説明

浴室建具の支持構造および浴室出入り口用建具

【課題】利便性を向上させかつ十分な止水性を確保することができる浴室建具の支持構造および浴室出入り口用建具を提供すること。
【解決手段】受け材10が主受け材12と副受け材13とを有し、主受け材12に設けた第2螺合部材15および凹溝部127と、副受け材13に設けた傾斜当接面135および突出片部134とによって下降手段が構成され、この下降手段によって主受け材12を下降させて止水片部123を防水パン9の上面9Aに押圧した状態において、主受け材12の固定片部126を垂下リブ9Bに固定することで、止水片部123および防水パン9の上面9Aとパッキン128とを密着させることができる。従って、受け材10と防水パン9との間からの漏水を防止して止水性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室建具の支持構造および浴室出入り口用建具に関し、詳しくは、浴室の床面を構成する防水パンに固定した受け材を介して建具を支持する浴室建具の支持構造、およびこの支持構造で支持された浴室出入り口用建具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防水パンを有したユニットバス等の浴室に設ける出入り口用の浴室建具において、防水パンの側面部(正面リブ、補強リブ)に受け材(支持枠、支持部材)を固定しておき、この受け材によって建具枠の下枠を支持する支持構造が一般的に利用されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
このような支持構造では、特許文献1に記載されたように、防水パン周囲の立上部のうち、浴室建具が設けられる部分の立上部を切り欠いておき、切り欠いた立上部下方の防水パンの側面部に受け材がビス止め固定されるようになっている。
【0003】
そして、特許文献1に記載された支持構造では、受け材と防水パンとの間や受け材と下枠との間、防水パンと下枠との間に、それぞれ止水部材(シール部材)が介挿されるように受け材の上側に下枠を載置して建具枠を建て込み、固定することで、折れ戸等の建具が受け材を介して防水パンに支持されるようになっている。
一方、特許文献2に記載された支持構造は、防水パンの側面部にビス止め固定した受け材の上側、および防水パンの上面に、止水部材を介して下枠を載置するとともに、この下枠を上面から貫通するビスを受け材に螺合して下枠を受け材に固定する構成となっている。そして、下枠の上面にカバー部材を着脱自在に取り付け、このカバー部材で下枠を貫通したビスの頭部を覆うとともに、カバー部材に傾斜面を設けることで、脱衣室側の床面と浴室床面(防水パン上面)との段差を緩やかにするように構成されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−221973号公報
【特許文献2】特許第3364465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載されたような従来の支持構造では、下枠をビスが貫通するため、このビス部分からの漏水の可能性があるとともに、ビスの頭部を覆うカバー部材が必要になってしまうことから、防水パン上面との段差が大きくなってしまい、カバー部材に傾斜面を設けたとしても、出入りの際の利便性が十分に向上できないという問題がある。さらに、防水パンの上面位置に対する受け材の上下位置が止水性を確保する上で重要になるが、従来の支持構造では、受け材を防水パンの側面部に固定する際の上下の位置決め精度が十分確保できず、止水性の点で問題である。すなわち、特許文献2に記載された支持構造では、防水パンの上面および受け材に止水部材を介して下枠を載置する構成であるが、受け材が上方にずれて固定された場合には、防水パンの上面と下枠との間隔が大きくなって止水部材が十分に密着しなくなってしまい、下枠の下側に水が浸入しやすくなる。
【0006】
本発明の目的は、利便性を向上させかつ十分な止水性を確保することができる浴室建具の支持構造および浴室出入り口用建具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の浴室建具の支持構造は、浴室の床面を構成する防水パンに固定した受け材を介して建具を支持する浴室建具の支持構造であって、前記受け材は、前記建具を支持する支持片部と、この支持片部に連続しかつ前記防水パンの上面に止水材を介して密接される止水片部と、前記支持片部および止水片部よりも下方に延びる固定片部とを有して形成されるとともに、この受け材には、前記防水パンに対して所定高さ位置から当該受け材を下降させる下降手段が設けられ、前記下降手段によって前記受け材を下降させて前記止水片部を前記防水パンの上面に押圧した状態において、前記固定片部が前記防水パンの側面部に固定されることを特徴とする。
【0008】
ここで、浴室建具としては、片引き戸や、折れ戸、二枚あるいは三枚建ての引き戸(連動引き戸)、開き戸など任意の開閉形式のものが採用可能である。また、受け材としては、浴室建具の下枠と別体で構成され、この下枠を支持片部で支持する構成でもよく、また、受け材が下枠と一体に構成され、戸(障子)を支持または案内するレール等が受け材の支持片部に形成された構成でもよい。
以上の本発明によれば、受け材に下降手段を設け、この下降手段によって受け材を下降させて止水片部を防水パンの上面に押圧した状態において、受け材の固定片部を防水パンの側面部に固定することで、受け材の止水片部と防水パンの上面とをそれぞれ止水材に密着させることができ、受け材と防水パンの間からの漏水を防止して止水性を確保することができる。そして、受け材と防水パンとの間からの漏水が防止されるとともに、受け材の支持片部と止水片部とが連続形成されているので、防水パンの下方や脱衣室の床材下方への水の浸入が確実に防止でき、止水性能を格段に向上させることができる。
【0009】
また、下降手段による受け材の下降距離を適宜設定しておくことで、下降開始時においては受け材の上下位置を厳密に調節しなくても、適宜な位置から受け材の下降を開始させ、下降途中において止水片部が防水パンの上面に押圧されたことを確認してから、固定片部を防水パンの側面部に固定すればよく、受け材を所定の上下位置に固定して止水性を確保することができるとともに、位置決めに要する手間を省略して受け材の固定作業の効率化および迅速化を図ることができる。
