説明

流路切替弁装置

【課題】流路切替弁装置において、点検用の流路から通常の流路に切り替えるときに、点検用接続装置の取り外しができた後であれば、移動弁が所定の弁座に必ず着座しており確認の必要もない流路切替弁装置を提供する。
【解決手段】流路切替弁装置(A)は流入管(11)、点検用接続装置(4)が着脱可能な点検用流出管(20)、通用流出管(12)、点検用流出管(20)に通じる弁座(22)、通用流出管(12)に通じる弁座(14)、両弁座(14,22)間を移動可能で点検用接続装置(4)によって移動操作される移動弁(3)、点検用流出管(20)に着脱される点検用接続装置(4)を備えている。流入管(11)から点検用流出管(20)に通じる点検用の流路から、流入管(11)から通用流出管(12)に通じる通常の流路に切り替えるときに、移動弁(3)が点検用流出管(20)に通じる弁座(22)に着座することによってはじめて点検用流出管(20)からの点検用接続装置(4)の取り外しができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路切替弁装置に関するものである。更に詳しくは、消火栓装置などに設けられ、点検用接続装置の着脱により、通常の流路と点検用の流路を切り替えることができる流路切替弁装置において、点検用の流路から通常の流路に切り替えるときに、移動弁が所定の弁座に対し着座状態にあるときに点検用接続装置の係合を解除して取り外すことができるようにしたものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば消火栓装置においては、供給される水の流量や圧力などを定期的に点検することが義務付けられている。この点検は、点検用接続装置を装着した後に手動で、あるいは点検用接続装置の装着によって自動的に流路を通常の流路から点検用接続装置を通る点検用の流路に切り替えて行われている。このような流路を切り替える装置としては、例えば特許文献1記載のものがある。
【0003】
特許文献1記載の流路切替弁装置は、点検用の流路を形成する場合は流路接続装置の挿入部によって弁体を移動させて所定の弁座に着座するようにしてあり、通常の流路を形成する場合では、流路接続装置の取り外しに伴い、移動弁をバネなどの付勢手段の力によって所定の弁座に着座するようにしたものである。
【0004】
【特許文献1】特許第3273320号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の流路切替弁装置には、次のような課題があった。
すなわち、流路接続装置を取り外して点検用の流路から通常の流路に切り替えるときには、弁体の移動及び着座は付勢手段の力によって自動的に行われるようになっているが、それはあくまでも理論上であって、例えば移動弁と弁座の嵌合部に異物が挟まって着座ができなくなるなど、実際の使用では確実に動作するとは限らない。
このため、流路の切り替えが確実に行われているかどうかは、作業者がその都度確認する必要があるが、現実的にはこの確認を怠りがちであり、点検後に水漏れを起こしてしまうなどの問題が多く生じている。
【0006】
そこで本発明の目的は、例えば消火栓装置に使用される流路切替弁装置において、点検用の流路から通常の流路に切り替えるときに、移動弁が所定の弁座に対し着座状態にあるときに点検用接続装置の係合を解除して取り外すことができるようにすることにより、点検用接続装置の取り外し操作ができた後であれば、移動弁が所定の弁座に着座していることを確認する必要がない流路切替弁装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明が講じた手段は次のとおりである。
本発明は、
流入管と、
点検用接続装置が着脱可能な点検用流出管と、
通用流出管と、
上記点検用流出管に通じる弁座と、
上記通用流出管に通じる弁座と、
上記両弁座間を移動可能で、両弁座のうち何れかに着座して流路を切替可能であり、上記点検用流出管に着脱される点検用接続装置と係合し、該点検用接続装置によって移動操作される移動弁と、
を備えており、
上記移動弁は、上記流入管から上記点検用流出管に通じる点検用の流路から、上記流入管から上記通用流出管に通じる通常の流路に切り替える場合、移動弁が点検用流出管に通じる弁座に対し着座位置にあるときに、点検用接続装置の点検用接続装置側係合手段との係合を解除することができる移動弁側係合手段を備えている、
