説明

浴室ドア

【課題】浴室内の空気流によって容易に自然開放することがない面材保持構造を有した浴室ドアを提供する。
【解決手段】面材保持部材2は、脱衣室側縦壁部2Aと浴室側縦壁部2Bとに開口2a、2bが形成されており、これらの開口2a、2bを通じて脱衣室A側から浴室B側へ空気を流通させるとともに、この空気の流通路Cに、上記とは逆の空気の流通を防止するための逆止弁2c1、2c2を設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室ユニットルームの出入り口に設置する浴室ドアに関し、特に2枚折りドアの面材保持部分における浴室外部との空気流通に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室ユニットルームのドアとして2枚折りドアが知られている。この種の折ドアは、ドア枠に配設されたレールに対してドア本体がスライドすることによって、ドア本体が中央のヒンジ部を中心に折り畳まれ、または展開されることにより、開、閉する構造となっている。
【0003】
このような2枚折りドアは、開閉操作する際にスイングドアに比べて浴室側への突出長さが略半分になるため、開放した状態でもドアが浴室内でじゃまにならないという利点があることに加え、本体枠や面材が軽量素材で製され、かつ、ラッチが軽微な力による押し操作(または引き操作)により解放される構造となっているため、高齢者や子供でも簡単に開閉できるという利点もある。
【0004】
次の特許文献には、浴室ユニットルームの2枚折りドアの構造例が開示されている。
【特許文献1】特開平9−324584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら近年では、上記のように2枚折りドアのラッチ力が弱いことにより、浴室内に設置した換気乾燥機の換気運転による空気流や室内外の気圧差により自然にドアが開くという現象が発生している。
【0006】
このような問題に対して、ラッチ力を強力にする、あるいはドア下部に設けたガラリ面積を大きくして外部との空気流通をよくする、などの方法が考えられているが、ラッチ力を強力にすると開閉に力を要し、特に高齢者にとって操作しづらくなり、またガラリ面積を大きくすると防水効果が低下するという問題がある。
【0007】
一方、ドアの面材保持部やその近傍に隙間を設けて、外部と空気を流通させる方法も考えられる。特に、従来の2枚折りドアでは、ドアの面材を保持、固定するために、框と面材との間にグレーチングチャンネルと呼ばれる係止部材を介在させたものもあり、この係止部材あるいはその周辺に隙間を設ける方法も考えられるが、従来使用されていたU字状の係止部材、面材片側保持用の係止部材は、そもそも気密性、水密性を高める目的もあり、そのような隙間を設けることが可能な構造とはなっていなかった。
【0008】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、浴室内の空気流によって容易に自然開放することがない面材保持構造を有した浴室ドアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の浴室ドアは、脱衣室側縦壁部と浴室側縦壁部との間に中空を形成し、かつ該両側縦壁部により面材を保持するようにした面材保持部材を、框に装着させた構造の浴室ドアであって、面材保持部材は、脱衣室側縦壁部と浴室側縦壁部とに開口が形成されており、これらの開口を通じて脱衣室側から浴室側へ空気を流通させるとともに、この空気の流通路に、上記とは逆の空気の流通を防止するための逆止弁を設けていることを特徴とする。
【0010】
請求項2では、面材保持部材には、その中空部から外部に通じる水抜き孔をさらに形成していることを特徴とする。
【0011】
請求項3では、逆止弁は、浴室側縦壁部の開口に設けられ、常時は該開口を閉止し、脱衣室側から浴室側への空気流の風圧が作用した際に浴室側に開することが可能な蓋体からなることを特徴とする。
【0012】
請求項4では、逆止弁が浴室面側の開口部の一辺部に貼着された弾性シート材からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1〜4に記載の浴室ドアによれば、框に装着させて面材を保持するための面材保持部材は、その脱衣室側縦壁部と浴室側縦壁部とに形成された開口を通じて脱衣室側から浴室側へ空気を流通させる空気流通路を備え、かつ、その流通路には上記とは逆の空気の流通を防止するための逆止弁を設けているため、浴室外部の空気を有効に取り込めるとともに、空気や水分の流出を防止することができる。
【0014】
したがって、換気乾燥機を運転した場合にも、外気が入り込むため浴室内と脱衣室との大気圧の差が小さくなり、空気流や風圧によってドアが開いてしまうことがない。
【0015】
さらに、換気乾燥機を作動させない状態では、逆止弁構造により、水の面材保持部材内への流入を阻止でき、また空気が外部に流れ出ないため乾燥、暖房効果が低下することもない。
【0016】
特に、この面材保持部材を、通常ガラリを設置しない上框に使用すれば、天井部に設置した換気乾燥機に対して、上記効果を有効に発揮させることができる。
【0017】
請求項2では、面材保持部材に水抜き孔を形成しているので、面材保持部材の中空部に入り込んだ水分を効果的に排出することができる。
【0018】