さらに、受け材の固定片部を防水パンの側面部に固定することで、受け材を上方から貫通して固定するビスが不要になり、ビスによって止水性が低下することがない。また、ビスの頭部を覆うカバー部材等も不要になって、防水パン上面から上方へ突出する段差を最小限(例えば、止水片部と止水材との厚さ寸法を合わせた程度の寸法)にすることができ、出入りの際の利便性を格段に向上させることができる。
【0010】
この際、本発明の浴室建具の支持構造では、前記受け材は、前記支持片部、止水片部および固定片部が形成された主受け材と、この主受け材とは別体で形成されて前記防水パンの側面部に固定される副受け材とを有して構成され、前記主受け材には、前記副受け材に向かって進退自在に支持される進退部材が設けられ、前記副受け材には、前記防水パンの側面部に当該副受け材を固定するための固着手段と、前記進退部材の進退方向に対して傾斜しかつ当該進退部材が当接可能な傾斜当接面と、前記主受け材を上下に案内する案内部とが設けられ、前記下降手段は、前記副受け材の傾斜当接面および案内部と前記進退部材とで構成され、前記傾斜当接面に当接させた前記進退部材を前記副受け材に向かって進出移動操作することで、前記傾斜当接面に沿って当該進退部材が前記防水パン側の下方に移動されるとともに、前記案内部に案内されて前記主受け材が下降移動されることが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、主受け材と副受け材とを有して受け材が構成され、主受け材で支持した進退部材を副受け材の傾斜当接面に当接させるとともに、この進退部材の進出移動操作によって主受け材が下降移動されるので、副受け材を防水パンの側面部における適宜な上下位置に固定してから、進退部材を進出移動させるだけの簡単な操作によって主受け材を所定の高さ位置まで下降させて固定することができ、受け材の固定作業をさらに効率よく実行することができる。また、下降移動の際に主受け材が副受け材の案内部に案内されるので、下降途中に主受け材が傾いたり副受け材から外れたりすることなく、適正な姿勢のまま下降させることができ、止水片部を防水パンの上面に確実に押圧して止水性を確保することができる。
【0012】
さらに、本発明の浴室建具の支持構造では、前記主受け材には、前記副受け材を挟んで前記防水パンの反対側に位置して下方に延びる延出片部が設けられ、前記副受け材の固着手段は、当該副受け材を略水平に貫通して前記防水パンの側面部と螺合する第1螺合部材であり、前記主受け材の延出片部には、前記第1螺合部材を螺合操作するための挿通孔が形成され、前記進退部材は、前記延出片部を貫通して当該延出片部と螺合する第2螺合部材であって、当該延出片部における前記副受け材と反対側の外方からの回転操作により進退移動可能に構成されていることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、副受け材を略水平に貫通して第1螺合部材を設け、この第1螺合部材を螺合操作するための挿通孔を主受け材の延出片部に設けたことで、防水パンと反対側の外方からドライバ等の工具を挿通孔に挿入し、この工具で第1螺合部材を螺合操作することができ、副受け材の固定作業を容易に実施することができる。また、延出片部と螺合する第2螺合部材で進退部材を構成し、防水パンや副受け材と反対側の外方からドライバ等の工具を用いて第2螺合部材を回転操作可能に構成したことで、第2螺合部材を副受け材に向かって進出移動させる進出移動操作を容易に実施することができる。従って、受け材や防水パンの下側に作業者が手や工具を入れて固定作業を実施しなくてもよく、受け材の側方からの作業により副受け材の固定作業や第2螺合部材(進退部材)の進出移動操作が実施でき、受け材の固定作業の効率化を一層促進させることができる。
【0014】
また、本発明の浴室建具の支持構造では、前記受け材は、前記支持片部、止水片部および固定片部が形成された主受け材と、この主受け材とは別体で形成されて前記防水パンの側面部に固定される副受け材とを有して構成され、前記主受け材には、回動自在に支持された回動部材が設けられ、前記副受け材には、前記防水パンの側面部に当該副受け材を固定するための固着手段と、前記主受け材の前記回動部材の上方位置に突出するとともに前記回動部材が当接可能な突出当接面と、前記主受け材を上下に案内する案内部とが設けられ、前記下降手段は、前記副受け材の突出当接面および案内部と前記回動部材とで構成され、前記回動部材の回動操作により前記副受け材の突出当接面を当該回動部材で上方に押圧することで、前記案内部に案内されて前記主受け材が下降移動されるように構成されてもよい。
【0015】
このような構成によれば、主受け材と副受け材とを有して受け材が構成され、主受け材で支持した回動部材を回動操作して副受け材の突出当接面に当接させ、突出当接面を上方に押圧することによって主受け材が下降移動されるので、副受け材を防水パンの側面部における適宜な上下位置に固定してから、回動部材を回動させるだけの簡単な操作によって主受け材を所定の高さ位置まで下降させて固定することができ、受け材の固定作業をさらに効率よく実行することができる。また、下降移動の際に主受け材が副受け材の案内部に案内されるので、下降途中に主受け材が傾いたり副受け材から外れたりすることなく、適正な姿勢のまま下降させることができ、止水片部を防水パンの上面に確実に押圧して止水性を確保することができる。
【0016】
さらに、本発明の浴室建具の支持構造では、前記主受け材には、前記副受け材を挟んで前記防水パンの反対側に位置して下方に延びる延出片部が設けられ、前記副受け材の固着手段は、当該副受け材を略水平に貫通して前記防水パンの側面部と螺合する螺合部材であり、前記主受け材の延出片部には、前記螺合部材を螺合操作するための挿通孔が形成され、前記回動部材は、前記延出片部に支持されるとともに、当該延出片部における前記副受け材と反対側の外方からの操作により回動可能に構成されていることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、副受け材を略水平に貫通して螺合部材を設け、この螺合部材を螺合操作するための挿通孔を主受け材の延出片部に設けたことで、防水パンと反対側の外方からドライバ等の工具を挿通孔に挿入し、この工具で螺合部材を螺合操作することができ、副受け材の固定作業を容易に実施することができる。また、防水パンや副受け材と反対側の外方から回動部材を回動操作可能に構成したことで、この回動操作を容易に実施することができる。従って、受け材や防水パンの下側に作業者が手や工具を入れて固定作業を実施しなくてもよく、受け材の側方からの作業により副受け材の固定作業や回動部材の回動操作が実施でき、受け材の固定作業の効率化を一層促進させることができる。
【0018】
