説明

流量計

【課題】 広い範囲での測定を可能にし、さらに圧力損失を少なくし、小型化及び低コスト化を図る。
【解決手段】 小流量域の測定に際しては、遮断弁20を第一の位置に位置させて小流量用流路17との合流地点よりも上流側で大流量用流路6を遮断弁20で遮断し、大流量域の測定に際しては、遮断弁20を第二の位置に位置させて太い大流量用流路6に流体を流すことで圧力損失を小さくするとともに広い範囲での測定を可能にし、さらに、遮断弁20を第三の位置に移動させることにより、大流量用流路6及び小流量用流路17を遮断して非常事態に対処する。さらに、流路切り替えと非常時における流路の遮断とを一つの遮断弁20で行わせることで、コストダウン及び小型化を図り、さらに、遮断弁20を電池で駆動する場合に電池の消耗を節減する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、広い流量域の測定を可能とする流量計に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、ガスメータ等に利用される流量計としては、熱線式フローセンサやフルイディック素子の出力を基に流量を測定する流量計が知られている。熱線式フローセンサは、加熱した熱線が流体の流速に応じて熱が奪われ出力電圧が変化することを利用した小流量検出手段の一種で、これは半導体のマイクロマシン技術の応用により非常に小型のものが開発されており、比較的低流量域から高い感度を示すことが知られている。
【0003】フルイディック素子の振動出力を基に流量を測定するフルイディック流量計は、流体の流量がある程度の流量以上でないとフルイディック素子の発振が生じないので、比較的高流量域の測定に向いている。
【0004】以上の特性を利用し、熱線式フローセンサとフルイディック素子とを組み合わせた複合型の流量計が多々提案されている。
【0005】熱線式フローセンサを用いる場合は、流体の流速を速くすることで感度が上がるため、熱線式フローセンサを配置する流路が細い方が好ましい。しかし大流量の流体が流れると細い流路では圧力損出が生じ易くなり好ましくない。
【0006】そこで、特開平8−240468号公報、特開平8−240469号公報、特開平9−26340号公報等に記載されているように、小流量域の測定のために熱線式フローセンサを設置する細い小流量用流路と、大流量域の測定のために圧力損出の発生しない太い大流量用流路とを設け、大流量用流路と小流量用流路とを選択的に遮断する二つの遮断弁を設け、これらの遮断弁の開閉動作により、流体を流す流路の切り替えをするようにした流量計が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、特開平8−240468号公報、特開平8−240469号公報、特開平9−26340号公報に記載された提案は、流路切り替えのために二つの遮断弁を必要とするため、コストが上昇し、また、遮断弁を設けるためのスペースが大きくなるため流量計の小型化が難しくなる。さらに、遮断弁を電池により駆動する場合には電池の消耗が早くなるため、電池の容量を大きくする必要がある。
【0008】また、熱線式フローセンサを用いる場合は、熱線の抵抗値変化、駆動回路のオフセットの変動などにより出力が経時的に変化するので、ゼロ点補正の必要がある。
【0009】ゼロ点を補正する方法としては、特願平4−208818号公報、特開平10−300548号公報等に記載されているように、フローセンサからの出力がある閾値以下の場合に流量ゼロと見做し、その値を新たなゼロ点とし、以前のゼロ点を補正する方法があるが、流量がゼロであっても何らかの理由によりフローセンサの出力が閾値を超えた場合には、判断を誤ってしまう。また、ガスを使う状況によっては、長期間に亘って流量がゼロにならないこともあり、前述のような提案では不充分である。
【0010】本発明の目的は、広い範囲での測定を可能にし、さらに圧力損失を少なくし、小型化及び低コスト化を図ることである。