流路切替弁装置である。
【0008】
本発明は、
流入管と、
点検用接続装置が着脱可能な点検用流出管と、
通用流出管と、
上記点検用流出管に通じる弁座と、
上記通用流出管に通じる弁座、
上記両弁座間を移動可能で、両弁座のうち何れかに着座して流路を切替可能であり、上記点検用流出管に着脱される点検用接続装置と係合し、該点検用接続装置によって移動操作される移動弁と、
上記点検用流出管に着脱され、点検用接続装置側係合手段を有し、点検装置につながる点検用接続装置と、
を備えており、
上記移動弁は、上記流入管から上記点検用流出管に通じる点検用の流路から、上記流入管から上記通用流出管に通じる通常の流路に切り替える場合、移動弁が点検用流出管に通じる弁座に対し着座位置にあるときに、点検用接続装置の点検用接続装置側係合手段との係合を解除することができる移動弁側係合手段を備えている、
流路切替弁装置である。
【0009】
本発明においては、
点検用接続装置側係合手段の構造は、点検用接続装置を点検用流出管に接続することにより係合爪が係合方向に動く構造とし、点検用接続装置を取り外し方向へ動かし、移動弁が点検用流出管に通じる弁座に対し着座位置にあるときに係合爪が係合解除方向に動くことができる構造とし、さらに移動弁側係合手段の構造を、係合爪が挿入可能かつ係合可能な環状体を有する構造とすることができる。
【0010】
(作用)
本発明に係る流路切替弁装置の作用を説明する。なお、ここでは、説明で使用する各構成要件に、後述する実施の形態において各部に付与した符号を対応させて付与するが、この符号は、特許請求の範囲の各請求項に記載した符号と同様に、あくまで内容の理解を容易にするためであって、各構成要件の意味を上記各部に限定するものではない。
【0011】
流路切替弁装置(A)は、常態(通常使用状態)では、移動弁(3)が点検用流出管(20)側の弁座(22)に着座しており、流路は流入管(11)から通用流出管(12)に通じる流路となっている。
点検時においては、点検用流出管(20)への点検用接続装置(4)の接続によって移動弁(3)が通用流出管(12)側の弁座(14)に移動し着座する。これによって、流路は流入管(11)から点検用流出管(20)に通じる流路に切り替わる。
【0012】
そして、点検が終了し、流入管(11)から点検用流出管(20)に通じる点検用の流路から、流入管(11)から通用流出管(12)に通じる通常の流路に切り替えるときには、点検用接続装置(4)の取り外しに伴い移動弁(3)を移動させる。そして、移動弁(3)が点検用流出管(20)側の弁座(22)に対し着座したときにはじめて点検用接続装置(4)の点検用接続装置側係合手段(43)と移動弁(3)の移動弁側係合手段(31)の係合を解除することができ、点検用接続装置(4)を取り外すことができる。つまり、点検用流出管(20)からの点検用接続装置(4)の取り外しができた時点で、移動弁(3)が弁座(22)に必ず着座していることになり、作業者が流路の切り替えが確実に行われているかどうかの確認をする必要はない。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る流路切替弁装置によれば、流入管から点検用流出管に通じる点検用の流路から、流入管から通用流出管に通じる通常の流路に切り替えるときに、移動弁が点検用流出管に通じる弁座に対し着座状態にあるときに点検用接続装置の係合を解除して取り外すことができるようにしている。つまり、点検用流出管からの点検用接続装置の取り外しができた時点で、移動弁は必ず弁座に着座していることになり、作業者が流路の切り替えが確実に行われているかどうかの確認をする必要はなく、点検後に水漏れなどの問題を生じることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明を図に示した実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例】
【0015】
図1は本発明に係る流路切替弁装置において通用流出管を通る流路を形成した状態の分解断面説明図、
図2は本発明に係る流路切替弁装置において点検用接続装置を接続し点検用流出管を通る流路を形成した状態の断面説明図、
図3は移動弁及び移動弁側係合具と、点検用接続装置側係合具の構造を示す分解斜視図、
図4は移動弁及び移動弁側係合具と、点検用接続装置側係合具の構造を示す分解正面図である。