また、本発明の浴室建具の支持構造では、前記受け材は、前記防水パンの側面部に向かって上り勾配を有した傾斜摺接面部と、この傾斜摺接面部に摺接可能かつ前記防水パンの側面部に固定される固定部材と、前記防水パンの側面部と螺合して前記固定部材を固定する固着具とを有して構成され、前記下降手段は、前記傾斜摺接面部、固定部材および固着具で構成され、前記傾斜摺接面部に前記固定部材を当接させるとともに、前記固着具を螺合操作して前記固定部材を前記防水パンの側面部に向かって移動させることで、前記固定部材に摺接された前記傾斜摺接面部が下方に押圧されて前記受け材が下降移動されるように構成されてもよい。
【0019】
このような構成によれば、固着具の螺合操作により固定部材を防水パンの側面部に向かって移動させ、固定部材が摺接する傾斜面部を下方に押圧することによって受け材が下降移動されるので、受け材を適宜な上下位置にセットしてから、固着具を防水パンの側面部に螺合するだけの簡単な操作によって受け材を所定の高さ位置まで下降させて固定することができ、受け材の固定作業をさらに効率よく実行することができる。また、下降移動の際に固定部材を傾斜摺接面部に摺接させる、つまり傾斜摺接面部で押圧力を受けることで、下降途中に受け材が傾くことなく、適正な姿勢のまま下降させることができ、止水片部を防水パンの上面に確実に押圧して止水性を確保することができる。
【0020】
さらに、本発明の浴室建具の支持構造では、前記固着具は、前記固定部材を略水平に貫通して前記防水パンの側面部と螺合する螺合部材であり、前記受け材における前記防水パンと反対側の外方から螺合操作可能に構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、固定部材を略水平に貫通して螺合部材を設け、この螺合部材を防水パンと反対側の外方から螺合操作可能に構成したことで、この螺合操作を容易に実施することができる。従って、受け材や防水パンの下側に作業者が手や工具を入れて固定作業を実施しなくてもよく、受け材の側方からの作業により螺合部材の螺合操作が実施でき、受け材の固定作業の効率化を一層促進させることができる。
【0021】
以上において、本発明の浴室建具の支持構造では、前記受け材の前記固定片部は、前記防水パンの側面部と螺合する第3螺合部材で固定され、この第3螺合部材は、当該受け材における前記防水パンと反対側の外方から螺合操作可能に構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、受け材の固定片部を略水平に貫通して第3螺合部材を設け、この第3螺合部材を防水パンと反対側の外方から螺合操作可能に構成したことで、受け材の下降移動後における固定片部の固定作業である第3螺合部材の螺合操作を、受け材の側方から容易に実施することができ、受け材の固定作業をさらに一層効率よく実行することができる。
【0022】
一方、本発明の浴室出入り口用建具は、前記いずれかに記載の浴室建具の支持構造により支持されたことを特徴とする。
このような本発明によれば、前述の支持構造の場合と同様の効果、すなわち下降手段により受け材を所定の上下位置に固定でき、受け材の止水片部と防水パンの上面とを止水材に密着させて止水性を確保することができるとともに、受け材の位置決めに要する手間を省略して固定作業の効率化を図ることができる。さらに、受け材を上方から貫通するビスや、このビスの頭部を覆うカバー部材等が不要なので、止水性を向上させることができるとともに、防水パン上面から上方への段差を最小限にして出入りの際の利便性を格段に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、第2実施形態以降において、次の第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材、および同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態の構成部材と同じ符号を付し、それらの説明を省略または簡略化する。また、各図においては、主要構成部品の断面を示すハッチングを一部省略する場合がある。
【0024】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の実施形態に係る浴室出入り口用建具である折れ戸1を示す縦断面図である。図2は、第1実施形態に係る折れ戸1の支持構造における受け材10の取付手順を示す縦断面図である。図3は、取り付けられた受け材10を示す縦断面図である。
図1において、折れ戸1は、ユニットバスからなる浴室への出入り口として脱衣室との間に設けられるものであって、枠体としての建具枠2と、この建具枠2に開閉自在に支持された折れ戸障子3とを有して構成されている。建具枠2は、上枠4、下枠5、および左右の縦枠6を四周枠組みして構成されており、上枠4が建物内壁の額縁7に固定され、下枠5が後述する受け材10に支持されるとともに脱衣室の床材8に固定され、縦枠6が建物内壁やユニットバスの壁に固定されている。そして、ユニットバスは、その床面を構成する防水パン9を有し、この防水パン9の上面9Aと脱衣室の床材8上面とは、下枠5および受け材10を介して略フラットに(防水パン9の上面9Aが脱衣室の床材8上面よりも若干低く)なるように構成されている。
【0025】
防水パン9は、FRP(Fiber-Reinforced Plastics 、繊維強化プラスチック)製の一体成形品であり、図2にも示すように、上面9Aから下方に延びて建物躯体に支持される側面部としての垂下リブ9Bと、上面9Aの外周縁から段付き状に上方に延びてユニットバスの壁材を支持する立上り部9Cとを有して形成されている。そして、防水パン9の立上り部9Cは、図2に仮想線(二点鎖線)で示すように、折れ戸1を設置する部分が垂下リブ9B外面位置で切り欠かれており、この立上り部9Cを切り欠いた部分に受け材10を固定するとともに、受け材10に下枠5を載置することで、折れ戸1が設置されるようになっている。また、図1に示すように、受け材10の両端部には、端部キャップ11が取り付けられており、これらの端部キャップ11によって受け材10と立上り部9Cの切り欠き端縁との間を塞ぐことで、ユニットバス内部の水が受け材10の両端部から下方に漏れ出さないようになっている。
【0026】