【0011】本発明の目的は、上記の目的を満足し、さらに熱線式フローセンサを用いる場合にゼロ点補正の精度を高めることである。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、流体流入口と流体流出口との間を接続する大流量用流路と、上流側が前記流体流入口に接続され下流側が前記大流量用流路に合流された小流量用流路と、前記大流量用流路の前記小流量用流路との合流地点よりも下流側の位置に配置された大流量検出手段と、前記小流量用流路に配置された小流量検出手段とを備える流量計において、前記大流量用流路の前記小流量用流路との合流地点よりも上流側の流路を遮断する第一の位置と、前記大流量用流路と前記小流量用流路との何れも遮断しない第二の位置と、前記大流量用流路の前記小流量用流路との合流地点よりも下流側の流路を遮断する第三の位置との少なくとも三位置に選択的に移動可能な一つの遮断弁を備える。
【0013】したがって、遮断弁を第一の位置に移動させた状態では、小流量用流路が大流量用流路との合流地点より下流側の大流量用流路を介して流体流出口に接続され、小流量域の測定がなされる。遮断弁を第二の位置に移動させた状態では、大流量用流路と小流量用流路との何れも遮断されないため、大流量域の測定がなされる。遮断弁を第三の位置に移動させた状態では、大流量用流路の小流量用流路との合流地点よりも下流側の流路が遮断されるため、ガス洩れや地震発生等の非常事態に対処できる。この流路切り替えにより広い範囲での流量測定が可能となり、大流量域の測定に際し圧力損失を少なくできる。さらに、流路切り替えと非常事態での流路の遮断とを一つの遮断弁で行うことが可能である。
【0014】請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記大流量用流路の前記大流量検出手段の上流側にはこの大流量用流路を流れる流体の流れ方向で所定の間隔を開けて対向配置された上流側弁座及び下流側弁座を有する合流室が形成され、前記合流室には前記上流側弁座と前記下流側弁座との間に配置されて前記小流量用流路の下流側を合流させる合流孔が形成され、前記遮断弁は、前記合流孔を遮断することのない形状を有し、前記合流室の内部において前記上流側弁座と前記下流側弁座とを選択的に遮断するように直線方向に往復移動自在に設けられている。
【0015】したがって、遮断弁により上流側弁座を遮断した状態では、遮断弁は大流量用流路の小流量用流路との合流地点よりも上流側の流路を遮断する第一の位置に位置する。下流側弁座を遮断しない範囲で遮断弁を上流側弁座から下流側に移動させた状態では、遮断弁は大流量用流路と小流量用流路との何れも遮断しない第二の位置に位置する。遮断弁により下流側弁座を遮断した状態では、遮断弁は大流量用流路の小流量用流路との合流地点よりも下流側の流路を遮断する第三の位置に位置する。
【0016】請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記大流量検出手段としてフルイディック素子を用い、前記小流量検出手段として熱線式フローセンサを用いる。
【0017】したがって、大流量域の測定はフルイディック素子の出力を基になされ、小流量域の測定は小さな熱線式フローセンサの出力を基になされる。
【0018】請求項4記載の発明は、流体流入口と流体流出口との間を接続する大流量用流路と、上流側が前記流体流入口に接続され下流側が前記大流量用流路に合流された小流量用流路と、前記大流量用流路の前記小流量用流路との合流地点よりも下流側の位置に配置された大流量検出手段と、前記小流量用流路に配置された熱線式フローセンサとを備える流量計において、前記大流量用流路の前記小流量用流路との合流地点よりも上流側の流路を遮断する第一の位置と、前記大流量用流路の前記小流量用流路との合流地点よりも上流側の流路を開放し前記小流量用流路の前記大流量用流路との合流地点を遮断する第二の位置と、前記大流量用流路の前記小流量用流路との合流地点よりも下流側の流路を遮断する第三の位置との少なくとも三位置に選択的に移動可能な一つの遮断弁を備える。
【0019】したがって、遮断弁を第一の位置に移動させた状態では、大流量用流路の小流量用流路との合流地点よりも上流側の流路が遮断され、小流量域の測定がなされる。遮断弁を第二の位置に移動させた状態では、大流量用流路の小流量用流路との合流地点よりも上流側の流路が開放され、小流量用流路の大流量用流路との合流地点が遮断されるため、小流量用流路からの流体の流れを止めた状態で大流量域の測定が安定しておこなわれる。このときは小流量用流路の下流側が遮断され、熱線式フローセンサの周囲は流体が流れないため、その時点での熱線式フローセンサの実質ゼロの出力をもってゼロ点補正を正確に行うことが可能となる。遮断弁を第三の位置に移動させた状態では、大流量用流路の小流量用流路との合流地点よりも下流側の流路が遮断されるため、ガス洩れや地震発生等の非常事態に対処できる。この流路切り替えにより広い範囲での流量測定が可能となり、大流量域の測定に際し圧力損失を少なくできる。さらに、流路切り替えと非常事態での流路の遮断とを一つの遮断弁で行うことが可能である。