なお、以下の説明において、説明箇所の位置または方向を表す上、下、縦、横などの表記は、図1を基準とするものである。
【0016】
流路切替弁装置Aは、流入管11と通用流出管12を有する弁箱本体1、点検用流出管20を有する弁箱接続体2、弁箱本体1と弁箱接続体2の内部に収まっている移動弁3により構成されている。流入管11と通用流出管12は、水管などの流路管(図示省略)に接続され、点検用流出管20には後述する点検用接続装置4が着脱可能に接続される。
【0017】
弁箱本体1は、中央部に縦方向に設けられた円管形状の接続管10を有している。接続管10のうち上部側は開口しており、内周面100は上記移動弁3(構造については後述)を案内する案内部となる。接続管10の下部には、横方向に円管形状の流入管11と通用流出管12が設けられている。接続管10と流入管11と通用流出管12は連通し、流入管11と通用流出管12の中心線は同一の軸線上にある。流入管11と通用流出管12の先端には、径大の接続用フランジ110、120がそれぞれ設けられている。
【0018】
通用流出管12のうち弁箱本体1の内部側には、縦方向にかつ上部を開口して円管形状の弁座14が設けられている。弁座14の中心線は、上記接続管10及び上記弁箱接続体2(構造については後述)の中心線と同一の直線上にある。また、弁座14の開口縁部の位置は、上記接続管10の開口縁部より低い位置に設定されている。
【0019】
通用流出管12の底部には、弁座14の中心線と方向が重なるように支持棒15の基端が固定されている。支持棒15には、内径が支持棒15より径大でやや長い支持バネ16が嵌め込まれている。支持バネ16の下端は通用流出管12の底部に当たり、上端部は上記移動弁3の底部の挿入孔308に挿入されるようになっている。
【0020】
上記接続管10の開口縁部には、上記弁箱接続体2が固定されている。弁箱接続体2は円管形状の点検用流出管20を有しており、点検用流出管20のうち下側には、接続管10と同じ外径の接続用フランジ21が設けられている。弁箱接続体2の下端には、接続用フランジ21より径小で点検用流出管20と連通する弁座22が接続用フランジ21の端面からやや突出して設けられている。点検用流出管20の内面のうち下端寄りには、後述する移動弁3が弁座22に着座したとき上部側のパッキン303が係合する係合溝203が全周にわたり設けられている。弁座22の外側面にはパッキン220が全周にわたり設けられている。弁箱接続体2は、弁座22を接続管10の開口部に嵌め入れ、接続用フランジ21を所要数のボルト210により締め付けて接続管10に固定されている。
【0021】
弁箱接続体2の点検用流出管20の外側部には、やや径小に設けられたガイド部201を有している。ガイド部201には、後述する点検用接続装置4の固定を解除するときに操作する解除具23が嵌め込まれている。解除具23は、内径がガイド部201よりやや径大の円筒部230と、円筒部230下端に設けられている径大のツマミ部231で構成されており、ガイド部201に沿って所定の範囲でスライド可能である。なお、解除具23の外径は点検用流出管20の外径と同径に形成されている。また、点検用流出管20の上端面には、係合段部202が全周にわたり設けられている。
【0022】
弁箱本体1と弁箱接続体2の内部には、移動弁3が収容されている。移動弁3は、弁体30と係合受具31を有している。係合受具31は移動弁側係合手段を構成する。
弁体30は、低いほぼ円柱形状の弁本体301と、弁本体301の下部側に設けられている径大の通水フランジ302を有している。弁本体301の直径は、上記弁座14と弁座22の開口部の内径よりやや径小に形成されている。
【0023】
弁本体301のうち通水フランジ302より上部側の厚さは、下部側の厚さの約二倍に形成されている。弁本体301の通水フランジ302より上部側の外側部には、Oリングであるパッキン303が上下二段に設けられており、下部側には、同じくOリングであるパッキン304が全周にわたり一段設けられている。弁本体301のうち通水フランジ302より上側は上記弁座22に着座する上部弁部301aであり、下側は上記弁座14に着座する下部弁部301bである。弁本体301を上記のように弁座14(パッキン304が設けられている側が嵌合)と弁座22(パッキン303が設けられている側が嵌合)に着座させたとき、それぞれの開口部を上記パッキン303、304の作用によって水密に塞ぐことができる。