受け材10は、図2、図3に示すように、アルミ形材製で下枠5と略同一の長さ寸法を有するか下枠5よりも若干長く形成された主受け材12と、この主受け材12とは別体の金属製ピース材であり主受け材12の長手方向に沿って適宜な間隔で複数箇所(2〜4箇所)に設けられる副受け材13と、この副受け材13を防水パン9の垂下リブ9Bに固着するための固着手段である第1螺合部材(ビス)14と、副受け材13に向かって進退自在に主受け材12に支持された進退部材である第2螺合部材(ビス)15と、主受け材12を垂下リブ9Bに固定するための第3螺合部材(ビス)16とを有して構成されている。
【0027】
主受け材12は、下枠5を支持する支持片部121と、この支持片部121よりも浴室側に設けられた中空部(ホロー部)122と、中空部122から浴室側に突出した止水片部123と、中空部122から下方に延びる延出片部124と、この延出片部124の下端から浴室側に折れ曲がった底面部125と、底面部125に連続して防水パン9の垂下リブ9Bに沿って延びる固定片部126とを有し、これらの各部が一体に形成されている。また、主受け材12には、中空部122の浴室下側に形成された凹溝部127と、止水片部123の下面に取り付けられて防水パン9の上面9Aに密着可能な止水材であるパッキン128と、中空部122の脱衣室上側に取り付けられて下枠5に当接可能な止水部材129とが設けられている。
【0028】
副受け材13は、防水パン9の垂下リブ9Bに固定される固定片部131と、この固定片部131の下端から脱衣室側に折れ曲がった底面部132と、固定片部131の上端側に設けられた略三角柱状の当接部133と、この当接部133から上方に突出して設けられた案内部である突出片部134とを有し、これらの各部が一体に形成されている。また、副受け材13の当接部133の脱衣室側には、防水パン9の垂下リブ9Bに向かって下がり勾配を有しかつ第2螺合部材15の先端が当接可能な傾斜当接面135が形成されている。このような副受け材13は、突出片部134を主受け材12の凹溝部127に挿入した状態において、底面部132が主受け材12の底面部125上面に当接することで、主受け材12から外れないようになっており、主受け材12の左右両端部から挿入することで副受け材13がセットされるようになっている。
【0029】
また、副受け材13は、固定片部131を略水平に貫通して防水パン9の垂下リブ9Bと螺合する第1螺合部材14によって垂下リブ9Bに固定されるようになっており、主受け材12の延出片部124には、第1螺合部材14を螺合操作するための挿通孔124A(図2参照)が設けられている。従って、第1螺合部材14は、挿通孔124Aを介して主受け材12の外方(図2、3中、右側)から、螺合操作することによって垂下リブ9Bと螺合可能に構成されている。一方、第2螺合部材15は、主受け材12の延出片部124を略水平に貫通し、当該延出片部124と螺合して支持されるとともに、延出片部124における副受け材13と反対側(図2、3中、右側)である主受け材12外方から、回転操作することによって進退移動可能に構成されている。また、第3螺合部材16は、図3に示すように、主受け材12の固定片部126を略水平に貫通して防水パン9の垂下リブ9Bと螺合するものであり、防水パン9と反対側(図中、右側)の主受け材12外方から、螺合操作することによって垂下リブ9Bと螺合可能に構成されている。
【0030】
以上のような受け材10の防水パン9への固定手順としては、先ず、主受け材12の左右両端部から所定の個数の副受け材13を挿入しておき、この受け材10を図2に示すように、止水片部123が防水パン9の上面9Aから適宜な高さ位置となるようにセットする。この際、止水片部123と防水パン9の上面9Aとの間隔は、さほど正確でなくてもよく、後述するような主受け材12の下降ストロークよりも小さい間隔寸法(例えば、数mm〜10mm程度)に設定しておけばよい。さらに、主受け材12の長手方向に沿った各位置における間隔寸法も均一である必要はなく、主受け材12の下降ストロークの範囲内で多少ばらついていてもよい。このため、受け材10の防水パン9へのセットに際しては、適宜なスペーサを止水片部123と防水パン9の上面9Aとの間に挟んでおくなど、簡便な位置決め方法が採用可能である。
【0031】
次に、主受け材12の延出片部124の挿通孔124Aからスクリュードライバ等の工具を差し入れ、第1螺合部材14を螺合操作して垂下リブ9Bに螺合し、副受け材13を防水パン9に固定する。この際、第2螺合部材15は、副受け材13から遠ざかった後退位置にあり、その先端が傾斜当接面135の上端部に当接した状態にあるとともに、副受け材13は、その底面部132を主受け材12の底面部125上面に当接させた位置にある。すなわち、主受け材12は、副受け材13に対して下降ストロークの上限位置にある状態で副受け材13が固定されることとなる。このようにして複数箇所の副受け材13を固定した後に、前述のスペーサを取り外せば、止水片部123が防水パン9の上面9Aに当接する位置まで主受け材12が下降する。
【0032】
次に、第2螺合部材15を螺合操作して副受け材13に向かって進出移動させ、その先端を傾斜当接面135に当接させるとともに、さらに第2螺合部材15を締め付けることで、その先端が傾斜当接面135の下端部側に移動し、主受け材12が下降移動されることとなる。この際、主受け材12の凹溝部127が副受け材13の突出片部134によって上下に案内されることで、主受け材12が傾いたりずれたりしないようになっている。このように、第2螺合部材15の先端が傾斜当接面135の上端部から下端部まで移動する上下移動量と、および主受け材12の凹溝部127に副受け材13の突出片部134が突き当たるまでの上下移動量と、の小さい方の移動量によって主受け材12の下降ストロークが決定されるようになっている。
【0033】
以上のようにして主受け材12を下降移動させることで、図3に示すように、止水片部123を防水パン9の上面9Aに押圧し、止水片部123および防水パン9の上面9Aとパッキン128とを密着させる。すなわち、本実施形態において、主受け材12に設けた第2螺合部材15および凹溝部127と、副受け材13に設けた傾斜当接面135および突出片部134とによって下降手段が構成されている。このような下降手段によって主受け材12を下降させてパッキン128を密着させた状態において、第3螺合部材16を主受け材12の固定片部126に貫通させて螺合操作し、防水パン9の垂下リブ9Bに主受け材12を固定する。
以上の手順によって受け材10の防水パン9への固定が完了し、この後に、主受け材12の支持片部121に下枠5を載置し、止水部材129を下枠5に当接させて建具枠2を建て込むことで、折れ戸1の取付作業が実施できるようになっている。