【0020】請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、前記大流量用流路の前記大流量検出手段の上流側にはこの大流量用流路を流れる流体の流れ方向で所定の間隔を開けて対向配置された上流側弁座及び下流側弁座を有する合流室が形成され、前記合流室には前記上流側弁座と前記下流側弁座との間に配置されて前記小流量用流路の下流側を合流させる合流孔が形成され、前記遮断弁は、前記合流室の内部において前記上流側弁座と前記下流側弁座とを選択的に遮断するように直線方向に往復移動自在に設けられ、その往復移動の途中で前記合流孔を遮断する遮断片を備える。
【0021】したがって、遮断弁により上流側弁座を遮断した状態では、遮断弁は大流量用流路の小流量用流路との合流地点よりも上流側の流路を遮断する第一の位置に位置する。下流側弁座を遮断しない範囲で遮断弁を上流側弁座から下流側に移動させた状態では、遮断弁は大流量用流路の小流量用流路との合流地点よりも上流側の流路を開放し、小流量用流路の大流量用流路との合流地点を遮断する第二の位置に位置する。遮断弁により下流側弁座を遮断した状態では、遮断弁は大流量用流路の小流量用流路との合流地点よりも下流側の流路を遮断する第三の位置に位置する。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明の第一の実施の形態を図1及び図2に基いて説明する。図1は流量計の内部の概略構造を示す水平断面図、図2は遮断弁の流路切り替え動作を示す一部の水平断面図である。
【0023】図1において、1は流量計である。この流量計1の本体2には、側面3に開口する流体流入口4及び流体流出口5が形成されている。また、本体2には、流体流入口4から流体流出口5に向けて流体を流す大流量用流路6が形成されている。この大流量用流路6は、上流側が流体流入口4に接続された流体導入部7を備え、下流側が流体流出口5に接続された流体流出部8を備え、コの字形の経路をもって流体を流すように形成されている。大流量用流路6の中間部には大流量検出手段としてのフルイディック素子9が設けられている。フルイディック素子9は別部材により形成して本体2に装着してもよいが、本実施の形態では本体2に一体に形成されている。
【0024】このフルイディック素子9は、流路断面積が絞られたノズル10と、その下流側で広がる流路拡大部11と、ノズル10の出口に対向する誘振子12と、その背面に対向するエンドブロック13とを有する。このフルイディック素子9とこのフルイディック素子9の振動を検出する図示しない圧力センサとによりフルイディック型流量計が構成される。
【0025】すなわち、フルイディック型流量計の主要な構成部品であるフルイディック素子9は、流体(この例では以下ガスと称する)がノズル10から下流側に向かって噴出すると、ガスは誘振子12の外側に沿って左右方向(図1では上下方向に相当)に振り分けられる。図1において、ガスが誘振子12の左側を流れる状態から説明すると、ノズル10から噴出するガスの大部分は流路拡大部11から流体流出口5に向けて流れるが、一部はエンドブロック13にぶつかり流路拡大部11の左側の側壁に沿って帰還ガスとなり、新たにノズル10からの噴出するガスの噴流に略直角方向からぶつかる。この帰還ガスのエネルギーにより、新たにノズル10から噴出するガスの噴流は今度は誘振子12の右側を流れ、一部はエンドブロック13にぶつかり流路拡大部11の右側の側壁に沿って帰還ガスとなり、新たにノズル10からの噴出するガスの噴流に略直角方向からぶつかる。この帰還ガスのエネルギーにより、新たにノズル10から噴出するガスの噴流は今度は誘振子12の左側に流れる。ノズル10から噴出する噴流の流れの振り分けはこのようなコアンダー効果によって繰り返される。このようにして生じた流体振動(交番圧力波)の周波数を前述した圧力センサにより検出し、その検出した出力を電気信号に変換することにより大流量域のガスの流量を測定しようとするものである。