【0024】
通水フランジ302はほぼ円板状に形成されており、外径は上記したように接続管10の内周面100の内径よりやや径小に形成され、通水フランジ302は接続管10の内周面100に沿って上下方向に移動できる。また、通水フランジ302には周方向に等間隔で六箇所に円形の通水孔305が貫通して設けられている。各通水孔305は、弁体30が弁箱接続体2側の弁座22に着座したときは弁座22の下面で塞がれて通水機能を有さず(図1参照)、弁体30が通用流出管12側の弁座14に着座したときは通水機能を有する位置(図2参照:弁座14の外径より外側)に設けられている。
【0025】
弁本体301の上面306には、上記係合受具31が固定されている。係合受具31は、金属板を打ち抜きと曲げにより加工したもので、縦(垂直)方向に設けられた柱部311とその下端に直角(水平)に設けられた固定部312及び上端に直角(水平)に設けられた環状の係合部313を有している。固定部312はネジ316で弁本体301の上面306に固着されており、板状の柱部311は、平面視において、弁本体301の円形の上面306の直径線と重なるように位置させてある。
【0026】
係合部313の中央部は円孔314となっている。係合部313の円孔314の口縁部の下面は、全周にわたり後述する点検用接続装置4の係合爪442が係合できるようになっている。また、係合部313につながる柱部311の上部には、逃げ部315が切り欠いて形成されている。逃げ部315は、点検用接続装置4の係合爪442を係合部313の円孔314に挿入するとき邪魔にならないように設けられている(図2参照)。
【0027】
弁本体301の下面307の中央部には挿入孔308が設けられている。移動弁3は、支持バネ16の上端部を挿入孔308に挿入することによって簡易的に支持されている。なお、支持バネ16は移動弁3の動きを安定させるためのものである。支持バネ16の反発力の強さは特に限定するものではなく、適宜設定が可能である。
また、移動弁3は、上記両弁座14、22間を接続管10の内周面100に沿って移動可能であり、両弁座14、22のうち何れかに着座して流路を開閉することができる。なお、移動弁3の移動操作は、上記点検用流出管20に着脱される後述する点検用接続装置4によって行われる。
【0028】
点検用接続装置4は、ホースによって図示していない点検装置につながっている。点検用接続装置4は、接続具40を有している。接続具40は、ホース接続管401と、ホース接続管401と通じる逆有底円筒形状の接続具本体402を有している。接続具本体402の内天部には、上記点検用流出管20の上端面の係合段部202に嵌め込むことができる底面視円形状の係合凸部403が設けられている。また、接続具本体402の円筒部の内径は、点検用流出管20の外径よりやや径大に形成され、接続具本体402と点検用流出管20はほぼ隙間なく嵌合できる。
【0029】
接続具本体402の円筒部の内周面のうち、上端にはパッキン404が全周にわたり埋設されている。また、内周面のうち、下部開口側には固定用爪41が周方向へ等間隔で三箇所に設けられている。各固定用爪41は、上記点検用流出管20のガイド部201の上端の段部201aに係合することができる(図2参照)。各固定用爪41は、接続具本体402の円筒部の側壁を貫通して設けられた凹孔405に出入り可能に収容してある。各凹孔405は、接続具本体402の円筒部の開口部側の外側部に螺合によって取り付けられているカバー42で外面側が塞がれている。
【0030】
各固定用爪41は、上端が水平であり、下方になるにつれて凹孔405側へ湾曲傾斜するように設けられている。各固定用爪41は、各凹孔405に収められたバネ406によって内方向へ付勢されており、常態においては円筒部の内周面から突出している。また、カバー42の外周部には、緩衝体であり滑り止め機能も有するゴム環420が取り付けられている。
【0031】
接続具本体402の係合凸部403の中央部には、点検用接続装置側係合手段である係合具43が固定されている。係合具43は、金属板を打ち抜きと曲げにより加工したもので、縦(垂直)方向に設けられた垂下部431とその上端に直角(水平)に設けられた固定部432を有している。固定部432の中央部は円孔433となっており、円孔433の内径はホース接続管401の内径と同径に形成されている。垂下部431は底面視において、固定部432の円孔433の直径線と重なるように位置させてある。