【0034】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、受け材10が主受け材12と副受け材13とを有し、主受け材12に設けた第2螺合部材15および凹溝部127と、副受け材13に設けた傾斜当接面135および突出片部134とによって下降手段が構成され、この下降手段によって主受け材12を下降させて止水片部123を防水パン9の上面9Aに押圧した状態において、主受け材12の固定片部126を垂下リブ9Bに固定することで、止水片部123および防水パン9の上面9Aとパッキン128とを密着させることができる。従って、受け材10と防水パン9との間からの漏水を防止して止水性を確保することができ、防水パン9の下方や脱衣室の床材8下方への水の浸入が確実に防止でき、止水性能を格段に向上させることができる。
【0035】
(2)また、主受け材12の下降ストロークを適宜設定しておくことで、防水パン9への受け材10のセット時においては止水片部123と防水パン9の上面9Aとの間隔を厳密に調節しなくてもよく、主受け材12の下降途中において止水片部123が防水パン9の上面9Aに押圧されたことを確認してから、固定片部126を垂下リブ9Bに固定すればよく、主受け材12を所定位置に固定して止水性を確保することができるとともに、位置決めに要する手間を省略して受け材10の固定作業の効率化および迅速化を図ることができる。
【0036】
(3)さらに、主受け材12で支持した第2螺合部材15の先端を副受け材13の傾斜当接面135に当接させるとともに、この第2螺合部材15の進出移動操作によって主受け材12が下降移動されるので、副受け材13を防水パン9の垂下リブ9Bにおける適宜な上下位置に固定してから、第2螺合部材15を進出移動させるだけの簡単な操作によって主受け材12を所定の高さ位置まで下降させて固定することができ、受け材10の固定作業をさらに効率よく実行することができる。
【0037】
(4)また、受け材10における第1螺合部材14、第2螺合部材15および第3螺合部材16が防水パン9と反対側の受け材10外方からドライバ等の工具を用いて螺合操作可能に構成されているので、受け材10や防水パン9の下側に作業者が手や工具を入れて固定作業を実施しなくてもよく、受け材10の側方からの作業により副受け材13の固定操作や第2螺合部材15の進出移動操作、主受け材12の固定操作が実施でき、受け材10の固定作業の効率化を一層促進させることができる。
【0038】
(5)また、主受け材12の下降移動の際に凹溝部127が副受け材13の突出片部134に案内されるので、下降途中に主受け材12が傾いたり副受け材13から外れたりすることなく、適正な姿勢のまま下降させることができ、止水片部123を防水パン9の上面9Aに確実に押圧して止水性を確保することができる。
【0039】
(6)また、主受け材12および副受け材13の固定片部126,131が防水パン9の垂下リブ9Bに固定されるので、受け材10を上方から貫通して固定するビスが不要になり、ビスによって止水性が低下することがない。また、ビスの頭部を覆うカバー部材等も不要になって、防水パン9の上面9Aから上方へ突出する段差を止水片部123とパッキン128との厚さ寸法程度に抑えることができ、出入りの際の利便性を格段に向上させることができる。
【0040】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態に係る支持構造について図4および図5に基づいて説明する。
図4(A),(B)は、第2実施形態に係る支持構造における受け材20の取付手順を示す縦断面図および側面図である。図5(A),(B)は、取り付けられた受け材20を示す縦断面図および側面図である。
本実施形態の支持構造は、前記第1実施形態と受け材の構成が相違し、他の構成は略同様である。以下、相違点について詳しく説明する。
【0041】
本実施形態の受け材20は、図4、図5に示すように、前記第1実施形態の主受け材12と略同一断面を有したアルミ形材製の主受け材22と、この主受け材22とは別体の金属製ピース材である副受け材23と、この副受け材23を防水パン9の垂下リブ9Bに固着するための固着手段である螺合部材(ビス)24と、主受け材22に回動自在に支持された回動部材25と、主受け材22を垂下リブ9Bに固定するための第3螺合部材(ビス)26とを有して構成されている。
【0042】
主受け材22は、前記主受け材12と同様に、支持片部221と、中空部222と、止水片部223と、延出片部224と、底面部225と、固定片部226とを有し、主受け材22には、凹溝部227と、止水材であるパッキン228と、止水部材229とが設けられている。
副受け材23は、防水パン9の垂下リブ9Bに固定される固定片部231と、この固定片部231の下端から脱衣室側に折れ曲がった底面部232と、固定片部231の上端側から主受け材22の延出片部224に向かって突出して回動部材25の上方に位置する突出当接片部(突出当接面)233と、この突出当接片部233から上方に突出して設けられた案内部である突出片部234とを有して形成されている。このような副受け材23は、突出片部234を主受け材22の凹溝部227に挿入した状態において、底面部232が主受け材22の底面部225上面に当接することで、主受け材22から外れないようになっており、主受け材22の左右両端部から挿入することで副受け材23がセットされるようになっている。
【0043】
また、副受け材23は、固定片部231を略水平に貫通して防水パン9の垂下リブ9Bと螺合する螺合部材24によって垂下リブ9Bに固定されるようになっており、主受け材22の延出片部224には、螺合部材24を螺合操作するための挿通孔224A(図4参照)が設けられている。従って、螺合部材24は、挿通孔224Aを介して主受け材22の外方(図4、5中、右側)から、螺合操作することによって垂下リブ9Bと螺合可能に構成されている。また、第3螺合部材26は、図5に示すように、主受け材22の固定片部226を略水平に貫通して防水パン9の垂下リブ9Bと螺合するものであり、防水パン9と反対側(図中、右側)の主受け材22外方から、螺合操作することによって垂下リブ9Bと螺合可能に構成されている。
【0044】