【0026】そして、大流量用流路6のフルイディック素子9の上流側と流体導入部7との間には、直方体形状で流路断面積が拡大された合流室14が形成されている。この合流室14には、ノズル10に向かって大流量用流路6を流れるガスの流れ方向で所定の間隔を開けて対向配置された壁面上に配置された上流側弁座15及び下流側弁座16が形成され、さらに上流側弁座15と下流側弁座16との間の側壁には小流量用流路17の下流側を合流させる合流孔18が形成されている。小流量用流路17は大流量用流路6に比して流路断面積が小さく、その上流側は流体流入口4の近傍において流体導入部7に接続されている。
【0027】小流量用流路17の底面には、小流量検出手段としての熱線式フローセンサ(以下、実施の形態ではフローセンサと称する)19が配設されている。このフローセンサ19は、基板に熱線(金属薄膜)を設けたマイクロブリッジ型フローセンサ、ボビンに熱線を巻いたボビン型フローセンサ等の公知のもので、ガスの流量に応じた電気信号を出力するので、その出力を基にガスの流量が測定される。
【0028】そして、合流室14には遮断弁20が設けられ、この遮断弁20に一端が連結されたシャフト21は本体2の外面に設けられた遮断弁駆動部22に連結されている。この遮断弁駆動部22は、図示しないが正逆回転可能なモータを主要な構成とし、そのモータを所望の方向に回転させることにより、シャフト21を遮断弁20とともに図1において左方又は右方に移動させる。この遮断弁駆動部22は、前述したように、フルイディック素子9やフローセンサ19の出力により求められる流量測定値を、予め定められた閾値と比較することにより大流量域の測定か、小流量域の測定かを判断し、さらに、ガス洩れや地震等の非常時の検出信号の有無を判断することにより、モータの回転方向及びその回転駆動パルスが制御されるように構成されている。
【0029】すなわち、遮断弁駆動部22は、小流量域の測定の場合は、遮断弁20を図2(a)に示すように第一の位置に移動させ、大流量域の測定の場合は、遮断弁20を図2(b)に示すように第二の位置に移動させ、非常時の検出信号を受けた場合は、遮断弁20を図2R>2(c)に示すように第三の位置に移動させるように構成されている。なお、遮断弁20はどの位置に位置しても合流孔18を遮断しない大きさと形状に定められている。
【0030】このような構成において、小流量域の測定の場合は、遮断弁20を図2(a)に示すように第一の位置に移動させる。この第一の位置では、遮断弁20が上流側弁座15のみを遮断する。すなわち、大流量用流路6の小流量用流路17との合流地点よりも上流側の流路を遮断する。これにより、流体流入口4から導入されたガスは小流量用流路17を流れ、合流室14、ノズル10、流路拡大部11、流体流出部8を経て流体流出口5から流出され、この過程でフローセンサ19の出力を基に流量が求められる。
【0031】大流量域の測定の場合は、遮断弁20を図2R>2(b)に示すように第二の位置に移動させる。この第二の位置では、遮断弁20は上流側弁座15から離れる。すなわち、遮断弁20は大流量用流路6と小流量用流路17との何れも遮断しない状態を維持する。これにより、流体流入口4から導入されたガスは小流量用流路17にも流れるが、大部分のガスが、流体導入部7、合流室14、ノズル10、流路拡大部11、流体流出部8を経て流体流出口5から流出され、この過程でフルイディック素子9の出力を基に流量が求められる。
【0032】非常時の検出信号を受けた場合は、遮断弁20を図2(c)に示すように第三の位置に移動させる。この第三の位置では、遮断弁20は下流側弁座16を遮断する。すなわち、遮断弁20は大流量用流路6の小流量用流路17との合流地点よりも下流側の流路を遮断する。これにより、ガスの流れを完全に止めることができる。