【0032】
垂下部431の下端部には、ほぼ半円形状の挿入部434が下方へ突出するようにして設けられている。挿入部434の幅は、上記係合部313の円孔314の径よりやや小さく形成されており(垂下部431の幅の約1/2)、挿入部434の両側には、押圧部435が水平に設けられている。両押圧部435は、上記移動弁3の係合部313の上面に当たり下方へ押圧すること(押し下げること)ができる。固定部432はネジ(図示省略)で固着され、固定部432の円孔433と点検用流出管20の内径は重なる(同径になる)ようにしてある。
【0033】
垂下部431の下側には、厚さ方向に重なるようにして板状の係合爪具44が取り付けられている。係合爪具44は、腕部441とフック状の係合爪442でほぼ「ヘ」字状に形成されており、曲がり角部をネジ443で止めてあり、ネジ443を中心として回動可能である。また、係合爪具44は、ねじりコイルバネ444によって、図1において左回り方向(係合爪442と係合部313の係合が解除される方向)へ付勢されている。
【0034】
係合爪具44は、常態においては、腕部441が垂下部431に設けられたストッパ445に当接するようにして、図1に示すように係合爪442の外形部が上記挿入部434の外形部とほぼ合わさる位置(係合部313に対する係合が解除される位置)に停止するようにしてある。
【0035】
(作用)
図5は点検用接続装置の取り外しに伴う各部の動きを示す説明図である。
図1ないし図5を参照して、本実施の形態に係る流路切替弁装置Aの作用を説明する。
図1に示す状態は、流路切替弁装置Aから点検用接続装置4を取り外した状態である。この状態では、流路切替弁装置Aにおいて、移動弁3の弁本体301の上部弁部301aが弁箱接続体2側の弁座22に着座している。この状態においては、移動弁3の上下二段のパッキン303のうち、上部側のパッキン303は係合溝203に嵌って係合し固定機能を果たしている。また、下部側のパッキン303は点検用流出管20の内面に圧着して変形し、シール機能を果たしている。これにより、流路切替弁装置A内には、矢印で示すように、流入管11から弁座14、さらに通用流出管12を通る通常の流路が形成されている。
【0036】
点検作業を行うときは、点検用接続装置4を弁箱接続体2の点検用流出管20に接続する。接続は次のように行われる。まず、点検用接続装置4の係合具43の挿入部434と、係合爪具44の係合爪442が移動弁3の係合部313中央の円孔314に挿入される。そして、点検用接続装置4の接続具本体402が点検用流出管20に嵌め込まれると、点検用流出管20の上部開口縁部(係合段部202を含む)が、点検用接続装置4の係合具43に取り付けられている係合爪具44の腕部441の先端部下側に当たる。
【0037】
点検用接続装置4の押し込みに伴い、係合爪具44は、腕部441が押されて、図1においてねじりコイルバネ444の付勢力に抗して右回り方向に回動する。これにより、係合爪442も同様に右回り方向に回動し、係合部313の下面側に回り込んで係合する(図2参照)。なお、係合爪具44の腕部441の先端は、ねじりコイルバネ444の付勢力で点検用流出管20の内面に接しており、これによって係合爪442と係合部313の係合は維持される。
【0038】
点検用接続装置4の接続具本体402をさらに押し込むことにより、挿入部434の基部両側にある押圧部435が移動弁3の係合部313の上面に当たり、移動弁3を押し下げる。移動弁3は、弁座22から外れて押し下げられる。移動弁3は、通水フランジ302の外周部を接続管10の内周面100でガイドされて下降し、弁本体301の下部弁部301bが、通用流出管12に通じる下側の弁座14に正確に着座する。
【0039】
また、移動弁3が上記のように弁座14に着座したときに、点検用接続装置4の接続具本体402の内面に設けられている各固定用爪41が点検用流出管20のガイド部201の上部側の段部201aに係合する。つまり、移動弁3が通用流出管12に通じる弁座14に着座できなければ、各固定用爪41はガイド部201の上部側の段部201aと係合できないので、固定用爪41が係合できた時点で移動弁3が弁座14に着座したことが分かる。
【0040】