一方、回動部材25は、主受け材22の延出片部224を略水平に貫通し主受け材22の外方から回転操作可能な軸部251と、この軸部251に固着されて副受け材23の突出当接片部233の下面に当接可能なアーム部252とを有して構成され、軸部251を回転操作することによってアーム部252が回動し、突出当接片部233を上方に押圧できるようになっている。なお、アーム部252の構成としては、図4、図5に示したような断面コ字形の金物に限らず、軸部251に偏心して固着された円柱状や楕円柱状の部材でもよく、またラチェット状に副受け材23の突出当接片部233と係合するような部材であってもよい。このような回動部材25によって副受け材23の突出当接片部233を上方に押圧することで、主受け材22が下降移動されるようになっており、すなわち、本実施形態において、主受け材22に設けた回動部材25および凹溝部227と、副受け材23の突出当接片部233および突出片部234とによって下降手段が構成されている。
【0045】
以上のような受け材20の防水パン9への固定手順としては、前記第1実施形態と略同様に受け材20をセットした後に、主受け材22の延出片部224の挿通孔224Aからスクリュードライバ等の工具を差し入れ、螺合部材24を螺合操作して垂下リブ9Bに螺合し、副受け材23を防水パン9に固定する。次に、回動部材25の軸部251を回転操作してアーム部252を回動させ、アーム部252の側端部を副受け材23の突出当接片部233に当接させることで、主受け材22を下降移動させる。このようにして主受け材22を下降移動させることで、図5に示すように、止水片部223を防水パン9の上面9Aに押圧し、止水片部223および防水パン9の上面9Aとパッキン228とを密着させ、この状態において、第3螺合部材26を主受け材22の固定片部226に貫通させて螺合操作し、防水パン9の垂下リブ9Bに主受け材22を固定する。
以上の手順によって受け材20の防水パン9への固定が完了する。
【0046】
このような本実施形態によれば、前述の(5)、(6)と同様の効果に加えて以下のような効果がある。
(7)すなわち、受け材20が主受け材22と副受け材23とを有し、主受け材22に設けた回動部材25および凹溝部227と、副受け材23に設けた突出当接片部233および突出片部234とによって下降手段が構成され、この下降手段によって主受け材22を下降させて止水片部223を防水パン9の上面9Aに押圧した状態において、主受け材22の固定片部226を垂下リブ9Bに固定することで、止水片部223および防水パン9の上面9Aとパッキン228とを密着させることができる。従って、受け材20と防水パン9との間からの漏水を防止して止水性を確保することができ、防水パン9の下方や脱衣室の床材8下方への水の浸入が確実に防止でき、止水性能を格段に向上させることができる。
【0047】
(8)また、防水パン9への受け材20のセット時においては止水片部223と防水パン9の上面9Aとの間隔を厳密に調節しなくてもよく、主受け材22の下降途中において止水片部223が防水パン9の上面9Aに押圧されたことを確認してから、固定片部226を垂下リブ9Bに固定すればよく、主受け材22を所定位置に固定して止水性を確保することができるとともに、位置決めに要する手間を省略して受け材20の固定作業の効率化および迅速化を図ることができる。
【0048】
(9)さらに、主受け材22で支持した回動部材25の回動操作によって主受け材22が下降移動されるので、副受け材23を防水パン9の垂下リブ9Bにおける適宜な上下位置に固定してから、回動部材25を回動させるだけの簡単な操作によって主受け材22を所定の高さ位置まで下降させて固定することができ、受け材20の固定作業をさらに効率よく実行することができる。
【0049】
(10)また、受け材20における螺合部材24、回動部材25および第3螺合部材26が防水パン9と反対側の受け材20外方からドライバ等の工具を用いて操作可能に構成されているので、受け材20や防水パン9の下側に作業者が手や工具を入れて固定作業を実施しなくてもよく、受け材20の側方からの作業により副受け材23の固定操作や回動部材25の回動操作、主受け材22の固定操作が実施でき、受け材20の固定作業の効率化を一層促進させることができる。
【0050】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態に係る支持構造について図6および図7に基づいて説明する。
図6は、それぞれ第3実施形態に係る支持構造における受け材30の取付手順を示す縦断面図である。図7は、取り付けられた受け材30を示す縦断面図である。
本実施形態の支持構造は、前記第1、第2実施形態と受け材の構成が相違し、他の構成は略同様である。以下、相違点について詳しく説明する。
【0051】
本実施形態の受け材30は、図6、図7に示すように、アルミ形材製の主受け材32と、この主受け材32とは別体の金属製ピース材である固定部材33と、この固定部材33を防水パン9の垂下リブ9Bに固着するための固着具である螺合部材(ビス)34と、主受け材32を垂下リブ9Bに固定するための2本の第3螺合部材(ビス)35,36とを有して構成されている。
【0052】
主受け材32は、前記主受け材12,22と略同様に、下枠5を支持する支持片部321と、この支持片部321よりも浴室側に設けられた中空部(ホロー部)322と、中空部322から浴室側に突出した止水片部323とを有して形成されている。さらに、主受け材32は、中空部322の脱衣室側側面を構成する延出片部324と、中空部322の浴室室側側面を構成し防水パン9の垂下リブ9Bに沿って延びる第1固定片部325と、この第1固定片部325に連続して形成され垂下リブ9Bに沿って延びる第2固定片部326と、第1固定片部325の下端部に連続して形成された傾斜摺接面部327と、この傾斜摺接面部327に対向して延出片部324と第1固定片部325とを連結する傾斜案内面部327Aとを有し、これらの各部が一体に形成されている。傾斜摺接面部327と傾斜案内面部327Aとは、それぞれ防水パン9の垂下リブ9Bに向かって上り勾配、つまり第1固定片部325から離れる方向に下り勾配を有して形成されている。また、主受け材32には、前記主受け材12,22と同様の止水材であるパッキン328と、止水部材329とが設けられている。
【0053】
固定部材33には、当該固定部材33を略水平に貫通する挿通孔331と、主受け材32の傾斜摺接面部327に摺接可能な下部傾斜面部332と、主受け材32の傾斜案内面部327Aに案内される上部傾斜面部333とを有して形成されている。そして、固定部材33は、挿通孔331に貫通させた螺合部材34を防水パン9の垂下リブ9Bに螺合することで防水パン9固定されるようになっており、主受け材32の第1固定片部325に形成した挿通孔325Aを介して螺合部材34が垂下リブ9Bに螺合できるようになっている。このような固定部材33は、下部傾斜面部332を主受け材32の傾斜摺接面部327に当接させた状態で螺合部材34を締め付けることにより、下部傾斜面部332が傾斜摺接面部327に摺接するとともに、上部傾斜面部333が傾斜案内面部327Aに案内されるようになっている。