【0033】以上のように、遮断弁20を所望の位置に移動させて流路切り替えを行うことにより、小流量域から大流量域まで広い範囲での流量測定を行うことができる。また、大流量域の測定の場合には、太い大流量用流路6にガスを流すため圧力損失を少なくできる。さらに、流路切り替えと非常事態での流路の遮断とを一つの遮断弁20で行うことができるため、コストダウンを図ることができ、小さなスペースに遮断弁20を取り付けることができるため小型化を図ることができる。また、小流量検出手段としてフローセンサ19を用いることによって、さらなる小型化を図ることができる。遮断弁20の動作を制御する遮断弁駆動部22を電池で駆動する場合には、一つの遮断弁20を駆動するので電池の消耗も節減できる。
【0034】さらに、流路切り替えのために、大流量用流路6のフルイディック素子9の上流側に合流室14を形成し、この合流室14に大流量用流路6を流れるガスの流れ方向で所定の間隔を開けて対向配置された上流側弁座15及び下流側弁座16を形成し、遮断弁20を直線方向に移動させることにより、上流側弁座15又は下流側弁座16を選択的に遮断するように構成したので、遮断弁20の駆動構造を簡易化することができる。
【0035】次に、本発明の第二の実施の形態を図3及び図4に基いて説明する。前記実施の形態と同一部分は同一符号を用い説明を省略する。図3は流量計の内部の概略構造を示す水平断面図、図4は遮断弁の流路切り替え動作を示す一部の水平断面図である。
【0036】流路切り替えのための遮断弁20は、図4(a)に示す第一の位置と、図4(b)に示す第二の位置と、図4(c)に示す第三の位置との三位置を選択的に移動可能である。遮断弁20を移動させる遮断弁駆動部22の構成及び制御動作は前記実施の形態と同様である。
【0037】また、本実施の形態における遮断弁20の第一の位置と第三の位置とにおける流路切り替え動作は前記実施の形態と同様である。第二の位置に移動した状態では、上流側弁座15を開放することにより大流量用流路6の小流量用流路17との合流地点よりも上流側の流路を開放する点は前記実施の形態と同様であるが、小流量用流路17の大流量用流路6との合流地点、すなわち合流孔18を遮断する点のみが異なる。
【0038】そのために、遮断弁20には、第二の位置に移動したときに合流孔18を遮断する遮断片20aを備える。この遮断片20aと上流側弁座15との干渉を避けるために、上流側弁座15には遮断片20aに対応する凹部15aが形成されている。
【0039】このような構成において、小流量域の測定の場合は、遮断弁20を図4(a)に示すように第一の位置に移動させる。このとき、遮断片20aが凹部15aに嵌まり込むため、遮断弁20は上流側弁座15を密閉状態で遮断し、大流量用流路6の小流量用流路17との合流地点よりも上流側の流路を遮断する。これにより、流体流入口4から導入されたガスは小流量用流路17を流れ、合流室14、ノズル10、流路拡大部11、流体流出部8を経て流体流出口5から流出され、この過程でフローセンサ19の出力を基に流量が求められる。
【0040】大流量域の測定の場合は、遮断弁20を図4R>4(b)に示すように第二の位置に移動させる。この第二の位置では、大流量用流路6の小流量用流路17との合流地点よりも上流側の流路、すなわち上流側弁座15が開放され、小流量用流路17の大流量用流路6との合流地点、すなわち合流孔18が遮断片20aにより遮断される。これにより、流体流入口4から導入されたガスが、流体導入部7、合流室14、ノズル10、流路拡大部11、流体流出部8を経て流体流出口5から流出され、この過程でフルイディック素子9の出力を基に流量が求められる。
【0041】この大流量域の測定に際しては、合流孔18が遮断片20aにより遮断されるため、小流量用流路17からのガスの流れを止めた状態で大流量域の測定が安定して行われる。このときは小流量用流路17の下流側が遮断され、フローセンサ19の周囲はガスが流れないため、その時点でのフローセンサ19の実質ゼロの出力をもってゼロ点補正を正確に行うことができる。
【0042】非常時の検出信号を受けた場合は、遮断弁20を図4(c)に示すように第三の位置に移動させる。この第三の位置では、遮断弁20は下流側弁座16を遮断する。すなわち、遮断弁20は大流量用流路6の小流量用流路17との合流地点よりも下流側の流路を遮断する。これにより、ガスの流れを完全に止めることができる。
【0043】本実施の形態では、遮断弁20を第二の位置に移動させたときに合流孔18を閉塞するが、流路切り替えのために、大流量用流路6のフルイディック素子9の上流側に合流室14を形成し、この合流室14に大流量用流路6を流れるガスの流れ方向で所定の間隔を開けて対向配置された上流側弁座15及び下流側弁座16を形成し、遮断弁20を直線方向に移動させる構造については前記実施の形態と同様であるので、遮断弁20の駆動構造を簡易化することができる。