これにより、点検用接続装置4は点検用流出管20に接続される。流路切替弁装置A内部には、図2に矢印で示すように、流入管11から通水フランジ302の各通水孔305を通り、弁座22、さらに点検用流出管20を通る点検用の流路が形成され、流路の切り替えが完了する(図2参照)。
【0041】
点検作業を終了し、流路を再び通常の流路に切り替えるときは、次のように行う。
主に図5を参照する。
まず、弁箱接続体2の点検用流出管20のガイド部201に設けられている解除具23をガイド部201に沿って押し上げ、解除具23の上端部で各固定用爪41を押し拡げてガイド部201の上部側の段部201aに対する係合を解除する(図5(a)参照)。
これにより、点検用接続装置4を引き抜き方向へ動かす操作が可能になる。点検用接続装置4を引き抜き方向へ動かすと、係合部313の下面側に係合している係合爪442の作用によって移動弁3は引き上げられ、弁本体301の下部弁部301bと弁座14の着座は外れる。
【0042】
そして、下降のときと同様に移動弁3は接続管10の内周面100でガイドされて上昇し、弁本体301の上部弁部301aが上部側の弁座22に着座する。このとき、移動弁3の上下二段のパッキン303のうち上部側のパッキン303が係合溝203に嵌って係合している。移動弁3が着座する前の移動段階では、支持バネ16はそのバネ力で移動弁3の上昇を助ける。また、係合爪具44の腕部441と点検用流出管20の内面の接触は解除されるが、係合爪442と係合部313が接触していることによって、係合爪具44は、ねじりコイルバネ444の付勢力に抗してそのまま回動せず停止状態を維持する(図5(b)参照)。移動弁3が弁座22に着座することにより、流路は流入管11から弁座14、さらに通用流出管12を通る通常の流路に切り替わる。
【0043】
また、移動弁3が弁座22に着座したことにより点検用接続装置4を引き抜き方向へ動かすことができなくなったら、引き抜き操作を一旦緩める。これにより、係合部313と係合爪442の接触部の摩擦がなくなり、すでに点検用流出管20の開口縁部から外に出ている係合爪具44の腕部441は、ねじりコイルバネ444の付勢力で左回り方向へ回動し、係合爪442も同様に回動して係合部313との係合が解除される(図5(c)参照)。
【0044】
つまり、移動弁3の弁座22に対する着座が確実に行われた時点で、係合爪具44の腕部441が点検用流出管20の内面から外れ、ねじりコイルバネ444の付勢力による回動で係合爪442の係合を解除できる位置に移動できるようになっている。これにより、係合部313の円孔314からの挿入部434、係合爪442の抜き取りが可能になり、さらに点検用接続装置4を引き抜き方向へ動かすことにより、点検用接続装置4を点検用流出管20から取り外すことができる(図1参照)。
【0045】
上記のように、流路切替弁装置Aによれば、流入管11から点検用流出管20に通じる点検用の流路から、流入管11から通用流出管12に通じる通常の流路に切り替えるときに、移動弁3が上記点検用流出管20に通じる上部側の弁座22に移動弁3が着座したときにはじめて点検用接続装置4と移動弁3の係合を解除することができ、点検用接続装置4を取り外すことができる。つまり、点検用流出管20からの点検用接続装置4の取り外しができた時点で、移動弁3は必ず弁座22に着座していることになり、作業者が流路の切り替えが確実に行われているかどうかの確認をする必要はない。
【0046】
なお、本明細書で使用している用語と表現は、あくまで説明上のものであって限定的なものではなく、上記用語、表現と等価の用語、表現を除外するものではない。また、本発明は図示されている実施の形態に限定されるものではなく、技術思想の範囲内において種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明に係る流路切替弁装置において通用流出管を通る流路を形成した状態の分解断面説明図。
【図2】本発明に係る流路切替弁装置において点検用接続装置を接続し点検用流出管を通る流路を形成した状態の断面説明図。
【図3】移動弁及び移動弁側係合具と、点検用接続装置側係合具の構造を示す分解斜視図。
【図4】移動弁及び移動弁側係合具と、点検用接続装置側係合具の構造を示す分解正面図。
【図5】点検用接続装置の取り外しに伴う各部の動きを示す説明図。
【符号の説明】
【0048】
A 流路切替弁装置
1 弁箱本体
10 接続管
100 内周面
11 流入管
110 接続用フランジ
