの弾性表面波が伝搬する前記所定方向側の厚みが、この所定方向と反対側の厚みと比べて薄くなっている請求項15記載の液体アクチュエータ。
【請求項17】
前記流体通路の内壁を超音波によって振動させる振動印加手段をさらに備える請求項1記載の流体アクチュエータ。
【請求項18】
前記流体通路は、流体が循環可能である請求項1記載の流体アクチュエータ。
【請求項19】
圧電体と、
前記圧電体を内壁の一部に有し、内部を流体が移動可能な流体通路と、
前記圧電体の前記流体通路を臨む面に形成された櫛歯状電極から発生する弾性表面波によって、前記流体通路内の前記流体を駆動する弾性表面波発生部とを備え、
前記弾性表面波発生部は、前記櫛歯状電極の隣接する電極指の間であって、これらの電極指間の中央から、いずれかの電極指の方向にオフセットされた位置に、これらの電極指と平行に配置された浮き電極を備える、流体アクチュエータ。
【請求項20】
請求項1記載の流体アクチュエータを冷却装置として利用する発熱装置であって、
当該発熱装置が実装された基板を有し、前記流体通路は、前記基板に設けられている発熱装置。
【請求項21】
請求項1記載の流体アクチュエータを備えた分析装置であって、
流体状のサンプルを供給するサンプル供給部と、前記サンプルを分析するサンプル分析部とが設けられ、
前記流体通路は、前記サンプル供給部から前記サンプル分析部へ前記流体状のサンプルを輸送するように設けられている分析装置。

【図1】
image rotate

【図2(a)】
image rotate

【図2(b)】
image rotate

【図3(a)】
image rotate

【図3(b)】
image rotate

【図4(a)】
image rotate

【図4(b)】
image rotate

【図4(c)】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8(a)】
image rotate

【図8(b)】
image rotate

【図9(a)】
image rotate

【図9(b)】
image rotate

【図10(a)】
image rotate

【図10(b)】
image rotate

【図11(a)】
image rotate

【図11(b)】
image rotate

【図11(c)】
image rotate

【図12(a)】
image rotate

【図12(b)】
image rotate

【図13(a)】
image rotate

【図13(b)】
image rotate

【図13(c)】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17(a)】
image rotate

【図17(b)】
image rotate

【図18(a)】
image rotate

【図18(b)】
image rotate

【図19(a)】
image rotate

【図19(b)】
image rotate

【図20(a)】
image rotate

【図20(b)】
image rotate

【図21(a)】
image rotate

【図21(b)】
image rotate

【図21(c)】
image rotate

【図21(d)】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25(a)】
image rotate

【図25(b)】
image rotate

【図26(a)】
image rotate

【図26(b)】
image rotate

【図27(a)】
image rotate

【図27(b)】
image rotate

【図28(a)】
image rotate

【図28(b)】
image rotate

【図29(a)】
image rotate

【図29(b)】
image rotate


【公開番号】特開2012−237319(P2012−237319A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−186945(P2012−186945)
【出願日】平成24年8月27日(2012.8.27)
【分割の表示】特願2007−549199(P2007−549199)の分割
【原出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】