請求項3では、逆止弁が浴室側縦壁部に設けられた開口の蓋体からなり、この蓋体は常時は閉止しているため、中空部への水の進入阻止に有効であり、また取り付けがきわめて簡単である。
【0019】
請求項4では、逆止弁が浴室面側の開口部の一辺部に貼着された弾性シート材からなるため、その弾性変形と復元弾性を利用して簡易に逆止弁を構成することができ、また取り付けがさらに簡便に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態を、図面とともに説明する。
【実施例1】
【0021】
図3は、本発明の浴室ドアの浴室側から見た正面図である。
【0022】
浴室ユニットルーム(不図示)のドア開口部(不図示)には、ドア枠20と2枚折りドア本体10とが配設される。ドア枠20は、ドア上下枠21、21とドア左右枠22、22とからなり、建築床(不図示)、建築壁(不図示)などと連結固定される。
【0023】
一方、2枚折りドア本体10であるドア枠部は、アルミ、アルミ合金、または樹脂製の上框1、下框6、縦框4、中桟5で構成されている。そして、これらの框1、4、6で囲まれた面域には、後述する面材保持部材2あるいはその他の面材保持部材を介して、半透明樹脂製の面材3が支持されて固定される。また、下框6の下方には、吸気あるいは排気のためのガラリ8が取り付けられている。なお、9はドア開放操作用の引き手である。
【0024】
また、中央の縦框4の内側にはヒンジ部7を設けており、ドア本体10の中央から左右に折曲自在の構造となっている。
【0025】
図1は、本発明の浴室ドアの要部縦断面図であり、(a)は図3のA−A線の断面図、(b)は(a)のX部の拡大図である。また図2は、面材保持部材2の外観を示す斜視図である。
【0026】
ドア上枠21には長手方向に沿ってレール体21aを形成しており、2枚折りドア本体10の左右端の上下に形成された戸車部10aが、上記レール体21aに沿ってスライドできるような構造となっている(下部のレール構造図は省略する)。なお、左右端のいずれか一方は、ドア左、右枠22、22のいずれかもしくはその近傍にヒンジ(不図示)結合され、他方端がスライドして開放できるように設置される。
【0027】
また、2枚折りドア本体10の上部中央には、ドアが閉まったときに留止するための、バネ(不図示)を含んで構成されたラッチ部10bを形成し、ドア本体10を閉めたときにこのラッチ部10bがレール体21aに係止され、ドア本体10が開放操作されるときには係止が解放されるように構成されている。なお、このラッチ構造は永久磁石による磁着構造であってもよい。
【0028】
すなわち、浴室B側で浴室B側へ引き手9を引くか、脱衣室A側からヒンジ部7近傍を押さえることにより、ラッチが解放され、戸車部10aがレール体21aを移動し、ヒンジ部7を浴室内へ突出させながら、ドア本体10が折り畳まれて、ドア開口が開放される。
【0029】
上述したように、面材3は、框1、4、6で囲まれた面域に、面材保持部材2等を介して保持、固定されるが、上框1においては図例の面材保持部材2を介して固定される。
【0030】
上框1は、その下端には、面材保持部材2を挿入するための開口部1aが形成され、脱衣室側縦壁部1A、浴室側縦壁部1Bから下端開口部1aへ折曲した、面材保持部材2を係止するための内向鍔状の係止部1b、1bを形成している。
【0031】
一方、面材保持部材2は、アルミ、アルミ合金、樹脂等により製された中空材であって、長手方向に沿って、底部を構成する基部2hには面材挿入口2e、内壁下部には面材3の厚みよりやや小さな間隔に対向配置した一対の弾性変形可能な面材抑止部2g、2gが、両側縦壁部の上部には長手方向に沿った外向鍔状の本体係止部2f、2fが形成され、該係止部2f、2fの外縁間の幅は、上記係止部1b、1bの内縁間の幅よりやや大とされている。
【0032】
面材保持部材2は、上框1の開口部1aに装着する際、面材保持部材2の本体係止部2f、2fが上框1の係止部1b、1bに押圧されて弾性変形しながら挿入され、本体係止部2f、2fが通過して上框1の内部に入り込むと、係止部1b、1bと本体係止部2f、2fとが相互に係合され、面材保持部材2が装着、保持される。
【0033】
また、面材保持部材2に対して面材3を装着する際は、面材3を面材挿入口2eより挿入し、さらに面材抑止部2g、2gを弾性変形させながら中空部に挿入する。そして、面材3は、所定位置まで挿入されたときには、面材抑止部2g、2gの弾性力により面材の両側面が押圧されて、ガタつくことなく保持される。
【0034】
図1に示すように、この面材保持部材2には、その脱衣室側縦壁部2Aと浴室側縦壁部2Bとに、開口2a、2bが設けられている。この開口2a、2bは、図2に示すように、面材保持部材2の長手方向に沿って複数設けられ、両開口2a、2bの位置関係は、脱衣室A側への水止めのため、開口2a、2bどうしを対面させず、つまり図示するように、上下、左右にずらして開設することが望ましい。なお、図2は浴室B側から見た斜視図であるため、脱衣室側縦壁部2Aに設けた開口2aは1つのみが図示されている。さらに上下関係では、浴室B側の開口2bの方が脱衣室A側の開口2aより低い位置にあるほうが望ましい。
【0035】