【0044】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、大流量用流路の小流量用流路との合流地点よりも上流側の流路を遮断する第一の位置と、大流量用流路と小流量用流路との何れも遮断しない第二の位置と、大流量用流路の小流量用流路との合流地点よりも下流側の流路を遮断する第三の位置との少なくとも三位置に選択的に移動可能な一つの遮断弁を備えるので、遮断弁を第一又は第二の位置に移動させて流路切り替えをすることにより、広い範囲での流量測定を行うことができ、大流量域の測定に際し圧力損失を少なくでき、さらに、遮断弁を第三の位置に移動させることにより、流体の流れを止めて非常事態に対処することができ、しかも、流路切り替えと非常時における流路の遮断とを一つの遮断弁で行うことができるため、コストダウン及び小型化を図ることができ、さらに、遮断弁を電池で駆動する場合に電池の消耗を節減することができる。
【0045】請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明において、大流量用流路の大流量検出手段の上流側にはこの大流量用流路を流れる流体の流れ方向で所定の間隔を開けて対向配置された上流側弁座及び下流側弁座を有する合流室が形成され、この合流室には上流側弁座と下流側弁座との間に配置されて小流量用流路の下流側を合流させる合流孔が形成され、合流室内で遮断弁を直線方向に移動させるように構成したので、請求項1記載の発明による効果に加え、遮断弁の駆動構造を簡易化することができる。
【0046】請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明において、大流量検出手段としてフルイディック素子を用い、小流量検出手段として熱線式フローセンサを用いるように構成したので、請求項1及び2記載の発明の効果を得ることができる上に、小流量用流路内での小流量検出手段の取り付けスペースを小さくし、さらなる小型化に寄与することができる。
【0047】請求項4記載の発明によれば、大流量用流路の小流量用流路との合流地点よりも上流側の流路を遮断する第一の位置と、大流量用流路の小流量用流路との合流地点よりも上流側の流路を開放し小流量用流路の大流量用流路との合流地点を遮断する第二の位置と、大流量用流路の小流量用流路との合流地点よりも下流側の流路を遮断する第三の位置との少なくとも三位置に選択的に移動可能な一つの遮断弁を備えるので、遮断弁を第一又は第二の位置に移動させと流路切り替えをすることにより、広い範囲での流量測定を行うことができ、大流量域の測定に際し圧力損失を少なくでき、特に、遮断弁を第二の位置に移動させた状態では、小流量用流路の大流量用流路との合流地点が遮断されるため、小流量用流路からの流体の流れを止めた状態で大流量域の測定を安定状態で行うことができ、さらに、この大流量域の測定の際には小流量用流路の下流側が遮断され、熱線式フローセンサの周囲は流体が流れないため、その時点での熱線式フローセンサの実質ゼロの出力をもってゼロ点補正を正確に行うことでき、さらに、遮断弁を第三の位置に移動させることにより、流体の流れを止めて非常事態に対処することができ、しかも、流路切り替えと非常時における流路の遮断とを一つの遮断弁で行うことができるため、コストダウン及び小型化を図ることができ、さらに、遮断弁を電池で駆動する場合に電池の消耗を節減することができる。
【0048】請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明において、大流量用流路の大流量検出手段の上流側にはこの大流量用流路を流れる流体の流れ方向で所定の間隔を開けて対向配置された上流側弁座及び下流側弁座を有する合流室が形成され、この合流室には上流側弁座と下流側弁座との間に配置されて小流量用流路の下流側を合流させる合流孔が形成され、大流量域の測定の際に小流量用流路の下流側の合流孔を遮断する遮断片を備えた遮断弁を合流室内で直線方向に移動させるように構成したので、請求項4記載の発明による効果に加え、遮断弁の駆動構造を簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施の形態における流量計の内部の概略構造を示す水平断面図である。