12 通用流出管
120 接続用フランジ
14 弁座
15 支持棒
16 支持バネ
2 弁箱接続体
20 点検用流出管
201 ガイド部
201a 段部
202 係合段部
203 係合溝
21 接続用フランジ
210 ボルト
22 弁座
220 パッキン
23 解除具
230 円筒部
231 ツマミ部
3 移動弁
30 弁体
301 弁本体
301a 上部弁部
301b 下部弁部
302 通水フランジ
303 パッキン
304 パッキン
305 通水孔
306 上面
307 下面
308 挿入孔
31 係合受具
311 柱部
312 固定部
313 係合部
314 円孔
315 逃げ部
316 ネジ
4 点検用接続装置
40 接続具
401 ホース接続管
402 接続具本体
403 係合凸部
404 パッキン
405 凹孔
406 バネ
41 固定用爪
42 カバー
420 ゴム環
43 係合具
431 垂下部
432 固定部
433 円孔
434 挿入部
435 押圧部
44 係合爪具
441 腕部
442 係合爪
443 ネジ
444 ねじりコイルバネ
445 ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入管(11)と、
点検用接続装置(4)が着脱可能な点検用流出管(20)と、
通用流出管(12)と、
上記点検用流出管(20)に通じる弁座(22)と、
上記通用流出管(12)に通じる弁座(14)と、
上記両弁座(14,22)間を移動可能で、両弁座(14,22)のうち何れかに着座して流路を切替可能であり、上記点検用流出管(20)に着脱される点検用接続装置(4)と係合し、該点検用接続装置(4)によって移動操作される移動弁(3)と、
を備えており、
上記移動弁(3)は、上記流入管(11)から上記点検用流出管(20)に通じる点検用の流路から、上記流入管(11)から上記通用流出管(12)に通じる通常の流路に切り替える場合、移動弁(3)が点検用流出管(20)に通じる弁座(22)に対し着座位置にあるときに、点検用接続装置(4)の点検用接続装置側係合手段(43)との係合を解除することができる移動弁側係合手段(31)を備えている、
流路切替弁装置。
【請求項2】
流入管(11)と、
点検用接続装置(4)が着脱可能な点検用流出管(20)と、
通用流出管(12)と、
上記点検用流出管(20)に通じる弁座(22)と、
上記通用流出管(12)に通じる弁座(14)と、
上記両弁座(14,22)間を移動可能で、両弁座(14,22)のうち何れかに着座して流路を切替可能であり、上記点検用流出管(20)に着脱される点検用接続装置(4)と係合し、該点検用接続装置(4)によって移動操作される移動弁(3)と、
上記点検用流出管(20)に着脱され、点検用接続装置側係合手段(43)を有し、点検装置につながる点検用接続装置(4)と、
を備えており、
上記移動弁(3)は、上記流入管(11)から上記点検用流出管(20)に通じる点検用の流路から、上記流入管(11)から上記通用流出管(12)に通じる通常の流路に切り替える場合、移動弁(3)が点検用流出管(20)に通じる弁座(22)に対し着座位置にあるときに、点検用接続装置(4)の点検用接続装置側係合手段(43)との係合を解除することができる移動弁側係合手段(31)を備えている、
流路切替弁装置。
【請求項3】
点検用接続装置側係合手段(43)の構造は、点検用接続装置(4)を点検用流出管(20)に接続することにより係合爪(442)が係合方向に動く構造とし、点検用接続装置(4)を取り外し方向へ動かし、移動弁(3)が点検用流出管(20)に通じる弁座(22)に対し着座位置にあるときに係合爪(442)が係合解除方向に動くことができる構造とし、さらに移動弁側係合手段(31)の構造を、係合爪(442)が挿入可能かつ係合可能な環状体(313)を有する構造とした、
請求項2記載の流路切替弁装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−79736(P2008−79736A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261528(P2006−261528)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000003171)株式会社戸上電機製作所 (29)
【Fターム(参考)】