また、該開口2a、2bによって形成された空気流通路Cの適所には、浴室B側から脱衣室A側への空気の流通を防止した逆止弁2c1、2c2を設けている。すなわち、浴室側縦壁部2Bの開口2bに設けた逆止弁2c1は、開口2bの下片側に貼着され、空気流通がないときは開口2bを閉塞する蓋体として構成される(図2も参照)一方、中空部に設けた逆止弁2c2は、面材保持部材2の浴室側縦壁部2Bの内壁に貼着され、空気流通路Cの図1中の矢印方向に空気が流れるときに開き、かつその逆流を防止するため、常時は内壁と面材3との間に形成される空間を塞ぐように取り付けられている。なお、逆止弁2c1、2c2は、いずれか一方のみを設置するようにしてもよい。また、設置箇所も上記の箇所には限定されない。
【0036】
また、逆止弁2c1、2c2の素材は、軽量のゴム等の弾性シート材とすることが望ましいが、これには限定されない。弾性シート材にすれば、その弾性変形と復元弾性を利用して簡易に逆止弁を構成することができる。
【0037】
以上のような構成によれば、浴室B内で換気乾燥機(不図示)を運転するなどして、空気流が発生した場合など室内外で気圧差が生じたときには、脱衣室A側から浴室B側への空気流による風圧が作用し、そのため、中空部の逆止弁2c2が開き、浴室側縦壁部2bの開口2bに設けた逆止弁2c1の上辺部が浴室B側に倒れて開口2bは開放され、開口2aから開口2bまでの空気流通路Cに、脱衣室A側から浴室B側へ空気が流れる。
【0038】
逆に、換気乾燥機が作動せず上記空気流が生じない場合には、開口2bに取り付けた逆止弁2c1によって開口2bは閉止され、空気流通路Cは塞がれた状態を維持する。万一、開口2bが開いて空気が流入した場合でも、逆止弁2c2によって空気流通路Cは閉塞される。
【0039】
すなわち、このような逆止弁付きの空気流通路Cによって、脱衣室A側から浴室B側への空気の流通のみが許され、その逆の空気の流通は防止される。その結果、浴室B内で換気乾燥機を運転しても、風圧によって2枚折りドア10が自然に開放されることを防止できる。さらに、逆止弁2c1、2c2により、水の面材保持部材2内への流入を阻止でき、また空気が脱衣室A側に流れ出ないため乾燥、暖房効果が低下することがない。
【0040】
また、面材保持部材2には、浴室B側の基部2hの上部直近に中空部から浴室B側に通じる複数の水抜き孔2d、2d・・・が適所に形成されている(図2も参照)。
【0041】
このように水抜き孔2dを設けているため、万一、開口2a、2bより水が進入しても、浴室B側に排出させることができる。
【0042】
上記の実施例では、上框1に配設する面材保持部材2の例を示したが、下框6、縦框4に装着される面材保持部材に上記のような逆止弁付き空気流通路を設けてもよい。たとえば、この面材保持部材2をドア下部にガラリの代用として設けてもよい。
【0043】
なお、換気乾燥機は浴室B内の天井に設置されることが多く、ドア上部に風圧が作用することが多いため、上框1用の面材保持部材2に上記のような逆止弁付き空気流通路を設けるとより効果的である。
【0044】
また、上記の実施例は2枚折りドアのものを示しているが、上記の面材保持部材を他の方式の浴室ドアに採用し、ガラリに代えて、あるいは付加して、通常換気のために使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の浴室ドアの要部縦断面図であり、(a)は図3のA−A線の断面図、(b)は(a)のX部の拡大図である。
【図2】面材保持部材の斜視図である。
【図3】本発明の浴室ドアの浴室側から見た正面図である。
【符号の説明】
【0046】
10 浴室ドア
1 上框
2 面材保持部材
2A 脱衣室側縦壁部
2B 浴室側縦壁部
2a 脱衣室側縦壁部の開口
2b 浴室側縦壁部の開口
2c1、2c2 逆止弁
2d 水抜き孔
C 空気流通路
3 面材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱衣室側縦壁部と浴室側縦壁部との間に中空を形成し、かつ該両側縦壁部により面材を保持するようにした面材保持部材を、框に装着させた構造の浴室ドアであって、
上記面材保持部材は、上記脱衣室側縦壁部と上記浴室側縦壁部とに開口が形成されており、これらの開口を通じて脱衣室側から浴室側へ空気を流通させるとともに、この空気の流通路に、上記とは逆の空気の流通を防止するための逆止弁を設けていることを特徴とする浴室ドア。
【請求項2】
請求項1において、
上記面材保持部材には、その中空部から外部に通じる水抜き孔をさらに形成していることを特徴とする浴室ドア。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記逆止弁は、上記浴室側縦壁部の開口に設けられ、常時は該開口を閉止し、脱衣室側から浴室側への空気流の風圧が作用した際に浴室側に開することが可能な蓋体からなることを特徴とする浴室ドア。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかにおいて、
上記逆止弁が、浴室面側の開口部の一辺部に貼着された弾性シート材からなることを特徴とする浴室ドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−274537(P2006−274537A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90505(P2005−90505)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】