【図2】遮断弁の流路切り替え動作を示す一部の水平断面図である。
【図3】本発明の第二の実施の形態における流量計の内部の概略構造を示す水平断面図である。
【図4】遮断弁の流路切り替え動作を示す一部の水平断面図である。
【符号の説明】
4 流体流入口
5 流体流出口
6 大流量用流路
9 大流量検出手段、フルイディック素子
14 合流室
15 上流側弁座
16 下流側弁座
17 小流量用流路
18 合流孔
19 小流量検出手段、熱線式フローセンサ
20 遮断弁
20 遮断片

【特許請求の範囲】
【請求項1】 流体流入口と流体流出口との間を接続する大流量用流路と、上流側が前記流体流入口に接続され下流側が前記大流量用流路に合流された小流量用流路と、前記大流量用流路の前記小流量用流路との合流地点よりも下流側の位置に配置された大流量検出手段と、前記小流量用流路に配置された小流量検出手段とを備える流量計において、前記大流量用流路の前記小流量用流路との合流地点よりも上流側の流路を遮断する第一の位置と、前記大流量用流路と前記小流量用流路との何れも遮断しない第二の位置と、前記大流量用流路の前記小流量用流路との合流地点よりも下流側の流路を遮断する第三の位置との少なくとも三位置に選択的に移動可能な一つの遮断弁を備えることを特徴とする流量計。
【請求項2】 前記大流量用流路の前記大流量検出手段の上流側にはこの大流量用流路を流れる流体の流れ方向で所定の間隔を開けて対向配置された上流側弁座及び下流側弁座を有する合流室が形成され、前記合流室には前記上流側弁座と前記下流側弁座との間に配置されて前記小流量用流路の下流側を合流させる合流孔が形成され、前記遮断弁は、前記合流孔を遮断することのない形状を有し、前記合流室の内部において前記上流側弁座と前記下流側弁座とを選択的に遮断するように直線方向に往復移動自在に設けられていることを特徴とする請求項1記載の流量計。
【請求項3】 前記大流量検出手段としてフルイディック素子を用い、前記小流量検出手段として熱線式フローセンサを用いることを特徴とする請求項1又は2記載の流量計。
【請求項4】 流体流入口と流体流出口との間を接続する大流量用流路と、上流側が前記流体流入口に接続され下流側が前記大流量用流路に合流された小流量用流路と、前記大流量用流路の前記小流量用流路との合流地点よりも下流側の位置に配置された大流量検出手段と、前記小流量用流路に配置された熱線式フローセンサとを備える流量計において、前記大流量用流路の前記小流量用流路との合流地点よりも上流側の流路を遮断する第一の位置と、前記大流量用流路の前記小流量用流路との合流地点よりも上流側の流路を開放し前記小流量用流路の前記大流量用流路との合流地点を遮断する第二の位置と、前記大流量用流路の前記小流量用流路との合流地点よりも下流側の流路を遮断する第三の位置との少なくとも三位置に選択的に移動可能な一つの遮断弁を備えることを特徴とする流量計。
【請求項5】 前記大流量用流路の前記大流量検出手段の上流側にはこの大流量用流路を流れる流体の流れ方向で所定の間隔を開けて対向配置された上流側弁座及び下流側弁座を有する合流室が形成され、前記合流室には前記上流側弁座と前記下流側弁座との間に配置されて前記小流量用流路の下流側を合流させる合流孔が形成され、前記遮断弁は、前記合流室の内部において前記上流側弁座と前記下流側弁座とを選択的に遮断するように直線方向に往復移動自在に設けられ、その往復移動の途中で前記合流孔を遮断する遮断片を備えることを特徴とする請求項4記載の流量計。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2001−141543(P2001−141543A)
【公開日】平成13年5月25日(2001.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−320865
【出願日】平成11年11月11日(1999.11.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【出願人】(000006932)リコーエレメックス株式会社 (708)
【Fターム(参考)】