【0054】
そして、螺合部材34の締め付けにより固定部材33が主受け材32の第1固定片部325に向かって(つまり防水パン9の垂下リブ9Bに向かって)進出移動し、この固定部材33の進出移動により、下部傾斜面部332で傾斜摺接面部327が下方に押圧され、主受け材32が下降移動されるようになっている。すなわち、本実施形態において、主受け材32に設けた傾斜摺接面部327と、固定部材33の下部傾斜面部332および螺合部材34とによって下降手段が構成されている。
また、図7に示すように、第3螺合部材35は、主受け材32の第1固定片部325を略水平に貫通して防水パン9の垂下リブ9Bと螺合するものであり、主受け材32の延出片部324に形成した挿通孔324Aを介して、防水パン9と反対側(図中、右側)の主受け材32外方から、螺合操作することによって垂下リブ9Bと螺合可能に構成されている。
【0055】
以上のような受け材30の防水パン9への固定手順としては、前記第1、第2実施形態と略同様に受け材30をセットした後に、固定部材33を主受け材32の傾斜摺接面部327と傾斜案内面部327Aの間に配置し、螺合部材34を螺合操作して垂下リブ9Bに螺合し、固定部材33を進出移動させながら防水パン9に固定する。この固定部材33の進出移動によって、下部傾斜面部332に傾斜摺接面部327が押圧された主受け材32を下降移動させる。このようにして主受け材32を下降移動させることで、図7に示すように、止水片部323を防水パン9の上面9Aに押圧し、止水片部323および防水パン9の上面9Aとパッキン328とを密着させ、この状態において、挿通孔324Aを介して第3螺合部材35を主受け材32の第1固定片部325に貫通させて螺合操作し、第3螺合部材36を主受け材32の第2固定片部326に貫通させて螺合操作し、防水パン9の垂下リブ9Bに主受け材32を固定する。
以上の手順によって受け材30の防水パン9への固定が完了する。
【0056】
このような本実施形態によれば、前述の(5)、(6)と同様の効果に加えて以下のような効果がある。
(11)すなわち、受け材30が主受け材32と固定部材33とを有し、主受け材32に設けた傾斜摺接面部327と、固定部材33の下部傾斜面部332および螺合部材34とによって下降手段が構成され、この下降手段によって主受け材32を下降させて止水片部323を防水パン9の上面9Aに押圧した状態において、主受け材32の第1および第2固定片部325,326を垂下リブ9Bに固定することで、止水片部323および防水パン9の上面9Aとパッキン328とを密着させることができる。従って、受け材20と防水パン9との間からの漏水を防止して止水性を確保することができ、防水パン9の下方や脱衣室の床材8下方への水の浸入が確実に防止でき、止水性能を格段に向上させることができる。
【0057】
(12)また、防水パン9への受け材30のセット時においては止水片部323と防水パン9の上面9Aとの間隔を厳密に調節しなくてもよく、主受け材32の下降途中において止水片部323が防水パン9の上面9Aに押圧されたことを確認してから、第1および第2固定片部325,326を垂下リブ9Bに固定すればよく、主受け材32を所定位置に固定して止水性を確保することができるとともに、位置決めに要する手間を省略して受け材30の固定作業の効率化および迅速化を図ることができる。
【0058】
(13)さらに、螺合部材34を螺合操作によって固定部材33が進出移動し、この固定部材33の進出移動に伴って主受け材32が下降移動されるので、固定部材33の固定するための螺合部材34の螺合操作だけで主受け材32を所定の高さ位置まで下降させて固定することができ、受け材30の固定作業をさらに効率よく実行することができる。
【0059】
(14)また、受け材30における螺合部材34および第3螺合部材35,36が防水パン9と反対側の受け材30外方からドライバ等の工具を用いて操作可能に構成されているので、受け材30や防水パン9の下側に作業者が手や工具を入れて固定作業を実施しなくてもよく、受け材30の側方からの作業により固定部材33が進出移動操作や主受け材32の固定操作が実施でき、受け材30の固定作業の効率化を一層促進させることができる。
【0060】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、浴室出入り口用建具としての折れ戸1について説明したが、本発明の建具は折れ戸1に限られず、片引き戸や、二枚あるいは三枚建ての引き戸(連動引き戸)、開き戸など任意の開閉形式のものであってもよい。
さらに、浴室建具の支持構造としては、前記第1〜第3実施形態で説明した構造に限らず、他の適宜な下降手段を有したものが採用可能である。
【0061】
また、前記第1実施形態では、第1〜第3螺合部材14,15,16がそれぞれ略水平に配置され、前記第2実施形態では、螺合部材24、回動部材25の軸部251および第3螺合部材26がそれぞれ略水平に配置され、前記第3実施形態では、螺合部材34および2本の第3螺合部材35,36がそれぞれ略水平に配置されていたが、これに限らず、各螺合部材が所定の傾きを有して配置されていてもよい。また、各螺合部材は、ドライバで螺合(回転)操作されるビスに限らず、レンチで回転操作されるボルト等でもよい。
また、前記第1および第2実施形態では、主受け材12,22の左右両端部から副受け材13,23を挿入した状態で、これらの主受け材12,22および副受け材13,23を防水パン9に位置決めしてから、副受け材13,23を固定する受け材10,20の固定手順を採用したが、このような手順に限られない。すなわち、受け材の固定手順としては、先ず、主受け材と別体の副受け材を防水パン9の垂下リブ9Bにおける適宜な高さ位置に固定しておき、その後に、主受け材を副受け材にセットしてから下降手段により下降操作するような手順であってもよい。
【0062】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態に係る浴室出入り口用建具を示す縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る建具の支持構造における受け材の取付手順を示す縦断面図である。
【図3】取り付けられた前記受け材を示す縦断面図である。
【図4】(A),(B)は、本発明の第2実施形態に係る建具の支持構造における受け材の取付手順を示す縦断面図および側面図である。
【図5】(A),(B)は、取り付けられた前記受け材を示す縦断面図および側面図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る建具の支持構造における受け材の取付手順を示す縦断面図である。
【図7】取り付けられた前記受け材を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1…浴室建具である折れ戸、5…下枠、9…防水パン、9A…上面、9B…側面部である垂下リブ、10,20,30…受け材、12,22,32…主受け材、13,23…副受け材、14…固着手段である第1螺合部材、15…進退部材である第2螺合部材、16,26,35,36…第3螺合部材、24…固着手段である螺合部材、25…回動部材、34…固着具である螺合部材、121,221,321…支持片部、123,223,323…止水片部、124,224…延出片部、124A,224A…挿通孔、126,226,325,326…固定片部、128,228,328…止水材であるパッキン、134,234…案内部である突出片部、135…傾斜当接面、233…突出当接片部(突出当接面)、327…傾斜摺接面部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室の床面を構成する防水パンに固定した受け材を介して建具を支持する浴室建具の支持構造であって、
前記受け材は、前記建具を支持する支持片部と、この支持片部に連続しかつ前記防水パンの上面に止水材を介して密接される止水片部と、前記支持片部および止水片部よりも下方に延びる固定片部とを有して形成されるとともに、この受け材には、前記防水パンに対して所定高さ位置から当該受け材を下降させる下降手段が設けられ、
前記下降手段によって前記受け材を下降させて前記止水片部を前記防水パンの上面に押圧した状態において、前記固定片部が前記防水パンの側面部に固定される浴室建具の支持構造。
【請求項2】
前記受け材は、前記支持片部、止水片部および固定片部が形成された主受け材と、この主受け材とは別体で形成されて前記防水パンの側面部に固定される副受け材とを有して構成され、
前記主受け材には、前記副受け材に向かって進退自在に支持される進退部材が設けられ、
前記副受け材には、前記防水パンの側面部に当該副受け材を固定するための固着手段と、前記進退部材の進退方向に対して傾斜しかつ当該進退部材が当接可能な傾斜当接面と、前記主受け材を上下に案内する案内部とが設けられ、
前記下降手段は、前記副受け材の傾斜当接面および案内部と前記進退部材とで構成され、前記傾斜当接面に当接させた前記進退部材を前記副受け材に向かって進出移動操作することで、前記傾斜当接面に沿って当該進退部材が前記防水パン側の下方に移動されるとともに、前記案内部に案内されて前記主受け材が下降移動される請求項1に記載の浴室建具の支持構造。
【請求項3】
前記主受け材には、前記副受け材を挟んで前記防水パンの反対側に位置して下方に延びる延出片部が設けられ、
前記副受け材の固着手段は、当該副受け材を略水平に貫通して前記防水パンの側面部と螺合する第1螺合部材であり、前記主受け材の延出片部には、前記第1螺合部材を螺合操作するための挿通孔が形成され、
前記進退部材は、前記延出片部を貫通して当該延出片部と螺合する第2螺合部材であって、当該延出片部における前記副受け材と反対側の外方からの回転操作により進退移動可能に構成されている請求項2に記載の浴室建具の支持構造。
【請求項4】
前記受け材は、前記支持片部、止水片部および固定片部が形成された主受け材と、この主受け材とは別体で形成されて前記防水パンの側面部に固定される副受け材とを有して構成され、
前記主受け材には、回動自在に支持された回動部材が設けられ、
前記副受け材には、前記防水パンの側面部に当該副受け材を固定するための固着手段と、前記主受け材の前記回動部材の上方位置に突出するとともに前記回動部材が当接可能な突出当接面と、前記主受け材を上下に案内する案内部とが設けられ、
前記下降手段は、前記副受け材の突出当接面および案内部と前記回動部材とで構成され、前記回動部材の回動操作により前記副受け材の突出当接面を当該回動部材で上方に押圧することで、前記案内部に案内されて前記主受け材が下降移動される請求項1に記載の浴室建具の支持構造。
【請求項5】
前記主受け材には、前記副受け材を挟んで前記防水パンの反対側に位置して下方に延びる延出片部が設けられ、
前記副受け材の固着手段は、当該副受け材を略水平に貫通して前記防水パンの側面部と螺合する螺合部材であり、前記主受け材の延出片部には、前記螺合部材を螺合操作するための挿通孔が形成され、
前記回動部材は、前記延出片部に支持されるとともに、当該延出片部における前記副受け材と反対側の外方からの操作により回動可能に構成されている請求項4に記載の浴室建具の支持構造。
【請求項6】
前記受け材は、前記防水パンの側面部に向かって上り勾配を有した傾斜摺接面部と、この傾斜摺接面部に摺接可能かつ前記防水パンの側面部に固定される固定部材と、前記防水パンの側面部と螺合して前記固定部材を固定する固着具とを有して構成され、
前記下降手段は、前記傾斜摺接面部、固定部材および固着具で構成され、前記傾斜摺接面部に前記固定部材を当接させるとともに、前記固着具を螺合操作して前記固定部材を前記防水パンの側面部に向かって移動させることで、前記固定部材に摺接された前記傾斜摺接面部が下方に押圧されて前記受け材が下降移動される請求項1に記載の浴室建具の支持構造。
【請求項7】
前記固着具は、前記固定部材を略水平に貫通して前記防水パンの側面部と螺合する螺合部材であり、前記受け材における前記防水パンと反対側の外方から螺合操作可能に構成されている請求項6に記載の浴室建具の支持構造。
【請求項8】
前記受け材の前記固定片部は、前記防水パンの側面部と螺合する第3螺合部材で固定され、この第3螺合部材は、当該受け材における前記防水パンと反対側の外方から螺合操作可能に構成されている請求項1から請求項7のいずれかに記載の浴室建具の支持構造。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれかに記載の浴室建具の支持構造により支持された浴室出入り口用建具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−255124(P2007−255124A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83002(P2006−83002)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)
【Fターム(参考)】